説明

音声処理装置およびディスプレイ装置

【課題】 ディスプレイスピーカーが再生する音声が、音声処理装置に接続された音声に対して遅延することを防止する。
【解決手段】 AVアンプは、第1ch音声データを設定手段によって設定された遅延時間だけ遅延させる第1遅延手段と、遅延された第1ch音声データをディスプレイ装置に送信し、ディスプレイスピーカーから再生させる送信手段と、第2ch音声データを設定手段によって設定された遅延時間だけ遅延させる第2遅延手段と、遅延された第2チャンネル音声データを、AVアンプに接続されたスピーカーから再生させる再生手段と、ディスプレイ装置の音声処理にかかるディスプレイ側遅延時間をディスプレイ装置から受信する受信手段と、第1遅延手段及び第2遅延手段の各遅延時間を設定し、かつ、ディスプレイ側遅延時間を第2遅延手段の遅延時間に加算する設定手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声処理装置に関し、マルチチャンネル音声データを、音声処理装置に接続されたスピーカーおよびディスプレイが備えるディスプレイスピーカーから再生する音声処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
HDMI規格に準拠したソース機器であるBDプレーヤと、リピーター機器であるAVアンプと、シンク機器であるディスプレイ装置とを備える音声再生システムが利用されており、ソース機器から出力されるHDMIデータに映像データ及び音声データを含めることにより、1本のHDMIケーブルによって映像データ及び音声データの両方をリピーター機器又はシンク機器に送信することができる。AVアンプは、BDプレーヤから受信したHDMIデータを元の映像データ及び音声データに変換し、音声データを増幅してスピーカーに出力すると共に、映像データを再度HDMIデータに変換し、ディスプレイ装置に送信する。ディスプレイ装置は、受信したHDMIデータを元の映像データに変換して表示する。
【0003】
BDプレーヤからAVアンプに送信されるHDMIデータに含まれている音声データは、マルチチャンネル音声データがエンコードされたものである。例えば、マルチチャンネル音声データは、左音声データL、右音声データR、中央音声データC、低域音声データSW、サラウンド左音声データSL、サラウンド右音声データSRを含む5.1chのマルチチャンネル音声データが採用されている。また、最近では、Dolby True HD、Dolby Digital Plus、DTS-HD等のHD(High
Definition)関連の音声フォーマットが登場してきており、これらのフォーマットにおいては、例えば、サラウンド後方左音声データSBL、サラウンド後方右音声データSBR、左上側音声データLh、右上側音声データRh、左外側音声データLw、右外側音声データRwがさらに追加されている。
【0004】
下記特許文献1には、以下の技術を記載する。AVアンプにおいて、HDMI受信部は、BDプレーヤから受信したHDMIデータから、元の映像データと元のマルチチャンネル音声データとを生成し、映像データをHDMI送信部に供給し、音声データを音声処理部に供給する。音声処理部は、マルチチャンネル音声データをデコードし、中央音声データCのみをHDMI送信部に供給し、他のチャンネルの音声データをD/A変換し、増幅処理し、スピーカーに出力する。HDMI送信部は、供給された映像データと中央音声データCとからHDMIデータを生成し、ディスプレイ装置に送信する。ディスプレイ装置は、受信したHDMIデータから元の映像データと中央音声データCとを生成し、映像を表示すると共に、中央音声データCを内蔵するディスプレイスピーカーから再生する。
【0005】
ここで、ディスプレイ装置がDSPやデジタルアンプ(スイッチングアンプ等)を備える場合、DSPやデジタルアンプにおける音声処理にかかる時間によって、AVアンプに接続されたスピーカーから再生される音声に対して、ディスプレイ装置のディスプレイスピーカーで再生される中央音声データCの音声がかなり遅延してしまうという問題がある。なお、ディスプレイ装置のディスプレイスピーカーを使用して中央音声データCを再生する場合だけに限らず、他のチャンネルの音声データ(例えば、左上側音声データLh、右上側音声データRh等)をディスプレイ装置のディスプレイスピーカーで再生する場合にも同様の問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−288247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、所定チャンネルの音声データをディスプレイ装置に送信し、ディスプレイ装置が備えるディスプレイスピーカーから再生する場合に、ディスプレイ装置のディスプレイスピーカーが再生する音声が、音声処理装置に接続されたスピーカーから再生される音声に対して遅延することを防止する音声処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の好ましい実施形態による音声処理装置は、ディスプレイスピーカーを備えるディスプレイ装置と、複数のスピーカーとが接続可能な音声処理装置であって、前記マルチチャンネル音声データに含まれる第1チャンネル音声データを設定手段によって設定された遅延時間だけ遅延させる第1遅延手段と、前記第1遅延手段によって遅延された第1チャンネル音声データを前記ディスプレイ装置に送信し、前記ディスプレイスピーカーから再生させる送信手段と、前記マルチチャンネル音声データに含まれる第2チャンネル音声データを前記設定手段によって設定された遅延時間だけ遅延させる第2遅延手段と、前記第2遅延手段によって遅延された前記第2チャンネル音声データを、前記音声処理装置に接続されたスピーカーから再生させる再生手段と、前記ディスプレイ装置の音声処理にかかるディスプレイ側遅延時間を前記ディスプレイ装置から受信する受信手段と、前記第1遅延手段および前記第2遅延手段の各遅延時間を設定し、かつ、前記ディスプレイ装置の音声処理にかかるディスプレイ側遅延時間を前記第2遅延手段の遅延時間に加算する前記設定手段とを備える。
【0009】
