説明

音声符号化装置、音声復号化装置及びこれらの方法

【課題】 高性能のスケーラブルコーデックを実現すること。
【解決手段】 LPC分析部551は、入力音声301に対してコア復号器305から得られる合成LPCパラメータを用いて効率のよい量子化を行い、復号化LPC係数を得る。適応符号帳552には、コア復号器305から得られる適応符号帳の音源符号が格納される。適応符号帳552と確率的符号帳553は音源サンプルをゲイン調整部554へ送る。ゲイン調整部554は、それぞれの音源サンプルにコア復号器305から得られるゲインパラメータに基づくアンプを乗じた後加算して音源ベクトルを得、そしてそれをLPC合成部555へ送る。LPC合成部555は、ゲイン調整部554で得られた音源ベクトルに対してLPCパラメータを用いたフィルタリングを行い、合成音を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声・楽音信号を符号化して伝送する通信システムに使用される音声符号化装置、音声復号化装置及びこれらの方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、第3世代携帯電話の普及によりパーソナル音声通信は新たな時代に入った。また、IP電話等のパケット通信により音声を送るサービスが拡大し、2010年にサービスインが予定されている第4世代携帯電話はallIPのパケット通信で通話が行われることにほぼ決まっている。同サービスは異種網間の通信もシームレスに行えるようにするものであり、様々な伝送容量に対応した音声コーデックが求められている。ETSIの標準方式AMRの様に複数の圧縮レートのコーデックを用意しているものもあるが、伝送中に伝送容量を削減したい場合が頻出する異種網間通信では、トランスコーデックによる音質劣化を受けない音声通信が必要となる。そこで近年、世界中のメーカ、キャリア等の研究機関で階層型符号化(スケーラブルコーデック)が研究開発されており、ITU−T標準化でも課題(ITU−T SG16、WP3、Q.9の「EV」とQ.10の「G.729EV」)となっている。
【0003】
階層型符号化とは、まずコア符号器にて符号化を行い、次に拡張符号器にてコア符号器で求められた符号に加えればより音質が良くなる拡張符号を求め、これを段階的に重ねてビットレートを上げていくという符号化である。例えば、3つの符号器(コア符号器4kbps、第1拡張符号器3kbps、第2拡張符号器2.5kbps)があれば、4kbps、7kbps、9.5kbpsの3種類のビットレートの音声を出力することができる。
【0004】
階層型符号化では、伝送の途中でビットレートを変えることができ、上記3つの符号器により9.5kbpsを伝送している途中でコア符号器の4kbpsの符号だけを復号化して音声を出力することもでき、コア符号器と第1拡張符号器の7kbpsの符号だけを復号化して音声を出力することもできる。したがって、階層型符号化により、トランスコーデックを介すことなく、異種網間通信を行うことができる。
【0005】
階層型符号化の基本構成にはマルチステージ型とコンポーネント型があり、符号化歪を各符号器で確定できるマルチステージ型の方がコンポーネント型よりも有効である可能性もあり、将来において主流になる可能性がある。
【0006】
非特許文献1には、ITU−T標準のG.729をコア符号器にした2階層のスケーラブルコーデックについてそのアルゴリズムが開示されている。非特許文献1には、コンポーネント型について拡張符号器におけるコア符号器の符号の利用方法について示されている。特にピッチ補助についてはその性能の有効性が示されている。
【非特許文献1】片岡章俊、林伸二「G.729を構成要素として用いるスケーラブル広帯域音声符号化」電子情報通信学会論文誌D−II Vol.J86−D−II N0.3 pp.379―387(2003年3月)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のマルチステージ型の階層型符号化では、下位レイヤ(コア符号器、下位の拡張符号器)の符号を復号化することによって得られる情報の利用方法が確立されていないため、音質が十分に向上しないという問題がある。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、高性能のスケーラブルコーデックを実現することができる音声符号化装置、音声復号化装置及びこれらの方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の音声符号化装置は、入力信号をn階層(nは2以上の整数)の符号化情報で符号化する符号化装置であって、入力信号を符号化して第1階層の符号化情報を生成する基本レイヤ符号化手段と、第i階層(iは1以上n−1以下の整数)の符号化情報を復号化して第i階層の復号化信号を生成する第i階層の復号化手段と、前記入力信号と第1階層の復号化信号との差分である第1階層の差分信号あるいは第(i−1)階層の復号化信号と第i階層の復号化信号との差分である第i階層の差分信号を求める加算手段と、第i階層の差分信号を符号化して第(i+1)階層の符号化情報を生成する第(i+1)階層の拡張レイヤ符号化手段と、を具備し、前記第(i+1)階層の拡張レイヤ符号化手段は、前記第i階層の復号化手段の情報を利用して符号化処理を行う構成を採る。
【0010】
本発明の音声復号化装置は、入力信号をn階層(nは2以上の整数)の符号化情報を復号化する復号化装置であって、入力した第1階層の符号化情報を復号化する基本レイヤ復号化手段と、第(i+1)階層(iは1以上n−1以下の整数)の符号化情報を復号化して第(i+1)階層の復号化信号を生成する第i階層の復号化手段と、各階層の復号化信号を加算する加算手段と、を具備し、前記第(i+1)階層の復号化手段は、前記第i階層の復号化手段の情報を利用して復号化処理を行う構成を採る。
【0011】
本発明の音声符号化方法は、入力信号をn階層(nは2以上の整数)の符号化情報で符号化する符号化方法であって、入力信号を符号化して第1階層の符号化情報を生成する基本レイヤ符号化工程と、第i階層(iは1以上n−1以下の整数)の符号化情報を復号化して第i階層の復号化信号を生成する第i階層の復号化工程と、前記入力信号と第1階層の復号化信号との差分である第1階層の差分信号あるいは第(i−1)階層の復号化信号と第i階層の復号化信号との差分である第i階層の差分信号を求める加算工程と、第i階層の差分信号を符号化して第(i+1)階層の符号化情報を生成する第(i+1)階層の拡張レイヤ符号化工程と、を具備し、前記第(i+1)階層の拡張レイヤ符号化工程は、前記第i階層の復号化工程の情報を利用して符号化処理を行う方法を採る。
【0012】
本発明の音声復号化方法は、入力信号をn階層(nは2以上の整数)の符号化情報を復号化する復号化方法であって、入力した第1階層の符号化情報を復号化する基本レイヤ復号化工程と、第(i+1)階層(iは1以上n−1以下の整数)の符号化情報を復号化して第(i+1)階層の復号化信号を生成する第i階層の復号化工程と、各階層の復号化信号を加算する加算工程と、を具備し、前記第(i+1)階層の復号化工程は、前記第i階層の復号化工程の情報を利用して復号化処理を行う方法を採る。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、下位レイヤの符号を復号化して得られる情報を上位の拡張符号器で有効に利用することができ、従来性能が出なかったマルチステージ型の階層型符号化でも、コンポーネント型の階層型符号化でも高い性能を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の骨子は、階層型符号化において、下位レイヤ(コア符号器、下位の拡張符号器)の符号を復号化して得られる情報を上位の拡張レイヤの符号化/復号化に利用することである。
【0015】
ここで、以下の説明では、コアレイヤや拡張レイヤに用いる各符号器、復号器の符号化形態としてCELPを用いる。
【0016】
以下、符号化/復号化の基本アルゴリズムであるCELPについて図1、図2を用いて説明する。
【0017】
まず、CELPの符号化装置のアルゴリズムについて図1を用いて説明する。図1はCELP方式の符号化装置のブロック図である。
【0018】
まず、LPC分析部102において、入力音声101に対して自己相関分析、LPC分析を行ってLPC係数を得、LPC係数の符号化を行ってLPC符号を得、LPC符号を復号化して復号化LPC係数を得る。この符号化は、多くの場合、PARCOR係数やLSPやISPといった量子化しやすいパラメータに変換した後、過去の復号化パラメータを用いた予測やベクトル量子化を用いて量子化を行うことによりなされる。
【0019】
次に、適応符号帳103と確率的符号帳104に格納された音源サンプル(それぞれ、「適応コードベクトル」または「適応音源」、「確率的コードベクトル」または「確率的音源」という)の中で指定されたものを取り出し、ゲイン調整部105においてそれぞれの音源サンプルに指定のアンプを乗じた後、加算することにより音源ベクトルを得る。
【0020】
