説明

音響再生装置

【課題】車室内で異なるオーディオソースを再生する際に、各オーディオソースの聴取者がそれぞれ再生音を好適に聴取することできる音響再生装置を提供する。
【解決手段】音響再生装置は、複数のスピーカSPF,SPR,SPC,SPWと、複数のオーディオソースを備える音源1と、音源1からの音響信号をスピーカSPF,SPR,SPC,SPWに割り当てて供給する信号処理装置2とを備える。信号処理装置2は、2以上のオーディオソースの聴取が指示され、1つのオーディオソースが5.1チャンネル信号である場合は、指示された他のオーディオソースの音響信号をスピーカSPFに供給すると共に、他のオーディオソースの音響信号が割り当てられていない残余のスピーカSPR,SPC,SPWに対応するように、5.1チャンネル信号にダウンミックス処理を施し、処理後のチャンネル信号を残余のスピーカSPR,SPC,SPWに供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のオーディオソースの中からユーザが選択した1つまたは複数のソースを再生する音響再生装置に関し、詳しくは車両の車室内に配置された複数個のスピーカを使用してユーザが選択した1つまたは複数のソースを再生するのに好適な音響再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、映像や音楽を視聴するためのAV(Audio Visual)再生システムが車両に搭載されるようになってきている。このAV再生システムは、映像再生装置と音響再生装置とを備えて構成されている。例えばDVDを再生する場合は、映像信号は映像再生装置で再生され、音響信号は音響再生装置で再生される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
映像再生装置は例えば、コンソールパネルの中央部に設置される前部座席用ディスプレイと、前部座席の背部に設置される後部座席用ディスプレイと、ビデオソースから入力される出力信号を処理して上記のディスプレイに供給する映像処理部とを備えて構成される。また、後部座席用ディスプレイとして、運転席の背部に設置される右側後部座席用と、助手席の背部に設置される左側後部座席用との2台のディスプレイを備えた映像再生装置もある。
【0004】
音響再生装置は例えば、コンソールパネルの右側および左側にそれぞれ設置される右側フロントスピーカおよび左側フロントスピーカと、コンソールの中央部に設置されるセンタスピーカと、後部座席の右側および左側にそれぞれ設置される右側リアスピーカおよび左側リアスピーカと、後部座席の中央部に設置されるサブウーファと、複数のオーディオソースから入力される出力信号を処理して上記の複数のスピーカで再生する音響信号を作成して各スピーカに供給する信号処理部とを備えて構成される。上記の6つのスピーカを備えた音響再生装置では、いわゆる5.1チャンネルのオーディオソースからの音響信号を再生することができる。5.1チャンネルの音響信号を再生する音響再生装置は、例えば特許文献2に記載されている。
【特許文献1】特開2004−17914号公報
【特許文献2】特開平11−88999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような車両に搭載されるAV再生システムでは、前部座席の乗員と後部座席の乗員とが異なるソースを選択して再生できるように構成されている。例えば、前部座席の乗員がソースとしてCDプレーヤを選択し、後部座席の乗員がソースとしてDVDプレーヤを選択した場合、CDプレーヤからの左右2チャンネルの音響信号はそれぞれ左側フロントスピーカおよび右側フロントスピーカから出力され、DVDプレーヤからのマルチチャンネルの音響信号は残りのスピーカ、つまり左側リアスピーカ、右側リアスピーカ、センタスピーカおよびサブウーファの中から後部座席の乗員が選択したスピーカから出力される。このとき、DVDプレーヤからの音響信号が5.1チャンネルである場合、リアスピーカが選択されたときは、フロント側の左チャンネルおよび右チャンネルの各信号ならびにセンタチャンネルおよびウーファチャンネルの各信号は、リア側の左チャンネルおよび右チャンネルの各信号にミキシングされて、左側リアスピーカおよび右側リアスピーカから出力される。また、リアスピーカとセンタスピーカとが選択されたときは、センタチャンネルの信号はセンタスピーカから出力され、リアスピーカとウーファとが選択されたときは、ウーファチャンネルの信号はサブウーファから出力される。
【0006】
このように前部座席側と後部座席側とで選択されたオーディオソースが異なり、後部座席側のオーディオソースのチャンネル信号をセンタスピーカで再生した場合、センタスピーカは後部座席の乗員から見てリアスピーカよりも離れた場所に設置されているので、後部座席の乗員にとってはセンタスピーカからの再生音(5.1チャンネルの場合は台詞や会話などの人の声)が聴き取りにくくなるという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、車室内で異なるオーディオソースを再生する際に、各オーディオソースの聴取者がそれぞれ再生音を好適に聴取することできる音響再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、複数のオーディオソースを備える音源と、前記音源からの音響信号を複数のスピーカに割り当てて供給する信号処理手段とを備える音響再生装置であって、
前記信号処理手段は、2以上のオーディオソースの聴取が指示され、1つのオーディオソースの音響信号が5.1チャンネル信号である場合は、指示された他のオーディオソースの音響信号が割り当てられていない残余のスピーカに対応するように、前記5.1チャンネル信号にダウンミックス処理を施し、処理後のチャンネル信号を前記残余のスピーカに供給することを特徴とする音響再生装置である。
【0009】
本発明によれば、5.1チャンネル信号のオーディオソースを含む2以上のオーディオソースの聴取が指示されたときは、5.1チャンネル信号のオーディオソース以外の他のオーディオソースの音響信号が特定のスピーカに供給され、5.1チャンネル信号は、残余のスピーカに対応するようにダウンミックス処理が施され、処理後のチャンネル信号が前記残余のスピーカに供給される。
【0010】