本実施形態によると、音声処理装置は、ディスプレイ装置からディスプレイ装置の音声処理にかかるディスプレイ側遅延時間を取得し、ディスプレイ側遅延時間を第2遅延手段の遅延時間に加算する。従って、ディスプレイスピーカーから再生される第1チャンネル音声データの音声が、音声処理装置に接続されたスピーカーから再生される第2チャンネル音声データの音声に対して遅延することを防止することができる。
【0010】
好ましい実施形態においては、前記第1チャンネル音声データを前記ディスプレイスピーカーから再生するか、又は、前記第1チャンネル音声データを前記音声処理装置に接続されたスピーカーから再生するかをユーザ操作に応じて切換える切換手段をさらに備え、前記第1チャンネル音声データを前記ディスプレイスピーカーから再生する場合に、前記ディスプレイ装置の音声処理にかかるディスプレイ側遅延時間を前記第2遅延手段の遅延時間に加算し、前記第1チャンネル音声データを前記音声処理装置に接続されたスピーカーから再生する場合に、前記ディスプレイ装置の音声処理にかかるディスプレイ側遅延時間を前記第2遅延手段の遅延時間に加算しない。
【0011】
この場合、第1チャンネル音声データを、ディスプレイスピーカーではなく、音声処理装置に接続されたスピーカーから再生する場合に、ディスプレイ装置の音声処理にかかるディスプレイ側遅延時間を第2遅延手段の遅延時間に加算しないので、音声処理装置に接続されたスピーカーから再生される第1チャンネル音声データの音声が、音声処理装置に接続されたスピーカーから再生される第2チャンネル音声データの音声に対して遅延することを防止できる。
【0012】
好ましい実施形態においては、前記ディスプレイ装置の各音響処理毎にディスプレイ側遅延時間が異なっており、前記設定手段が、前記ディスプレイ装置の現在設定されている音響処理に対応するディスプレイ側遅延時間を特定し、前記第2遅延手段の遅延時間に加算する。
【0013】
好ましい実施形態においては、前記ディスプレイ装置の音声処理にかかるディスプレイ側遅延時間と、前記第1チャンネル音声データには実行されず前記第2チャンネル音声データに実行される前記音声処理装置の音声処理にかかる音声処理装置側遅延時間とを比較する比較手段と、前記ディスプレイ側遅延時間が前記音声処理装置側遅延時間よりも大きい場合、前記ディスプレイ側遅延時間から前記音声処理装置側遅延時間を減算して補正用遅延時間を算出し、前記音声処理装置側遅延時間が前記ディスプレイ側遅延時間よりも大きい場合、前記音声処理装置側遅延時間から前記ディスプレイ側遅延時間を減算して補正用遅延時間を算出する算出手段とをさらに備え、前記ディスプレイ側遅延時間が前記音声処理装置側遅延時間よりも大きい場合、前記設定手段が、前記補正用遅延時間を前記第2遅延手段の遅延時間に加算し、前記音声処理装置側遅延時間が前記ディスプレイ側遅延時間よりも大きい場合、前記設定手段が、前記補正用遅延時間を前記第1遅延手段の遅延時間に加算する。
【0014】
本発明の好ましい実施形態によるディスプレイ装置は、複数のスピーカーが接続可能であり、マルチチャンネル音声データに含まれる第1チャンネル音声データを設定手段によって設定された遅延時間だけ遅延させる第1遅延手段と、前記第1遅延手段によって遅延された第1チャンネル音声データをディスプレイ装置に送信する送信手段と、前記マルチチャンネル音声データに含まれる第2チャンネル音声データを前記設定手段によって設定された遅延時間だけ遅延させる第2遅延手段と、前記第2遅延手段によって遅延された前記第2チャンネル音声データを、前記音声処理装置に接続されたスピーカーから再生させる再生手段と、前記ディスプレイ装置の音声処理にかかるディスプレイ側遅延時間を前記ディスプレイ装置から受信する受信手段と、前記第1遅延手段および前記第2遅延手段の各遅延時間を設定し、かつ、前記ディスプレイ装置の音声処理にかかるディスプレイ側遅延時間を前記第2遅延手段の遅延時間に加算する前記設定手段とを備える音声処理装置が接続可能な前記ディスプレイ装置であって、ディスプレイスピーカーと、前記第1遅延手段によって遅延された第1チャンネル音声データを受信する音声受信手段と、前記第1遅延手段によって遅延された第1チャンネル音声データを前記ディスプレイスピーカーから再生する音声再生手段と、前記ディスプレイ装置の音声処理にかかるディスプレイ側遅延時間を前記音声処理装置に送信する情報送信手段とを備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、所定チャンネルの音声データをディスプレイ装置に送信し、ディスプレイ装置が備えるディスプレイスピーカーから再生する場合に、ディスプレイ装置のディスプレイスピーカーが再生する音声が、音声処理装置に接続されたスピーカーから再生される音声に対して遅延することを防止する音声処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ディスプレイ装置、AVアンプ、スピーカーの接続構成及び設置位置を示す図である。
【図2】ディスプレイ装置、AVアンプ、BDプレーヤの構成を示すブロック図である。
【図3】AVアンプの音声処理部等を示すブロック図である。
【図4】ディスプレイ装置の音声処理部等を示すブロック図である。
【図5】AVアンプおよびディスプレイ装置処理を示すフローチャートである。
【図6】DSPの音響処理に対する遅延時間を管理するテーブルである。
【図7】AVアンプおよびディスプレイ装置処理を示すフローチャートである。
【図8】AVアンプおよびディスプレイ装置処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態によるディスク再生装置(ソース機器、BD(ブルーレイディスク)プレーヤ)、音声処理装置(リピータ機器、AVアンプ)およびディスプレイ装置(シンク機器、テレビジョン受像機)を備える音声再生システムついて、図面を参照して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。本実施形態においては、第1チャンネル音声データが中央音声データCである場合を例に説明するが、これに限定されず、左上側音声データLh、右上側音声データRh等の任意の他のチャンネルであっても良い。本実施形態においては、第2チャンネル音声データは、AVアンプ20が受信するマルチチャンネル音声データに含まれる第1チャンネル音声データ以外のチャンネルの音声データである。
