説明

鞍乗り型車両用スイングアーム

【課題】車体フレームに揺動可能に支承されるピボット部と、後端部で後輪を軸支するようにしてピボット部から後方に延出される左右一対のアーム部と、それらのアーム部の前後方向中間部間に架設されるクロスメンバ部とを有する鞍乗り型車両用スイングアームにおいて、剛性を確保しつつ適度なしなりが得られるようにする。
【解決手段】クロスメンバ部37の両端部および両アーム部36L,36R間には、クロスメンバ部37の両端部の後面と、アーム部36L,36Rのうちクロスメンバ部37よりも後方の部分の内側面とに接合される左右一対の板状の補強パッチ40L,40Rが設けられ、それらの補強パッチ40L,40Rと、クロスメンバ部37の両端部およびアーム部36L,36Rとで上下に開放した空間41L,41Rがそれぞれ形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体フレームに揺動可能に支承されるピボット部と、後端部で後輪を軸支するようにして前記ピボット部から後方に延出される左右一対のアーム部と、それらのアーム部の前後方向中間部間に架設されるクロスメンバ部とを有する鞍乗り型車両用スイングアームに関する。
【背景技術】
【0002】
左右一対のアーム部と、それらのアーム部間に架設されるクロスメンバ部との接合部を補強するために、クロスメンバ部の両端部の前面および後面と、前記アーム部の内側面との間にそれぞれガセットプレートが設けられるようにしたスイングアームが、特許文献1で知られており、このようなスイングアームではスイングアームの剛性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第2592294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献1で開示された構成のスイングアームでは、その剛性が高くなり過ぎる場合ある。すなわちスイングアームにあっては、その前端部のピボット部付近では大きな剛性が必要であるが、剛性が高すぎると微振動がでる場合があり、また乗り心地の観点では後輪に近づくにつれて上下方向に適度にしなる方が良い場合があり、上記特許文献1で開示された構成のスイングアームでは、ガセットプレートによってアーム部の剛性が高くなり、ガセットの後端から後輪の車軸までの間でしかアーム部がしなることができず、スイングアームに適度なしなりを与え難くなる場合がある。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、剛性を確保しつつ適度なしなりが得られるようにした鞍乗り型車両用スイングアームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、車体フレームに揺動可能に支承されるピボット部と、後端部で後輪を軸支するようにして前記ピボット部から後方に延出される左右一対のアーム部と、それらのアーム部の前後方向中間部間に架設されるクロスメンバ部とを有する鞍乗り型車両用スイングアームにおいて、前記クロスメンバ部の両端部および前記両アーム部間には、前記クロスメンバ部の両端部の後面と、前記アーム部のうち前記クロスメンバ部よりも後方の部分の内側面とに接合される左右一対の板状の補強パッチが設けられ、それらの補強パッチと、前記クロスメンバ部の両端部および前記アーム部とで上下に開放した空間がそれぞれ形成されることを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は、第1の特徴の構成に加えて、前記補強パッチは、その中間部に曲がり部を有するように形成されることを第2の特徴とする。
【0008】
本発明は、第1または第2の特徴の構成に加えて、前記アーム部に、前記補強パッチの少なくとも一部および前記空間を上方から覆うカバー部材が取付けられることを第3の特徴とする。
【0009】
本発明は、第3の特徴の構成に加えて、前記後輪の回転を制動する後輪用ブレーキにブレーキ操作力を伝達する索状の伝達部材の中間部を保持する伝達部材保持部が、前記カバー部材に設けられることを第4の特徴とする。
【0010】
