説明

音楽販売店において客の携帯情報端末を利用した試聴サービスを提供する方法、システム、試聴プログラム

【課題】客の希望に応じて客の携帯電話機を利用して音楽を試聴させる。試聴サービスをむやみに盗用されないことに配慮する。
【解決手段】試聴申込コード発行手段は、時刻情報を含んだ試聴申込コードの無線信号を店舗内に送信する。音楽サーバーは、携帯情報端末から試聴申込コードと商品コードを受信した際、試聴申込コードの時刻情報が試聴許可期間内であるか否かを判断し、試聴許可期間内である場合に、商品コードに該当する音楽データを当該携帯情報端末に送信する。制御手段は、試聴プログラムに基づき、ユーザインタフェースによる利用者入力に従って第1〜4ステップの処理を行う。第1ステップでは、試聴申込コードを受信させて一時記憶する。第2ステップでは、商品コードを読み取らせて一時記憶する。第3ステップでは、試聴申込コードと商品コードを音楽サーバーに送信させる。第4ステップでは、音楽サーバーから受信する音楽データを再生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、CDやMDの音楽パッケージソフトを販売する店舗において、品定めをする客の希望に応じて客の携帯電話機を利用して音楽を試聴させる技術に関し、とくに、試聴サービスをむやみに盗用されないことに配慮した技術に関する。
【背景技術】
【0002】
音楽販売店における最新の試聴システムはきわめて便利である。店舗に陳列されている商品(CDパッケージ)にバーコードが添付されている。バーコードには商品コード(CDタイトルの識別情報)が表現されている。任意のCDパッケージを店内の試聴機の場所まで持っていき、試聴機の差込口にCDパッケージを挿入すると、バーコードが読み取られて音楽サーバーに連絡がいく。音楽サーバーには試聴用の音楽データ・曲目データ・ジャケット画像データを集約したデータベースがあり、指定されたCDタイトルのデータが試聴機に送られて、音楽がアンプを経てヘッドホンから出力されるとともに、ジャケット画像と曲目一覧がディスプレイに表示される。利用者は、試聴機のボタンを操作して曲を進めたり戻したりしながら希望曲を聴くことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の試聴システムでは、一台の音楽サーバーで多数の試聴機に対応できる点で合理的であるといえる。しかし、音楽販売店の規模に応じた台数の試聴機を設置することになるので、かなり大きな設備投資が必要になるし、設置スペースも大きくなる。この問題を解決することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
携帯電話機は進化を続け、インターネット接続機能やブラウザ機能は標準装備であり、デジタルカメラ、バーコードやQRコードあるいはICタグの読み取り機能、ブルートゥースや「ISO/IEC IS 18092」などの短距離無線通信機能、電子財布機能、ワンセグ受信機能などを採り入れた機種が増えており、大流行の携帯音楽プレーヤーと同等の機能を有する機種もでてきた。
【0005】
この出願の発明者は、客が持参する高機能な携帯電話機(携帯情報端末)を音楽販売店において客自身が試聴機として利用できるようにしようと考えた。その際に注意すべきことは、客が自分の携帯電話機に試聴用として音楽データを取り込むことに適切な制約をつける必要があることである。試聴サービスが安易に乱用され、音楽商品の売れ行きに悪影響を及ぼすようでは本末転倒である。
【0006】
===方法の発明===
方法発明はつぎの事項(1)〜(13)により特定される。
(1)携帯情報端末を持って店舗にいる客に、店舗の試聴申込コード発行手段と、公衆通信網上の音楽サーバーを介して音楽を試聴させる方法であること
(2)試聴申込コード発行手段は、時刻情報を含んだ試聴申込コードの無線信号を送信すること
(3)音楽サーバーは、携帯情報端末から試聴申込コードと商品コードを受信した際、試聴申込コードの時刻情報が試聴許可期間内であるか否かを判断し、試聴許可期間内である場合に、商品コードに該当する音楽データを当該携帯情報端末にストリーミング送信すること
(4)携帯情報端末は、短距離無線通信手段と、読み取り手段と、主通信手段と、音楽再生手段と、制御手段と、ユーザインタフェースを備えること
(5)短距離無線通信手段は、試聴申込コード発行手段が送信する試聴申込コードを受信可能であること
(6)読み取り手段は、店舗の取扱物品から商品コードを読み取り可能であること
