説明

音割れ抑制制御方法及び当該方法を用いた音響制御装置

【課題】ユーザーがバスやトレブルを所望の音質に調整したときに、アンプの音量を最大値近くまで上げたとしても、音の歪みが発生しない音割れ抑制制御方法を提供する。
【解決手段】出力される音声が音量設定値、バス設定値及びトレブル設定値によって規定され、音量設定値、バス設定値及びトレブル設定値のそれぞれが、記憶部に一時的に記憶されており、音量設定値のそれぞれに対応して音割れを抑制するための値としての最大許容バス値及び最大許容トレブル値のそれぞれが、記憶部に予め記憶されており、規定された音声設定値に対応するバス設定値及びトレブル設定値のそれぞれが、最大許容バス値及び最大許容トレブル値より大きくなる場合、バス設定値及びトレブル設定値がそれぞれ最大許容バス値及び最大許容トレブル値以下の値に変更され、規定された音声設定値と、変更されたバス設定値及びトレブル設定値と、に基づいて、音声が出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車等の車両に搭載された音響機器における音割れ抑制制御方法及び当該方法を用いた音響制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車等の車両に搭載された音響機器の設定音量を車速に応じて自動的に調節するオーディオ装置が、特許文献1に開示されている。
【0003】
また、音量やバス(低音域)やトレブル(高音域)の各制御端子電圧を検出し、バスやトレブルの各制御端子電圧がある設定値以上であるときに、音量の制御端子電圧が略最大値に設定された場合に、バスやトレブルの各制御端子電圧を引き下げるラウドネス調節回路が、特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−362241号公報
【特許文献2】特開平08−256032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、いわゆるオートボリュームコントロール機能を装備したオーディオ装置に関し、車速に応じて音響機器の設定音量を自動的に調節するものである。バス(低音域)やトレブル(高音域)を強調したメリハリのある音質になるように設定された状態で、アンプの音量を最大値近くまで上げてしまうと、アンプの性能上飽和してしまうので、出力音の歪み(音割れ)が発生して聴覚上の違和感を生じさせるという問題がある。
【0006】
また、特許文献2に開示されたラウドネス調節回路では、音量やバスやトレブルの各制御端子電圧を検出するための検出回路が新たに必要になり、音響回路が全体として複雑になりコストもアップするという問題がある。
【0007】
したがって、本発明の解決すべき技術的課題は、ユーザーがバス(低音域)やトレブル(高音域)を所望の音質に調整したときに、アンプの音量を最大値近くまで上げたとしても、音の歪み(音割れ)が発生しない音割れ抑制制御方法及び当該方法を用いた音響制御装置を安価に提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術的課題を解決するために、本発明によれば、以下の音割れ抑制制御方法及び当該方法を用いた音響制御装置が提供される。
【0009】
すなわち、本発明の請求項1に係る音割れ抑制制御方法は、
車両に搭載された音響機器から出力される音声の音割れを抑制する音割れ抑制制御方法であって、
出力される音声が音量設定値、バス設定値及びトレブル設定値によって規定され、前記音量設定値、バス設定値及びトレブル設定値のそれぞれが、記憶部に一時的に記憶されており、
前記音量設定値のそれぞれに対応して音割れを抑制するための値としての最大許容バス値及び最大許容トレブル値のそれぞれが、前記記憶部に予め記憶されており、
規定された音声設定値に対応するバス設定値及びトレブル設定値のそれぞれが、前記最大許容バス値及び最大許容トレブル値より大きくなる場合、バス設定値及びトレブル設定値がそれぞれ最大許容バス値及び最大許容トレブル値以下の値に変更され、
