説明

音響装置、音場補正方法、音場補正プログラム及びその記録媒体

【課題】
自動音場補正が途中で中断されたとしても、中断された自動音場補正の処理結果を、合理的かつ効率的に利用する。
【解決手段】
制御部251からの再開指令ACIRを受けると、再開制御部263は、実行制御部265を介して、自動音場補正部253にスピーカ構成確認処理及び位置関係確認処理を実行させる。これらの確認処理が完了した旨の応答RSPを受けると、再開制御部263は、これらの確認結果と、記憶部261内の前回バッファ内のスピーカ確認情報及び位置関係確認情報とが一致するといえるかを判定する。この判定の結果が肯定的であった場合には、再開制御部263は、前回の自動音場補正において、既に終了しており、省略可能な個別段階処理を特定する。そして、再開制御部263は、省略可能な個別段階処理以外の個別段階処理を、実行制御部265を介して、所定順序に従って自動音場補正部253に実行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響装置、音場補正方法、音場補正プログラム及び当該音場補正プログラムが記録された記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CD(Compact Disk)やDVD(Digital Versatile Disk)等の普及に伴って、複数のスピーカを有するマルチチャンネルサラウンド方式の音響装置が普及している。これにより、家庭内空間や車両内空間においても、臨場感溢れるサラウンド音声を楽しむことができるようになってきている。
【0003】
ところで、音響装置の設置環境は様々である。このため、音声を出力する複数のスピーカを、マルチチャンネルサラウンド方式の観点における対称性を有する位置に配置することができない場合がしばしば発生する。特に、車両にマルチチャンネルサラウンド方式の音響装置を搭載する場合には、聴取位置である着座位置の制約等から、複数のスピーカを、マルチチャンネルサラウンド方式の観点から推奨される対称性を有する位置に配置することができない。さらに、各スピーカの特性も、当該マルチチャンネルサラウンド方式の実現に際して最適なものとなっていない場合も多い。
【0004】
このため、採用されるマルチチャンネルサラウンド方式により良質なサラウンド音声を得るためには、音響装置の特性を調整することにより、音場を補正することが必要となる。かかる音場補正を人手により行うのは大変に面倒かつ困難であるので、利用者に大きな負担となる。そこで、音響装置の特性の調整を自動的に行う技術が提案されている(特許文献1参照:以下、「従来例」という)。
【0005】
この従来例の技術では、各スピーカに基準オーディオ信号を供給して、各スピーカから所定のテスト音声を出力するとともに、所定の集音位置に配置されたマイクロフォン等の集音手段により、各スピーカから出力されたテスト音声を集音する。そして、集音結果が、所定の目標信号となるように、音響装置の特性である音量バランス特性や、出力音声の周波数特性を調整するようになっている。この結果、自動で音場補正が行われる。
【0006】
【特許文献1】特開平10−136498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の従来例の技術のように複数の特性について自動音場補正を行う場合には、一般に、補正対象特性ごとに、所定の順序で段階的に補正を行う。このため、補正対象の全特性を補正するには、長い時間を要している。
【0008】
ところで、従来においては、利用者の様々な都合により、自動音場補正を途中で中断させなければならない場合がある。こうした場合には、その後に自動音場補正を行おうとしたときには、再度全ての特性について補正を行うことが必要であった。このため、以前の自動音場補正がある段階まで進んでいても、その結果は利用されていなかった。
【0009】
このため、自動音場補正を途中で中断しても、中断した自動音場補正による処理結果を有効に活用することができる技術が待望されている。かかる要請に応えることが、本発明が解決すべき課題の一つとして挙げられる。
【0010】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、自動音場補正が途中で中断されたとしても、中断された自動音場補正の処理結果を、合理的かつ効率的に利用することができる音響装置及び音場補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、自動音場補正の機能を有し、複数のスピーカから音場空間へ向けて音声を出力する音響装置であって、前記音場空間内の集音位置における音声を集音する集音手段と;前記複数のスピーカのそれぞれから出力された音声の前記集音手段による集音結果に基づいて、複数種類の音場補正処理を行う音場補正手段と;前記自動音場補正