(7)主通信手段は、音楽サーバーと通信可能であること
(8)音楽再生手段は、音楽サーバーからストリーミング送信される音楽データを受信しつつ再生可能であること
(9)制御手段は、試聴プログラムに基づき、ユーザインタフェースによる利用者入力に従って第1〜第4ステップの処理を行うこと
(10)第1ステップでは、試聴申込コードを受信させて一時記憶すること
(11)第2ステップでは、取扱物品から商品コードを読み取らせて一時記憶すること
(12)第3ステップでは、一時記憶している試聴申込コードと商品コードを音楽サーバーに送信させること
(13)第4ステップでは、音楽サーバーから受信する音楽データを再生させること
【0007】
===システムの発明===
システム発明はつぎの事項(21)〜(24)により特定される。
(21)試聴申込コード発行手段と、商品コード記録媒体と、音楽サーバーとを備え、携帯情報端末を持って店舗にいる客に音楽を試聴させるシステムであること
(22)試聴申込コード発行手段は、時刻情報を含んだ試聴申込コードの無線信号を店舗内の携帯情報端末の短距離無線通信手段により受信可能に送信すること
(23)商品コード記録媒体は、携帯情報端末により読み取り可能な商品コードを記録し、店舗の取扱物品に添付されること
(24)音楽サーバーは、公衆通信網を介して携帯情報端末と通信可能であり、携帯情報端末から試聴申込コードと商品コードを受信した際、試聴申込コードの時刻情報が試聴許可期間内であるか否かを判断し、試聴許可期間内である場合に、商品コードに該当する音楽データを当該携帯情報端末にストリーミング送信すること
【0008】
===プログラムの発明===
プログラム発明はつぎの事項(31)〜(40)により特定される。
(31)短距離無線通信手段と、読み取り手段と、主通信手段と、音楽再生手段と、端末制御手段と、ユーザインタフェースを備えた携帯情報端末にインストールされる試聴プログラムであること
(32)短距離無線通信手段は、試聴申込コード発行手段が送信する試聴申込コードを受信可能であること
(33)読み取り手段は、店舗の取扱物品から商品コードを読み取り可能であること
(34)主通信手段は、公衆通信網上の音楽サーバーと通信可能であること
(35)音楽再生手段は、音楽サーバーからストリーミング送信される音楽データを受信しつつ再生可能であること
(36)試聴プログラムは、制御手段に、ユーザインタフェースによる利用者入力に従って第1〜第4ステップの処理を可能とさせること
(37)第1ステップでは、試聴申込コードを受信させて一時記憶すること
(38)第2ステップでは、取扱物品から商品コードを読み取らせて一時記憶すること
(39)第3ステップでは、一時記憶している試聴申込コードと商品コードを音楽サーバーに送信させること
(40)第4ステップでは、音楽サーバーから受信する音楽データを再生させること
【発明の効果】
【0009】
音楽販売店に必要となる設備投資はきわめて小さい。試聴申込コードに含めた時刻情報に基づいて試聴サービスに時間的な制限が加わるので、乱用されない。
【実施例】
【0010】
===携帯電話機の短距離無線通信手段と試聴申込コード発行手段===
最近NTTドコモは「おサイフケータイ」と名付けた携帯電話機を提供している。これは「iモード FeliCa 対応携帯電話」であり、その技術情報やサービス情報は下記のURL等にて詳細に開示されている。
http://www.nttdocomo.co.jp/service/imode/osaifu/index.html
http://www.nttdocomo.co.jp/service/imode/make/content/felica/index.html
【0011】
「おサイフケータイ」と称する携帯電話機は、短距離無線通信手段として「ISO/IEC IS 18092」規格の通信インタフェースを備えている。このタイプの携帯電話機を対象として試聴申込コードを発行する手段は、「iモード FeliCa 対応携帯電話」プラットフォームの1つであるFeliCaライターとなる。試聴申込コード発行手段としてのFeliCaライターに携帯電話機を近づけると、JR東日本のSuica改札装置のようにピッと音がして、携帯電話機に内蔵のFeliCaメモリに試聴申込コードが書き込まれる。試聴申込コードには、そのときの時刻情報が含まれており、コードを盗用されないように暗号化されている。そのようなFeliCaライターを音楽販売店に設置しておき、試聴を希望する人に対して携帯電話機でタッチするように案内する。
