音響改善部材およびオーディオルーム
【課題】音響を重視する部屋において、音響特性の改善を図ることが可能な音質改善部材およびオーディオルームを提供すること。
【解決手段】二方向または三方向が構造体10を構成する構造面11,12,13で囲まれる境界部分14,15に設置され、これらの構造面11,12,13に接触する位置決め部201,301を具備すると共に、位置決め部201,301が構造面11,12,13に接触して位置決めが為されている状態で、二方向または三方向の構造面11,12,13に対して、傾斜する部分が存在する傾斜面21,31を有し、この傾斜面21,31での音の反射または吸収により、構造体10の内部における音響が改善される効果を奏する。
【解決手段】二方向または三方向が構造体10を構成する構造面11,12,13で囲まれる境界部分14,15に設置され、これらの構造面11,12,13に接触する位置決め部201,301を具備すると共に、位置決め部201,301が構造面11,12,13に接触して位置決めが為されている状態で、二方向または三方向の構造面11,12,13に対して、傾斜する部分が存在する傾斜面21,31を有し、この傾斜面21,31での音の反射または吸収により、構造体10の内部における音響が改善される効果を奏する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響改善部材およびオーディオルームに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オーディオ装置のスピーカから再生される音楽を楽しむため、或いはオーディオビジュアル装置のスピーカから再生される映像および音を楽しむために、ホームシアタールーム、またはホームオーディオルーム等のような部屋(以下、オーディオルームとする。)を設けるユーザが多く存在する。
【0003】
かかるオーディオルームにおいては、ユーザは、高音質の音を聴取できることを望んでいる。ところで、スピーカが設置されるオーディオルームにおいては、床や壁等から反射音や定在波が発生する。そして、これら反射音や定在波が強すぎると、スピーカから発生する音に対して、悪影響を及ぼすことが知られている。
【0004】
従って、このような反射音や定在波等が強すぎる場合、それに対応するために、現状の一般的な対策としては、オーディオルームを構成する壁の所望の位置に、反射板を設置したり、吸音板を設置している。そして、これら反射板、吸音板等により、オーディオルームの音響効果に悪影響を及している、定在波を除去したり、当該定在波を適宜に減衰したり、反射させている。
【0005】
なお、かかる吸音材の設置に関する先行技術としては、特許文献1〜3に開示されているものがある。この特許文献1〜3には、壁の所定の部位に、音響キャビネットを設置している構成が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平5−148919(各図面参照)
【特許文献2】特開平5−134680(各図面参照)
【特許文献3】特開平5−134681(各図面参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、オーディオルームのある位置に設置されているスピーカから発生する音が、オーディオルームを構成する壁や床、天井等の境界部分(特に、コーナ部分)に到達し、その境界部分に残留し、その境界部分が反射音や定在波の発生源となることは周知のところである。この場合、境界部分においては、複雑な反射音が構成され、人に不快感を与える音、いわゆる濁った音が形成され易い。また、かかる境界部分は、スピーカから発生する本来の音に対して、悪影響を及ぼす箇所であることも、周知となっている。
【0008】
ここで、特許文献1〜3に開示されている手法では、壁の所定の部位に、音響キャビネットを設置して、音響特性の改善を図ろう、としている。しかしながら、これら特許文献1〜3に開示されている構成は、オーディオルームの境界部分における定在波を、十分に考慮して設置されてはいない。そのため、オーディオルームの境界部分においては、定在波の発生が、十分には解消されていない。
【0009】
また、上述の特許文献1〜3に開示されている手法以外の、境界部分における音響の対策としては、所望の寸法に裁断した反射板等を境界部分に立てかけたり、吸音材を所望の寸法に裁断して貼り付けたり、吸音材を筒状に丸めて立てかける等の手法がある。しかしながら、これらのうち、吸音材を貼り付けた構成は、特許文献1〜3に開示されている手法と類似しており、境界部分における定在波を解消するには不十分である。また、裁断した反射板を境界部分に立てかけたり、吸音材を筒状に丸めて立てかける場合には、当該反射板や吸音材が不安定な設置状態となると共に、境界部分から発生する定在波を解消(音響特性の改善)は、限定的となっている。
【0010】
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、その目的とするところは、音響を重視するオーディオルームにおいて、音響特性の改善を図ることが可能な音質改善部材およびオーディオルームを提供しよう、とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、二方向または三方向が構造体を構成する構造面で囲まれる境界部分に設置され、これらの構造面に接触する位置決め部を具備すると共に、位置決め部が構造面に接触して位置決めが為されている状態で、二方向または三方向の構造面に対して、傾斜する部分が存在する傾斜面を有し、この傾斜面での音の反射または吸収により、構造体の内部における音響が改善されるものである。
【0012】
また、他の発明は、上述の発明に加えて更に、位置決め部は、三方向における位置決めを行うものであり、該位置決め部は、構造体に面接触する接触面であり、これら三方向の接触面は立方体を構成すると共に、傾斜面は、この立方体のうち境界部分の交差点に位置する頂点の対角位置に位置する頂点を中心として、該立方体の一部を切り欠いた形状に形成されているものである。
【0013】
さらに、他の発明は、上述の発明に加えて更に、傾斜面は、対角位置に位置する頂点を中心として、球面状に切り欠いた形状に形成されているものである。
【0014】
また、他の発明は、上述の発明に加えて更に、傾斜面は、対角位置に位置する頂点を中心として、平面状に切り欠いた形状に形成されているものである。
【0015】
さらに、他の発明は、上述の各発明に加えて更に、位置決め部は、二方向における位置決めを行うものであり、該位置決め部は、構造体に面接触する接触面であり、これら二方向の接触面は直方体を構成すると共に、傾斜面は、この直方体のうち境界部分の交差線に位置する側辺の対角位置に位置する側辺を中心として、該直方体の一部を切り欠いた形状に形成されているものである。
【0016】
また、他の発明は、上述の各発明に加えて更に、傾斜面は、対角位置に位置する側辺を中心線として、円筒面状に切り欠いた形状に形成されているものである。
【0017】
さらに、他の発明は、傾斜面は、平面状に切り欠いた形状に形成されているものである。
【0018】
また、他の発明は、上述の各発明に加えて更に、圧縮可能な弾性部材によって形成されていると共に、圧縮時には接触面が構造面に対して圧力を及ぼし、この圧力が及ぼされている場合の弾性反発力により、境界部分に係止されるものである。
【0019】
さらに、他の発明は、弾性部材は、気泡を多数有する発泡樹脂から形成されているものである。
【0020】
また、他の発明は、上述の各発明に加えて更に、音の反射率が異なる一方の材質と他方の材質とによって形成されていると共に、傾斜面は、一方の材質または他方の材質のいずれかによって覆われているものである。
【0021】
さらに、他の発明は、傾斜面には、植毛が為されているものである。
【0022】
また、他の発明は、上述の各発明係る音響改善部材が、境界部分に配置されているオーディオルームである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、音響を重視するオーディオルームにおいて、音響特性の改善を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態に係る音響改善部材としての立方部材20と直方部材30、および音響改善部材を具備するオーディオルーム10(立方部材20と直方部材30が配置されるオーディオルーム10)について、図1から図9に基づいて説明する。
【0025】
なお、以下の説明においては、上側とは、後述する天井面13側を指すものとすると共に、下側とは、後述する床面12側を指すものとする。
【0026】
図1〜図3に、本実施の形態に係る、音響改善部材としての立方部材20を示す。これら図1〜図3に示す立方部材20は、その材質を、発泡ウレタン、発泡スチロール等のような、発泡樹脂から構成されている。しかしながら、立方部材20の材質は、これらには限られず、例えば木質系・繊維系の部材を材質としたり、金属を材質としても良い。また、発泡樹脂は、多数の気泡を有しているため、体積は大きいにも拘わらず、重量はさほど大きくはなっていない。
【0027】
本実施の形態の立方部材20は、その外観が、立方体Rの一部を切り欠いた形状に形成されている。すなわち、立方部材20は、立方体R(図1参照)の1つの頂点Pを中心として、当該立方体Rを球面状に切り欠いた形状に設けられている。なお、立方部材20のうち、球面状に切り欠かれることにより形成される曲面は、反射面21となっており、この反射面21の存在により、後述するように定在波を解消することが可能となっている。なお、反射面21は、傾斜面に対応する。
