説明

音叉端子

【課題】相手端子の平板端子部を適正な挿入位置に装着することができると共に、該平板端子部に対する電気抵抗を低減可能な音叉端子を提供する。
【解決手段】音叉端子50は、平板状の端子本体の先端に切欠き形成された縦長のスロット54を有し、該スロット54に差し込まれるヒューズ10の平板端子部41をスロット54に挟持接続させる。スロット54の対向する両側端面には、平板端子部41を板厚方向に挟持接続する2個の接点部53,55が設けられ、接点部53,55よりもスロット54の内方における一側端面には、平板端子部41の下端縁に当接することによってヒューズ10の挿入位置決めを行う位置決め用当接部57が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両の電気接続箱のヒューズ用キャビティ等に用いて好適な音叉端子に関する。
【背景技術】
【0002】
図4及び図5は、従来のヒューズキャビティおよび電気接続箱を示すものである(例えば、特許文献1参照)。
図4に示すように、ブレード形のヒューズ60は、平面上に配した一対の平板端子部63,63間に可溶部65を連結したヒューズエレメント(ヒューズ本体)61と、ヒューズエレメント61の可溶部65を覆い、平板端子部63を固定するための絶縁性を有する絶縁ハウジング64とからなる。
【0003】
ヒューズ60が電気接続箱70のヒューズキャビティ78に装着されることで、ヒューズキャビティ78内に装備された音叉端子71と、ヒューズ60の平板端子部63とが通電可能に接触される。
音叉端子71は、図5に示すように、バスバー79の端部を垂直に屈曲させた垂直部の先端中央から垂直に切り欠いて圧接用のスロット74を一体的にプレス成形し、該スロット74により形成された一対の挟持片72,72の対向する両側端面にそれぞれ接点部73,75を突出させたものである。
【0004】
そして、相手端子であるヒューズ60の平板端子部63が音叉端子71に接続されるときに、音叉端子71の縦長のスロット74に平板端子部63が挿入され、スロット74に挟持接続されることにより、ヒューズ60とバスバー79とが通電可能に接続される。
ヒューズキャビティ78に装着されたブレード形のヒューズ60は、図4に示したように、絶縁ハウジング64の下端縁64aがヒューズキャビティ78の絶縁壁76の上端に当接することで、ヒューズキャビティ78に対する挿入位置決めが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−163974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来のヒューズキャビティ78に装着されるヒューズ60の挿入位置は、ヒューズキャビティ78の成形誤差や、バスバー79のヒューズキャビティ78への組付け誤差等によって、正確な位置決めが困難であり、接点部73,75を平板端子部63の所定位置に正確に圧接させることが難しいという問題があった。
【0007】
更に、平板端子部63の下端縁を股底77に当接させることで、音叉端子71に対する挿入位置決めを行う場合には、スロット74を形成する一対の挟持片72,72の長さを調整する必要がある。しかし、例えば挟持片72を短くすると、平板端子部63を板厚方向に挟持接続する為のバネ性を保持することが困難となる。一方、挟持片72を長くすると、平板端子部63の挿入方向長さを長くしなければならずヒューズ60が大型化するという問題が生じてしまう。
【0008】
また、上述した従来の音叉端子71は、スロット74の対向する両側端面にそれぞれ突出させた2点の接点部73,75が平板端子部63に対する接触点となっている。そこで、音叉端子71と平板端子部63との接触面積が小さいので、電気抵抗が大きくなりジュール熱により発熱し易いという問題があった。
【0009】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、相手端子の平板端子部を適正な挿入位置に装着することができると共に、該平板端子部に対する電気抵抗を低減可能な音叉端子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 平板状の端子本体の先端に切欠き形成された縦長のスロットを有し、該スロットに差し込まれる相手端子の平板端子部を前記スロットに挟持接続させる音叉端子であって、前記スロットの対向する両側端面には、前記平板端子部を板厚方向に挟持接続する少なくとも2個の接点部が設けられ、前記接点部よりも前記スロットの内方における少なくとも一側端面には、前記平板端子部の下端縁に当接することによって前記相手端子の挿入位置決めを行う位置決め用当接部が設けられていること。
【0011】
上記(1)の構成の音叉端子によれば、スロットの一側端面に設けた位置決め用当接部が、スロットに差し込まれた相手端子の平板端子部に当接して挿入位置決めを行うことができる。そこで、平板端子部を挟持接続する接点部は、該平板端子部の所定位置に正確に圧接することができる。
また、上記音叉端子は、スロットの対向する両側端面に設けた2個の接点部に加え、位置決め用当接部でも、相手端子の平板端子部に対して電気的に接触することができ、平板端子部との間の電気抵抗を低減することができる。
更に、上記位置決め用当接部は、音叉端子のスロットと供に一体的に形成することができ、簡便なプレス成形により形成できる。
【0012】
(2) 上記(1)の構成の音叉端子が、電気接続箱のヒューズ用キャビティに収容する一対のバスバーにそれぞれ一体的に設けられる端子からなること。
【0013】
