説明

音声転送方法

【課題】音声パケットの揺らぎを吸収し、音声遅延を低減する。
【解決手段】所定の周期で音声データの送信割り込みを発生させるFPGAの送信メモリに受信した音声データを書き込んでFPGAから音声データを転送する音声転送方法で、音声データの受信に応じて、音声データを書き込むとともにその書き込み時間を記憶し、音声データの通信に関する呼接続後の初期では、FPGAからの送信割り込みがあったときに、送信割り込みの検出時間を記憶し、書き込み時間と送信割り込みの検出時間との差が所定の閾値以上であるか否かを判定して、そうである場合には音声データをFPGAの送信メモリに書き込む一方、そうではない場合には音声データをFPGAの送信メモリには書き込まず、呼接続後の初期ではなく以降では、FPGAからの送信割り込みがあったときに、音声データをFPGAの送信メモリに書き込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自営IP(Internet Protocol)ネットワークシステムにおける音声転送方法に関し、特に、音声パケットの揺らぎを吸収するとともに、音声遅延を低減することが可能な音声転送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、TDMA(Time Division Multiple Access)方式の無線システムでは、無線(エアー)区間と有線区間のタイムスロットの同期を取って、データ(例えば、音声メッセージ)を送受信する必要がある。
回線制御装置のインタフェース基板(例えば、専用線インタフェース基板)では、40msec毎に受信する音声データをFPGA(Field Programmable Gate Array)を介して、他の制御基板へ通知している。FPGAでは40msec間隔で割り込み信号を発生させ、CPU(Central Processing Unit)側で割り込み信号を検出すると基地局装置から受信している音声データをFPGAへ通知する。
【0003】
具体例を示す。
図7には、TDMA方式の無線システムの構成例を示してある。
本例の無線システムは、移動局装置101、基地局装置102、IP(Internet Protocol)回線103、回線制御装置104を備えている。回線制御装置104は、FPGA121を有するI/F(インタフェース)基板111、FPGA122を有する呼制御基板112を備えている。ここで、基地局装置102や回線制御装置104は、IP回線103と接続されている。
【0004】
本例の無線システムでは、基地局装置102から40msecの間隔で音声データが(IP回線103を介して)回線制御装置104のI/F基板111へ送信される。
回線制御装置104では、I/F基板111と他の制御基板(例えば、呼制御基板112)は、FPGA(例えば、FPGA121、122)を介して音声データをやり取りする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−074486号公報
【特許文献2】特開平09−252292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような無線システムでは、次のような問題があった。
図7に示されるように、基地局装置102と回線制御装置104との間をIP回線103を用いて構築した場合には、回線制御装置104のIPインタフェース基板(I/F基板111)では基地局装置101から受信した音声パケットを40msec間隔で発生するFPGA121の割り込み信号を契機にFPGA121へ通知する必要があるところ、IP回線103を用いる点に関して、(問題点1)回線制御装置104から同期信号を送信することができないという問題や、(問題点2)IP回線103では送信パケットの揺らぎが発生するという問題があった。
【0007】
これらの問題により、専用線を用いた場合には40msec間隔で基地局装置102から受信した音声データをFPGAへ通知することができていたが、IP回線103を用いた場合にはIP回線103の状況によって40msec間隔で基地局装置102から音声データを受信することができないことがあった。このため、例えば、IP回線103とFPGA121の割り込み信号を同期させる必要が考えられる。
【0008】
図8には、音声データの転送タイミングの一例を示してある。
具体的には、横軸が時刻を表すとして、40msec間隔でFPGA121から割り込み信号が発生するタイミングと、基地局装置102から音声パケットを受信するタイミングを示してある。