前記規定された音声設定値と、前記変更されたバス設定値及びトレブル設定値と、に基づいて、音声が出力されることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項2に係る音割れ抑制制御方法では、走行時の車速に応じて、前記音量設定値を自動的に調節することを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項3に係る音割れ抑制制御方法では、出力される音声の音割れは、1%以内の歪み率に抑制されることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項4に係る音響制御装置では、
車両に搭載された音響機器から出力される音声の音割れを抑制する音響制御装置であって、
出力される音声を規定する音量設定値、バス設定値及びトレブル設定値のそれぞれを一時的に記憶するとともに、前記音量設定値のそれぞれに対応して音割れを抑制するための値としての最大許容バス値及び最大許容トレブル値のそれぞれを予め記憶する記憶部と、
規定された音声設定値に対応するバス設定値及びトレブル設定値のそれぞれが、前記最大許容バス値及び最大許容トレブル値より大きくなる場合、バス設定値及びトレブル設定値をそれぞれ最大許容バス値及び最大許容トレブル値以下の値に変更する制御部と、を備え、
前記規定された音声設定値と、前記変更されたバス設定値及びトレブル設定値と、に基づいて、音声を出力することを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項5に係る音響制御装置では、走行時の車速に応じて、前記音量設定値を自動的に調節することを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項6に係る音響制御装置では、出力される音声の音割れは、1%以内の歪み率に抑制されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
車両走行中に出力されている音声を聞こえやすくするために、車両速度の上昇に応じて自動で、又は、ユーザーによる手動で、音声を大きくすることが行われる。大きくなった音声は、記憶部に記憶されているいずれかの音量設定値、バス設定値及びトレブル設定値と対応している。
【0016】
請求項1に係る本発明では、大きくなった音声を規定する音声設定値に対応するバス設定値及びトレブル設定値のそれぞれが、記憶部に記憶されている最大許容バス値及び最大許容トレブル値より大きめに設定されている場合、バス設定値及びトレブル設定値が音割れを抑制する最大許容バス値及び最大許容トレブル値以下の値にそれぞれ強制的に変更される。すなわち、本発明では、出力される音声の音質を規定するバス設定値及びトレブル設定値に関する変更が、いわゆるソフト的に行われている。したがって、バスやトレブルを強調した音の歪み(音割れ)の起こりやすい音質に設定されている場合、出力される音量が大きくなったときにバス設定値及びトレブル設定値が音の歪み(音割れ)を抑制する値にソフト的に変更されるだけであるので、音割れ抑制制御を低コストで実現できるという効果を奏する。
【0017】
請求項2に係る本発明では、走行時の車速に応じて音量設定値を自動的に調節するといういわゆるオートボリュームコントロール機能が作動している場合であっても、音割れ抑制制御が行われるので、走行中での調節作業が不要となるために安全運転が可能になるという効果を奏する。
【0018】
請求項3に係る本発明では、聴覚上の違和感を与えないという効果を奏する。
【0019】
請求項4に係る本発明においても、上述した請求項1に係る発明と同様に、バスやトレブルを強調した音の歪み(音割れ)の起こりやすい音質に設定されている場合、出力される音量が大きくなったときにバス設定値及びトレブル設定値を音の歪み(音割れ)を抑制する値にソフト的に変更するだけであるので、音割れ抑制制御を低コストで実現できるという効果を奏する。
【0020】
請求項5に係る本発明においても、上述した請求項2に係る発明と同様に、走行中での調節作業が不要となるために安全運転が可能になるという効果を奏する。
【0021】
請求項6に係る本発明においても、上述した請求項4に係る発明と同様に、聴覚上の違和感を与えないという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る音響制御装置を装備した自動二輪車を左後方から見た斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る音響制御装置のブロック図である。