【0028】
ここで、本実施の形態では、球面状の一部となっている反射面21の中心である頂点Pまでの距離(球面の半径に対応;図1参照)よりも、立方体Rの一辺の長さ寸法の方が、長くなるように設けられている。そのため、図1等に示すように、立方部材20のうち、立方体Rの頂点Pを通る側辺には、反射面21と交差する部位(交差部位21z)が存在する。そして、この交差部位21zと、側辺の他の頂点との間には、側辺の残りの部分である、平坦部22が設けられる。
【0029】
なお、立方部材20の寸法の例示としては、立方体Rの長さ寸法が400mmである場合、反射面21から頂点Pまでの長さ寸法(球の半径)が388mmとする場合があり、この半径の球面によって立方体Rを切り欠いた状態に、反射面21が設けられる場合がある。この場合、平坦部22の長さ寸法は、12mmとなる。また、本実施の形態では、上述のように、平坦部22が存在する状態で、立方体Rを球面で切り欠いている。このため、8つの反射面21が滑らかに連なる状態で、立方部材20を連結すると、1つの球面を構成するように設けられている。
【0030】
また、立方部材20には、上述の反射面21と交差しない、正方形の状態を維持している側面(以下、この面を正方面201とする。)が存在している。本実施の形態では、平坦部22は、頂点Pを通る3つの側辺にそれぞれ存在している。そのため、立方部材20には、反射面21の交差と関係しない、正方面201が3つ存在している。なお、この正方面201は、壁面11、床面12、または天井面13に接触する部分であり、位置決め部および接触面に対応する。
【0031】
次に、音響改善部材としての直方部材30について、図4〜図6に基づいて説明する。本実施の形態における直方部材30も、上述の立方部材20と同様に、その材質が発泡ウレタン、発泡スチロール等のような、発泡樹脂から構成されている。しかしながら、上述の立方部材20と同様に、直方部材30の材質は、これらには限られず、例えば木質系・繊維系の部材を材質としたり、金属を材質としても良い。
【0032】
また、直方部材30は、底面が正方形となる直方体Cの一部を切り欠いた形状に形成されている。すなわち、直方部材30は、直方体Cの1つの頂点Qを通る線を中心軸線Lとして、当該直方体Cを円筒状に切り欠いた形状に設けられている。なお、この直方部材30のうち、円筒面状に切り欠かれることにより形成される曲面は、反射面31となっており、この反射面31の存在により、後述するように定在波が解消可能となっている。なお、この反射面31も、傾斜面に対応する。
【0033】
ここで、本実施の形態では、反射面31の中心軸線Lまでの距離(円筒面の半径に対応)よりも、直方体Cの底面の一辺の長さ寸法の方が、長くなるように設けられている。そのため、この直方部材30においても、上述の立方部材20と同様に、反射面31と交差する部位(交差部位31z;4つ存在)が存在する。そして、この交差部位31zと、側辺の他の頂点との間には、側辺の残りの部分である、平坦部32が設けられる。
【0034】
また、この直方部材30には、反射面31以外に、2つの直方面301が存在している。この直方面301は、上述の反射面31と交差せずに、長方形状の状態を維持している側面である。本実施の形態では、この直方面301は、2つ存在している。なお、この直方面301は、位置決め部および接触面に対応する。
【0035】
なお、この直方部材30の寸法の一例としては、底面の側辺(交差部位31zが存在しない側辺)の長さ寸法が400mmであると共に、直方面301の長手方向の側辺の長さ寸法を1000mmとする場合がある。ここで、直方部材30の長手方向における長さ寸法は、例えばオーディオルーム10の大きさ、設置しやすさ等に応じて、種々変更することが可能である。
【0036】
また、この場合において、反射面31から中心軸線Lまでの長さ寸法(円筒面の半径)が388mmとする場合があり、この半径の円筒面によって直方体Cを切り欠いた状態に、反射面31が設けられる場合がある。この場合、平坦部32の長さ寸法は、12mmとなる。
【0037】
以上のような立方部材20、および直方部材30を、部屋(オーディオルーム10)に設置する場合について、以下に説明する。
【0038】
図7〜図9に示すように、立方部材20は、構造体としてのオーディオルーム10の内部のうち、2つの壁面11と、床面12または天井面13との交差部位(これらが交わる部位が交差点に対応)である、コーナ部分14に配置される。この場合、立方部材20のうち、正方面201が、それぞれ壁面11、床面12または天井面13に、面接触する状態で配置される。なお、かかる3面が面接触する状態で、立方部材20を配置すると、反射面21がオーディオルーム10の中央側を向く状態となる。ここで、壁面11、床面12および天井面13は、それぞれ構造面に対応する。
【0039】
また、オーディオルーム10の内部には、直方部材30も配置される。この直方部材30は、上述のコーナ部分14に連続する、隅部15に配置される。なお、ここでいう隅部15とは、壁面11と床面12とが例えば互いに略90度を為して交差する境界部分(交差する境界線は交差線に対応)、または2つの壁面11が交差する境界部分(交差する境界線は交差線に対応)、または壁面11と天井面13とが交差する境界部分(交差する境界線は交差線に対応)をいう。このとき、反射面21が交差していない2つの直方面が、それぞれ上述の各面に対して面接触する状態で配置される。
【0040】
ここで、立方部材20および直方部材30が、弾力性を有し、かつ軽量の材質(発泡ウレタン、発泡スチロール等)から構成されている場合、この立方部材20および直方部材30に押圧力を及ぼして圧縮し、配置される場所においてその圧縮状態を開放する。すると、圧縮状態の開放により、立方部材20および直方部材30は、圧縮された状態から戻ろうとする、いわゆるスプリングバック力(弾性反発力)を壁面11等に及ぼす。この場合、立方部材20および直方部材30は、接着テープ等の接着手段を用いなくても、コーナ部分14および隅部15に保持させることが可能となっている。
【0041】
すなわち、正方面201または直方面301と、壁面11、床面12、または天井面13との間には、スプリングバック力によって、摩擦力が生じる。そして、この摩擦力が、立方部材20および直方部材30に生じる重力に抗することが可能である場合(摩擦力に比して、立方部材20および直方部材30が十分に軽量である場合)、当該立方部材20および直方部材30は、接着手段を用いなくても、設置箇所に保持可能となる。
【0042】
なお、上述のスプリングバック力に関しては、立方部材20と直方部材30とが同一の圧縮率である場合には、直方部材30の方が、接触面積が大きく、壁面11等に対して安定的な状態で接触する。また、直方部材30の方が、接触面積が大きくなることにより、スプリングバック力による摩擦力が強く作用する。このため、直方部材30の方が、外部からの力に対して、抗する力を強くすることが可能となる。
【0043】
ここで、上述のスプリングバック力を強くするためには、圧縮される部分の側辺同士が交差して為す角度が鈍角を為すように、立方部材20および直方部材30を構成しても良い。この場合、鈍角を為す側辺は、必ずしも直線状に設けられる必要はなく、弧状等、湾曲していても良い。
【0044】
また、壁面11、床面12および天井面13の材質、または立方部材20および直方部材30の材質によっては、十分なスプリングバック力が得られない場合がある。この場合には、立方部材20および直方部材30の両方を、例えば粘着テープ、面ファスナー等の接着手段、壁面11等にネジ固定される専用の金具を用いるようにして、保持させるようにしても良い。
【0045】
ここで、オーディオルーム10に存在するコーナ部分14および隅部15には、立方部材20および直方部材30が、隙間を有する状態で配置されていても良い。この状態を図7に示す。しかしながら、音響効果をより高めるためには、オーディオルーム10に存在するコーナ部分14および隅部15には、立方部材20および直方部材30が、隙間なく配置されるのが好ましい。この状態を図8に示す。
【0046】
なお、コーナ部分14および隅部15のうち、特に床面12と壁面11とが境界を為す部分では、金属等のような重い材質の立方部材20または直方部材30であっても、容易に設置することが可能である。
【0047】
このような構成の立方部材20および直方部材30、およびこれらを用いたオーディオルーム10においては、オーディオルーム10のコーナ部分14に立方部材20を配置することにより、この立方部材20の反射面21によって、コーナ部分14や隅部15に滞留しがちな定在波を、オーディオルーム10の中央部側に向けて反射させることが可能となる。そのため、オーディオルーム10のコーナ部分14に、例えば定在波等のような人に対して不快感を与える音が残留するのを防ぐことが可能となる。それにより、音を聴取している人の心地良さを増大させることが可能となり、音響効果を高めることが可能となる。
【0048】
特に、コーナ部分14のような、最も複雑な反射音が構成される部位に、立方部材20を配置することにより、音響効果を高めることが可能となっている。また、隅部15にも直方部材が配置されることにより、音響効果を一層高めることが可能となっている。
【0049】
また、本実施の形態では、反射面21は、球面の一部を構成するように設けられている。そのため、例えば壁面11と床面12との間、壁面11と天井面13との間、または壁面11同士の間の傾斜角度の変化が滑らかになり、音を滞留させずに良好に反射させることが可能となる。加えて、本実施の形態では、反射面31は、円筒面の一部を構成するように設けられている。この場合も、例えば壁面11と床面12との間、壁面11と天井面13との間、または壁面11同士の間の傾斜角度の変化が滑らかになり、音を滞留させずに良好に反射させることが可能となる。
