説明

面状照明装置及びこれを用いた電子機器

【課題】面状照明装置の光源の消費電力の増大を来たすことなく、所定の表示記号の更なる視認性向上を図る。
【解決手段】光散乱パターン22の各位置に対応する、表示フィルム3の各表示記号3aの、平面視での前後方向中心位置C3aから、光散乱パターン22の前方外縁部までの距離Yfが、光散乱パターンの後方外縁部までの距離Yrよりも、大きくなる位置に設けられている。表示フィルム3の各表示記号3aは、平面視での前後方向中心位置C3aから、光散乱パターン前縁部側へと広範囲に渡って照らされる。表示記号3aの平面視での前後方向中心位置C3aにおける法線方向に対し、ユーザーの視線が後方から表示記号3aを視認するような使用状態において、表示記号3aを介した視点の先に広がる、表示記号3aの前方F側の領域についても、光散乱パターン22による導光板からの出射光によって照らし出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面状照明装置及びこれを用いた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、LCD(液晶表示装置)やCRT等の表示装置を備えた電子機器のための入力装置として、その表示装置の画面上に配置され、画面に表示される文字、数字及びその他の記号(図形、像等からなるアイコンと称される絵記号等を含む。複数の記号で1つの記号をなすものも含む。)を、その表面側から透かして見ながら所望の文字、数字及びその他の記号(以下、本説明において「表示記号」という。)の位置を指等でタッチし、その記号位置に応じた情報を生成して出力する装置(以下、このような入力装置をタッチパネルともいう)が広く普及している(例えば、特許文献1参照)。
例えば、銀行等の現金自動預け払い機やカーナビゲータ等の電子機器においては、タッチパネル式ディスプレーが以前から普及しており、又携帯情報端末、電子辞書等の小型の電子機器でも盛んに使われるようになっている。
【0003】
一方、タッチパネルを用いて、必ずしもLCDやCRT等の表示装置が併設されていない入力装置を実現する提案も種々なされており、例えば、本出願人は、先に、表示装置としての機能が要求されないキーボード装置であって、かつ、タッチパネル式ディスプレーと同様に、最上面に位置する入力操作面が平坦面とされたキーボード装置を提案している(例えば、特許文献2参照)。
又、タッチパネルを用いた入力装置は、キーボード装置のような非常に多様な操作部を有するもののみならず、例えば、家電製品や住宅用機器等の操作部、携帯情報端末の操作部等にも、従来のキーキャップを備える形式の入力装置を置き換えるようにして、広く用いられている(例えば、特許文献3、4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−317041号公報
【特許文献2】特開2011−100259号公報
【特許文献3】特開2007−208682号公報
【特許文献4】特開2009−070717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、特許文献2記載のキーボード装置、特許文献3記載の家電製品ないし住宅用機器等の操作部、及び、特許文献4記載の携帯情報端末の操作部のような入力装置は、平坦な入力操作面を実現するにあたり、静電容量方式のタッチセンサを採用することで、高感度の入力検知を可能とするものであり、いずれも、入力操作面が平坦面とすることが可能であることから、清掃がし易くなって汚れが固着し難くなり、見栄えが向上する上に、清潔な状態を保つことができ、機能性と美観とを高度に兼ね備えたものとなる。
【0006】
又、入力操作面の内側(下層)には、後述の如く、透光性のタッチパネルと、所定の表示記号が印刷された表示フィルムと、この表示フィルムを照明する面発光層である面状照明装置との積層体が収納されている。そして、面状照明装置によって所定の表示記号を入力操作面に明確に浮き上らせ、機能性と美観とを更に向上させることを可能としている。
この面状照明装置は、一対の主面の一方を表示フィルムに対する光の出射面とする導光板と、該導光板の側面に隣接して配置される光源とを有しており、導光板には、光源からの出射光の入射を受け、該入射光を散乱させる光散乱パターンが、平面視で表示フィルムの表示記号の各々に対応する位置に形成されている。したがって、光散乱パターンによって偏向された入射光が、面状照明装置の出射面から出射し、表示フィルムに向けて照射されることで、所定の表示記号が照らし出されるものである。
