説明

音速測定方法、及び音速測定装置

【課題】超音波伝達媒体中の音速を求め、その音速を考慮して試料中の音速を正確に測定すること。
【解決手段】パルス励起型超音波顕微鏡2において、Z軸ステージ15にトランスデューサ13が設けられており、そのZ軸ステージ15を移動させることにより、ガラス基板20とトランスデューサ13との間隔がトランスデューサ13の焦点距離と一致するよう調整される。その間隔を維持した状態で、ガラス基板20の表面にトランスデューサ13から超音波を照射してからその反射波を受信するまでの受信時間が検出される。その間隔と受信時間とに基づいて、超音波伝達媒体W1中の音速が求められる。生体組織21の表面にトランスデューサ13から超音波を照射したときに受信した反射波と超音波伝達媒体W1中の音速とに基づいて、生体組織21中の音速が算出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を利用して試料中の音速を測定する音速測定方法、及び音速測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、医療分野では、生体組織の診断を行う装置として、超音波顕微鏡を応用した製品の開発が進められており、光学顕微鏡と同等の解像度で生体組織の観察が可能なものが実用化されている。光学顕微鏡では生体組織における化学的性質の違いを例えば染色によって区別するのに対し、超音波顕微鏡では物理的性質の違いを無染色で区別することができる。つまり、超音波顕微鏡を用いる場合には、染色を行わなくても生体組織を診断することができるといった利点がある。
【0003】
従来の超音波顕微鏡では、単一周波数のバースト波を利用し、反射した超音波信号の強度や位相を解析することで、生体組織の性状を観察する。しかし、このような超音波顕微鏡には、超音波信号の測定に長時間を要するという問題があった。また、十分な精度と安定度を持った発振器や測定系などのアナログシステムが必要となるため、装置が大型化、複雑化するといった問題もあった。
【0004】
これら問題を解消して術中診断を可能とするための手段として、本発明者らはパルス励起型の超音波顕微鏡をすでに提案している(例えば、非特許文献1、特許文献1参照)。このパルス励起型超音波顕微鏡を用いた観察では、生体組織から切り出し、その組織を用いて厚さ数μmの凍結切片41を作製し、これをまずガラス基板42上に固定する(図12参照)。そして、パルス波でトランスデューサ43を励起して超音波Sを出力させ、その超音波Sを水などの超音波伝達媒体W1を介して凍結切片41に照射する。そして、組織表面の反射波Sfrontと組織裏面の反射波Srearとの合成波を、トランスデューサ43で受信する。さらに、この受信波をフーリエ変換してガラス基板42からの直接反射と比較することにより、強度及び位相スペクトルを得る。
【0005】
ところで、バースト波を用いた従来方式では、同じ測定点で周波数を切り替え何回も測定し、組織表面の反射と背面の反射との干渉を観測する必要があった。これに対して、パルス励起型超音波顕微鏡によれば、1回の測定で算出することができるという利点がある。この測定で得られた信号強度の極小点または極大点の周波数をf、そのときの位相をφとすると、組織表面と背面からの反射は極小点では逆位相、極大点では同位相となる。すなわち、極小点においては組織表面からの反射は背面からの反射より位相が(2n−1)π進んでおり、φ+(2n−1)πとなる(nは自然数)。従って、組織の厚さd、水中の音速Cとすると、
【数1】

が成立している。
【0006】
従って、次式のように組織厚さdが求まる。
【数2】

【0007】
また、距離2dを組織音速Cで通過した波と水中の音速Cで通過した波との位相差がφであることから、
【数3】

となり、次式のように組織音速Cが求まる。
【数4】

【0008】
このように、組織音速Cを測定しながら、超音波の照射点を二次元走査することにより、二次元の音速像が得られる。音速Cは、組織の硬さに関連するパラメータであり、音速像によって凍結切片41の性状を観察することができる。
【特許文献1】特開2005−291827号公報
【非特許文献1】「医用超音波:パルス励起型超音波音速顕微鏡」(「超音波TECHNO」VOL.15 No.6(2003.11〜12)(101〜105頁)日本工業出版社発行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記の音速測定方法では、所定温度(例えば、測定開始時にて温度センサなどで測定した水温)での水中の音速Cを上式(4)に代入して、組織音速Cを求めている。しかしながら、超音波顕微鏡が設置された部屋の室温などの測定条件が変化したり測定時に超音波照射を繰り返したりすることで、水温が変化して水中の音速Cが変化してしまうことがある。この場合、実際の水中の音速Cと異なる値を用いることとなり、凍結切片41の厚さdや組織音速Cを正確に算出することができず、測定誤差が生じる。特に、超音波照射により水温が変化する場合、超音波が伝搬する部分で局所的に温度が上がる。そのため、温度センサではその水温上昇を正確に検出することができず、測定誤差が生じる。このような測定誤差は、より精密できめ細かな画像診断を行う上で障害となる。
