説明

音情報取得システム、音情報取得装置、非接触診断システム、及び非接触診断方法

【課題】高精度且つ効率的な音情報取得システム及び非接触診断システムの提供。
【解決手段】診断対象の正常又は異常を診断すべく、音情報を取得する音情報取得システムであって、診断対象毎に対応して設けられ、各診断対象の固有情報を予め記憶した記憶装置と、記憶装置から固有情報を読み出す固有情報読出部と、音情報を取得する際の診断対象からの基準距離を診断対象の固有情報に基づいて取得する基準距離取得部と、診断対象からの実距離を測定する実距離測定部と、実距離RLと基準距離SLとを比較する比較部と、音信号を検出する音信号検出部と、RL≦SLと比較部により比較されたときにその比較結果を出力する出力部と、RL≦SLである旨の比較結果が出力部から出力された場合、音信号検出部により検出された音信号を診断用の音情報として取得可能とする音情報取得部と、を有する移動可能な音情報取得装置と、を備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断対象が発生する音情報に基づいて当該診断対象を正常又は異常と診断する非接触診断システム及び非接触診断方法、並びにこのような音情報を取得する音情報取得システム及びこのシステムに用いられる音情報取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、集音器を用いて、稼動する機器が発生する音情報を取得し、当該音情報にウェーブレット解析等の時系列解析を施すことにより、この機器の正常又は異常を診断する非接触診断システムが知られている。この稼動部のような診断対象が発生する音は、例えば当該診断対象の劣化に応じて変化するため、この音の変化を調べることにより劣化を予測できる。また、この診断対象の劣化が顕著に反映される音の周波数帯域が予めわかっていれば、当該周波数帯域の音を調べることにより精度良く診断できる。
【0003】
このような非接触診断システム、及びこの診断のために音情報を取得する音情報取得システムにおいて、前述した劣化を予測すべく、音情報、即ち所定周波数帯域における音圧レベルの時系列データ(実際には、マイクロホンによって電圧に変換され、所定周波数帯域のみを通過させ、更にA/D(アナログ/デジタル)変換により、所定のサンプリング周波数のデジタルデータに変換された時系列のデータ)を常に一定の条件で取得するためには、集音器を診断対象に対して常に一定の位置に配置して音信号を検出する必要がある。また、この一定位置、特に集音器と診断対象との距離も、この診断対象に固有の距離であることが好ましい。
【0004】
従って、例えば、可搬型の集音器を用いて診断する場合、当該診断に先立って、作業者は、この集音器を診断対象に応じた基準距離だけ当該診断対象から離して保持し、その音信号を検出する必要がある。
【特許文献1】特開平8−219955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述した可搬型の集音器を用いた音情報取得システム及び非接触診断システムを、発電所といった電力設備の点検や巡視、常時監視等に適用する場合を考える。このためには、作業者は、例えば1つの集音器を多数の診断対象毎に当該診断対象に応じた基準距離だけ離して保持しなければならない。そこで、作業者は、診断対象に対して、当該診断対象にその基準距離が対応付けられた例えばデータベースを別途参照し集音器を配置しなければならない。また、電力設備等においても、診断対象毎にその基準距離だけ離れた位置に例えば目印等が付される必要があり、作業者は、測定の度にこの目印の位置に集音器を再現性良く配置する必要がある。これらの作業には手間と時間がかかるため非効率である。
【0006】
特に、1つの診断対象について定期的に音情報のデータを取得しその傾向により正常又は異常の診断を行う場合には、診断対象の数が増えると、作業者は、この診断対象数(N個)に対して取得回数(M回)を乗じた回数(N×M回)だけ、前述した作業を行わなければならない。このため、前述した配置作業はより非効率となる。
【0007】
また、特に、パラボラ型集音器は、音情報を高い指向性でもってより高精度に取得できる一方、診断対象に対する配置方向の再現性がより必要とされる。つまり、診断対象に対して基準距離及び基準方向をもって精度良く配置しないと、音情報が検出の度にばらつく虞がある。このようなばらつきは、診断対象の劣化に由来する音情報の変化に対してノイズとなるため、精度良く診断できなくなる。このため、診断の精度を高めつつ前述した配置作業を行おうとすれば、当該配置作業はより非効率となる。
【0008】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高精度且つ効率的な音情報取得システム及び非接触診断システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための発明は、診断対象の正常又は異常を診断すべく、当該診断対象が発生する音情報を取得する音情報取得システムであって、診断対象毎に対応して設けられ、各診断対象についての固有情報を予め記憶した記憶装置と、該当する診断対象に対応する記憶装置から前記固有情報を読み出す固有情報読出部と、当該診断対象が発生する音情報を取得する際の当該診断対象からの基準距離を当該診断対象についての固有情報に基づいて取得する基準距離取得部と、当該診断対象からの実距離を測定する実距離測定部と、前記実距離と前記基準距離とを比較する比較部と、当該診断対象から音信号を検出する音信号検出部と、前記実距離が前記基準距離以下であると前記比較部により比較されたときにその比較結果を出力する出力部と、前記実距離が前記基準距離以下である旨の比較結果が前記出力部から出力された場合、前記音信号検出部により検出された音信号を診断用の音情報として取得可能とする音情報取得部と、を有する移動可能な音情報取得装置と、を備えてなる。
【0010】
また、前記課題を解決するための発明は、診断対象の正常又は異常を診断すべく、当該診断対象が発生する音情報を取得する音情報取得システムであって、診断対象毎に対応して設けられ、各診断対象についての固有情報を予め記憶した記憶装置と、該当する診断対象に対応する記憶装置から前記固有情報を読み出す固有情報読出部と、当該診断対象が発生する音情報を取得する際の当該診断対象からの基準距離を当該診断対象についての固有情報に基づいて取得する基準距離取得部と、当該診断対象からの実距離を測定する実距離測定部と、前記実距離と前記基準距離とを比較する比較部と、当該診断対象から音信号を検出する音信号検出部と、前記実距離が前記基準距離以下であると前記比較部により比較されたときに前記音信号検出部により検出された音信号を診断用の音情報として取得する音情報取得部と、を有する移動可能な音情報取得装置と、を備えてなる。
【0011】
また、かかる音情報取得システムにおいて、前記固有情報は、該当の診断対象と前記音情報取得装置との前記基準距離を示す情報であってもよい。