【0007】
本発明は、上記の面状照明装置と、それを内蔵する表示装置、入力装置その他の電子機器において、面状照明装置の光源の消費電力の増大を来たすことなく、所定の表示記号の更なる視認性向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0009】
(1)複数の表示記号が形成された表示フィルムの裏面側に配置され、該表示フィルムに向けて光を照射する面状照明装置であって、
一対の主面の一方を前記表示フィルムに対する光の出射面とする導光板と、該導光板の側面に隣接して配置される光源とを有し、
前記導光板には、前記光源からの出射光の入射を受け、該入射光を散乱させる光散乱パターンが、少なくとも平面視で前記表示記号の各々に対応し、かつ、前記表示記号の、平面視での前後方向中心位置から、前記光散乱パターンの前方外縁部までの距離が、前記光散乱パターンの後方外縁部よりも、大きくなる位置に設けられている面状照明装置(請求項1)。
【0010】
本項に記載の面状照明装置は、一対の主面の一方を表示フィルムに対する光の出射面とする導光板と、導光板の側面に隣接して配置される光源とを有しており、導光板には、光源からの出射光の入射を受け、該入射光を散乱させる光散乱パターンが、少なくとも平面視で表示フィルムの表示記号の各々に対応する位置に形成されている。そして、光源から導光板に入射した入射光は、光散乱パターンによって偏向されて、面状照明装置の出射面から出射し、表示フィルムの裏面に向けて照射されることで、所定の表示記号が、表示フィルムの表面から視認されるよう照らし出されるものである。
【0011】
しかも、面状照明装置が、複数の表示記号が形成された表示フィルムの裏面側に配置された状態で、光散乱パターンの各位置に対応する、表示フィルムの各表示記号の、平面視での前後方向中心位置から、光散乱パターンの前方外縁部までの距離が、光散乱パターンの後方外縁部までの距離よりも、大きくなる位置に設けられている。この構成により、表示フィルムの各表示記号は、平面視での前後方向中心位置から、光散乱パターン前縁部側へと広範囲に渡って照らされることとなる。そして、面状照明装置によって、表示フィルムの各表示記号と、ユーザーの視線(視点)との関係を考慮した配光がなされることとなる。
すなわち、表示記号の平面視での前後方向中心位置における法線方向に対し、後方から表示記号を視認するような使用状態において、表示記号を介した視点(視線)の先に広がる、表示記号の前方側の領域についても、光散乱パターンによる導光板からの出射光によって照らし出されることで、表示記号の前方が照射範囲から外れることなく表示記号の全体が照らし出され、文字欠けを防止するものとなる。このように、必要な範囲に必要な配光を行うことで、不必要な配光に消費される入射光の量を減らすことともなる。
【0012】
(2)上記(1)項において、前記導光板に形成された複数の光散乱パターンが、複数のドットを配置して構成されている部分が含まれる面状照明装置(請求項2)。
本項に記載の面状照明装置は、導光板に形成された複数の光散乱パターンに含まれる、複数のドットを配置して構成されている部分の、ドット配置を適宜調整することにより、表示フィルムの各表示記号の必要な範囲に、必要な配光を行うものである。
【0013】
(3)上記(2)項において、前記複数のドットが、平面視で格子状に配列されている面状照明装置(請求項3)。
本項に記載の面状照明装置は、平面視で格子状に配列された複数のドットの、行数又は列数を適宜調整することにより、表示フィルムの各表示記号の必要な範囲に、必要な配光を行うものである。
【0014】
(4)上記(2)(3)項において、前記導光板に形成された光散乱パターンの各々に、少なくとも平面視で前記表示記号の直下の範囲に配置された第1密度のパターン配置部と、該第1密度のパターン配置部を取囲むように配置され、前記第1密度よりもドット密度の小さい第2密度のパターン配置部とが含まれる面状照明装置(請求項4)。
【0015】
