説明

音声出力装置

【課題】 スピーカーによる振動の影響を軽減し特にハードディスクの振動軽減に適する音声出力装置を提供する。
【解決手段】 ハードディスク装置を内蔵する音声出力装置であって、音声信号を出力する第1のスピーカーと、前記第1のスピーカーの出力する音声信号の逆位相の音声信号を生成する手段と、この逆位相の音声信号を前記ハードディスク装置に向けて出力する第2のスピーカー108とを具備することを特徴とする音声出力装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声出力装置に係り、特にハードディスク装置を内蔵する音声出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビジョン受像装置等における映像・音声信号を録画する用途等で、ハードディスクが用いられる機器が普及している。これらの機器では映像・音声信号をユーザーの視聴のために再生することが一般に行われている。
【0003】
しかしながら、音声信号をスピーカーを用いて出力するとき、振動がハードディスクに伝わり、そしてハードディスクは振動に弱い部品であるので対策が求められることとなる。
【0004】
特許文献1による技術は、音声発生用スピーカーが音を発する際、受像管に取り付けられた振動吸収用スピーカーが、音声発生用スピーカーとは位相が反転された音声信号に基づいて音を発することにより、音声発生用スピーカーから発せられた音波による受像管の振動が吸収され、シャドウマスクの揺れを緩和するものである。しかし、受像管以外の他の部品や装置の振動軽減に対しての対策は講じられてない。
【特許文献1】特開2003−44055号公報(7頁、図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、スピーカーによる振動の影響を軽減し特にハードディスク装置の振動軽減に適する音声出力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の音声出力装置は、ハードディスク装置を内蔵する音声出力装置であって、音声信号を出力する第1のスピーカーと、前記第1のスピーカーの出力する音声信号の逆位相の音声信号を生成する手段と、この逆位相の音声信号を前記ハードディスク装置に向けて出力する第2のスピーカーとを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、スピーカーによる振動の影響を軽減し特にハードディスク装置の振動軽減に適する音声出力装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0009】
本発明による実施例1を図1乃至図6を参照して説明する。
図1は、この発明の実施の形態で説明するテレビジョン放送受信装置11の正面側の外観を示す図である。すなわち、このテレビジョン放送受信装置11は、主として、装置本体となるほぼ薄型の直方体形状に形成されたキャビネット12と、このキャビネット12を起立させて支持するスタンド13とから構成されている。
【0010】
そして、上記キャビネット12には、その正面に、例えば平面型液晶表示パネル等でなる映像表示器(映像表示部)14の表示画面14aが露出されるとともに、一対のスピーカー15、操作部16、図示せぬリモートコントローラから送信される操作情報を受けるための受光部18等が配置されている。
【0011】
ここで、上記キャビネット12あるいは上記スタンド13は、その内部に後述するHDDユニット(図1では図示せず)20を収容可能となされている。
図2は、この発明の実施の形態で説明するテレビジョン放送受信装置11の信号処理系を概略的に示す図である。この信号処理系を構成する各種の回路ブロックは、主として、上記キャビネット12の内部で背面に近い位置、つまり、上記映像表示器14の表示画面14aの裏側あたりに配置されている。
【0012】
そして、デジタルテレビジョン放送受信用のアンテナ22で受信したデジタルテレビジョン放送信号は、入力端子23を介してチューナ部24に供給される。このチューナ部24は、入力されたデジタルテレビジョン放送信号から所望のチャンネルの信号を選局し復調している。そして、このチューナ部24から出力された信号は、デコーダ部25に供給されて、例えばMPEG(moving picture experts group)2デコード処理が施された後、セレクタ26に供給される。
【0013】
さらに、アナログテレビジョン放送受信用のアンテナ27で受信したアナログテレビジョン放送信号は、入力端子28を介してチューナ部29に供給される。このチューナ部29は、入力されたアナログテレビジョン放送信号から所望のチャンネルの信号を選局し復調している。そして、このチューナ部29から出力された信号は、A/D(analog/digital)変換部30によりデジタル化された後、上記セレクタ26に出力される。
【0014】
また、アナログ信号用の入力端子31に供給されたアナログの映像及び音声信号は、A/D変換部32に供給されてデジタル化された後、上記セレクタ26に出力される。さらに、デジタル信号用の入力端子33に供給されたデジタルの映像及び音声信号は、そのまま上記セレクタ26に供給される。
【0015】
上記セレクタ26は、4種類の入力デジタル映像及び音声信号から1つを選択して、信号処理部34に供給している。この信号処理部34は、入力されたデジタル映像信号に所定の信号処理を施して上記映像表示器14での映像表示に供させている。この映像表示部14としては、例えば、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等でなるフラットパネルディスプレイが採用される。また、上記信号処理部34は、入力されたデジタル音声信号に所定の信号処理を施し、アナログ化して上記スピーカー15に出力することにより、音声再生を行なっている。