次に、LPC合成部106において、ゲイン調整部105で得られた音源ベクトルを、LPCパラメータを用いた全極型フィルタによって合成し、合成音を得る。ただし、実際の符号化においては、ゲイン調整前の2つの音源ベクトル(適応音源、確率的音源)に対して、LPC分析部102で求められた復号化LPC係数によってフィルタリングを行ない2つの合成音を得る。これはより効率的に音源の符号化を行うためである。
【0021】
次に、比較部107において、LPC合成部106で求められた合成音と入力音声の距離を計算し、2つの符号帳からの出力ベクトルとゲイン調整部105で乗じるアンプを制御することによって、距離が最も小さくなる2つの音源の符号の組み合わせを探す。
【0022】
ただし、実際の符号化においては、LPC合成部106で得られた2つの合成音と入力音声との関係を分析し2つの合成音の最適値(最適ゲイン)の組み合わせを求め、その最適ゲインによってゲイン調整部105でゲイン調整されたそれぞれの合成音を加算することにより総合合成音を求め、その総合合成音と入力音声の距離計算を行なうことが一般的である。そして、適応符号帳103と確率的符号帳104の全ての音源サンプルに対してゲイン調整部105、LPC合成部106を機能させることによって得られる多くの合成音と入力音声との距離計算を行ない、距離が最も小さくなる音源サンプルのインデクスを求める。これにより効率よく2つの符号帳の音源の符号を探索することができる。
【0023】
また、この音源探索では、適応符号帳と確率的符号帳を同時に最適化するのは必要な計算量が膨大で事実上不可能であるので、1つずつ符号を決めていくというオープンループ探索を行うのが一般的である。すなわち、適応音源だけの合成音と、入力音声を比較することによって適応符号帳の符号を求め、次にこの適応符号帳からの音源を固定して、確率的符号帳からの音源サンプルを制御し、最適ゲインの組み合わせによって多くの総合合成音を求め、それと入力音声を比較することによって確率的符号帳の符号を決定する。以上の手順により、現存の小型プロセッサ(DSP等)での探索を実現することができる。
【0024】
そして、比較部107は2つの符号帳のインデクス(符号)と、さらにそのインデクスに対応する2つの合成音と入力音声をパラメータ符号化部108へ送る。
【0025】
パラメータ符号化部108は、2つの合成音と入力音声の相関を用いてゲインの符号化を行ってゲイン符号を得る。そして、LPC符号、2つの符号帳の音源サンプルのインデクス(音源の符号)をまとめて伝送路109へ送る。また、ゲイン符号と音源の符号に対応する2つの音源サンプルとから音源信号を復号化し、それを適応符号帳103に格納する。この際、古い音源サンプルを破棄する。すなわち、適応符号帳103の復号化音源データを未来から過去にメモリシフトしメモリから出た古いデータは破棄し、未来の空いた部分に復号化で作成した音源信号を格納する。この処理は適応符号帳の状態更新と呼ばれる。
【0026】
なお、LPC合成部106における音源探索時のLPC合成では、線形予測係数や高域強調フィルタや長期予測係数(入力音声の長期予測分析を行なうことによって得られる係数)を用いた聴感重み付けフィルタを使用するのが一般的である。また、適応符号帳103と確率的符号帳104の音源探索は、分析区間(フレームと呼ばれる)を更に細かく分けた区間(サブフレームと呼ばれる)で行われることが多い。
【0027】
ここで、上記説明の中で述べた様に、比較部107では、ゲイン調整部105から得られた適応符号帳103、確率的符号帳104の全ての音源について、実現可能な計算量で探索を行うため、2つの音源(適応符号帳103と確率的符号帳104)をオープンループで探索する。その場合、各ブロック(セクション)の役割が上記説明よりも複雑になる。そこで、処理手順について更に詳細に述べる。
(1)まず、ゲイン調整部105は適応符号帳103からのみ音源サンプル(適応音源)を次々に送りLPC合成部106を機能させて合成音を求め、比較部107へ送り入力音声と比較を行なって最適な適応符号帳103の符号を選択する。なお、この時のゲインは符号化歪が最も少なくなる値(最適ゲイン)であることを仮定して探索を行う。
(2)そして、適応符号帳103の符号を固定して、適応符号帳103からは同じ音源サンプルを、確率的符号帳104からは比較部107の符号に対応した音源サンプル(確率的音源)を次々に選択し、LPC合成部106へ伝送する。LPC合成部106は2つの合成音を求め、比較部107で両合成音の和と入力音声の比較を行ない確率的符号帳104の符号を決定する。なお、上記と同様に、この時のゲインは符号化歪が最も少なくなる値(最適ゲイン)であると仮定して選択を行う。
【0028】
なお、上記オープンループ探索では、ゲイン調整部105のゲインを調整する機能と加算する機能は使用されない。
【0029】
このアルゴリズムは、それぞれの符号帳の全ての音源の組み合わせを探索する方法と比較して、符号化性能が若干劣化するが、計算量が大幅に削減され実現可能な範囲になる。
【0030】
このように、CELPは人間の音声の発声過程(声帯波=音源、声道=LPC合成フィルタ)のモデルによる符号化であり、基本アルゴリズムとしてCELPを用いることにより比較的少ない計算量で良好な音質の音声が得られる。
【0031】
次に、CELPの復号化装置のアルゴリズムについて図2を用いて説明する。図2はCELP方式の復号化装置のブロック図である。
【0032】
パラメータ復号化部202は、伝送路201を介して送られたLPC符号を復号して合成用LPCパラメータを得てLPC合成部206に送る。また、パラメータ復号化部202は、伝送路201を介して送られた2つの音源符号を適応符号帳203及び確率符号帳204へ送り、出力される音源サンプルを指定する。また、パラメータ復号化部202は、伝送路201を介して送られたゲイン符号を復号化してゲインパラメータを得てゲイン調整部205へ送る。
【0033】
次に、適応符号帳203と確率的符号帳204は2つの音源符号により指定された音源サンプルを出力し、ゲイン調整部205へ送る。ゲイン調整部205はパラメータ復号化部202から得たゲインパラメータを2つの音源符号帳から得た音源サンプルに乗じて加算することにより音源ベクトルを求め、LPC合成部206へ送る。
【0034】
LPC合成部206は、音源ベクトルに合成用LPCパラメータを用いたフィルタリングを行って合成音を求め、これを出力音声207とする。なお、この合成の後には、合成用パラメータを用いた極強調、高域強調等を行うポストフィルタを用いることが多い。
【0035】
以上が基本アルゴリズムCELPの説明である。
【0036】
次に、本発明の実施の形態に係るスケーラブルコーデックの符号化装置/復号化装置の構成について図面を用いて詳細に説明する。
【0037】
なお、本実施の形態ではマルチステージ型スケーラブルコーデックを例として説明を行う。また、階層数としてはコアと拡張の2層の場合について説明する。
【0038】
また、スケーラブルコーデックの音質を決める符号化形態として、コアレイヤと拡張レイヤを加えた場合で音声の音響的帯域が異なる周波数スケーラブルを例に説明する。この形態は、コアコーデックのみでは音響的周波数帯域が狭い音声が得られるのに対し、拡張部の符号を加えればより広い周波数帯域の高品質の音声が得られることができるというものである。なお、「周波数スケーラブル」を実現するため入力音声や合成音のサンプリング周波数を変換する周波数調整部を使用する。
【0039】
以下、本発明の実施の形態に係るスケーラブルコーデックの符号化装置の構成について図3を用いて詳細に説明する。
【0040】
周波数調整部302は、入力音声301に対してダウンサンプリングを行い、得られる狭帯域音声信号をコア符号器303へ送る。ダウンサンプリングの方法は様々あり、低域透過(Low-pass)フィルタを掛けて間引くという方法が一例として挙げられる。例えば、16kHzサンプリングの入力音声を8kHzサンプリングに変換する場合は、4kHz(8kHzサンプリングのナイキスト周波数)以上の周波数成分が極小さくなるような低域透過フィルタを掛け、その後1つ置きに信号をピックアップして(2つに1つを間引いたことになる)メモリに格納することにより8kHzサンプリングの信号が得られる。
【0041】
次に、コア符号器303は、狭帯域音声信号を符号化し、得られた符号を伝送路304とコア復号器305へ送る。
【0042】
コア復号器305は、コア符号器303で得られた符号を用いて復号を行い、得られた合成音を周波数調整部306へ送る。また、コア復号器305は、復号の過程で得られるパラメータを必要に応じて拡張符号器307へ送る。
【0043】
周波数調整部306は、コア復号器305で得られた合成音に対して入力音声301のサンプリングレートにまでアップサンプリングを行い、加算部309へ送る。アップサンプリングの方法は様々あり、サンプルの間に0を挿入してサンプル数を増やし、低域透過(Low-pass)フィルタによって周波数成分を調整してから、パワーを調整するという方法が一例として挙げられる。例えば、8kHzサンプリングを16kHzサンプリングにアップサンプリングするという場合は、以下の式(1)の様に、まず、1つ置きに0を挿入して信号Yjを得、また1つのサンプル当たりの振幅pを求めておく。
【0044】
【数1】