本項に記載の面状照明装置は、導光板に形成された光散乱パターンの各々に含まれる、少なくとも平面視で表示記号の直下の範囲に配置された第1密度のパターン配置部により、表示フィルムの各表示記号の最低限必要な範囲に、必要な配光を行うものである。又、第1密度のパターン配置部を取囲むように配置され、第1密度よりも密度の小さい第2密度のパターン配置部によって、第1密度のパターン配置部により照らされる範囲を縁取るようにして配光がなされることとなる。そして、面状照明装置と、表示フィルムの各表示記号と、ユーザーの視線との関係の如何に関わらず、表示記号の全体が、面状照明装置によって照らし出され、文字欠けを防止するものとなる。しかも、第1密度のパターン配置部では、導光板への入射光の消費比率を高くしつつ、第1密度よりも密度の小さい第2密度のパターン配置部における入射光の消費比率を低く抑えることで、入射光の無駄な消費量を減らすことともなる。又、導光板の入光端部から対向端部までの輝度の均一性を向上させることにもなる。
【0016】
(5)上記(1)から(4)項において、前記導光板に形成された複数の光散乱パターンに、平面視で矩形状のパターン配置部が含まれる面状照明装置(請求項5)。
本項に記載の面状照明装置は、導光板に形成された複数の光散乱パターンに含まれる、平面視で矩形状のパターン配置部の、設置範囲を適宜調整することにより、表示フィルムの各表示記号の必要な範囲に、必要な配光を行うものである。
【0017】
(6)上記(5)項において、前記平面視で矩形状のパターン配置部が、前記平面視で前記表示記号の各々に対応する位置の直下に配置されている面状照明装置(請求項6)。
本項に記載の面状照明装置は、平面視で前記表示記号の各々に対応する位置の直下に配置されている、平面視で矩形状のパターン配置部により、表示フィルムの各表示記号の最低限必要な範囲に、必要な配光を行うものである。
【0018】
(7)上記(1)から(6)のいずれか1項記載の面状照明装置と、複数の表示記号が形成された表示フィルムとが含まれる表示装置(請求項7)。
本項に記載の表示装置は、上記(1)から(6)のいずれか1項記載の面状照明装置と、複数の表示記号が形成された表示フィルムとを具備する表示装置において、上記各項に対応する作用を奏するものとなる。
【0019】
(8)上記(1)から(6)のいずれか1項記載の面状照明装置と、複数の表示記号が形成された表示フィルムと、タッチパネルとが含まれる入力装置(請求項8)。
本項に記載の入力装置は、上記(1)から(6)のいずれか1項記載の面状照明装置と、複数の表示記号が形成された表示フィルムと、タッチパネルとを具備する入力装置において、上記各項に対応する作用を奏するものとなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明はこのように構成したので、面状照明装置と、それを内蔵する表示装置、入力装置その他の電子機器において、面状照明装置の光源の消費電力の増大を来たすことなく、所定の表示記号の更なる視認性向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係る面状照明装置の構成要素を示す模式図であり、(a)は導光板の平面図、(b)は、複数の表示記号が形成された表示フィルムの平面図である。
【図2】図1に示される導光板と表示フィルムとを重ね合わせた状態における、表示フィルムの表示記号と、導光板の光散乱パターンとの位置関係を示す平面図であり、(a)は本発明の実施の形態に係り、(b)は比較例に係るものである。
【図3】面状照明装置の表示フィルムの表示記号と、ユーザーの視線との関係についての説明図である。
【図4】図3に示される、面状照明装置の表示フィルムの表示記号と、ユーザーの視線との関係において、文字欠けが生じる様子を示す説明図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る面状照明装置の導光板と、表示フィルムとの具体的位置関係を例示する断面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る面状照明装置を具備する、キーボード装置を示すものであり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側側面図である。
【図7】図6(a)のA−A’断面拡大図である。
