説明

面状発熱体の製造方法

【課題】製造工程で容易に電気抵抗値を調整することができる面状発熱体の製造方法を提供する。
【解決手段】金属箔材から任意の幅に切断した帯状金属箔材を組み合わせて電気回路を形成するとともに、これらを絶縁樹脂フィルム材で絶縁被覆させた面状発熱体を製造するに当たって、予め抵抗値を測定して帯状金属箔材を用いて、所定の抵抗値に調整するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅の床暖房、暖房機器、フロアーマット等の用途に利用できる金属箔材を用いた面状発熱体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
床暖房用等のように広い面積を暖房する発熱体として、金属箔材を発熱材として用いた面状発熱体が広く用いられている。
【0003】
この種の面状発熱体としては、面状の薄箔材に任意の電気回路をエッチング処理し、これらを絶縁樹脂フィルム材で被覆絶縁させて製造されたり、金属箔材から任意の幅(具体的には、例えば10mm、5mm、3mm等)に切断した帯状金属箔材を組み合わせて電気回路を形成し、絶縁樹脂フィルム材で被覆絶縁させて製造されている。
【0004】
面状発熱体は、適当な電気抵抗値を有する金属箔材(具体的には、例えばSUS304、アルミ等)を材料として製造されるが、製造後の面状発熱体の電気抵抗値は設定された基準値に対してバラツキが生じることがある。電気抵抗値のバラツキ範囲が基準値に対して許容範囲内であれば、全て使用することが可能であるが、その許容範囲が狭いものでは、使用できないものが多数発生することになる。
【0005】
従来、面状発熱体のバラツキを減らし、電気抵抗値を基準値に近づける方法として、面状発熱体を製造した後に電気抵抗値の調整を行なっていた(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平5−181376号公報
【特許文献2】特開平5−181545号公報
【特許文献3】特開平8−138833号公報
【特許文献4】特開2001−313154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、従来は面状発熱体を製造した後に電気抵抗値の調整を行なっており、各面状発熱体に対して、個別に調整が必要なため、工数の増加を招いて生産効率の向上が図れないという問題がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、製造工程で容易に電気抵抗値を調整することができる面状発熱体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記した面状発熱体に関する課題を解決するべく鋭意検討した結果、金属箔材の電気抵抗値の精度は、製造時の幅方向よりも流れ方向に対する電気抵抗値のバラツキが小さいことを見いだし、本発明に至った。
【0010】
即ち、本発明は、複数の帯状金属箔材をそれぞれ供給手段から供給して長手方向に沿って並列的に配列し、この配列した各帯状金属箔材上を横断するように、接続用金属箔材を2本1組として一定間隔で並列的に配列して後に、各帯状金属箔材と各接続用金属箔材との交差部において帯状金属箔材と接続用金属箔材とを電気的に接続し、これらの帯状金属箔材及び接続用金属箔材を上下方向から絶縁樹脂フィルム材で挟んだ状態で被覆して長尺状の被覆体とし、この被覆体に対し、前記各帯状金属箔材間であって1つ置きの部位に位置する前記接続用金属箔材を除去するとともに、各組の接続用金属箔材間で切断することにより、前記各帯状金属箔材を蛇行状に接続して一連の電気回路を形成する面状発熱体を得る面状発熱体の製造方法において、予め抵抗値を測定した帯状金属箔材を用いて、所定の電気抵抗値に調整することを特徴とする面状発熱体の製造方法を提供するものである。
【0011】