次に、Yiに低域透過フィルタを掛け、8kHz以上の周波数成分を極めて小さくする。得られる16kHzサンプリングの信号Ziに対して、以下の式(2)の様に、Ziの1つのサンプル当たりの振幅qを求め、式(1)で求めた値に近づけるようにゲインをスムーズに調整し、合成音Wiを得る。
【0045】
【数2】

なお、上記でgの初期値としては、適当な定数(例えば0)を定めておく。
【0046】
また、周波数調整部302、コア符号器303、コア復号器305、周波数調整部306で使用するフィルタとして位相成分がずれるフィルタを用いた場合、周波数調整部306では、位相成分も入力音声301と合うように調整する必要がある。この方法についてはそれまでのフィルタの位相成分のずれを予め計算し、その逆特性をWiに掛けることによって位相を合わせる。位相を合わせることにより、入力音声301との純粋な差分信号を求めることができ、拡張符号器307で効率の良い符号化を行うことができる。
【0047】
加算部309は、周波数調整部306で得られた合成音の符号を反転して入力音声301と加算する、すなわち、入力音声301から合成音を減ずる。加算部309は、この処理で得られた音声信号である差分信号308を拡張符号器307へ送る。
【0048】
拡張符号器307は、入力音声301と差分信号308を入力し、コア復号器305で得られたパラメータを利用して、差分信号308の効率的な符号化を行い、得られた符号を伝送路304へ送る。
【0049】
以上が本実施の形態に関わるスケーラブルコーデックの符号化装置の説明である。
【0050】
次に、本発明の実施の形態に係るスケーラブルコーデックの復号化装置の構成について図4を用いて詳細に説明する。
【0051】
コア復号器402は、伝送路401から復号化に必要な符号を取得し、復号化を行って合成音を得る。コア復号器402は、図3の符号化装置のコア復号器305と同様の復号化機能を持つ。また、コア復号器402は、必要に応じて合成音406を出力する。なお、この合成音406には、聴感的に聞きやすくなるように調整を行うのが有効である。例として、コア復号部402で復号されたパラメータを用いたポストフィルタが挙げられる。また、コア復号器402は、必要に応じて合成音を周波数調整部403へ送る。また、復号化の過程で得られるパラメータを必要に応じて拡張復号器404へ送る。
【0052】
周波数調整部403は、コア復号器402から得られた合成音に対してアップサンプリングを行い、アップサンプリング後の合成音を加算部405へ送る。なお、周波数調整部403の機能は図3の周波数調整部306と同様であるので、その説明を省略する。
【0053】
拡張復号器404は、伝送路401から取得した符号を復号化して合成音を得る。そして、拡張復号器404は、得られた合成音を加算部405へ送る。この復号化の際には、コア復号器402から復号化の過程で得られるパラメータを利用した復号化を行うことにより、良好な品質の合成音を得ることができる。
【0054】
加算部405は、周波数調整部403から得られた合成音と、拡張復号器404から得られた合成音を加算して合成音407を出力する。なお、この合成音407には、聴感的に聞きやすくなるように調整を行うことが有効である。例として、拡張復号部404で復号されたパラメータを用いたポストフィルタが挙げられる。
【0055】
以上の様に図4の復号化装置は合成音406と合成音407の2つの合成音を出力することができる。合成音406はコアレイヤから得られる符号のみ、合成音407はコアレイヤと拡張レイヤの符号から得られるより良好な品質の合成音声である。どちらを利用するかは本スケーラブルコーデックを使用するシステムが決めることができる。なお、コアレイヤの合成音406のみをシステムで利用するのであれば、符号化装置のコア復号器305、周波数調整部306、加算部309、拡張符号器307、復号化装置の周波数調整部403、拡張復号器404、加算部405らは省略することができる。
【0056】
以上がスケーラブルコーデックの復号化装置の説明である。
【0057】
次に、本実施の形態の符号化装置/復号化装置において、拡張符号器及び拡張復号器がコア復号器から得られるパラメータを利用する方法について詳細に説明する。
【0058】
まず、図5を用いて、本実施の形態に係る符号化装置の拡張符号器がコア復号器から得られるパラメータを利用する方法について詳細に説明する。図5は、図3のスケーラブルコーデック符号化装置のコア復号器305と拡張符号器307の構成を示すブロック図である。
【0059】
まず、コア復号器305の機能について説明する。パラメータ復号化部501は、コア符号器303から、LPC符号、2つの符号帳の音源符号、ゲイン符号を入力する。そして、パラメータ復号化部501は、LPC符号を復号して合成用LPCパラメータを得、LPC合成部505及び拡張符号器307内のLPC分析部551へ送る。また、パラメータ復号化部501は、2つの音源符号を適応符号帳502、確率的符号帳503及び拡張符号器307内の適応符号帳552へ送り、出力される音源サンプルを指定する。また、パラメータ復号化部501は、ゲイン符号を復号化してゲインパラメータを得、ゲイン調整部504及び拡張符号器307内のゲイン調整部554へ送る。
【0060】
適応符号帳502と確率的符号帳503は2つの音源符号により指定された音源サンプルをゲイン調整部504へ送る。ゲイン調整部504は、パラメータ復号化部501から得たゲインパラメータを2つの音源符号帳から得た音源サンプルに乗じて加算し、この処理によって得られた音源ベクトルをLPC合成部505へ送る。LPC合成部505は、音源ベクトルに合成用LPCパラメータを用いたフィルタリングを行って合成音を得、周波数調整部306へ送る。なお、この合成の際には、用いられることの多いポストフィルタは用いない。
【0061】
以上のコア復号器305の機能により、拡張符号器307には、合成用LPCパラメータ、適応符号帳の音源符号、ゲインパラメータの3種が送られる。
【0062】
次に、これら3種のパラメータを受けた拡張符号器307の機能を説明する。
【0063】
LPC分析部551は、入力音声301に対して自己相関分析とLPC分析を行なうことによりLPC係数を得、また得られたLPC係数の符号化を行ってLPC符号を得、また得られたLPC符号を復号化して復号化LPC係数を得る。なお、LPC分析部551は、コア復号器305から得られる合成LPCパラメータを用いて効率のよい量子化を行う。
【0064】
適応符号帳552と確率的符号帳553は2つの音源符号により指定された音源サンプルをゲイン調整部554へ送る。
【0065】
ゲイン調整部554は、それぞれの音源サンプルにコア復号器305から得られるゲインパラメータを利用して得られたアンプを乗じた後加算して音源ベクトルを得、そしてそれをLPC合成部555へ送る。