そして、40msec間隔で受信するときに揺らぎが発生して受信タイミングが遅れると、図8中の“A”で示されるタイミングのように、音声データをFPGA121へ通知することができないことが発生してしまう。
【0009】
通常、IP回線103を用いて音声データを送受信する場合には、パケット到達の揺らぎを吸収するために、ジッタバッファを用いる。そして、音声データの受信側で、一定時間音声データを溜め込んでから、音声データを処理する。
しかしながら、回線制御装置104のIPインタフェース基板(I/F基板111)では、FPGA121が発生させる割り込み信号のタイミングで音声データをFPGA121へ通知する必要があるため、ジッタバッファを用いたとしても、IP回線103とFPGA121の割り込み信号とを同期させる必要がある。
【0010】
このような問題を解決するためには、最初に基地局装置102から受信した音声パケットに関しては、FPGA121から割り込み信号を検出してもFPGA121には通知せずに、2度目の割り込み信号を検出してからFPGA121へ通知することで解決することが可能となるが、最大で約80msecの遅延を発生させることになってしまう。
【0011】
本発明は、このような従来の事情に鑑み為されたもので、例えば、従来技術の問題点である音声パケットの揺らぎを吸収することができないという問題を解決して、音声パケットの揺らぎを吸収するとともに、音声遅延を低減することが可能な音声転送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明では、所定の周期で音声データの送信割り込みを発生させるFPGAの送信メモリに受信した音声データを書き込んで当該FPGAから当該音声データを転送する音声転送方法において、次のような処理を行う。
すなわち、音声データの受信に応じて、当該音声データを第1の記憶手段に書き込むとともに、その書き込み時間を第2の記憶手段により記憶する。音声データの通信に関する呼接続後の初期においては、前記FPGAからの送信割り込みがあったときに、当該送信割り込みの検出時間を第3の記憶手段により記憶し、前記書き込み時間と前記送信割り込みの検出時間との差が所定の閾値以上であるか否か(又は、所定の閾値を超えるか否か)を判定して、そうである場合には前記音声データを前記FPGAの送信メモリに書き込む一方、そうではない場合には前記音声データを前記FPGAの送信メモリには書き込まない。前記呼接続後の初期ではなく以降においては、前記FPGAからの送信割り込みがあったときに、前記音声データを前記FPGAの送信メモリに書き込む。
従って、例えば、音声データ(例えば、音声パケット)の揺らぎを吸収するとともに、音声遅延を低減することが可能である。
【0013】
ここで、FPGAが送信割り込みを発生させる所定の周期としては、種々な周期が用いられてもよい。
また、各記憶手段は、例えば、別個なメモリやデータベースを用いて構成されてもよく、或いは、2以上が共通の(同じ)メモリやデータベースを用いて構成されてもよい。
また、呼接続後の初期であるか否かは、例えば、フラグ(例えば、タイミング調整フラグ)のON/OFFを用いて判定することが可能である。
【0014】
また、書き込み時間と送信割り込みの検出時間との差に関する所定の閾値としては、種々な値が用いられてもよい。
また、複数のスロット(複数のセッション)で音声データの通信が行われる場合には、例えば、各スロット毎(各セッション毎)に処理が行われる。
【0015】
(以下、実施例との対応の説明)
ここで、本発明と実施例で参照される図1、図2、図3、図5などとの対応を示しておく。なお、これは、本発明を理解し易くするためであり、本発明を不要に限定する意図は無い。
[実施例との対応の説明]
所定の周期(例えば、40msec)で音声データの送信割り込みを発生させるFPGA(FPGA15)の送信メモリに受信した音声データを書き込んで当該FPGAから当該音声データを転送する音声転送方法において、
音声データの受信(処理T41)に応じて、当該音声データを第1の記憶手段(スロット情報管理テーブル23)に書き込むとともにその書き込み時間を第2の記憶手段(スロット情報管理テーブル23)により記憶し(処理T45)、