また、かかる音情報取得システムにおいて、前記固有情報は、該当の診断対象を特定するためのID情報であり、前記音情報取得装置は、各診断対象について、前記ID情報と、当該診断対象が発生する音情報を取得する際の前記基準距離とが予め対応付けられた距離記憶部を更に有してもよい。
また、かかる音情報取得システムにおいて、前記出力部は、前記比較結果として音を発生する音発生部、前記比較結果を表示する判定表示部、及び前記比較結果として振動を発生する振動発生部のうちの少なくとも1つを有してもよい。
【0012】
この音情報取得システムによれば、実距離測定部は、診断対象及び音情報取得装置間の実距離(RL)を測定できる。また、基準距離取得部は、固有情報読出部により記憶装置から読み出された固有情報に基づいて、該当の診断対象及び音情報取得装置間の基準距離(SL)を取得できる。診断に先立って、以上取得されたRLとSLとが比較部により比較され、RL≦SLのとき、音情報取得装置は、音信号検出部により検出された音信号を診断用の音情報として取得できる。例えば、このSLを、診断対象の変化が音情報の変化に反映される上限値であるとすれば、作業者は、音情報取得装置を診断対象に近づけるだけで、常に好適なSLにおいて音情報を取得できる。また、このSLは記憶装置から例えば自動的に取得可能であるから、作業者は自らSLを調べる手間を省ける。更に、RLが例えば自動的に測定されれば、作業者は、予め付された目印等に音情報取得装置を配置する手間を省ける上に、当該音情報取得装置を診断対象に対してより高精度に配置できる。よって、本発明は、高精度且つ効率的な音情報取得システムとなる。
【0013】
また、かかる音情報取得システムにおいて、前記固有情報は、該当の診断対象が発生する音情報の測定手順を示す情報を更に含み、前記音情報取得装置は、前記診断対象が発生する音情報の測定手順を示す情報に基づいて測定案内する測定案内部を更に有してもよい。
【0014】
また、かかる音情報取得システムにおいて、前記音情報取得装置は、各診断対象について、その診断対象が発生する音情報の測定手順を示す情報が記憶された測定手順記憶部と、前記測定手順記憶部から前記固有情報に基づいて読み出された、該当の診断対象が発生する音情報の測定手順を示す情報に基づいて測定案内する測定案内部と、を更に有してもよい。
【0015】
また、かかる音情報取得システムにおいて、前記測定案内部は、音発生部からの音声により測定案内してもよい。
また、かかる音情報取得システムにおいて、前記測定案内部は、前記測定手順を表示する案内表示部により測定案内してもよい。
【0016】
この音情報取得システムによれば、例えば作業者は、測定案内の音声又は表示に従って、音情報取得装置を診断対象に近づけることができる。また、この測定案内は記憶装置又は測定手順記憶部から例えば自動的に取得可能であるから、作業者は診断対象に応じた測定手順を自ら調べる手間を省ける。更に、作業者は、予め付された目印等に従って音情報取得装置を配置する手間を省ける上に、当該音情報取得装置を診断対象に対してより高精度に配置できる。
また、かかる音情報取得システムにおいて、前記音情報取得装置はパラボラ型集音器であってもよい。
【0017】
このパラボラ型集音器は、診断対象が発生する音情報を高い指向性でもってより高精度に取得できる一方、診断対象に対する配置方向の再現性がより必要とされる。一般に、距離の精度は指向性の精度にも反映されるため、本発明によればパラボラ型集音器を診断対象に対して精度良く配置でき、よって音情報をより高精度に取得できる。
【0018】
また、かかる音情報取得システムにおいて、前記音情報取得装置は、各診断対象について、その診断対象が発生する音情報を採取するサンプリング周波数、採取時間を示す情報が記憶されたサンプリング周波数、採取時間記憶部を更に有し、前記音信号検出部は、前記サンプリング周波数、採取時間記憶部から前記固有情報に基づいて読み出された、該当の診断対象が発生する音情報のサンプリング周波数、採取時間を示す情報に基づいて、前記診断対象が発生する音信号を検出してもよい。
【0019】
また、かかる音情報取得システムにおいて、前記音情報取得装置は、各診断対象について、その診断対象が発生する音情報の増幅率を示す情報が記憶された増幅率記憶部を更に有し、前記音信号検出部は、前記増幅率記憶部から前記固有情報に基づいて読み出された、該当の診断対象が発生する音情報の増幅率を示す情報に基づいて、前記診断対象が発生する音信号を検出してもよい。
【0020】
また、かかる音情報取得システムにおいて、前記音情報取得装置は、前記診断対象が発生する音情報の所定周波数成分を抽出するフィルタ部を更に有してもよい。
また、かかる音情報取得システムにおいて、前記フィルタ部は、第1の周波数以下の周波数の成分を抽出する第1のフィルタと、前記第1の周波数より低い第2の周波数以上の周波数の成分を抽出する第2のフィルタとからなってもよい。
【0021】
また、かかる音情報取得システムにおいて、前記音情報取得装置は、各記診断対象について、その診断対象が発生する音情報において抽出すべき周波数を示す情報が記憶された周波数記憶部を更に有し、前記フィルタ部は、前記周波数記憶部から前記固有情報に基づいて読み出された、該当の診断対象が発生する音情報において抽出すべき周波数を示す情報に応じた特性に設定されてもよい。
【0022】
この音情報取得システムによれば、診断対象に固有のサンプリング周波数、採取時間、増幅率、及び周波数帯域が、前述した3つの記憶部から例えば自動的に取得可能である。よって、例えば、作業者がこれらを自ら調べる手間を省けるとともに、各診断対象について当該診断対象の変化が音情報の変化に反映されるための好適な条件で音情報が取得できる。
【0023】
また、かかる音情報取得システムにおいて、前記記憶装置は無線ICタグであり、前記固有情報読出部は、前記無線ICタグのリーダであってもよい。
また、かかる音情報取得システムにおいて、前記固有情報読出部は、赤外線データ通信方式に基づいて、前記記憶装置から前記固有情報を読み出してもよい。
また、かかる音情報取得システムにおいて、前記実距離測定部は、赤外線距離センサ又はレーザポインタを有してもよい。
また、かかる音情報取得システムにおいて、前記実距離測定部は、レーザ距離計であってもよい。
【0024】
また、前記課題を解決するための発明は、診断対象が発生する音情報を取得し、その音情報に基づいて当該診断対象の正常又は異常を診断する非接触診断システムに用いられる移動可能な音情報取得装置であって、外部記憶手段から当該診断対象についての固有情報を読み出す固有情報読出部と、当該診断対象が発生する音情報を取得する際の当該診断対象からの基準距離を当該診断対象についての固有情報に基づいて取得する基準距離取得部と、当該診断対象からの実距離を測定する実距離測定部と、前記実距離と前記基準距離とを比較する比較部と、当該診断対象から音信号を検出する音信号検出部と、前記実距離が前記基準距離以下であると前記比較部により比較されたときにその比較結果を出力する出力部と、前記実距離が前記基準距離以下である旨の比較結果が前記出力部から出力された場合、前記音信号検出部により検出された音信号を診断用の音情報として取得可能とする音情報取得部と、を有してなる。