【0018】
図1は、本実施形態における、AVアンプ20、ディスプレイ装置30、及び、各スピーカーの配置の一例を説明する図である(BDプレーヤ10の記述は省略している)。ディスプレイ装置30には、表示部32と、ディスプレイ左スピーカーSLDと、ディスプレイ右スピーカーSRDとが設けられている。AVアンプ20には、HDMIケーブルを介してディスプレイ装置30が接続され、左スピーカーSL、右スピーカーSR、中央スピーカーSC、低域スピーカーSSW、サラウンド左スピーカーSSL、サラウンド右スピーカーSSRが接続されている。なお、ディスプレイ左スピーカーSLDと、ディスプレイ右スピーカーSRDとから中央音声データCを再生する場合において、AVアンプ20に中央スピーカーSCを接続する必要はないが、参考のために記載している。
【0019】
図2は、BDプレーヤ10、AVアンプ20およびディスプレイ装置30の構成を示すブロック図である。BDプレーヤ10、AVアンプ20およびディスプレイ装置30は、例えばHDMI規格に準拠しており、HDMIケーブルを介して相互に接続されている。
【0020】
[BDプレーヤ10の構成]
BDプレーヤ10は、再生部11と、HDMI送信部13と、制御部14と、操作表示部15と、メモリ(ROM、RAM、フラッシュメモリ等)16と、コネクタ部17とを有している。
【0021】
再生部11は、ブルーレイディスク(以下、単にディスクという。)に記録されている映像データをディスクから読み出して、HDMI送信部13に供給する。また、再生部11は、ディスクに記録されているエンコードされたマルチチャンネル音声データをディスクから読み出して、HDMI送信部13に供給する。再生部11は、図示しない光ピックアップ、サーボ回路、MPEGデコーダ、音声デコーダ等を含む。
【0022】
HDMI送信部13は、再生部11から供給された映像データおよび音声データを、制御部14からのコマンドにより、HDMI規格のデータ(以下、HDMIデータという。)に変換する。HDMI送信部13は、HDMIデータをコネクタ部17を介してHDMIケーブル経由でAVアンプ20に送信する。HDMI送信部13は、HDMIデータを送受信するTMDSライン(通常は複数存在するが図2では簡単のため1本のラインのみを記載している)、および、接続の有無を判断するためのホットプラグを介して、AVアンプ20のHDMI受信部21に接続される。また、HDMI送信部13は、認証情報やEDIDを読み出すためのDDCラインを介してAVアンプ20のHDMI受信部21、PROMに接続されている。
【0023】
制御部14は、内蔵又は接続されたメモリ16に格納されているBDプレーヤの動作プログラムに基づいて、再生部11、HDMI送信部13、操作表示部15、メモリ16等を制御するものであり、例えば、マイクロコンピュータやCPU等である。制御部14は、操作表示部15からの操作入力または各部からの制御信号およびデータに基づいて各種処理を実行する。
【0024】
制御部14は、CECラインを介してAVアンプ20の制御部23に接続され、制御部23とコマンドおよび/またはデータを送受信する。
【0025】
[AVアンプ20の構成]
次に、AVアンプ20の構成を説明する。AVアンプ20は、HDMI受信部21と、HDMI送信部22と、制御部23と、操作表示部24と、メモリ(ROM、RAM、フラッシュメモリ等)25と、音声処理部26と、コネクタ部27、28とを有している。
【0026】
HDMI受信部21は、BDプレーヤ10から送信されたHDMIデータを受信して、受信したHDMIデータから元の映像データ(HDMI変換前の映像データ)を生成して、HDMI送信部22に供給する。また、HDMI受信部21は、受信したHDMIデータから元のマルチチャンネル音声データを生成して、音声処理部26に供給する。
【0027】
音声処理部26は、HDMI受信部21から供給されたマルチチャンネル音声データをデコードし、音響処理、D/A変換処理、ボリューム調整処理、増幅処理等の各処理を実行し、外部に接続されたスピーカー60(図1の各スピーカーに対応)に各チャンネルの音声信号を供給する。また、必要に応じて、音声処理部26は、第1チャンネル音声データをHDMI送信部22に供給する。
【0028】
ここで、音声処理部26に供給されるマルチチャンネル音声データについて説明する。例えば、マルチチャンネル音声データは、左音声データL、右音声データR、中央音声データC、低域音声データSW、サラウンド左音声データSL、サラウンド右音声データSRを含む5.1chのマルチチャンネル音声データが採用されている。また、最近では、Dolby True HD、Dolby Digital Plus、DTS-HD等のHD(High
Definition)関連の音声フォーマットが登場してきており、これらのフォーマットにおいては、例えば、サラウンド後方左音声データSBL、サラウンド後方右音声データSBR、左上側音声データLh、右上側音声データRh、左外側音声データLw、右外側音声データRwがさらに追加されている。
【0029】
図3は、音声処理部26の構成を示すブロック図である。音声処理部26は、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)41と、DAC(デジタル−アナログ変換器)50と、ボリューム調整部51と、増幅処理部(プリアンプ、パワーアンプ等)52と、変換部53とを有する。
【0030】
DSP41は、HDMI受信部21から供給されるマルチチャンネル音声データをデコードし、デコードされた各チャンネルの音声データ(例えば、左音声データL、右音声データR、中央音声データC、低域音声データSW、サラウンド左音声データSL、サラウンド右音声データSR等。)を生成する。これらの音声データのうち、左音声データL、右音声データR、中央音声データC、サラウンド左音声データSL、サラウンド右音声データSRは、それぞれ、対応するHPF(高域通過フィルタ)42a〜42eに供給され、かつ、LPF(低域通過フィルタ)44a〜44eに供給される。
【0031】