例えばDVDと他のオーディオソース(例えばチューナ)との聴取が指示されると、他のオーディオソースの音響信号が例えば2つのフロントスピーカに供給される。そして、DVD再生による5.1チャンネル信号には、残余のスピーカ、例えば2つのリアスピーカとセンタスピーカとウーファとに対応するようにダウンミックス処理が施され、処理後のチャンネル信号が残余のスピーカに供給される。なお、5.1チャンネル信号を3.1チャンネル信号にダウンミックスして残余のスピーカすべてに供給するようにしてもよいし、2.1チャンネルにダウンミックスして2つのリアスピーカとウーファとに供給するようにしてもよいし、2チャンネルにダウンミックスして2つのリアスピーカに供給するようにしてもよい。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記信号処理手段は、5.1チャンネル信号を供給する複数のスピーカの配置に基づいて、各スピーカの音量を整合するように設定することを特徴としている。
【0012】
本発明によれば、5.1チャンネル信号が供給されるスピーカの音量は、供給されるスピーカの配置に基づいて、各スピーカの音量が整合するように設定される。例えばDVD再生による5.1チャンネル信号が2つのリアスピーカおよびセンタスピーカから出力されるときは、センタスピーカの音量がリアスピーカの音量に整合するように設定される。つまり、センタスピーカの音量を増加させる。これは、リア席の乗員にとってはセンタスピーカはリアスピーカよりも遠方にあるため、リアスピーカによる再生音に比べてセンタスピーカによる再生音が聴き取りにくいからである。これによって、リア席の乗員はDVD再生による音響信号を好適な状態で聴取することができるようになる。
【0013】
請求項3に係る発明は、前記信号処理手段は、5.1チャンネル信号を供給する複数のスピーカの配置に基づいて、各スピーカへの音響信号を供給するタイミングを調整することを特徴としている。
【0014】
本発明によれば、5.1チャンネル信号が供給されるスピーカへの音響信号の供給タイミングは、供給されるスピーカの配置に基づいて調整される。例えばDVD再生による5.1チャンネル信号が2つのリアスピーカおよびセンタスピーカから出力されるときは、センタスピーカから音響信号が出力されるタイミングよりも、リアスピーカから音響信号が出力されるタイミングが遅延される。これは、リア席の乗員にとってはセンタスピーカはリアスピーカよりも遠方にあるため、リアスピーカによる再生音に比べてセンタスピーカによる再生音が乗員の耳に到達するまでの時間が長くなり、ずれが生じるからである。これによって、リア席の乗員は例えばDVD再生による5.1チャンネル信号を好適な状態で聴取することができるようになる。
【0015】
請求項4に係る発明は、音声出力部を備えた表示装置と、複数のオーディオソースを備える音源と、前記音源からの音響信号を複数のスピーカおよび前記音声出力部に割り当てて供給する信号処理手段とを備える音響再生装置であって、
前記音源は、複合デジタル5.1チャンネル信号を出力するソースを有し、
前記信号処理手段は、前記複合デジタル5.1チャンネル信号を各チャンネル信号に分離して所定の処理を施して出力するデジタル信号処理部と、前記デジタル信号処理部から出力される各チャンネル信号をアナログ信号に変換して複数の前記スピーカに供給するデジタル/アナログ変換器と、前記デジタル信号処理部で分離された各チャンネル信号をミキシングして出力する合成部と、前記デジタル信号処理部からのフロントチャンネル信号と前記音源のオーディオソースからの音響信号とを選択してフロントスピーカに供給するフロント側ソース切換スイッチと、前記合成部からのミキシング信号と前記音源のオーディオソースからの音響信号とを選択して前記表示装置が備える音声出力部に供給するリア側ソース切換スイッチと、前記フロント側ソース切換スイッチおよび前記リア側ソース切換スイッチを制御する制御部とを備え、
前記制御部は、複数のソースの聴取が指示された場合、前記リア側ソース切換スイッチを切り換えて前記合成部からのミキシング信号を前記表示装置が備える音声出力部に供給すること特徴とする音響再生装置である。
【0016】
本発明によれば、例えばリア席でDVDソースの聴取が指示され、フロント席で他のオーディオソース(例えばチューナ)の聴取が指示されると、他のオーディオソースの音響信号は、信号処理手段を介して2つのフロントスピーカに供給される。このとき、DVD再生による複合デジタル5.1チャンネル信号は、信号処理手段内のデジタル信号処理部で各チャンネル信号に分離され、合成部でミキシングされる。そして、ミキシング信号が例えばリア席の乗員のために配置された表示装置の音声出力部に供給される。
【0017】
請求項5に係る発明は、前記合成部は、フロントチャンネル信号とセンタチャンネル信号とをミキシングして出力し、
前記デジタル信号処理部は、リアチャンネル信号をリアスピーカに供給し、ウーファチャンネル信号をウーファに供給することを特徴としている。
【0018】
本発明によれば、例えばリア席でDVDソースの音響信号を聴取する場合は、フロントチャンネル信号およびセンタチャンネル信号は表示装置の音声出力部から出力され、リアチャンネル信号およびウーファチャンネル信号はそれぞれ2つのリアスピーカおよびウーファから出力される。
【0019】
請求項6に係る発明は、前記デジタル信号処理部は、前記表示装置の音声出力部に供給
されるミキシング信号の音量に整合するようにリアチャンネル信号およびウーファチャンネル信号の各音量を設定することを特徴としている。
【0020】
本発明によれば、例えばリア席でDVDソースの音響信号を聴取する場合は、表示装置の音声出力部に供給されるミキシング信号の音量に整合するように、リアチャンネル信号およびウーファチャンネル信号の各音量が設定される。
【0021】
請求項7に係る発明は、前記リア側ソース切換スイッチは、外部ソースからの音響信号を入力し、
前記制御部は、前記音声出力部への割込要求が指示されたときは、前記リア側ソース切換スイッチを切り換えて前記外部ソースからの音響信号を前記表示装置の音声出力部に供給することを特徴としている。
【0022】
本発明によれば、表示装置の音声出力部への割込み要求が指示されると、外部ソースからの音響信号が表示装置の音声出力部に供給され、表示装置を視聴している例えばリア席の乗員は外部ソースの音響信号を聴取できるようになる。
【0023】