【0050】
また、立方部材20および直方部材30を設置することにより、従来よりもオーディオルーム10の中心側に向けて音を多く反射させることが可能となり、それによって音響効果を高めることが可能となる。
【0051】
また、本実施の形態では、立方部材20および直方部材30は、弾力性を有する弾性部材から構成されている。そのため、これら立方部材20および直方部材30を圧縮し、その圧縮状態を開放すれば、立方部材20および直方部材30は、いわゆるスプリングバック力を壁面11等に及ぼす。それにより、立方部材20および直方部材30は、接着テープ等の接着手段を用いなくても、コーナ部分14および隅部15に保持させることが可能となる。また、接着テープ等の接着手段を用いる場合でも、上述のスプリングバック力を、接着の補助力として利用することが可能となる。それにより、立方部材20および直方部材30の保持状態(接着状態)を、長期に亘ってずれを防止しつつ良好に保つことが可能となる。
【0052】
また、本実施の形態では、立方部材20および直方部材30は、例えば発泡スチロールや発泡ウレタンのような、気泡を多数有する発泡樹脂によって形成されている。そのため、これら立方部材20および直方部材30は軽量となり、立方部材20および直方部材30の保持状態(接着状態)を、一層長期に亘って良好に保つことが可能となる。また、立方部材20および直方部材30が軽量であるため、例えば粘着テープや面ファスナーのような接着手段を用いた場合でも、コーナ部分14や隅部15に、容易に固定させることが可能となる。また、コーナ部分14や隅部15に、専用の金具を用いて立方部材20および直方部材30を固定させる場合でも、当該金具を極めて小型のものにすることが可能となる。
【0053】
(第2の実施の形態)
以下、本発明の第2の実施の形態について、図10から図17に基づいて説明する。なお、本実施の形態では、上述の第1の実施の形態で述べたのと同様の部材については、同一の符号を用いて説明する。
【0054】
本実施の形態では、図10〜図12に示すような、音響改善部材としての立方部材20Aおよび直方部材30Aを用いている。これらのうち、立方部材20Aは、上述の立方部材20とは異なる反射面21A(傾斜面に対応)を備えている。ここで、第1の実施の形態における反射面21は、球面状に設けられているのに対して、本実施の形態の反射面21Aは、平面状に設けられている。また、本実施の形態においても、立方体Rの頂点Pを通る側辺には、反射面21Aと交差する部位(交差部位21z)が存在する。そのため、交差部位21zと、側辺の他の頂点との間には、側辺の残りの部分である、平坦部22が設けられる。
【0055】
なお、平坦部22が互いに接触する状態で、上述の立方部材20Aを多数連結すると、反射面21Aを各面とする立方体が形成される。
【0056】
また、図13〜図15に示すように、本実施の形態の直方部材30Aも、上述の立方部材20Aと同様の、平面状の反射面31A(傾斜面に対応)を有している。この直方部材30Aは、底面が正方形となる直方体Cの1つの頂点Qを通る線を中心軸線Lとする、底面が正方形の四角柱によって切り欠いた形状に形成されている。なお、この場合、頂点Qを通る側辺は、四角柱の対角線に沿うように設けられている。
【0057】
また、本実施の形態の直方体30Aにおいても、反射面31Aと交差する部位(交差部位31z)が存在する。そして、この交差部位31zと、側辺の他の頂点との間には、側辺の残りの部分である、平坦部32が設けられる。
【0058】
また、上述の立方部材20Aおよび直方部材30Aを設置する手法は、上述の立方部材20および直方部材30を設置する場合と同様である。なお、図16には、立方部材20Aおよび直方部材30Aが、隙間を有して配置されている状態を示す。また、図17には、立方部材20Aおよび直方部材30Aが、互いに密着して配置されている状態を示す。
【0059】
このような構成の立方部材20Aおよび直方部材30Aによっても、上述の立方部材20および直方部材30と同様に、反射面21A,31Aによって、コーナ部分14や隅部15に滞留しがちな定在波を、オーディオルーム10の中央部側に向けて反射させることが可能となる。そのため、オーディオルーム10のコーナ部分14や隅部に、例えば定在波等のような人に対して不快感を与える音が残留するのを防ぐことが可能となる。それにより、音を聴取している人の心地良さを増大させることが可能となり、音響効果を高めることが可能となる。
【0060】
また、本実施の形態では、反射面21A,31Aは、平面状に設けられている。そのため、立方部材20A、直方部材30Aは、上述の立方部材20および直方部材30と比較して、形成し易くなる。すなわち、例えば直方体を斜めに切断することにより、反射面21A,31Aを形成することが可能となり、反射面21,31のように、曲面状に形成されている場合と比較して、形成する手法が多くなり、形成が容易となる。
【0061】
(第3の実施の形態)
以下、本発明の第3の実施の形態について、図18および図19に基づいて説明する。なお、本実施の形態では、上述の第1の実施の形態で述べたのと同様の部材については、同一の符号を用いて説明する。
【0062】
なお、以下の説明においては、シート状部材40を貼り付ける前の立方部材および直方部材(母材としての立方部材および直方部材)を、それぞれ立方部材20Cおよび直方部材30Cとする。また、以下の説明においては、シート状部材40を貼り付ける前の立方部材20Cおよび直方部材30Cの反射面を、それぞれ反射面21Cおよび反射面31Cとする。
【0063】
本実施の形態における、音響改善部材としての立方部材20B(図18参照)および直方部材30B(図19参照)においては、反射面21B,31Bの構成が、上述の第1の実施の形態で述べたものとは相違している。すなわち、上述の第1の実施の形態においては、立方部材20は、例えば発泡ウレタン、発泡スチロール等の如き発泡樹脂のような、単一の材質から構成されている。
【0064】
しかしながら、本実施の形態における立方部材20においては、母材としての立方部材20Cの反射面21Cにシート状部材40を貼り付けることによって、反射面21Bを形成している。また、母材としての直方部材30Cの反射面31Cにシート状部材40を貼り付けることによって、反射面31Bを形成している。
【0065】
ここで、シート状部材40は、例えばシート状に形成されている木質系・繊維系の部材(例えば、突板と称されている木材(厚さの寸法例:0.5mm)、紙等)、シート状に形成されているアルミニウム等の金属箔(金属板;アルミニウム板の寸法例:0.3mm)、各種の樹脂シート等を用いることが可能である。また、立方部材20Cおよび直方部材30Cは、上述の第1の実施の形態における立方部材20、直方部材30等と同様に、その材質を、発泡ウレタン、発泡スチロール等のような、発泡樹脂から構成されている。しかしながら、立方部材20Cおよび直方部材30Cの材質は、これらには限られず、例えば木質系・繊維系の部材を材質としたり、金属を材質としても良い。
【0066】
なお、シート状部材40を貼付する前の反射面21C,31Cと、シート状部材40を貼付した後の反射面21B,31Bとでは、音に対する表面反射率が異なっている。
【0067】
ここで、立方部材20Bおよび直方部材30Bにおいては、貼付するシート状部材40を、所定の表面反射率を有する材質に適宜変更することが可能である。例えば、壁面11と床面12との間のコーナ部分14においては、表面反射率xのシート状部材40が貼付された立方部材20Bを設置すると共に、壁面11と天井面13との間の隅部15においては、表面反射率yのシート状部材40が貼付された直方部材30Bを設置する等の場合が挙げられる。このように、オーディオルーム10の内部では、種々のシート状部材40を貼付することにより、場所ごとに、表面反射率を変更された立方部材20Bおよび直方部材30Bを設置可能である。
【0068】
このような構成の立方部材20Bおよび直方部材30Bによっても、上述の立方部材20,20Aおよび直方部材30,30Aと同様に、反射面21B,31Bによって、コーナ部分14や隅部15に滞留しがちな定在波を、オーディオルーム10の中央部側に向けて反射させることが可能となる。そのため、オーディオルーム10のコーナ部分14や隅部15に、例えば定在波等のような人に対して不快感を与える音が残留するのを防ぐことが可能となる。それにより、音を聴取している人の心地良さを増大させることが可能となり、音響効果を高めることが可能となる。
【0069】
加えて、本実施の形態では、オーディオルーム10の内部において、場所に応じて適切な表面反射率を有するシート状部材40が貼付された立方部材20Bおよび直方部材30Bを設置することが可能となる。そのため、上述の第1の実施の形態および第2の実施の形態の構成と比較して、立方部材20Bおよび直方部材30Bにおいては、表面反射率がただ1つに限定されなくなり、オーディオルーム10の各部位において、自由に設定することが可能となる。
【0070】
それにより、オーディオルーム10における表面反射率を、自由に、きめ細かに設定することが可能となる。それにより、リスナーが所望する音響効果を実現することが可能となり、リスナーの心地よさを高めることが可能となり、リスナーは高い満足感を得ることが可能となる。
【0071】
以上、本発明の第1〜第3の実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