【図3】図2に示した音響制御装置における入力操作部及び表示部の例を示す正面図である。
【図4】図2に示した音響制御装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の一実施形態に係る音割れ抑制制御方法及び当該方法を用いた音響制御装置について、図1乃至4を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
図1は、車両の一例として示した自動二輪車1を左後方から見た斜視図である。本明細書で前後左右は、車両の前後左右を基準にしたものとする。
【0025】
図1は、オートバイやスクータ等の自動二輪車1を示しており、車体フレーム10に対して、前輪12及び後輪14が軸支されている。車体フレーム10の中央部には、エンジン16が搭載されている。エンジン16の上には、前方側に燃料タンク20が設置され、後方側にはシート22が設置されている。
【0026】
前輪12に対してハンドル18が回動自在に取付けられ、ハンドル18には、バックミラー、スイッチケース、ブレーキレバー等が取付けられている。ハンドル18の前方のフロントパネル30には、車速やエンジン回転数や燃料の量や水温等の車両情報を表示するためのメータパネル24が設置されている。フロントパネル30の下方の中央部には、音響機器26が組み込まれている。左右一対のスピーカ28が、音響機器26の両側に隣接配置されている。
【0027】
後輪14の上に位置する車体フレーム10には、上側の収納ボックス32と、左右の収納ボックス33と、が取り付けられている。そして、上側の収納ボックス32には、後述する音響機器26の受信機に接続されたアンテナ34が立設されている。
【0028】
図2に示すように、ボックス状の音響機器26は、その内部において、中央処理演算ユニットすなわちCPU(Central Processing Unit)からなる制御部52と、音声信号を増幅するアンプ部66と、読み出し専用メモリすなわちROM(Read Only Memory)62と、随時書き込み可能なメモリすなわちRAM(Random Access Memory)64と、AMラジオやFMラジオや衛星ラジオ等を受信する受信機と、前記受信機あるいは携帯式小型音響機器の外部入力端子(AUX)から出力された音声信号を入力する音声信号入力部58と、から構成される音響制御装置50を備えている。
【0029】
当該音響制御装置50において、アンプ部66とROM62とRAM64と音声信号入力部58とは、それぞれ、制御部52に対して電気的に接続されている。なお、音響制御装置50においては、不図示の車載バッテリーから電源電圧の供給を受けて、所定の電源電圧が必要な構成要素に適宜供給されている。なお、記憶部(メモリ)は、ROM(Read Only Memory)62とRAM(Random Access Memory)64とから構成されているが、本願発明は当該構成に限定されるものではない。
【0030】
ROM62内に予め格納されている各種の処理プログラムやテーブルに従って、制御部52は音響制御装置50での各種動作を集中的に制御する。ROM62には、後述するような、制御部52によって実行されるプログラムと、初期出力音声に関する初期設定値(音量初期設定値、自動音量調節初期設定値、バス初期設定値及びトレブル初期設定値)と、車速センサ60からの出力データに基づいて車速を算出するためのテーブルと、自動音量調節(AUTO VOLUME CONTROLE:AVC)の設定モードに基づいて車速に応じて音量設定値を変更するための音量設定値のテーブルと、音量設定値のそれぞれに対応して音割れを抑制するための所定のデータ値(最大許容バス値及び最大許容トレブル値)のテーブルと、が、予め記憶されている。
【0031】
各音量設定値に対応した最大許容バス値及び最大許容トレブル値を表1に例示するが、本願発明は、表1に例示された数値に限定されるものでない。なお、表1に示された最大許容バス値及び最大許容トレブル値のそれぞれは、出力される音声の音割れを1%以内の歪み率に抑制するときの数値である。
【0032】
【表1】

【0033】