【0066】
LPC合成部555は、ゲイン調整部554で得られた音源ベクトルに対してLPCパラメータを用いたフィルタリングを行うことにより、合成音を得る。ただし、実際の符号化においては、ゲイン調整前の2つの音源ベクトル(適応音源、確率的音源)に対して、LPC分析部551で得られた復号化LPC係数によってフィルタリングを行ない2つの合成音を得て、比較部556に送ることが一般的である。これはより効率的に音源の符号化を行うためである。
【0067】
比較部556は、LPC合成部555で得られた合成音と差分信号308の距離を計算し、2つの符号帳からの音源サンプルとゲイン調整部554で乗じるアンプを制御することによって、最も距離が近くなる2つの音源の符号の組み合わせを探す。ただし、実際の符号化においては、LPC合成部555で得られた2つの合成音と差分信号308との関係を分析し2つの合成音の最適値(最適ゲイン)の組み合わせを求め、その最適ゲインによってゲイン調整部554でゲインの調整をされたそれぞれの合成音を加算して総合合成音を得、その総合合成音と差分信号308の距離計算を行なうことが一般的である。そして、適応符号帳552と確率的符号帳553の全ての音源サンプルに対してゲイン調整部554、LPC合成部555を機能させることによって得られる多くの合成音と差分信号308との距離計算を行ない、得られる距離を比較し、最も小さくなる2つの音源サンプルのインデクスを求める。これにより効率よく2つの符号帳の音源の符号を求めることができる。
【0068】
また、この音源探索においては、適応符号帳と確率的符号帳を同時に最適化するのが計算量的には通常不可能であり、そのために1つずつ符号を決めていくというオープンループ探索を行うのがより一般的である。すなわち、適応音源だけの合成音と差分信号308を比較することによって適応符号帳の符号を得、次に、この適応符号帳からの音源を固定して、確率的符号帳からの音源サンプルを制御し、最適ゲインの組み合わせによって多くの総合合成音を得、これと差分信号308を比較することによって確率的符号帳の符号を決定する。以上の様な手順により現実的な計算量で探索が実現できる。
【0069】
そして、2つの符号帳のインデクス(符号)と、さらにそのインデクスに対応する2つの合成音と差分信号308をパラメータ符号化部557へ送る。
【0070】
パラメータ符号化部557は、2つの合成音と差分信号308の相関を用いて最適なゲインの符号化を行なうことによってゲイン符号を得る。そして、LPC符号、2つの符号帳の音源サンプルのインデクス(音源の符号)をまとめて伝送路304へ送る。また、ゲイン符号と音源の符号に対応する2つの音源サンプルとから音源信号を復号化し、それを適応符号帳552に格納する。この際、古い音源サンプルを破棄する。すなわち、適応符号帳552の復号化音源データを未来から過去にメモリシフトし、古いデータは破棄し、未来の空いた部分に復号化で作成した音源信号を格納する。この処理は適応符号帳の状態更新(update)と呼ばれる。
【0071】
次に、拡張符号器307におけるコアレイヤから得られる3つのパラメータ(合成LPCパラメータ、適応符号帳の音源符号、ゲインパラメータ)の利用についてそれぞれ説明する。
【0072】
まず、合成LPCパラメータを用いた量子化方法について以下に詳細に説明する。
【0073】
LPC分析部551は、まず、周波数の違いを考慮してコアレイヤの合成LPCパラメータを変換する。図3の符号化装置の説明で述べた様に、コアレイヤと拡張レイヤの周波数成分は異なっている例としてコアレイヤ8kHzサンプリング、拡張レイヤ16kHzサンプリングとすると、8kHzサンプリングの音声信号から得られる合成LPCパラメータを、16kHzサンプリングへ変更する必要がある。この方法の一例を以下に示す。
【0074】
合成LPCパラメータを線形予測分析におけるαパラメータとする。αパラメータは通常自己相関分析によりレビンソン・ダービン法により求められるが、この漸化式による処理は可逆であり、αパラメータは逆変換により自己相関係数に変換できる。そこで、この自己相関係数上においてアップサンプリングを実現すればよい。
【0075】
自己相関関数を求める元信号をXiとすると、自己相関関数Vjは以下の式(3)で求められる。
【0076】
【数3】

上記のXiを偶数番目のサンプルだとすると、以下の式(4)のように書ける。
【0077】
【数4】

ここで倍のサンプリングに拡大した場合の自己相関関数をWjとすると、偶数と奇数の次数で異なり、以下の式(5)の様になる。
【0078】
【数5】

ここで奇数番目のXを補間するために多層フィルタPmを用いると上記2つの式(4)、(5)は以下の式(6)の様に変形でき、多層フィルタは偶数番目のXの線形和により間の奇数番目の値を補間できる。
【0079】
【数6】

したがって、元の自己相関関数Vjが必要な次数分あれば補間により倍のサンプリングの自己相関関数Wjに変換できる。そこで得られたWjに対して再びレビンソン・ダービン法のアルゴリズムを適用することにより拡張レイヤで使用できるサンプリングレート調整を受けたαパラメータが得られる。
【0080】
LPC分析部551は、上記変換で求めたコアレイヤのパラメータ(以下、「コア係数」という)を用いて、入力音声301から求めたLPC係数の量子化を行う。LPC係数はPARCORやLSP、ISP等量子化しやすいパラメータに変換してベクトル量子化(VQ)等により量子化される。ここでは例として以下の2つの量子化形態について説明する。
(1)コア係数との差を符号化する場合
(2)コア係数を含めて予測VQで符号化する場合
【0081】
まず、(1)の量子化形態について説明する。
【0082】
まず量子化対象であるLPC係数を量子化しやすいパラメータ(以下、「ターゲット係数」という)に変換する。次に、ターゲット係数からコア係数を減ずる。なお、両者ともベクトルであるのでベクトルとしての減算である。そして、得られた差分ベクトルをVQ(予測VQ、スプリットVQ、多段VQ)により量子化する。この時、単に差分を求めるという方法も有効であるが、ただ差分を求めるのでなく、ベクトルの各要素でその相関に応じた減算を行えば、より精度のよい量子化ができる。一例を以下の式(7)に示す。
【0083】
【数7】

上記式(7)において、βiは予め統計的に求めたものを格納しておき、それを使用する。なお、βi=1.0に固定するという方法もあるが、その場合は単なる差分になる。相関度の決定は、予め多くの音声データについてスケーラブルコーデックの符号化装置を動かし、拡張符号器307のLPC分析部551に入力される多くのターゲット係数とコア係数の相関分析によってなされる。これは以下の式(8)の誤差パワーEを最小にするβiを求めることにより実現できる。
【0084】
【数8】

