説明

音響および振動減衰特性が改善された構造用複合材料

複合材料に不織布層を含有して成る粘弾性インターリーフを持たせて、それを中間層として位置させてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
音響および振動減衰特性を有する複合材料を開示する。特に、粘弾性インターリーフを含有する複合材料は例えば航空機に存在する構造物、例えば機体外板、縦通材および支持構造体などで用いるに有用である。また、そのような複合材料の製造方法および前記複合材料を含有させた構造物および航空機も意図する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化重合体マトリクス複合材料(PMC)は高性能構造用材料であり、一般に、攻撃的な環境に対する抵抗、高い強度および/または軽量が要求される用途で用いられる。そのような用途の例には、航空機構成部品(例えば尾、翼、機体、プロペラ)、船体および自転車支持構造体が含まれる。PMCはマトリクス材料、例えば重合体樹脂などで一緒に結合している繊維の層を含有して成り得る。その繊維が当該マトリクスを強化し、当該複合材料が支える負荷の大部分を支える一方、マトリクスが当該複合材料が支える負荷を支える比率は低くかつまた負荷を破断した繊維から無傷の繊維に移動させる。このようにして、PMCが支え得る負荷はマトリクス単独が支え得る負荷よりもまた繊維単独が支え得る負荷のいずれよりも大きい。その上、強化用繊維を特別な幾何または配向に関して注文に合わせることによって、当該複合材料の重量および体積が最小限になるように有効にデザインすることができる。
【0003】
PMCの製造に関して数多くの方法が開発された。例には湿式レイアップ、プレプレグ作成および液体注入が含まれ得る。湿式レイアップでは、強化用繊維をマトリクス材料で湿らせ、鋳型空洞部の中に入れた後、固化または硬化させる。このような方法は自動様式で実施可能であり、例えばチョッパーガンを用いるか或は乾燥した繊維ロールを受け取り、それらを樹脂浸漬浴の中に通しそしてその湿った状態の繊維を鋳型の中に入れる機械などを用いて自動様式で実施可能である。別法として、刷毛を用いて当該樹脂を手で塗布することも可能である。
【0004】
プレプレグ作成では、前以て含浸を受けさせておいた織布またはプレプレグを用いて複合材料の成分を加工する。強化用繊維にマトリクス樹脂を制御様式で染み込ませた後、凍結させることで前記樹脂の重合を抑制する。次に、その凍結させたプレプレグを必要になるまで凍結状態で輸送および貯蔵する。複合部品をプレプレグから製造する時、そのプレプレグを室温になるまで解凍し、適当な大きさに切断した後、鋳型空洞部の中に入れる。そのプレプレグを適当な場所に入れた後、真空下で袋詰めして、加圧下で硬化させることで、空隙量が最小限の必要な繊維体積分率を達成する。
【0005】
高性能複合材料の使用が過去数十年に渡って幅広く受け入れられている、と言うのは、それらはそれらが示す重量に対する強度および重量に対する剛性の比率が高いからである。高性能複合材料が示す剛性は金属および金属−マトリクス複合材料に比べて高いが、減衰性能は劣っている。従って、剛性および強度がほとんど低下していなくて複合構造系の減衰能力が向上した高性能の複合材料が求められている。
【発明の概要】
【0006】
いくつかの態様における硬化もしくは未硬化の構造用複合材料は、構造用成分、樹脂成分および粘弾性インターリーフを含有して成り、前記構造用成分は構造用繊維を含有して成る複数の布地層の形態であり、前記粘弾性インターリーフは1対の隣接して位置する前記布地層の間に位置する不織材料の薄層を少なくとも1層含有して成り、前記粘弾性インターリーフおよび構造用成分に前記樹脂成分がある程度または完全に染み込んでおり、か
つ硬化後に中間層が構造用複合材料に一体化する。いくつかの面における樹脂成分は熱硬化性組成物であり得る。いくつかの面における構造用繊維は炭素繊維を含んで成る。
【0007】
いくつかの面では、不織布であるインターリーフを硬化工程前に樹脂成分の中に埋め込んでおく。いくつかの面における不織材料は少なくとも1種の熱可塑性エラストマーまたはこれの混合物および/または少なくとも1種の熱可塑性重合体もしくは共重合体および/またはこれらの混合物を含有して成る。他の面における不織材料は、スチレン系熱可塑性エラストマー、エラストマー系ポリオレフィンおよびこれの混合物から成る群より選択した少なくとも1種の共重合体を含有して成る。更に、他の面における不織材料はポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンおよびこれらの混合物から成る群より選択した熱可塑性プラスチックを含有して成る。
【0008】
いくつかの態様では、前記粘弾性インターリーフの両面が少なくとも35ダイン/cmの表面張力を達成するようにそれをプラズマで処理してもよい。いくつかのさらなる面では、その粘弾性インターリーフを複数の布地層と一緒に共硬化させる。いくつかの面では、その不織材料と前記樹脂の接合面を結果としてもたらされる剥離強度値が未処理複合材料が示す値の70%以内であるように調節する。他の面では、そのインターリーフを本複合材料のせん断が最大の領域の中に位置させる。いくつかの面では、その粘弾性インターリーフを各布地層の間に位置させる。その粘弾性インターリーフを本構造用複合材料の中間面に存在させてもよくそして/またはせん断が最大レベルに近い領域の中に位置させてもよい。
【0009】
その粘弾性インターリーフに有機または無機改質剤、充填剤または介在物および/または有機および/または他の無機化合物、例えば流動調節用添加剤、紫外線吸収剤、充填材、金属粒子、艶消し剤、顔料、抗酸化剤、難燃剤、希釈剤、安定剤、単量体、プレポリマー、柔軟性向上剤、加工助剤および滑剤、フルオロポリマーが基になった加工助剤、鉱油およびワックス、核形成剤、繊維ストランド、重合体、ガラス、セラミックおよび重合体バブル、金属粒子、ミクロおよびナノ充填剤、コア−シェル粒子、エラストマー系ミクロおよびナノ粒子、磁性および誘電性ナノ結晶、炭素ナノチューブ、炭素ナノ繊維、ナノグラファイト、ナノ粘土、ナノシリカ、ナノアルミナ、ジルコニアおよびチタニアナノ粒子、貴金属および導電性ナノ粒子、ナノ繊維、ナノストランドまたはこれらの組み合わせなどを含有させてもよい。
【0010】
いくつかの面における粘弾性インターリーフは本複合材料のガラス転移温度を10%以上低下させずそして/または本複合材料の衝撃後圧縮強度を10%以上低下させない。さらなる面において、当該粘弾性インターリーフは本複合材料の損傷領域を少なくとも10%低下させ得る。
【0011】
他の面において、MEKに1時間浸漬しても不織布で処理した複合材料の層間せん断強度が10%以上低下することはない。
【0012】
さらなる面において、当該粘弾性インターリーフは本複合材料が示す開放孔圧縮強度を10%以上低下させることはない。
【0013】
別の態様では、粘弾性布および樹脂成分を含有して成る硬化もしくは未硬化の減衰用複合構造材料を開示し、その粘弾性布は不織布の薄層を少なくとも1層含有して成っていてもよく、前記不織材料はスチレン系熱可塑性エラストマー、エラストマー、エラストマー系ポリオレフィンおよびこれらの混合物から成る群より選択した少なくとも1種の共重合体を含有して成り、前記粘弾性布に前記樹脂成分がある程度または完全に染み込んでおり、かつ前記樹脂成分は熱硬化性樹脂であってもよい。
【0014】
いくつかの面における不織材料は、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、これらの共重合体および混合物から成る群より選択した熱可塑性プラスチックを含有または更に含有して成る。
【0015】
いくつかの面における粘弾性不織布は有機もしくは無機改質剤、充填剤または介在物を含有して成る。
【0016】
いくつかの面では、そのような追加的有機および無機化合物を流動調節用添加剤、紫外線吸収剤、充填材、金属粒子、艶消し剤、顔料、抗酸化剤、難燃剤、希釈剤、安定剤、単量体、プレポリマー、柔軟性向上剤、加工助剤および滑剤、フルオロポリマーが基になった加工助剤、鉱油およびワックス、核形成剤、繊維ストランド、重合体、ガラス、セラミックおよび重合体バブル、金属粒子、ミクロおよびナノ充填剤、コア−シェル粒子、磁性および誘電性ナノ結晶、炭素ナノチューブ、炭素ナノ繊維、ナノグラファイト、ナノ粘土、ナノシリカ、ナノアルミナ、ジルコニアおよびチタニアナノ粒子、貴金属ナノ粒子、導電性ミクロおよびナノ粒子、ナノ繊維、ナノストランドまたはこれらの組み合わせから成る群より選択する。
【0017】
いくつかの面では、当該粘弾性インターリーフの少なくとも片面を構造用接着剤で被覆しておく。
【0018】
いくつかの面では、当該粘弾性インターリーフの両面が少なくとも35ダイン/cmの表面張力を達成するようにそれをプラズマで処理しておく。
【0019】
別の態様における硬化もしくは未硬化の複合サンドイッチ型構造物は少なくとも1番目および2番目のスキン層、少なくとも構造用中心部、樹脂成分および粘弾性インターリーフを含有して成り、前記スキン層は構造用繊維を含有して成る複数の布地層および樹脂成分で構成されており、前記樹脂成分は熱硬化性樹脂系であってもよく、前記粘弾性インターリーフは前記スキン層の中の1対の隣接して位置する布地層の間に位置する不織材料の薄層を少なくとも1層含有して成っていてもよく、前記粘弾性インターリーフは前記スキン層とハニカム型中心部の間に位置する不織布層を少なくとも1層含有していてもよく、前記粘弾性インターリーフおよび構造用成分に前記樹脂成分がある程度または完全に染み込んでおり、硬化後に中間層が当該構造用複合構造物に一体化し、前記インターリーフは外側複合材料スキン層が示すせん断が最大である領域に位置し、前記構造用繊維は炭素繊維を含んで成り、前記粘弾性インターリーフを硬化工程前に樹脂組成物の中に埋め込んでおき、前記不織材料は少なくとも1種の熱可塑性エラストマーまたはこれの混合物を含有して成り、前記不織材料は少なくとも1種の熱可塑性重合体もしくは共重合体および/またはこれらの混合物を含有して成り、前記不織材料はスチレン系熱可塑性エラストマー、エラストマー系ポリオレフィンおよびこれらの混合物から成る群より選択した少なくとも1種の共重合体を含有して成り、前記不織材料はポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、これらの共重合体および混合物から成る群より選択した熱可塑性プラスチックを含有または更に含有して成り、かつ前記粘弾性インターリーフの両面が少なくとも35ダイン/cmの表面張力を達成するようにプラズマで処理されている。
【0020】
別の態様では、振動および/または音響減衰性能を有する構造用途用インターリーフ支持型接着性材料を開示する。これは樹脂成分および粘弾性インターリーフを含有して成り、その不織材料はスチレン系熱可塑性エラストマー、エラストマー系ポリオレフィンおよびこれらの混合物から成る群より選択した少なくとも1種の共重合体を含有して成り、前記不織材料はポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、これらの共重合体の中の1種およびこれらの混合物から成る群より選択した熱可塑性プラスチックを含有または更に含