【0012】
また、短距離無線通信手段としてブルートゥース通信インタフェースを搭載した携帯電話機はすでに相当数使用されている。このタイプの携帯電話機を対象とするのであれば、試聴申込コード発行手段として店舗にブルートゥース親局を設置し、店舗内にいる客のブルートゥース付き携帯電話機を子局としてピコネット方式で試聴申込コード(そのときの時刻情報を含む)の無線信号を送達する。ブルートゥース付き携帯電話機は、逐次受信する最新の試聴申込コードを更新しながら一時記憶する。なお上記のFeliCaライターによる試聴申込コード発行手段と併設してもよい。
【0013】
===商品コード記録媒体===
商品コード記録媒体としては、バーコード、QRコード、ICタグなどを使用する。店舗に陳列されている商品であるCDパッケージに、商品コード(CDタイトル識別情報)を表現したバーコード、QRコード、ICタグの少なくとも1つを添付しておく。バーコード読み取り機能、QRコード読み取り機能、ICタグ読み取り機能などを備えた携帯電話機でこれらを読み取り、読み取ったコードを内蔵メモリに一時記憶する。そのように携帯電話機の応用プログラム(試聴プログラム)を構成しておく。試聴プログラムは、音楽サーバーあるいは他のインターネット上のサイトからダウンロードしてインストールしておく。
【0014】
===客の操作手順===
客の携帯電話機には試聴プログラムがインストールされている。客が携帯電話機を持って店内に入り(あるいはFeliCaライターにタッチし)、店舗の試聴申込コード発行手段から発信された試聴申込コードを携帯電話機が受信すると、携帯電話機のプロセサが試聴申込コードであることを認識して試聴プログラムを起動し、その試聴申込コードを一時記憶する。
【0015】
携帯電話機のプロセサは、試聴プログラムに従って携帯電話機の画面に「試聴したいCDから商品コードを読み取ってください」という意味のガイドメッセージを表示させる。客が携帯電話機により希望のCDパッケージに添付の商品コードを読み取ると、携帯電話機のプロセサは商品コードを一時記憶し、「実行ボタンを押すと試聴コマンドを発信します」といったような操作ガイドを表示させる。
【0016】
客が操作ガイドに従って実行ボタンを押すと、携帯電話機のプロセサは、一時記憶している試聴申込コードと商品コードを含んだ試聴希望電文を作成するとともに、インターネット接続ルーチンを起動し、試聴プログラムに設定されている宛先アドレス(音楽サーバーのアドレス)に向けて試聴希望電文を送信する。携帯電話機のプロセサは、「しばらくお待ちください」といったメッセージを表示させる。
【0017】
===音楽サーバー===
音楽サーバーは、商品コードと曲目データと音楽データを対応付けして多数の商品情報をデータベース化して管理している。シングルCDの商品コードの場合には、商品コードに一曲の曲目データと音楽データしか対応していない場合もあるが、CDアルバムの商品コードの場合は、商品コードに複数曲の曲目データと音楽データが対応付けされている。
【0018】
音楽サーバーは、インターネットを通じて携帯電話機から試聴希望電文を受信すると、電文中の時刻情報を抽出し、直近の30分以内の時刻情報なのか、30分以上経過している時刻情報なのかを判断する。30分以上経過している時刻情報である場合は、試聴サービスを受けることができない旨の電文を返信する。
【0019】
時刻情報が新しいものであった場合、音楽サーバーは、試聴希望電文中の商品コードに該当する曲目データと音楽データをデータベースから抽出し、曲目データを含んだ電文を携帯電話機に返信するとともに、先頭曲(複数の曲がある場合)の音楽データを上記携帯電話機に宛ててストリーミング送信する。
【0020】
===試聴プロセス===
携帯電話機のプロセサは、音楽サーバーから曲目データを受信した際、ディスプレイに曲目リスト(複数の曲があるとする)を表示させる。また、引き続いて音楽サーバーからストリーミング送信される音楽データを受信しつつ音楽データをデコードして再生し、携帯電話機のオーディオアンプに接続されたヘッドホンから音響出力する。この音楽再生状態で、表示された曲目リストを見ながら曲スキップや曲戻しのコマンドをキーボードから入力することができる。その操作ガイドが曲目リストとともに表示されている。利用者が曲スキップなどの入力をすると、携帯電話機のプロセサは該当するコマンド電文を音楽サーバーに送信する。コマンド電文を受信した際に音楽サーバーは、送信中の曲の音楽データを送信中止し、コマンドに従って次曲の音楽データのストリーミング送信を開始する。なお携帯電話機のプロセサは、試聴希望電文の時刻情報が古かったために音楽サーバーから試聴拒否の電文を受け取った際、「試聴申込コードを取り直してください」といった意味合いの説明を表示させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