また、RAM64には、制御部52によってプログラムを実行する際に使用される音声に関する各種値(車速センサ60から得られた車速データ値、出力される音声を規定する音量設定値、バス設定値及びトレブル設定値)が一時的に格納されている。
【0034】
アンプ部66の出力側には、左右一対のスピーカ28が電気的に接続されていて、音声を出力する。アンプ部66の実用最大出力は、例えば20W以上である。オプションではあるが、好適には、車速センサ60が制御部52に対して電気的に接続されている。車速センサ60は、車輪12,14の回転数に応じたパルス信号を発生して、当該パルス信号に基づいて、自動二輪車1の車速が算出される。
【0035】
車速センサ60から出力された車速信号は、オートボリュームコントロール(AVC)すなわち自動音量調節機能(AVC機能)に利用されて、車速に応じて音響機器26の音量設定値を自動的に調節するために使用される。ここで、自動音量調節機能とは、高速走行時には走行ノイズが増大して音声が聞こえにくくなることを解消するために、車速上昇に応じて設定された音量設定値を自動的に増加させるとともに、車速減少に応じて設定された音量設定値を自動的に下げることである。
【0036】
図3に示すように、ボックス状の音響機器26は、フロントパネル30と大略面一になるように配置されたパネル本体27を備えている。パネル本体27は、その表面において、各種音響情報を表示する液晶パネルや有機ELパネル等の各種表示デバイスから構成される横長形状の表示部56と、該表示部56を囲むように配置された入力操作部54と、を備えている。
【0037】
音響機器26の入力操作部54は、図3に示すように、上側の左から順に、電源ボタン(POWER)54aと、モード切替ボタン(MODE)54bと、を備え、下側の左から順に、音量操作ボタン(VOL)54cと、コムボタン(COMM)54dと、プリセットボタン(PRESET)54eと、チューナボタン(TUNE)54fと、を備えている。
【0038】
入力操作部54の音量操作ボタン(VOL)54cを操作することによって、ユーザーが所望とする音量設定値が入力されるとともに、当該音量設定値がRAM64に格納される。音量設定値は、例えば、0乃至30レベルの範囲で設定される。
【0039】
入力操作部54のモード切替ボタン(MODE)54bを少し長目に押す(すなわち長押しする)ことによって、モード切替モードに入ることができる。長押しした直後には、例えば、低音域(BASS)の音質を調整するための表示が表示部56に表示される。そして、低音域(BASS)の設定において、音量操作ボタン(VOL)54cを操作することによって、ユーザーが所望とするバス設定値が入力されるとともに、当該バス設定値がRAM64に一時的に格納される。バス設定値は、例えば、−7乃至+7レベルの範囲で設定される。
【0040】
次に、入力操作部54のモード切替ボタン(MODE)54bを短めに押す(すなわち短押しする)ことによって、高音域(TREBLE)の設定モードに入ることができる。同様に、高音域(TREBLE)の設定において、音量操作ボタン(VOL)54cを操作することによって、ユーザーが所望とするトレブル設定値が入力されるとともに、当該トレブル設定値がRAM64に一時的に格納される。トレブル設定値は、例えば、−7乃至+7レベルの範囲で設定される。
【0041】
入力操作部54のモード切替ボタン(MODE)54bをさらに短めに押す(すなわち短押しする)ことによって、順次、フェード(FADE)設定モード、スピーカ(SPKRS)設定モード、自動音量調節(AVC)設定モード、自動音質調節(AUTO TONE CONTROL)設定モードに切り替わる。
【0042】
自動音量調節(AVC)の設定モードにおいて、音量操作ボタン(VOL)54cを操作することによって、例えば0乃至5のうち、いずれかの数値が設定される。自動音量調節(AVC)の設定値が0である場合、この機能が作動しないOFF状態を意味する。そして、ユーザーによる音量設定値が維持されて、音量設定値に関する変更が行われない。
【0043】
自動音量調節(AVC)の設定値が例えば1から5である場合、この機能が作動するON状態を意味する。自動音量調節(AVC)の設定値が1から5である場合、車速上昇に応じて設定された音量設定値を自動的に増加させるとともに、車速減少に応じて設定された音量設定値を自動的に下げる。なお、自動音量調節(AVC)に関する設定値が、1から5に大きくなるに従って、最大音量に到達する到達時間が短くなって音量の大きくなる傾きが急峻になる。例えば、音量設定値が15レベルで、自動音量調節(AVC)の設定値が3の場合、車速が120km/時になると最大音量になる。