有して成り、前記粘弾性インターリーフに前記樹脂成分がある程度または完全に染み込んでおり、前記樹脂成分は熱硬化性樹脂であり、前記粘弾性インターリーフの少なくとも片面が構造用接着剤で被覆されており、かつ前記粘弾性インターリーフの両面が少なくとも35ダイン/cmの表面張力を達成するようにプラズマで処理されている。
【0021】
別の態様において、プレプレグまたは本構造用複合材料を製造する方法は、樹脂成分および構造用成分を含有して成るプレプレグと粘弾性インターリーフをレイアップ状態である程度または完全に共硬化させることを含んで成り、前記レイアップは、プレプレグまたは構造用複合材料を形成するように前記粘弾性インターリーフと一体化したプレプレグ層の重なり合った層を含有して成る。この方法に、また、レイアップを形成するようにプレプレグの前記粘弾性インターリーフと重なり合った層を一体化させることを更に含めることも可能であり、前記粘弾性インターリーフをレイアップの選択した領域に一体化させる。いくつかの面において、この方法に、前記粘弾性インターリーフおよび構造用成分を樹脂成分で一緒にする、例えば前記樹脂成分を染み込ませるか、注入するか或は注ぎ込むことなどで一緒にすることを含めてもよい。注入にバッグ、マンドレルおよび/または鋳型の使用を含めてもよくかつ場合により流れを補助する目的で溝の使用を含めることも可能である。この方法にまた前記レイアップまたは組み合わせの硬化を前記樹脂成分がゲル化および/または硬化するに適切な時間起こさせることを含めることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、メルトブロー工程に関する不織布製造方法の1つの態様を示す図である。
【図2】図2は、未処理および不織布処理パネルが示す損失係数の測定で用いる試験装置を示す図である。損失係数(η)の計算を二重チャンネルFFT分析器[加速度計から出る出力シグナル(加速度比および位相差)を分析する]の振動数スペクトルと対比した振幅比から得た共鳴ピークを用いて行う。小型の加速度計を用いて振とう器の所の駆動点加速度および試験片の応答を測定する。
【図3】図3に、実施例4に記述した如き不織布処理複合材料が−20℃で示した減衰性能を振動数と対比させて示す。損失係数が高ければ高いほど消散エネルギーが大きい。このように、モード解析によって約100から約5000Hzの範囲の振動数および例えば−50℃から+20℃の幅広い範囲(示した−20℃における挙動を包含)の温度において減衰特性が向上することが分かった。
【図4】図4に、不織布処理積層物が示す溶媒抵抗を短ビームせん断試験を用いて例示するが、これに、インターリーフ処理複合材料が実施例4bに従うメチルエチルケトン(MEK)条件付け前および後に示した見かけ層間強度を示す。見かけ層間せん断強度は室温で1時間の条件付け条件下でメチルエチルケトン(MEK)条件付けの影響を実質的に受けない。
【図5】図5に、本発明の1つの態様の不織布処理複合材料が示した衝撃後圧縮強度を例示するが、これは、実施例4cに記述する如き未処理複合材料が示したそれに比較してほとんど変わらない。
【図6】図6に、本発明の1つの態様の不織布処理複合材料が30J衝撃後に示した損傷面積を例示するが、これは、実施例4cに記述する如き未処理複合材料が示したそれに比較して小さい。
【図7】図7に、本発明の1つの態様に従う不織布処理複合材料が示した総開放孔圧縮強度を例示するが、これは、実施例4dに記述する如き未処理複合材料が示したそれに比較してほとんど変わらない。
【図8】図8に、不織布処理積層物が熱特性、即ち当該積層物が示すガラス転移温度(Tg)に対して示す影響を未処理積層物および実施例4に記述する如き態様の不織布インターリーフ処理積層物の動的機械的分析(DMA)を用いて例示する。このDMA分析によって、本開示する不織材料を実施例4eに記述する如き処理を受けさせた積層物に挿入してもそれが示す熱特性、例えばTgなどが実質的な影響を受けないことが立証された。
【図9】図9に、実施例5が示す剥離強度データの作成で用いた試験片形態の一例を示す。
【図10】図10に、実施例5で考察する如き負荷クロスヘッド変位量図を示す。
【図11】図11に、本開示の1つの態様の減衰複合材料および比較サンプルが実施例5に記述する引き剥がし試験で示した剥離強度データを下記の如く示す:A)ベースライン、B)連続フィルム処理複合材料およびC)本開示の1つの態様の減衰複合材料。この図は、層剥離亀裂の開始に必要なエネルギーを初期破壊面で正規化した量を表している。インターリーフの構造の結果として剥離強度値がより高くなった。
【図12】図12に、本開示の減衰複合材料に様々なプラズマ処理を受けさせた態様および比較サンプルが実施例6に記述する剥離試験で示した剥離強度データを示す。プラズマで処理した不織布処理複合材料を未処理積層物と比較したところ、20から100%の増分が達成された。
【図13】図13に、樹脂注入方法に関して一体化不織布構造物(A)が示した効率を連続フィルム処理構造物(B)のそれと比較して示す。本開示不織布態様の場合には完全な樹脂浸透が得られたが、連続フィルムパネルの場合には乾燥した幅広い領域を明らかに見ることができる。
【図14】図14に、本発明で開示するサンドイッチ型構造物の中の1つの断面の透視図を示す。
【0023】
好適な態様の詳細な説明
高性能の材料が航空宇宙産業で用いられることが最近増してきたことで、商業的および軍用航空機および宇宙船の主要および二次的構造物の音響および振動減衰に新たな興味が持たれるようになってきた。複合材料は本質的に金属よりも軽くかつ堅く、従って、振動および騒音を好ましくない度合で受け易くかつ被り易い傾向がある。
【0024】
複合構造物が動的負荷低下、振動および騒音低下の領域で示す性能を向上させる目的で能動的および受動的減衰技術および装置が開発されてきた。標準的解決法には、粘弾性材料(VEM)を放出表面に取り付けて外側の複合材料/金属層で堅くすることで生じさせた受動的減衰層を含有させた拘束構造物が含まれる。そのような拘束構造物は、負荷がかかる相を基礎構造物の相からバルク張力/圧縮力の組み合わせおよび基礎構造物の接合面に加えられた材料の中の局所的せん断変形を通してシフトさせることで振動および騒音を減衰させる。
【0025】
VEMの使用に関する1つの欠点は、基礎構造物にかなりの重量が加わる結果として航空機および宇宙船システムが示す重量効率が劣りかつ追加的組み立ておよび労務費がかかる点にある。
【0026】
自動車産業では、騒音を低下させて車による旅の心地良さを改善しようとして、一体型
音響減衰装置とは対照的に多層追加的物が広範に用いられている。そのような用途では、数種の添加剤を含有させた様々な組成の粘弾性連続フィルム、発泡体および不織布が用いられている。複数の層で構成されている騒音低下用積層物を含有して成る騒音低下用材料が示されており(WO2007/026411A1)、その騒音低下用積層物には、有機繊維不織布層およびこれの少なくとも1つの主要表面に重ね合わされたスキン層材料で構成されている音響材料が含まれており、かつ空気層を前記騒音低下用積層物と平面車体部分の間に位置させている。その場合の音の縦方向波は構造が不均一であることが理由で一連の反射−透過機構によって減衰するが、せん断波はほとんど消散しない。2番目の層を用いることなく充分な構造的一体性を示す有機ミクロ繊維および熱活性化ステープル繊維が大型の家庭用電気製品、家の壁、航空機(二重壁キャビンの中またはエンジンとキャビンの間)およびボートで用いる目的で提案された(EP0833973B1およびWO97/00989)。樹脂マトリクスの中に埋め込まれていて機械的振動に対して様々な減衰反応を示すフィラメントの組み合わせを機械ハウジングおよびスポーツ器具の目的で提案された(EP0310203)。
【0027】
構造用マトリクス材料の中に埋め込まれた複数の繊維材料層を含有しかつそれらの間に穴開き粘弾性材料フィルムを含有する音響および機械的減衰用複合材料が米国特許出願2007/0071957の中で考察されている。その場合の構造用マトリクスは、この構造用マトリクスの中に埋め込まれている隣接して位置する繊維材料の層の間の穴を通して連続的である。従って、そのフィルムの少なくともある程度連続している性質が樹脂の流れ(これは注入工程にとって適切ではない)に対するバリヤーとして働く。対照的に、本明細書に記述する態様には、樹脂の流れに対するバリヤーとして働かない不連続不織材料で出来ている中間層を含有させる。1つの面では、その不織材料をランダム繊維で構成させることで、樹脂はその中間層を貫いて流れることができる。従って、その結果としてもたらされた複合材料が示す強度は、連続またはある程度連続したフィルムから作られた中間層を有する材料のそれよりも高い。
【0028】
米国特許出願2008/0277057 A1(ボーイング社(The Boeing
Company))に中間層を含有する減衰型複合積層物が示されており、それは強化用媒体を有する粘弾性材料を含有していてもよく、かつその強化用媒体は前記粘弾性材料の中に埋め込まれている繊維であってもよく、その繊維自身は2番目の粘弾性材料で作られていてもよい。その繊維を埋め込んでいる粘弾性材料が示すガラス転移温度Tgは前記粘弾性繊維が示すそれよりも低いことから、その繊維は強化用媒体として働くことができる。対照的に、本明細書に記述する態様に示す樹脂のTgは、当該インターリーフの粘弾性材料が示すそれよりも高い。従って、本明細書に開示する態様では強化用媒体が要求されることも必要とされることもない。その上、本明細書に開示する態様の面とは異なり、その強化用繊維を埋め込んでいる粘弾性材料は米国特許出願2007/0071957に関して上で考察した粘弾性フィルムと同様である。
【0029】
特許出願WO 2008/147754 A1(ボーイング社)には、マトリクス材料と複数の形状記憶合金ワイヤー繊維から作られた減衰型複合構造物が考察されており、その繊維は当該構造物が減衰を示すようにする目的でマトリクス材料の中に保持されている。そのマトリクス材料は、一群のワイヤー繊維が埋め込まれている粘弾性材料の中間層を含有する樹脂層を含有していてもよい。そのようなワイヤー繊維は不利に当該材料に重量を加える。加うるに、その材料は製造が困難である。対照的に、本明細書に示す態様では、減衰を達成しようとしてワイヤー繊維を用いる必要はない。
【0030】
特許出願US 2008/0152854(3M Innovative Properties Company)には下記を含有して成る減衰用テープが示されている:1)前方および後方の主要表面を有する熱可塑性フィルムおよびアンカー部分を有する弾性
繊維のシートを含有して成る支持体(前記アンカー部分と前記フィルムは当該支持体の前方表面に沿って間隔を置いて位置する結合点の所で結合している)[この支持体は支持体の前方表面から突き出ている弓状部分を前記結合場所の間に有する]および2)前記支持体の後方表面の有意な部分を覆っている接着剤層。そのような減衰用テープは、本明細書に記述する態様とは異なり、当該構造物の残りと一体化してはいない。
【0031】
音響/振動減衰特性を有するサンドイッチ型構造物がいくつかの航空機構成要素、例えばエンジン室、床板および翼と機体のフェアリングなどの目的で開発された。
【0032】
パネルの波受容前面を形成する抵抗層、多孔質層で分離されている少なくとも2個のハニカム型中心部で形成されている区分化構造物および後方反射装置を含有して成るサンドイッチ型音響用パネルが特許出願US 2002/0078569 A1(Airbus