【0010】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、超音波伝達媒体中の音速を求め、その音速を考慮して試料中の音速を正確に測定することができる音速測定方法、及び音速測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、試料及び試料載置板と焦点型超音波振動子との間に超音波伝達媒体を介在させ、この状態で前記焦点型超音波振動子をパルス駆動して前記試料に超音波を照射し、前記焦点型超音波振動子にて受信した前記超音波の反射波に基づいて前記試料中の音速を測定する音速測定方法であって、前記試料載置板と前記焦点型超音波振動子との間隔を調整するステップと、前記間隔を維持した状態で前記試料載置板の表面に超音波を照射してからその反射波を受信するまでの受信時間を検出するステップと、前記間隔と前記受信時間とに基づいて、前記超音波伝達媒体中の音速を求めるステップと、前記試料の表面に超音波を照射した場合に受信した反射波と、前記超音波伝達媒体中の音速とに基づいて、前記試料中の音速を求めるステップとを含むことを特徴とする音速測定方法をその要旨とする。
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、試料載置板と焦点型超音波振動子との間隔が調整され、その間隔を維持した状態で試料載置板の表面に超音波を照射してからその反射波を受信するまでの受信時間が検出される。そして、試料載置板と焦点型超音波振動子との間隔と反射波の受信時間とに基づいて、超音波伝達媒体中の音速が求められる。具体的には、試料載置板と焦点型超音波振動子との間隔をL、受信時間をTとすると、超音波伝達媒体中を伝搬する超音波の音速Cは、C=2L/Tの演算を行うことで求められる。その後、試料の表面に超音波が照射され、その反射波と超音波伝達媒体中の音速とに基づいて、試料中の音速が求められる。このようにすれば、超音波伝達媒体の温度が変化した場合でも、その温度変化に応じた超音波伝達媒体中の音速を求めることができる。またこの場合、超音波伝達媒体において実際に超音波が伝搬する部分の温度に応じた音速を求めることができるため、従来技術のように温度センサなどで温度を測定する場合と比較してより正確な音速を求めることができる。そして、その超音波伝達媒体中の音速を用いることにより、試料中を伝搬する音速を正確に算出することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、試料及び試料載置板と焦点型超音波振動子との間に超音波伝達媒体を介在させ、この状態で前記焦点型超音波振動子をパルス駆動して前記試料に超音波を照射し、前記焦点型超音波振動子にて受信した前記超音波の反射波に基づいて前記試料中の音速を測定する音速測定装置であって、前記試料載置板と前記焦点型超音波振動子との間隔を調整する間隔調整手段と、前記間隔を維持した状態で前記試料載置板の表面に前記焦点型超音波振動子から超音波を照射してからその反射波を受信するまでの受信時間を検出する受信時間検出手段と、前記間隔と前記受信時間とに基づいて、前記超音波伝達媒体中の音速を求める第1音速算出手段と、前記試料の表面に前記焦点型超音波振動子から超音波を照射したときに受信した反射波と前記超音波伝達媒体中の音速とに基づいて、前記試料中の音速を算出する第2音速算出手段とを備えることを特徴とする音速測定装置をその要旨とする。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、間隔調整手段により、試料載置板と焦点型超音波振動子との間隔が調整される。その間隔を維持した状態で、受信時間検出手段により、試料載置板の表面に超音波を照射してからその反射波を受信するまでの受信時間が検出される。そして、第1音速算出手段により、試料載置板と焦点型超音波振動子との間隔と反射波の受信時間とに基づいて、超音波伝達媒体中の音速が求められる。具体的には、間隔をL、受信時間をTとすると、超音波伝達媒体中を伝搬する超音波の音速Cは、C=2L/Tの演算を行うことで求められる。その後、第2音速算出手段により、試料の表面に超音波を照射した場合に受信した反射波とその超音波伝達媒体中の音速とに基づいて、試料中の音速が求められる。このようにすれば、超音波伝達媒体の温度が変化した場合でも、その温度変化に応じた超音波伝達媒体中の音速を求めることができる。そして、その超音波伝達媒体中の音速を用いることにより、試料中を伝搬する音速を正確に算出することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記反射波の音圧に対応した反射波信号のピーク電圧を検出するピーク電圧検出手段をさらに備え、前記間隔調整手段は、前記ピーク電圧検出手段の検出結果に基づいて、前記試料載置板の表面からの反射波の音圧が最大となるよう前記間隔を調整することをその要旨とする。
【0016】
本発明のように、焦点型超音波振動子を用いる場合、焦点型超音波振動子の焦点が試料載置板の表面に一致するときにその反射波の音圧が最大となる。従って、請求項3のように、ピーク電圧検出手段により、試料載置板の表面からの反射波の音圧に対応した反射波信号のピーク電圧が検出される。そして、間隔調整手段により、その反射波の音圧(ピーク電圧)が最大となるように試料載置板と焦点型超音波振動子との間隔が調整される。その結果、試料載置板と焦点型超音波振動子との間隔を焦点型超音波振動子の焦点距離と一致させることができ、その状態で超音波振動子から超音波を照射することにより、試料中の音速をより正確に算出することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項3において、前記受信時間検出手段は、前記焦点型超音波振動子による超音波の照射時刻と、前記ピーク電圧検出手段によるピーク電圧の検出時刻とに基づいて、前記受信時間を測定することをその要旨とする。
【0018】