【0044】
自動音質調節(AUTO TONE CONTROL)の設定モードにおいて、音量操作ボタン(VOL)54cを操作することによって、AUTO又はNORMALのいずれかが設定される。自動音質調節(AUTO TONE CONTROL)設定モードにおいてAUTOが設定されると、大きくなった音声を規定するバス設定値及びトレブル設定値が、記憶部(ROM62)に記憶されている最大許容バス値及び最大許容トレブル値より大きめに設定されている場合、バス設定値及びトレブル設定値が音割れを抑制する最大許容バス値及び最大許容トレブル値以下の値にそれぞれ変更される。自動音質調節(AUTO TONE CONTROL)設定モードにおいてNORMALが設定されると、ユーザーによるバス設定値及びトレブル設定値が維持されて、バス設定値及びトレブル設定値に関する変更が行われない。
【0045】
なお、本願発明において、音量、バス、トレブルの関する各種数値は、それぞれ、0乃至30レベル、−7乃至+7レベル、−7乃至+7レベルを用いて説明している。ここで、レベルが1つ大きくなると、出力が2デシベル(dB)大きくなる。逆に、レベルが1つ小さくなると、出力が2デシベル(dB)小さくなる。
【0046】
次に、図4を参照しながら、本発明の一実施形態に係る音割れ抑制制御方法について説明する。
【0047】
ステップS10において、本発明の一実施形態に係る音割れ抑制制御方法がスタートして、入力操作部54の電源ボタン(POWER)54aを押すと、初期出力音声に関する初期設定値(音量初期設定値、自動音量調節初期設定値、バス初期設定値及びトレブル初期設定値)がROM62から読み込まれて、初期設定された音量及び音質を有する音声が、スピーカ28から出力されることが可能になる。初期設定値を例示すると、音量初期設定値が5レベル、自動音量調節初期設定値が1、バス初期設定値が±0レベル、トレブル初期設定値が±0レベルである。
【0048】
ステップS12において、ユーザーが所望とする音声を規定する音量設定値、バス設定値、トレブル設定値のそれぞれが入力されて、RAM64に一時的に格納される。すなわち、音量操作ボタン(VOL)54cを操作することによって、ユーザーが所望とする音声を規定する音量設定値が入力される。また、モード切替ボタン(MODE)54bを適宜切り替えて、ユーザーが所望とする音声を規定するバス設定値及びトレブル設定値がそれぞれ入力される。さらにまた、ユーザーが所望とする自動音量調節(AVC)機能に関する設定値の入力及び自動音質調節機能に関する設定が行われる。
【0049】
ステップS14において、自動音量調節(AVC)機能がONに設定されている(すなわち1乃至5のいずれかの数値が入力されている)か、否かが判断される。自動音量調節(AVC)機能がONに設定されている場合、ステップS16に移る。また、自動音量調節(AVC)機能がOFFに設定されている(すなわち0の数値が入力されている)場合、ステップS17に移る。
【0050】
ステップS16において、車速センサ60によって検出された信号に基づいてROM62内に格納されたテーブルを参照することによって決定された車速データ値が、RAM64に格納される。
【0051】
ステップS18において、RAM64に格納された車速データ値が車速上昇を示している場合、ユーザーによって設定された音量設定値を自動的に増加させるように調節される。また、車速データ値が車速減少を示している場合、ユーザーによって設定された音量設定値を自動的に下げるように調節される。したがって、ステップS18では、現在の音量設定値は、自動音量調節(AVC)機能に基づいて設定された音量設定値になっている。
【0052】
ステップS14において自動音量調節(AVC)機能がOFFに設定されているならば、ステップS17において、ユーザーによって設定された音量設定値がそのまま維持される。したがって、ステップS17では、現在の音量設定値は、ユーザーによって設定された音量設定値になっている。
【0053】