【0072】
上述の第1の実施の形態では、反射面21は、球面の一部を為すように設けられると共に、反射面31は、円筒面の一部を為すように設けられている。また、上述の第2の実施の形態では、反射面21Aおよび反射面31Aは、平面状に設けられている。しかしながら、反射面は、球面の一部、円筒面の一部、平面状に設けられる場合には限られず、種々の自由曲面とすることが可能である。
【0073】
また、上述の第1の実施の形態における反射面21,31は、曲面状かつ凹面状に形成されている。しかしながら、反射面21,31は、例えば多面体状のように、曲面状以外の凹面状に形成されるように構成しても良い。
【0074】
また、上述の実施の形態では、構造体としては、オーディオルーム10に関して説明している。しかしながら、構造体は、オーディオルーム10には限られない。オーディオルーム10以外の構造体としては、自動車、航空機、船舶等のような、内部空間に人が滞在することが可能なものが挙げられる。
【0075】
さらに、上述の各実施の形態では、平坦部22,32が存在する立方部材20,20A,20Bおよび直方部材30,30A,30Bについて説明している。しかしながら、立方部材20,20A,20Bおよび直方部材30,30A,30Bには、平坦部22が設けられていなくても良い。特に、直方部材30Aにおいては、平坦部22が存在しない場合には、直方体Cを、長手方向に沿う側辺を通ると共に、対角線方向に向かう平面で切断すると、当該直方体Cから2つの直方部材30Aを形成することが可能となる。
【0076】
また、上述の第3の実施の形態では、反射面21C,31Cには、シート状部材40が貼り付けられている。しかしながら、反射面21Cおよび反射面31Cには、シート状部材40以外のものが取り付けられていても良い。例えば、反射面21Cおよび反射面31Cには、植毛を施すように構成しても良く、その他、反射面21Cおよび反射面31Cに、塗装を施すようにしても良い。反射面21Cおよび反射面31Cに、植毛を施す場合、当該反射面21Cおよび反射面31Cに、直接植毛を施すようにしても良く、その他、既に植毛が施されているシート状部材を、反射面21Cおよび反射面31Cに接着するようにしても良い。
【0077】
なお、反射面21Cおよび反射面31Cに、塗装を施す場合、塗料を適宜に選択したり、当該塗料に例えばセラミックス粉末等のような硬質な材料を適宜の量だけ混入する等の手法を用いるようにしても良い。このようにすれば、混入する材料の量を変更すると、表面反射率を適宜かつ自由に変更(調整)することが可能となる。
【0078】
また、上記のように、セラミックス粉末等を代表とする硬質な材料は、表面反射率を、母材たる立方部材20Cおよび直方部材30Cのみから構成される場合よりも、上昇させる効果がある。しかしながら、例えば連続発泡のウレタン等のような、母材よりも柔軟な材料を、反射面21Cおよび反射面31Cに塗布する場合には、表面反射率を、母材たる立方部材20Cおよび直方部材30Cよりも低くすることが可能となる。このような柔軟な材料を、反射面21Cおよび反射面31Cに塗布する場合、表面反射率が低いことにより、反射面21Cおよび反射面31Cでは、定在波を反射させる効果よりも、減衰させる効果が高くなる。
【0079】
また、上記のように、反射面21Cおよび反射面31Cに、植毛を施す場合にも、母材たる立方部材20Cおよび直方部材30Cよりも、表面反射率を低くすることが可能となる。
【0080】
また、上述の塗料には、ガラスビーズ、ブラスト材といった種々の材料を、適宜の量だけ混入させた後に、反射面21Cおよび反射面31Cに塗布するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、音響関連の分野において利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る立方部材の構成を示す斜視図である。
【図2】図1の立方部材の構成を示す平面図である。
【図3】図1の立方部材の構成を示す側面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る直方部材の構成を示す斜視図である。
【図5】図4の直方部材の構成を示す正面図である。
【図6】図4の直方部材の構成を示す側面図である。
【図7】図1の立方部材および図4の直方部材を配置する状態を示し、立方部材と直方部材とが互いに隙間を有する状態で配置されている状態を示す斜視図である。
【図8】図1の立方部材および図4の直方部材を配置する状態を示し、立方部材と直方部材とが互いに密着する状態で配置されている状態を示す斜視図である。
【図9】図1の立方部材および図4の直方部材が境界部分に隙間なく配置されている状態を示すと共に内部を透視して示すオーディオルームの斜視図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る立方部材の構成を示す斜視図である。
【図11】図10の立方部材の構成を示す平面図である。
【図12】図10の立方部材の構成を示す側面図である。
【図13】本発明の第1の実施の形態に係る直方部材の構成を示す斜視図である。
【図14】図13の直方部材の構成を示す正面図である。
【図15】図13の直方部材の構成を示す側面図である。
【図16】図10の立方部材および図13の直方部材を配置する状態を示し、立方部材と直方部材とが互いに隙間を有する状態で配置されている状態を示す斜視図である。
【図17】図10の立方部材および図13の直方部材を配置する状態を示し、立方部材と直方部材とが互いに密着する状態で配置されている状態を示す斜視図である。
【図18】本発明の第3の実施の形態に係る立方部材を形成する過程を示す斜視図である。
【図19】本発明の第3の実施の形態に係る直方部材を形成する過程を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0083】
10…オーディオルーム(構造体に対応)
11…壁面(構造面に対応)
12…床面(構造面に対応)
13…天井面(構造面に対応)
14…コーナ部分(境界部分に対応)
15…隅部(境界部分に対応)
20,20A,20B,20C…立方部材
21,21A,21B,21C…反射面(傾斜面に対応)
22…平坦部
30,30A,30B,30C…直方部材
31,31A,31B,31C…反射面(傾斜面に対応)
32…平坦部
40…シート状部材
201…正方面(位置決め部および接触面に対応)
301…直方面(位置決め部および接触面に対応)
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響改善部材およびオーディオルームに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オーディオ装置のスピーカから再生される音楽を楽しむため、或いはオーディオビジュアル装置のスピーカから再生される映像および音を楽しむために、ホームシアタールーム、またはホームオーディオルーム等のような部屋(以下、オーディオルームとする。)を設けるユーザが多く存在する。
【0003】
かかるオーディオルームにおいては、ユーザは、高音質の音を聴取できることを望んでいる。ところで、スピーカが設置されるオーディオルームにおいては、床や壁等から反射音や定在波が発生する。そして、これら反射音や定在波が強すぎると、スピーカから発生する音に対して、悪影響を及ぼすことが知られている。
【0004】
従って、このような反射音や定在波等が強すぎる場合、それに対応するために、現状の一般的な対策としては、オーディオルームを構成する壁の所望の位置に、反射板を設置したり、吸音板を設置している。そして、これら反射板、吸音板等により、オーディオルームの音響効果に悪影響を及している、定在波を除去したり、当該定在波を適宜に減衰したり、反射させている。
【0005】
なお、かかる吸音材の設置に関する先行技術としては、特許文献1〜3に開示されているものがある。この特許文献1〜3には、壁の所定の部位に、音響キャビネットを設置している構成が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平5−148919(各図面参照)
【特許文献2】特開平5−134680(各図面参照)
【特許文献3】特開平5−134681(各図面参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、オーディオルームのある位置に設置されているスピーカから発生する音が、オーディオルームを構成する壁や床、天井等の境界部分(特に、コーナ部分)に到達し、その境界部分に残留し、その境界部分が反射音や定在波の発生源となることは周知のところである。この場合、境界部分においては、複雑な反射音が構成され、人に不快感を与える音、いわゆる濁った音が形成され易い。また、かかる境界部分は、スピーカから発生する本来の音に対して、悪影響を及ぼす箇所であることも、周知となっている。
【0008】
ここで、特許文献1〜3に開示されている手法では、壁の所定の部位に、音響キャビネットを設置して、音響特性の改善を図ろう、としている。しかしながら、これら特許文献1〜3に開示されている構成は、オーディオルームの境界部分における定在波を、十分に考慮して設置されてはいない。そのため、オーディオルームの境界部分においては、定在波の発生が、十分には解消されていない。
【0009】