つぎの事項(1)〜(13)により特定される方法の発明。
(1)携帯情報端末を持って店舗にいる客に、店舗の試聴申込コード発行手段と、公衆通信網上の音楽サーバーを介して音楽を試聴させる方法であること
(2)試聴申込コード発行手段は、時刻情報を含んだ試聴申込コードの無線信号を送信すること
(3)音楽サーバーは、携帯情報端末から試聴申込コードと商品コードを受信した際、試聴申込コードの時刻情報が試聴許可期間内であるか否かを判断し、試聴許可期間内である場合に、商品コードに該当する音楽データを当該携帯情報端末にストリーミング送信すること
(4)携帯情報端末は、短距離無線通信手段と、読み取り手段と、主通信手段と、音楽再生手段と、制御手段と、ユーザインタフェースを備えること
(5)短距離無線通信手段は、試聴申込コード発行手段が送信する試聴申込コードを受信可能であること
(6)読み取り手段は、店舗の取扱物品から商品コードを読み取り可能であること
(7)主通信手段は、音楽サーバーと通信可能であること
(8)音楽再生手段は、音楽サーバーからストリーミング送信される音楽データを受信しつつ再生可能であること
(9)制御手段は、試聴プログラムに基づき、ユーザインタフェースによる利用者入力に従って第1〜第4ステップの処理を行うこと
(10)第1ステップでは、試聴申込コードを受信させて一時記憶すること
(11)第2ステップでは、取扱物品から商品コードを読み取らせて一時記憶すること
(12)第3ステップでは、一時記憶している試聴申込コードと商品コードを音楽サーバーに送信させること
(13)第4ステップでは、音楽サーバーから受信する音楽データを再生させること
【請求項2】
つぎの事項(21)〜(24)により特定される物の発明。
(21)試聴申込コード発行手段と、商品コード記録媒体と、音楽サーバーとを備え、携帯情報端末を持って店舗にいる客に音楽を試聴させるシステムであること
(22)試聴申込コード発行手段は、時刻情報を含んだ試聴申込コードの無線信号を店舗内の携帯情報端末の短距離無線通信手段により受信可能に送信すること
(23)商品コード記録媒体は、携帯情報端末により読み取り可能な商品コードを記録し、店舗の取扱物品に添付されること
(24)音楽サーバーは、公衆通信網を介して携帯情報端末と通信可能であり、携帯情報端末から試聴申込コードと商品コードを受信した際、試聴申込コードの時刻情報が試聴許可期間内であるか否かを判断し、試聴許可期間内である場合に、商品コードに該当する音楽データを当該携帯情報端末にストリーミング送信すること
【請求項3】
つぎの事項(31)〜(40)により特定される物の発明。
(31)短距離無線通信手段と、読み取り手段と、主通信手段と、音楽再生手段と、端末制御手段と、ユーザインタフェースを備えた携帯情報端末にインストールされる試聴プログラムであること
(32)短距離無線通信手段は、試聴申込コード発行手段が送信する試聴申込コードを受信可能であること
(33)読み取り手段は、店舗の取扱物品から商品コードを読み取り可能であること
(34)主通信手段は、公衆通信網上の音楽サーバーと通信可能であること
(35)音楽再生手段は、音楽サーバーからストリーミング送信される音楽データを受信しつつ再生可能であること
(36)試聴プログラムは、制御手段に、ユーザインタフェースによる利用者入力に従って第1〜第4ステップの処理を可能とさせること
(37)第1ステップでは、試聴申込コードを受信させて一時記憶すること
(38)第2ステップでは、取扱物品から商品コードを読み取らせて一時記憶すること
(39)第3ステップでは、一時記憶している試聴申込コードと商品コードを音楽サーバーに送信させること
(40)第4ステップでは、音楽サーバーから受信する音楽データを再生させること

【公開番号】特開2007−292927(P2007−292927A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−119065(P2006−119065)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【出願人】(390004710)株式会社第一興商 (537)
【Fターム(参考)】