本発明は、第4の特徴の構成に加えて、前記カバー部材が、前記補強パッチおよび前記空間を上方から覆う覆い部と、該覆い部から車幅方向外側に延出されて前記アーム部の上面に当接する支持板部と、該支持板部からさらに車幅方向外側に延出される取付板部と、前記覆い部の前方および後方の少なくとも一方に配置される耳部と、前記支持板部および前記耳部間を結ぶとともに前記耳部を前記支持板部側に折り曲げることを可能としたヒンジ部と、前記耳部が前記支持板部側に折り曲げられた状態で前記取付け板部との共締めで前記アーム部に締結されるようにして前記耳部から延出される取付け片部とを一体に有して合成樹脂により形成され、前記支持板部との間に前記伝達部材を挟むように前記耳部が折り曲げられるととともに前記取付け片部が前記取付け板部との共締めで前記アーム部に締結された状態で前記耳部および前記支持板部の協働で前記伝達部材保持部が構成されることを第5の特徴とする。
【0011】
さらに本発明は、第1〜第5の特徴の構成のいずれかに加えて、前記補強パッチの上下幅が、前記アーム部の上下幅よりも小さく設定されることを第6の特徴とする。
【0012】
なお実施の形態のチェーンカバー43およびカバー部材44が本発明のカバー部材に対応し、実施の形態のブレーキホース49が本発明の伝達部材に対応し、実施の形態の後輪用ディスクブレーキBRが本発明の後輪用ブレーキに対応する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の特徴によれば、クロスメンバ部の両端部および両アーム部間に設けられるのは、クロスメンバ部の両端部の後面と、クロスメンバ部よりも後方のアーム部の内側面とに接合される左右一対の板状の補強パッチであり、クロスメンバ部およびアーム部の接合部の剛性を補強パッチによって確保することができ、補強パッチと、クロスメンバ部の両端部およびアーム部とで上下に開放した空間をそれぞれ形成するので、クロスメンバ部よりも後方でアーム部は上下方向に適度にしなることができる。
【0014】
また本発明の第2の特徴によれば、補強パッチの中間部に曲がり部が設けられているので、曲がり部をさらに曲げるようにアーム部から補強パッチ側に荷重が伝達されることになり、その結果、補強パッチおよびアーム部の接合部への応力集中を緩和することができる。
【0015】
本発明の第3の特徴によれば、補強パッチの少なくとも一部および空間を上方から覆うカバー部材がアーム部に取付けられるので、補強パッチおよび空間を外部から視認し難くして外観性を高めることができる。
【0016】
本発明の第4の特徴によれば、カバー部材に、索状の伝達部材の中間部を保持する伝達部材保持部が設けられるので、少なくともカバー部材付近では伝達部材を保持する専用の部材を不要として部品点数を低減することができる。
【0017】
本発明の第5の特徴によれば、カバー部材の一部である耳部を折り曲げてアーム部に締結することで伝達部材保持部を構成するようにして合成樹脂により形成されるので、スライド型を用いることなくカバー部材を型成形することができ、カバー部材の成形コスト低減に寄与することができる。
【0018】
さらに本発明の第6の特徴によれば、補強パッチの上下幅がアーム部の上下幅よりも小さいので、アーム部をよりしならせ易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】自動二輪車の側面図である。
【図2】後端部に後輪が軸支された状態のスイングアームを図1の2−2線矢視方向から見た図である。
【図3】スイングアームを図2と同一方向から見た図である。
【図4】図3の4矢視図である。
【図5】カバー部材の平面図である。
【図6】図5の6−6線断面図である。
【図7】図5の7−7線断面図である。
【図8】図2の8−8線拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態について添付の図1〜図8を参照しながら説明すると、先ず図1において、鞍乗り型車両である自動二輪車の車体フレームFは、前輪WFを軸支するフロントフォーク11を操向可能に支承するヘッドパイプ12と、該ヘッドパイプ12から側面視で後ろ下がりに延びる左右一対のメインフレーム13…と、それらのメインフレーム13…よりも急角度で後ろ下がりに傾斜して前記メインフレーム13…の前端部に連設される左右一対のダウンフレーム14…と、前記両メインフレーム13…の後端から下方に延びる左右一対のピボットプレート15…と、両ピボットプレート15…から後ろ上がりに延びる左右一対のシートフレーム16…とを備える。