音声データの通信に関する呼接続(図3)後の初期(タイミング調整フラグがON)においては、前記FPGAからの送信割り込みがあったときに(処理T46)、当該送信割り込みの検出時間を第3の記憶手段(例えば、メモリ)により記憶し(処理T47)、前記書き込み時間と前記送信割り込みの検出時間との差が所定の閾値(例えば、10msec)以上であるか否か(又は、所定の閾値を超えるか否か)を判定して、そうである場合には前記音声データを前記FPGAの送信メモリに書き込む一方(処理T48)、そうではない場合には前記音声データを前記FPGAの送信メモリには書き込まず(処理T49)、
前記呼接続後の初期ではなく以降(タイミング調整フラグがOFF)においては、前記FPGAからの送信割り込みがあったときに、前記音声データを前記FPGAの送信メモリに書き込む(処理T50)、
ことを特徴とする音声転送方法。
(以上、実施例との対応の説明)
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明に係る音声転送方法によると、例えば、音声データ(例えば、音声パケット)の揺らぎを吸収するとともに、音声遅延を低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例に係るIPインタフェース基板の構成例を示す図である。
【図2】(a)はメディア情報管理テーブル21の構成例を示す図であり、(b)はセッション情報管理テーブル22の構成例を示す図であり、(c)はスロット情報管理テーブル23の構成例を示す図である。
【図3】呼接続シーケンスの処理の手順の一例を示す図である。
【図4】呼解放シーケンスの処理の手順の一例を示す図である。
【図5】音声パケットの受信シーケンスの処理の手順の一例を示す図である。
【図6】音声パケットの送信シーケンスの処理の手順の一例を示す図である。
【図7】TDMA方式の無線システムの構成例を示す図である。
【図8】音声データの転送タイミングの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る実施例を図面を参照して説明する。
本実施例では、図7に示されるようなTDMA方式の無線システムに適用した場合を示す。
図1には、本発明の一実施例に係るIPインタフェース基板1(図7に示されるI/F基板111に対応するもの)の構成例を示してある。
本例のIPインタフェース基板1は、呼制御タスクを実行する機能を有する呼制御タスク部11、Mediaタスクを実行する機能を有するMediaタスク部12、RTP(Realtime Transport Protocol)タスクを実行する機能を有するRTPタスク部13、Highwayタスクを実行する機能を有するHighwayタスク部14、FPGA15を備えている。
【0019】
呼制御タスク部11は、基地局装置からの呼接続/呼解放要求をMediaタスク部12へ通知し、音声データ処理を指示する。
Mediaタスク部12は、呼制御タスク部11からの指示により、RTPタスク部13にセッション設定/解放要求を行い、Highwayタスク部14にスロット設定/解放要求を行う。
RTPタスク部13は、Mediaタスク部12からの指示により、RTPセッションの設定/解放を行う。
【0020】
Highwayタスク部14は、Mediaタスク部12からの指示により、スロットの使用の有無を管理し、FPGA15からの割り込み信号を検出して、使用中のスロットの音声データをFPGA15へ通知する。
FPGA15は、40msec周期の割り込み信号を発生させ、Highwayタスク部14から通知された音声データを呼制御基板(図7に示される呼制御基板112に対応するもの)へ転送する。
【0021】
図2(a)にはメディア情報管理テーブル21の構成例を示してあり、図2(b)にはセッション情報管理テーブル22の構成例を示してあり、図2(c)にはスロット情報管理テーブル23の構成例を示してある。
メディア情報管理テーブル21は、Mediaタスク部12により管理され、接続装置種別(例えば、“基地局1”、“基地局2”など)、スロット番号(例えば、“0”、“1”など)、セッション番号(例えば、“1”、“2”など)の対応を格納して管理する。
ここで、接続装置種別とスロット番号との対応は静的に決められており、Mediaタスクが初期化される時に設定される。また、セッション番号は、RTPの送受信が開始される際に、RTPタスク部13から通知されて設定される。
【0022】
セッション情報管理テーブル22は、RTPタスク13により管理され、送信先IPアドレス(例えば、“192.168.100.1”、“192.168.100.2”など)、送信先ポート番号(例えば、“5000”、“5001”など)、受信ポート番号(例えば、“6000”、“60001”など)にセッション番号(例えば、“1”、“2”など)を割り当てて対応させて管理する。