の開始、中断及び再開指令の操作入力に応じて、前記音場補正処理の開始、中断及び再開に関する制御を行う音場補正制御手段と;前記開始指令又は再開指令があった場合に、前記複数のスピーカの状態を確認するスピーカ状態確認手段と;前記再開指令があった場合に、前記スピーカ確認手段の確認結果が前記開始指令時と前記再開指令時において一致するか否か判定する判定手段と;を備え、前記音場補正制御手段は、前記音場補正処理の再開時に、前記判定手段の判定結果が否定的である場合には前記複数種類の音場補正処理をはじめから所定順序に従って段階的に実行し、肯定的である場合には中断前に終了していた段階の次の段階から前記所定順序に従って段階的に音場補正処理を実行する、ことを特徴とする音響装置である。
【0012】
請求項12に記載の発明は、複数のスピーカから音場空間へ向けて音声を出力する音響装置において使用される音場補正方法であって、自動音場補正の開始指令に応じて、前記複数のスピーカの状態を確認した後、複数種類の音場補正処理をはじめから所定順序に従った段階的な実行を行う音場補正工程と;前記音場補正工程の実行中における自動音場補正処理の中断指令に応じて、前記音場補正工程を中断する中断工程と;前記中断工程における中断後における前記自動音場補正処理の再開指令に応じて、前記複数のスピーカの状態を確認した後、前記複数のスピーカの状態が、前記開始指令時と前記再開指令時において一致するか否か判定する判定工程と;前記判定工程における判定結果が否定的である場合には前記複数種類の音場補正処理をはじめから前記所定順序に従って段階的に実行し、肯定的である場合には中断前に終了していた段階の次の段階から前記所定順序に従って段階的に音場補正処理を実行する再開実行工程と;を備えることを特徴とする音場補正方法である。
【0013】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の音場補正方法を演算手段に実行させる、ことを特徴とする音場補正プログラムである。
【0014】
請求項14に記載の発明は、請求項13に記載の音場補正プログラムが、演算手段により読み取り可能に記録されている、ことを特徴とする記録媒体である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を、図1〜図16を参照して説明する。なお、以下の説明及び図面においては、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
[構成]
図1には、一実施形態に係る音響装置100の概略的な構成がブロック図にて示されている。なお、以下の説明においては、音響装置100は、車両CR(図2参照)に搭載される装置であるものとする。また、この音響装置100は、マルチチャンネルサラウンド方式の1つである4チャンネルサラウンド方式を採用しているものとする。
【0017】
この図1に示されるように、音響装置100は、制御ユニット110と、ドライブユニット120とを備えている。
【0018】
また、音響装置100は、音出力ユニット130Lと、音出力ユニット130Rと、音出力ユニット130SLと、音出力ユニット130SRとを備えている。
【0019】
ここで、音出力ユニット130Lはレフトスピーカ131Lを有し、音出力ユニット130Rはライトスピーカ131Rを有している。また、音出力ユニット130SLはサラウンドレフトスピーカ131SLを有し、音出力ユニット130SRはサラウンドライトスピーカ131SRを有している。
【0020】
さらに、音響装置100は、集音手段としての集音ユニット140と、表示ユニット150と、操作入力ユニット160とを備えている。
【0021】
なお、制御ユニット110以外の要素120〜160は、制御ユニット110に接続されている。
【0022】
制御ユニット110は、音響装置100の全体を統括制御する。この制御ユニット110の詳細については、後述する。
【0023】
ドライブユニット120は、音声コンテンツが記録されたコンパクトディスクCDがドライブユニット120に挿入されると、その旨を制御ユニット110に報告する。そして、ドライブユニット120は、コンパクトディスクCDが挿入された状態で、制御ユニット110から音声コンテンツの再生指令DVCを受けると、再生指定がなされた音声をコンパクトディスクCDから読み出す。かかる音声コンテンツの読み出し結果は、オーディオ信号であるコンテンツデータCTDとして、制御ユニット110へ向けて送られる。
【0024】
なお、コンパクトディスクCDには、音声コンテンツが、4チャンネルサラウンド方式で記録されているものとする。かかる4チャンネルサラウンド方式では、音声チャンネルとして、レフトチャンネル(以下、「Lチャンネル」とも記す)、ライトチャンネル(以下、「Rチャンネル」とも記す)、サラウンドレフトチャンネル(以下、「SLチャンネル」とも記す)及びサラウンドライトチャンネル(以下、「SRチャンネル」とも記す)が用意されている。