【0021】
前記メインフレーム13…の下方には、当該メインフレーム13…、前記ダウンフレーム14…および前記ピボットプレート15…で支持されるようにしてエンジンユニットEUが配置され、エンジンユニットEUの上方に配置される収納ボックス18が前記両メインフレーム13…で支持され、前記収納ボックス18の後方かつ前記エンジンユニットEUの斜め上方には燃料タンク19が配置され、前記シートフレーム16…で支持される乗車用シート20が前記燃料タンク19を上方から覆うように配置される。
【0022】
前記ピボットプレート15…には、後輪WRを後端部で軸支するスイングアーム21の前端が支軸22を介して上下揺動可能に支承され、スイングアーム21および前記ピボットプレート15…間に設けられるリンク機構23と、前記ピボットプレート15…との間にはリヤクッションユニット24が設けられる。
【0023】
前記エンジンユニットEUが備えるクランクケース25内には変速機(図示せず)が収容されており、その変速機の出力軸26にクランクケース25の左側方で固定される駆動スプロケット27と、前記後輪WRにその左側方に配置されるようにして同軸に設けられる被動スプロケット28とには無端状のチェーン29が巻き掛けられる。
【0024】
また前記前輪WFの回転は、該前輪WFとともに回転するブレーキディスク31と、該ブレーキディスク31の外周を跨ぐようにして前記フロントフォーク11に支持されるキャリパ32とを備える前輪用ディスクブレーキBFで制動可能であり、前輪用ディスクブレーキBFは前輪WFの右側に配置される。前記後輪WRの回転は、該後輪WRとともに回転するブレーキディスク33と、該ブレーキディスク33の外周を跨ぐようにして前記フロントフォーク11に支持されるキャリパ34とを備える後輪用ディスクブレーキBRで制動可能であり、後輪用ディスクブレーキBRは後輪WRの右側に配置される。
【0025】
図2〜図4を併せて参照して、前記スイングアーム21は、車体フレームFのピボットプレート15…に支軸22を介して揺動可能に支承されるピボット部35と、後端部で後輪WRを軸支するようにして前記ピボット部35から後方に延出される左右一対のアーム部36L,36Rと、それらのアーム部36L,36Rの前後方向中間部間に架設されるクロスメンバ部37とを有するものである。
【0026】
前記ピボット部35は、前記支軸22(図1)を挿通せしめるようにして円筒状に形成される。また前記アーム部36L,36Rは、横断面矩形の筒状をなすように形成されるものであり、アーム部36L,36Rの前端部が前記ピボット部35の両端部に溶接される。而してアーム部36L,36Rの後端部には、前後方向に長い支持孔38…が設けられており、前記後輪WRの車軸39は、前記支持孔38…内での前後方向位置を調整可能として前記アーム部36L,36Rの後端部に軸支される。また前記クロスメンバ部37は、横断面矩形の筒状に形成されるものであり、その両端部が前記アーム部36L,36Rの前後方向中間部の内側面に溶接される。
【0027】
前記クロスメンバ部37の両端部および前記両アーム部36L,36R間には、前記クロスメンバ部37の両端部の後面と、前記アーム部36L,36Rのうち前記クロスメンバ部37よりも後方の部分の内側面とに接合される左右一対の板状の補強パッチ40L,40Rだけが設けられるものであり、それらの補強パッチ40L,40Rと、前記クロスメンバ部37の両端部および前記アーム部36L,36Rとで上下に開放した空間41L,41Rがそれぞれ形成される。
【0028】
前記補強パッチ40L,40Rは、その中間部に前方に向けて凸の曲がり部42…を有するように形成される。しかも前記補強パッチ40L,40Rの上下幅は、前記アーム部36L,36Rの上下幅よりも小さく設定されるものであり、図4で明示するように、側面視では補強パッチ40L,40Rの全てがアーム部36L,36Rと重なるように補強パッチ40L,40Rの上下幅が設定される。
【0029】