また、本発明の面状発熱体の製造方法は、複数の帯状金属箔材のうちの一部を、予め抵抗値を測定した帯状金属箔材に入れ替えて、所定の電気抵抗値に調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、予め抵抗値を測定した帯状金属箔材を用いて、所定の電気抵抗値に調整するから、製造工程で電気抵抗値の調整を行なうことができ、従来の如く製造後の各面状発熱体に対して個別に調整する必要がなくなり、生産効率の向上が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の面状発熱体の製造方法を図面に基いて説明する。尚、本発明の面状発熱体の製造方法を説明する前に本発明に係る面状発熱体1及びその製造に使用する装置10について説明する。
【0014】
面状発熱体1は、図1に示すように、例えばSUS304、アルミ等からなる複数本(具体的には、20本)の帯状金属箔材2を長手方向に沿って並列的に配列し、この配列した各帯状金属箔材2を、この帯状金属箔材2と同質(例えばSUS304、アルミ等)の接続用金属箔材3で蛇行状に接続して一連の電気回路を形成するとともに、各帯状金属箔材2及び接続用金属箔材3を絶縁樹脂フィルム材4及び5で上下方向から挟んだ状態で被覆させた構成を有している。
【0015】
製造装置10は、図2に示すように、複数本(具体的には、20本)の帯状金属箔材2を所定の間隔を保ちながら並列的に配列して供給する帯状金属箔材供給手段11と、配列した各帯状金属箔材2上に横断するように、接続用金属箔材3を2本1組として一定間隔で並列的に配列して後に、各帯状金属箔材2と各接続用金属箔材3との交差部を溶着する溶着手段12と、下側の絶縁樹脂フィルム材4を供給する下側絶縁樹脂フィルム材ロール13と、上側の絶縁樹脂フィルム材5を供給する上側絶縁樹脂フィルム材ロール14と、交差部を溶着した各帯状金属箔材2と各接続用金属箔材3とを上下方向から挟んだ状態で下側絶縁樹脂フィルム材4と上側絶縁樹脂フィルム材5とを張り合わせるラミネーター15とから構成されている。
【0016】
帯状金属箔材供給手段11は、上側供給部11aと下側供給部11bが対となって配設されており、上側供給部11a及び下側供給部11bはそれぞれ帯状金属箔材2を個別に巻回する単位スプール16を同心軸17a及び17b上に複数列(具体的には10列)ずつ配列させたもので、上側供給部11aと下側供給部11bの同心軸17a,17bは平行に配置されているとともに、上側供給部11aと下側供給部11bの単位スプール16同士はそれぞれその軸方向に千鳥状に配設されている。
【0017】
溶着手段12は、レーザー溶接機を使用し、各帯状金属箔材2と各接続用金属箔材3との交差部に対してレーザー光線を照射し、各帯状金属箔材2と各接続用金属箔材3との交差部を溶着する。
【0018】
ラミネーター15は、加熱手段であるヒーター(図示せず)と、圧着手段であるローラー(図示せず)とによって下側絶縁樹脂フィルム材4と上側絶縁樹脂フィルム材5とを張り合わせて各帯状金属箔材2と各接続用金属箔材3とを絶縁被覆する。
【0019】
この製造装置10では、帯状金属箔材供給手段11から20本の帯状金属箔材2が順次供給され、上下の供給部11a,11bから別々に供給されてきた20本の帯状金属箔材2が、ガイドローラー18の位置で、上側の供給部11aから供給された10本の帯状金属箔材2の隣接するもの同士の間に、下側の供給部11bから供給された10本の帯状金属箔材2のそれぞれが重なることなく挿入されて平面状に20列に配列され、この20列の形で下流側に供給される。次に、ガイドローラー18の下流で20列に配列された各帯状金属箔材2上に横断するように、2本1組の接続用金属箔材3が一定間隔で並列的に配列され、その各帯状金属箔材2と各接続用金属箔材3との交差部が溶着手段12で溶着される。次いで、溶着手段12の下流で交差部を溶着した各帯状金属箔材2と各接続用金属箔材3とが下側絶縁樹脂フィルム材ロール13から供給されてきた下側絶縁樹脂フィルム材4の上面に接着(或いは軽く仮止め)された後、上側絶縁樹脂フィルム材ロール14から供給されてきた上側絶縁樹脂フィルム材5が交差部を溶着した各帯状金属箔材2と各接続用金属箔材3との上面に挟持するように重ねられ、ラミネーター15で下側絶縁樹脂フィルム材4と上側絶縁樹脂フィルム材5とを張り合わせて交差部を溶着した各帯状金属箔材2及び各接続用金属箔材3を上下方向から挟んだ状態で被覆して長尺状の被覆体とする。この後、被覆体に対し、各帯状金属箔材2間であって1つ置きの部位に位置する接続用金属箔材3をプレス加工で除去するとともに、各組の接続用金属箔材3間を切断することにより、各帯状金属箔材2を蛇行状に接続して電気回路を形成する面状発熱体1を製造する。