【0023】
スロット情報管理テーブル23は、Highwayタスク部14により管理され、スロットの使用状態(例えば、“使用中”、“未使用”)、タイミング調整フラグ(例えば、“ON(オン)”、“OFF(オフ)”)、書き込み時間(例えば、時間を表す“xxxxxx”、“yyyyyy”)、音声データバッファ(例えば、受信音声データ*n)をスロット番号(例えば、“0”、“1”など)と対応させて管理する。
ここで、音声データバッファでは、受信した音声データを複数個(例えば、n個)格納することができるように、複数のバッファが設けられている。
【0024】
図3を参照して、呼接続シーケンスの一例を示す。
呼制御タスク部11は、基地局装置から呼接続要求を受信する(処理T1)。呼接続要求には、接続装置種別、基地局装置のIPアドレス、基地局装置が音声データを受信するポート番号が設定されている。
なお、本来は、呼制御基板に呼接続の可否を問い合わせるが、本例では省略している。これ以降のシーケンスとしては、接続が可能である場合のシーケンスを示す。
【0025】
呼制御タスク部11は、(呼制御基板に呼接続の可否を問い合わせ、可能な場合には、)Mediaタスク部12へメディア情報設定要求を送信する(処理T2)。メディア情報設定要求には、接続装置種別、基地局装置のIPアドレス、基地局装置が音声データを受信するポート番号が設定されている。
Mediaタスク部12は、メディア情報設定要求を受信すると、メディア情報管理テーブル21から接続装置種別をキーにスロット番号を読み出し、また、基地局装置のIPアドレス、基地局装置が音声データを受信するポート番号、RTPタスク部13が音声パケットを受信するポート番号を指定して、RTPタスク部13へセッション設定要求を送信する(処理T6)。
【0026】
RTPタスク部13は、セッション設定要求を受信すると、その指定内容に基づいて、セッション情報管理テーブル22に送信先IPアドレス(本例では、基地局装置のIPアドレス)、送信先ポート番号(本例では、基地局装置が音声データを受信するポート番号)、受信ポート番号を設定し、Mediaタスク部12へセッション設定応答を送信し、また、RTPタスク部13は、指定された受信ポート番号で音声パケットの受信待ちを行う(処理T7、処理T8)。セッション設定応答には、RTPタスク部13により割り当てたセッション番号を付加する。
【0027】
Mediaタスク部11は、スロット設定要求をHighwayタスク部14へ送信する(処理T9)。スロット設定要求には、処理T6で読み出したスロット番号を付加する。
Highwayタスク部14は、スロット設定要求を受信すると、指定されたスロット情報管理テーブル23のスロットの使用状態を使用中に設定するとともに、タイミング調整フラグをONに設定し、スロット設定応答をMediaタスク部12へ送信する(処理T10、処理T11)。
【0028】
Mediaタスク部12は、RTPタスク部13が音声パケットの送受信を行うセッション番号とHighwayタスク部14がメディア情報を送受信するスロット番号との対応関係をメディア情報管理テーブル21に設定し(処理T12)、メディア情報設定応答を呼制御タスク部11へ送信する(処理T3)。
呼制御タスク部11は、メディア情報設定応答を受信すると、基地局装置へ呼接続応答を送信し(処理T4)、これに応じて基地局装置から送信されるACKを受信する(処理T5)。
【0029】
図4を参照して、呼解放(呼切断)シーケンスの一例を示す。
呼制御タスク部11は、基地局装置から呼解放要求を受信する(処理T21)。呼解放要求には、接続装置種別が付加されている。
なお、本来は、呼制御基板に呼解放の可否を問い合わせるが、本例では省略している。これ以降のシーケンスとしては、解放が可能である場合のシーケンスを示す。
【0030】
呼制御タスク部11は、(呼制御基板に呼解放の可否を問い合わせ、可能な場合には、)Mediaタスク部12へメディア情報解放要求を送信する(処理T22)。メディア情報解放要求には、接続装置種別が設定されている。
Mediaタスク部12は、メディア情報管理テーブル21から接続装置種別をキーにスロット番号、セッション番号を読み出し、RTPタスク部13へセッション解放要求を送信する(処理T25)。セッション解放要求には、セッション番号が付加されている。
【0031】