請求項4に記載の発明のように、焦点型超音波振動子による超音波の照射時刻と、ピーク電圧検出手段による反射波信号のピーク電圧の検出時刻とに基づいて、それら時刻の時間差を計算することにより、反射波の受信時間を的確に測定することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜4のいずれか1項において、前記超音波の照射点を二次元的に走査させる二次元走査手段をさらに備えたことをその要旨とする。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、二次元走査手段により、超音波の照射点が二次元的に走査されるため、試料中の音速を平面情報として得ることができる。従って、それら音速のデータを用いることにより、試料を観察するための二次元の音速像を表示させることが可能となる。
【0021】
請求項6に記載の発明は、請求項5において、前記二次元走査手段による超音波の走査前及び走査後において、前記受信時間検出手段は、前記反射波の受信時間を検出するとともに、前記第1音速算出手段は、その受信時間に基づいて前記超音波伝達媒体中の音速を算出し、前記第2音速算出手段は、走査前及び走査後の超音波伝達媒体中の音速に基づいて、前記二次元走査手段による走査時における前記試料中の音速を算出することをその要旨とする。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、超音波の走査前及び走査後において、超音波伝達媒体中の音速が算出される。このようにすると、二次元走査手段によって超音波が二次元的に走査され、その際に超音波照射を繰り返すことにより超音波伝達媒体の温度が変化した場合でも、温度変化後の超音波伝達媒体中の音速を求めることができる。従って、超音波の走査前及び走査後における超音波伝達媒体中の音速の変化に基づいて、超音波の走査時における超音波伝達媒体中の音速を推定することができ、それに応じた試料中の音速を正確に算出することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上詳述したように、請求項1〜6に記載の発明によると、超音波伝達媒体中の音速を求め、その音速を考慮して試料中の音速を正確に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
[第1の実施の形態]
【0025】
以下、本発明を具体化した第1の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は音速測定装置としての超音波画像検査装置を示す概略構成図である。
【0026】
図1に示されるように、本実施の形態の超音波画像検査装置1は、パルス励起型超音波顕微鏡2と、A/Dボード3と、パーソナルコンピュータ(パソコン)4とを備える。
【0027】
超音波顕微鏡2には、パルス発生回路10と、送受波分離回路11と、受信回路12と、トランスデューサ13と、X−Yステージ14と、Z軸ステージ15と、エンコーダ(ENC)16と、X−Yコントローラ17と、Z軸コントローラ18とが設けられている。
【0028】
超音波顕微鏡2において、Z軸ステージ15の下部に焦点型超音波振動子としてのトランスデューサ13が固定されている。Z軸ステージ15は、駆動モータ19Zを備え、このモータ19ZにZ軸コントローラ18が接続されている。そして、このZ軸コントローラ18の駆動信号に応答してモータ19Zが駆動することにより、Z軸ステージ15とともにトランスデューサ13がZ軸方向(図1では上下方向)に移動して、そのトランスデューサ13から照射される超音波の焦点位置が調整される。
【0029】
トランスデューサ13は、酸化亜鉛の薄膜圧電素子13aとサファイアロッドの音響レンズ13bとからなり、パルス発生回路10で発生される励起パルスにより薄膜圧電素子13aが振動して所定周波数帯域の超音波が音響レンズ13bを通して出力される。この音響レンズ13bにおける超音波は円錐状に収束され、水などの超音波伝達媒体W1を介して試料載置板としてのガラス基板20の表面で焦点を結ぶようになっている。なお、トランスデューサ13としては、口径1.2mm、焦点距離1.5mm、中心周波数80MHz、帯域幅50〜105MHz(−6dB)の仕様のものを用いている。
【0030】
また、トランスデューサ13の下方に、二次元走査手段としてのX−Yステージ14が設けられ、そのステージ14上にはガラス基板20が固定されている。そして、そのガラス基板20の上面に、試料としての生体組織21が載置され、この生体組織21に対してその上方から超音波が照射される。なお、この生体組織21は、数μm程度(通常4μm〜10μm)の厚さにスライスされた凍結切片(生体組織切片)である。
【0031】
X−Yステージ14は、生体組織21を二次元的に動かすためのステージ14X,14Yを備えるとともに、それぞれのステージ14X,14Yを駆動するモータ19X,19Yを備えている。これらのモータ19X,19Yとしては、ステッピングモータやリニアモータが使用される。
【0032】
各モータ19X,19YにはX−Yコントローラ17が接続されており、該X−Yコントローラ17の駆動信号に応答してモータ19X,19Yが駆動される。これらモータ19X,19Yの駆動により、Xステージ14Xを連続走査(連続送り)するとともに、Yステージ14Yを間欠送りとなるよう制御する。そしてこの制御によりX−Yステージ14の高速走査が可能となっている。
【0033】
また、本実施の形態においては、Xステージ14Xに対応してエンコーダ16が設けられ、エンコーダ16によりXステージ14Xの走査位置が検出される。具体的にいうと、走査範囲を300×300個の測定点(ピクセル)に分割した場合、1回のX方向(水平方向)の走査が300分割される。そして、各測定点の位置がエンコーダ16によって検出され、パソコン4に取り込まれる。パソコン4はそのエンコーダ16の出力に同期して駆動制御信号を生成して、その駆動制御信号をX−Yコントローラ17に供給する。X−Yコントローラ17は、この駆動制御信号に基づいてモータ19Xを駆動する。また、X−Yコントローラ17は、エンコーダ16の出力信号に基づきX方向の1ラインの走査が終了した時点でモータ19Yを駆動して、Yステージ14YをY方向に1ピクセル分移動させる。