【0025】
音出力ユニット130L〜130SRのそれぞれは、上述したスピーカ131L〜131SRの他に、制御ユニット110から受信した音声出力信号AOSL〜AOSSRを増幅する増幅器を備えている。これらの音出力ユニット130L〜130SRは、制御ユニット110から送られてきた音声出力信号AOSL〜AOSSRに従って、計測信号、楽曲等を再生して出力する。
【0026】
本実施形態では、図2に示されるように、音出力ユニット130Lのレフトスピーカ131Lは、助手席側の前方ドア筐体内に配置される。このレフトスピーカ131Lは、助手席側を向くように配設されている。
【0027】
音出力ユニット130Rのライトスピーカ131Rは、運転席側の前方ドア筐体内に配置される。このライトスピーカ131Rは、運転席側を向くように配設されている。
【0028】
音出力ユニット130SLのサラウンドレフトスピーカ131SLは、助手席側後部の筐体内に配置される。このサラウンドレフトスピーカ131SLは、助手席側の後部座席を向くように配設されている。
【0029】
音出力ユニット130SRのサラウンドライトスピーカ131SRは、運転席側後部の筐体内に配置される。このサラウンドライトスピーカ131SRは、運転席側の後部座席を向くように配設されている。
【0030】
図1に戻り、上記の集音ユニット140は、例えば、(i)周囲の音を収集して電気的なアナログ音声信号とするマイクロフォン、(ii)マイクロフォンから出力されたアナログ音声信号を増幅する増幅器、(iii)増幅されたアナログ音声信号をデジタル音声信号に変換するAD変換器(Analog to Digital Converter)とを備えて構成されている。ここで、マイクロフォンは、音場空間ASPにおける所定の少なくとも1つの位置に配置されている。各スピーカ131L〜131SRから出力された計測音声の集音ユニット140による集音結果は、集音結果データAADとして、制御ユニット110に報告される。
【0031】
上記の表示ユニット150は、例えば、(i)液晶パネル、有機EL(Electro Luminescence)パネル、PDP(Plasma Display Panel)等の表示デバイス151と、(ii)制御ユニット110から送出された表示制御データに基づいて、表示ユニット150全体の制御を行うグラフィックレンダラ等の表示コントローラと、(iii)表示画像データを記憶する表示画像メモリ等を備えて構成されている。この表示ユニット150は、制御ユニット110からの表示データIMDに従って、操作ガイダンス情報等を表示する。
【0032】
上記の操作入力ユニット160は、音響装置100の本体部に設けられたキー部、及び/又はキー部を備えるリモート入力装置等により構成される。ここで、本体部に設けられたキー部としては、表示ユニット150の表示デバイス151に設けられたタッチパネルを用いることができる。なお、キー部を有する構成に代えて、又は併用して音声認識技術を利用して音声にて入力する構成を採用することもできる。
【0033】
この操作入力ユニット160を利用者が操作することにより、音響装置100の動作内容の設定が行われる。例えば、自動音場補正の実行指令、音声コンテンツの再生指令等を、利用者が操作入力ユニット160を利用して行う。こうした入力内容は、操作入力データIPDとして、操作入力ユニット160から制御ユニット110へ向けて送られる。
【0034】
次に、上記の制御ユニット110について説明する。上述したように、制御ユニット110は、音響装置100の全体を統括制御する。この制御ユニット110は、図3に示されるように、制御処理部111と、チャンネル信号処理部112と、出力信号選択部113とを備えている。また、制御ユニット110は、アナログ変換部114と、音量調整部115とを備えている。さらに、制御ユニット110は、計測信号発生部116を備えている。
【0035】
上記の制御処理部111は、操作入力ユニット160に入力された指令入力や集音ユニット140による集音結果に基づいて、チャンネル信号処理部112、出力信号選択部113、音量調整部115及び計測信号発生部116を制御する。また、制御処理部111は、ドライブユニット120及び表示ユニット150を制御する。この制御処理部111の詳細については、後述する。
【0036】
上記のチャンネル信号処理部112は、ドライブユニット120から送られてきたコンテンツデータCTDを処理し、スピーカ131L〜131SRに供給される音声出力信号AOSL〜AOSSR(図1参照)の周波数特性の調整、及び、音声コンテンツの再生時におけるスピーカ131L〜131SR相互間における音声出力タイミングを調整する。このチャンネル信号処理部112は、図4に示されるように、チャンネル分離部210と、周波数特性補正部220と、信号遅延部230とを備えている。