請求項8に係る発明は、前記合成部は、前記デジタル信号処理部で分離されたデジタル信号をミキシングしてからアナログ信号に変換して出力することを特徴としている。また請求項9に係る発明は、前記合成部は、前記デジタル信号処理部で分離されたデジタル信号をアナログ信号に変換してからミキシングして出力することを特徴としている。
【0024】
本発明によれば、デジタル信号処理部で分離されたデジタル信号のミキシングは、デジタル信号の段階でミキシングしてからアナログ信号に変換してもよいし、アナログ信号に変換してからミキシングしてもよい。
【発明の効果】
【0025】
請求項1記載の発明によれば、例えば乗員が5.1チャンネル信号と他のオーディオソースとの聴取を指示すると、各ソースの音響信号を出力するスピーカが決定され、決定されたスピーカに対応するように5.1チャンネル信号にダウンミックス処理が施されて出力される。これによって、乗員が各ソースの再生音を最適な状態で聴取できるようになるとともに、ソースごとにスピーカの設定を行う必要がなくなり、利便性および操作性が向上する。
【0026】
請求項2記載の発明によれば、5.1チャンネル信号を供給する複数のスピーカの配置に基づいて音量が調節されるので、5.1チャンネル信号の聴取者は5.1チャンネル信号を好適な状態で聴取することができる。例えば、リア席の乗員が5.1チャンネル信号聴取する場合は、センタスピーカからの再生音の音量を大きくすることができる。これによって、5.1チャンネル信号の聴取者は5.1チャンネル信号を好適な状態で聴取することができる。
【0027】
請求項3記載の発明によれば、5.1チャンネル信号を供給する複数のスピーカの配置に基づいて、各スピーカへの音響信号を供給するタイミングが調整される。例えば、リア席の乗員が5.1チャンネル信号聴取する場合は、リアスピーカからの再生音とセンタスピーカからの再生音とがほぼ同じタイミングでリア席の乗員に到達するようにタイミングを調節することができる。これによって、5.1チャンネル信号の聴取者は5.1チャンネル信号を好適な状態で聴取することができる。
【0028】
請求項4記載の発明によれば、例えばリア席に表示装置を設置し、リア席の乗員が5.1チャンネル信号の聴取を指示し、フロント席の乗員が他のオーディオソースの聴取を指
示すると、他のオーディオソースの音響信号が2つのフロントスピーカから出力され、5.1チャンネル信号はミキシングされて表示装置の音声出力部から出力される。これによって、フロント席およびリア席の各乗員はそれぞれ好適な状態で音響信号を聴取できるようになる。
【0029】
また、5.1チャンネル信号をダウンミックスした信号を音源から信号処理手段に与えて音声出力部に供給するように構成すると、音源と信号処理手段とを接続する信号線としてダウンミックス信号用の信号線が必要となり、構成が複雑になる。これに対し、本発明では、ダウンミックス信号用の信号線が不要となり、構成の簡略化が可能となる。
【0030】
請求項5記載の発明によれば、例えばリア席に表示装置を設置し、リア席で5.1チャンネル信号を聴取する場合は、フロントチャンネル信号およびセンタチャンネル信号は表示装置の音声出力部から出力され、リアチャンネル信号およびウーファチャンネル信号はそれぞれ2つのリアスピーカおよびウーファから出力される。これによって、リア席の乗員は5.1チャンネル信号を、音声出力部のみから聴取する場合に比べて好適な状態で聴取することができるようになる。
【0031】
請求項6記載の発明によれば、例えばリア席に表示装置を設置し、リア席で5.1チャンネル信号を聴取する場合は、表示装置の音声出力部に供給されるミキシング信号の音量に整合するように、リアチャンネル信号およびウーファチャンネル信号の各音量が設定される。これによって、リア席の乗員は5.1チャンネル信号をより好適な状態で聴取できるようになる。
【0032】
請求項7記載の発明によれば、表示装置の音声出力部への割込み要求が指示されると、外部ソースからの音響信号が音声出力部に供給され、音声出力部の聴取者は外部ソースの音響信号を聴取できるようになる。これによって、外部ソースとして例えばマイクロフォンの音声信号を入力すれば、フロント席の乗員がリア席の乗員に話をすることができるようになり、例えば携帯電話機の音声出力端子の音声信号を入力すれば、リア席の乗員は携帯電話機による通話ができるようになる。
【0033】
請求項8または9に記載の発明によれば、デジタル信号処理部の構成に応じて、デジタル信号の段階でミキシングしてからアナログ信号に変換してもよいし、アナログ信号に変換してからミキシングしてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1実施形態を、図1および図2を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態である音響再生装置の概略的構成を示すブロック図である。
【0035】
音響再生装置は、車室内の前方側に配置されるフロントスピーカSPFと、車室内の後方側に配置されるリアスピーカSPRと、車室内の前方中央部に配置されるセンタスピーカSPCと、車室内に配置されるウーファSPWと、複数のオーディオソースを備える音源1と、音源1からの音響信号を複数のスピーカSPF,SPR,SPC,SPWに割り当てて供給する信号処理装置2とを備えて構成される。なお、フロントスピーカSPFは、前方右側に配置される右側フロントスピーカと、前方左側に配置される左側フロントスピーカとで構成される。また、リアスピーカSPRは、後方右側に配置される右側リアスピーカと、後方左側に配置される左側リアスピーカとで構成される。
【0036】
音源1は、オーディオソースとして、DVDプレーヤ11とCDプレーヤ12とチューナ13とを備えて構成される。信号処理装置2は、フロント用DSP21と、リア用DS
P22と、フロント切換スイッチ23と、リア切換スイッチ24と、センタ切換スイッチ25と、ウーファ切換スイッチ26と、制御部27と、操作部28とを備えて構成される。
【0037】
フロント用DSP21は、音源1から入力される音響信号を処理して各チャンネル信号を作成し、フロントチャネル信号をフロント切換スイッチ23に、リアチャンネル信号をリア切換スイッチ24に、センタチャンネル信号をセンタ切換スイッチ25に、ウーファチャンネル信号をウーファ切換スイッチ26にそれぞれ出力する。フロント用DSP21は、デコード回路21a、遅延回路22bおよび音量調整回路22cを備える。デコード回路21aは、DVDプレーヤ11から出力されるデジタル複合5.1チャンネル信号を分離して各チャンネル信号を作成して出力する。遅延回路22bは、チャンネル信号を出力するタイミングを調整するためにチャンネルごとに遅延時間を設定する。音量調整回路21cは、各チャンネル信号の音量を調整する。