【0034】
さらに、X−Yコントローラ17は、駆動制御信号に同期してトリガ信号を生成してパルス発生回路10に供給する。これにより、パルス発生回路10において、そのトリガ信号に同期したタイミングで励起パルスが生成される。その励起パルスが送受波分離回路11を介してトランスデューサ13に供給されて該トランスデューサ13から超音波が照射される。
【0035】
図2は、トランスデューサ13側から見たX−Yステージ14の平面図である。図2に示されるように、Xステージ14Xによるx方向への往復走査とYステージによるy方向への走査とを行うことにより、ガラス基板20上の生体組織21に対して超音波が二次元的に走査される。
【0036】
図3には、本実施の形態における超音波の走査範囲R1の一例を示している。すなわち、超音波の走査範囲R1は、生体組織21に加えてガラス基板20の表面が露出している部分(ガラス面20a)を含むように設定される。そして、走査範囲R1の左上の隅の位置から走査が開始され、矢印で示すように、X方向及びY方向に二次元的に走査が順次行われる。
【0037】
図1に示すトランスデューサ13の薄膜圧電素子13aは、送受波兼用の素子であり、生体組織21で反射した超音波(反射波)を電気信号に変換する。そして、その反射波の信号は送受波分離回路11を介して受信回路12に供給される。受信回路12は、図示しない信号増幅回路を含み、反射波の信号を増幅してA/Dボード3の検波回路23に出力する。
【0038】
検波回路23は、超音波の反射波を検出するための回路であり、ゲート回路23aやピーク検出回路23b(ピーク電圧検出手段)などを含む。本実施の形態の検波回路23のゲート回路23aは、トランスデューサ13で受信した反射波信号のなかからガラス面20aまたは生体組織21の反射波信号を抽出する。超音波は、トランスデューサ13とガラス面20aまたは生体組織21との間で繰り返し反射されるものである。そのため、検波回路23(ゲート回路23a)は、最初に得られる反射波信号を抽出するよう構成されている。また、検波回路23のピーク検出回路23bは、その反射波信号のピーク電圧を検出する。そして、検波回路23で検出された反射波信号やピーク電圧の電圧信号はA/D変換回路24に入力されて、A/D変換された後、パソコン4に転送される。
【0039】
パソコン4は、CPU31、インターフェース(I/F)32,33、メモリ34、記憶装置35、入力装置36、及び表示装置37を備え、それらはバス38を介して相互に接続されている。
【0040】
CPU31は、メモリ34を利用して制御プログラムを実行し、装置全体を統括的に制御する。制御プログラムとしては、X−Yステージ14による二次元走査を制御するためのプログラム、自動焦点調整を行うためのプログラムや組織音速を算出するためのプログラムなどを含む。
【0041】
インターフェース32は、A/Dボード3からの転送データ(A/D変換後の反射波信号など)を取り込むための通信ポート(例えば、USBポート)である。インターフェース33は、コントローラ17,18への駆動制御信号を出力したり、エンコーダ16の出力信号を取り込んだりするための入出力ポートである。
【0042】
表示装置37は、例えば、LCDやCRTなどのカラーディスプレイであり、生体組織21の音速像や、各種設定の入力画面を表示するために用いられる。入力装置36は、キーボードやマウス装置などであり、ユーザからの要求や指示、パラメータの入力に用いられる。
【0043】
記憶装置35は、磁気ディスク装置や光ディスク装置などであり、その記憶装置35には制御プログラム及び各種のデータが記憶されている。CPU31は、入力装置36による指示に従い、プログラムやデータを記憶装置35からメモリ34へ転送し、それを逐次実行する。なお、CPU31が実行するプログラムとしては、メモリカード、フレキシブルディスク、光ディスクなどの記憶媒体に記憶されたプログラムや、通信媒体を介してダウンロードしたプログラムでもよく、その実行時には記憶装置35にインストールして利用する。
【0044】
次に、本実施の形態の超音波画像検査装置1において、超音波の焦点を調整するための調整方法について説明する。
【0045】
図4に示されるように、トランスデューサ13からガラス基板20の表面(ガラス面20a)に垂直に超音波Sを照射する場合、超音波Sの焦点が合った位置で反射波の音圧が最大になる。このように、反射波の音圧が焦点位置で最大となる特性を利用して、超音波Sの焦点を調整する。
【0046】
具体的には、トランスデューサ13の焦点がガラス面20a付近となるようZ軸ステージ15を設定した後、Z軸ステージ15を駆動しつつトランスデューサ13から超音波Soを照射し、その際に検波回路23のピーク検出回路23bにおいて反射波信号のピーク電圧を検出する。その検出結果に基づいて、反射波が最大音圧(反射波信号のピーク電圧が最大)となる位置を判定する。そして、その最大音圧となる位置でZ軸ステージ18を停止させることにより、トランスデューサ13から照射される超音波Sがガラス面20a上で焦点を結ぶように超音波Sの焦点位置が調整される。つまり、トランスデューサ13とガラス面20aとの間隔Lがトランスデューサ13の焦点距離と一致するよう調整される。
【0047】
次に、超音波伝達媒体W1を伝搬する超音波Sの音速を算出するための算出方法を説明する。