RTPタスク部13は、セッション解放要求を受信すると、音声パケットの受信待ちを停止し、セッション情報管理テーブル22から対応するセッション情報を削除し、セッション解放応答をMediaタスク部12へ送信する(処理T26、処理T27)。
Mediaタスク部12は、セッション解放応答を受信すると、スロット解放要求をHighwayタスク部14へ送信する(処理T28)。スロット解放要求には、処理T25で読み出したスロット番号を付加する。
【0032】
Highwayタスク部14は、スロット解放要求を受信すると、指定されたスロット番号のスロット情報管理テーブル23の使用状態を未使用に設定し、スロット解放応答をMediaタスク部12へ送信する(処理T29、処理T30)。
Mediaタスク部12は、スロット解放応答を受信すると、該当するメディア情報管理テーブル21の欄からセッション番号を削除し(処理T31)、メディア情報解放応答を呼制御タスク部11へ送信する(処理T23)。
呼制御タスク部11は、基地局装置へ呼解放応答を送信する(処理T24)。
【0033】
図5を参照して、音声パケットの受信シーケンスの一例を示す。
RTPタスク部13は、音声パケットを受信すると(処理T41)、Mediaタスク部12へ音声パケット送信要求(音声パケット転送要求)を送信する(処理T42)。音声パケット送信要求には、セッション番号、音声データが付加されている。
Mediaタスク部12は、音声パケット送信要求を受信すると、メディア情報管理テーブル21からセッション番号をキーにスロット番号を読み出し(処理T43)、Highwayタスク部14へ音声データ書き込み要求を送信して行う(処理T44)。音声データ書き込み要求には、スロット番号、音声データが付加されている。
【0034】
Highwayタスク部14は、音声データ書き込み要求を受信すると、指定されたスロット情報管理テーブル23に音声データを格納し、また同時に書き込み時間を設定(記憶)する(処理T45)。
Highwayタスク部14は、FPGA15からの送信割り込み信号を検出すると(処理T46)、割り込みの検出時間をメモリに記憶する(処理T47)。本例では、この割り込みは、40msecの間隔で発生する。
【0035】
Highwayタスク部14は、スロット情報管理テーブル23のタイミング調整フラグがONである場合には、書き込み時間とFPGA15からの割り込みの検出時間とを比較し、これらの差が所定の閾値(例えば、10msec)以上である場合(又は、これらの差が所定の閾値を超える場合)には、FPGA15の送信メモリへ音声データを書き込み、タイミング調整フラグをOFFに設定する(処理T48)。一方、Highwayタスク部14は、書き込み時間とFPGA15からの割り込みの検出時間との差が所定の閾値(例えば、10msec)未満である場合(又は、これらの差が所定の閾値以下である場合)には、FPGA15の送信メモリへの音声データの書き込みは行わず、タイミング調整フラグをOFFに設定する(処理T49)。
また、Highwayタスク部14は、タイミング調整フラグがOFFである場合には、FPGA15の送信メモリへ音声データを書き込む。(処理T50)
なお、書き込む音声データとしては、音声データバッファに設定されている先頭の音声データを書き込む。
【0036】
ここで、Highwayタスク部14は、スロット情報管理テーブル23の使用状態が使用中であるスロットの全てに対して、処理T47〜処理T50を行う。
そして、Highwayタスク部14は、割り込みレジスタをクリアする(処理T51)。
FPGA15は、この割り込みクリアを検出すると、他の処理基板(本例では、呼制御基板)へ音声データを送信する(処理T52)。
【0037】
図6を参照して、音声パケットの送信シーケンスの一例を示す。
Highwayタスク部14は、FPGA15からの受信割り込み信号を検出すると(処理T61、処理T62)、音声データ送信要求をMediaタスク部12へ送信する(処理T63)。本例では、この割り込みは、40msecの間隔で発生する。この音声データ送信要求には、スロット番号、音声データが付加されている。
【0038】
Mediaタスク部12は、音声データ送信要求を受信すると、メディア情報管理テーブル21からスロット番号をキーにセッション番号を読み出す(処理T64)。
Mediaタスク部12は、音声データ送信要求をRTPタスク部13へ送信する(処理T65)。この音声データ送信要求には、セッション番号、音声データが付加されている。
【0039】
RTPタスク部13は、音声データ送信要求を受信すると、音声データからRTPパケットを生成し、指定されたセッション番号から送信先情報を読み出し、その音声パケットを送信する(処理T66)。