また前記アーム部36L,36Rには、前記補強パッチ40L,40Rの少なくとも一部および前記空間41L,41Rを上方から覆うチェーンカバー43およびカバー部材44が取付けられるものであり、左側のアーム部36Lには、カバー部材としても機能するチェーンカバー43が左側の補強パッチ40Lの一部および空間41Lの全体を上方から覆うように取付けられ、右側のアーム部36Rには、カバー部材44が右側の補強パッチ40Rおよび空間41Rの全体を上方から覆うように取付けられる。
【0030】
前記チェーンカバー43は、エンジンユニットEUからの動力を伝達するチェーン29のうち左側のアーム部36Lの上方を走行する部分の一部を覆うものであり、前記スイングアーム21における左側のアーム部36Lの上面の前後に間隔をあけた2カ所に取付けられるステー45,46と、前記スイングアーム21におけるクロスメンバ部37の上面に取付けられたステー47とで支持される。
【0031】
右側のアーム部36Rに取付けられるカバー部材44には、後輪用ブレーキにブレーキ操作力を伝達する索状の伝達部材の中間部を保持する伝達部材保持部48が設けられるものであり、この実施の形態では、後輪用ブレーキが後輪用ディスクブレーキBRであり、索状の伝達部材は、後輪用ディスクブレーキBRに作用せしめるブレーキ液圧を導くブレーキホース49である。
【0032】
図5〜図7において、前記カバー部材44は、右側の前記補強パッチ40Rおよび右側の前記空間41Rを上方から覆う覆い部44aと、該覆い部44aよりも前後に延びるようにしつつ前記覆い部44aから車幅方向外側に延出されて右側の前記アーム部36Rの上面に当接する支持板部44bと、該支持板部44bの前後両端部からさらに車幅方向外側に延出される前後一対の取付板部44c,44dと、前記覆い部44aの前方および後方の少なくとも一方(この実施の形態では両方)に配置される一対の耳部44e,44fと、前記支持板部44bの前後両端部および前記耳部44e,44f間を結ぶとともに前記耳部44e,44fを前記支持板部44bの前後両端部側に折り曲げることを可能としたヒンジ部44g,44hと、前記耳部44e,44fが前記支持板部44b側に折り曲げられた状態で前記取付け板部44c,44dとの共締めで右側の前記アーム部36Rに締結されるようにして前記耳部44e,44fから延出される一対の取付け片部44i,44jとを一体に有して合成樹脂により形成される。
【0033】
前記耳部44e,44fは、前記支持板部44bとの間に前記ブレーキホース49を挟むようにして円弧状の横断面形状を有するように形成されるものであり、前記支持板部44bとの間に前記ブレーキホース49を挟むように前記耳部44e,44fが折り曲げられるととともに前記取付け片部44i,44jが前記取付け板部44c,44dとの共締めで前記アーム部36Lに締結された状態で前記耳部44e,44fおよび前記支持板部44bの協働で前記伝達部材保持部48が構成される。
【0034】
図8において、右側の前記アーム部36Lには、前記取付け片部44i,44jおよび前記取付け板部44c,44dをねじ部材50…による共締めで締結するためのナット51…が固着されるものであり、そのナット51…を固着するための取付け孔52…が右側の前記アーム部36Lの上壁に設けられる。而して前記ナット51は、右側の前記アーム部36Lにおける上壁内面に下方から係合する鍔部51aを中間部に有して筒状に形成されており、前記取付け孔52に下方から挿通された前記ナット51の上端部が右側のアーム部36Rの上面にかしめ係合されることで前記ナット51が右側の前記アーム部36Rに固定される。
【0035】
次にこの実施の形態の作用について説明すると、車体フレームFのピボットプレート15…に支軸22を介して揺動可能に支承されるピボット部35と、後端部で後輪WRを軸支するようにして前記ピボット部35から後方に延出される左右一対のアーム部36L,36Rと、それらのアーム部36L,36Rの前後方向中間部間に架設されるクロスメンバ部37とを有するスイングアーム21において、前記クロスメンバ部37の両端部および前記両アーム部36L,36R間には、前記クロスメンバ部37の両端部の後面と、前記アーム部36L,36Rのうち前記クロスメンバ部37よりも後方の部分の内側面とに接合される左右一対の板状の補強パッチ40L,40Rだけが設けられるものであり、それらの補強パッチ40L,40Rと、前記クロスメンバ部37の両端部および前記アーム部36L,36Rとで上下に開放した空間41L,41Rがそれぞれ形成される。
【0036】