【0048】
上記の方法で超音波Sの焦点をガラス基板20の表面(ガラス面20a)に調整した後、そのガラス面20aに超音波Sを照射してからその反射波Sを受信するまでの受信時間Tを測定する(図5参照)。具体的には、トランスデューサ13から超音波Sを照射した照射時刻t1と、ピーク検出回路23bにて反射波のピーク電圧を検出した検出時刻t2との時間差により、受信時間T(=t2−t1)を算出する。そして、トランスデューサ13とガラス面20aとの間隔Lと、その受信時間Tとに基づいて次式(5)のように超音波伝達媒体W1中の音速Cを求める。
【数5】

【0049】
ここで、トランスデューサ13とガラス面20aとの間隔Lは、トランスデューサ13の製品出荷時等でその焦点距離として予め測定された値を用いる。なお、この焦点距離のデータは、メモリ34に予め記憶されている。
【0050】
上式(5)により求めた音速Cは、その測定時の超音波伝達媒体W1の温度に応じた正確な値となる。そして、その音速Cを用いて上式(2)に対応した演算を行うことにより、生体組織21の厚さdが正確に求められる。また、音速Cを用いて、上式(4)に対応した演算を行うことにより、生体組織21中の音速Cが正確に求められる。
【0051】
次に、本実施の形態において、生体組織21の音速像を生成するためにCPU31が実行する処理例について、図6のフローチャートを用いて説明する。
【0052】
先ず、CPU31は、制御信号を出力することでX−Yコントローラ17によってモータ19X,19Yを駆動し、超音波Sの照射点がガラス面20a上に位置するようにX−Yステージ14を移動する。そして、間隔調整手段としてのCPU31は、制御信号を出力することでZ軸コントローラ18によってモータ19Zを駆動し、Z軸ステージ15を移動して超音波Sの焦点位置を調整する(ステップ100)。
【0053】
具体的には、超音波Sの焦点域近傍となる初期位置(例えば、トランスデューサ13の焦点距離Lよりも若干離れた位置)にZ軸ステージ15を移動させる。その後、励起パルスがトランスデューサ13に供給されると、トランスデューサ13から超音波Sがガラス面20aに照射され、反射波信号のピーク電圧がピーク検出回路23bで検出される。そして、CPU31は、A/D変換回路24で変換されたデジタルデータをインターフェース32を介して取り込み、そのデータ(ピーク電圧)をZ軸ステージ15の位置(Z軸の座標データ)と関連付けてメモリ34に記憶する。
【0054】
次いで、トランスデューサ13をガラス面20aに近づけるようにZ軸ステージ15が所定距離(例えば、0.01mm)だけ移動された後、ガラス面20aに超音波Sが照射され、反射波信号のピーク電圧がピーク検出回路23bで検出される。そして、CPU31は、A/D変換回路24で変換されたデジタルデータをピーク電圧としてZ軸ステージ15の位置と関連付けてメモリ34に記憶する。
【0055】
同様に、Z軸ステージ15をガラス面20aに徐々に近づけ、その都度、Z軸ステージ15の位置に対応する反射波信号のピーク電圧を取得してメモリ34に記憶する。そして、CPU31は、メモリ34に記憶された各ピーク電圧について、最大となる位置(Z軸の座標)を判定し、その位置にZ軸ステージ15を移動させることにより、ガラス面20a上で焦点を結ぶように超音波Sの焦点位置を調整する。
【0056】
その後、受信時間検出手段としてのCPU31は、ガラス面20aに超音波Sを照射してからその反射波を受信するまでの受信時間Tを測定する(ステップ110)。具体的には、図7に示されるように、トランスデューサ13から超音波Sがガラス面20aに照射されると、そのガラス面20aからの反射波Sの電気信号(反射波信号)が検波回路23で検出される。そして、CPU31は、A/D変換回路24で変換されたデジタルデータをインターフェース32を介して取り込み、メモリ34に記憶する。またこのとき、CPU31は、トランスデューサ13が超音波Sを照射した照射時刻t1と、ピーク検出回路23bが反射波信号のピーク電圧を検出した検出時刻t2とに基づいて、受信時間Tを算出する(図5参照)。
【0057】
そして、第1音速算出手段としてのCPU31は、メモリ34に記憶されている焦点距離Lと、その受信時間Tとを用いて上式(5)に対応した演算を行い、超音波伝達媒体W1を伝搬する超音波Sの音速Cを求める(ステップ120)。
【0058】
さらに、CPU31は、メモリ34に記憶したガラス面20aにおける反射波信号を用いて、周波数成分を得るためのフーリエ変換を行い、その変換結果をガラス面20aでの直接反射波のデータとしてメモリ34に記憶する。
【0059】
次に、CPU31は、制御信号を出力することでX−Yコントローラ17によってモータ19X,19Yを駆動し、X−Yステージ14による二次元走査を開始させる。このとき、CPU31は、エンコーダ16の出力に基づいて測定点の座標データを取得する。そして、図7に示すように、生体組織21に超音波Sが照射されると、その反射波(組織表面の反射波Sfrontと組織裏面の反射波Srearとの合成波)Sの反射波信号が検波回路23で抽出される。CPU31は、A/D変換回路24で変換されたデジタルデータをインターフェース32を介して取り込み、そのデータを各測定点の座標データに関連付けてメモリ34に記憶する(ステップ130)。なおここでは、走査範囲R1における全ての測定点での反射波信号を検出して1画面分のデータを取得する。
【0060】