また、上述の特許文献1〜3に開示されている手法以外の、境界部分における音響の対策としては、所望の寸法に裁断した反射板等を境界部分に立てかけたり、吸音材を所望の寸法に裁断して貼り付けたり、吸音材を筒状に丸めて立てかける等の手法がある。しかしながら、これらのうち、吸音材を貼り付けた構成は、特許文献1〜3に開示されている手法と類似しており、境界部分における定在波を解消するには不十分である。また、裁断した反射板を境界部分に立てかけたり、吸音材を筒状に丸めて立てかける場合には、当該反射板や吸音材が不安定な設置状態となると共に、境界部分から発生する定在波を解消(音響特性の改善)は、限定的となっている。
【0010】
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、その目的とするところは、音響を重視するオーディオルームにおいて、音響特性の改善を図ることが可能な音質改善部材およびオーディオルームを提供しよう、とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、二方向または三方向が構造体を構成する構造面で囲まれる境界部分に設置され、これらの構造面に接触する位置決め部を具備すると共に、位置決め部が構造面に接触して位置決めが為されている状態で、二方向または三方向の構造面に対して、傾斜する部分が存在する傾斜面を有し、この傾斜面での音の反射または吸収により、構造体の内部における音響が改善されるものである。
【0012】
また、他の発明は、上述の発明に加えて更に、位置決め部は、三方向における位置決めを行うものであり、該位置決め部は、構造体に面接触する接触面であり、これら三方向の接触面は立方体を構成すると共に、傾斜面は、この立方体のうち境界部分の交差点に位置する頂点の対角位置に位置する頂点を中心として、該立方体の一部を切り欠いた形状に形成されているものである。
【0013】
さらに、他の発明は、上述の発明に加えて更に、傾斜面は、対角位置に位置する頂点を中心として、球面状に切り欠いた形状に形成されているものである。
【0014】
また、他の発明は、上述の発明に加えて更に、傾斜面は、対角位置に位置する頂点を中心として、平面状に切り欠いた形状に形成されているものである。
【0015】
さらに、他の発明は、上述の各発明に加えて更に、位置決め部は、二方向における位置決めを行うものであり、該位置決め部は、構造体に面接触する接触面であり、これら二方向の接触面は直方体を構成すると共に、傾斜面は、この直方体のうち境界部分の交差線に位置する側辺の対角位置に位置する側辺を中心として、該直方体の一部を切り欠いた形状に形成されているものである。
【0016】
また、他の発明は、上述の各発明に加えて更に、傾斜面は、対角位置に位置する側辺を中心線として、円筒面状に切り欠いた形状に形成されているものである。
【0017】
さらに、他の発明は、傾斜面は、平面状に切り欠いた形状に形成されているものである。
【0018】
また、他の発明は、上述の各発明に加えて更に、圧縮可能な弾性部材によって形成されていると共に、圧縮時には接触面が構造面に対して圧力を及ぼし、この圧力が及ぼされている場合の弾性反発力により、境界部分に係止されるものである。
【0019】
さらに、他の発明は、弾性部材は、気泡を多数有する発泡樹脂から形成されているものである。
【0020】
また、他の発明は、上述の各発明に加えて更に、音の反射率が異なる一方の材質と他方の材質とによって形成されていると共に、傾斜面は、一方の材質または他方の材質のいずれかによって覆われているものである。
【0021】
さらに、他の発明は、傾斜面には、植毛が為されているものである。
【0022】
また、他の発明は、上述の各発明係る音響改善部材が、境界部分に配置されているオーディオルームである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、音響を重視するオーディオルームにおいて、音響特性の改善を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態に係る音響改善部材としての立方部材20と直方部材30、および音響改善部材を具備するオーディオルーム10(立方部材20と直方部材30が配置されるオーディオルーム10)について、図1から図9に基づいて説明する。
【0025】
なお、以下の説明においては、上側とは、後述する天井面13側を指すものとすると共に、下側とは、後述する床面12側を指すものとする。
【0026】
図1〜図3に、本実施の形態に係る、音響改善部材としての立方部材20を示す。これら図1〜図3に示す立方部材20は、その材質を、発泡ウレタン、発泡スチロール等のような、発泡樹脂から構成されている。しかしながら、立方部材20の材質は、これらには限られず、例えば木質系・繊維系の部材を材質としたり、金属を材質としても良い。また、発泡樹脂は、多数の気泡を有しているため、体積は大きいにも拘わらず、重量はさほど大きくはなっていない。
【0027】
本実施の形態の立方部材20は、その外観が、立方体Rの一部を切り欠いた形状に形成されている。すなわち、立方部材20は、立方体R(図1参照)の1つの頂点Pを中心として、当該立方体Rを球面状に切り欠いた形状に設けられている。なお、立方部材20のうち、球面状に切り欠かれることにより形成される曲面は、反射面21となっており、この反射面21の存在により、後述するように定在波を解消することが可能となっている。なお、反射面21は、傾斜面に対応する。
【0028】
ここで、本実施の形態では、球面状の一部となっている反射面21の中心である頂点Pまでの距離(球面の半径に対応;図1参照)よりも、立方体Rの一辺の長さ寸法の方が、長くなるように設けられている。そのため、図1等に示すように、立方部材20のうち、立方体Rの頂点Pを通る側辺には、反射面21と交差する部位(交差部位21z)が存在する。そして、この交差部位21zと、側辺の他の頂点との間には、側辺の残りの部分である、平坦部22が設けられる。
【0029】
なお、立方部材20の寸法の例示としては、立方体Rの長さ寸法が400mmである場合、反射面21から頂点Pまでの長さ寸法(球の半径)が388mmとする場合があり、この半径の球面によって立方体Rを切り欠いた状態に、反射面21が設けられる場合がある。この場合、平坦部22の長さ寸法は、12mmとなる。また、本実施の形態では、上述のように、平坦部22が存在する状態で、立方体Rを球面で切り欠いている。このため、8つの反射面21が滑らかに連なる状態で、立方部材20を連結すると、1つの球面を構成するように設けられている。
【0030】
また、立方部材20には、上述の反射面21と交差しない、正方形の状態を維持している側面(以下、この面を正方面201とする。)が存在している。本実施の形態では、平坦部22は、頂点Pを通る3つの側辺にそれぞれ存在している。そのため、立方部材20には、反射面21の交差と関係しない、正方面201が3つ存在している。なお、この正方面201は、壁面11、床面12、または天井面13に接触する部分であり、位置決め部および接触面に対応する。
【0031】
次に、音響改善部材としての直方部材30について、図4〜図6に基づいて説明する。本実施の形態における直方部材30も、上述の立方部材20と同様に、その材質が発泡ウレタン、発泡スチロール等のような、発泡樹脂から構成されている。しかしながら、上述の立方部材20と同様に、直方部材30の材質は、これらには限られず、例えば木質系・繊維系の部材を材質としたり、金属を材質としても良い。
【0032】
また、直方部材30は、底面が正方形となる直方体Cの一部を切り欠いた形状に形成されている。すなわち、直方部材30は、直方体Cの1つの頂点Qを通る線を中心軸線Lとして、当該直方体Cを円筒状に切り欠いた形状に設けられている。なお、この直方部材30のうち、円筒面状に切り欠かれることにより形成される曲面は、反射面31となっており、この反射面31の存在により、後述するように定在波が解消可能となっている。なお、この反射面31も、傾斜面に対応する。
【0033】
ここで、本実施の形態では、反射面31の中心軸線Lまでの距離(円筒面の半径に対応)よりも、直方体Cの底面の一辺の長さ寸法の方が、長くなるように設けられている。そのため、この直方部材30においても、上述の立方部材20と同様に、反射面31と交差する部位(交差部位31z;4つ存在)が存在する。そして、この交差部位31zと、側辺の他の頂点との間には、側辺の残りの部分である、平坦部32が設けられる。
【0034】
また、この直方部材30には、反射面31以外に、2つの直方面301が存在している。この直方面301は、上述の反射面31と交差せずに、長方形状の状態を維持している側面である。本実施の形態では、この直方面301は、2つ存在している。なお、この直方面301は、位置決め部および接触面に対応する。
【0035】
なお、この直方部材30の寸法の一例としては、底面の側辺(交差部位31zが存在しない側辺)の長さ寸法が400mmであると共に、直方面301の長手方向の側辺の長さ寸法を1000mmとする場合がある。ここで、直方部材30の長手方向における長さ寸法は、例えばオーディオルーム10の大きさ、設置しやすさ等に応じて、種々変更することが可能である。
【0036】
また、この場合において、反射面31から中心軸線Lまでの長さ寸法(円筒面の半径)が388mmとする場合があり、この半径の円筒面によって直方体Cを切り欠いた状態に、反射面31が設けられる場合がある。この場合、平坦部32の長さ寸法は、12mmとなる。
【0037】
以上のような立方部材20、および直方部材30を、部屋(オーディオルーム10)に設置する場合について、以下に説明する。
【0038】