そして、上記を最小化するβiは、Eをβiで片微分した式が全てのiについて0になるという性質から以下の式(9)によって得られる。
【0085】
【数9】

よって上記のβiを使用して差分を取ればより精度のよい量子化が実現できる。
【0086】
次に、(2)の量子化形態について説明する。
【0087】
予測VQとは上記差分後のVQと同様で、過去の複数の復号化パラメータを用いて固定の予測係数で積和を取ったものの差分をVQするというものである。この差分ベクトルを以下の式(10)に示す。
【0088】
【数10】

上記の「過去の復号化パラメータ」としては、復号化したベクトルそのものを用いる方法と、VQにおけるセントロイドを用いる方法の2つがある。前者の方が予測能力は高いが、前者の方が誤りの伝播が長期に渡るため、後者の方がビット誤りには強い。
【0089】
そこで、このYm,iの中に必ずコア係数を含めるようにすれば、コア係数はその時間のパラメータで相関度も高いので、高い予測能力を得ることができ、上記(1)の量子化形態よりも更に高い精度で量子化ができる。例えばセントロイドを用いる場合、予測次数4の場合で以下の式(11)の様になる。
【0090】
【数11】

また、予測係数δm,iは、(1)の量子化形態のβiと同じく、多くのデータについての誤差パワーを各予測係数で片微分した式の値が0になることから求められる。この場合は、mについての連立一次方程式を解くことによって求められる。
【0091】
以上の様にコアレイヤで得られるコア係数を用いることによって効率のよいLPCパラメータの符号化ができる。
【0092】
なお、予測VQの形態として予測の積和の中にセントロイドを含める場合もある。方法は式(11)に括弧書きで示したので、説明は省略する。
【0093】
更に、LPC分析部551は、符号化により得られた符号をパラメータ符号化部557に送る。また、符号を復号化して得られる拡張符号器用の合成用LPCパラメータを求め、LPC合成部555へ送る。
【0094】
なお、上記LPC分析部551の説明では分析対象を入力音声301としたが、差分信号308を用いても、同様の方法によって、パラメータ抽出、符号化が実現できる。アルゴリズムは、入力音声301を用いた場合と同様であるので、説明は省略する。
【0095】
従来のマルチステージ型スケーラブルコーデックではこの差分信号308を分析対象としていた。しかし、これは差分信号であり、周波数成分として曖昧になるという欠点がある。上記説明で述べた入力音声301は、このコーデックへの最初の入力信号であり、これを分析すれば、よりはっきりとした周波数成分が得られる。したがって、これを符号化することにより、より品質の高い音声情報を伝送することができる。
【0096】
次に、コアレイヤから得られる適応符号帳の音源符号の利用について説明する。
【0097】
適応符号帳は過去の音源信号が格納されているものであり、毎サブフレームで更新されているダイナミックな符号帳である。その音源符号は、符号化対象である音声信号の基本周期(次元は時間。サンプル数で表される)にほぼ対応しており、入力音声信号(入力音声301や差分信号308等)と合成音との長期相関を分析することにより符号化される。また、拡張レイヤでは差分信号308を符号化するが、コアレイヤの長期相関は差分信号においても残っているという性質があり、コアレイヤの適応符号帳の音源符号を利用することによってより効率的な符号化が可能になる。使用方法としては、差分を符号化するという形態が挙げられる。詳細を説明する。
【0098】
コアレイヤの適応符号帳の音源符号が8ビットで符号化されているとする。(「0〜255」で実際のラグ(遅延量)「20.0〜147.5」、サンプルを「0.5」刻みで表すとする)まず、差分を取るために、まずサンプリングレートを合わせる。具体的にはコアレイヤが8kHzで、拡張レイヤが16kHzサンプリングだとすると2倍すれば拡張レイヤに合う数値になる。したがって、拡張レイヤでは「40〜295」サンプルという数値に変換して用いる。そして、拡張レイヤの適応符号帳の探索は上記数値の近傍で探索する。例えば、上記数値の前後16候補(「−7〜+8」まで)の区間のみを探索すれば、4ビットで効率よく符号化でき、計算量も少なくてすむ。また拡張レイヤの長期相関がコアレイヤのそれと同様であるとすれば十分な性能が得られる。
【0099】
なお、具体的に例を挙げて述べると、コアレイヤの適応符号帳の音源符号が「20」だとすれば数値としては「40」であり、これは拡張レイヤでは「80」に当たる。したがって、4ビットで「73〜88」を探索することになる。これは「0〜15」の符号に相当し、探索結果が「85」ならば、「12」が拡張レイヤの適応符号帳の音源符号になる。
【0100】
このように、コアレイヤの適応符号帳の音源符号の差分を符号化することにより効率的な符号化が可能になる。
【0101】
なお、コアレイヤの適応符号帳の音源符号の利用方法として、拡張レイヤのビット数を更に節約したい場合は、その符号をそのまま使用するという方法も挙げられる。この場合、拡張レイヤでは適応符号帳の音源符号は不要(ビット数は「0」)になる。
【0102】
次に、コアレイヤから得られるゲインパラメータの利用方法について詳細に説明する。
【0103】
なお、コアレイヤでは、パワーを表す情報として音源サンプルに乗ずるパラメータを符号化する。これは上記パラメータ符号化部557で得られる最終的な2つの音源サンプル(適応符号帳552からの音源サンプルと確率的符号帳553からの音源サンプル)の合成音と差分信号308との関係から符号化される。本説明では、一例として2つの音源のゲインをVQ(ベクトル量子化)により量子化する場合について説明を行う。
【0104】
まず、基本アルゴリズムを説明する。
【0105】
ゲインが決まると符号化歪Eは以下の式(12)で表される。
【0106】
【数12】

したがって、gaとgsのベクトルを(gaj、gsj)(jはベクトルのインデクス(符号)である)とすると、インデクスjの符号化歪から差分信号308(Xj)のパワーを引いたものEjは次の式(13)の様に変形できる。したがって、式(13)のXA、XS、AA、SS、ASを予め計算しておき、(gaj、gsj)を代入してEjを求めていき、これが最小になるjを求めることによりゲインをVQできる。
【0107】
【数13】

以上が2つの音源のゲインをVQする方法である。
【0108】
更に、音源のゲインを更に効率よく符号化するために、相関の高いパラメータを利用して冗長性を削減するという方法を取ることが一般的である。そのパラメータとして従来用いられてきたのは過去に復号化したゲインパラメータである。音声信号のパワーはごく短時間では穏やかに変化するので、時間的に近い復号化ゲインパラメータとは相関が高い。そこで、差分や予測で効率的に量子化することができる。VQの場合は復号化パラメータ、もしくはセントロイドそのものを用いて、差分や予測を行う。前者の方が量子化精度は高いが、後者の方が伝送誤りに強い。なお、「差分」とは、1つ前に復号化したパラメータの差分を求めてそれを量子化することであり、「予測」とは、幾つか前に復号化したパラメータから予測値を求め、その予測値の差分を求めてそれを量子化することである。
【0109】
差分は式(12)のga、gsの部分に以下の式(14)が代入される。そして、最適なjの探索が行われる。
【0110】
【数14】