そして、CPU31は、各測定点における反射波のデータをフーリエ変換して、その変換結果をガラス面20aでの反射波信号(フーリエ変換結果)と比較することにより、強度及び位相スペクトルを求める(図8参照)。CPU31は、その強度及び位相スペクトルから信号強度の極小点の周波数fとそのときの位相φとを判定する。CPU31は、それら周波数f及び位相φと、ステップ120で求めた超音波伝達媒体W1中の音速Cとを用いて、上記の式(2)に対応した演算を行い、測定点での生体組織21の厚さdを求める(ステップ140)。
【0061】
さらに、第2音速算出手段としてのCPU31は、算出した厚さdを用いて上記の式(4)に対応した演算を行い、測定点での生体組織21中の音速Cを求める(ステップ150)。なお、生体組織21の厚さd及び音速Cは、測定点毎に求められ、その測定点での座標データと関連付けてメモリ34に記憶される。
【0062】
その後、CPU31は、算出した組織音速Cに基づいて音速像を生成するための画像処理を行う(ステップ160)。詳しくは、CPU31は、組織音速Cを用いてカラー変調処理を行い、組織音速Cの大きさに応じた画像データを生成する。そして、CPU31は、各画像データを表示装置37に転送することにより、その表示装置37の画面に生体組織21の音速像を表示させた後、図6の処理を終了する。
【0063】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0064】
(1)本実施の形態の超音波画像検査装置1では、ガラス基板20とトランスデューサ13との間隔Lとガラス面20aからの反射波の受信時間Tとに基づいて、超音波伝達媒体W1中の音速Cが求められ、生体組織21からの反射波信号とその超音波伝達媒体W1中の音速Cとに基づいて、生体組織21中の音速Cが求められる。このようにすれば、超音波伝達媒体W1の温度が変化した場合でも、その温度変化に応じた超音波伝達媒体W1中の音速Cを求めることができる。またこの場合、超音波伝達媒体W1において実際に超音波Sが伝搬する部分の温度に応じた音速を求めることができるため、従来技術のように温度センサなどで温度を測定する場合と比較してより正確な音速を求めることができる。そして、その超音波伝達媒体W1中の音速Cを用いることにより、生体組織21中を伝搬する音速Cを正確に算出することができる。
【0065】
(2)本実施の形態の場合、パルス励起型の超音波顕微鏡2を用いたので、バースト波を用いて音速Cを測定する従来方式のように同じ測定点で周波数を切り替え何回も測定する必要がなく、各測定点について1回の測定で音速Cを算出することができる。そのため、超音波Sの照射による超音波伝達媒体W1の温度変化を最小限に抑えることができる。
【0066】
(3)本実施の形態の超音波画像検査装置1では、生体組織21の音速像を取得する前に、Z軸ステージ15を駆動することにより、トランスデューサ13から照射される超音波Sがガラス面20a上で焦点を結ぶようにガラス基板20とトランスデューサ13との間隔Lを調整することができる。このように、超音波Sの焦点位置を調整することにより、超音波伝達媒体W1中の音速Cを正確に求めることができるとともに、生体組織21中の音速Cを正確に算出することができる。従って、その音速Cに基づいて鮮明な音速像を表示装置37に表示させることができ、生体組織21の診断を厳密に行うことができる。
[第2の実施の形態]
【0067】
次に、本発明を具体化した第2の実施の形態を説明する。本実施の形態では、生体組織21の厚さd及び音速Cを算出するための算出方法が上記第1の実施の形態と異なる。なお、本実施の形態における超音波画像検査装置1の構成は、上記第1の実施の形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0068】
以下、本実施の形態において、生体組織21の厚さd及び音速Cを算出するための方法について説明する。
【0069】
先ず、図7に示すように、ガラス基板20の表面(ガラス面)20aに超音波Sを照射し、そのガラス面20aでの反射波Srを取得する。その後、生体組織21の表面に超音波Sを照射し、生体組織21からの反射波Sを取得する。この生体組織21からの反射波Sは、組織表面の反射波Sfrontと組織裏面の反射波Srearとを含んだ合成波として取得される。ここで、ガラス面20aでの反射波Srを参照波形としてデコンボリューション処理を行うことにより、生体組織21での反射波Sを補正して組織表面の反射波Sfrontと組織裏面の反射波Srearとを分離する。
【0070】
なお、このデコンボリューション処理では、各反射波Sr,Sをそれぞれフーリエ変換し、フーリエ変換後の反射波Sの周波数成分を反射波Srの周波数成分で除算し、さらに、その算出結果を逆フーリエ変換する。これにより、補正した反射波Sのデータが得られる。
【0071】
図9には、デコンボリューション処理前のガラス面20aの反射波Srと生体組織21の反射波Sを示し、図10には、デコンボリューション処理後におけるガラス面20aの反射波Srと生体組織21の反射波Sを示している。
【0072】
図9及び図10に示されるように、デコンボリューション処理により補正された生体組織21の反射波Sは、補正前の波形に比べて生体組織21の表面及び裏面での反射が分離可能な波形となる。本実施の形態では、このデコンボリューション処理によって補正された反射波Sに対して窓関数をかけることにより、組織表面での反射波Sfrontと組織裏面での反射波Srearとを時間領域で分離する。
【0073】
この分離した各反射波Sfront,Srearも、超音波Sと同様に異なる周波数成分を含む。従って、各反射波Sfront,Srearのデータをそれぞれフーリエ変換することで各反射波Sfront,Srearの位相スペクトルの周波数特性データ(図11参照)を求めることができる。なお、このデータは、ガラス面20aでの反射波Srを基準とした位相のデータである。
【0074】