図7〜図9に示すように、立方部材20は、構造体としてのオーディオルーム10の内部のうち、2つの壁面11と、床面12または天井面13との交差部位(これらが交わる部位が交差点に対応)である、コーナ部分14に配置される。この場合、立方部材20のうち、正方面201が、それぞれ壁面11、床面12または天井面13に、面接触する状態で配置される。なお、かかる3面が面接触する状態で、立方部材20を配置すると、反射面21がオーディオルーム10の中央側を向く状態となる。ここで、壁面11、床面12および天井面13は、それぞれ構造面に対応する。
【0039】
また、オーディオルーム10の内部には、直方部材30も配置される。この直方部材30は、上述のコーナ部分14に連続する、隅部15に配置される。なお、ここでいう隅部15とは、壁面11と床面12とが例えば互いに略90度を為して交差する境界部分(交差する境界線は交差線に対応)、または2つの壁面11が交差する境界部分(交差する境界線は交差線に対応)、または壁面11と天井面13とが交差する境界部分(交差する境界線は交差線に対応)をいう。このとき、反射面21が交差していない2つの直方面が、それぞれ上述の各面に対して面接触する状態で配置される。
【0040】
ここで、立方部材20および直方部材30が、弾力性を有し、かつ軽量の材質(発泡ウレタン、発泡スチロール等)から構成されている場合、この立方部材20および直方部材30に押圧力を及ぼして圧縮し、配置される場所においてその圧縮状態を開放する。すると、圧縮状態の開放により、立方部材20および直方部材30は、圧縮された状態から戻ろうとする、いわゆるスプリングバック力(弾性反発力)を壁面11等に及ぼす。この場合、立方部材20および直方部材30は、接着テープ等の接着手段を用いなくても、コーナ部分14および隅部15に保持させることが可能となっている。
【0041】
すなわち、正方面201または直方面301と、壁面11、床面12、または天井面13との間には、スプリングバック力によって、摩擦力が生じる。そして、この摩擦力が、立方部材20および直方部材30に生じる重力に抗することが可能である場合(摩擦力に比して、立方部材20および直方部材30が十分に軽量である場合)、当該立方部材20および直方部材30は、接着手段を用いなくても、設置箇所に保持可能となる。
【0042】
なお、上述のスプリングバック力に関しては、立方部材20と直方部材30とが同一の圧縮率である場合には、直方部材30の方が、接触面積が大きく、壁面11等に対して安定的な状態で接触する。また、直方部材30の方が、接触面積が大きくなることにより、スプリングバック力による摩擦力が強く作用する。このため、直方部材30の方が、外部からの力に対して、抗する力を強くすることが可能となる。
【0043】
ここで、上述のスプリングバック力を強くするためには、圧縮される部分の側辺同士が交差して為す角度が鈍角を為すように、立方部材20および直方部材30を構成しても良い。この場合、鈍角を為す側辺は、必ずしも直線状に設けられる必要はなく、弧状等、湾曲していても良い。
【0044】
また、壁面11、床面12および天井面13の材質、または立方部材20および直方部材30の材質によっては、十分なスプリングバック力が得られない場合がある。この場合には、立方部材20および直方部材30の両方を、例えば粘着テープ、面ファスナー等の接着手段、壁面11等にネジ固定される専用の金具を用いるようにして、保持させるようにしても良い。
【0045】
ここで、オーディオルーム10に存在するコーナ部分14および隅部15には、立方部材20および直方部材30が、隙間を有する状態で配置されていても良い。この状態を図7に示す。しかしながら、音響効果をより高めるためには、オーディオルーム10に存在するコーナ部分14および隅部15には、立方部材20および直方部材30が、隙間なく配置されるのが好ましい。この状態を図8に示す。
【0046】
なお、コーナ部分14および隅部15のうち、特に床面12と壁面11とが境界を為す部分では、金属等のような重い材質の立方部材20または直方部材30であっても、容易に設置することが可能である。
【0047】
このような構成の立方部材20および直方部材30、およびこれらを用いたオーディオルーム10においては、オーディオルーム10のコーナ部分14に立方部材20を配置することにより、この立方部材20の反射面21によって、コーナ部分14や隅部15に滞留しがちな定在波を、オーディオルーム10の中央部側に向けて反射させることが可能となる。そのため、オーディオルーム10のコーナ部分14に、例えば定在波等のような人に対して不快感を与える音が残留するのを防ぐことが可能となる。それにより、音を聴取している人の心地良さを増大させることが可能となり、音響効果を高めることが可能となる。
【0048】
特に、コーナ部分14のような、最も複雑な反射音が構成される部位に、立方部材20を配置することにより、音響効果を高めることが可能となっている。また、隅部15にも直方部材が配置されることにより、音響効果を一層高めることが可能となっている。
【0049】
また、本実施の形態では、反射面21は、球面の一部を構成するように設けられている。そのため、例えば壁面11と床面12との間、壁面11と天井面13との間、または壁面11同士の間の傾斜角度の変化が滑らかになり、音を滞留させずに良好に反射させることが可能となる。加えて、本実施の形態では、反射面31は、円筒面の一部を構成するように設けられている。この場合も、例えば壁面11と床面12との間、壁面11と天井面13との間、または壁面11同士の間の傾斜角度の変化が滑らかになり、音を滞留させずに良好に反射させることが可能となる。
【0050】
また、立方部材20および直方部材30を設置することにより、従来よりもオーディオルーム10の中心側に向けて音を多く反射させることが可能となり、それによって音響効果を高めることが可能となる。
【0051】
また、本実施の形態では、立方部材20および直方部材30は、弾力性を有する弾性部材から構成されている。そのため、これら立方部材20および直方部材30を圧縮し、その圧縮状態を開放すれば、立方部材20および直方部材30は、いわゆるスプリングバック力を壁面11等に及ぼす。それにより、立方部材20および直方部材30は、接着テープ等の接着手段を用いなくても、コーナ部分14および隅部15に保持させることが可能となる。また、接着テープ等の接着手段を用いる場合でも、上述のスプリングバック力を、接着の補助力として利用することが可能となる。それにより、立方部材20および直方部材30の保持状態(接着状態)を、長期に亘ってずれを防止しつつ良好に保つことが可能となる。
【0052】
また、本実施の形態では、立方部材20および直方部材30は、例えば発泡スチロールや発泡ウレタンのような、気泡を多数有する発泡樹脂によって形成されている。そのため、これら立方部材20および直方部材30は軽量となり、立方部材20および直方部材30の保持状態(接着状態)を、一層長期に亘って良好に保つことが可能となる。また、立方部材20および直方部材30が軽量であるため、例えば粘着テープや面ファスナーのような接着手段を用いた場合でも、コーナ部分14や隅部15に、容易に固定させることが可能となる。また、コーナ部分14や隅部15に、専用の金具を用いて立方部材20および直方部材30を固定させる場合でも、当該金具を極めて小型のものにすることが可能となる。
【0053】
(第2の実施の形態)
以下、本発明の第2の実施の形態について、図10から図17に基づいて説明する。なお、本実施の形態では、上述の第1の実施の形態で述べたのと同様の部材については、同一の符号を用いて説明する。
【0054】
本実施の形態では、図10〜図12に示すような、音響改善部材としての立方部材20Aおよび直方部材30Aを用いている。これらのうち、立方部材20Aは、上述の立方部材20とは異なる反射面21A(傾斜面に対応)を備えている。ここで、第1の実施の形態における反射面21は、球面状に設けられているのに対して、本実施の形態の反射面21Aは、平面状に設けられている。また、本実施の形態においても、立方体Rの頂点Pを通る側辺には、反射面21Aと交差する部位(交差部位21z)が存在する。そのため、交差部位21zと、側辺の他の頂点との間には、側辺の残りの部分である、平坦部22が設けられる。
【0055】
なお、平坦部22が互いに接触する状態で、上述の立方部材20Aを多数連結すると、反射面21Aを各面とする立方体が形成される。
【0056】
また、図13〜図15に示すように、本実施の形態の直方部材30Aも、上述の立方部材20Aと同様の、平面状の反射面31A(傾斜面に対応)を有している。この直方部材30Aは、底面が正方形となる直方体Cの1つの頂点Qを通る線を中心軸線Lとする、底面が正方形の四角柱によって切り欠いた形状に形成されている。なお、この場合、頂点Qを通る側辺は、四角柱の対角線に沿うように設けられている。
【0057】
また、本実施の形態の直方体30Aにおいても、反射面31Aと交差する部位(交差部位31z)が存在する。そして、この交差部位31zと、側辺の他の頂点との間には、側辺の残りの部分である、平坦部32が設けられる。
【0058】
また、上述の立方部材20Aおよび直方部材30Aを設置する手法は、上述の立方部材20および直方部材30を設置する場合と同様である。なお、図16には、立方部材20Aおよび直方部材30Aが、隙間を有して配置されている状態を示す。また、図17には、立方部材20Aおよび直方部材30Aが、互いに密着して配置されている状態を示す。
【0059】