【0025】
また、前記課題を解決するための発明は、診断対象が発生する音情報を取得し、その音情報に基づいて当該診断対象の正常又は異常を診断する非接触診断システムに用いられる移動可能な音情報取得装置であって、外部記憶手段から当該診断対象についての固有情報を読み出す固有情報読出部と、当該診断対象が発生する音情報を取得する際の当該診断対象からの基準距離を当該診断対象についての固有情報に基づいて取得する基準距離取得部と、当該診断対象からの実距離を測定する実距離測定部と、前記実距離と前記基準距離とを比較する比較部と、当該診断対象から音信号を検出する音信号検出部と、前記実距離が前記基準距離以下であると前記比較部により比較されたときに前記音信号検出部により検出された音信号を診断用の音情報として取得する音情報取得部と、を有してなる。
【0026】
また、前記課題を解決するための発明は、診断対象が発生する音情報を取得し、その音情報に基づいて当該診断対象の正常又は異常を診断する非接触診断システムであって、診断対象毎に対応して設けられ、各診断対象についての固有情報を予め記憶した記憶装置と、該当する診断対象に対応する記憶装置から前記固有情報を読み出す固有情報読出部と、当該診断対象が発生する音情報を取得する際の当該診断対象からの基準距離を当該診断対象についての固有情報に基づいて取得する基準距離取得部と、当該診断対象からの実距離を測定する実距離測定部と、前記実距離と前記基準距離とを比較する比較部と、当該診断対象から音信号を検出する音信号検出部と、前記実距離が前記基準距離以下であると前記比較部により比較されたときにその比較結果を出力する出力部と、前記実距離が前記基準距離以下である旨の比較結果が前記出力部から出力された場合、前記音信号検出部により検出された音信号を診断用の音情報として取得可能とする音情報取得部と、を有する移動可能な音情報取得装置と、前記診断対象毎に、前記音情報取得装置により取得された音情報と、その取得時期を示す情報とを対応付けて記憶する音情報データベースと、前記診断を行うべく、前記音情報データベースから前記固有情報に基づいて読み出された、所定の前記取得時期において該当の診断対象が発生する音情報を解析する解析部と、を有する、前記音情報取得装置に接続可能な情報処理装置と、を備えてなる。
【0027】
また、前記課題を解決するための発明は、診断対象が発生する音情報を取得し、その音情報に基づいて当該診断対象の正常又は異常を診断する非接触診断システムであって、診断対象毎に対応して設けられ、各診断対象についての固有情報を予め記憶した記憶装置と、該当する診断対象に対応する記憶装置から前記固有情報を読み出す固有情報読出部と、当該診断対象が発生する音情報を取得する際の当該診断対象からの基準距離を当該診断対象についての固有情報に基づいて取得する基準距離取得部と、当該診断対象からの実距離を測定する実距離測定部と、前記実距離と前記基準距離とを比較する比較部と、当該診断対象から音信号を検出する音信号検出部と、前記実距離が前記基準距離以下であると前記比較部により比較されたときに前記音信号検出部により検出された音信号を診断用の音情報として取得する音情報取得部と、を有する移動可能な音情報取得装置と、前記診断対象毎に、前記音情報取得装置により取得された音情報と、その取得時期を示す情報とを対応付けて記憶する音情報データベースと、前記診断を行うべく、前記音情報データベースから前記固有情報に基づいて読み出された、所定の前記取得時期において該当の診断対象が発生する音情報を解析する解析部と、を有する、前記音情報取得装置に接続可能な情報処理装置と、を備えてなる。
【0028】
また、かかる非接触診断システムにおいて、前記解析部は、前記音情報の時系列解析を実行してもよい。
また、かかる非接触診断システムにおいて、前記解析部は、診断結果のトレンドグラフを作成してもよい。
また、かかる非接触診断システムにおいて、前記解析部は、ウェーブレット解析、高速フーリエ変換、及び逆フィルタ法の何れか1つ以上を用いてもよい。
【0029】
また、前記課題を解決するための発明は、音情報取得装置により取得される、診断対象が発生する音情報に基づいて、当該診断対象の正常又は異常を診断する非接触診断方法であって、外部記憶手段から当該診断対象についての固有情報を読み出す固有情報読出ステップと、当該診断対象が発生する音情報を取得する際の当該診断対象及び前記音情報取得装置間の基準距離を当該診断対象についての固有情報に基づいて取得する基準距離取得ステップと、当該診断対象及び前記音情報取得装置間で測定された実距離と、前記基準距離とを比較する比較ステップと、前記比較ステップにおいて前記実距離が前記基準距離以下であると比較されたとき、前記音情報を取得する音情報取得ステップと、前記音情報取得ステップにおいて取得された音情報に基づいて、前記診断を実行する診断ステップと、を備えてなる。
【発明の効果】
【0030】
高精度且つ効率的な音情報取得システム及び非接触診断システムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
===非接触診断システムの構成===
図1のブロック構成図に例示されるように、本実施の形態の非接触診断システム10は、無線ICタグ(記憶装置)100と、集音器(音情報取得装置)200と、コンピュータ(情報処理装置)300とを備えて構成される。無線ICタグ100は、診断対象機器の診断対象箇所の近傍に予め貼付されている。集音器200は可搬型であり、コンピュータ300と無線又は有線の通信手段350を通じて接続可能である。
【0032】
尚、本実施の形態の非接触診断システム10は、発電所といった電力設備の点検や巡視、常時監視等に適用されるものである。作業者は、集音器200を保持して診断対象機器の診断対象箇所に近づけ、当該箇所が発生する音情報を取得して、後述するように、その正常又は異常の診断を行う。また、作業者は、必要に応じて集音器200とコンピュータ300とを接続し、前記の診断をより詳しく行う。
【0033】
また、後述するように、作業者が測定手順等のガイダンスを参照可能で、当該ガイダンスにおいて診断対象箇所が示される場合には、無線ICタグ100はこの診断対象箇所近傍に貼付されている必要はない。
【0034】
また、本実施の形態の音情報取得システムは、無線ICタグ100と、集音器200とを備えて構成される。
【0035】