ここで、組織表面での反射波Sfrontの位相φfrontは次式の関係が成り立つ。
【数6】

また、組織裏面での反射波Srearの位相φrearは次式の関係が成り立つ。
【数7】

【0075】
ただし、fは周波数、dは生体組織21の厚さ、Cは超音波伝達媒体W1中の音速、Cは生体組織21中の音速である。本実施の形態においても、超音波伝達媒体W1中の音速Cは、上記第1の実施の形態と同様の手法で求められる。すなわち、超音波Sによる二次元走査を開始する前に、Z軸ステージ15を駆動して超音波Sの焦点を調整する。その後、ガラス面20aに超音波Sを照射しその反射波Sの受信時間Tを測定し、その受信時間Tを用いて上記の式(5)に対応した演算を行うことにより、超音波伝達媒体W1中の音速Cを求める。
【0076】
上式(6)から生体組織21の厚さdは次式により求められる。
【数8】

【0077】
また、上式(7)から生体組織21中の音速Cは次式により求められる。
【数9】

【0078】
このように、超音波伝達媒体W1中の音速Cと周波数fとそれに応じた位相φfront,φrearとを上式(8)及び(9)に代入することにより、組織音速Cを求めることができる。
【0079】
本実施の形態においても、上記第1の実施の形態と同様に、超音波伝達媒体W1の温度変化に応じた超音波伝達媒体W1中の音速Cを求めることができ、その超音波伝達媒体W1中の音速Cを用いることにより、生体組織21中を伝搬する音速Cを正確に算出することができる。
【0080】
なお、本発明の各実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0081】
・上記各実施の形態では、X−Yステージ14による二次元走査前に超音波伝達媒体W1中の音速Cを求め、その音速Cを用いて生体組織21中の音速Cを求めるものであったがこれに限定されるものではない。具体的には、例えば、超音波Sの走査前及び走査後に超音波伝達媒体W1中の音速Cを求める。そして、走査前及び走査後の超音波伝達媒体W1中の音速Cの変化に基づいて、超音波Sの走査時における超音波伝達媒体W1中の音速Cを推定することができる。さらに、その推定した音速Cに基づいて、各測定点における生体組織21中の音速Cを求める。このように構成しても、超音波伝達媒体W1の温度変化に応じた音速Cを的確に求めることができ、生体組織21中の音速Cをより正確に算出することができる。
【0082】
また、図3に示すように超音波Sの走査範囲R1を設定した場合では、X方向の各走査ライン上において、左端の測定点は、ガラス面20a上に位置している。従って、超音波Sの二次元走査時において、左端の各測定点でガラス面20aからの反射波Sの受信時間Tを測定し、その受信時間Tに基づいて超音波伝達媒体W1中の音速CをX方向の走査ライン毎に求める。そして、X方向の走査ライン毎に、その測定した超音波伝達媒体W1中の音速Cを用いて、生体組織21の厚さd及び音速Cを求める。このようにすれば、超音波Sの二次元走査時において、超音波Sの照射により超音波伝達媒体W1の温度が変化した場合でも、その温度変化に対応した音速Cを求めることができ、生体組織21中の音速Cをより正確に求めることができる。
【0083】
・上記実施の形態では、トランスデューサ13の製品出荷時等に測定された焦点距離Lを用いて超音波伝達媒体W1中の音速Cを算出するものであったが、実際の使用時において、その焦点距離Lの正確な値がわからない場合もある。この場合には、温度センサなどで超音波伝達媒体W1の温度を測定するとともに、その温度でのガラス面20aの反射波Sの受信時間Tを測定する。そして、その温度における超音波伝達媒体W1中の音速Cと受信時間Tとによって、トランスデューサ13の焦点距離Lを求める。その後、生体組織21の音速像を生成する際には、算出した焦点距離Lを用いて、その時々の受信時間Tに基づいて超音波伝達媒体W1中の音速Cを求めるとともに、その音速Cに基づいて生体組織21中の音速Cを算出する。このようにしても、上記実施の形態と同様に、生体組織21中の音速Cを正確に算出することができる。
【0084】
・上記実施の形態では、二次元走査手段としてのX−Yステージ14をトランスデューサ13に対向する位置に設け、そのX−Yステージ14を駆動することにより、超音波Sの照射点を二次元的に走査する構成を採用したが、トランスデューサ13側に二次元走査手段を設けてもよい。また、X−Yステージ14の上方に焦点調整用のZ軸ステージ15を設けるものであったが、X−Yステージ14の下方にZ軸ステージ15を設けてもよい。
【0085】
・上記実施の形態では、試料としての生体組織21中の音速Cを測定するものであったが、それ以外に、例えば樹脂などの音速Cを測定してもよい。
【0086】
・上記実施の形態において、パソコン4を用いて超音波画像検査装置1を構成したが、それ以外にワークステーションなどのコンピュータを用いてもよい。また、音速像を表示するための表示装置37は、パソコン4に一体的に設けられるものであったが、パソコン4と別体で設けてもよい。
【0087】
・上記実施の形態の超音波画像検査装置1では、カラー変調による音速像を生成するものであったが、それ以外に輝度変調した音速像として可視化してもよい。
【0088】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0089】
(1)請求項2において、前記間隔調整手段は、前記間隔が前記焦点型超音波振動子の焦点距離と一致するよう調整することを特徴とする音速測定装置。
【0090】
(2)請求項2乃至5のいずれか1項において、前記間隔及び前記受信時間を記憶するための記憶手段をさらに備えたことを特徴とする音速測定装置。
【0091】