したがってクロスメンバ部37およびアーム部36L,36Rの接合部の車幅方向の剛性およびねじれ剛性を補強パッチ40L,40Rによって確保することが可能であり、補強パッチ40L,40Rと、クロスメンバ部37の両端部およびアーム部36L,36Rとで上下に開放した空間41L,41Rをそれぞれ形成するので、クロスメンバ部37よりも後方でアーム部36L,36Rを上下方向に適度にしならせることができる。
【0037】
また前記補強パッチ40L,40Rは、その中間部に前方に向けて凸の曲がり部42 …を有するように形成されるので、曲がり部42…をさらに曲げるようにアーム部36L,36Rから補強パッチ40L,40R側に荷重が伝達されることになり、その結果、補強パッチ40L,40Rおよびアーム部36L,36Rの接合部への応力集中を緩和することができる。また前記補強パッチ40L,40Rの上下幅は前記アーム部36L,36Rの上下幅よりも小さく設定されるので、アーム部36L,36Rをよりしならせ易くすることができる。
【0038】
またスイングアーム21における左側のアーム部36Lには、カバー部材44としても機能するチェーンカバー43が左側の補強パッチ40Lの一部をおよび空間41Lの全体を上方から覆うように取付けられ、右側のアーム部36Rには、カバー部材44が右側の補強パッチ40Rおよび空間41Rの全体を上方から覆うように取付けられるので、補強パッチ40L,40Rおよび空間41L,41Rを外部から視認し難くして外観性を高めることができる。
【0039】
また右側のアーム部36Rに取付けられるカバー部材44には、後輪WRの回転を制動する後輪用ディスクブレーキBRにブレーキ液圧を導くブレーキホース49の中間部を保持する伝達部材保持部48が設けられるので、少なくともカバー部材44付近ではブレーキホース49を保持する専用の部材を不要として部品点数を低減することができる。
【0040】
さらに前記カバー部材44は、右側の前記補強パッチ40Rおよび右側の前記空間41Rを上方から覆う覆い部44aと、該覆い部44aから車幅方向外側に延出されて右側の前記アーム部36Rの上面に当接する支持板部44bと、該支持板部44bからさらに車幅方向外側に延出される前後一対の取付板部44c,44dと、前記覆い部44aの前方および後方の少なくとも一方(この実施の形態では両方)に配置される一対の耳部44e,44fと、前記支持板部44bおよび前記耳部44e,44f間を結ぶとともに前記耳部44e,44fを前記支持板部44b側に折り曲げることを可能としたヒンジ部44g,44hと、前記耳部44e,44fが前記支持板部44b側に折り曲げられた状態で前記取付け板部44c,44dとの共締めで右側の前記アーム部36Rに締結されるようにして前記耳部44e,44fから延出される一対の取付け片部44i,44jとを一体に有して合成樹脂により形成され、前記支持板部44bとの間に前記ブレーキホース49を挟むように前記耳部44e,44fが折り曲げられるととともに前記取付け片部44i,44jが前記取付け板部44c,44dとの共締めで前記アーム部36Rに締結された状態で前記耳部44e,44fおよび前記支持板部44bの協働で前記伝達部材保持部48が構成されるので、スライド型を用いることなくカバー部材44を型成形することができ、カバー部材44の成形コスト低減に寄与することができる。
【0041】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0042】
たとえば上記実施の形態では鞍乗り型車両として自動二輪車を取り上げて説明したが、自動三輪車等の他の鞍乗り型車両にも本発明を適用することができる。
【0043】
また後輪WRを制動する後輪用ブレーキがドラムブレーキであってもよく、その場合、ドラムブレーキにブレーキ操作力を伝達する索状の伝達部材としてのブレーキケーブルの中間部を保持する伝達部材保持部がカバー部材に設けられるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
21・・・スイングアーム
35・・・ピボット部
36L,36R・・・アーム部
37・・・クロスメンバ部
40L,40R・・・補強パッチ
41L,41R・・・空間
42・・・曲がり部
43・・・カバー部材であるチェーンカバー
44・・・カバー部材
44a・・・覆い部