上記重み係数α、βは統計的に求めておくか、1に固定する。求め方についてはVQ符号帳と重み係数の順次最適化による学習が挙げられる。すなわち、以下の手順となる。
(1)重み係数を両方とも0として、多くの最適ゲイン(算出される最もエラーを小さくするゲイン。式(12)をga、gsで片微分した式が0であるとすることによって得られる2元一次連立方程式を解くことにより求められる)を集めてデータベースを作る。
(2)LBGアルゴリズム等でVQのためのゲインの符号帳を求める。
(3)上記符号帳を用いて符号化を行い、重み係数を求める。これは、式(14)を式(12)に代入してα、βで片微分することによって得られる式を0とすることによって得られる連立一次方程式を説くことによって求められる。
(4)(3)の重み係数で、VQと、集めたデータでの重み係数の求め直しを繰り返すことによって重み係数を収束させる。
(5)(4)の重み係数を固定して多くの音声データに対してVQを行い、最適ゲインからの差分値を集めてデータベースを作る。
(6)(2)に戻る。
(7)(6)までの処理を数回行うと、符号帳も重み係数も収束するので、収束したら一連の学習処理を打ち切る。
【0111】
以上が復号化ゲインパラメータとの差分を利用したVQによる符号化アルゴリズムの説明である。
【0112】
そして、上記方法にコアレイヤから得られるゲインパラメータを利用すると、代入される式は以下の式(15)になる。
【0113】
【数15】

ここで重み係数を予め求める方法の一例として、上記で説明したゲインの符号帳と重みα、βの求め方に習って求める方法が挙げられる。手順を以下に示す。
(1)重み係数を4つとも0として、多くの最適ゲイン(算出される最もエラーを小さくするゲイン。式(12)をga、gsで片微分した式が0であるとすることによって得られる2元一次連立方程式を解くことにより求められる)を集めてデータベースを作る。
(2)LBGアルゴリズム等でVQのためのゲインの符号帳を求める。
(3)上記符号帳を用いて符号化を行い、重み係数を求める。これは、式(15)を式(12)に代入してα、β、γ、δで片微分することによって得られる式を0とすることによって得られる連立一次方程式を説くことによって求められる。
(4)(3)の重み係数でVQと集めたデータでの重み係数の求め直しを繰り返すことによって重み係数を収束させる。
(5)(4)の重み係数を固定して多くの音声データに対してVQを行い、最適ゲインからの差分値を集めてデータベースを作る。
(6)(2)に戻る。
(7)(6)までの処理を数回行うと、符号帳も重み係数も収束するので、収束した場合には一連の学習処理を打ち切る。
【0114】
以上が復号化ゲインパラメータとコアレイヤから得られるゲインパラメータとの差分を利用したVQによる符号化アルゴリズムの説明である。このアルゴリズムにより時間的に同一時間のパラメータであるコアレイヤのパラメータの相関度の高さを活かして、より精度よくゲイン情報を量子化することができる。例えば、音声の語頭の立ち上がりの部分では、過去のパラメータだけでは予測不可能である。しかし、コアレイヤから得られるゲインパラメータにはその立ち上がりのパワーの上昇が既に反映されており、同パラメータの使用は量子化に有効である。
【0115】
なお、「予測(線形予測)」を利用した場合も同様である。この場合はα、βの式が過去の数個の復号化ゲインパラメータの式になるという違いのみである(以下の式(16))ので、その詳細の説明を省略する。
【0116】
【数16】

このようにパラメータ符号化部557(ゲイン調整部554)でも、適応符号帳552、LPC分析部551と同様に、コアレイヤから得られるゲインパラメータをゲイン調整部554で同様に利用して効率的な量子化ができる。
【0117】
なお、上記説明においてはゲインのVQ(ベクトル量子化)を例に説明を行ったが、スカラ量子化でも同様の効果が得られることは明らかである。なぜなら、スカラ量子化の場合とは式(13)〜式(16)で、適応符号帳の音源サンプルのゲインと、確率的符号帳の音源サンプルのゲインのインデクス(符号)が独立な場合であり、VQとは係数のインデクスだけの違いのみであり上記方法から容易に導けるからである。
【0118】
ゲインの符号帳作成の際には、適応符号帳の音源サンプルのゲインと、確率的符号帳の音源サンプルのゲインのダイナミックレンジや次元が異なることを考慮して、ゲインの値を変換して符号化を行うことが多い。例として、確率的符号帳のゲインを対数変換してから統計的処理(LBGアルゴリズム等)を行う方法が挙げられる。また、平均と分散を求め、それらを利用することによって、2つのパラメータのばらつきを考慮して符号化するという工夫を併用すれば更に精度の高い符号化ができる。
【0119】
なお、LPC合成部555における音源探索時のLPC合成では、線形予測係数や高域強調フィルタや長期予測係数(入力信号の長期予測分析を行なうことによって得られる)を用いた聴感重み付けフィルタを使用するのが一般的である。
【0120】
また、上記比較部556はゲイン調整部554から得られた適応符号帳552、確率的符号帳553の全ての音源について比較を行なうが、現実的な計算量で探索を行うため、通常は2つの音源(適応符号帳552と確率的符号帳553)はより計算量の少ない方法で探索することが一般的である。その場合、図5の機能ブロック図とは若干異なってくる。その手順については、図1を用いたCELPの基本アルゴリズム(符号化装置)で説明を行ったのでこれを省略する。
【0121】
次に、図6を用いて、本実施の形態に係る復号化装置の拡張復号器がコア復号器から得られるパラメータを利用する方法について詳細に説明する。図6は、図4のスケーラブルコーデック復号化装置のコア復号器402と拡張復号器404の構成を示すブロック図である。
【0122】
まず、コア復号器402の機能を説明する。パラメータ復号化部601は、伝送路401から、LPC符号、2つの符号帳の音源符号、ゲイン符号を得る。そして、パラメータ復号化部601は、LPC符号を復号して合成用LPCパラメータを得、LPC合成部605及び拡張復号器404内のパラメータ復号化部651へ送る。また、パラメータ復号化部601は、2つの音源符号を適応符号帳602、確率的符号帳603へ送り、出力される音源サンプルを指定する。また、パラメータ復号化部601は、ゲイン符号を復号してゲインパラメータを得、ゲイン調整部604へ送る。
【0123】
適応符号帳602と確率的符号帳603は、2つの音源符号により指定された音源サンプルをゲイン調整部604へ送る。ゲイン調整部604は、パラメータ復号化部601から得たゲインパラメータを2つの音源符号帳から得た音源サンプルに乗じて加算し総合音源を得、LPC合成部605へ送る。また、ゲイン調整部604は、総合音源を適応符号帳602に格納する。この際、古い音源サンプルを破棄する。すなわち、適応符号帳602の復号化音源データを未来から過去にメモリシフトしメモリに入らない古いデータは破棄し、未来の空いた部分に復号化で作成した音源信号を格納する。この処理は適応符号帳の状態更新と呼ばれる。LPC合成部605は、パラメータ復号化部601から合成用LPCパラメータを得、総合音源に合成用LPCパラメータを用いたフィルタリングを行って合成音を得る。合成音は周波数調整部403へ送られる。
【0124】
なお、音声を聞き易くするために、合成音に、合成用LPCパラメータ、適応符号帳の音源サンプルのゲイン等を用いたポストフィルタを併用することが有効である。この場合、得られたポストフィルタの出力を合成音406として出力する。
【0125】
以上のコア復号器402の機能により、拡張復号器404には、合成LPCパラメータ、適応符号帳の音源符号、ゲインパラメータの3種が送られる。
【0126】
次に、これら3種のパラメータを受けた拡張復号器404の機能を説明する。
【0127】
パラメータ復号化部651は、伝送路401から、合成LPCパラメータ、2つの符号帳の音源符号、ゲイン符号を得る。そして、パラメータ復号化部651は、LPC符号を復号して合成用LPCパラメータを得、LPC合成部655へ送る。また、パラメータ復号化部651は、2つの音源符号を適応符号帳652及び確率的符号帳653へ送り、出力される音源サンプルを指定する。また、パラメータ復号化部651はゲイン符号とコアレイヤから得たゲインパラメータから最終的なゲインパラメータを復号化し、ゲイン調整部654へ送る。
【0128】
適応符号帳652と確率的符号帳653は、2つの音源インデクスにより指定された音源サンプルを出力し、ゲイン調整部654へ送る。ゲイン調整部654はパラメータ復号化部651から得たゲインパラメータを2つの音源符号帳から得た音源サンプルに乗じて加算し総合音源を得、LPC合成部655へ送る。また総合音源を適応符号帳652に格納する。この際、古い音源サンプルを破棄する。すなわち、適応符号帳652の復号化音源データを未来から過去にメモリシフトしメモリに入らない古いデータは破棄し、未来の空いた部分に復号化で作成した総合音源を格納する。この処理は適応符号帳の状態更新と呼ばれる。
【0129】
LPC合成部655は、パラメータ復号化部651から最終的に復号化されたLPCパラメータを得、総合音源にLPCパラメータを用いたフィルタリングを行い、合成音を得る。得られた合成音は加算部405に送られる。なお、この合成の後には、音声を聞き易くするために同LPCパラメータを用いたポストフィルタを使用することが一般的である。
【0130】
次に、拡張復号器404におけるコアレイヤから得られる3つのパラメータ(合成LPCパラメータ、適応符号帳の音源符号、ゲインパラメータ)の利用についてそれぞれ説明する。
【0131】
まず、合成LPCパラメータを用いたパラメータ復号化部651の復号化方法について以下に詳細に説明する。
【0132】
パラメータ復号化部651は、通常、過去の復号化パラメータを用いた予測等を用いて、まずPARCOR係数やLSPやISPといった量子化しやすいパラメータにLPC符号を復号化し、その後合成フィルタリングに用いる係数に変換する。また、この復号化にはコアレイヤのLPC符号も用いる。
【0133】
本実施の形態では周波数スケーラブルコーデックを例にしており、まず、周波数の違いを考慮してコアレイヤの合成用LPCパラメータを変換する。図4を用いた復号機側の説明で述べた様に、コアレイヤと拡張レイヤの周波数成分が異なっている例としてコアレイヤ8kHzサンプリング、拡張レイヤ16kHzサンプリングとすると、8kHzサンプリングの音声信号から得られる合成LPCパラメータを、16kHzサンプリングへ変更する必要がある。この方法については、符号化装置の説明において、LPC分析部551の式(3)から式(6)を用いた詳細説明で述べたので、これを省略する。
【0134】
そして、パラメータ復号化部651は、上記変換で求めたコアレイヤのパラメータ(以下、「コア係数」という)を用いて、LPC係数の復号化を行う。LPC係数は、PARCORやLSP等量子化しやすいパラメータの形態で、ベクトル量子化(VQ)等により符号化されており、その符号化に対応した復号化を行う。ここでは例として符号化装置と同様に以下の2つの量子化形態について説明する。
(1)コア係数との差を符号化する場合
(2)コア係数を含めて予測VQで符号化する場合
【0135】
まず、(1)の量子化形態では、コア係数にLPC符号の復号化(VQ、予測VQ、スプリットVQ、多段VQで符号化されているものの復号化)で得られる差分ベクトルを加算することにより復号する。この時、単に加算するという方法も有効であるが、ベクトルの各要素でその相関に応じた減算よる量子化を用いた場合にはそれに応じた加算を行う。一例を以下の式(17)に示す。
【0136】
【数17】