HPF42a〜42eは、それぞれ、供給されるチャンネルの音声データの高周波数成分を抽出し、遅延手段43a〜43eに供給する。遅延手段43a〜43eは、それぞれ、供給されるチャンネルの音声データを制御部23によって決定された遅延時間だけ遅延させて、後段に供給する。つまり、遅延手段43aは、左音声データLを加算手段48aに供給し、遅延手段43bは、右音声データRを加算手段48bに供給し、遅延手段43cは、中央音声データCをスイッチ手段49に供給し、遅延手段43dは、サラウンド左音声データSLをDAC50に供給し、遅延手段43eは、サラウンド右音声データSRをDAC50に供給する。
【0032】
LPF44a〜44eは、それぞれ、供給されるチャンネルの音声データの低周波数成分を抽出し、減衰手段45aに供給する。減衰手段45aは、供給される各チャンネルの音声データを−20dB減衰させ、加算手段46に供給する。減衰手段45bは、低域音声データSWを受信し、低域音声データSWを−10dB減衰させ、加算手段46に供給する。加算手段46は、供給される低域音声データSWに、供給される左音声データL、右音声データR、中央音声データC、サラウンド左音声データSL、サラウンド右音声データSRの各低周波数成分を加算し、加算後の低域音声データSWを遅延手段43fに供給する。
【0033】
遅延手段43fは、加算手段46から供給された低域音声信号SWを制御部23によって決定された遅延時間だけ遅延させて、加算手段48a、48bおよび増幅手段47に供給する。加算手段48aは、遅延手段43aから供給される左音声データLに、遅延手段43fから供給される低域音声データSWを加算し、加算後の左音声データLをDAC50に供給する。加算手段48bは、遅延手段43bから供給される右音声データRに、遅延手段43fから供給される低域音声データSWを加算し、加算後の右音声データRをDAC50に供給する。増幅手段47は、遅延手段43fから供給される低域音声データSWを20dB増幅し、DAC50に供給する。
【0034】
スイッチ手段49は、遅延手段43cから供給される中央音声データCをDAC50に供給するか、又は、変換部53に供給するかを制御部23の指示に基づいて切換える。つまり、中央音声データCをディスプレイ装置30のスピーカー37で再生する場合には、スイッチ手段49は中央音声データCを変換部53に供給するように下側に切換えられ、中央音声データCをAVアンプ20に接続された中央スピーカーSCで再生する場合には、スイッチ手段49は中央音声データCをDAC50に供給するように上側に切換えられる。
【0035】
DAC50は、DSP41から供給される各チャンネルの音声データをデジタル−アナログ変換し、各チャンネルのアナログ音声信号をボリューム調整部51に供給する。なお、DAC50は、各チャンネル毎に設けられている。
【0036】
ボリューム調整部51は、各チャンネルのアナログの音声信号のボリューム値を調整し、増幅処理部52に供給する。ボリューム調整部51は、各チャンネル毎に可変抵抗等のボリューム調整回路が設けられている。
【0037】
増幅処理部52は、ボリューム調整部51から供給された各チャンネルの音声信号を増幅して、各チャンネルのスピーカー出力端子を介して、各チャンネルのスピーカーに出力する。増幅処理部52は、各チャンネル毎に増幅回路が設けられている。
【0038】
変換部53は、スイッチ手段49から中央音声データCが供給される。また、変換部53は、DSP41からビットクロックBCLK、マスタークロックMCLK及びLRクロックLRCLKが供給される。変換部53は、各クロックに基づいて、中央音声データCをSPDIF(PCM)の音声データに変換し、HDMI送信部22に供給する。
【0039】
図2に戻って、HDMI送信部22は、HDMI受信部21から供給された映像データ、並びに、音声処理部26の変換部53から供給された中央音声データCを、HDMIデータに変換する。HDMI送信部22は、変換したHDMIデータをディスプレイ装置30のHDMI受信部31に送信する。
【0040】
HDMI送信部22は、TMDSラインおよびホットプラグを介して、ディスプレイ装置30のHDMI受信部31に接続されている。また、HDMI送信部22は、DDCラインを介してディスプレイ装置30のPROM及びHDMI受信部31に接続されている。
【0041】
制御部23は、内蔵又は接続されたメモリ25に記憶されているAVアンプ20の動作プログラムに基づいて、HDMI受信部21、HDMI送信部22、操作表示部24、音声処理部26等を制御するものであり、例えば、マイクロコンピュータやCPU等である。制御部23は、操作表示部24からの操作入力または各部からの制御信号およびデータに基づいて各種処理を実行する。
【0042】
制御部23は、ユーザ操作に応じて、中央音声データCをディスプレイ装置30のスピーカー37から再生する指示が入力されたかを判断する。ディスプレイ装置30のスピーカー37から再生する指示が入力された場合、制御部23は、スイッチ手段49を下側に切換えさせ、中央音声データCを変換部53に供給させる。一方、AVアンプ20に接続された中央スピーカーSCから中央音声データCを再生する指示が入力された場合、制御部23は、スイッチ手段49を上側に切換えさせ、中央音声データCをDAC50に供給させる。
【0043】
制御部23は、CECラインを介してBDプレーヤ10の制御部14に接続され、制御部14とコマンドおよびデータを送受信する。また、制御部23は、CECラインを介してディスプレイ装置30の制御部33に接続され、制御部33とコマンドおよびデータを送受信する。
【0044】
制御部23は、ディスプレイ装置30の制御部33から、ディスプレイ装置30の音声処理部36の音声処理にかかる時間(遅延時間)情報を受信する。遅延時間は、例えば、ディスプレイ装置30の音声処理部におけるDSPやデジタルアンプの音声処理にかかる時間である。制御部23は、中央音声データC以外の全てのチャンネルの音声データ(左音声データL、右音声データR、低域音声データSW、サラウンド左音声データSL、サラウンド右音声データSR)の各遅延手段の遅延時間に対して、ディスプレイ装置30の音声処理部36の音声処理にかかる遅延時間を加算する。
【0045】