【0020】
次に、上記製造装置10を使用して面状発熱体1を製造する場合において、本発明の面状発熱体の製造方法について説明する。
【0021】
先ず、設計仕様に基づく抵抗値と相違する抵抗値を有する調整用帯状金属箔材を予め用意する。この調整用帯状金属箔材は、抵抗値の相違するもの(具体的には、設計仕様に基づく抵抗値に対して±5%、±10%、±15%等の抵抗値のもの)をそれぞれ複数ずつ用意する。
【0022】
次いで、複数の帯状金属箔材2を製造装置10の帯状金属箔材供給手段11に配列する前に、各帯状金属箔材2の抵抗値をそれぞれ測定し、測定された抵抗値の平均値(平均抵抗値)と設計仕様に基づく抵抗値との誤差割合を求め、その誤差割合が許容範囲(具体的には、設計仕様に基づく抵抗値に対して±5%)を逸脱している場合には、設計仕様に基づく抵抗値になるように、複数の帯状金属箔材2のうちの一部を、予め用意した上記調整用帯状金属箔材に入れ替える。因みに、誤差割合がマイナスの場合は、抵抗値の高い調整用帯状金属箔材に入れ替え、誤差割合がプラスの場合は、抵抗値の低い調整用帯状金属箔材に入れ替える。ここで、面状発熱体1では、周辺部分はその内側部分に比べて熱が不足する傾向にあるため、抵抗値の高い調整用帯状金属箔材に入れ替える場合は、抵抗値の高い調整用帯状金属箔材を周辺部分に配置し、また、抵抗値の低い調整用帯状金属箔材に入れ替える場合は、抵抗値の低い調整用帯状金属箔材を周辺部分を避けて等間隔に配置すれば、熱が平均化して好ましい。尚、調整用帯状金属箔材の抵抗値及び入れ替え本数は、誤差割合に応じて適宜設定される。
【0023】
このように複数の帯状金属箔材2のうちの一部を、調整用帯状金属箔材に入れ替えて設計仕様に基づく抵抗値に調整した後、この設計仕様に基づく抵抗値に調整された格帯状金属箔材2及び各調整用金属箔材を製造装置10の帯状金属箔材供給手段11に配列して上述したように面状発熱体1を製造する。
【0024】
本発明に係る製造方法によれば、複数の帯状金属箔材2を製造装置10の帯状金属箔材供給手段11に配列する前に、各帯状金属箔材2の抵抗値をそれぞれ測定し、その平均抵抗値が設計仕様に基づく抵抗値との誤差割合の許容範囲を逸脱している場合には、複数の帯状金属箔材2のうちの一部を、予め用意した設計仕様に基づく抵抗値と相違する抵抗値を有する調整用帯状金属箔材に入れ替えて所定の電気抵抗値に調整するようにしたから、安価で入手が容易な抵抗値にバラツキを有する帯状金属箔材2を用いて所定の電気抵抗値に調整された面状発熱体1を製造することができる。また、面状発熱体1の製造工程で面状発熱体1を所定の電気抵抗値に調整するようにしたから、面状発熱体1の製造を既存の製造装置10を改造することなく、しかも、電気抵抗値の調整を人手と多大な工数をかけることなく簡単に行うことができ、低コストで面状発熱体1を製造することができる。
【実施例】
【0025】
実施例の設計仕様を、全体抵抗値100Ω、帯状金属箔材の総本数:40本、帯状金属箔材の抵抗値の基準値(基準抵抗値):2.5Ω/本、発熱面状体のサイズ:600mm×900mmとする。
【0026】
[実施例1]
平均抵抗値(入手品抵抗値)が2.37Ω/本(−5%の誤差割合)の帯状金属箔材を使用することになった場合、全体抵抗値(未調整全体抵抗値)は2.37Ω×40本=94.8Ωとなる。この場合、40本の帯状金属箔材のうち32本の帯状金属箔材はそれをそのまま使用し、残り8本の帯状金属箔材を抵抗値(調整用抵抗値)が3Ωの調整用帯状金属箔材に入れ替えて全体抵抗値を調整する。平均抵抗値(入手品抵抗値)が2.37Ω/本の40本の帯状金属箔材のうちそのままそれを使用する本数(入手品本数)が32本、抵抗値が3Ωの調整用帯状金属箔材に入れ替える本数(調整本数)が8本の場合、全体抵抗値(合成抵抗値)が2.37Ω×32本+3Ω×8本=99.84Ωとなり、略設計仕様となる。尚、電気抵抗値は、一般的な電気抵抗値テスタを用いて測定した。電気抵抗値を測定するためのセンサーは、帯状金属箔材は先端から5cmの位置とその位置から10m離れた位置とに設置し、面状発熱体は両端部に設置して測定を行った。