ステップS20において、自動音質調節機能がONに設定されている(すなわちAUTOが設定されている)か、否かが判断される。自動音質調節機能がONに設定されている場合、ステップS22に移る。また、自動音質調節機能がOFFに設定されている(すなわちNORMALが設定されている)場合、ステップS25に移る。
【0054】
ステップS22において、現在の音量設定値が、ステップS18における自動音量調節(AVC)機能に基づいて設定された音量設定値、又は、ステップS17におけるユーザーによって設定された音量設定値のいずれかになっている。そして、表1に示したように、現在の音量設定値に対応する最大許容バス設定値及び最大許容トレブル設定値が、それぞれROM62に格納されている。また、ステップS12において、ユーザーによって設定されたバス設定値及びトレブル設定値が、それぞれRAM64に格納されている。
【0055】
ステップS22において、ユーザーによって設定されたバス設定値及びトレブル設定値のそれぞれが、最大許容バス設定値及び最大許容トレブル設定値よりも大きいか否かが比較される。そして、ユーザーによって設定されたバス設定値及びトレブル設定値のそれぞれが、最大許容バス設定値及び最大許容トレブル設定値よりも大きい場合、ステップS24に移る。また、ユーザーによって設定されたバス設定値及びトレブル設定値のそれぞれが、最大許容バス設定値及び最大許容トレブル設定値以下である場合、ステップS25に移る。
【0056】
ステップS24において、ユーザーによって設定されたバス設定値及びトレブル設定値のそれぞれが、表1に示したような現在の音量設定値に対応する最大許容バス設定値及び最大許容トレブル設定値に強制的に変更されて、それぞれRAM64に格納される。したがって、ステップS24では、現在のバス設定値及びトレブル設定値のそれぞれは、強制的に変更された最大許容バス設定値及び最大許容トレブル設定値になっている。
【0057】
また、ステップS25において、ユーザーによって設定されたバス設定値及びトレブル設定値のそれぞれがそのまま維持される。したがって、ステップS25では、現在のバス設定値及びトレブル設定値のそれぞれは、ユーザーによって設定されたバス設定値及びトレブル設定値になっている。
【0058】
ステップS26において、RAM64に格納されている現在のバス設定値及びトレブル設定値のそれぞれが、ステップS24における強制的に変更された最大許容バス設定値及び最大許容トレブル設定値、又は、ステップS25におけるユーザーによって設定されたバス設定値及びトレブル設定値のいずれかになっている。ステップS22で説明した現在の音量設定値と、ステップS26で説明した現在のバス設定値及びトレブル設定値と、に基づく音声が、スピーカ28から出力される。
【0059】
そして、ステップS30において、一連の音割れ抑制制御方法が終了する。
【0060】
上記音割れ抑制制御方法によれば、ユーザーによってバスやトレブルを強調した音の歪み(音割れ)の起こりやすい音質に設定されていても、出力される音量が大きくなったときにバス設定値及びトレブル設定値を音の歪み(音割れ)を抑制する値(すなわち、最大許容バス設定値及び最大許容トレブル設定値)にソフト的に変更するだけであるので、音割れ抑制制御を低コストで実現できるという効果を奏する。
【0061】
なお、制御部52によって実行されるプログラムと、初期出力音声に関する初期設定値(音量初期設定値、自動音量調節初期設定値、バス初期設定値及びトレブル初期設定値)と、車速センサ60からの出力に基づいて車速を算出するためのテーブルと、自動音量調節(AVC)設定モードに基づいて車速に応じて音量設定値を変更するための音量設定値のテーブルと、各音量設定値に対応して音割れを抑制するための所定のデータ値(最大許容バス値及び最大許容トレブル値)のテーブルと、制御部52によってプログラムを実行する際に使用される音声に関する各種値(車速センサ60から得られたデータ値、出力される音声を規定する音量設定値、バス設定値及びトレブル設定値)等の各種データやテーブルを記憶・格納するための記憶部(メモリ)の構成は、上記実施形態に限定されるものではない。記憶部(メモリ)の構成は、例えば、書き換え可能であって電源を切ってもデータが消えない不揮発性の半導体メモリであるフラッシュメモリや磁気記録媒体等を単体で使用することも可能である。