上記式(17)においてβiは予め統計的に求めたものを格納しておき、それを使用する。この相関度は符号化装置と同じ値である。したがってその求め方もLPC分析部551で説明したものと全く同じであるので、その説明を省略する。
【0137】
また、(2)の量子化形態では、過去の複数の復号化パラメータを用いて固定の予測係数で積和を取ったものと復号された差分ベクトルとを加算するというものである。この加算を式(18)に示す。
【0138】
【数18】

上記の「過去の復号化パラメータ」としては、過去に復号した復号化ベクトルそのものを用いる方法と、VQにおけるセントロイド(この場合、過去に復号された差分ベクトルである)を用いる方法の2つがある。そこで、符号器と同様に、このYm,iの中に必ずコア係数を含めるようにすれば、コア係数はその時間のパラメータで相関度も高いので、高い予測能力を得ることができ、(1)の量子化形態より更に精度の良いベクトルが復号できる。例えばセントロイドを用いる場合、予測次数4の場合で符号化装置(LPC分析部551)の説明で用いた式(11)の様になる。
【0139】
このようにコアレイヤで得られるコア係数を用いることによって効率のよいLPCパラメータの復号化ができる。
【0140】
次に、コアレイヤから得られる適応符号帳の音源符号の利用方法について説明する。使用方法としては、符号化装置と同様に差分を符号化するという例で説明する。
【0141】
適応符号帳の音源符号を復号し、差分の部分を得る。また、コアレイヤから音源符号を得る。そしてその2つを加算することにより適応音源のインデクスを求める。
【0142】
例を挙げて説明を加える。コアレイヤの適応符号帳の音源符号が8ビットで符号化されていたとする(「0〜255」で「20.0〜147.5」を「0.5」刻みで表すとする)。まず、サンプリングレートを合わせる。具体的にはコアレイヤが8kHzで、拡張レイヤが16kHzサンプリングだとすると2倍すれば拡張レイヤに合う数値「40〜295」になる。そして、拡張レイヤの適応符号帳の音源符号を例えば4ビットとする(16エントリ「−7〜+8」)。コアレイヤの適応符号帳の音源符号が「20」だとすれば数値としては「40」であり、これは拡張レイヤでは「80」に当たる。したがって、「12」が拡張レイヤの適応符号帳の音源符号であれば、「80+5=85」が最終的に復号化された適応符号帳のインデクスになる。
【0143】
このように、コアレイヤの適応符号帳の音源符号を利用することによって復号化がなされる。
【0144】
なお、コアレイヤの適応符号帳の音源符号の利用方法として、拡張レイヤのビット数に強い制限がある場合は、その符号をそのまま使用するという方法も挙げられる。この場合、拡張レイヤでは適応符号帳の音源符号は不要になる。
【0145】
次に、ゲインパラメータを用いたパラメータ復号化部651のゲインの求め方について詳細に説明する。
【0146】
符号化装置の説明では、相関の高いパラメータを利用して冗長性を削減するという方法の例として、「差分」と「予測」を挙げて説明を行った。そこで、復号化装置の説明でもこの2つの場合に対応する復号化方法を述べる。
【0147】
「差分」による符号化を行った場合の2つのゲインga、gsは以下の式(19)で求められる。
【0148】
【数19】

上記重み係数は符号器と同じものであり、予め適当な値に固定するか学習によって求めた値が用いられる。学習により求める方法については符号化装置の説明で詳細に説明したので、これを省略する。
【0149】
また、「予測(線形予測)」による符号化を行った場合も同様である。この場合は、α、βの式が過去の数個の復号化ゲインパラメータを用いた式になるという違いのみである(以下の式(20)に示す)ことから、その復号化方法は上記説明から容易に類推できるので、詳細の説明を省略する。
【0150】
【数20】