France)の中で考察されている。その場合の多孔質層にはこれの面の各々に前記区分化中心部のセルのいくつかに対する一連の管状ガイドが備わっている。
【0033】
特許US 7434659 B2(Hexcel Corporation)には、隔壁キャップが中に位置するセルを有するハニカム型中心部を含有する音響構造物が開示されている。そのキャップは前記セルを縦方向に沿って伸びる共鳴部分および前記ハニカム型セルを接着剤でつなぎ留めているアンカー部分を有する。
【0034】
特許出願US 2007/0102239(ボーイング社)には、上方のエポキシ樹脂が染み込んでいる上方面シートと減衰度が高い下方のエポキシ樹脂が注入されている下方の減衰面シートで密封されているハニカム型中心要素を含有して成る一体式減衰型複合航空機床板が示されている。
【0035】
特許出願US 2009/0184200(ボーイング社)には、減衰用発泡体および粒子を含有していてそれらが複合積層物の間に挟まれているハニカム型中心部を含有して成る構造物が示されている。
【0036】
伝統的な材料解決法は現在の複合材料要求の全部を満足させるものではない。そのような要求の例には、重量、材料の柔軟性、成形性、ドレープ性、取り扱い性、加工性および複合材料製造適切性(注入および自動化繊維配置工程を包含)が含まれ得る。そのような解決法は、その使用する材料(主に加硫ゴム)が示す固有の性質が理由でそれらによって得ることができる軽量および形状の点で制限される。そのような材料は手で当該構造物に塗布する必要がある結果として追加的作業労力、時間および保守コストがかかる。その上、ある種の材料は1種以上の機械的特性を有意に低下(20%以上)させる可能性がある。
【0037】
本発明の1つの態様における材料解決法では、それの製造を必要な形状および特徴(例えば繊維の直径、重量に対する面積の比率、厚み、空気透過性および引張り特性)のいずれにも容易に行うことができかつ減衰を受けさせるべき構造物への一体化を容易に行うことができる。そのような解決法は現在の複合材料製造方法(注入および自動繊維配置を包含)に適する。本減衰材料はモノリスまたはサンドイッチ型機体外板および機体支持構造体の製造中に追加的製造段階無しに塗布可能であり、そして必要ならば、最終的部品の重要な部分のみに塗布可能であることから、重量およびコストを低くすることができる。
【0038】
向上した音響減衰特性を有する一体型構造用材料には、粘弾性材料をせん断が最大の領域の中に有する複合積層物が含まれ得る。表面処理、位置およびせん断機構によって音波/振動が熱に消散する度合を最大限にする。そのような粘弾性材料の組成ばかりでなくそれの位置の両方が本複合材料が示す音響および機械的特性に貢献し得る。1つの態様では
、粘弾性インターリーフと樹脂の間の接合面を調節する結果として優れた性能をもたらす。
【0039】
接合面の調節を本明細書で用いる場合、それに当業者に公知の如き通常の定義を持たせ、それは下記の特徴を有する一体型構造物を指す:1)剥離強度値が未処理複合材料が示す値の70%以内であること、および2)不織布が樹脂マトリクスとある相互作用を有するにも拘らず音響減衰特性の一体性を特定レベルで維持していること。その不織布は特定の相互連結を維持しかつ結果として孤立した点をもたらさない。
【0040】
本明細書で用いる如き用語「ほぼ」、「約」および「実質的に」は、ある量が示した量に近いことを表し、その量でも所望の機能が実施されるか或は所望の結果が達成される。例えば、用語「ほぼ」、「約」および「実質的に」は、示した量の10%未満、5%未満、1%未満、0.1%未満および0.01%未満の量を指し得る。
【0041】
本明細書で用いる如き用語「ある程度」または「少なくとも一部」は、ある全体の中のある量を表し、これは、その全体のある量には全体量が含まれ得ることを包含する。例えば、用語「の一部」は、全体の0.01%以上、0.1%以上、1%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上および100%の量を指し得る。
【0042】
本明細書で用いる如き用語「一体」は、当業者に公知の如き通常の意味を有し、これは、協力的に機能する要素の組み合わせを構造の中に含有しかついずれの要素も主構造の親密な部分であることで容易には分離不可能であり、1つの面では決して分離することができない部分である減衰型構造物を指す。いくつかの態様における一体式減衰型構造物には、減衰用不織材料と一緒に共硬化させた複合材料が含まれる。他の態様では、樹脂成分が不織材料の中にある程度または実質的に完全に染み込んでいる。このように、その構造用樹脂組成物は当該複合構造物の全体に渡って連続的またはある程度連続的である。加熱を行うと、その樹脂マトリクスの中のインターリーフがある程度拡散して絡み合うことで最終的複合材料の強度のさらなる向上を得ることができかつ一体型構造物が生じ得る。
【0043】
本明細書で用いる如き用語「共硬化」は、当業者に公知の如き通常の意味を有し、それには材料を単一段階で硬化させることが含まれる。例えば、樹脂がある程度または完全に染み込んでいるインターリーフを有するプレプレグでは、それを共硬化させるか或は単一段階で硬化させることができる。いくつかの態様では、不織材料を有する中間層を当該複合材料の中の成分の残りと一緒に共硬化させると結果として一体型構造物を生じさせる。
【0044】
そのような不織材料は様々な製造工程で使用可能である。また、その不織材料を用いてプレプレグを作成することも可能である。
【0045】
1つの態様では、不織布である粘弾性材料と繊維もしくはプレフォームに樹脂を同時にか或は同じ注入工程中に注入することで一体型構造物を生じさせることができる。この態様における粘弾性層は、ある構造物の中に埋め込まれている流動遮断物として働く連続フィルムでもある程度連続したフィルムでもない。
【0046】
本明細書で用いる如き用語「構造用成分」は、当業者に公知の如き通常の意味を有し、それには、構造用繊維を含有して成る材料が含まれ、それの形態は複数の生地層、例えば炭素繊維織布などの形態である。
【0047】
本明細書で用いる如き用語「構造用繊維」には、最終的複合材料の強度に加わる繊維、例えばガラスまたは炭素繊維などが含まれ、従ってそれが示す弾性係数は50GPa以上
である。
【0048】
本明細書で用いる如き用語「樹脂成分」は、当業者に公知の如き通常の意味を有し、それには、機体外板、縦通材および支持構造体などの製造で用いるに適した構造用樹脂組成物が含まれる。
【0049】
本明細書で用いる如き用語「マトリクス」、「樹脂」および「マトリクス樹脂」は、当業者に公知の如き通常の意味を有し、それには、熱硬化性および/または熱可塑性材料を包含する1種以上の化合物が含まれ得る。例には、これらに限定するものでないが、エポキシ、エポキシ系硬化剤、フェノール樹脂、フェノール、シアネート、イミド(例えばポリイミド、ビスマレイミド(BMI)、ポリエーテルイミド)、ポリエステル、ベンゾオキサジン、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエーテルケトン(例えばポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)など)、これらの組み合わせおよびそれらの前駆体が含まれ得る。
【0050】
有益には、一体式減衰型構造物を用いると結果として減衰用要素の有意な軽量がもたらされかつ保守費用、部品数および労賃が低くなる。加うるに、騒音が低下すると結果として航空機の機体で用いられる二次的減衰処理、例えば大きさが過剰なガラスウールブランケット、トリミングおよび他の設置器具などが最小限になることでさらなる軽量および費用節約がもたらされる可能性がある。
【0051】
本明細書で用いる如き用語「減衰型」または「減衰」は、当業者に公知の如き通常の意味を有し、それには、振動構造物が有する機械的エネルギーの消散が含まれる。エネルギーの消散には、機械的エネルギーを熱エネルギーに変換することが含まれ得、その熱エネルギーは次に構造物の環境に失われる。1つの態様における減衰は受動が基になった材料の減衰または粘弾性減衰である。1つの態様における複合積層物は幅広い範囲の振動数および温度に渡って高い減衰特性、例えば高い損失係数(η)などを示す。適切な振動数には約200−5000Hzが含まれる。適切な温度には約−50℃から+20℃、例えば−40℃から+10℃、−30℃から+20℃、−20℃から+10℃、−10℃から+20℃または0℃から+10℃などが含まれる。
【0052】
本明細書で用いる如き用語「プレプレグ」は、当業者に公知の如き通常の意味、例えばこの上に記述した意味を有する。プレプレグには、体積の少なくとも一部の中にマトリクス材料が染み込んでいる繊維のシートまたは層が含まれる。そのマトリクスはある程度硬化した状態で存在していてもよい。1つの態様におけるプレプレグが有する繊維体積分率はプレプレグの総体積を基準にして約0.50から0.60体積%の範囲である。
【0053】
本明細書で用いる如き用語「硬化する」または「硬化」は、当業者に公知の如き通常の意味を有し、それには、重合および/または架橋過程が含まれ得る。硬化は、これらに限定するものでないが、加熱、紫外線暴露および放射線暴露などを包含する工程で実施可能である。特定の態様では、硬化をマトリクス内で起こさせてもよい。硬化前のマトリクスに更に1種以上の化合物を含有させることも可能であり、そのような化合物はほぼ室温で液体、半固体、結晶性固体およびこれらの組み合わせである。さらなる態様では、プレプレグの中のマトリクスをある程度硬化させることでそれが選択した粘着性または粘性を示すようにすることも可能である。
【0054】
本明細書で用いる如き用語「複合材料」は、各々が当業者に公知の如き通常の意味、例えばこの上に記述した意味を有する。複合材料には複数のプレプレグも含まれ得る。プレ
プレグに熱、真空および外部の圧力の中の少なくとも1つをかけることでそれを固化させて複合材料を生じさせることができる。その結果としてもたらされた複合材料を航空宇宙用途で用いることができる(限定するものでないが)。
【0055】
本明細書に記述する複合材料の態様が示す見かけ層間せん断強度は、溶媒であるメチルエチルケトン(MEK)による条件付けの影響を実質的に受けない。いくつかの態様では、MEKで条件付けした後にそのせん断強度の90%、例えば90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%などを維持する。例えば、1つの態様の複合材料が示す層間せん断強度は、MEKで例えば90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%条件付けする前は約84.59でありそしてメチルエチルケトンで処理した後は約83.34である。
【0056】
本明細書で用いる如き語句「せん断強度」は、当業者に公知の如き通常の意味を有する。試験片にせん断に関する試験を様々な方法で受けさせることができる。1つの態様における見かけせん断強度は、最初の破壊が起こった時点における試験片の厚みの半分で計算した最大せん断応力であり、これは曲げ、例えば3点曲げなどで測定可能である。3点曲げにおけるせん断強度は
【0057】
【数1】