このような構成の立方部材20Aおよび直方部材30Aによっても、上述の立方部材20および直方部材30と同様に、反射面21A,31Aによって、コーナ部分14や隅部15に滞留しがちな定在波を、オーディオルーム10の中央部側に向けて反射させることが可能となる。そのため、オーディオルーム10のコーナ部分14や隅部に、例えば定在波等のような人に対して不快感を与える音が残留するのを防ぐことが可能となる。それにより、音を聴取している人の心地良さを増大させることが可能となり、音響効果を高めることが可能となる。
【0060】
また、本実施の形態では、反射面21A,31Aは、平面状に設けられている。そのため、立方部材20A、直方部材30Aは、上述の立方部材20および直方部材30と比較して、形成し易くなる。すなわち、例えば直方体を斜めに切断することにより、反射面21A,31Aを形成することが可能となり、反射面21,31のように、曲面状に形成されている場合と比較して、形成する手法が多くなり、形成が容易となる。
【0061】
(第3の実施の形態)
以下、本発明の第3の実施の形態について、図18および図19に基づいて説明する。なお、本実施の形態では、上述の第1の実施の形態で述べたのと同様の部材については、同一の符号を用いて説明する。
【0062】
なお、以下の説明においては、シート状部材40を貼り付ける前の立方部材および直方部材(母材としての立方部材および直方部材)を、それぞれ立方部材20Cおよび直方部材30Cとする。また、以下の説明においては、シート状部材40を貼り付ける前の立方部材20Cおよび直方部材30Cの反射面を、それぞれ反射面21Cおよび反射面31Cとする。
【0063】
本実施の形態における、音響改善部材としての立方部材20B(図18参照)および直方部材30B(図19参照)においては、反射面21B,31Bの構成が、上述の第1の実施の形態で述べたものとは相違している。すなわち、上述の第1の実施の形態においては、立方部材20は、例えば発泡ウレタン、発泡スチロール等の如き発泡樹脂のような、単一の材質から構成されている。
【0064】
しかしながら、本実施の形態における立方部材20においては、母材としての立方部材20Cの反射面21Cにシート状部材40を貼り付けることによって、反射面21Bを形成している。また、母材としての直方部材30Cの反射面31Cにシート状部材40を貼り付けることによって、反射面31Bを形成している。
【0065】
ここで、シート状部材40は、例えばシート状に形成されている木質系・繊維系の部材(例えば、突板と称されている木材(厚さの寸法例:0.5mm)、紙等)、シート状に形成されているアルミニウム等の金属箔(金属板;アルミニウム板の寸法例:0.3mm)、各種の樹脂シート等を用いることが可能である。また、立方部材20Cおよび直方部材30Cは、上述の第1の実施の形態における立方部材20、直方部材30等と同様に、その材質を、発泡ウレタン、発泡スチロール等のような、発泡樹脂から構成されている。しかしながら、立方部材20Cおよび直方部材30Cの材質は、これらには限られず、例えば木質系・繊維系の部材を材質としたり、金属を材質としても良い。
【0066】
なお、シート状部材40を貼付する前の反射面21C,31Cと、シート状部材40を貼付した後の反射面21B,31Bとでは、音に対する表面反射率が異なっている。
【0067】
ここで、立方部材20Bおよび直方部材30Bにおいては、貼付するシート状部材40を、所定の表面反射率を有する材質に適宜変更することが可能である。例えば、壁面11と床面12との間のコーナ部分14においては、表面反射率xのシート状部材40が貼付された立方部材20Bを設置すると共に、壁面11と天井面13との間の隅部15においては、表面反射率yのシート状部材40が貼付された直方部材30Bを設置する等の場合が挙げられる。このように、オーディオルーム10の内部では、種々のシート状部材40を貼付することにより、場所ごとに、表面反射率を変更された立方部材20Bおよび直方部材30Bを設置可能である。
【0068】
このような構成の立方部材20Bおよび直方部材30Bによっても、上述の立方部材20,20Aおよび直方部材30,30Aと同様に、反射面21B,31Bによって、コーナ部分14や隅部15に滞留しがちな定在波を、オーディオルーム10の中央部側に向けて反射させることが可能となる。そのため、オーディオルーム10のコーナ部分14や隅部15に、例えば定在波等のような人に対して不快感を与える音が残留するのを防ぐことが可能となる。それにより、音を聴取している人の心地良さを増大させることが可能となり、音響効果を高めることが可能となる。
【0069】
加えて、本実施の形態では、オーディオルーム10の内部において、場所に応じて適切な表面反射率を有するシート状部材40が貼付された立方部材20Bおよび直方部材30Bを設置することが可能となる。そのため、上述の第1の実施の形態および第2の実施の形態の構成と比較して、立方部材20Bおよび直方部材30Bにおいては、表面反射率がただ1つに限定されなくなり、オーディオルーム10の各部位において、自由に設定することが可能となる。
【0070】
それにより、オーディオルーム10における表面反射率を、自由に、きめ細かに設定することが可能となる。それにより、リスナーが所望する音響効果を実現することが可能となり、リスナーの心地よさを高めることが可能となり、リスナーは高い満足感を得ることが可能となる。
【0071】
以上、本発明の第1〜第3の実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
【0072】
上述の第1の実施の形態では、反射面21は、球面の一部を為すように設けられると共に、反射面31は、円筒面の一部を為すように設けられている。また、上述の第2の実施の形態では、反射面21Aおよび反射面31Aは、平面状に設けられている。しかしながら、反射面は、球面の一部、円筒面の一部、平面状に設けられる場合には限られず、種々の自由曲面とすることが可能である。
【0073】
また、上述の第1の実施の形態における反射面21,31は、曲面状かつ凹面状に形成されている。しかしながら、反射面21,31は、例えば多面体状のように、曲面状以外の凹面状に形成されるように構成しても良い。
【0074】
また、上述の実施の形態では、構造体としては、オーディオルーム10に関して説明している。しかしながら、構造体は、オーディオルーム10には限られない。オーディオルーム10以外の構造体としては、自動車、航空機、船舶等のような、内部空間に人が滞在することが可能なものが挙げられる。
【0075】
さらに、上述の各実施の形態では、平坦部22,32が存在する立方部材20,20A,20Bおよび直方部材30,30A,30Bについて説明している。しかしながら、立方部材20,20A,20Bおよび直方部材30,30A,30Bには、平坦部22が設けられていなくても良い。特に、直方部材30Aにおいては、平坦部22が存在しない場合には、直方体Cを、長手方向に沿う側辺を通ると共に、対角線方向に向かう平面で切断すると、当該直方体Cから2つの直方部材30Aを形成することが可能となる。
【0076】
また、上述の第3の実施の形態では、反射面21C,31Cには、シート状部材40が貼り付けられている。しかしながら、反射面21Cおよび反射面31Cには、シート状部材40以外のものが取り付けられていても良い。例えば、反射面21Cおよび反射面31Cには、植毛を施すように構成しても良く、その他、反射面21Cおよび反射面31Cに、塗装を施すようにしても良い。反射面21Cおよび反射面31Cに、植毛を施す場合、当該反射面21Cおよび反射面31Cに、直接植毛を施すようにしても良く、その他、既に植毛が施されているシート状部材を、反射面21Cおよび反射面31Cに接着するようにしても良い。
【0077】
なお、反射面21Cおよび反射面31Cに、塗装を施す場合、塗料を適宜に選択したり、当該塗料に例えばセラミックス粉末等のような硬質な材料を適宜の量だけ混入する等の手法を用いるようにしても良い。このようにすれば、混入する材料の量を変更すると、表面反射率を適宜かつ自由に変更(調整)することが可能となる。
【0078】
また、上記のように、セラミックス粉末等を代表とする硬質な材料は、表面反射率を、母材たる立方部材20Cおよび直方部材30Cのみから構成される場合よりも、上昇させる効果がある。しかしながら、例えば連続発泡のウレタン等のような、母材よりも柔軟な材料を、反射面21Cおよび反射面31Cに塗布する場合には、表面反射率を、母材たる立方部材20Cおよび直方部材30Cよりも低くすることが可能となる。このような柔軟な材料を、反射面21Cおよび反射面31Cに塗布する場合、表面反射率が低いことにより、反射面21Cおよび反射面31Cでは、定在波を反射させる効果よりも、減衰させる効果が高くなる。
【0079】
また、上記のように、反射面21Cおよび反射面31Cに、植毛を施す場合にも、母材たる立方部材20Cおよび直方部材30Cよりも、表面反射率を低くすることが可能となる。
【0080】
また、上述の塗料には、ガラスビーズ、ブラスト材といった種々の材料を、適宜の量だけ混入させた後に、反射面21Cおよび反射面31Cに塗布するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、音響関連の分野において利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る立方部材の構成を示す斜視図である。
【図2】図1の立方部材の構成を示す平面図である。
【図3】図1の立方部材の構成を示す側面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る直方部材の構成を示す斜視図である。
【図5】図4の直方部材の構成を示す正面図である。
【図6】図4の直方部材の構成を示す側面図である。