【0038】
リア用DSP22は、フロント用DSP21と同様に、音源1から入力される音響信号を処理して各チャンネル信号を作成し、フロントチャネル信号をフロント切換スイッチ23に、リアチャンネル信号をリア切換スイッチ24に、センタチャンネル信号をセンタ切換スイッチ25に、ウーファチャンネル信号をウーファ切換スイッチ26にそれぞれ出力する。リア用DSP22は、デコード回路22a、遅延回路22bおよび音量調整回路22cを備える。これらの回路22a,22b,22cの処理内容は、フロント用DSP21内の回路21a,21b,21cと同じである。
【0039】
フロント切換スイッチ23は、フロント用DSP21からのフロントチャンネル信号と、リア用DSP22からのフロントチャンネル信号とのいずれか一方をフロントスピーカSPFに出力する。リア切換スイッチ24は、フロント用DSP21からのリアチャンネル信号と、リア用DSP22からの合成リアチャンネル信号とのいずれか一方をリアスピーカSPRに出力する。合成リアチャンネル信号とは、リアチャンネル信号とフロントチャンネル信号とをミキシングした信号である。
【0040】
センタ切換スイッチ25は、フロント用DSP21からのセンタチャンネル信号と、リア用DSP22からのセンタチャンネル信号と、外部ソースであるナビゲーション装置3からの音声信号とのいずれか1つをセンタスピーカSPCに出力する。ウーファ切換スイッチ26は、フロント用DSP21からのウーファチャンネル信号と、リア用DSP22らのウーファチャンネル信号とのいずれか一方をウーファSPWに出力する。
【0041】
制御部27は、マイクロコンピュータなどで構成され、操作部28からの指示信号に基づいて、フロント用DSP21およびリア用DSP22の動作の制御や、フロント切換スイッチ23、リア切換スイッチ24、センタ切換スイッチ25およびウーファ切換スイッチ26の切換制御を行うとともに、音源1から信号処理装置2に入力させる音響信号を選択する。操作部28は、キースイッチや、ディスプレイにタッチパネルを重ね合わせて構成され、音響再生装置の動作内容を入力するために乗員によって操作され、指示信号を制御部27に出力する。
【0042】
図2は、音響再生装置におけるDVD再生時の処理手順を説明するためのフローチャートである。ステップa1では、制御部27は操作部28からの指示信号に基づいてDVDの再生が指示されたか否かを判断する。DVDの再生が指示されたと判断した場合は、ステップa2に進み、リア席のみでの再生か否かを判断する。リア席のみでの再生であると判断した場合は、ステップa3に進む。
【0043】
ステップa3では、リア用DSP22に対してDVD再生時に再生信号の出力対象とな
るスピーカに対応するダウンミックス処理を設定する。つまり、2つのリアスピーカSPRのみを出力対象スピーカとする場合は、5.1チャンネルを2チャンネルにするダウンミックス処理を設定する。2つのリアスピーカSPRとウーファSPWとを出力対象スピーカとする場合は、5.1チャンネルを2.1チャンネルにするダウンミックス処理を設定する。2つのリアスピーカSPRとセンタスピーカSPCとを出力対象スピーカとする場合は、5.1チャンネルを3チャンネルにするダウンミックス処理を設定する。2つのリアスピーカSPRとセンタスピーカSPCとウーファSPWとを出力対象スピーカとする場合は、5.1チャンネルを3.1チャンネルにするダウンミックス処理を設定する。出力対象スピーカは、乗員によって予め設定されている。
【0044】
ステップa4では、切換スイッチ23〜26を切り換えて出力対象スピーカとリア用DSP22とを接続する。つまり、2つのリアスピーカSPRのみを出力対象スピーカとする場合は、リア切換スイッチ24を切り換えて2つのリアスピーカSPRをリア用DSP22に接続する。2つのリアスピーカSPRとウーファSPWとを出力対象スピーカとする場合は、リア切換スイッチ24およびウーファ切換スイッチ26を切り換えて2つのリアスピーカSPRとウーファSPWとをリア用DSP22に接続する。2つのリアスピーカSPRとセンタスピーカSPCとを出力対象スピーカとする場合は、リア切換スイッチ24およびセンタ切換スイッチ25を切り換えて2つのリアスピーカSPRとセンタスピーカSPCとをリア用DSP22に接続する。2つのリアスピーカSPRとセンタスピーカSPCとウーファSPWとを出力対象スピーカとする場合は、リア切換スイッチ24、センタ切換スイッチ25およびウーファ切換スイッチ26を切り換えて2つのリアスピーカSPRとセンタスピーカSPCとウーファSPWとをリア用DSP22に接続する。
【0045】
ステップa5では、リア用DSP22の遅延回路22bの遅延時間および音量調整回路22cの音量を調整する。つまり、2つのリアスピーカSPRとセンタスピーカSPCとを出力対象スピーカとする場合に、これらのスピーカに与える音響信号に関して遅延時間と音量とを調整する。具体的には、リアスピーカSPRに与える音響信号をセンタスピーカSPCに与える音響信号よりも遅延させるとともに、センタスピーカSPRに与える音響信号の音量を大きくなるように設定する。これによって、リア席の乗員は、センタスピーカSPCおよびリアスピーカSPRから各再生音を最適な状態で聴くことができるようになる。最後に、ステップa6では、DVDプレーヤ11でDVDを再生して再生信号をリア用DSP22に供給させる。
【0046】
上記のステップa2においてリア席のみの再生ではないと判断した場合は、ステップa7に進む。ステップa7では、フロント席のみでの再生か否かを判断する。フロント席のみでの再生であると判断した場合は、ステップa8に進む。
【0047】