【0058】
で示すことができ、ここで、Pは、最初の破壊が起こった時点の最大力であり、bは試験片の幅であり、そしてhは試験片の厚みである。
【0059】
本明細書で用いる如き用語「繊維」は、当業者に公知の如き通常の意味を有し、それには複合材料の強化に適応した1種以上の繊維材料が含まれ得る。繊維が取り得る形態は粒子、フレーク、ホイスカ、短繊維、連続繊維、シート、層およびこれらの組み合わせのいずれかであり得る。連続繊維は更に1方向、多次元(例えば二次元または三次元)、不織、織り、編み、縫合、巻きおよび編組み形態ばかりでなく渦巻きマット、フェルトマットおよび細断マット構造のいずれかであり得る。織り繊維構造物は、フィラメント数が約1000未満、フィラメント数が約3000未満、フィラメント数が約6000未満、フィラメント数が約12000未満、フィラメント数が約24000未満、フィラメント数が約48000未満、フィラメント数が約56000未満、フィラメント数が約125000未満およびフィラメント数が約125000以上の多数の織トウを含有して成り得る。さらなる態様では、そのようなトウをクロストウステッチ、横糸挿入編みステッチまたは少量の樹脂、例えばサイジングなどで適当な場所に保持してもよい。
【0060】
繊維の組成を必要に応じて変えることができる。繊維組成の態様には、これらに限定するものでないが、ガラス、炭素、アラミド、石英、ポリエチレン、ポリエステル、ポリ−p−フェニレン−ベンゾビスオキサゾール(PBO)、ホウ素、炭化ケイ素、ポリアミド、グラファイトおよびこれらの組み合わせが含まれ得る。1つの態様における繊維は炭素、ファイバーグラス、アラミドまたは他の熱可塑性材料である。強化用繊維は有機もしくは無機であってもよい。更に、繊維には布地幾何形態物も含まれ得、それには形態が連続または不連続のいずれかのそれらが含まれる。
【0061】
本明細書で用いる如き用語「不織布」は、当業者に公知の如き通常の意味を有し、それには、織られていない繊維含有自己接着性ウエブが含まれ得る。1つの態様における「不織布」は、同定可能様式で相互に織られた個々の繊維の構造をもたらす布地織り工程を用いないで生じさせた材料のいずれかを指す。不織布は短繊維もしくは長繊維を用いて製造可能である。不織材料は樹脂注入方法で用いるに適し得る、と言うのは、不織布は制御された透過性を示すことが理由で樹脂が不織材料の中を流れることができるからである。対照的に、連続もしくは穴開きVEMフィルムは樹脂の流れに対して物理的バリヤーを作り出す。不織材料には、ウエットレイド、ドライレイド(カード、エアレイド)、スパンメルト(スパンレイド、メルトブローン)、フラッシュ紡糸、静電紡糸、ウォータージェットパンチ、ニードルパンチ構造物が含まれる。不織布用の代表的な重合体には、ポリオレフィン、例えば低、中および高密度ポリプロピレン、低、中および高密度ポリエチレン、アタクティック、シンジオタクテックおよびイソタクティックポリプロピレンおよびこれらの混合物、ポリエチレンビニルアルコールおよびこれの混合物、ポリブチレン、例えばポリ(1−ブテン)およびポリ(2−ブテン)、ポリ(3−メチル−1−ブテン)、ポリ(1−ブテン)およびポリ(2−ブテン)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−ヘプテン)、ポリ(1−オクテン)、ポリ(1−ノネン)、ポリ(1−デセン)など、ポリオレフィン系共重合体およびポリオレフィン系熱可塑性エラストマーおよびこれらの混合物、ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルエステル共重合体など、ポリアミド、例えばナイロン6またはナイロン66、ポリアミドポリエーテル共重合体など、ポリウレタンおよびポリエーテルおよびエステルが基になったポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレンまたはこれらの組み合わせを含有するポリスチレン系ブロック共重合体、ビニル重合体および共重合体、例えばポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコールおよびポリエチレンビニルアセテート、アクリル系重合体および共重合体、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレンおよび現在公知または後に開発される他の重合体およびこれらの混合物が含まれる。
【0062】
不織布のミクロ繊維を2成分もしくは多成分繊維で構成させてもよい。ミクロ繊維はより複雑な構造、例えば鞘/コア、横並び、パイ断片、海の中の島などの構造を持ち得、それらは様々な重合体またはそれらの混合物で作られている可能性がある。重合体ミクロ繊維は有機もしくは無機充填剤もしくは改質剤を含有している可能性がある。
【0063】
接着強度および機械的結合機構を改善または強化する目的で、不織布の表面に前処理、例えば化学的処理、プラズマ処理、コロナ放電処理、炎処理、ブラスティングまたはこれらの組み合わせを受けさせておいてもよい。いくつかの面では、当該粘弾性インターリーフにプラズマによる処理を受けさせることで両面が少なくとも35ダイン/センチメートルの表面張力を達成するようにする。
【0064】
本明細書で用いる如き用語「インターリーフ」は、当業者に公知の如き通常の意味を有し、それには、他の層の間に位置する層が含まれる。1つの態様では、インターリーフを複合材料の中間面に位置させてもよい。別の態様では、中間層がせん断が最大の領域を含有する。簡単なケースとして、構造物の応力を分析することでせん断および曲げを測定することができる。例えば、曲げた時に負荷がかかるビームの場合のせん断が最大の領域は中立軸の所である。より複雑な構造物の場合、応力を測定しかつせん断が最大の領域を同定するには追加的計算を行う必要がある。
【0065】
別の態様において、当該インターリーフに持たせる厚みは20−2000μm、好適には50−700μm、最も好適には100−300μmの範囲である。
【0066】
本明細書で用いる如き用語「中間面」は、当業者に公知の如き通常の意味を有し、それには、複合材料の層の中央部の中の部分が含まれ、それは当該複合材料の1つ以上の表面から複合材料の厚みの約40から60%の距離の所に位置し得る。
【0067】
本明細書で用いる如き用語「せん断が最大」は、当業者に公知の如き通常の意味を有し、それには、2つの接触している層をこれらの接触面と平行な方向に互いに関して滑らせるか或は滑らせる傾向があるかけられた力の結果として作用する部分に対して接線方向の内部力が含まれる。曲げることで生じるせん断応力は、中立軸の所のビームの中間面が最大である。いくつかの態様では、当該インターリーフを本一体式減衰型複合材料の中間面の中の布地層の間に位置させ、いくつかの面では、そのように位置させることで、せん断のレベルを基に選択した領域の中に重量および減衰効果がより高い構造を作り出す。
【0068】
いくつかの態様では、当該インターリーフを本複合構造物を構成する層のいずれかの中に位置させてもよく、他の態様では、当該インターリーフを本複合材料の特定の領域の中に位置させてもよく、いくつかの面では、当該インターリーフをせん断のレベルを基に選択した領域の中に位置させることで重量および減衰効果がより高い構造を作り出してもよい。
【0069】
1つの態様におけるインターリーフは不連続粘弾性層であってもよく、それを「制御された接合面」が達成されるように複合材料の中に位置させる。
【0070】
本明細書で用いる如き用語「埋め込まれた」は、当業者に公知の如き通常の意味を有し、それには、インターリーフが複合構造物の中に完全に包み込まれていることが含まれる。いくつかの面におけるインターリーフは本複合構造物の一体部分である。
【0071】
本明細書で用いる如き用語「粘弾性」は、当業者に公知の如き通常の意味を有し、それには、変形を受けた時に粘性および弾性特性の両方を示す材料が含まれ得る。粘弾性材料は、そのような種類の重合体の両方の要素を持ち、このように、時間に依存した歪みを示す。弾性は一般に規則正しい固体の中の結晶面に沿って起こる結合伸縮の結果として生じる一方、粘弾性は非晶質材料の内側に存在する原子または分子が拡散する結果として生じる。
【0072】
エラストマーは一般に熱硬化性であり、その中の長い重合体鎖が硬化中に架橋を起こす(加硫工程)。弾性は長鎖がかけられた応力を分配するようにそれら自身が再構成する能力を有する結果として引き出される。共有架橋によって、応力が取り除かれた時にエラストマーが元々の形態に戻ることが確保される。エラストマーは、そのように極めて高い柔軟性を有する結果として、特定の材料に応じて5−800%可逆的に伸び得る。架橋していないか或は容易には再構成しない短鎖の場合には、そのかけられた応力によって結果として永久的な変形が起こるであろう。
【0073】
熱可塑性エラストマー(TPE)は、熱可塑性と弾性特性の両方を示す種類の共重合体または重合体の物理的混合物である。大部分のエラストマーは熱硬化性である一方、対照的に、熱可塑性プラスチックは製造、例えば射出成形およびメルトブロー加工などにおける使用が比較的容易である。熱可塑性エラストマーは、ゴム材料およびプラスチック材料に典型的な利点の両方を示す。熱硬化性エラストマーと熱可塑性エラストマーの間の主な差は架橋の種類である。熱硬化性重合体の中の架橋は加硫過程中に生じた共有結合である。他方、熱可塑性エラストマー重合体の中に架橋はより弱い双極子もしくは水素結合であるか或は当該材料の相の中の1つのみに起こる。
【0074】
本明細書に記述する態様の典型的な不織布は、粘弾性挙動を示す材料で出来ている。特
に損失正接(tanδ)が音および振動減衰効率の測定で用いられる係数の1つである。このように、減衰度が高い不織布組成物が示す前記係数の数値はより高いことから、動的エネルギーは電気もしくは熱エネルギーの形態で吸収されて消散し、そのようなインターリーフは優れた機械的特性、例えば音吸収特性または振動減衰特性などを示す。通常の高減衰インターリーフ材料組成物は損失正接が1.0以上、好適には1.5から2.0の範囲であることが要求される。
【0075】
加うるに、不織布製造工程に適切であること、湿度を吸収する度合が低いことおよび溶媒および攻撃性流体に抵抗することが確保されるようにインターリーフの組成を選択する。
【0076】
1つの態様では、熱可塑性エラストマーを用いて加工性と相溶性/機械的/溶媒抵抗特性の間の均衡が得られるようにしてもよい。1つの態様における粘弾性材料はスチレン系熱可塑性エラストマーである。そのような熱可塑性材料はポリスチレンのジブロックもしくはトリブロックおよび軟質エラストマー系ブロックであり得る。他の粘弾性材料には、スチレンブロック型の共重合体、例えばポリスチレンブロックおよびビニル結合が豊富なポリイソプレンを有する共重合体などが含まれる。1つのそのような例にはトリブロック共重合体であるHybrar 7311が含まれ得る。
【0077】
1つの態様における粘弾性材料はスチレン系熱可塑性エラストマー(TPE−S)を含有して成る。S型の熱可塑性エラストマーは、相溶しない2種類のブロック、即ちTgが低い方のエラストマーセグメントとTgが高い方のスチレンセグメントを含有する種類のブロック共重合体であり、それらは室温でミクロ相が分離した構造を形成している。そのような材料は、ポリスチレン(PS)末端ブロック集合体が物理的加硫を起こすエラストマーマトリクスであると見なすことができ、それらはまた強化用充填剤としても働く。S型の熱可塑性エラストマーは、幅広い範囲の温度および振動数に渡って減衰を改善する機会を与えるものである、と言うのは、そのようなミクロ分離挙動が減衰に対して肯定的な影響を示すからである。
【0078】
TPE−Sは、幅広い範囲の温度および振動数に渡って優れた減衰特性を示す。軟質ブロックを有するスチレン系ブロック共重合体には、水添ポリ(スチレン−b−イソプレン−b−スチレン)(SEPS)、ポリスチレンとエチレン−ブチレンの共重合体(SEBS)、ポリスチレンとエチレン−エチレン−プロピレンの共重合体(SEEPS)、ポリスチレンとイソプレンの共重合体(SIS)、ポリスチレンとブタジエンの共重合体(SBS)およびポリスチレンとイソプレン−ブタジエンの共重合体(SIBS)またはこれらの混合物が含まれ得る。
【0079】
本明細書に記述するインターリーフの態様は、様々な特徴、例えば繊維直径、面積/重量、厚み、空気透過性および引張り特性などを有する様々な形状に製造可能である。例えば、本複合材料に入れる繊維の繊維直径は約10−20μm、他の態様では3−7μm、20−40μmまたは40−60μmであってもよい。加うるに、インターリーフが示す単位面積当たりの質量は約50−150g/m、他の態様では10−50g/m、150−300g/mまたは300−500g/mであってもよい。また、インターリーフの厚みも約100−400μm、他の態様では50−100μm、400−600μmまたは600−1000μmであってもよい。インターリーフが示す空気透過性は約40−100cc/cm/秒および5から40cc/cm/秒、別の態様では100から400cc/cm/秒であってもよい。インターリーフが示す引張り強度MDは例えば約2−10N/1.5cm、他の態様では10−20N/1.5cm、20−60N/1.5cmまたは60−100N/1.5cmであってもよい。
【0080】
1つの態様では、そのような粘弾性インターリーフを複合積層物の中に挿入しても、その複合積層物が示す熱特性(Tg)も熱機械的特性も環境特性(水分、溶媒および攻撃性流体に対する抵抗)も有意な影響を受けない。別の態様では、そのような粘弾性インターリーフを複合積層物に挿入しても開放孔圧縮力および衝撃後圧縮強度特性が影響を受ける度合は僅かのみであるか或は影響を受けることはない。
【0081】
本明細書で用いる如き用語「レイアップ」は、当業者に公知の如き通常の意味を有し、それには、互いに隣接して位置する1個以上のプレプレグが含まれ得る。特定の態様では、そのようなレイアップの中のプレプレグを互いに関して選択した配向に位置させてもよい。さらなる態様では、場合により、プレプレグが選択した配向から相対的に動かないようにする目的でそれらを糸状材料で一緒に縫い込むことも可能である。追加的態様では、「レイアップ」に本明細書で考察する如き完全な含浸を受けたプレプレグ、ある程度含浸を受けたプレプレグおよび穴開きプレプレグの組み合わせのいずれかを含めることも可能である。レイアップの製造は、これらに限定するものでないが、ハンドレイアップ、自動テープレイアップ(ATL)、高性能繊維配置(AFP)およびフィラメント巻き取りを包含し得る技術を用いて実施可能である。
【0082】
本明細書で用いる如き用語「機体外板」、「機体縦通材」および「機体支持構造体」は、当業者に公知の如き通常の意味を有し、それらはそれぞれ航空機主本体パネル、骨格を作り出している周囲の支持構造体および縦方向を堅くする強化用部材を指す。支持構造体と縦通材を組み合わせて用いると機体管に必要な剛性が得られかつ航空機が静止状態および疲労の観点の両方で受ける負荷の全部を支えるに充分な量の材料が得られる。特に縦通材要素の主な目的は、外板表面を最適な形態に分割することで表面の変形を回避することにある。縦通材はまた外板に亀裂が広がらないようにすることにも貢献する。機体支持構造体の例には、IST支持構造体、せん断に関係した浮動C支持構造体およびせん断に関係した浮動Z支持構造体が含まれる。
【0083】
本明細書で用いる如き用語「有機改質剤」、「有機充填剤」、「無機改質剤」および「無機充填剤」は、当業者に公知の如き通常の意味を有し、それには、有機および無機化合物、例えば流動調節用添加剤、紫外線吸収剤、充填材、例えばシリカ、グラファイトおよび窒化ホウ素など、粘土、例えば雲母、タルクおよび蛭石など、金属粒子、艶消し剤、顔料、抗酸化剤、難燃剤、希釈剤、安定剤、単量体、プレポリマー、柔軟性向上剤、加工助剤および滑剤(フルオロポリマーが基になった加工助剤、鉱油およびワックスを包含)、核形成剤、繊維ストランド、重合体、ガラス、セラミックおよび重合体バブル、金属粒子であるミクロおよびナノ充填剤、例えばコア−シェル粒子、磁性および誘電性ナノ結晶、炭素ナノチューブ、炭素ナノ繊維、ナノグラファイト、ナノ粘土、ナノシリカ、ナノアルミナ、ジルコニアおよびチタニアナノ粒子、貴金属ナノ粒子、導電性ミクロおよびナノ粒子、ナノ繊維およびナノストランドまたはこれらの組み合わせなどが含まれ得、それらを不織材料に添加して通常はそれの特性を向上させる。
【0084】
複合材料の製造では標準的製造方法を用いてもよい。例えば、1つの態様では、本複合材料の製造を典型的な機体外板/支持構造体製造方法を用いて実施する。
【実施例】
【0085】
実施例1
いくつかの市販熱可塑性エラストマーに減衰効率の範囲を検定する評価を受けさせた。その評価を受けさせた材料および相当する特性の簡単なリストを表1に報告する。
【0086】
【表1】