すなわち、元々、スピーカー配置(中央音声データCについてはディスプレイスピーカーの配置)とリスナーの位置とに基づいて各チャンネルの音声データの遅延時間が算出されて、各遅延手段毎に、遅延手段の遅延時間として設定されているが(これ自体は周知技術である)、中央音声データCを除くチャンネルに対応する遅延手段の遅延時間に、ディスプレイ装置30の音声処理部36の音声処理にかかる遅延時間(ディスプレイ側遅延時間)がさらに加算される。これにより、ディスプレイ装置30のディスプレイスピーカーから再生される音声が、AVアンプ20に接続されたスピーカーから再生される音声に対して遅延が生じることを防止することが出来る。
【0046】
なお、本実施形態において、AVアンプの音声処理部26のDSP41の音声処理でかかる遅延時間は中央音声データCを含む全てのチャンネルについて同じ遅延時間が生じるので問題にならないこととする。また、本実施形態においては、AVアンプ20の増幅処理部52はアナログアンプが採用されているので、ディスプレイ30が備える増幅処理部とは異なり、遅延時間を生じないこととする。また、AVアンプ20のHDMI送信部22やディスプレイ装置30のHDMI受信部31でのHDMI変換処理にかかる時間は無視できる程度にきわめて短い時間であるので、考慮しなくても問題にならない。
【0047】
[ディスプレイ装置30の構成]
次に、再び図2を参照し、ディスプレイ装置30について説明する。ディスプレイ装置30は、HDMI受信部31と、表示部32と、制御部33と、メモリ(ROM、RAM、フラッシュメモリ等)34と、操作部35と、音声処理部36と、スピーカー37(図1における、ディスプレイ左スピーカーSLD及びディスプレイ右スピーカーSRDに対応)と、コネクタ部38とを有する。
【0048】
HDMI受信部31は、AVアンプ20のHDMI送信部22から送信されたHDMIデータを受信して、HDMIデータから元の映像データを生成し、表示部32に供給する。また、HDMI受信部31は、HDMIデータから元の音声データを生成して、音声処理部36に供給する。音声データは、上記の通り、中央音声データCを含むSPDIF(PCM)データである。
【0049】
音声処理部36は、HDMI受信部31から供給された音声データを、音響処理、D/A変換処理、ボリューム調整処理、増幅処理等の各処理を実行し、スピーカー37に供給する。図4は、音声処理部36の概略構成を示すブロック図である。音声処理部36は、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)55、および/または、デジタルアンプ(例えばスイッチングアンプ、D級アンプ、1ビットデジタルアンプ等)56を含む。
【0050】
DSP56は、HDMI受信部31から供給される音声データに音響処理や、デコード処理を実行し、デジタルアンプ56に供給する。デジタルアンプ56は、DSP55から供給される音声データを増幅し、LPF等によってアナログ信号に変換し、音声信号をスピーカーに出力する。すなわち、中央音声データCがディスプレイ左スピーカーSLD、および、ディスプレイ右スピーカーSRDから再生される。上記の通り、DSP55やデジタルアンプ56における音声処理には所定の遅延時間が発生する。
【0051】
図2に戻って、表示部32は、HDMI受信部31から映像データが供給され、当該映像データに基づいて映像を表示するものであり、例えば、LCDまたはPDP等である。
【0052】
制御部33は、内蔵又は接続されたメモリ34に格納されたディスプレイ装置の動作プログラムに基づいて、HDMI受信部31、表示部32、音声処理部36等を制御するものであり、例えば、マイクロコンピュータやCPU等である。制御部33は、操作部35からの操作入力または各部からの制御信号およびデータに基づいて各種処理を実行する。
【0053】
メモリ34には、DSP55やデジタルアンプ56の音声処理にかかる遅延時間情報が予め格納されている。制御部33は、CECラインを介して、AVアンプ20の制御部23に音声処理にかかる遅延時間情報を送信する。
【0054】
制御部33は、AVアンプ20の制御部23からボリューム設定コマンドを受信すると、ボリューム設定コマンドに含まれているボリューム値に基づいて、ボリューム値を制御する。制御部33は、ボリューム値の制御が完了すると、CECラインを介して、AVアンプ20の制御部23にボリューム設定完了通知を送信する。AVアンプ20に、中央音声データCを含むHDMIデータの送信開始を促すためである。
【0055】
[音声再生システムの動作]
以下、本発明の動作を図5のフローチャートを参照し、説明する。図5に示すように、AVアンプ20の制御部23は、ディスプレイ装置30がAVアンプ20に接続されたか否かを判断する(S101)。接続された場合(S101でYES)、制御部23は、ディスプレイ装置30の制御部33に、CECラインを介して、音声処理にかかる遅延時間情報を要求する(S102)。ディスプレイ装置30の制御部33は、音声処理にかかる遅延時間情報の要求を受信すると、メモリ34から音声処理にかかる遅延時間情報を読み出して、CECラインを介して、AVアンプ20に送信する(S201)。AVアンプ20の制御部23は、CECラインを介して、音声処理にかかる遅延時間情報を受信し、メモリ25に保存する(S102)。
【0056】
制御部23は、ユーザ操作によって、ディスプレイ装置30のスピーカーを使用して中央音声データCを再生する指示が入力されたか否かを判断する(S103)。入力された場合(S103でYES)、中央音声データC以外のチャンネルの音声データに対応する各遅延手段に設定されている遅延時間に、ディスプレイ装置30から受信した音声処理にかかる遅延時間を加算する(S104)。すなわち、左音声データL、右音声データR、低域音声データSW、サラウンド左音声データSL、サラウンド右音声データSRに対応する遅延手段43a、43b、43d、43e、43fの遅延時間に、ディスプレイ装置側の遅延時間を加算する。続いて、制御部23は、スイッチ手段49を下側に切換える(S105)。従って、中央音声データCは変換部53に供給されSPDIF形式に変換され、HDMI送信部22でHDMIデータに変換されて、ディスプレイ装置30のHDMI受信部31に送信される。ディスプレイ装置30のHDMI受信部31はHDMIデータを受信し、中央音声データCを生成し、音声処理部36を介してスピーカー37から中央音声データCが再生される。
【0057】