【0016】
ここで、このテレビジョン放送受信装置11は、上記した各種の受信動作を含む種々の動作を制御部35によって統括的に制御されている。この制御部35は、CPU(central processing unit)等を内蔵したマイクロプロセッサであり、上記操作部16や操作子21(図2では図示せず)からの操作情報、または、上記リモートコントローラ17から送信された操作情報を、受光部18を介して受けることにより、その操作内容が反映されるように各部をそれぞれ制御している。
【0017】
ここでは、制御部35は、メモリ部36を使用している。このメモリ部36は、主として、そのCPUが実行する制御プログラムを格納したROM(read only memory)と、該CPUに作業エリアを提供するためのRAM(random access memory)と、各種の設定情報及び制御情報等が格納される不揮発性メモリとを備えている。
【0018】
ここで、上記制御部35は、例としてスタンド13内に収容されたHDD(ハードディスクドライブ)ユニット20と接続されている。この場合、制御部35からHDDユニット20に電源電力及び制御信号の供給を行なうライン37は、接続部38を介して制御部26とHDDユニット20とを接続している。
【0019】
また、制御部35とHDDユニット20との間でデジタル映像及び音声信号を授受するライン39は、接続部40を介して制御部35とHDDユニット20とを接続している。すなわち、制御部35とHDDユニット20との間でのデジタル映像及び音声信号の伝送は、電源及び制御信号とによって行なわれる。
【0020】
そして、上記テレビジョン放送受信装置11は、セレクタ26で選択されたデジタルの映像及び音声信号を、HDDユニット20により記録することができるとともに、HDDユニット20に記録されたデジタルの映像及び音声信号を再生し、視聴に供させることができる。
【0021】
図3は、図2の概略構成の一部を成しHDD振動吸収に関連する信号処理系のブロック図である。図2の信号処理部34とスピーカー15と制御部35とHDDユニット20に関する詳細な構成を表している。図2のセレクタ26よりの映像・音声信号が信号処理部34に入力され、正極性の音声信号だけスピーカー15に出力される。同じ音声信号をインバーター103で位相反転に変換する。位相反転された音声信号を位相調整部104に入力して、筐体にからの反射した音声とスピーカーからの音声が重畳した複合音声に合わせて位相調整を行う。位相調整後の音声信号を帯域フィルター105に入力して、HDD109が音声の共振振動を起こす周波数だけを抽出する。帯域フィルター105から帯域制限された位相反転の音声信号を振幅調整部106にて、HDD109に到達する正極性の音声信号レベルと同量の音声レベルになるように振幅調整をおこなう。振幅調整部106から、音声信号が振動抑制用サブスピーカー108に入力されて、HDD109に対して音声が送出されるよう構成されている。この時にHDD109に到達する正極性の音声に対して、反転された逆極性の音声が重畳されて、HDDに到達する共振周波数の音声は減衰される事により、音声によるHDDの振動を抑える事ができる。
【0022】
また、HDD109と振動抑制用サブスピーカー108は、HDD収納筐体110に格納される事により振動用抑制用サブスピーカー108からの音声が外部に漏れるのを抑える事ができる。HDD109は、制御部35の一部であるHDD制御部35aから記録用のデータを記録する。HDD制御部35aには映像・音声のもととなるデジタル化されたデータが入力されている。振動抑制用サブスピーカー108とHDD109とHDD収納筐体110からHDDユニット20は構成されている。また、インバーター103、位相調整部104、帯域フィルター105、振幅調整部106は例えば制御部35で制御されるメモリ部36上のプログラムと付随データにより構成されている。
【0023】
音声信号としては一般に音楽や自然音等も含まれるが、人の声を例に以下動作を説明する。
図4は、音声信号の表現としての音声波形の一例である。図4(a)は「サ」を発声したときの音声信号の振幅の時間変化の一部を表す。摩擦子音部/s/と続く過渡部、定常母部/a/とからなる。また図4(b)は定常母部/a/を10ms単位にフーリエ変換を行ったときの周波数スペクトルである。縦軸は強度であり横軸は周波数(単位はkHz)である。
【0024】
この図は男声サンプルを示しており、(b)では細かな波形で示す調波線スペクトルwと、線形予測分析等で得られるそのスペクトルエンベロープ(包絡)eとを示している。スペクトルエンベロープeからは所謂ホルマント(共振)が3つ認められ、第3ホルマントは2.5kHz近辺に位置している。なお、他の母音/i/、/u/などでは第3ホルマント等の位置は変わるが、2.5kHz近辺の強度は高い。
【0025】
図5は、図4と同様の表現の図である。図4が信号処理部34からスピーカー15へ導かれる信号に関するものであるのに対して、更にインバーター103により位相反転されたあとの様子を示している。図5(a)は、図4(a)の定常母部/a/の矢印で示した10ms区間の位相反転波形である。図5(b)は、図4(b)とほぼ同一に得られた周波数スペクトルエンベロープである。
【0026】
更に位相調整部104を通したとき各部の反射による波形分が重畳されるが時間遅れ等を含み波形表現が煩瑣になるので重畳分の図による説明は省略する。
図6は、信号を更に帯域フィルター105を通したあとの強度を分析した場合を示している図である。2.5kHz近辺がHDD109に影響が大きいとしてその帯域を通す設計をした場合の例であり、他の帯域は強度が低減されている。余計な電力を使わず、他の帯域による他の部品への共振等の弊害が防がれている。
【0027】
本発明の実施形態は、概略的には次のようである。