無線ICタグ100は、診断対象機器における診断対象箇所を特定する機器ID(固有情報)を記憶するメモリ110を有する記憶装置である。無線ICタグ100は、所謂RFID(radio frequency-identification)タグであって、この機器IDを送信するための適宜な手段を更に有するものである。この機器IDは、1つの診断対象機器を特定するものであってもよいし、1つの診断対象機器が有する複数の診断箇所それぞれを特定するものであってもよい。例えば、診断対象機器がポンプであり、当該ポンプにおいて診断すべき箇所が複数あるとすれば、機器IDは例えば「A105-01」、「A105-02」等とする。ここで、「A105」がポンプに相当し、「01」、「02」等は、このポンプにおける各診断対象箇所に相当する。尚、本実施の形態の無線ICタグ100は、電源を内蔵するアクティブ方式に従うものであってもよいし、電源を内蔵せずに後述するリーダ230の発信するラジオ波を電源として動作するパッシブ方式であってもよい。本実施の形態のメモリ110は、例えばEPROMやEPROMである。アクティブ方式の場合、メモリ110は例えばSRAM等の揮発性メモリでもよいが、EPROMやEPROM等の不揮発性のメモリが好ましい。
【0036】
集音器200は、診断対象箇所からの音信号を検出するマイクロホン(音信号検出部)220を主として有する本体部250に対して、パラボラ形状部240を備えたものである。マイクロホン220の近傍には、更に、レーザ距離計(実距離測定部)210及びリーダ(固有情報読出部)230が設けられている。
【0037】
レーザ距離計210は、主として、レーザ光を出力するための適宜な手段と、診断対象箇所において反射されたレーザ光を検出するための適宜な手段とを有し、当該レーザ距離計210の近傍のマイクロホン220から診断対象箇所までの距離(実距離、RL)を測定する機能を有するものである。尚、この距離RLは、レーザ距離計210において取得されてもよいし、前述したレーザ光を検出するための手段から、後述する制御部400に適宜な信号が送信され、この信号に基づいて適宜算出されてもよい。
【0038】
リーダ230は、前述した無線ICタグ100に所定周波数のラジオ波を送信することにより、メモリ110に記憶された機器IDを、無線ICタグ100からのラジオ波を通じて読み出す機能を有するものである。
【0039】
尚、本実施の形態のマイクロホン220、レーザ距離計210、及びリーダ230は、作業者がパラボラ形状部240を診断対象箇所に向けたときに、マイクロホン220及びレーザ距離計210が当該診断対象箇所に選択的に指向し、リーダ230が無線ICタグ100に略指向するように、相互に隣接して設けられている。或いは、後述するように、作業者が測定手順等のガイダンスを参照可能で、当該ガイダンスにおいて診断対象箇所が示される場合には、無線ICタグ100はこの診断対象箇所近傍に貼付されている必要はない。
【0040】
コンピュータ300は、例えば携帯可能なノートブック型の情報処理装置であり、音響データベース(音情報データベース)310を有する。この音響データベース310は、後述するように、診断対象機器毎に、その診断時期に対して、集音器200により取得された音情報たる音圧レベルの時系列データが対応付けられているデータを有する。
【0041】
また、コンピュータ300は、この時系列データを時系列解析したり、この解析によって得た診断結果のトレンドグラフを作成したりするための適宜なプログラムを記憶する記憶手段を有する。このプログラムは、ウェーブレット解析、高速フーリエ変換、逆フィルタ法等のアルゴリズムを含むものである。
【0042】
図2のブロック構成図に例示されるように、本実施の形態の集音器200は、本体部250(図1)において、前述した、マイクロホン220、レーザ距離計210、リーダ230等を制御する制御部400を更に備えている。この制御部400は、更に、本体部250に設けられて作業者とのインタフェースの機能を担う入出力パネル600と、後述する機器データを記憶するROM(距離記憶部、測定手順記憶部、採取時間記憶部、増幅率記憶部、フィルタ上限/下限周波数記憶部、サンプリング周波数記憶部)700と、後述する音響データを記憶するRAM800とを制御するものである。尚、ROM700は、この音響データを時系列解析したり、この解析によって得た診断結果のトレンドグラフを作成したりするための適宜なプログラムを記憶してもよい。また、コンピュータ300により、データを任意に書き替え、追加書き込みが可能である。このプログラムは、ウェーブレット解析、高速フーリエ変換、逆フィルタ法等のアルゴリズムを含むものである。これにより、後述するように、音響機構500により取得された音情報は、集音器200において簡易診断される。
【0043】
マイクロホン220により検出された音情報は、先ずはアナログ信号として増幅器(増幅部)510により増幅され、フィルタ(フィルタ部)520によりその所定周波数成分が抽出され、A/D変換器530によりデジタル信号に変換されるようになっている。つまり、このマイクロホン220、増幅器510、フィルタ520、及びA/D変換器530からなる音響機構500は、制御部400により制御されて、音信号を検出し、所定周波数帯域の音圧レベルとしての音情報とする。尚、本実施の形態のフィルタ520は、ローパスフィルタ(第1のフィルタ)と、ハイパスフィルタ(第2のフィルタ)とからなっている。
【0044】
入出力パネル600は、後述するように、音響機構500が音情報を取得するべく作業者により押下される測定スイッチ255(図1、図2)と、作業者に音情報の測定手順や診断結果等を通知するためのディスプレイ(判定表示部、案内表示部)253(図1、図2)及びスピーカ(音発生部)251(図1、図2)とを備えている。
【0045】
図3(a)の図表に例示されるように、ROM700に記憶された機器データは、前述した機器IDに対して、機器名、基準距離SL、測定手順、サンプリング周波数、採取時間、増幅率、カットオフ周波数(上限及び下限)、巡視順番等が対応付けられたものである。
【0046】
基準距離SLとは、診断対象機器の診断対象箇所から発生する音情報をマイクロホン220が検出するのに好適な、当該診断箇所及び当該マイクロホン220間距離(cm)である。この基準距離SLは、例えば、診断対象箇所が劣化したとき、当該劣化が、集音器200により取得された音情報の変化に反映されるような距離又は当該距離の上限値である。上限値である場合、音信号を検出する際に配置すべき集音器200の位置を与えるべく、この基準距離SLは下限値を更に有していてもよい。図3(a)に例示されるように、本実施の形態の基準距離SLは、例えば「100±5」のように、下限値L1(=100-5)及び上限値L2(=100+5)を有している。
【0047】
測定手順とは、例えば、レーザ距離計210により測定された実距離RLが基準距離SLの下限値L1及び上限値L2の範囲内にあるか否かを集音器200が判定する際に、診断対象機器に対する集音器200の近づけ方を示す情報である。この測定手順は、例えば診断対象機器に予め付された目印に基づいて集音器200を近づける方向を規定するものであってもよい。後述するように、この情報はディスプレイ253に表示されて作業者の操作ガイダンスとなり得る。
【0048】