ステップa8では、フロント用DSP21に対してDVD再生時に再生信号の出力対象となるスピーカに対応するダウンミックス処理を設定する。つまり、2つのフロントスピーカSPFのみを出力対象スピーカとする場合は、5.1チャンネルを2チャンネルにするダウンミックス処理を設定する。2つのフロントスピーカSPFとウーファSPWとを出力対象スピーカとする場合は、5.1チャンネルを2.1チャンネルにするダウンミックス処理を設定する。2つのフロントスピーカSPFとセンタスピーカSPCとを出力対象スピーカとする場合は、5.1チャンネルを3チャンネルにするダウンミックス処理を設定する。2つのフロントスピーカSPFとセンタスピーカSPCとウーファSPWとを出力対象スピーカとする場合は、5.1チャンネルを3.1チャンネルにするダウンミックス処理を設定する。出力対象スピーカは、乗員によって予め設定されている。
【0048】
ステップa9では、切換スイッチを切り換えて出力対象スピーカとフロント用DSP21とを接続する。つまり、2つのフロントスピーカSPFのみを出力対象スピーカとする
場合は、フロント切換スイッチ23を切り換えて2つのフロントスピーカSPFをフロント用DSP21に接続する。2つのフロントスピーカSPFとウーファSPWとを出力対象スピーカとする場合は、フロント切換スイッチ23およびウーファ切換スイッチ26を切り換えて2つのフロントスピーカSPFとウーファSPWとをフロント用DSP21に接続する。2つのフロントスピーカSPFとセンタスピーカSPCとを出力対象スピーカとする場合は、フロント切換スイッチ23およびセンタ切換スイッチ25を切り換えて2つのフロントスピーカSPFとセンタスピーカSPCとをフロント用DSP21に接続する。2つのフロントスピーカSPFとセンタスピーカSPCとウーファSPWとを出力対象スピーカとする場合は、フロント切換スイッチ23、センタ切換スイッチ25およびウーファ切換スイッチ26を切り換えて2つのフロントスピーカSPFとセンタスピーカSPCとウーファSPWとをフロント用DSP21に接続する。最後に、ステップa10では、DVDプレーヤ11でDVDを再生して再生信号をフロント用DSP21に供給させる。
【0049】
上記のステップa7においてフロント席のみの再生ではないと判断した場合は、フロント席およびリア席の両方での再生であると判断し、切換スイッチ23〜26を切り換えてすべてのスピーカSPF,SPR,SPC,SPWとフロント用DSP21とを接続する。最後に、ステップa12では、DVDプレーヤ11でDVDを再生して再生信号をフロント用DSP21に供給させる。
【0050】
上記のステップa1においてDVDの再生指示ではないと判断した場合は、ステップa13に進む。ステップa13では、指示されたオーディオソースの再生を行う。例えば、フロント席でのCDの再生が指示された場合は、フロント切換スイッチ23を切り換えて2つのフロントスピーカSPFをフロント用DSP21に接続し、CDプレーヤ12でCDを再生して再生信号をフロント用DSP21に供給させる。また、リア席でのチューナ13の聴取が指示された場合は、リア切換スイッチ24を切り換えて2つのリアスピーカSPRをリア用DSP22に接続し、チューナ13からの再生信号をリア用DSP22に供給させる。
【0051】
ステップa14では、センタスピーカSPCを使用しているか否かを判断する。センタスピーカSPCを使用していないと判断した場合は、ステップa15に進み、センタスピーカSPCが使用可能であることを乗員に報知する。乗員への報知は、例えば操作部28を構成するディスプレイの表示画面にメッセージ文を表示することによって行われる。
【0052】
ステップa16では、センタスピーカSPCへの外部ソース出力が指示されたか否かを判断する。外部ソース出力が指示されたと判断した場合は、ステップa17に進み、センタ切換スイッチ25を切り換えてセンタスピーカSPCと外部ソースであるナビゲーション装置3とを接続して、ナビゲーション装置3からの音声信号をセンタスピーカSPCで音響化して出力させる。これによって、ナビゲーション装置3による音声案内をセンタスピーカSPCで聞くことができるようになる。
【0053】
上記第1実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)乗員がDVDと他のオーディオソースとの聴取を指示すると、各ソースの音響信号を出力するスピーカが決定され、決定されたスピーカに対応するようにDVD再生による5.1チャンネル信号にダウンミックス処理が施されて出力される。これによって、乗員が各ソースの再生音を最適な状態で聴取できるようになるとともに、ソースごとにスピーカの設定を行う必要がなくなり、利便性および操作性が向上する。
【0054】
(2)乗員がオーディオソースの聴取を指示した場合に、センタスピーカSPCが使用されていないときは外部ソースであるナビゲーション装置3からの音声信号をセンタスピ
ーカSPCから出力させることができる。これによって、例えばチューナ13などのオーディオソースを2つのフロントスピーカSPFで聴取しているときに、ナビゲーション装置3による音声案内をセンタスピーカSPCで聴くことができるようになる。
【0055】
(3)センタスピーカSPCの音量が調整されるので、リア席の乗員はDVD再生による音響信号を好適な状態で聴取することができる。
(4)リアスピーカSPRからの再生音とセンタスピーカSPCからの再生音とがほぼ同じタイミングでリア席の乗員に到達するので、リア席の乗員はDVD再生による音響信号を好適な状態で聴取することができる。
【0056】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・DVD再生による5.1チャンネル信号の場合を例にとり説明したが、マルチチャンネル信号であれば、同様に実施することができる。
【0057】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を、図3〜図5を参照しながら説明する。図3は、本発明の第2実施形態である音響再生装置の概略的構成を示すブロック図である。
【0058】
音響再生装置は、車室内の前方側に配置されるフロントスピーカSPFと、車室内の後方側に配置されるリアスピーカSPRと、車室内の前方中央部に配置されるセンタスピーカSPCと、車室内に配置されるウーファSPWと、音声出力部61a,61bを備えリア席乗員のために配置されるリア席用TVユニット6a,6bと、複数のオーディオソースを備える音源4と、音源4からの音響信号を複数のスピーカSPF,SPR,SPC,SPWおよび音声出力部61a、61bに割り当てて供給する信号処理装置5とを備えて構成される。リア席用TVユニット6a,6bが、表示装置に相当する。なお、フロントスピーカSPFは、前方右側に配置される右側フロントスピーカと、前方左側に配置される左側フロントスピーカとで構成される。また、リアスピーカSPRは、後方右側に配置される右側リアスピーカと、後方左側に配置される左側リアスピーカとで構成される。