【0087】
重合体の選択をtanδ値およびガラス転移温度の範囲に従って行った。tan値が1.0以上、好適には1.0から1.6、最も好適には2以上の重合体を選択した。
【0088】
実施例2
スチレン系熱可塑性エラストマー、特にエチレン−プロピレン軟質単位を含有するスチレン重合体の水添品、例えばKuraray Septon 2063などを本実施例に開示する不織布製造用の主成分として用いた。その選択した熱可塑性エラストマー(Septon 2063)と一緒にポリプロピレン(PP)、ポリアミド 6(ナイロン6)またはポリブチレンテレフタレート(PBT)をいろいろなパーセントで用いてコンパウンドにした。不織布を製造する目的でメルトブロー加工を選択した。この加工の図式図を図1に報告する。不織布およびこれらの相当する組成および特性のリストを表に報告する。
【0089】
【表2】

【0090】
実施例3
この実施例では、一体型音響減衰材料が注入工程に適することを立証する。この実施例では、CYCOM 977−2 1000gsm HMフィルムおよび3軸炭素繊維編組プレフォームを用いて試片をバルク樹脂注入で得た。
【0091】
この開示する実施例では異なる3種類の不織布グレード(表2に示した3、6および7)を選択したが、これらは面積/重量比が48.5から79.2gsmの範囲でありかつ空気透過率が40.3から85.8cc/cm/秒の範囲であることを特徴とする。
【0092】
層が横並びのレイアップ方法(表4)を用いて4個の試片を作成した。インターリーフを前記試片の中間面に位置させた。試片の寸法を表3に報告する。粘弾性インターリーフを全く用いないで試片1を作成し、それに未処理ベースラインの符号を付けた。
【0093】
【表3】