【0037】
上記のチャンネル分離部210は、ドライブユニット120からのコンテンツデータCTDを受ける。そして、チャンネル分離部210は、制御処理部111からのコンテンツ再生制御指令CSCに従って、コンテンツデータCTDを展開し、オーディオ信号であるデジタル音データ信号を生成する。引き続き、チャンネル分離部210は、生成されたデジタル音データ信号を解析し、デジタル音データ信号に含まれるチャンネル指定情報に従って、デジタル音データ信号を、4チャンネルサラウンド方式におけるL〜SRチャンネルに対応する4個の分離チャンネル信号SCDL,SCDR,SCDSL,SCDSRに分離する。このようにして分離された分離チャンネル信号SCDL〜SCDSRは、周波数特性補正部220へ向けて送られる。
【0038】
上記の周波数特性補正部220は、制御処理部111からの周波数特性補正指令FCCに従って、チャンネル分離部210から送られてきた分離チャンネル信号SCDL〜SCDSRのそれぞれの周波数特性を補正する。かかる機能を有する周波数特性補正部220は、図5に示されるように、4個の個別補正部221L〜221SRを備えている。
【0039】
各個別補正部221L〜221SRは、例えば、イコライザ機能を有しており、周波数特性補正指令FCCにおける個別周波数特性補正指令FCCL〜FCCSRにより指定された周波数特性補正を、分離チャンネル信号SCDL〜SCDSRに対して施す。かかる周波数特性補正結果は、周波数特性補正信号FCDL〜FCDSRとして、信号遅延部230へ向けて送られる。
【0040】
上記の信号遅延部230は、制御処理部111からの遅延制御指令DLCに従って、周波数特性補正部220から送られてきた周波数特性補正信号FCDL〜FCDSRのそれぞれを所定時間だけ遅延させる。かかる機能を有する信号遅延部230は、図6に示されるように、4個の遅延器231L〜231SRを備えている。
【0041】
各遅延器231L〜231SRは、遅延制御指令DLCにおける個別遅延制御指令DLCL〜DLCSRにより指定された遅延時間DLL〜DLSRだけ、周波数特性補正信号FCDL〜FCDSRを遅延させる。かかる遅延結果は、チャンネル処理信号PCDL〜PCDSRとして、出力信号選択部113へ向けて送られる。
【0042】
図3に戻り、上記の出力信号選択部113は、チャンネル信号処理部112からのチャンネル処理信号PCDL〜PCDSRと、計測信号発生部116からの後述する計測信号MSDとを受ける。そして、出力信号選択部113は、制御処理部111からの出力信号選択指令ODSに従って、アナログ変換部114に対し、チャンネル処理信号PCDL〜PCDSRの供給、計測信号MSDの供給、及び、いずれの信号も供給しないかを選択する。かかる機能を有する出力信号選択部113は、図7に示されるように、4個のスイッチ素子113L〜113SRを備えている。
【0043】
各スイッチ素子113L〜113SRは、入力端子としてA端子及びB端子を有するとともに、出力端子としてC端子を有している。A端子はチャンネル信号処理部112の信号遅延部230に接続された端子であり、B端子は計測信号発生部116に接続された端子である。また、C端子はアナログ変換部114に接続された端子である。各スイッチ素子113L〜113SRでは、A端子でチャンネル処理信号PCDL〜PCDSRを受けるとともに、B端子で計測信号MSDを受ける。そして、制御処理部111からの出力信号選択指令ODSにおける個別出力選択指令ODSL〜ODSSRに従って、A端子とC端子とを導通したり、B端子とC端子とを導通したり、更に、A端子及びB端子のいずれともC端子を導通しなかったりする。スイッチ素子113L〜113SRのC端子からは、選択された信号(無信号を含む)が、音出力選択信号PBDL〜PBDSRとしてアナログ変換部114へ向けて送られる。
【0044】
図3に戻り、上記のアナログ変換部114は、出力信号選択部113から送られてきたデジタル信号である音出力選択信号PBDL〜PBDSRを、それぞれアナログ信号に変換する。このアナログ変換部114は、当該4種のデジタル信号に対応して、互いに同様に構成された4個のDA変換器(Digital to Analogue Converter)を備えている。このアナログ変換部114による変換結果であるアナログ信号PBSL〜PBSSRは、音量調整部115へ向けて送られる。
【0045】
上記の音量調整部115は、アナログ変換部114からのアナログ信号PBSL〜PBSSRを受ける。そして、音量調整部115は、アナログ信号PBSL〜PBSSRのそれぞれに対して、制御処理部111からの音量調整指令VLCに従って、音量を調整する。かかる調整結果は、音声出力信号AOSL〜AOSSRとして、音出力ユニット130L〜130SRへ向けて出力される。
【0046】