【図8】図7の断面構造を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。以下の説明において、従来技術と同一部分若しくは相当する部分については、同一符号で示し、詳しい説明を省略する。又、以下の説明における「上」、「下」の方向は、本説明における面状照明装置、入力装置を平置きした状態での、上下方向を意味する。
【0023】
図6〜図8に示される入力装置は、パソコン用キーボード装置であって、平面視が横長の長方形で縦断面がほぼ逆台形の浅い角皿状の下ケース1を備える。下ケース1は、合成樹脂成型、例えばABS樹脂成型によって作製され、底面に脚部1aを備えている。この下ケース1内には、操作者が指先をタッチすることによって入力操作を行う、キーボード装置の主要部が収納されている。
すなわち、図7及び図8に示されるように下ケース1内には、透光性のタッチパネル2と、任意の表示記号3a(図6参照)が印刷された表示フィルム3と、この表示フィルム3を照明する面発光層である面状照明装置4との積層体5が収納されている。この場合、タッチパネル2は表示フィルム3の表面側、図示例では上面に配置され、面状照明装置4は表示フィルム3の裏面側、図示例では下面に配置されている。なお、図1(b)には、一部の表示記号3aが図6(a)とは異なるものではあるが、表示フィルム3の単体平面図を示している。
【0024】
又、タッチパネル2の上面側、本実施形態ではタッチパネル2上面には、透光性を有するカバーパネル7が積層配置されている。このカバーパネル7は、下ケース1の上面開口を蓋するように、この下ケース1の内側壁上端部に填め込み固定されていて、装置最上部に位置する。つまり、カバーパネル7の上面は入力操作面6をなすもので、凹凸のない平坦面とされている。
カバーパネル7は、ハーフミラー若しくはスモークパネル、又は透光性のプレートやシート等(透光性パネルと総称する。)とハーフミラーとを積層してなる。本実施形態では、透光性パネル8とハーフミラー9とを積層してなり、ハーフミラー9をタッチパネル2側に向けて配置している。ここで、透光性パネル8は透明アクリル板又は透明ポリカーボネート板からなり、ハーフミラー9は、例えば膜状やフィルム状のハーフミラーからなり、透光性パネル8に被着してカバーパネル7を構成するものである。
【0025】
更に、カバーパネル7、静電容量方式のタッチパネル2、表示フィルム3及び面状照明装置4の構成部分の下方には、本キーボード装置を駆動する回路、すなわちタッチパネル駆動回路、バックライトデバイス点消灯回路(図示せず)を搭載した基板(回路基板)12及びバッテリ(タッチパネル駆動回路及び面状照明装置4の作動用バッテリ)13が配置されている。なお図8において、バッテリ13は図示省略されている。
上記のようにカバーパネル7及びタッチパネル2は透光性を有するので、装置最上面(入力操作面6)において、タッチパネル2下面の表示フィルム3に印刷された表示記号3aを透視可能である。又、カバーパネル7が透光性パネル8とハーフミラー9とで構成されている場合は、面状照明装置4の点灯時には表示フィルム3に印刷された表示記号3aを装置最上面をなす入力操作面6から明瞭に透視できる。なお、面状照明装置4の消灯時には入力操作面6をなす装置最上面は鏡面状態になり、鏡としての効果が発揮される。
【0026】
ところで、面状照明装置4は、一対の主面の一方を表示フィルム3に対する光の出射面とする導光板20(図1(a)参照)と、導光板20の側面に隣接して配置される光源(図示省略)とを有している。又、導光板20には、図7、図8の如く、面状照明装置4が表示フィルム3の裏面側に配置され、組み上げられた状態で、光源からの出射光の入射を受け、入射光を散乱させる光散乱パターン22が、平面視で表示フィルム3の表示記号3aの各々に対応する位置に配置されている。
【0027】
より具体的には、図2(a)に例示されるような構成を有している。まず、図2(a)に例示される表示記号3a(「clear」)の平面視直下には、光散乱パターン22を構成するドット24を、縦方向に5行かつ横方向に11列で整列配置してなる、矩形状のパターン配置部26(以下、「記号対向部」ともいう。)が設けられている。
又、平面視で記号対向部26の周辺部28、具体的には、記号対向部26の前方(図2(a)の上側、使用者の視点がある側とは反対側。)に3行15列、記号対向部26の後方(図2(a)の下側、使用者の視点がある側。)に1行15列、記号対向部26の左右に夫々5行2列の矩形状のパターン配置で、ドット24が設けられている。この、記号対向部26の周辺部28を「記号周辺部」ともいう。