このとき、中央音声データC以外のチャンネルの音声データに対応する各遅延手段に設定されている遅延時間に、ディスプレイ装置30から受信した音声処理にかかる遅延時間を加算することで、ディスプレイ装置30のスピーカー37から再生される中央音声データCの音声が、AVアンプ20に接続されているスピーカーから再生される他のチャンネルの音声に対して遅延することを防止することができる。AVアンプ20に接続されているスピーカーから再生される他のチャンネルの音声を、ディスプレイ装置30のスピーカー37から再生される中央音声データCの音声と同じだけ遅延させることができるからである。
【0058】
一方、S103でディスプレイ装置30のスピーカー37を使用しない(つまり、AVアンプ20に接続されている中央スピーカーSCを使用する)指示がユーザ操作によって入力された場合(S103でNO)、制御部23は、中央音声データC以外のチャンネルの音声データに対応する各遅延手段に設定されている遅延時間に、ディスプレイ装置30から受信した音声処理にかかる遅延時間を加算しない。すなわち、制御部23は、各チャンネルの遅延手段の遅延時間を、通常の方法(スピーカー配置及びリスナーの位置)で決定された遅延時間のみに設定する(S106)。制御部23は、スイッチ手段49を上側に切換える(S107)。従って、中央音声データCは、AVアンプ20に接続されているスピーカーSCから再生される。
【0059】
ここで、中央音声データC以外のチャンネルの音声データに対応する各遅延手段に設定されている遅延時間に、ディスプレイ装置30から受信した音声処理にかかる遅延時間を加算しないことによって、AVアンプ20に接続されている中央スピーカーSC以外のチャンネルのスピーカーから再生される音声が、AVアンプ20に接続されている中央スピーカーSCから再生される音声に対して遅延してしまうことを防止できる。
【0060】
以上のように本実施形態によると、ディスプレイ装置30の音声処理にかかる遅延時間を、ディスプレイスピーカーで再生する中央音声データC以外のチャンネルの音声データの遅延手段の遅延時間に加算することによって、ディスプレイスピーカーから再生される音声が、AVアンプ20に接続されているスピーカーから再生される音声に対して遅延することを防止できる。なお、本実施形態において、スイッチ手段49を設けずに、中央音声データCを必ずディスプレイ装置30のスピーカー37から再生する場合には、図5のフローチャートにおいて、S103、S105、S106、S107の各処理は省略されるとよい。
【0061】
次に本発明の別の好ましい実施形態を説明する。本実施形態では、ディスプレイ装置30のDSP55の音響処理には複数の種類が存在し、種類に応じてそれぞれ遅延時間が異なっている。ディスプレイ装置30のメモリ34には、図6に示す遅延時間テーブルが予め格納されている。遅延時間テーブルは、DSP55の音響処理に対応付けて遅延時間情報が登録されている。
【0062】
図7は本実施形態の動作を示すフローチャートである。AVアンプ20の制御部23は、ディスプレイ装置30がAVアンプ20に接続されたか否かを判断する(S151)。接続された場合(S151でYES)、制御部23は、ディスプレイ装置30の制御部33に、CECラインを介して、音声処理にかかる遅延時間情報を要求する(S152)。ディスプレイ装置30の制御部33は、音声処理にかかる遅延時間情報の要求を受信すると、メモリ34から各音響処理毎の音声処理にかかる遅延時間情報(つまり図6のテーブル)を読み出して、CECラインを介して、AVアンプ20に送信する(S251)。AVアンプ20の制御部23は、CECラインを介して、各音響処理毎の音声処理にかかる遅延時間情報を受信し、メモリ25に保存する(S152)。
【0063】
ディスプレイ装置30の制御部33は、DSP55に設定されている音響処理の種類を特定し、特定した音響処理の種類を、CECラインを介して、AVアンプ20の制御部23に送信する(S252)。AVアンプ20の制御部23は、DSP55に設定されている音響処理の種類を受信し(S153)、受信した音響処理の種類に対応する遅延時間をS152で受信した遅延時間の中から特定し、メモリに保存する。この処理は、ユーザ操作によって音響処理の種類が変更される毎に実行される。つまり、ユーザ操作によって音響処理の種類が変更される毎に、AVアンプ20の制御部23が各遅延手段の遅延時間に加算する遅延時間を変更する。
【0064】
なお、ディスプレイ装置30の制御部33が、特定した音響処理に対応する遅延時間を図6のテーブルから特定し、特定した遅延時間情報をAVアンプ20の制御部23にCECラインを介して送信するようにしてもよい。この場合、図6のテーブルをAVアンプ20側で保存しておく必要がなくなる。
【0065】
制御部23は、ユーザ操作によって、ディスプレイ装置30のスピーカーを使用して中央音声データCを再生する指示が入力されたか否かを判断する(S154)。入力された場合(S154でYES)、中央音声データC以外のチャンネルの音声データに対応する各遅延手段に設定されている遅延時間に、S153で特定したディスプレイ装置30の現在の音響処理に対応する遅延時間を加算する(S155)。制御部23は、スイッチ手段49を下側に切換える(S156)。従って、中央音声データCは変換部53に供給されSPDIF形式に変換され、HDMI送信部22でHDMIデータに変換されて、ディスプレイ装置30のHDMI受信部31に送信される。ディスプレイ装置30のHDMI受信部31はHDMIデータを受信し、中央音声データCを生成し、音声処理部36を介してスピーカー37から中央音声データCが再生される。
【0066】
このとき、中中央音声データC以外のチャンネルの音声データに対応する各遅延手段に設定されている遅延時間に、ディスプレイ装置30の現在の音響処理に対応する遅延時間を加算することで、ディスプレイ装置30のスピーカー37から再生される中央音声データCの音声が、AVアンプ20に接続されているスピーカーから再生される他のチャンネルの音声に対して遅延することを防止することができる。
【0067】