上記(2)の構成の音叉端子によれば、ヒューズ用キャビティに装着されるヒューズの平板端子部とバスバーとの良好な電気的接続を確実に維持することができ、安定した状態でヒューズを装着可能な電気接続箱を提供することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る音叉端子によれば、相手端子の平板端子部を適正な挿入位置に装着することができると共に、該平板端子部に対する電気抵抗を低減することができる。
【0015】
以上、本発明について簡潔に説明した。さらに、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細はさらに明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る音叉端子とヒューズを示す斜視図であり、(A)は要部分解斜視図、(B)は(A)に示した音叉端子にヒューズを装着した状態を示す斜視図である。
【図2】図1に示したヒューズの分解斜視図である。
【図3】図1(B)に示した音叉端子及びヒューズの側面図である。
【図4】従来の音叉端子にヒューズを装着した状態を示す要部断面図である。
【図5】図4に示した音叉端子及びヒューズの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明の一実施形態に係る音叉端子を詳細に説明する。
本実施形態に係る音叉端子50は、図1及び図3に示すように、電気接続箱のヒューズ用キャビティに収容する一対のバスバー59の上端縁に垂直に延設した平板状の端子本体の先端に切欠き形成された縦長のスロット54を有し、該スロット54に差し込まれる相手端子であるヒューズ10の平板端子部41をスロット54に挟持接続させる端子である。
【0018】
スロット54の対向する両側端面には、平板端子部41を板厚方向に挟持接続する2個の接点部53,55が突設され、接点部53,55よりもスロット54の内方(図中、下方)における一側端面には、平板端子部41の下端縁に当接することによってヒューズ10の挿入位置決めを行う位置決め用当接部57が突設されている。
【0019】
即ち、音叉端子50は、バスバー59の上端縁に垂直に延設した平板状の端子本体の先端に中央から垂直に切り欠いて圧接用のスロット54を一体的にプレス成形し、該スロット54により形成された一対の挟持片51,52の対向する両側端面にそれぞれ接点部73,75が突出すると共に、挟持片51の側端面に位置決め用当接部57が突出するように一体成形されている。
【0020】
本実施形態の音叉端子50に設けた位置決め用当接部57は、スロット54に差し込まれる平板端子部41の下端縁に対向する上面(あて面)が水平面とされ、平板端子部41の下端縁に当接することによってヒューズ10の挿入位置決めを行うことができる。
【0021】
図2に示すように、上記音叉端子50のスロット54に挟持接続されるヒューズ10は、ヒューズエレメント(ヒューズ本体)40と、上下ケース(絶縁ハウジング)20,30と、に大別構成されるヒューズである。
ヒューズエレメント40は、一対の平板端子部41,41における平行な内側縁41aの間に、低融点金属チップ47を把持してなる可溶部49を有する略帯状の帯状連結部42が設けられている。このヒューズエレメント40は、電気回路に接続される平板端子部41,41と、これらを電気接続する帯状連結部42とが、例えば銅(Cu)、アルミニウム(Al)などを母材とする金属板のプレス成形によって一体形成される。
【0022】
帯状連結部42は、所定の溶断特性に基づいて溶断し易いように幅が狭められる。即ち、ヒューズ10は、少なくともヒューズエレメント40の導電率及び可溶部49を有する帯状連結部42の抜き幅の何れかを変更することにより、定格電流容量を変更できる。これにより、同一の外形状のまま、仕様の異なるヒューズ10のそれぞれに合わせた適正なヒューズ特性(定格電流容量)への変更が可能となっている。つまり、ヒューズ10は、定格電流容量に合わせて製品サイズが大きくなることがない。
【0023】
帯状連結部42には、一対の支持片45を備える可溶部49が形成されている。支持片45は、帯状連結部42の幅方向にそれぞれ延出し、この支持片45による加締め付けによって、ヒューズエレメント40よりも融点の低い低融点金属チップ47が可溶部49に圧着固定される。低融点金属チップ47は、平板端子部41や帯状連結部42を構成する母材である銅などよりも融点の低い錫(Sn)または錫合金などの低融点金属で構成される。
【0024】
そこで、上記ヒューズエレメント40は、帯状連結部42に過電流が流れると、可溶部49の発熱分を低融点金属チップ47に伝熱吸収させることで溶断に至るまでのタイムラグが確保される所謂遅断ヒューズを構成している。
即ち、電動機などの負荷回路においては、その起動時に定常負荷電流値の数倍に達する瞬間過度電流が流れ、またパワーウィンドモータでは窓ガラスを閉めきった時や開ききった時のモーターロック時に定常負荷電流値の数倍に達するモーターロック電流が流れるので、回路ショート等の異常時ではないにもかかわらず定常電流値を超える電流が頻繁に流れる。そこで、上述したヒューズエレメント40を用いることで、このような定常電流値を超える瞬間過度電流やモーターロック電流等に対しては溶断することがなく、かつスライトショート時には速やかに溶断して確実に過度電流を遮断することができる。
【0025】
本実施形態に係る上下ケース20,30は、それぞれ絶縁性の半透明な合成樹脂材により一体成形される。
略矩形状の上ケース20は、図2に示すように、可溶部49を収容する溶断部収容空間29が形成されると共に、外部からの可溶部49の目視を可能とする窓21が形成される。上ケース20の上下面には、一対の係合片23がケース装着方向(図2中、右方向)に延設され、後述する下ケース30の係合突起33にロック係合する。また、上ケース20の四隅には、4つの円形の貫通孔25が形成され、後述する下ケース30の固定柱35が挿入される。