【0062】
本願発明は、音割れを生じさせているバス(低音域)及び/又はトレブル(高音域)について、別個・独立に変更するものである。したがって、バス設定値だけを変更したり、トレブル設定値だけを変更したり、バス設定値及びトレブル設定値の両方を変更したりすることができる。
【0063】
また、ステップS24においては、ユーザーによって設定されたバス設定値及びトレブル設定値のそれぞれが、最大許容バス設定値及び最大許容トレブル設定値に変更されているが、最大許容バス設定値及び最大許容トレブル設定値よりも小さな設定値にそれぞれ変更することも可能である。
【0064】
また、好適な実施形態として、本発明に係る音響制御装置を自動二輪車1に搭載した例を示したが、本発明に係る音響制御装置は、オープンカータイプの自動車や自動三輪車にも適用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 自動二輪車
10 フレーム
12 前輪
14 後輪
16 エンジン
18 ハンドル
20 燃料タンク
22 シート
24 メータパネル
26 音響機器
27 パネル本体
28 スピーカ
30 フロントパネル
32 収納ボックス
33 収納ボックス
34 アンテナ
50 音響制御装置
52 制御部
54 入力操作部
56 表示部
58 音声信号入力部
60 車速センサ
62 ROM
64 RAM
64 アンプ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された音響機器から出力される音声の音割れを抑制する音割れ抑制制御方法であって、
出力される音声が音量設定値、バス設定値及びトレブル設定値によって規定され、前記音量設定値、バス設定値及びトレブル設定値のそれぞれが、記憶部に一時的に記憶されており、
前記音量設定値のそれぞれに対応して音割れを抑制するための値としての最大許容バス値及び最大許容トレブル値のそれぞれが、前記記憶部に予め記憶されており、
規定された音声設定値に対応するバス設定値及びトレブル設定値のそれぞれが、前記最大許容バス値及び最大許容トレブル値より大きくなる場合、バス設定値及びトレブル設定値がそれぞれ最大許容バス値及び最大許容トレブル値以下の値に変更され、
前記規定された音声設定値と、前記変更されたバス設定値及びトレブル設定値と、に基づいて、音声が出力されることを特徴とする、音割れ抑制制御方法。
【請求項2】
走行時の車速に応じて、前記音量設定値を自動的に調節することを特徴とする、請求項1に記載の音割れ抑制制御方法。
【請求項3】
出力される音声の音割れは、1%以内の歪み率に抑制されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の音割れ抑制制御方法。
【請求項4】
車両に搭載された音響機器から出力される音声の音割れを抑制する音響制御装置であって、
出力される音声を規定する音量設定値、バス設定値及びトレブル設定値のそれぞれを一時的に記憶するとともに、前記音量設定値のそれぞれに対応して音割れを抑制するための値としての最大許容バス値及び最大許容トレブル値のそれぞれを予め記憶する記憶部と、
規定された音声設定値に対応するバス設定値及びトレブル設定値のそれぞれが、前記最大許容バス値及び最大許容トレブル値より大きくなる場合、バス設定値及びトレブル設定値をそれぞれ最大許容バス値及び最大許容トレブル値以下の値に変更する制御部と、を備え、
前記規定された音声設定値と、前記変更されたバス設定値及びトレブル設定値と、に基づいて、音声を出力することを特徴とする音響制御装置。
【請求項5】
走行時の車速に応じて、前記音量設定値を自動的に調節することを特徴とする、請求項4に記載の音響制御装置。
【請求項6】
出力される音声の音割れは、1%以内の歪み率に抑制されることを特徴とする、請求項4又は5に記載の音響制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−135465(P2011−135465A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294743(P2009−294743)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】