(3)請求項2乃至5のいずれか1項に記載の音速測定装置と、前記試料中の音速に基づいて音速像を生成する処理を行う画像生成手段と、前記音速像を表示するための表示装置とを備えることを特徴とする超音波画像検査装置。
【0092】
(4)技術的思想(3)において、前記試料は生体組織であり、前記表示装置に表示した音速像に基づいて生体組織診断を行うことを特徴とする超音波画像検査装置。
【0093】
(5)技術的思想(4)において、前記画像生成手段は、算出した試料中の音速の大きさに応じてカラー変調した画像データを生成し、その画像データにより、前記音速の大きさに応じて色分けされた音速像を前記表示装置に表示することを特徴とする超音波画像検査装置。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明を具体化した実施の形態の超音波画像検査装置を示す概略構成図。
【図2】トランスデューサ側から見たX−Yステージの平面図。
【図3】超音波の走査範囲を示す説明図。
【図4】焦点位置と音圧との関係を示す説明図。
【図5】反射波の受信時間を示すタイムチャート。
【図6】生体組織の音速像を生成するための処理を示すフローチャート。
【図7】各反射波を示す説明図。
【図8】強度スペクトル及び位相スペクトルを示す説明図。
【図9】デコンボリューション処理前の反射波を示す説明図。
【図10】デコンボリューション処理後の反射波を示す説明図。
【図11】生体組織の表面及び裏面での反射波の位相スペクトルを示す説明図。
【図12】従来のパルス励起型超音波顕微鏡での測定方法を示す模式図。
【符号の説明】
【0095】
1…音速測定装置としての超音波画像検査装置
13…焦点型超音波振動子としてのトランスデューサ
20…試料載置板としてのガラス基板
21…試料としての生体組織
23b…ピーク電圧検出手段としてのピーク検出回路
31…間隔調整手段、受信時間検出手段、第1音速算出手段、及び第2音速算出手段としてのCPU
L…間隔
So…超音波
Sr…反射波
T…受信時間
t1…照射時刻
t2…検出時刻


【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料及び試料載置板と焦点型超音波振動子との間に超音波伝達媒体を介在させ、この状態で前記焦点型超音波振動子をパルス駆動して前記試料に超音波を照射し、前記焦点型超音波振動子にて受信した前記超音波の反射波に基づいて前記試料中の音速を測定する音速測定方法であって、
前記試料載置板と前記焦点型超音波振動子との間隔を調整するステップと、
前記間隔を維持した状態で前記試料載置板の表面に超音波を照射してからその反射波を受信するまでの受信時間を検出するステップと、
前記間隔と前記受信時間とに基づいて、前記超音波伝達媒体中の音速を求めるステップと、
前記試料の表面に超音波を照射した場合に受信した反射波と、前記超音波伝達媒体中の音速とに基づいて、前記試料中の音速を求めるステップと
を含むことを特徴とする音速測定方法。
【請求項2】
試料及び試料載置板と焦点型超音波振動子との間に超音波伝達媒体を介在させ、この状態で前記焦点型超音波振動子をパルス駆動して前記試料に超音波を照射し、前記焦点型超音波振動子にて受信した前記超音波の反射波に基づいて前記試料中の音速を測定する音速測定装置であって、
前記試料載置板と前記焦点型超音波振動子との間隔を調整する間隔調整手段と、
前記間隔を維持した状態で前記試料載置板の表面に前記焦点型超音波振動子から超音波を照射してからその反射波を受信するまでの受信時間を検出する受信時間検出手段と、
前記間隔と前記受信時間とに基づいて、前記超音波伝達媒体中の音速を求める第1音速算出手段と、
前記試料の表面に前記焦点型超音波振動子から超音波を照射したときに受信した反射波と前記超音波伝達媒体中の音速とに基づいて、前記試料中の音速を算出する第2音速算出手段と
を備えることを特徴とする音速測定装置。
【請求項3】
前記反射波の音圧に対応した反射波信号のピーク電圧を検出するピーク電圧検出手段をさらに備え、
前記間隔調整手段は、前記ピーク電圧検出手段の検出結果に基づいて、前記試料載置板の表面からの反射波の音圧が最大となるよう前記間隔を調整することを特徴とする請求項2に記載の音速測定装置。
【請求項4】
前記受信時間検出手段は、前記焦点型超音波振動子による超音波の照射時刻と、前記ピーク電圧検出手段によるピーク電圧の検出時刻とに基づいて、前記受信時間を測定することを特徴とする請求項3に記載の音速測定装置。
【請求項5】
前記超音波の照射点を二次元的に走査させる二次元走査手段をさらに備えたことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の音速測定装置。
【請求項6】
前記二次元走査手段による超音波の走査前及び走査後において、前記受信時間検出手段は、前記反射波の受信時間を検出するとともに、前記第1音速算出手段は、その受信時間に基づいて前記超音波伝達媒体中の音速を算出し、
前記第2音速算出手段は、走査前及び走査後の超音波伝達媒体中の音速に基づいて、前記二次元走査手段による走査時における前記試料中の音速を算出することを特徴とする請求項5に記載の音速測定装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2008−46097(P2008−46097A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−224744(P2006−224744)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【出願人】(000243364)本多電子株式会社 (255)
【Fターム(参考)】