【0094】
各試片毎に、最終的部品の樹脂含有量が35±5重量パーセントに合致するように樹脂仕込み量を計算した。
【0095】
この実験の結果、その選択した不織布は注入工程に適することが分かった。完全な樹脂浸透が達成された。これらの試片では乾燥領域が全く観察されなかった。あらゆる作成試片に関して表4に示す如き正確な樹脂含有量を得た。
【0096】
【表4】

【0097】
実施例4
好適な不織布一体型材料解決法が下記の複合材料特性に対して示す影響を評価した:
a)音響減衰
b)見かけ層間せん断強度
c)衝撃後圧縮強度
d)開放孔圧縮強度
e)ガラス転移温度
【0098】
吸収の測定を温度の関数として共鳴方法で実施した。測定装置の図式図を図2に示す。
【0099】
試片を温度自動調節室に入れて自由形態で強制的に振動させる。小型の加速度計を用いて振とう器の所の駆動点加速度および試片の反応を測定する。加速度計から出る出力シグナルを二重チャンネル高速フーリエ変換スペクトル分析装置で分析する。その分析装置で加速度比および2個の加速度計の位相差を測定しかつまた無作為騒音源を与えることで振とう器を30Hzから10KHzの振動数範囲に渡って駆動させる。常に測定データのサンプリングを行ってrmsの平均を取る。示された振動数に対する振幅の比率の結果として共鳴ピークの数がもたらされ、それを用いて吸収(損失係数)を計算する。このような測定を10℃の間隔で−50℃から+20℃の温度範囲に渡って実施した。
【0100】
試片の調製をEN2565に従って実施した。試片の寸法を表5に報告する。
【0101】
硬化試片に試験を受けさせる前にそれをEN2743に従って(23±2)℃において(50±5)%の湿度下で貯蔵した。
【0102】
【表5】