ここで、スロット情報管理テーブル23の使用状態が使用中であるスロットの全てに対して、処理T63〜処理T66を行う。
【0040】
以上のように、本例のIPインタフェース基板1では、呼制御タスク、Mediaタスク、RTPタスク、Highwayタスクを実行する機能を備え、呼制御タスクは基地局装置間の呼制御要求をMediaタスクへ通知し、Mediaタスクは、IPによる音声パケット送受信処理をRTPタスクに指示し、呼制御基板とのインタフェース処理をHighwayタスクに指示し、そして、音声パケットの側と呼制御基板との音声データの転送を行うシステム(音声パケット転送システム)において、次のような構成とした。
すなわち、Mediaタスクは、RTPのセッション情報と呼制御基板に音声データの転送を行うスロット情報を管理するメディア情報管理テーブル21を備え、音声データの送受信を制御し、RTPタスクは、RTPのセッション情報を管理するセッション情報管理テーブル22を備え、基地局装置との音声パケットの送受信を制御し、Highwayタスクは、スロット情報を管理するスロット情報管理テーブル23を備え、呼制御基板との間の音声データの送受信を制御する。
【0041】
(以下、図3に示される呼接続シーケンスに関する構成例)
本例では、次のような音声転送方法を実現することができる。
すなわち、呼制御タスクは、基地局装置より呼接続要求を受信すると、Mediaタスクにメディア情報設定要求を送信する。メディア情報設定要求を受信したMediaタスクは、RTPタスクへセッション設定要求を送信する。セッション設定要求を受信したRTPタスクは、音声パケットの受信処理を開始し、各RTPセッションを一意に判断するために用いるセッション番号をMediaタスクに通知する。また、メディア情報設定要求を受信したMediaタスクは、Highwayタスクへスロット設定要求を送信する。スロット設定要求を受信したHighwayタスクは、指定されたスロット番号のスロットを使用中に設定し、タイミング調整フラグをONに設定する。Mediaタスクは、RTPタスクが音声パケットの送受信を行うセッション番号とHighwayタスクが音声データを送受信するスロット番号の対応関係をメディア情報管理テーブル21に設定し、音声データの転送処理を制御する。
(以上、図3に示される呼接続シーケンスに関する構成例)
【0042】
(以下、図5に示される音声パケット受信シーケンスに関する構成例)
本例では、次のような音声転送方法を実現することができる。
すなわち、RTPタスクは、音声パケットを受信すると、RTPのセッション番号と音声パケット(音声データ)をMediaタスクに通知し、Mediaタスクは、メディア情報管理テーブル21からセッション番号をキーにスロット番号を検索して、Highwayタスクにスロット番号と音声データを通知する。
Highwayタスクは、Mediaタスクからスロット番号、音声データを通知されると、スロットの使用状況を確認し、使用中である場合には、システムの現在時刻を取得して、スロット情報管理テーブル23に書き込み時間を設定する。
【0043】
Highwayタスクは、FPGA15から送信割り込み信号を検出すると、割り込み検出時間を記憶し、スロット(SLOT)毎にスロット情報管理テーブル23のタイミング調整フラグを確認する。そして、Highwayタスクは、タイミング調整フラグがONである場合には、割り込み検出時間と書き込み時間を比較し、これらの時間差が所定値(例えば、10msec)以上である場合(又は、所定値を超える場合)には、FPGA15の送信メモリへ音声データを書き込み、タイミング調整フラグをOFFに設定する。一方、Highwayタスクは、これらの時間差が所定値(例えば、10msec)未満である場合(又は、所定値以下である場合)には、音声データをFPGA15の送信メモリへは書き込まずに、タイミング調整フラグOFFに設定する。
(以上、図5に示される音声パケット受信シーケンスに関する構成例)
【0044】
(以下、図6に示される音声パケット送信シーケンスに関する構成例)
本例では、次のような音声転送方法を実現することができる。
すなわち、Highwayタスクは、FPGA15からの受信割り込みを検出すると、スロット番号と音声データをMediaタスクに通知し、Mediaタスクは、メディア情報管理テーブル21からスロット番号をキーにセッション番号を検索し、RTPタスクにセッション番号と音声データを通知する。