一方、S154でディスプレイ装置30のスピーカー37を使用しない(つまり、AVアンプ20に接続されている中央スピーカーSCを使用する)指示がユーザ操作によって入力された場合(S154でNO)、制御部23は、中央音声データC以外のチャンネルの音声データに対応する各遅延手段に設定されている遅延時間に、ディスプレイ装置30の現在の音響処理に対応する遅延時間を加算しない。すなわち、制御部23は、各チャンネルの遅延手段の遅延時間を、通常の方法(スピーカー配置及びリスナーの位置)で決定された遅延時間に設定する(S157)。制御部23は、スイッチ手段49を上側に切換える(S158)。従って、中央音声データCは、AVアンプ20に接続されているスピーカーSCから再生される。
【0068】
次に、本発明のさらに別の好ましい実施形態を説明する。本実施形態では、AVアンプ20の増幅処理部52がデジタルアンプで実現されている等の理由で、音声処理部26におけるDSP41以外の音声処理において遅延時間が生じることとする。この場合に、ディスプレイ装置30の音声処理にかかる遅延時間だけでなく、AVアンプ20のDSP41以外の音声処理にかかる遅延時間を考慮して遅延時間を設定する。AVアンプ20のDSP41以外の音声処理にかかる遅延時間とは、すなわち、中央音声データCを除く他のチャンネルの音声データに対する音声処理のみに生じる遅延時間のことであり、この遅延時間はメモリに予め格納されている。
【0069】
図8は、本実施形態の動作を説明するフローチャートである。AVアンプ20の制御部23は、ディスプレイ装置30がAVアンプ20に接続されたか否かを判断する(S171)。接続された場合(S171でYES)、制御部23は、ディスプレイ装置30の制御部33に、CECラインを介して、音声処理にかかる遅延時間情報を要求する(S172)。ディスプレイ装置30の制御部33は、音声処理にかかる遅延時間情報の要求を受信すると、メモリ34から音声処理にかかる遅延時間情報を読み出して、CECラインを介して、AVアンプ20に送信する(S271)。AVアンプ20の制御部23は、CECラインを介して、音声処理にかかる遅延時間情報を受信し、メモリ25に保存する(S172)。
【0070】
制御部23は、ユーザ操作によって、ディスプレイ装置30のスピーカーを使用して中央音声データCを再生する指示が入力されたか否かを判断する(S173)。入力された場合(S173でYES)、ディスプレイ装置30の音声処理にかかる遅延時間は、AVアンプ20のDSP以外の音声処理にかかる遅延時間よりも大きいか否かを判断する(S174)。大きい場合(S174でYES)、制御部23は、ディスプレイ装置30の音声処理にかかる遅延時間から、AVアンプ20のDSP以外の音声処理にかかる遅延時間を減算し、補正用の遅延時間を算出する(S175)。
【0071】
制御部23は、中央音声データC以外のチャンネルの音声データに対応する各遅延手段に設定されている遅延時間に、S175で算出した補正用の遅延時間を加算する(S176)。制御部23は、スイッチ手段49を下側に切換える(S177)。従って、中央音声データCは変換部53に供給されSPDIF形式に変換され、HDMI送信部22でHDMIデータに変換されて、ディスプレイ装置30のHDMI受信部31に送信される。ディスプレイ装置30のHDMI受信部31はHDMIデータを受信し、中央音声データCを生成し、音声処理部36を介してスピーカー37から中央音声データCが再生される。
【0072】
このとき、中央音声データC以外のチャンネルの音声データに対応する各遅延手段に設定されている遅延時間に、S175で算出した補正用の遅延時間を加算することで、ディスプレイ装置30のスピーカー37から再生される中央音声データCの音声が、AVアンプ20に接続されているスピーカーから再生される他のチャンネルの音声に対して遅延することを防止することができる。
【0073】
一方、S174で大きくないと判断された場合(S174でNO)、制御部23は、AVアンプ20のDSP以外の音声処理にかかる遅延時間から、ディスプレイ装置30の音声処理にかかる遅延時間を減算し、補正用の遅延時間を算出する(S178)。
【0074】
制御部23は、中央音声データCに対応する遅延手段に設定されている遅延時間に、S178で算出した補正用の遅延時間を加算する(S179)。制御部23は、スイッチ手段49を下側に切換える(S177)。このとき、中央音声データCに対応する遅延手段に設定されている遅延時間に、S178で算出した補正用の遅延時間を加算することで、AVアンプ20に接続されているスピーカーから再生される他のチャンネルの音声が、ディスプレイ装置30のスピーカー37から再生される中央音声データCの音声に対して遅延することを防止することができる。
【0075】
一方、S173でディスプレイ装置30のスピーカー37を使用しない(つまり、AVアンプ20に接続されている中央スピーカーSCを使用する)指示がユーザ操作によって入力された場合(S173でNO)、制御部23は、中央音声データC以外のチャンネルの音声データに対応する各遅延手段に設定されている遅延時間に、ディスプレイ装置30から受信した音声処理にかかる遅延時間を加算しない。すなわち、制御部23は、各チャンネルの遅延手段の遅延時間を、通常の方法(スピーカー配置及びリスナーの位置)で決定された遅延時間に設定する(S180)。制御部23は、スイッチ手段49を上側に切換える(S181)。従って、中央音声データCは、AVアンプ20に接続されているスピーカーSCから再生される。
【0076】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。AVアンプ20にBDプレーヤ10の機能が含まれていてもよく、この場合、HDMI受信部21は不要になる。また、AVアンプ20が、BDプレーヤ10に代えてTVチューナやラジオチューナ等の受信機からHDMIデータを受信してもよい。また、ディスプレイ装置に送信される音声データは、HDMIケーブルを介して送信されるのではなく、光デジタルケーブル等で送信されてもよい。この場合、別途他の通信ケーブルを介して周波数特性の情報が送信されるとよい。つまり、周波数特性情報はCEC以上の他の通信方式(USB、IEEE1304等)で送信されてもよい。また、AVアンプの上記動作をコンピュータに実行させるためのプログラムおよびこれを記録した記録媒体という形態で提供されてもよい。また、AVアンプの上記動作の一部のみのプログラムを、AVアンプにファームウェアアップデートという形態で提供されてもよい。さらには、AVアンプの上記動作の一部のみのプログラムが格納されたDSP、マイコンなどの電子部品という形態で提供されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、AVアンプ等に好適に採用され得る。
