説明

面状誘導発熱装置

【課題】金属線コイルの特定の巻き方とし、磁力線を均一に発生させ、金属面状発熱体を均一に加熱でき、工事費用も安く、消費電力も低い面状誘導発熱装置を提供する。
【解決手段】本発明の面状誘導発熱装置は、金属線(1)をコイル(20)に形成して面状に配置し、その上に面状発熱体を配置した面状誘導発熱装置であって、前記金属線(1)は、1回巻き又は複数回巻きコイルが複数個、面方向に配置されており、隣り合う金属線(1a,7a)の電流の向きは同一であり、隣り合うコイル間の磁束の方向(21,22)が互いに逆である。面状発熱体としては、金属プレート、金属箔を使用することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床暖房器、壁暖房器、浴室暖房器、融雪道路装置、融雪屋根装置、発酵装置などに有用な面状誘導発熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、老齢化が進み、フローリング等を加熱する床暖房装置の要望が高い。従来の床暖房機は、温水を循環させたり、電気抵抗式加熱装置が主に使用されている。温水の循環装置は、設置のための工事費用が高く、そのうえ内部に水垢が溜まってくるので2〜3年ごとに洗浄のメンテナンスが必要であり、維持管理費も高いという問題がある。電気抵抗式加熱装置は、現場施行の工事が多く工事費用が高く、そのうえ電力消費量が大きく電気代も高いという問題がある。また、下記特許文献1では誘導加熱方式を用いて浴室暖房することが提案されている。
【特許文献1】特開平9―88319号公報(図5、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前記特許文献1の誘導加熱方式は、金属線コイルが渦巻き型であるので、磁力線が均一に発生せず、均一加熱が困難であるという問題があった。
【0004】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、金属線コイルの巻き方を工夫し、磁力線を均一に発生させ、金属面状発熱体を均一に加熱でき、工事費用も安く、消費電力も低い面状誘導発熱装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の面状誘導発熱装置は、金属線をコイルに形成して面状に配置し、その上に面状発熱体を配置した面状誘導発熱装置であって、前記金属線は、1回巻き又は複数回巻きコイルが複数個、面方向に配置されており、隣り合う金属線の電流の向きは同一であり、隣り合うコイル間の磁束の方向が互いに逆であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、金属線コイルとして1回巻き又は複数回巻きループを複数個、面方向に配置し、隣り合う金属線の電流の向きを同一とし、隣り合うループ間の磁束の方向を互いに逆になるようにしたことにより、磁力線を均一に発生させ、上方に配置した面状発熱体を均一に加熱でき、工事費用も安く、消費電力も低い面状誘導発熱装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明において、隣り合う金属線の電流の向きを同一とし、隣り合うループ間の磁束の方向を互いに逆になるようにするには、例えば金属線コイルは、最初の列においては、開始点のループから端のループまで互い違いの半円を描いて行き、端のループで折り返して開始点のループまで残りの半円を描いてターンし、次に横の列に移動して、前の列とは反対方向に一端のループから他端のループまで互い違いの半円を描いて行き、端のループで折り返して一端のループまで残りの半円を描いてターンし、以後同様にループを形成させる。
【0008】
一例として、図1に示すように、最初の列においては、リード線1を、開始点のループ1aから端のループ6aまで互い違いの半円を描いて行き、端のループ6bで折り返して開始点のループ1bまで残りの半円を描いてターンさせる。次に横の列に移動して、前の列とは反対方向に互い違いの半円を描いて一端のループ7aから他端のループ12aまで行き、端のループ12bで折り返して一端のループ7bまで残りの半円を描いてターンし、以後同様にループを形成する。このようにすると、隣り合う金属線の電流の向きは同一となり、隣り合うループ間の磁束の方向は互いに逆になる。図1において矢印は電流の向きを示し、21は上向きの磁力、22は下向きの磁力を示す。
【0009】
なお金属線コイルを構成するリード線1は、通常の絶縁物で被覆された電線を使用できる。例えば12A以下の電流を流す場合は、断面積が2mm2のIV線(銅線)を使用できる。この金属線コイルは、1回巻きでもよいし、複数回巻いても良い。複数回巻きにした場合は、1回巻きに比べて同一面積でパワーを大きくしたい場合に有利である。巻き方としては、同じラインを2回通過させることで2回巻きができる。3回以上も同様にできる。