なお、上記説明においてはゲインのVQを例に説明を行ったが、ゲインのスカラ量子化でも同様の処理で復号できる。これは、2つのゲイン符号が独立な場合に相当し、上記説明の係数のインデクスのみの違いであり、復号化方法は上記説明から容易に類推できる。
【0151】
以上のように、本実施の形態によれば、下位レイヤの符号を復号化して得られる情報を上位の拡張符号器で有効に利用することができ、従来性能が出なかったマルチステージ型の階層型符号化でも、コンポーネント型の階層型符号化でも高い性能を得ることができる。
【0152】
なお、本発明は、マルチステージ型に限らず、コンポーネント型でも下位レイヤの情報を利用できる。それは入力の種類の違いに本発明が影響しないからである。
【0153】
また、本発明は、周波数スケーラブルでない場合(周波数に変化が無い場合)でも有効である。同じ周波数であれば、周波数調整部やLPCのサンプリング変換が不要になるだけであり、上記説明からその説明部分を除けば良い。
【0154】
また、本発明は、CELP以外の方式にも適用することができる。例えば、ACC、Twin−VQ、MP3などのオーディオコーデックの階層化や、MPLPC等の音声コーデックの階層化の場合、後者ではパラメータとして同様のものがあるので同じ説明と同様であり、前者でも帯域パワーの符号化には本発明のゲインパラメータの符号化/復号化の説明と同様である。
【0155】
また、本発明は、階層数として2層以上のスケーラブルコーデックであれば適用できる。なお、コアレイヤから、LPC、適応符号帳の情報、ゲインの情報以外の情報が得られる場合でも本発明は適応できる。例えば、SCの音源ベクトルの情報がコアレイヤから得られた場合は、式(14)や式(17)と同様に、コアレイヤの音源に固定係数を乗じて音源候補に加算し、得られる音源を候補として合成し探索、符号化すればよいということは明らかである。
【0156】
なお、本実施の形態では、入力信号として音声信号を対象とした場合について説明したが、本発明は、音声信号以外の信号(音楽やノイズ、環境音など)全てに対応できる。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明は、パケット通信システムや移動通信システムの通信装置に用いるのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】CELPの符号化装置のブロック図
【図2】CELPの復号化装置のブロック図
【図3】本発明の一実施の形態に係るスケーラブルコーデックの符号化装置の構成を示すブロック図
【図4】上記実施の形態に係るスケーラブルコーデックの復号化装置の構成を示すブロック図
【図5】上記実施の形態に係るスケーラブルコーデックの符号化装置のコア復号器と拡張符号器の内部構成を示すブロック図
【図6】上記実施の形態に係るスケーラブルコーデックの復号化装置のコア復号器と拡張復号器の内部構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0159】
302、306 周波数調整部
303 コア符号器
305 コア復号器
307 拡張符号器
309 加算部
402 コア復号器
403 周波数調整部
404 拡張復号器
405 加算部
501 パラメータ復号化部
502 適応符号帳
503 確率的符号帳
504 ゲイン調整部
505 LPC合成部
551 LPC分析部
552 適応符号帳
553 確率的符号帳
554 ゲイン調整部
555 LPC合成部
556 比較部
557 パラメータ符号化部
601 パラメータ復号化部
602 適応符号帳
603 確率的符号帳
604 ゲイン調整部
605 LPC合成部
651 パラメータ復号化部
652 適応符号帳
653 確率的符号帳
654 ゲイン調整部
655 LPC合成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号をn階層(nは2以上の整数)の符号化情報で符号化する符号化装置であって、
入力信号を符号化して第1階層の符号化情報を生成する基本レイヤ符号化手段と、第i階層(iは1以上n−1以下の整数)の符号化情報を復号化して第i階層の復号化信号を生成する第i階層の復号化手段と、前記入力信号と第1階層の復号化信号との差分である第1階層の差分信号あるいは第(i−1)階層の復号化信号と第i階層の復号化信号との差分である第i階層の差分信号を求める加算手段と、第i階層の差分信号を符号化して第(i+1)階層の符号化情報を生成する第(i+1)階層の拡張レイヤ符号化手段と、を具備し、
前記第(i+1)階層の拡張レイヤ符号化手段は、前記第i階層の復号化手段の情報を利用して符号化処理を行う音声符号化装置。
【請求項2】
前記第(i+1)階層の拡張レイヤ符号化手段の少なくとも1つがCELP型であって、前記第i階層の復号化手段のLPCパラメータの情報を利用して量子化を行う請求項1に記載の音声符号化装置。
【請求項3】
前記第(i+1)階層の拡張レイヤ符号化手段の少なくとも1つがCELP型であって、前記第i階層の復号化手段の適応符号帳の音源符号の情報を利用する請求項1又は請求項2に記載の音声符号化装置。
【請求項4】
前記第(i+1)階層の拡張レイヤ符号化手段の少なくとも1つがCELP型であって、前記第i階層の復号化手段のゲインパラメータの情報を利用する請求項1から請求項3のいずれかに記載の音声符号化装置。
【請求項5】
前記第(i+1)階層の拡張レイヤ符号化手段の少なくとも1つがCELP型であって、入力信号を用いてLPC分析を行う請求項1から請求項4のいずれかに記載の音声符号化装置。
【請求項6】
入力信号をn階層(nは2以上の整数)の符号化情報を復号化する復号化装置であって、
入力した第1階層の符号化情報を復号化する基本レイヤ復号化手段と、第(i+1)階層(iは1以上n−1以下の整数)の符号化情報を復号化して第(i+1)階層の復号化信号を生成する第i階層の復号化手段と、各階層の復号化信号を加算する加算手段と、を具備し、
前記第(i+1)階層の復号化手段は、前記第i階層の復号化手段の情報を利用して復号化処理を行う音声復号化装置。
【請求項7】
前記第(i+1)階層の復号化手段の少なくとも1つがCELP型であって、前記第i階層の復号化手段のLPC符号を復号化して合成用LPCパラメータを得る請求項6に記載の音声復号化装置。
【請求項8】
前記第(i+1)階層の復号化手段の少なくとも1つがCELP型であって、前記第i階層の復号化手段の適応符号帳の音源符号の情報を利用する請求項6又は請求項7に記載の音声復号化装置。
【請求項9】
前記第(i+1)階層の復号化手段の少なくとも1つがCELP型であって、前記第i階層の復号化手段のゲインパラメータの情報を利用する請求項6から請求項8のいずれかに記載の音声復号化装置。
【請求項10】
入力信号をn階層(nは2以上の整数)の符号化情報で符号化する符号化方法であって、
入力信号を符号化して第1階層の符号化情報を生成する基本レイヤ符号化工程と、第i階層(iは1以上n−1以下の整数)の符号化情報を復号化して第i階層の復号化信号を生成する第i階層の復号化工程と、前記入力信号と第1階層の復号化信号との差分である第1階層の差分信号あるいは第(i−1)階層の復号化信号と第i階層の復号化信号との差分である第i階層の差分信号を求める加算工程と、第i階層の差分信号を符号化して第(i+1)階層の符号化情報を生成する第(i+1)階層の拡張レイヤ符号化工程と、を具備し、
前記第(i+1)階層の拡張レイヤ符号化工程は、前記第i階層の復号化工程の情報を利用して符号化処理を行う音声符号化方法。
【請求項11】
入力信号をn階層(nは2以上の整数)の符号化情報を復号化する復号化方法であって、
入力した第1階層の符号化情報を復号化する基本レイヤ復号化工程と、第(i+1)階層(iは1以上n−1以下の整数)の符号化情報を復号化して第(i+1)階層の復号化信号を生成する第i階層の復号化工程と、各階層の復号化信号を加算する加算工程と、を具備し、
前記第(i+1)階層の復号化工程は、前記第i階層の復号化工程の情報を利用して復号化処理を行う音声復号化方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−72026(P2006−72026A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−256037(P2004−256037)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】