【符号の説明】
【0078】
10 BDプレーヤ
11 再生部
13 HDMI送信部
14 制御部
15 操作表示部
16 メモリ
17 コネクタ部
20 AVアンプ
21 HDMI受信部
22 HDMI送信部
23 制御部
24 操作表示部
25 メモリ
26 音声処理部
27 コネクタ部
28 コネクタ部
30 ディスプレイ装置
31 HDMI受信部
32 表示部
33 制御部
34 メモリ
35 操作部
36 音声処理部
37 ディスプレイスピーカー
38 コネクタ部
41 DSP
42a〜42e HPF
43a〜43e 遅延手段
44a〜44e LPF
45a〜45b 減衰手段
46 加算手段
47 増幅手段
48a〜48b 加算手段
49 スイッチ手段
50 DAC
51 ボリューム調整部
52 増幅処理部
55 DSP
56 DAC
57 ボリューム調整部
58 増幅処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイスピーカーを備えるディスプレイ装置と、複数のスピーカーとが接続可能な音声処理装置であって、
マルチチャンネル音声データに含まれる第1チャンネル音声データを設定手段によって設定された遅延時間だけ遅延させる第1遅延手段と、
前記第1遅延手段によって遅延された第1チャンネル音声データを前記ディスプレイ装置に送信し、前記ディスプレイスピーカーから再生させる送信手段と、
前記マルチチャンネル音声データに含まれる第2チャンネル音声データを前記設定手段によって設定された遅延時間だけ遅延させる第2遅延手段と、
前記第2遅延手段によって遅延された前記第2チャンネル音声データを、前記音声処理装置に接続されたスピーカーから再生させる再生手段と、
前記ディスプレイ装置の音声処理にかかるディスプレイ側遅延時間を前記ディスプレイ装置から受信する受信手段と、
前記第1遅延手段および前記第2遅延手段の各遅延時間を設定し、かつ、前記ディスプレイ装置の音声処理にかかるディスプレイ側遅延時間を前記第2遅延手段の遅延時間に加算する前記設定手段とを備える、音声処理装置。
【請求項2】
前記第1チャンネル音声データを前記ディスプレイスピーカーから再生するか、又は、前記第1チャンネル音声データを前記音声処理装置に接続されたスピーカーから再生するかをユーザ操作に応じて切換える切換手段をさらに備え、
前記第1チャンネル音声データを前記ディスプレイスピーカーから再生する場合に、前記ディスプレイ装置の音声処理にかかるディスプレイ側遅延時間を前記第2遅延手段の遅延時間に加算し、
前記第1チャンネル音声データを前記音声処理装置に接続されたスピーカーから再生する場合に、前記ディスプレイ装置の音声処理にかかるディスプレイ側遅延時間を前記第2遅延手段の遅延時間に加算しない、請求項1に記載の音声処理装置。
【請求項3】
前記ディスプレイ装置の各音響処理毎にディスプレイ側遅延時間が異なっており、
前記設定手段が、前記ディスプレイ装置の現在設定されている音響処理に対応するディスプレイ側遅延時間を特定し、前記第2遅延手段の遅延時間に加算する、請求項1に記載の音声処理装置。
【請求項4】
前記ディスプレイ装置の音声処理にかかるディスプレイ側遅延時間と、前記第1チャンネル音声データには実行されず前記第2チャンネル音声データに実行される前記音声処理装置の音声処理にかかる音声処理装置側遅延時間とを比較する比較手段と、
前記ディスプレイ側遅延時間が前記音声処理装置側遅延時間よりも大きい場合、前記ディスプレイ側遅延時間から前記音声処理装置側遅延時間を減算して補正用遅延時間を算出し、前記音声処理装置側遅延時間が前記ディスプレイ側遅延時間よりも大きい場合、前記音声処理装置側遅延時間から前記ディスプレイ側遅延時間を減算して補正用遅延時間を算出する算出手段とをさらに備え、
前記ディスプレイ側遅延時間が前記音声処理装置側遅延時間よりも大きい場合、前記設定手段が、前記補正用遅延時間を前記第2遅延手段の遅延時間に加算し、
前記音声処理装置側遅延時間が前記ディスプレイ側遅延時間よりも大きい場合、前記設定手段が、前記補正用遅延時間を前記第1遅延手段の遅延時間に加算する、請求項1に記載の音声処理装置。
【請求項5】
複数のスピーカーが接続可能であり、マルチチャンネル音声データに含まれる第1チャンネル音声データを設定手段によって設定された遅延時間だけ遅延させる第1遅延手段と、前記第1遅延手段によって遅延された第1チャンネル音声データをディスプレイ装置に送信する送信手段と、前記マルチチャンネル音声データに含まれる第2チャンネル音声データを前記設定手段によって設定された遅延時間だけ遅延させる第2遅延手段と、前記第2遅延手段によって遅延された前記第2チャンネル音声データを、前記音声処理装置に接続されたスピーカーから再生させる再生手段と、前記ディスプレイ装置の音声処理にかかるディスプレイ側遅延時間を前記ディスプレイ装置から受信する受信手段と、前記第1遅延手段および前記第2遅延手段の各遅延時間を設定し、かつ、前記ディスプレイ装置の音声処理にかかるディスプレイ側遅延時間を前記第2遅延手段の遅延時間に加算する前記設定手段とを備える音声処理装置が接続可能な前記ディスプレイ装置であって、
ディスプレイスピーカーと、
前記第1遅延手段によって遅延された第1チャンネル音声データを受信する音声受信手段と、
前記第1遅延手段によって遅延された第1チャンネル音声データを前記ディスプレイスピーカーから再生する音声再生手段と、
前記ディスプレイ装置の音声処理にかかるディスプレイ側遅延時間を前記音声処理装置に送信する情報送信手段とを備える、ディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−90303(P2013−90303A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232274(P2011−232274)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(710014351)オンキヨー株式会社 (226)
【Fターム(参考)】