【0028】
さて、図2(a)に例示される記号周辺部28において、3行のドット24からなる前方部分の方が、1行のドット24からなる後方部分よりも、2行ほど多くのドット24が設けられている。この構成を換言すれば、平面視して、表示記号3aよりも光散乱パターン22の方が一回り大きくなっている。又、記号対向部26と記号周辺部28とからなる光散乱パターン22の前後方向の中心位置C22が、表示記号3aの前後方向の中心位置(文字中央)C3aよりも1行ほど前方に位置することとなる(なお、文字中央C3aとして、表示記号3aが複数の文字等からなる場合には、最も前方に位置する部分を通る平行線と、最も後方に位置する部分を通る平行線との間を2分する中心線を採用する。)。
更に換言すれば、導光板20に形成された光散乱パターン22は、各表示記号3aの、平面視での前後方向中心位置C3aから、光散乱パターン22の前方外縁部までの距離が、光散乱パターン22の後方外縁部よりも、大きくなる位置に設けられているものである。
【0029】
なお、図示は省略するが、図2(a)の応用例として、導光板22に形成された光散乱パターンの各々に、少なくとも平面視で表示記号3aの直下の範囲、すなわち、記号対向部26に配置されたドット24を、密度の高いドットパターン配置とした、第1密度のパターン配置部とする。併せて、第1密度のパターン配置部を取囲むように配置された、記号周辺部28のドット24を、記号対向部26よりも密度の小さいドットパターン配置とした、第2密度のパターン配置部としても良い。
【0030】
さて、上記構成をなす、本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能となる。
すなわち、本発明の実施の形態に係る、パソコン用キーボード装置に採用された面状照明装置4は、一対の主面の一方を表示フィルムに対する光の出射面とする導光板20と、導光板20の側面に隣接して配置される光源とを有しており、導光板20には、光源からの出射光の入射を受け、該入射光を散乱させる光散乱パターン22が、少なくとも平面視で表示フィルム3の表示記号3aの各々に対応する位置に形成されている。そして、光源から導光板20に入射した入射光は、光散乱パターン22によって偏向されて、面状照明装置4の出射面から出射し、表示フィルム3の裏面に向けて照射されることで、所定の表示記号3aが、表示フィルム3の表面から視認されるよう照らし出されるものである。
【0031】
しかも、面状照明装置4が、複数の表示記号3aが形成された表示フィルム3の裏面側に配置された状態で、図2(a)に示されるように、光散乱パターン22の各位置に対応する、表示フィルム3の各表示記号3aの、平面視での前後方向中心位置C3aから、光散乱パターン22の前方外縁部までの距離Yfが、光散乱パターンの後方外縁部までの距離Yrよりも、大きくなる位置に設けられている。この構成により、表示フィルム3の各表示記号3aは、平面視での前後方向中心位置C3aから、光散乱パターン前縁部側へと広範囲に渡って照らされることとなる。そして、表示フィルム3の各表示記号3aと、ユーザーの視線との関係を考慮した配光が、面状照明装置4によってなされることとなる。
【0032】
すなわち、図3に示されるように、表示記号3aの平面視での前後方向中心位置(図2(a)の符号C3a)における法線N方向に対し、ユーザーの視線VPが後方Rから表示記号3aを視認するような使用状態において、表示記号3aを介した視点(視線)の先に広がる、表示記号3aの前方F側の領域についても、光散乱パターン22による導光板20からの出射光によって照らし出されることで、表示記号3aの前方が照射範囲から外れることなく表示記号3aの全体が照らし出され、いわゆる文字欠けを防止するものとなる。
このように、必要な範囲に必要な配光を行うことで、不必要な配光に消費される入射光の量を減らし、面状照明装置4の光源の消費電力の増大を来たすことなく、所定の表示記号3aの更なる視認性向上を図ることが可能となる。
【0033】
一方、図2(b)に示される比較例のように、光散乱パターン22’の各位置に対応する、表示フィルム3の各表示記号3aの、平面視での前後方向中心位置C3aと、光散乱パターン22’の前後方向の中心位置C22とが一致し、光散乱パターン22’の前方外縁部まで距離Yfと、光散乱パターンの後方外縁部までの距離Yrとが同一距離である場合を検討する。