【0103】
音響試験用試片の作成をCYCOM(登録商標)977−2−34−24IMS一方向テープを用いて実施した。不織布3(表2)をこの実施例で用いるインターリーフとして選択しそしてCYCOM 977−2 HM 94gsmフィルムを用いてプレプレグにした。次に、そのプレプレグにしたインターリーフを試片の中間面の所にレイアップした。比較の目的で、インターリーフを全く含有させていない試片を作成して、それに「未処理ベースライン」の符号を付けた。
【0104】
この開示した不織布一体型材料である試片は結果として表6に示すように−50℃から20℃の範囲の温度および30から5000Hzの範囲の振動数に渡って優れた音響減衰性能をもたらした。この一体型材料解決法は図3に示すように未処理ベースラインに比べて音響減衰特性の有意な向上を示した。
【0105】
【表6】

【0106】
試片が示す見かけせん断強度の試験をEN2563に従う簡単なビームとして集合的に
実施した。バーを2個の支持体の上に置いて、前記支持体の間の中程に位置させたローディングノーズ(loading nose)を用いて力をかけて、測定を以下の式に従って実施した:
【0107】
【数2】

【0108】
ここで、
τは、見かけせん断応力(MPa)であり、
は、最初の破壊が起こる時点の最大力(N)であり、
bは、試片の幅(mm)であり、
hは、試片の厚み(mm)である。
【0109】
前記不織布処理積層物が示す見かけ層間せん断強度の測定をMEK浸漬前および後に実施した。最初の条件として、試片にEN 2743に従う条件付けを受けさせた。
【0110】
MEK浸漬後の試験では、条件付けをEN 2489に従って実施した。試片の作成をCYCOM 977−2−34−24IMS一方向テープを用いて実施した。試片をEN2565に従って調製したパネルとして取り出した。試片の寸法を表7に報告する。5個の試片を浸漬前に試験しそして他の5個を浸漬後に試験した。試片の長さ方向を繊維の配向と平行にした。この実施例では不織布3(表2)をインターリーフとして選択しそしてCYCOM 977−2 HM 94gsmフィルムを用いてプレプレグにした。次に、そのプレプレグにしたインターリーフを試片の中間面の所にレイアップした。
【0111】
【表7】

【0112】
メチルエチルケトンによる条件付けは前記インターリーフ処理試片の計算見かけ層間強度に影響を与えなかった。特に、図3に示すように、1つの態様の層間せん断強度は84.59MPaでありそして溶媒に1時間浸漬した後のそれは83.34MPaであった。
【0113】
衝撃後圧縮力の試験の目的は、繊維強化プラスチックが示す低速衝撃抵抗特性を測定することにある。この方法では、材料が特定の組の衝撃パラメーターに対して示す反応を測定することで材料間の比較を行う。
【0114】
インターリーフ処理試片に衝撃を限定した衝撃エネルギーで受けさせそして圧縮強度をEN 6038に従って測定する。へこみの深さおよび結果として生じた面積を測定した。
【0115】
試片の作成をCYCOM 977−2−34−24IMS一方向テープを用いて実施した。インターリーフ処理試片の調製を炭素強化積層物に関するEN 2565の方法Bに従って実施した。この実施例では、不織布3(表2)をインターリーフとして選択しそしてCYCOM 977−2 HM 94gsmフィルムを用いてプレプレグにした。次に、そのプレプレグにしたインターリーフを試片の中間面の所にレイアップした。この試験では順等方性レイアップおよび約4mmの試片を用いた。寸法および許容範囲を表8に示す。
【0116】
前記インターリーフ処理試片に30Jエネルギーを用いた衝撃を受けさせた後、へこみの深さを測定した。損傷の長さ、幅および面積を測定する目的で超音波走査を実施した。
【0117】
衝撃後に条件付けを実施した。試験を23±2℃において50±5%の相対湿度下で実施した。
【0118】
0.5mm/分のクロスヘッドを選択した。負荷を時間の関数として連続的に記録しかつ破壊負荷(P)も記録した。特定衝撃エネルギーレベルEの時の衝撃後圧縮強度を下記の式で定義する:
【0119】
【数3】

【0120】
ここで、
は、破壊負荷(N)であり、
wは、試片の幅(mm)であり、
tは、試片の厚み(mm)である。
【0121】
試片の寸法を表8に報告する。
【0122】
【表8】

【0123】
不織布3(表2)を各試片の中間面にレイアップした。
【0124】
好適な不織布を一体型複合構造物の中に用いても結果として図5に示すように衝撃後圧縮強度が低下する度合は最小限であった。加うるに、そのような処理によって図6に示すように未処理試片に比べて損傷面積が小さくなることも分かった。
【0125】
開放孔圧縮試験は、複合材料に一方向強化を受けさせた時の開放孔引張り強度を測定する方法である。インターリーフによる処理を受けさせた開放孔用試片に張力に関する試験
を受けさせることで、そのような積層物が示す引張り機械的特性を測定する。
【0126】
2±0.2mm/分のクロスヘッド速度を選択した。負荷をクロスヘッド変位の関数として連続的に記録した。正規化した引張り開放孔圧縮強度の計算を当該試片が受けた最大負荷をゲージ長内の断面積で割ることで行い、この計算では報告された下記の式を用いた:
【0127】
【数4】

【0128】
ここで、
Puは、最大負荷(N)であり、
wは、試片の幅(mm)であり、
は、名目上の厚み(関連材料の仕様に示されている硬化後層厚に試験積層物の中の層の数を掛けた値)(mm)である。
【0129】
試片の作成をCYCOM 977−2−34−24IMS一方向テープを用いて実施した。試片の調製を炭素繊維強化積層物に関するEN 2565の方法Bに従って実施した。
【0130】
この試験では、順等方性レイアップおよび約4mの試片を用いた。如何なる積層物が示した厚み測定値の変動値も平均測定厚の±2%以内であった。この実施例では、不織布3(表2)をインターリーフとして選択しそしてCYCOM 977−2 HM 94gsmフィルムを用いてプレプレグにした。次に、そのプレプレグにしたインターリーフを試片の中間面の所にレイアップした。比較の目的で、不織布であるインターリーフを全く含有させていない試片を作成して、それに未処理ベースラインの符号を付けた。
【0131】
試片にNon−Destructive Testing(NDT)(例えばCスキャン)を受けさせることで検出可能な欠陥が存在しないことを確立した。
【0132】
AIPS 01−02−005の要求に従って孔を機械加工した。6個の試片に試験を受けさせた。
【0133】
試片に試験を(23±2)゜で受けさせかつ条件付けをEN2823に従って受けさせた。
【0134】
試片の寸法を表9に報告する。
【0135】
【表9】

【0136】
前記不織布を一体型複合構造物の中間面に挿入しても結果として図7に示すように未処理ベースラインに比較して開放孔圧縮強度が低下する度合は最小限であった。
【0137】
不織布であるインターリーフが積層物の熱特性に対して示す影響を多振動歪み制御試験を用いた動的機械的解析(DMA)で評価した。正弦力を用いて試片を単一の振動数に渡って一定の振幅で変形させながら材料を一定の速度で加熱する。そのかける応力の大きさおよび結果としてもたらされた歪みを用いて剛性、従って当該材料が応力下で示す率を計算する。そのかけた力と比較した転位の時間差を測定することで当該材料が示す減衰特性を決定した。時間差を位相遅れ(角度)として報告した。減衰をtan dと呼び、これは位相遅れの正接を表している。DMAを約50℃から260℃の範囲の温度に渡って5±0.2℃/分の加熱速度および約1Hzの振動数を用いて実施した。
【0138】
試片の作成をCYCOM 977−2−34IMS一方向テープを用いて実施した。試片の調製をEN2565に従って実施した。試片の寸法を表10に報告する。
【0139】
【表10】

【0140】
この実施例では、不織布3(表2)をインターリーフとして選択しそしてCYCOM 977−2 HM 94gsmフィルムを用いてプレプレグにした。次に、そのプレプレグにしたインターリーフを試片の中間面の所にレイアップした。
【0141】
試験に先立って、硬化させた試片をEN2743に従って(23±2℃)において(50±5%)の湿度下で貯蔵した。
【0142】
温度を高くしながら当該サンプルに振動転位を受けさせた時にそれが劇的な機械的および減衰挙動の変化を示す時の温度としてガラス転移温度を定義する。Tg開始を貯蔵係数曲線上のガラス転移が起こる前および後の点から引いた外挿正接の温度交点としての温度であると定義する。この試験を単一の片持ち曲げ様式を用いて実施した。3個の試片に試験を受けさせた結果、Tgの結果は平均値の±2℃以内であった。
【0143】
好適な不織布解決法を用いると図8に示すように一体型構造物のガラス転移温度に実質的な影響が生じることはない。不織布による処理を受けさせた試片と未処理の試片の間に観察された差は1℃未満であった。
【0144】
実施例4
開示する不織布一体型材料をSmactane(登録商標)(Smac Toulon
Franceから入手可能)連続フィルム処理複合材料と対比させる剥離強度比較実施例。
【0145】
剥離試験を用いて、接着させた表面を引き剥がすに要する力を測定する。サンプルの厚みを測定した後、それを固定具の中に入れて、万能試験機の中に置いた。試片を特定の速度で部品または結合部が壊れるまで引き伸ばした。破壊の種類を凝集力、接着力または基質の破壊として示した。
【0146】
前以て亀裂を起こさせておいた試片に引き剥がし力による負荷を総伝播亀裂長が約100mmになるまで連続的に受けさせた。亀裂伝播中の試験機の負荷およびクロスヘッド転位を連続的に記録した。剥離強度の計算を伝播した亀裂の長さおよびかけたエネルギーを用いて行い、それを図10に示す如き負荷クロスヘッド転位図から決定した。
【0147】
図9に示した剥離試験片の寸法を表11に報告する。
【0148】
【表11】