44b・・・支持板部
44c,44d・・・取付板部
44e,44f・・・耳部
44g,44h・・・ヒンジ部
44i,44j・・・取付け片部
48・・・伝達部材保持部
49・・・伝達部材であるブレーキホース
BR・・・後輪用ブレーキである後輪用ディスクブレーキ
F・・・車体フレーム
WR・・・後輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレーム(F)に揺動可能に支承されるピボット部(35)と、後端部で後輪(WR)を軸支するようにして前記ピボット部(35)から後方に延出される左右一対のアーム部(36L,36R)と、それらのアーム部(36L,36R)の前後方向中間部間に架設されるクロスメンバ部(37)とを有する鞍乗り型車両用スイングアームにおいて、前記クロスメンバ部(37)の両端部および前記両アーム部(36L,36R)間には、前記クロスメンバ部(37)の両端部の後面と、前記アーム部(36L,36R)のうち前記クロスメンバ部(37)よりも後方の部分の内側面とに接合される左右一対の板状の補強パッチ(40L,40R)が設けられ、それらの補強パッチ(40L,40R)と、前記クロスメンバ部(37)の両端部および前記アーム部(36L,36R)とで上下に開放した空間(41L,41R)がそれぞれ形成されることを特徴とする鞍乗り型車両用スイングアーム。
【請求項2】
前記補強パッチ(40L,40R)は、その中間部に曲がり部(42)を有するように形成されることを特徴とする請求項1記載の鞍乗り型車両用スイングアーム。
【請求項3】
前記アーム部(36L,36R)に、前記補強パッチ(40L,40R)の少なくとも一部および前記空間(41L,41R)を上方から覆うカバー部材(43,44)が取付けられることを特徴とする請求項1または2記載の鞍乗り型車両用スイングアーム。
【請求項4】
前記後輪(WR)の回転を制動する後輪用ブレーキ(BR)にブレーキ操作力を伝達する索状の伝達部材(49)の中間部を保持する伝達部材保持部(48)が、前記カバー部材(44)に設けられることを特徴とする請求項3記載の鞍乗り型車両用スイングアーム。
【請求項5】
前記カバー部材(44)が、前記補強パッチ(40R)および前記空間(41R)を上方から覆う覆い部(44a)と、該覆い部(44a)から車幅方向外側に延出されて前記アーム部(36L,36R)の上面に当接する支持板部(44b)と、該支持板部(44b)からさらに車幅方向外側に延出される取付板部(44c,44d)と、前記覆い部(44a)の前方および後方の少なくとも一方に配置される耳部(44e,44f)と、前記支持板部(44b)および前記耳部(44e,44f)間を結ぶとともに前記耳部(44e,44f)を前記支持板部(44b)側に折り曲げることを可能としたヒンジ部(44g,44h)と、前記耳部(44e,44f)が前記支持板部(44b)側に折り曲げられた状態で前記取付け板部(44c,44d)との共締めで前記アーム部(36L,36R)に締結されるようにして前記耳部(44e,44f)から延出される取付け片部(44i,44j)とを一体に有して合成樹脂により形成され、前記支持板部(44b)との間に前記伝達部材(49)を挟むように前記耳部(44e,44f)が折り曲げられるととともに前記取付け片部(44i,44j)が前記取付け板部(44c,44d)との共締めで前記アーム部(36R)に締結された状態で前記耳部(44e,44f)および前記支持板部(44b)の協働で前記伝達部材保持部(48)が構成されることを特徴とする請求項4記載の鞍乗り型車両用スイングアーム。
【請求項6】
前記補強パッチ(40L,40R)の上下幅が、前記アーム部(36L,36R)の上下幅よりも小さく設定されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の鞍乗り型車両用スイングアーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−166660(P2012−166660A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28537(P2011−28537)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】