TVセットにHDD等を内蔵している場合に、TVセットのスピーカーからの音声出力により、HDDが振動する問題があって、HDDが振動することにより録画データが破綻したりする為、振動を軽減する対策が必要である。
【0028】
振動を軽減する処置としてラバー、ブッシング等振動吸材を使う対策があるが、それでも、ある固有の周波数に置いて直接HDDに音声信号が共振することがある。そこで、特定の共鳴しやすい周波数において、TVのスピーカー出力の音声信号の反対の位相の音声信号を作り出し、HDDだけに伝わる密閉された空間にスピーカーを設けて、音声信号を出力する。これにより、逆相の音声によってHDDへ伝わる音声が相殺される事で共鳴振動を抑えることができる。また、スピーカーもしくは、密閉された空間(box、筐体)自身が振動する事で、TVセット自体の振動も抑制できる。振動の形態は、スピーカーをboxと固定しないか又はするかによってどちらの形態も可能であり、有効な方を採用すればよい。
【0029】
以上の機能を提供する技術である本実施形態により各ユーザーは、音声スピーカーからの音声によるHDDの振動によって引き起こされる録画データの破壊、やHDDの故障を防ぐことができる。
【0030】
本発明をまとめれば受像システムのスピーカー音声によりHDDとセットが振動する状態で、スピーカー音声の反転した位相の音声信号を成形してHDDの方向に別のスピーカーを設けて、HDDに伝わる音声波を相殺させて、HDDの振動を抑制する。
【0031】
本発明を利用することにより、スピーカーからの音声によるHDDの振動を無くす事ができる為、振動によるHDDの読み込み/書き込みミスを無くすことができる他、HDDそのものの振動による破損を防ぐことができる。
【0032】
なお、この発明は上記実施例に限定されるものではなく、この外その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
また、上記した実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜に組み合わせることにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良いものである。さらに、異なる実施の形態に係る構成要素を適宜組み合わせても良いものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この発明の実施の形態で説明するテレビジョン放送受信装置の正面側外観を示す斜視図。
【図2】同実施例で説明するテレビジョン放送受信装置11の信号処理系を概略的に示す図。
【図3】同実施例のHDD振動吸収に関連する信号処理系のブロック図。
【図4】同実施例の音声信号の一例を示した図。
【図5】同実施例の音声信号の一例の逆位相信号を示した図。
【図6】同実施例の音声信号の一例のフィルター処理を示した図。
【符号の説明】
【0034】
11…テレビジョン放送受信装置、12…キャビネット、14…映像表示器(映像表示部)、15…スピーカー、16…操作部、18…受光部、20…HDDユニット(記録手段)、22…アンテナ、23…入力端子、24…チューナ部、25…デコーダ部、26…セレクタ、27…アンテナ、28…入力端子、29…チューナ部、30…A/D変換部、31…入力端子、32…A/D変換部、33…入力端子、34…信号処理部、35…制御部、35a…HDD制御部、36…メモリ部、37…ライン、38…接続部、39…ライン、40…接続部、103…位相反転部(インバーター)、104…位相調整部、105…帯域フィルター、106…振幅調整部、108…振動抑制用サブスピーカー、109…HDD、110…HDD収納筐体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハードディスク装置を内蔵する音声出力装置において、
音声信号を出力する第1のスピーカーと、
前記第1のスピーカーの出力する音声信号の逆位相の音声信号を生成する手段と、
この逆位相の音声信号を前記ハードディスク装置に向けて出力する第2のスピーカーとを
備えたことを特徴とする音声出力装置。
【請求項2】
前記ハードディスク装置の共振周波数を選択的に通過させるようなフィルターを備え、
前記逆位相の音声信号としてこのフィルターを通過させた後の信号を第2のスピーカーに出力させることを特徴とする請求項1に記載の音声出力装置。
【請求項3】
装置内部に伝わる複合音声信号に前記第2のスピーカーの出力を合わせるように働く位相調整手段を備え、
前記フィルターをかける前または後の信号にこの位相調整手段による調整を更に施すことを特徴とする請求項2に記載の音声出力装置。
【請求項4】
前記ハードディスク装置に届く前記第1のスピーカーの出力する音声が前記第2のスピーカーの出力音声により相殺するように前記第2のスピーカーに入力される前記逆位相の音声信号の振幅を制御する手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の音声出力装置。
【請求項5】
前記ハードディスク装置を収納する密閉筐体を備え、
前記第2のスピーカーはこの密閉筐体内に収納されていることを特徴とする請求項1に記載の音声出力装置。
【請求項6】
前記ハードディスク装置を収納する密閉筐体を備え、
前記第2のスピーカーはこの密閉筐体内にあり密閉筐体と密着するよう取付けられていることによって密閉筐体と一体となって振動するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の音声出力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−83392(P2008−83392A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−263310(P2006−263310)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】