【0059】
音源4は、オーディオソースとして、DVD再生による複合デジタル5.1チャンネル信号を出力するDVDプレーヤ41と、チューナ42とを備える。信号処理装置5は、デジタル信号処理部であるDIR(デジタルインターフェースレシーバ)51と、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)52と、デジタル/アナログ変換器(D/A変換器)53F,53R,53C,53Wと、増幅器54F,54R,54C,54Wと、ミキシング回路55と、フロント側ソース切換スイッチ56と、リア側ソース切換スイッチ57a,57bと、制御部58と、操作部59とを備えて構成される。
【0060】
DIR51は、複合デジタル5.1チャンネル信号を各チャンネル信号に分離してDSP52に出力する。DSP52は、各チャンネル信号の音量や出力タイミング(遅延時間)を調整してD/A変換器53F,53R,53C,53Wに出力する。D/A変換器53F,53R,53C,53Wは、各チャンネルのデジタル信号をアナログ信号に変換して増幅器54F,54R,54C,54Wに出力する。増幅器54F,54R,54C,54Wは、各チャンネルのアナログ信号を増幅してスピーカSPF,SPR,SPC,SPWに出力する。なお、フロントチャンネルのアナログ信号を増幅する増幅器54Fの出力は、フロント側ソース切換スイッチ56に入力される。
【0061】
ミキシング回路55は、DSP52で処理された各チャンネル信号をミキシングして出力する。本実施形態では、DSP52内にD/A変換器52aを設け、各チャンネルのデジタル信号をアナログ信号に変換してからミキシング回路55でミキシングするように構成している。どのチャンネル信号をミキシングするかは、予め設定されている。本実施形
態では、フロントチャンネル信号とセンタチャンネル信号とをミキシングするように設定されている。D/A変換器52aおよびミキシング回路55が合成部に相当している。
【0062】
フロント側ソース切換スイッチ56は、DSP52からのフロントチャンネル信号と音源4のチューナ42からの音響信号とのいずれか一方を選択してフロントスピーカSPFに供給する。リア側ソース切換スイッチ57a,57bは、ミキシング回路55からのミキシング信号と、音源4のチューナ42からの音響信号と、外部ソース入力端子T1,T2に入力される外部ソースからの音響信号とのいずれか1つを選択してリア席用TVユニット6a,6bが備える音声出力部61a,61bに供給する。制御部58は、例えばマイクロコンピュータで構成され、操作部59から入力される指示信号に基づいて、信号処理装置5全体の動作を制御するとともに、フロント側ソース切換スイッチ56およびリア側ソース切換スイッチ57a,57bを制御する。操作部59は、キースイッチや、ディスプレイにタッチパネルを重ね合わせて構成され、音響再生装置の動作内容を入力するために乗員によって操作され、指示信号を制御部58に出力する。
【0063】
リア席用TVユニット6a,6bは、音声出力部61a,61bと、液晶表示パネルなどで構成される表示部62a,62bとを備えて構成され、フロント席の背部に配置される。音声出力部61a,61bは、スピーカおよびヘッドフォンジャックで構成され、ヘッドフォンジャックにヘッドフォンを接続すると、スピーカからの出力は遮断されるように構成されている。
【0064】
図4は、音響再生装置におけるDVD再生時の処理手順を説明するためのフローチャートである。ステップb1では、制御部58は再生指示が入力されたか否かを判断する。再生指示が入力されたと判断した場合は、ステップb2に進み、フロント席とリア席とは別ソースであるか否かを判断する。別ソースであると判断した場合は、ステップb3に進み、リア席でのDVD再生であるか否かを判断する。リア席でのDVD再生であると判断した場合は、ステップb4に進む。
【0065】
ステップb4では、フロント側ソース切換スイッチ56を切り換えて指示されたオーディオソースからの出力信号がフロントスピーカSPFに供給されるように設定するとともに、リア側ソース切換スイッチ57a,57bを切り換えてミキシング回路55からの出力信号がリア席用TVユニット6a,6bの音声出力部61a,61bに供給されるように設定する。
【0066】
ステップb5では、リアスピーカSPRおよびウーファSPWの音量を予め定められている設定値よりも小さく設定する。これは、フロント席の乗員にDVDの再生音が聞こえるのをできる限り抑制して、フロント席での別ソースの聴取状態を良好に保つためである。
【0067】
ステップb6では、DVDプレーヤ41でDVDを再生して5.1チャンネル信号をDSP52に供給してリア席へのDVD再生音の出力を行うとともに、指示された別ソースの出力信号をフロントスピーカSPFに供給してフロント席への別ソース再生音の出力を行う。リア席へのDVD再生音の出力は、フロントチャンネルおよびセンタチャンネルの各チャンネル信号をリア席用TVユニット6a,6bの音声出力部(スピーカまたはヘッドフォン)61a,61bから出力させるとともに、リアチャンネルおよびウーファチャンネルの各チャンネル信号をリアスピーカSPRおよびウーファSPWからそれぞれ出力させることによって行われる。
【0068】
上記ステップb3においてリア席でのDVD再生ではないと判断した場合は、ステップb7に進み、フロント側ソース切換スイッチ56を切り換えてDSP52からの出力信号
がフロントスピーカSPFに供給されるように設定するとともに、リア側ソース切換スイッチ57a,57bを切り換えて指示されたソースからの出力信号がリア席用TVユニット6a,6bの音声出力部61a,61bに供給されるように設定する。ステップb8では、DVDプレーヤ41でDVDを再生して5.1チャンネル信号をDSP52に供給してフロント席へのDVD再生音の出力を行うとともに、指示された別ソースの出力信号をリア席用TVユニット6a,6bの音声出力部61a,61bに供給してリア席への別ソース再生音の出力を行う。
【0069】