【0010】
本発明において、前記面状に配置された金属線コイルに対して、面状発熱体が複数枚面方向に配置されていることが好ましい。このようにすると、金属線コイルを例えば縦:90cm、横:90cmの面積とし、これを2枚横に並べ、その上のフローリング材は縦:30cm、横:180cmの規格化されたものを3枚横に並べて使用できる。面状発熱体としては、金属プレート、金属箔、炭素繊維シート等如何なるものでも使用できるが、コストの面からすると、金属プレート又は金属箔が好ましい。例えば、鉄板、トタン板、アルミニウム板、アルミニウム箔などを使用できる。
【0011】
前記面状に配置された金属線コイルに対して、面状発熱体が複数枚、絶縁層を介して垂直方向に積層されていることが好ましい。このようにすると、金属線コイルに近い面状発熱体は加熱板となり、金属線コイルから離れた面状発熱体は電磁シールドの作用及び均熱板の作用を発揮する。なお電磁シールドの作用及び均熱板の作用をする面状発熱体も鉄板、トタン板、アルミニウム板、アルミニウム箔などを使用できる。
【0012】
前記面状誘導発熱装置を床暖房器に応用した場合は、前記金属線コイルはフローリング材の下に配置され、前記金属面状発熱体はフローリング材の中に挟み込むことが好ましい。
【0013】
また、前記金属線は、フローリング材の下に設置された下地床材の溝の中に配線されてコイルを形成していることが好ましい。このようにすると、現場施行の際に、常に同一のコイルを形成できる。
【0014】
図2〜図3は一般住宅用の床暖房装置30の一例である。床下地材として、大引35と根太34と断熱材36を組み込み、その上に下地床材37に溝加工を施し、溝の中に図1に示す金属線コイル20を配線したものを置く。この配線は現場で施行しても良いし、予め工場で作成し絶縁シートに貼り付けておき、現場では広げるだけにしておいてもよい。次にフローリング材31を組み込む。フローリング材31には、図2に示すように金属面状発熱体32を挟んでおくか、又は図3に示すように金属面状発熱体32とその上の電磁シールド用と均熱用の金属板33又は金属箔を挟んでおく。
【0015】
図4〜図5は高層マンションなどのコンクリート床に直貼する床暖房装置40の一例である。コンクリート床41の上に断熱材42を置き、その上に金属線コイル20を配線した下地床材37を置く。その上に図1に示す金属線コイル20を配線する。図2〜図3と同様に次にフローリング材31を組み込む。
【0016】
図6は本実施形態の床暖房装置の電気回路図である。DC電源51とインバータ52とワークコイル53を接続する。ワークコイル53は、金属線コイル20に相当する。54はワークであり、金属面状発熱体32とその上の電磁シールド用と均熱用の金属板33又は金属箔に相当する。
【実施例】
【0017】
以下実施例、比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0018】
(実施例1)
断面積が2mm2のIV線を使用して、図1に示すコイルを作成した。1つのコイルの直径を14.2cmとし、縦6個、横6列、合計36個のコイルとした。コイルが存在する全体の面積は縦85cm、横85cmとした。このコイルは、溝加工した下地床材37の溝の中に置いた。下地床材の面積は縦90cm、横90cmとした。この大きさの下地床材を2つ横に並べた。この上に図2〜図3に示すようにフローリング材31を載せた。フローリング材31の1ユニットの大きさは、縦30.3cm(0.3cmは横同士のフローリング材の結合部分で重なる長さ。)、横180cmであり、これを3枚長方形となるように載せた。フローリング材の有効加熱面積は、縦90cm、横180cmであった。フローリング材31の厚さは12mmであり、この中に等間隔で厚み0.4mmのトタン板2枚を金属面状発熱体32とその上の電磁シールド用と均熱用の金属板33として貼り合わせたものを用いた。供給電力は150W〜200Wとし、25V、20〜30kHzの電力をインバータを介してコイルに供給した。温度調整用センサーは中央付近のコイルのほぼ真中に配置し、インバータの出力にフィードバックをかけて所定の温度(40℃)にコントロールした。全体の温度分布を測定するため、金属面状発熱体32の表面にアトランダムに10箇所温度センサーを配置し、温度測定した。その結果、40℃±5℃に収まっており、良好な均一加熱であることが確認できた。さらに、人体に接触するフローリング材表面の温度分布を測定するため、接触式センサー温度計にてフローリング表面の加熱有効面積内をアトランダムに30箇所測定した結果、温度分布は32℃±1℃に収まっており、良好な均一加熱であることが確認できた。