サンプリング周波数(Hz)とは、マイクロホン220が検出した音データをデジタルデータに変換して、離散値の時系列データとして保存する際、1秒間に保存する離散値の個数であり、1/(サンプリング周波数)はサンプリング周期となる。尚、1秒間当たりの離散値の個数たるサンプリング周波数と、2つの離散値間の時間、即ちサンプリング周期とは等価であるため、サンプリング周波数及びサンプリング周期のうちの何れか一方が用いられてもよい。また、採取時間(秒)とは、マイクロホン220が検出した音信号を保存する時間である。
【0049】
前述のサンプリング周波数及び採取時間に加えて、増幅器510の増幅率(倍)、ローパスフィルタの上限周波数(第1の周波数、Hz)、ハイパスフィルタの下限周波数(第2の周波数、Hz)等の音響機構500の特性を決定するパラメータも、機器ID毎に与えられている。
【0050】
以上の機器データは、例えば、診断対象機器の劣化が、その音情報の変化に顕著に反映されるべく個々に設定されている。
【0051】
また、図3(a)に例示されるように、機器IDには、当該機器IDが特定する診断対象機器の診断対象箇所の電力設備全体における巡視順番が対応付けられている。後述するように、この巡視順番に基づいて、次の診断対象箇所等が作業者に通知されるようになっている。
【0052】
===非接触診断方法===
<<<音情報の取得>>>
図4のフローチャートに基づいて、前述した構成を有する非接触診断システム10における集音器200が音情報を取得する際の制御部400の動作手順について説明する。尚、集音器200は適宜スタンバイ状態とされ、そのパラボラ形状部240が診断対象機器を指向すべく作業者により保持されているものとする。但し、この時点では、集音器200のパラボラ形状部240が診断対象箇所に対して略指向しているだけであり、集音器200の配置は正確ではないものとする。
【0053】
先ず、集音器200の制御部400は、リーダ230を制御して、診断対象機器に貼付された無線ICタグ100のメモリ110に記憶された機器IDを読み出す(S900)。
【0054】
次に、制御部400は、ROM700に記憶された機器データ(図3(a))を参照し、機器IDに対応付けられた機器名、基準距離、測定手順、サンプリング周波数、採取時間、増幅率、上限周波数及び下限周波数等を読み出す(S901)。尚、これらの機器データは、例えば適宜なメモリに一時保存し、以後の処理の手順において必要なとき、このメモリから読み出せばよい。或いは、各データが必要とされる都度、ROM700から読み出してもよい。
【0055】
次に、制御部400は、ROM700から読み出された測定手順をディスプレイ253に表示する(S902)。この表示内容に従って、作業者は、集音器200を配置したり移動させたりする。
【0056】
例えば、無線ICタグ100が診断対象機器の任意の箇所に貼付され、前述した測定手順において診断対象箇所が示されている場合には、図5(a)の模式図に例示されるように、ディスプレイ253に「位置○番を測定して下さい」と表示される。無線ICタグ100との通信が可能な程度にパラボラ形状部240を診断対象機器に向けていた作業者は、このガイダンスに従い、例えば診断対象機器上で「位置○番」と予め目印が付された診断対象箇所に、このパラボラ形状部240を向け直す。
また、例えば図5(b)の「箇所○番の上部30cmから下方へ向けて測定して下さい」がディスプレイに表示されると、作業者は、当該箇所の上部30cmの位置に集音器200を配置し直し、パラボラ形状部240を下に向け、この位置から集音器200を真下に向かって移動させる。
また、例えば図5(c)の「位置○番から位置●番へ向けて測定して下さい」がディスプレイに表示されると、作業者は、位置○番に集音器200を配置し直し、パラボラ形状部240を位置●に向けて、当該位置に集音器200を移動させる。
【0057】
前述したガイダンスに従って作業者が集音器200を移動させている間に、制御部400は、レーザ距離計210を制御して、マイクロホン220と診断対象箇所との間の実距離RLを測定し(S903)、この実距離RLが、ROM700から読み出された基準距離SLの範囲内(L1≦RL≦L2)にあるか否かを判定する(S904)。
もし、L1≦RL≦L2であると判定すれば(S904:YES)、制御部400は、入出力パネル600におけるスピーカ251に例えば音を発生させ、作業者に、現位置が基準距離SLの範囲内であることを通知する(S905)。
【0058】
作業者により押下された測定スイッチ255の信号を受信すると(S906:YES)、制御部400は、音響機構500を制御して、診断対象箇所が発生する音情報を取得する(S907)。ここで、ROM700から読み出されたサンプリング周波数、採取時間、増幅率、上限周波数及び下限周波数等が、音響機構500により音情報を取得する際の条件となる。また、音響機構500により所定周波数帯域の音圧レベルの時系列データ(実際には、マイクロホン220によって電圧に変換され、所定周波数帯域のみをフィルタ520によって通過させ、更にA/D変換器530により、所定のサンプリング周波数のデジタルデータに変換された時系列のデータ)とされた音情報は、適宜な手段によって計時された診断時刻と対応付けられ、音響データとしてRAM800に記憶される(図3(b)参照)。
【0059】
<<<音情報の診断>>>
図4のフローチャートに例示されるように、ROM700に記憶された適宜なプログラムに基づいて、制御部400は、RAM800に記憶された音響データを解析して、診断対象箇所の正常又は異常を簡易診断する(S908)。ここで、RAM800が、過去の音響データも記憶するものであれば、制御部400は、簡易診断結果のトレンドグラフを作成できる。
【0060】
次に、制御部400は、RAM800に記憶された音響データを、通信手段350を通じてコンピュータ300に送信する(S909)。
【0061】
また、制御部400は、ステップS908において取得した簡易診断結果をディスプレイ253に表示する(S910)。もし、ステップS908において、診断対象箇所に異常があると診断された場合、作業者には、ディスプレイ253を介して例えば「機器○の箇所△に異常があります」と通知される(図6(a)参照)。また、ステップS908においてトレンドグラフが作成された場合、これがディスプレイ253上に表示される(図6(b)参照)。
【0062】
作業者により再度押下された測定スイッチ255の信号を受信すると(S911:YES)、制御部400は、ROM700に記憶された機器データにおいて、巡視順番が次となっている機器名を検索し、当該機器名をディスプレイ253に表示する(S912)。作業者は、ディスプレイ253に表示された機器名(図6(c)参照)を確認して次の診断を行う。尚、本実施の形態の測定スイッチ255は、ディスプレイ253における表示を切り替えるための機能も有するものとする。
【0063】