また、上記ステップb2においてフロント席とリア席とが別ソースではないと判断した場合は、ステップb7に進み、フロント側ソース切換スイッチ56およびリア側ソース切換スイッチ57a,57bを切り換えて指示されたソースからの出力信号がスピーカSPF,SPR,SPC,SPWおよび音声出力部61a,61bに供給されるように設定する。ステップb8では、指示されたソースからの出力信号をスピーカSPF,SPR,SPC,SPWおよび音声出力部61a,61bに供給して、フロント席およびリア席への再生音の出力を行う。
【0070】
例えば、DVDを再生する場合は、フロント側ソース切換スイッチ56を切り換えてフロントスピーカSPFとDSP52とを接続し、DVDプレーヤ41から出力される5.1チャンネル信号を、フロントスピーカSPF、リアスピーカSPR、センタスピーカSPCおよびウーファSPWにそれぞれ供給して再生音を出力させるようにすればよい。また、チューナ42を聴取する場合は、フロント側ソース切換スイッチ56を切り換えてフロントスピーカSPFとチューナ42とを接続し、チューナ42から出力される出力信号をフロントスピーカSPFから出力させるようにすればよい。このとき、リア側ソース切換スイッチ57a,57bを切り換えてチューナ42とリア席用TVユニット6a,6bの音声出力部61a,61bとを接続してもよい。この場合、リア席の乗員はリア席用TVユニット6a,6bのスピーカまたはヘッドフォンでチューナ42からの出力信号を聴取することができる。
【0071】
図5は、リア席の乗員に対する割込通知時の処理手順を説明するためのフローチャートである。ステップc1では、リア席への割込要求が入力されたか否かを判断する。割込要求は、例えばフロント席の乗員が操作部59から所定の操作を行うことによって入力する。割込要求が入力されたと判断した場合は、ステップc2に進む。
【0072】
ステップc2では、リア側ソース切換スイッチ57a,57bを切り換えて外部ソース入力端子T1(またはT2)とリア席用TVユニット6a,6bの音声出力部61a,61bとを接続する。このとき、2つの音声出力部61a,61bをともに外部ソース入力端子T1(またはT2)に接続するようにしてもよいし、一方の音声出力部だけを外部ソース入力端子T1(またはT2)に接続するようにしてもよい。これによって、外部ソース入力端子T1(またはT2)から入力させる音声信号をリア席の乗員に聞かせることができる。特に、リア席の乗員がヘッドフォンで何らかのソースの出力信号を聴取しているときに有効である。例えば、マイクロフォンからの音声信号を外部ソース入力端子T1(またはT2)に入力させれば、フロント席の乗員の話声をマイクロフォンを介してリア席の乗員に伝えることができ、会話を良好に行うことができるようになる。
【0073】
また、携帯電話機の音声出力端子を外部ソース入力端子T1(またはT2)に接続すれば、リア席の乗員はヘッドフォンを着けたままで携帯電話機による通話を行うことができるようになる。この場合、携帯電話機の音声出力端子から所定の呼出音が出力されたときに、この呼出音を検出してリア側ソース切換スイッチ57a,57bを切り換えるように構成してもよい。このように構成すれば、リア席の乗員は音楽などをヘッドフォンで聴取しているときであっても、携帯電話機に着信があったことを容易に知ることができるとと
もに、そのまま通話を行うことができるようになる。
【0074】
ステップc3では、割込終了が入力されたか否かを判断する。割込終了の入力は、例えば乗員が操作部59から所定の操作を行うことによって入力する。割込終了が入力されたと判断した場合は、ステップc4に進み、リア側ソース切換スイッチ57a,57bを元に戻す。これによって、割込みによる通話等を終えたリア席の乗員は、割込前に聴取していた音楽などを引続き聴取できるようになる。
【0075】
上記第2実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)リア席の乗員がDVDソースの聴取を指示し、フロント席の乗員が他のオーディオソースの聴取を指示すると、他のオーディオソースの音響信号が2つのフロントスピーカSPFから出力され、DVD再生による5.1チャンネル信号はミキシングされてリア席用TVユニット6a,6bの音声出力部61a,61bから出力される。これによって、フロント席およびリア席の各乗員はそれぞれ好適な状態で音響信号を聴取できるようになる。
【0076】
(2)DVD再生による5.1チャンネル信号をダウンミックスした信号を音源4から信号処理装置5に与えて音声出力部61a,61bに供給するように構成すると、音源4と信号処理装置5とを接続する信号線としてダウンミックス信号用の信号線が必要となり、構成が複雑になる。これに対し、本実施形態では、ダウンミックス信号用の信号線が不要となり、構成の簡略化が可能となる。
【0077】
(3)リア席でDVDソースの音響信号を聴取する場合は、フロントチャンネル信号およびセンタチャンネル信号はリア席用TVユニット6a,6bの音声出力部61a,61bから出力され、リアチャンネル信号およびウーファチャンネル信号はそれぞれ2つのリアスピーカSPRおよびウーファSPWから出力される。これによって、リア席の乗員はDVDソースの音響信号を、音声出力部61a,61bのみから聴取する場合に比べて好適な状態で聴取することができるようになる。
【0078】
(4)リア席でDVDソースの音響信号を聴取する場合は、リア席用TVユニット6a,6bの音声出力部61a,61bに供給されるミキシング信号の音量に整合するように、リアチャンネル信号およびウーファチャンネル信号の各音量が設定される。これによって、リア席の乗員はDVDソースの音響信号をより好適な状態で聴取できるようになる。
【0079】
(5)リア席乗員への割込み要求が指示されると、外部ソースからの音響信号がリア席用TVユニット6a,6bの音声出力部61a,61bに供給され、リア席の乗員は外部ソースの音響信号を聴取できるようになる。これによって、外部ソースとして例えばマイクロフォンの音声信号を入力すれば、フロント席の乗員がリア席の乗員に話をすることができるようになり、例えば携帯電話機の音声出力端子の音声信号を入力すれば、リア席の乗員は携帯電話機による通話ができるようになる。
【0080】
なお、本実施形態は以下のように変更してもよい。