【図7】図1の立方部材および図4の直方部材を配置する状態を示し、立方部材と直方部材とが互いに隙間を有する状態で配置されている状態を示す斜視図である。
【図8】図1の立方部材および図4の直方部材を配置する状態を示し、立方部材と直方部材とが互いに密着する状態で配置されている状態を示す斜視図である。
【図9】図1の立方部材および図4の直方部材が境界部分に隙間なく配置されている状態を示すと共に内部を透視して示すオーディオルームの斜視図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る立方部材の構成を示す斜視図である。
【図11】図10の立方部材の構成を示す平面図である。
【図12】図10の立方部材の構成を示す側面図である。
【図13】本発明の第1の実施の形態に係る直方部材の構成を示す斜視図である。
【図14】図13の直方部材の構成を示す正面図である。
【図15】図13の直方部材の構成を示す側面図である。
【図16】図10の立方部材および図13の直方部材を配置する状態を示し、立方部材と直方部材とが互いに隙間を有する状態で配置されている状態を示す斜視図である。
【図17】図10の立方部材および図13の直方部材を配置する状態を示し、立方部材と直方部材とが互いに密着する状態で配置されている状態を示す斜視図である。
【図18】本発明の第3の実施の形態に係る立方部材を形成する過程を示す斜視図である。
【図19】本発明の第3の実施の形態に係る直方部材を形成する過程を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0083】
10…オーディオルーム(構造体に対応)
11…壁面(構造面に対応)
12…床面(構造面に対応)
13…天井面(構造面に対応)
14…コーナ部分(境界部分に対応)
15…隅部(境界部分に対応)
20,20A,20B,20C…立方部材
21,21A,21B,21C…反射面(傾斜面に対応)
22…平坦部
30,30A,30B,30C…直方部材
31,31A,31B,31C…反射面(傾斜面に対応)
32…平坦部
40…シート状部材
201…正方面(位置決め部および接触面に対応)
301…直方面(位置決め部および接触面に対応)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二方向または三方向が構造体を構成する構造面で囲まれる境界部分に設置され、これらの構造面に接触する位置決め部を具備すると共に、
上記位置決め部が上記構造面に接触して位置決めが為されている状態で、上記二方向または三方向から囲む構造面に対して、傾斜する部分が存在する傾斜面を有し、この傾斜面での音の反射または吸収により、上記構造体の内部における音響が改善される、
ことを特徴とする音響改善部材。
【請求項2】
前記位置決め部は、前記三方向における位置決めを行うものであり、該位置決め部は、前記構造体に面接触する接触面であり、これら三方向の接触面は立方体を構成すると共に、前記傾斜面は、この立方体のうち前記境界部分の交差点に位置する頂点の対角位置に位置する頂点を中心として、該立方体の一部を切り欠いた形状に形成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の音響改善部材。
【請求項3】
前記傾斜面は、前記対角位置に位置する頂点を中心として、球面状に切り欠いた形状に形成されていることを特徴とする請求項2記載の音響改善部材。
【請求項4】
前記傾斜面は、前記対角位置に位置する頂点を中心として、平面状に切り欠いた形状に形成されていることを特徴とする請求項2記載の音響改善部材。
【請求項5】
前記位置決め部は、前記二方向における位置決めを行うものであり、該位置決め部は、前記構造体に面接触する接触面であり、これら二方向の接触面は直方体を構成すると共に、前記傾斜面は、この直方体のうち前記境界部分の交差線に位置する側辺の対角位置に位置する側辺を中心として、該直方体の一部を切り欠いた形状に形成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の音響改善部材。
【請求項6】
前記傾斜面は、前記対角位置に位置する側辺を中心線として、円筒面状に切り欠いた形状に形成されていることを特徴とする請求項5記載の音響改善部材。
【請求項7】
前記傾斜面は、平面状に切り欠いた形状に形成されていることを特徴とする請求項5記載の音響改善部材。
【請求項8】
圧縮可能な弾性部材によって形成されていると共に、圧縮時には前記接触面が前記構造面に対して圧力を及ぼし、この圧力が及ぼされている場合の弾性反発力により、前記境界部分に係止される、
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に音響改善部材。
【請求項9】
前記弾性部材は、気泡を多数有する発泡樹脂から形成されていることを特徴とする請求項8記載の音響改善部材。
【請求項10】
音の反射率が異なる一方の材質と他方の材質とによって形成されていると共に、前記傾斜面は、上記一方の材質または上記他方の材質のいずれかによって覆われていることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の音響改善部材。
【請求項11】
前記傾斜面には、植毛が為されていることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の音響改善部材。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか1項に記載の音響改善部材が、前記境界部分に配置されていることを特徴とする、前記構造体としてのオーディオルーム。
【請求項1】
二方向または三方向が構造体を構成する構造面で囲まれる境界部分に設置され、これらの構造面に接触する位置決め部を具備すると共に、
上記位置決め部が上記構造面に接触して位置決めが為されている状態で、上記二方向または三方向から囲む構造面に対して、傾斜する部分が存在する傾斜面を有し、この傾斜面での音の反射または吸収により、上記構造体の内部における音響が改善される、
ことを特徴とする音響改善部材。
【請求項2】
前記位置決め部は、前記三方向における位置決めを行うものであり、該位置決め部は、前記構造体に面接触する接触面であり、これら三方向の接触面は立方体を構成すると共に、前記傾斜面は、この立方体のうち前記境界部分の交差点に位置する頂点の対角位置に位置する頂点を中心として、該立方体の一部を切り欠いた形状に形成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の音響改善部材。
【請求項3】
前記傾斜面は、前記対角位置に位置する頂点を中心として、球面状に切り欠いた形状に形成されていることを特徴とする請求項2記載の音響改善部材。
【請求項4】
前記傾斜面は、前記対角位置に位置する頂点を中心として、平面状に切り欠いた形状に形成されていることを特徴とする請求項2記載の音響改善部材。
【請求項5】
前記位置決め部は、前記二方向における位置決めを行うものであり、該位置決め部は、前記構造体に面接触する接触面であり、これら二方向の接触面は直方体を構成すると共に、前記傾斜面は、この直方体のうち前記境界部分の交差線に位置する側辺の対角位置に位置する側辺を中心として、該直方体の一部を切り欠いた形状に形成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の音響改善部材。
【請求項6】
前記傾斜面は、前記対角位置に位置する側辺を中心線として、円筒面状に切り欠いた形状に形成されていることを特徴とする請求項5記載の音響改善部材。
【請求項7】
前記傾斜面は、平面状に切り欠いた形状に形成されていることを特徴とする請求項5記載の音響改善部材。
【請求項8】
圧縮可能な弾性部材によって形成されていると共に、圧縮時には前記接触面が前記構造面に対して圧力を及ぼし、この圧力が及ぼされている場合の弾性反発力により、前記境界部分に係止される、
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に音響改善部材。
【請求項9】
前記弾性部材は、気泡を多数有する発泡樹脂から形成されていることを特徴とする請求項8記載の音響改善部材。
【請求項10】
音の反射率が異なる一方の材質と他方の材質とによって形成されていると共に、前記傾斜面は、上記一方の材質または上記他方の材質のいずれかによって覆われていることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の音響改善部材。
【請求項11】
前記傾斜面には、植毛が為されていることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の音響改善部材。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか1項に記載の音響改善部材が、前記境界部分に配置されていることを特徴とする、前記構造体としてのオーディオルーム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2007−286387(P2007−286387A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−114098(P2006−114098)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】
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