尚、ステップS909において集音器200から音響データを受信したコンピュータ300は、この音響データを診断対象箇所と対応付けて、時系列データとして音響データベース310に記憶させる。この時系列データが、各診断対象箇所に対して過去から現在までの全ての音情報が対応付けられたものであれば、作業者は、コンピュータ300を用いて、より詳細な診断を行う。また、この時系列データが、例えば電力設備全体の診断対象箇所に対する音響データからなるものであれば、作業者は、例えば1つのコンピュータ300により、電力設備全体の診断を実施する。ここで、コンピュータ300の有する適宜なCPUと、当該CPUにこのような解析及び診断の動作を実行させる適宜なプログラムが、解析部に相当する。
【0064】
また、本実施の形態では、制御部400と、当該制御部400に前述したステップS901、ステップS902、及びステップS904、の動作を実施させる適宜なプログラムが、基準距離取得部、測定案内部、及び比較部にそれぞれ相当する。
【0065】
尚、ステップS903乃至S905においては、L1≦RL≦L2の条件を満たすように集音器200が配置されたときにスピーカ251が音を発生するものであったが、これに限定されるものではない。図7のフローチャートに例示されるように、制御部400によりRL、L1、L2が比較され(S9040)、RL>L2の場合には(RL−L2)が算出されてこの値がディスプレイ253に表示されてもよい(S9042)(図8(a)参照)。つまり、集音器200が(RL−L2)分だけ遠すぎるため、ディスプレイ253には例えば「あと10cm近づけて下さい」と表示される。また、スピーカ251からこの音声が流されてもよい。また、RL<L1の場合には(L1−RL)が算出されてこの値がディスプレイ253に表示されてもよい(S9041)(図8(b)参照)。つまり、集音器200が(L1−RL)分だけ近すぎるため、ディスプレイ253には例えば「あと20cm遠ざけて下さい」と表示される。また、スピーカ251からこの音声が流されてもよい。このようにすれば、作業者は、容易に且つ精度よく集音器200を配置できる。
【0066】
===高精度且つ効率的な非接触診断システム===
本実施の形態の非接触診断システム10によれば、診断に先立って、作業者は、ディスプレイ253に表示されたガイダンスに従って集音器200を診断対象箇所に近づけ、スピーカ251からの音を合図に測定スイッチ255を押下するだけで、常に好適な基準距離SLにおいて音情報を自動的に取得できる。また、この基準距離SLは、機器IDと機器データとから自動的に取得されるため、作業者は自ら基準距離SLを調べる手間を省ける。更に、実距離RLはレーザ距離計210により自動的に測定されるため、作業者は、集音器200を診断対象箇所に対してより高精度に配置できる。よって、高精度且つ効率的な診断を行える。
【0067】
また、本実施の形態の非接触診断システム10によれば、診断対象箇所に固有のサンプリング周波数、採取時間、増幅率、周波数帯域が、機器データから自動的に取得される。よって、作業者がこれらを自ら調べる手間を省けるとともに、各診断対象箇所についてその変化が音情報の変化に反映されるための好適な条件で音情報が取得できる。
【0068】
===その他の実施の形態===
前述した実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更、改良されるとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0069】
前述した実施の形態では、ステップS904において実距離RLと基準距離SL(L1、L2)とを比較する場合、L1≦RL≦L2の条件が用いられたが、これに限定されるものではなく、例えば、RL≦L2のみの条件又はRL=L2のみの条件が用いられてもよい。
【0070】
また、前述した実施の形態では、無線ICタグ100の有するメモリ110には機器IDのみが記憶されていたが、これに限定されるものではなく、例えば、基準距離SL、測定手順等(固有情報)を記憶するものであってもよい。
【0071】
また、前述した実施の形態では、ステップS905及びステップS906において、測定に好適な旨を作業者に通知し当該作業者の応答を待って音情報を取得したが、これに限定されるものではなく、例えば、このような通知無しで音情報を自動的に取得してもよい。
【0072】
また、前述した実施の形態では、前記の通知をスピーカ251により行ったが、これに限定されるものではなく、例えば、ディスプレイ253に適宜表示したり(判定表示部)、適宜なバイブレータにより振動で通知したりしてもよい(振動発生部)。
【0073】
また、前述した実施の形態では、ステップS902において、作業者に対するガイダンスをディスプレイ253に表示したが、これに限定されるものではなく、例えば、音声によって通知してもよい(音発生部)。
【0074】
また、前述した実施の形態では、無線ICタグ100に機器IDを予め記憶させて読み出したが、これに限定されるものではない。例えば、IrDA、近距離無線通信等、赤外線データ通信機能を有し、且つ機器IDを記憶するメモリを有するものであってもよい。この場合、集音器200のリーダ230は、赤外線データを受信するための適宜な手段に置き換えられる。
【0075】
また、前述した実施の形態では、レーザ距離計210により実距離RLを測定しているが、これに限定されるものではない。例えば、赤外線距離センサ、レーザポインタ等を用いてもよい。尚、赤外線距離センサを用いる場合、赤外線源を前記の赤外線データ通信にも兼用できる。
【0076】
また、前述した実施の形態では、1つのコンピュータ300で1つの電力設備全体の診断をするものであったが、これに限定されるものではない。例えば、複数のコンピュータが情報通信ネットワークを通じて接続され、1つの音響データベース310を共有し、各コンピュータが1つの電力設備内の各機器群の診断をそれぞれ行うものであってもよい。或いは、複数の電力設備を診断するシステムであって、複数のコンピュータが情報通信ネットワークを通じて接続され、各コンピュータが各電力設備の診断をそれぞれ行うものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本実施の形態の非接触診断システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】本実施の形態の集音器の構成例を示すブロック図である。
【図3】(a)は、本実施の形態の機器データの一例を示す図表であり、(b)は、本実施の形態の音響時系列データの一例を示す図表であり、(c)は、本実施の形態の複数の測定日の時系列データを蓄積してデータ保存している一例を示す図表である。
【図4】本実施の形態の集音器が音情報を取得する際の制御部の動作手順例を示すフローチャートである。
【図5】本実施の形態の集音器のディスプレイ上での測定手順の表示例を示す模式図である。
【図6】(a)は、本実施の形態の集音器のディスプレイ上での診断結果の表示例を示す模式図であり、(b)は、本実施の形態の集音器のディスプレイ上でのトレンドグラフの表示例を示す模式図であり、(c)は、本実施の形態の集音器のディスプレイ上での巡視順番の表示例を示す模式図である。