【0026】
略矩形状の下ケース30のヒューズ装着面には、4つの固定柱35が突設されている。これら固定柱35は、下ケース30がヒューズエレメント40の裏面側に装着されると、一対の平板端子部41のそれぞれに形成された貫通孔44を貫通する。更に、上ケース20が平板端子部41の内側縁41a及び可溶部49を覆うように、ヒューズエレメント40の表面側に装着されると、固定柱35の挿入先端が上ケース20の貫通孔25に挿入される。ヒューズエレメント40の表裏側から装着された上下ケース20,30は、上ケース20の係合片23が下ケース30の係合突起33にロック係合することで、一体的に結合される。
【0027】
これにより、上下ケース20,30をヒューズエレメント40に装着する装着作業が容易となり、生産性を向上させることができる。また、上下ケース20,30がヒューズエレメント40の可溶部49を確実に覆うことにより、溶断屑が飛散することによる他のヒューズ10などへの弊害が防止される。
【0028】
次に、上述した本実施形態に係る音叉端子50にヒューズ10を装着する際の作用を説明する。
図1に示すように、音叉端子50とヒューズ10の平板端子部41との電気的接続は、平板端子部41を音叉端子50の上端よりスロット54に差し込み、平板端子部41の表裏面に接点部53,55を圧接させることにより行われる。
【0029】
音叉端子50のスロット54に挿入されたヒューズ10の平板端子部41は、図3に示すように、下端縁が位置決め用当接部57の上面に当接することで挿入位置決めされる。そこで、平板端子部41を挟持接続する接点部53,55は、該平板端子部41の所定位置に正確に圧接することができる。その結果、ヒューズ10はヒューズ用キャビティでの支持バランスが良くなって装着後のブレが抑制され、良好な電気的接続を確実に維持することができる。
【0030】
また、平板端子部41の挿入位置決めは、位置決め用当接部57の突設位置を調整するだけで良いので、スロット54を形成する一対の挟持片51,52の長さを調整する必要がない。そこで、平板端子部41を板厚方向に挟持接続する為のバネ性を保持することが困難となったり、平板端子部41の挿入方向長さを長くしなければならずヒューズ10が大型化したりすることがない。
【0031】
また、音叉端子50は、スロット54の対向する両側端面に設けた2個の接点部53,55に加え、位置決め用当接部57でも、ヒューズ10の平板端子部41に対して電気的に接触することができ、平板端子部41との間の安定的な電気的接続が実現すると共に電気抵抗を低減することができる。その結果、音叉端子50は、ヒューズ10との間で高い接続信頼性を得ることができると共に、ジュール熱による発熱を抑制することができる。
更に、位置決め用当接部57は、音叉端子50のスロット54と供に一体的に形成することができ、簡便なプレス成形により形成できる。
【0032】
即ち、上述した音叉端子50によれば、ヒューズ10の平板端子部41を適正な挿入位置に装着することができると共に、該平板端子部41に対する安定的な電気的接続が実現すると共に電気抵抗を低減することができる。
従って、本実施形態の音叉端子50によれば、ヒューズ用キャビティに装着されるヒューズ10の平板端子部41とバスバー59との良好な電気的接続を確実に維持することができ、安定した状態でヒューズ10を装着可能な電気接続箱を提供することができる。
【0033】
なお、本発明の音叉端子は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
例えば、上記実施形態においては、位置決め用当接部57を挟持片51の側端面に突設したが、位置決め用当接部57を挟持片51,52の両側端面に対向するように突設してもよい。また、位置決め用当接部57の形状も、平板端子部の下端縁に当接して挿入位置決め可能であれば、上記実施形態の略矩形状に限らず、半円状や三角形状等の種々の形状を採りうることは云うまでもない。
【符号の説明】
【0034】
10…ヒューズ(相手端子)
20…上ケース
30…下ケース
40…ヒューズエレメント
41…平板端子部
50…音叉端子
51…挟持片
52…挟持片
53…接点部
54…スロット
55…接点部
57…位置決め用当接部
59…バスバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の端子本体の先端に切欠き形成された縦長のスロットを有し、該スロットに差し込まれる相手端子の平板端子部を前記スロットに挟持接続させる音叉端子であって、
前記スロットの対向する両側端面には、前記平板端子部を板厚方向に挟持接続する少なくとも2個の接点部が設けられ、
前記接点部よりも前記スロットの内方における少なくとも一側端面には、前記平板端子部の下端縁に当接することによって前記相手端子の挿入位置決めを行う位置決め用当接部が設けられていることを特徴とする音叉端子。
【請求項2】
電気接続箱のヒューズ用キャビティに収容する一対のバスバーにそれぞれ一体的に設けられる端子からなることを特徴とする請求項1に記載の音叉端子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−89384(P2013−89384A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227288(P2011−227288)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】