(以上、図6に示される音声パケット送信シーケンスに関する構成例)
【0045】
従って、本例では、例えば、専用線を使用する場合においても、IP回線を使用する場合においても、FPGA15とのインタフェースを変更することなく、音声データの転送を行うことが可能となる。
また、本例では、ネットワークの揺らぎを吸収して、音声データの転送を行うことが可能となる。
【0046】
また、本例では、FPGA15の割り込みタイミング付近で受信した音声パケット(のみ)を遅延させて転送するため、FPGA15の割り込みタイミングから離れている音声パケットを遅延させることなく、音声データの転送を行うことが可能となる。
また、本例では、音声パケットの転送を判断する時間(FPGA15の割り込み検出時間と音声パケットの受信時間(書き込み時間)との差)に関する閾値を可変にすることで、使用するIP回線に適した転送処理を実現することが可能となる。
また、本例のシステムや方法などは、例えば、自営IPネットワークシステムなどにおける音声パケット転送方法に適用することができる。
【0047】
ここで、本発明に係るシステムや装置などの構成としては、必ずしも以上に示したものに限られず、種々な構成が用いられてもよい。また、本発明は、例えば、本発明に係る処理を実行する方法或いは方式や、このような方法や方式を実現するためのプログラムや当該プログラムを記録する記録媒体などとして提供することも可能であり、また、種々なシステムや装置として提供することも可能である。
また、本発明の適用分野としては、必ずしも以上に示したものに限られず、本発明は、種々な分野に適用することが可能なものである。
また、本発明に係るシステムや装置などにおいて行われる各種の処理としては、例えばプロセッサやメモリ等を備えたハードウエア資源においてプロセッサがROM(Read Only Memory)に格納された制御プログラムを実行することにより制御される構成が用いられてもよく、また、例えば当該処理を実行するための各機能手段が独立したハードウエア回路として構成されてもよい。
また、本発明は上記の制御プログラムを格納したフロッピー(登録商標)ディスクやCD(Compact Disc)−ROM等のコンピュータにより読み取り可能な記録媒体や当該プログラム(自体)として把握することもでき、当該制御プログラムを当該記録媒体からコンピュータに入力してプロセッサに実行させることにより、本発明に係る処理を遂行させることができる。
【符号の説明】
【0048】
1・・IPインタフェース基板、 11・・呼制御タスク部、 12・・Mediaタスク部、 13・・RTPタスク部、 14・・Highwayタスク部、 15・・FPGA、 21・・メディア情報管理テーブル、 22・・セッション情報管理テーブル、 23・・スロット情報管理テーブル、 101・・移動局装置、 102・・基地局装置、 103・・IP回線、 104・・回線制御装置、 111・・I/F基板、 112・・呼制御基板、 121、122・・FPGA、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周期で音声データの送信割り込みを発生させるFPGAの送信メモリに受信した音声データを書き込んで当該FPGAから当該音声データを転送する音声転送方法において、
音声データの受信に応じて、当該音声データを第1の記憶手段に書き込むとともにその書き込み時間を第2の記憶手段により記憶し、
音声データの通信に関する呼接続後の初期においては、前記FPGAからの送信割り込みがあったときに、当該送信割り込みの検出時間を第3の記憶手段により記憶し、前記書き込み時間と前記送信割り込みの検出時間との差が所定の閾値以上であるか否か又は所定の閾値を超えるか否かを判定して、そうである場合には前記音声データを前記FPGAの送信メモリに書き込む一方、そうではない場合には前記音声データを前記FPGAの送信メモリには書き込まず、
前記呼接続後の初期ではなく以降においては、前記FPGAからの送信割り込みがあったときに、前記音声データを前記FPGAの送信メモリに書き込む、
ことを特徴とする音声転送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−124791(P2011−124791A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280785(P2009−280785)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】