【図7】本実施の形態の集音器が音情報を取得する際の制御部の動作手順例を示すもう一つのフローチャートである。
【図8】本実施の形態の集音器のディスプレイ上での表示例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0078】
10 非接触診断システム 100 無線ICタグ
110 メモリ 200 集音器
210 レーザ距離計 220 マイクロホン
230 リーダ 240 パラボラ形状部
250 本体部 251 スピーカ
253 ディスプレイ 255 測定スイッチ
300 コンピュータ 310 音響データベース
350 通信手段 400 制御部
500 音響機構 510 増幅器
520 フィルタ 530 A/D変換器
600 入出力パネル 700 ROM
800 RAM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断対象の正常又は異常を診断すべく、当該診断対象が発生する音情報を取得する音情報取得システムであって、
診断対象毎に対応して設けられ、各診断対象についての固有情報を予め記憶した記憶装置と、
該当する診断対象に対応する記憶装置から前記固有情報を読み出す固有情報読出部と、当該診断対象が発生する音情報を取得する際の当該診断対象からの基準距離を当該診断対象についての固有情報に基づいて取得する基準距離取得部と、当該診断対象からの実距離を測定する実距離測定部と、前記実距離と前記基準距離とを比較する比較部と、当該診断対象から音信号を検出する音信号検出部と、前記実距離が前記基準距離以下であると前記比較部により比較されたときにその比較結果を出力する出力部と、前記実距離が前記基準距離以下である旨の比較結果が前記出力部から出力された場合、前記音信号検出部により検出された音信号を診断用の音情報として取得可能とする音情報取得部と、を有する移動可能な音情報取得装置と、
を備えたことを特徴とする音情報取得システム。
【請求項2】
診断対象の正常又は異常を診断すべく、当該診断対象が発生する音情報を取得する音情報取得システムであって、
診断対象毎に対応して設けられ、各診断対象についての固有情報を予め記憶した記憶装置と、
該当する診断対象に対応する記憶装置から前記固有情報を読み出す固有情報読出部と、当該診断対象が発生する音情報を取得する際の当該診断対象からの基準距離を当該診断対象についての固有情報に基づいて取得する基準距離取得部と、当該診断対象からの実距離を測定する実距離測定部と、前記実距離と前記基準距離とを比較する比較部と、当該診断対象から音信号を検出する音信号検出部と、前記実距離が前記基準距離以下であると前記比較部により比較されたときに前記音信号検出部により検出された音信号を診断用の音情報として取得する音情報取得部と、を有する移動可能な音情報取得装置と、
を備えたことを特徴とする音情報取得システム。
【請求項3】
前記固有情報は、該当の診断対象と前記音情報取得装置との前記基準距離を示す情報であることを特徴とする請求項1又は2に記載の音情報取得システム。
【請求項4】
前記固有情報は、該当の診断対象を特定するためのID情報であり、
前記音情報取得装置は、各診断対象について、前記ID情報と、当該診断対象が発生する音情報を取得する際の前記基準距離とが予め対応付けられた距離記憶部を更に有する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の音情報取得システム。
【請求項5】
前記出力部は、前記比較結果として音を発生する音発生部、前記比較結果を表示する判定表示部、及び前記比較結果として振動を発生する振動発生部のうちの少なくとも1つを有することを特徴とする請求項1に記載の音情報取得システム。
【請求項6】
前記固有情報は、該当の診断対象が発生する音情報の測定手順を示す情報を更に含み、
前記音情報取得装置は、前記診断対象が発生する音情報の測定手順を示す情報に基づいて測定案内する測定案内部を更に有する、
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の音情報取得システム。
【請求項7】
前記音情報取得装置は、
各診断対象について、その診断対象が発生する音情報の測定手順を示す情報が記憶された測定手順記憶部と、
前記測定手順記憶部から前記固有情報に基づいて読み出された、該当の診断対象が発生する音情報の測定手順を示す情報に基づいて測定案内する測定案内部と、を更に有する、
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の音情報取得システム。
【請求項8】
前記測定案内部は、音発生部からの音声により測定案内することを特徴とする請求項6又は7に記載の音情報取得システム。
【請求項9】
前記測定案内部は、前記測定手順を表示する案内表示部により測定案内することを特徴とする請求項6又は7に記載の音情報取得システム。
【請求項10】
前記音情報取得装置はパラボラ型集音器であることを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の音情報取得システム。
【請求項11】
前記音情報取得装置は、
各診断対象について、その診断対象が発生する音情報を採取する時間を示す情報が記憶された採取時間記憶部を更に有し、
前記音信号検出部は、
前記採取時間記憶部から前記固有情報に基づいて読み出された、該当の診断対象が発生する音情報の採取時間を示す情報に基づいて、前記診断対象が発生する音信号を検出する、
ことを特徴とする請求項1乃至10の何れかに記載の音情報取得システム。
【請求項12】
前記音情報取得装置は、
各診断対象について、その診断対象が発生する音情報の増幅率を示す情報が記憶された増幅率記憶部を更に有し、
前記音信号検出部は、
前記増幅率記憶部から前記固有情報に基づいて読み出された、該当の診断対象が発生する音情報の増幅率を示す情報に基づいて、前記診断対象が発生する音信号を検出する、
ことを特徴とする請求項1乃至11の何れかに記載の音情報取得システム。
【請求項13】
前記音情報取得装置は、前記診断対象が発生する音情報の所定周波数成分を抽出するフィルタ部を更に有することを特徴とする請求項1乃至12の何れかに記載の音情報取得システム。
【請求項14】
前記フィルタ部は、第1の周波数以下の周波数の成分を抽出する第1のフィルタと、前記第1の周波数より低い第2の周波数以上の周波数の成分を抽出する第2のフィルタとからなることを特徴とする請求項13に記載の音情報取得システム。
【請求項15】
前記音情報取得装置は、
各記診断対象について、その診断対象が発生する音情報において抽出すべき周波数を示す情報が記憶された周波数記憶部を更に有し、
前記フィルタ部は、
前記周波数記憶部から前記固有情報に基づいて読み出された、該当の診断対象が発生する音情報において抽出すべき周波数を示す情報に応じた特性に設定される、
ことを特徴とする請求項13又は14に記載の音情報取得システム。
【請求項16】
前記記憶装置は無線ICタグであり、