【0034】
この場合において、表示記号3aの平面視での前後方向中心位置法線N方向と、ユーザーの視線VPとが一致するケースでは、図4(a)に示されるように、光散乱パターン22’による導光板20からの出射光によって照らし出されることで、表示記号3aの全体が照らし出されることとなる。しかしながら、図3のケースのごとく、表示記号3aの平面視での前後方向中心位置における法線N方向に対し、ユーザーの視線VPが後方Rから表示記号3aを視認するような使用状態においては、図4(b)のごとく、光散乱パターン22’による導光板20からの出射光によって照らし出される範囲は、表示フィルム3の各表示記号3aの後方寄りへと偏ってしまうこととなる。
又、ユーザーの視線VPが更に後方Rから表示記号3aを視認するようなケースでは、図4(c)のごとく、表示記号3aに対する、光散乱パターン22’による導光板20からの出射光によって照らし出される範囲は、より後方へと偏り、表示記号3aの前方が照射範囲から外れて、文字欠け3a’を生じることとなる。更に、導光板4の作成工程等において、光散乱パターン22’の各位置に対応する、表示フィルム3の各表示記号3aの位置にズレが生じ、しかも、そのズレが上記の偏りを助長するものである場合には、図4(d)(e)に示されるように、文字欠け3a’がより顕著となってしまうこととなる。
【0035】
なお、上述の作用効果については、例えば、図1、図3に示されるように、表示フィルム3の裏面側に黒印刷を施すことにより表示記号3aが形成され、導光板20は、その裏面側にドット24(図2)の白印刷を施すことにより光散乱パターン22が形成されているような場合に、より顕著となる。すなわち、図5に具体的数値例と共に示されるように、光散乱パターン22と表示記号3aとの間には、導光板22の厚さ(図示の例では、0.65mm)に導光板22と表示フィルム3の間隙(図示の例では、0.5mm)を足した寸法の間隔(図示の例では、1.15mm)が、法線方向に生じることとなる。この、法線方向の間隔が大きいほど、ユーザーの視線方向に起因する光散乱パターン22と表示記号3aとのズレが大きくなることから、本発明の作用効果が有効に発揮されることになる。
【0036】
又、本発明の実施の形態に係る面状照明装置は、導光板20に形成された複数の光散乱パターン22に含まれる、複数のドット24を配置して構成されている部分の、ドット配置を適宜調整することにより、表示フィルム3の各表示記号3aの必要な範囲に、必要な配光を行うことが可能となる。
しかも、平面視で格子状に配列された複数のドット24の、行数又は列数を適宜調整することにより、表示フィルム3の各表示記号3aの必要な範囲に、必要な配光を行うことが可能となる。
【0037】
又、導光板20に形成された光散乱パターン22の各々に、少なくとも平面視で表示記号3aの直下の範囲に配置されたパターン配置部である記号対向部26を、密度の高い第1密度とし、第1密度よりも密度の小さい第2密度のパターン配置部を、第1密度のパターン配置部である、記号対向部26を取囲むように配置することとしても良い。
この場合には、導光板20に形成された光散乱パターン22の各々に含まれる、少なくとも平面視で表示記号の直下の範囲に配置された第1密度の記号対向部26により、表示フィルム3の各表示記号3aの最低限必要な範囲に、必要な配光を行うことが可能となる。又、第1密度の記号対向部26を取囲むように配置された、第1密度よりも密度の小さい第2密度のパターン配置部である記号周辺部28によって、記号対向部26により照らされる範囲を縁取るようにして、表示フィルム3の各表示記号3aに配光がなされることとなる。そして、面状照明装置4と、表示フィルム3の各表示記号3aと、ユーザーの視線VPとの関係の如何に関わらず、表示記号3aの全体が、面状照明装置4により照らし出され、文字欠けを防止するものとなる。しかも、第1密度のパターン配置部では、導光板20へ入射する入射光の消費比率を高くしつつ、第1密度よりも密度の小さい第2密度のパターン配置部における入射光の消費比率を低く抑え、入射光の無駄な消費量を減らすことも可能となる。又、導光板20の入光端部から対向端部までの輝度の均一性を向上させることも可能となる。