【0149】
テープの繊維の方向を試片の長さ方向に対して0゜にした。
【0150】
試片の作成をCYCOM 977−2−34−24IMS一方向テープを用いて実施した。試片の調製をEN2565に従って実施した。この実施例では、不織布3(表2)をインターリーフとして選択しそしてCYCOM 977−2 HM 94gsmフィルムを用いてプレプレグにした。次に、そのプレプレグにしたインターリーフを試片の中間面の所にレイアップした。
【0151】
亀裂長の寸法を有する二重層のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)剥離フィルムを用いて、それを粘弾性インターリーフとこれに直接隣接して位置するテープ層の間の積
層物中間面に位置させることで、初期亀裂を導入した。
【0152】
不織布であるインターリーフおよび比較実施例の目的で用いた連続フィルムそしてこれらの相当する特徴を表12に報告する:
【0153】
【表12】

【0154】
試片に試験を室温で硬化させたままの乾燥した状態でEN 2743試験に従う条件付け後に受けさせた。
【0155】
試験
試片を試験固定具の中に整列させた。前記合併させる剥離フィルムに負荷を初期亀裂長が約10−15mmになるまで受けさせた。試片に負荷を常に全亀裂長が約100mmになるまで10mm/分のクロスヘッド速度で受けさせた。負荷およびクロスヘッド転位を記録した。
【0156】
下記の式を用いて剥離強度の計算を行った:
【0157】
【数5】

【0158】
PSは、剥離強度であり、
Aは、伝播した総亀裂長の達成に要するエネルギー(図10)であり、
aは、伝播した亀裂長であり、
wは、試片の幅である。
【0159】
Smactane(登録商標)で処理した試片の場合のように、連続フィルムであるインターリーフを用いると、そのようなインターリーフが等方性質を有することが理由で、結果として剥離強度が有意に低下する。そのフィルムは複合構造物の中で連続バリヤーとして作用する。対照的に、好適な不織布であるインターリーフを試片の中間面に位置させると、優れた剥離強度値が記録された。注文に合わせたインターリーフを樹脂と不織布の間に作り出すと結果として優れた音響減衰特性が維持されると同時に強度値が明瞭に向上する。
【0160】
実施例5
この比較実施例では、様々なプラズマ処理を用いて不織布の表面に改質を受けさせる。試片の調製を実施例4と同様に実施した。剥離強度の計算を実施例4と同様に実施した。
【0161】
試片の作成をCYCOM 977−2−34−24IMS一方向テープを用いて実施した。試片の調製をEN2565に従って実施した。この比較実施例では、不織布3(表2)をインターリーフとして選択しそしてCYCOM 977−2 HM 94gsmフィ
ルムを用いてプレプレグにした。次に、そのプレプレグにしたインターリーフを試片の中間面の所にレイアップした。
【0162】
処理条件を表13に報告する。
【0163】
【表13】

【0164】
分析を受けさせた試片およびプラズマ処理の完全なリストを表14に報告する。
【0165】
プラズマ処理を受けさせた後の表面張力の測定を試験インクを用いて実施した。この測定はインク塗布後にその液体が表面を湿らせたならばその試験を受けさせた材料の表面張力の方が相当する試験値よりも高いと言った原理が基になっている。この試験を湿らなくなるまで次々に試験値を高くして繰り返す。従って、当該材料が示す表面張力は、試験インクがそれを最後に少なくとも2秒間湿らせた時の値に相当する。
【0166】
【表14】

【0167】
プラズマによる改質を受けさせた不織布をインターリーフとして用いた構造物では、図12に示すように、未処理ベースライン試片に比べて、処理後に剥離強度が20から96%向上することが観察された。
【0168】
実施例6
不織布をインターリーフとして用いた複合材料と連続フィルムをインターリーフとして用いた複合材料を比較する注入工程実施例。
【0169】
この注入工程を実施例3に記述したようにして実施した。この実施例に開示する態様では、同じ材料組成および厚みを基にした不織布3(表2)および連続フィルムをインター
リーフとして用いた。
【0170】
連続フィルムは流れ遮蔽物として作用することで試片への完全な染み込みを邪魔する。連続フィルムによる処理を受けさせた試片では、図13bに示すように、表面に大きな乾燥した領域を明らかに見ることができる。対照的に、好適な不織布一体型材料解決法を用いると結果として図13aに示すように樹脂を計算した含有量で含有する完全に染み込んだ構造物がもたらされた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化もしくは未硬化の構造用複合材料であって、
構造用成分、
樹脂成分、および
粘弾性インターリーフ、
を含有して成っていて、
前記構造用成分が構造用繊維を含有して成る複数の布地層の形態であり、
前記粘弾性インターリーフが1対の隣接して位置する前記布地層の間に位置する不織材料の薄層を少なくとも1層含有して成り、
前記粘弾性インターリーフおよび構造用成分に前記樹脂成分がある程度または完全に染み込んでおり、かつ
硬化後に中間層が構造用複合材料に一体化する、
構造用複合材料。
【請求項2】
前記樹脂成分が熱硬化性組成物である請求項1記載の構造用複合材料。
【請求項3】
前記構造用繊維が炭素繊維を含んで成る請求項1記載の構造用複合材料。
【請求項4】
前記粘弾性インターリーフが硬化工程前に前記樹脂成分の中に埋め込まれている請求項1記載の構造用複合材料。
【請求項5】
前記不織材料が少なくとも1種の熱可塑性エラストマーまたはこれの混合物を含有して成る請求項1記載の構造用複合材料。
【請求項6】
前記不織材料がスチレン系熱可塑性エラストマー、エラストマー系ポリオレフィンおよびこれらの混合物から成る群より選択される少なくとも1種の共重合体を含有して成る請求項1記載の構造用複合材料。
【請求項7】
前記不織材料がポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、これらの共重合体の中の1種およびこれらの混合物から成る群より選択される熱可塑性プラスチックを含有して成る請求項1−7のいずれか記載の構造用複合材料。
【請求項8】
前記粘弾性インターリーフの両面が少なくとも35ダイン/cmの表面張力を達成するようにプラズマで処理されている請求項1−7のいずれか記載の構造用複合材料。
【請求項9】
前記不織材料と前記樹脂の接合面が結果としてもたらされる剥離強度値が未処理複合材料が示す値の70%以内であるように調節されている請求項1−8記載の構造用複合材料。
【請求項10】
前記粘弾性インターリーフが更に有機および無機化合物も含有して成る請求項1−9のいずれか記載の構造用複合材料。
【請求項11】
前記粘弾性インターリーフが複合材料のガラス転移温度を10%以上は低下させていない請求項1−10のいずれか記載の構造用複合材料。
【請求項12】
前記粘弾性インターリーフが複合材料の衝撃後圧縮強度を10%以上は低下させていない請求項1−11のいずれか記載の構造用複合材料。
【請求項13】
硬化もしくは未硬化の複合サンドイッチ型構造用材料であって、
1番目のスキン層および2番目のスキン層、
前記1番目のスキン層と2番目のスキン層の間に位置する構造用中心部、および
粘弾性インターリーフ、
を含有して成る複合サンドイッチ型構造用材料。
【請求項14】
前記中心部がハニカム型構造物である請求項13記載の複合サンドイッチ型構造用材料。
【請求項15】
前記1番目のスキン層と2番目のスキン層が構造用繊維を含有して成る複数の布地層および樹脂成分を含有して成る請求項13記載の複合サンドイッチ型構造用材料。
【請求項16】
前記粘弾性インターリーフが前記スキン層の中の1対の隣接して位置する布地層の間に位置する不織材料の薄層を少なくとも1層含有して成る請求項13記載の複合サンドイッチ型構造用材料。
【請求項17】
前記粘弾性インターリーフが不織材料の層を少なくとも1層、スキン層および中心部を含有して成る請求項13記載の複合サンドイッチ型構造用材料。
【請求項18】
硬化もしくは未硬化の構造用複合材料であって、
樹脂成分、および
粘弾性インターリーフ、
を含有して成る構造用複合材料。
【請求項19】
前記樹脂成分が構造用接着剤である請求項18記載の構造用複合材料。
【請求項20】
前記粘弾性インターリーフの少なくとも片面が構造用接着剤で被覆されている請求項18記載の構造用複合材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2012−514546(P2012−514546A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544083(P2011−544083)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【国際出願番号】PCT/GB2010/000008
【国際公開番号】WO2010/079322
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(594060532)サイテク・テクノロジー・コーポレーシヨン (36)
【Fターム(参考)】