【0027】
[実施例2]
平均抵抗値(入手品抵抗値)が2.25Ω/本(−10%の誤差割合)の帯状金属箔材を使用することになった場合、未調整全体抵抗値は2.25Ω×40本=90Ωとなる。この場合、40本の帯状金属箔材のうち28本の帯状金属箔材はそれをそのまま使用し、残り12本の帯状金属箔材を抵抗値が3Ωの調整用帯状金属箔材に入れ替えて全体抵抗値を調整する。平均抵抗値(入手品抵抗値)が2.25Ω/本の40本の帯状金属箔材のうち28本の帯状金属箔材をそのままそれを使用し、残り12本の帯状金属箔材を抵抗値が3Ωの調整用帯状金属箔材に入れ替えれば、全体抵抗値(合成抵抗値)が2.25Ω×28本+3Ω×12本=99Ωとなり、実施例1と同じように略設計仕様となる。
【0028】
上記実施例1及び実施例2により製造された面状発熱体のうち、ランダムに抜き取った5枚の電気抵抗値を測定し、平均を求めた。実施例1の面状発熱体の電気抵抗値は、99.84Ωであり、実施例2の面状発熱体の電気抵抗値は99.01Ωであった。
【0029】
【表1】

【0030】
表1は、上記実施例の設計仕様において、平均抵抗値と設計仕様に基づく抵抗値との誤差割合に応じた調整用帯状金属箔材の抵抗値(調整用抵抗値)及び入れ替え本数(調整本数)と、入れ替えして調整を行った場合の全体抵抗値(合成抵抗値)を示した表である。
【0031】
尚、上記した実施の形態では、複数の帯状金属箔材2の抵抗値をそれぞれ測定し、その平均抵抗値が設計仕様に基づく抵抗値との誤差割合の許容範囲を逸脱している場合に、複数の帯状金属箔材2のうちの一部を、予め抵抗値を測定した調整用帯状金属箔材に入れ替えて所定の電気抵抗値に調整するようにしているが、予め抵抗値を測定した帯状金属箔材2を多数用意し、この中から複数の帯状金属箔材を選択して所定の電気抵抗値に調整するようにしても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】面状発熱体を示す平面図である。
【図2】面状発熱体の製造装置を示す概略正面図である。
【符号の説明】
【0033】
1…面状発熱体、2…帯状金属箔材、3…接続用金属箔材、4…下側の絶縁樹脂フィルム材、5…上側の絶縁樹脂フィルム材、10…製造装置、11…帯状金属箔材供給手段、11a…上側供給部、11b…下側供給部、12…溶着手段、13…下側絶縁樹脂フィルム材ロール、14…上側絶縁樹脂フィルム材ロール、15…ラミネーター、16…単位スプール、17a,17b…同心軸、18…ガイドローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の帯状金属箔材をそれぞれ供給手段から供給して長手方向に沿って並列的に配列し、この配列した各帯状金属箔材上を横断するように、接続用金属箔材を2本1組として一定間隔で並列的に配列して後に、各帯状金属箔材と各接続用金属箔材との交差部において帯状金属箔材と接続用金属箔材とを電気的に接続し、これらの帯状金属箔材及び接続用金属箔材を上下方向から絶縁樹脂フィルム材で挟んだ状態で被覆して長尺状の被覆体とし、この被覆体に対し、前記各帯状金属箔材間であって1つ置きの部位に位置する前記接続用金属箔材を除去するとともに、各組の接続用金属箔材間で切断することにより、前記各帯状金属箔材を蛇行状に接続して一連の電気回路を形成する面状発熱体を得る面状発熱体の製造方法において、
予め抵抗値を測定した帯状金属箔材を用いて、所定の電気抵抗値に調整することを特徴とする面状発熱体の製造方法。
【請求項2】
複数の帯状金属箔材のうちの一部を、予め用意した別の抵抗値を有する調整用帯状金属箔材に入れ替えて所定の電気抵抗値に調整ことを特徴とする請求項1に記載の面状発熱体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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