【0038】
又、導光板に形成された複数の光散乱パターン22に含まれる、平面視で矩形状のパターン配置部26の、設置範囲を適宜調整することにより、表示フィルム3の各表示記号3aの必要な範囲に、必要な配光を行うことができる。
しかも、平面視で表示記号3aの各々に対応する位置の直下に配置されている、平面視で矩形状のパターン配置部(記号対向部)26により、表示フィルム3の各表示記号3aの最低限必要な範囲に、必要な配光を行うことが可能となる。
【0039】
従って、上述した面状照明装置4と、複数の表示記号3aが形成された表示フィルム3とが含まれる表示装置を構成することとすれば、その表示装置は、上記に対応する作用効果を奏するものとなる。
更に、上述した面状照明装置4と、複数の表示記号3aが形成された表示フィルム3と、タッチパネル2とが含まれる入力装置を構成することで、図6に例示されるパソコン用キーボード装置等を一例とする入力装置において、上記作用効果を奏するものとなる。
【符号の説明】
【0040】
3:表示フィルム、3a:表示記号、4:面状照明装置、20:導光板、22:光散乱パターン、24:ドット、26:矩形状のパターン配置部(記号対向部)、28:記号周辺部、C3a:表示記号の前後方向の中心位置、C22:光散乱パターンの前後方向の中心位置、Yf:表示記号の、平面視での前後方向中心位置から、光散乱パターンの前方外縁部までの距離、Yr:表示記号の、平面視での前後方向中心位置から、光散乱パターンの後方外縁部までの距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の表示記号が形成された表示フィルムの裏面側に配置され、該表示フィルムに向けて光を照射する面状照明装置であって、
一対の主面の一方を前記表示フィルムに対する光の出射面とする導光板と、該導光板の側面に隣接して配置される光源とを有し、
前記導光板には、前記光源からの出射光の入射を受け、該入射光を散乱させる光散乱パターンが、少なくとも平面視で前記表示記号の各々に対応し、かつ、前記表示記号の、平面視での前後方向中心位置から、前記光散乱パターンの前方外縁部までの距離が、前記光散乱パターンの後方外縁部よりも、大きくなる位置に設けられていることを特徴とする面状照明装置。
【請求項2】
前記導光板に形成された複数の光散乱パターンが、複数のドットを配置して構成されている部分が含まれることを特徴とする請求項1記載の面状照明装置。
【請求項3】
前記複数のドットが、平面視で格子状に配列されていることを特徴とする請求項2記載の面状照明装置。
【請求項4】
前記導光板に形成された光散乱パターンの各々に、少なくとも平面視で前記表示記号の直下の範囲に配置された第1密度のパターン配置部と、該第1密度のパターン配置部を取囲むように配置され、前記第1密度よりもドット密度の小さい第2密度のパターン配置部とが含まれることを特徴とする請求項2又は3記載の面状照明装置。
【請求項5】
前記導光板に形成された複数の光散乱パターンに、平面視で矩形状のパターン配置部が含まれることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の面状照明装置。
【請求項6】
前記平面視で矩形状のパターン配置部が、前記平面視で前記表示記号の各々に対応する位置の直下に配置されていることを特徴とする請求項5記載の面状照明装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項記載の面状照明装置と、複数の表示記号が形成された表示フィルムとが含まれることを特徴とする表示装置。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか1項記載の面状照明装置と、複数の表示記号が形成された表示フィルムと、タッチパネルとが含まれることを特徴とする入力装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【公開番号】特開2013−69041(P2013−69041A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205976(P2011−205976)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】