【0019】
また、工事現場において、電気配線及び結線工事が少なく工事費用は安く、消費電力も低いことが確認できた。なお、加熱面積を大きくする場合は、金属線コイル20を配線した下地床材37を90cm角毎に増加させることができる。
【0020】
(比較例1)
断面積が2mm2のIV線を使用して、図7に示す渦巻状のコイルを作成した。水平線に位置する金属線がジグザグになっているのは、フローリング材は上から釘を打ち付ける場合があるので、それを避けるためである。コイル以外は実施例1と同様とした。
【0021】
その結果、測定温度は40℃±25℃であり、温度むらが大きくて実用化は困難であると判断した。
【0022】
(比較例2)
断面積が2mm2のIV線を使用して、図8に示すコイルを作成した。各コイルは同一方向に巻いているので、1回半又は1回と3/4回巻きとし、1つのコイルは直径約9cmの大きさとした。コイル以外は実施例1と同様とした。
【0023】
その結果、測定温度は40℃±15℃であり、温度むらが大きくて実用化は困難であると判断した。
【0024】
以上の実施例では床暖房器について説明したが、本発明はこれに限られず、壁暖房器、浴室暖房器、融雪道路装置、融雪屋根装置、発酵装置などに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施例における金属線コイルの形状を示す平面図である。
【図2】本発明の一実施例における面状誘導発熱装置を示す斜視図である。
【図3】同、断面図である。
【図4】本発明の別の実施形態における面状誘導発熱装置を示す斜視図である。
【図5】同、断面図である。
【図6】本発明の一実施例における面状誘導発熱装置の電気回路図である。
【図7】比較例1における金属線コイルの形状を示す平面図である。
【図8】比較例2における金属線コイルの形状を示す平面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 金属リード線
1a〜12b,20 金属線コイル
21 上向きの磁力
22 下向きの磁力
30,40 床暖房装置
31 フローリング材
32 金属面状発熱体
33 電磁シールド用と均熱用の金属板
34 根太
35 大引
36,42 断熱材
37 下地床材
41 コンクリート床
51 DC電源
52 インバータ
53 ワークコイル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属線をコイルに形成して面状に配置し、その上に面状発熱体を配置した面状誘導発熱装置であって、
前記金属線は、1回巻き又は複数回巻きコイルが複数個、面方向に配置されており、隣り合う金属線の電流の向きは同一であり、隣り合うコイル間の磁束の方向が互いに逆であることを特徴とする面状誘導発熱装置。
【請求項2】
前記金属線コイルは、最初の列においては、開始点のループから端のループまで互い違いの半円を描いて行き、端のループで折り返して開始点のループまで残りの半円を描いてターンし、
次に横の列に移動して、前の列とは反対方向に一端のループから他端のループまで互い違いの半円を描いて行き、端のループで折り返して一端のループまで残りの半円を描いてターンし、
以後同様にループを形成する請求項1に記載の面状誘導発熱装置。
【請求項3】
前記面状に配置された金属線コイルに対して、面状発熱体が複数枚面方向に配置されている請求項1又は2に記載の面状誘導発熱装置。
【請求項4】
前記面状に配置された金属線コイルに対して、面状発熱体が複数枚、絶縁層を介して垂直方向に積層されている請求項1〜3のいずれかに記載の面状誘導発熱装置。
【請求項5】
前記面状誘導発熱装置は、床暖房器に組み込まれており、前記金属線コイルはフローリング材の下に配置され、前記面状発熱体はフローリング材の中に挟み込まれている請求項1〜4のいずれかに記載の面状誘導発熱装置。
【請求項6】
前記面状発熱体は、金属プレート又は金属箔である請求項1〜5のいずれかに記載の面状誘導発熱装置。
【請求項7】
前記金属線は、フローリング材の下に設置された下地床材の溝の中に配線されてコイルを形成している請求項1〜6のいずれかに記載の面状誘導発熱装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−4828(P2006−4828A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181411(P2004−181411)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(390004754)ハイデック株式会社 (4)
【Fターム(参考)】