・5.1チャンネルのミキシングは、図6に示すように、DSP52内に加算回路52bを設けてデジタル信号の段階でミキシングし、ミキシングしたデジタル信号をD/A変換器52cでアナログ信号に変換した後に、リア側ソース切換スイッチ57a,57bに与えるようにしてもよい。このように、DSP52の構成に応じて、デジタル信号の段階でミキシングしてからアナログ信号に変換してもよいし、アナログ信号に変換してからミキシングしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の第1実施形態である音響再生装置の概略的構成を示すブロック図。
【図2】音響再生装置におけるDVD再生時の処理手順を説明するためのフローチャート。
【図3】本発明の第2実施形態である音響再生装置の概略的構成を示すブロック図。
【図4】音響再生装置におけるDVD再生時の処理手順を説明するためのフローチャート。
【図5】リア席の乗員に対する割込通知時の処理手順を説明するためのフローチャート。
【図6】チャンネル信号をデジタル信号の段階でミキシングする場合の構成例を示すブロック図。
【符号の説明】
【0082】
1,4…音源、2,5…信号処理装置、3…ナビゲーション装置、6a,6b…リア席用TVユニット、11,41…DVDプレーヤ、12…CDプレーヤ、13,42…チューナ、21…フロント用DSP、21a,22a…デコード回路、21b,22b…遅延回路、21c,22c…音量調整回路、22…リア用DSP、23…フロント切換スイッチ、24…リア切換スイッチ、25…センタ切換スイッチ、26…ウーファ切換スイッチ、27,58…制御部、28,59…操作部、51…DIR、52…DSP、52a,52c…D/A変換器、52b…加算回路、53F,53R,53C,53W…D/A変換器、54F,54R,54C,54W…増幅器、55…ミキシング回路、56…フロント側ソース切換スイッチ、57a,57b…リア側ソース切換スイッチ、61a,61b…音声出力部、62a,62b…表示部、SPF…フロントスピーカ、SPR…リアスピーカ、SPC…センタスピーカ、SPW…ウーファ、T1,T2…外部ソース入力端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のオーディオソースを備える音源と、前記音源からの音響信号を複数のスピーカに割り当てて供給する信号処理手段とを備える音響再生装置であって、
前記信号処理手段は、2以上のオーディオソースの聴取が指示され、1つのオーディオソースの音響信号が5.1チャンネル信号である場合は、指示された他のオーディオソースの音響信号が割り当てられていない残余のスピーカに対応するように、前記5.1チャンネル信号にダウンミックス処理を施し、処理後のチャンネル信号を前記残余のスピーカに供給することを特徴とする音響再生装置。
【請求項2】
前記信号処理手段は、5.1チャンネル信号を供給する複数のスピーカの配置に基づいて、各スピーカの音量を整合するように設定することを特徴とする請求項1に記載の音響再生装置。
【請求項3】
前記信号処理手段は、5.1チャンネル信号を供給する複数のスピーカの配置に基づいて、各スピーカへの音響信号を供給するタイミングを調整することを特徴とする請求項1または2に記載の音響再生装置。
【請求項4】
音声出力部を備えた表示装置と、複数のオーディオソースを備える音源と、前記音源からの音響信号を複数のスピーカおよび前記音声出力部に割り当てて供給する信号処理手段とを備える音響再生装置であって、
前記音源は、複合デジタル5.1チャンネル信号を出力するソースを有し、
前記信号処理手段は、前記複合デジタル5.1チャンネル信号を各チャンネル信号に分離して所定の処理を施して出力するデジタル信号処理部と、前記デジタル信号処理部から出力される各チャンネル信号をアナログ信号に変換して複数の前記スピーカに供給するデジタル/アナログ変換器と、前記デジタル信号処理部で分離された各チャンネル信号をミキシングして出力する合成部と、前記デジタル信号処理部からのフロントチャンネル信号と前記音源のオーディオソースからの音響信号とを選択してフロントスピーカに供給するフロント側ソース切換スイッチと、前記合成部からのミキシング信号と前記音源のオーディオソースからの音響信号とを選択して前記表示装置が備える音声出力部に供給するリア側ソース切換スイッチと、前記フロント側ソース切換スイッチおよび前記リア側ソース切換スイッチを制御する制御部とを備え、
前記制御部は、複数のソースの聴取が指示された場合、前記リア側ソース切換スイッチを切り換えて前記合成部からのミキシング信号を前記表示装置が備える音声出力部に供給すること特徴とする音響再生装置。
【請求項5】
前記合成部は、フロントチャンネル信号とセンタチャンネル信号とをミキシングして出力し、
前記デジタル信号処理部は、リアチャンネル信号をリアスピーカに供給し、ウーファチャンネル信号をウーファに供給することを特徴とする請求項4記載の音響再生装置。
【請求項6】
前記デジタル信号処理部は、前記表示装置の音声出力部に供給されるミキシング信号の音量に整合するようにリアチャンネル信号およびウーファチャンネル信号の各音量を設定することを特徴とする請求項5記載の音響再生装置。
【請求項7】
前記リア側ソース切換スイッチは、外部ソースからの音響信号を入力し、
前記制御部は、前記音声出力部への割込要求が指示されたときは、前記リア側ソース切換スイッチを切り換えて前記外部ソースからの音響信号を前記表示装置の音声出力部に供給することを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の音響再生装置。
【請求項8】
前記合成部は、前記デジタル信号処理部で分離されたデジタル信号をミキシングしてからアナログ信号に変換して出力することを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載の音響再生装置。
【請求項9】
前記合成部は、前記デジタル信号処理部で分離されたデジタル信号をアナログ信号に変換してからミキシングして出力することを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載の音響再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−287574(P2006−287574A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−104259(P2005−104259)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】