前記固有情報読出部は、前記無線ICタグのリーダである、
ことを特徴とする請求項1乃至15の何れかに記載の音情報取得システム。
【請求項17】
前記固有情報読出部は、赤外線データ通信方式に基づいて、前記記憶装置から前記固有情報を読み出すことを特徴とする請求項1乃至15の何れかに記載の音情報取得システム。
【請求項18】
前記実距離測定部は、赤外線距離センサ又はレーザポインタを有することを特徴とする請求項1乃至17の何れかに記載の音情報取得システム。
【請求項19】
前記実距離測定部は、レーザ距離計であることを特徴とする請求項1乃至17の何れかに記載の音情報取得システム。
【請求項20】
診断対象が発生する音情報を取得し、その音情報に基づいて当該診断対象の正常又は異常を診断する非接触診断システムに用いられる移動可能な音情報取得装置であって、
外部記憶手段から当該診断対象についての固有情報を読み出す固有情報読出部と、
当該診断対象が発生する音情報を取得する際の当該診断対象からの基準距離を当該診断対象についての固有情報に基づいて取得する基準距離取得部と、
当該診断対象からの実距離を測定する実距離測定部と、
前記実距離と前記基準距離とを比較する比較部と、
当該診断対象から音信号を検出する音信号検出部と、
前記実距離が前記基準距離以下であると前記比較部により比較されたときにその比較結果を出力する出力部と、
前記実距離が前記基準距離以下である旨の比較結果が前記出力部から出力された場合、前記音信号検出部により検出された音信号を診断用の音情報として取得可能とする音情報取得部と、
を有することを特徴とする音情報取得装置。
【請求項21】
診断対象が発生する音情報を取得し、その音情報に基づいて当該診断対象の正常又は異常を診断する非接触診断システムに用いられる移動可能な音情報取得装置であって、
外部記憶手段から当該診断対象についての固有情報を読み出す固有情報読出部と、
当該診断対象が発生する音情報を取得する際の当該診断対象からの基準距離を当該診断対象についての固有情報に基づいて取得する基準距離取得部と、
当該診断対象からの実距離を測定する実距離測定部と、
前記実距離と前記基準距離とを比較する比較部と、
当該診断対象から音信号を検出する音信号検出部と、
前記実距離が前記基準距離以下であると前記比較部により比較されたときに前記音信号検出部により検出された音信号を診断用の音情報として取得する音情報取得部と、
を有することを特徴とする音情報取得装置。
【請求項22】
診断対象が発生する音情報を取得し、その音情報に基づいて当該診断対象の正常又は異常を診断する非接触診断システムであって、
診断対象毎に対応して設けられ、各診断対象についての固有情報を予め記憶した記憶装置と、
該当する診断対象に対応する記憶装置から前記固有情報を読み出す固有情報読出部と、当該診断対象が発生する音情報を取得する際の当該診断対象からの基準距離を当該診断対象についての固有情報に基づいて取得する基準距離取得部と、当該診断対象からの実距離を測定する実距離測定部と、前記実距離と前記基準距離とを比較する比較部と、当該診断対象から音信号を検出する音信号検出部と、前記実距離が前記基準距離以下であると前記比較部により比較されたときにその比較結果を出力する出力部と、前記実距離が前記基準距離以下である旨の比較結果が前記出力部から出力された場合、前記音信号検出部により検出された音信号を診断用の音情報として取得可能とする音情報取得部と、を有する移動可能な音情報取得装置と、
前記診断対象毎に、前記音情報取得装置により取得された音情報と、その取得時期を示す情報とを対応付けて記憶する音情報データベースと、前記診断を行うべく、前記音情報データベースから前記固有情報に基づいて読み出された、所定の前記取得時期において該当の診断対象が発生する音情報を解析する解析部と、を有する、前記音情報取得装置に接続可能な情報処理装置と、
を備えたことを特徴とする非接触診断システム。
【請求項23】
診断対象が発生する音情報を取得し、その音情報に基づいて当該診断対象の正常又は異常を診断する非接触診断システムであって、
診断対象毎に対応して設けられ、各診断対象についての固有情報を予め記憶した記憶装置と、
該当する診断対象に対応する記憶装置から前記固有情報を読み出す固有情報読出部と、当該診断対象が発生する音情報を取得する際の当該診断対象からの基準距離を当該診断対象についての固有情報に基づいて取得する基準距離取得部と、当該診断対象からの実距離を測定する実距離測定部と、前記実距離と前記基準距離とを比較する比較部と、当該診断対象から音信号を検出する音信号検出部と、前記実距離が前記基準距離以下であると前記比較部により比較されたときに前記音信号検出部により検出された音信号を診断用の音情報として取得する音情報取得部と、を有する移動可能な音情報取得装置と、
前記診断対象毎に、前記音情報取得装置により取得された音情報と、その取得時期を示す情報とを対応付けて記憶する音情報データベースと、前記診断を行うべく、前記音情報データベースから前記固有情報に基づいて読み出された、所定の前記取得時期において該当の診断対象が発生する音情報を解析する解析部と、を有する、前記音情報取得装置に接続可能な情報処理装置と、
を備えたことを特徴とする非接触診断システム。
【請求項24】
前記解析部は、前記音情報の時系列解析を実行することを特徴とする請求項22又は23に記載の非接触診断システム。
【請求項25】
前記解析部は、診断結果のトレンドグラフを作成することを特徴とする請求項22乃至24の何れかに記載の非接触診断システム。
【請求項26】
前記解析部は、ウェーブレット解析、高速フーリエ変換、及び逆フィルタ法の何れか1つ以上を用いることを特徴とする請求項22乃至25の何れかに記載の非接触診断システム。
【請求項27】
音情報取得装置により取得される、診断対象が発生する音情報に基づいて、当該診断対象の正常又は異常を診断する非接触診断方法であって、
外部記憶手段から当該診断対象についての固有情報を読み出す固有情報読出ステップと、
当該診断対象が発生する音情報を取得する際の当該診断対象及び前記音情報取得装置間の基準距離を当該診断対象についての固有情報に基づいて取得する基準距離取得ステップと、
当該診断対象及び前記音情報取得装置間で測定された実距離と、前記基準距離とを比較する比較ステップと、
前記比較ステップにおいて前記実距離が前記基準距離以下であると比較されたとき、前記音情報を取得する音情報取得ステップと、
前記音情報取得ステップにおいて取得された音情報に基づいて、前記診断を実行する診断ステップと、
を備えたことを特徴とする非接触診断方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−10631(P2006−10631A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191485(P2004−191485)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】