上記の計測信号発生部116は、自動音場補正に利用されるテスト音声信号を発生する。この計測信号発生部116は、図8に示されるように、特性計測信号発生部241と、同期計測信号発生部242と、計測信号選択部243とを備えている。
【0047】
特性計測信号発生部241は、制御処理部111からスピーカ指定を含む特性計測信号発生指令FGCを受けると、指定された音出力ユニットのスピーカから出力された音声の集音位置における周波数特性及び音量バランスを計測するための信号を発生し、特性計測信号FGDとして計測信号選択部243へ向けて送る。ここで、特性計測信号発生部241が発生させる特性計測信号FGDとしては、例えば、ピンクノイズ信号が採用される。
【0048】
同期計測信号発生部242は、制御処理部111から同期計測信号発生指令SGCを受けると、パルス的に音声を発生させる同期計測信号SGDを発生させる。こうして発生された同期計測信号SGDは、計測信号選択部243へ向けて送られる。
【0049】
計測信号選択部243は、スイッチ素子を備えて構成されている。このスイッチ素子は、入力端子としてA端子及びB端子を有するとともに、出力端子としてC端子を有している。A端子は特性計測信号発生部241に接続された端子であり、B端子は同期計測信号発生部242に接続された端子である。A端子では特性計測信号FGDを受け、B端子では同期計測信号SGDを受ける。そして、制御処理部111からの選択指令SGSに従って、A端子とC端子とを導通したり、B端子とC端子とを導通したり、更には、A端子及びB端子のいずれともC端子を導通しなかったりする。C端子からは、選択された信号が、計測信号MSDとして出力信号選択部113へ向けて送られる。
【0050】
図3に戻り、次に、制御処理部111について説明する。この制御処理部111は、上述した他の構成要素を制御しつつ、音響装置100の機能を発揮させる。この制御処理部111は、図9に示されるように、制御部251と、音場補正制御手段及び判定手段としての自動音場補正管理部252と、自動音場補正部253とを備えている。
【0051】
上記の制御部251は、音響装置100における「再生モード」と「自動音場補正モード」との2つのモードの動作を制御する。ここで、「再生モード」とはコンパクトディスクCDから音声コンテンツを読み出してオーディオ信号を再生するモードである。そして、「自動音場補正モード」とは計測信号MSDを発生させて計測し、音出力ユニット130L〜130SRのそれぞれからの音声の想定聴取位置における到達タイミングの同期及び音量バランス、並びに音出力ユニット130L〜130SRに供給される音声出力信号AOSL〜AOSSRの周波数特性を自動的に補正するモードである。
【0052】
制御部251は、操作入力ユニット160から受けた操作入力データIPDを解析し、「再生モード」と「自動音場補正モード」のいずれかの動作制御を行う。より具体的には、制御部251は、通常は、「再生モード」の動作の制御を行う。一方、操作入力ユニット160から自動音場補正の開始指令や再開指令を受けると、制御部251は、「自動音場補正モード」の動作の制御を行う。そして、制御部251は、操作入力ユニット160から自動音場補正中断指令を受けたとき、又は、自動音場補正処理が完了したときに、「自動音場補正モード」の動作制御を終了し、「再生モード」の動作制御に復帰する。
【0053】
制御部251は、「再生モード」の動作制御に際し、出力信号選択部113へ向けて、スイッチ素子113L〜113SRの全てについて、A端子とC端子とを導通させるべきことを指定する出力信号選択指令ODSを送る。この結果、信号遅延部230からのチャンネル処理信号PCDL〜PCDSRが、出力信号選択部113を介して、音出力選択信号PBDL〜PBDSRとして、アナログ変換部114へ向けて供給されるようになる。
【0054】
この制御部251は、「再生モード」の動作制御に際し、利用者が再生すべき音声コンテンツの指定を支援するための案内画面を表示ユニット150に表示させる。そして、操作入力ユニット160から音声コンテンツを指定した再生指令が入力されると、制御部251は、ドライブユニット120を制御して、音声コンテンツのデータ読み出しを制御する。
【0055】
また、制御部251は、「再生モード」の動作制御に際し、チャンネル分離部210を制御して、コンテンツデータCTDを4チャンネルサラウンド方式における4個の分離チャンネル信号SCDL〜SCDSRに分離させる。
【0056】
また、制御部251は、「再生モード」の動作制御に際し、周波数特性補正部220を制御し、音出力ユニット130L〜130SRに供給される音声出力信号AOSL〜AOSSRの周波数特性を調整する。この周波数特性の制御に際して、制御部251は、操作入力ユニット160に入力された周波数特性補正指定に基づいて周波数特性調整指令FCCを生成し、周波数特性補正部220へ向けて送る。
【0057】
また、制御部251は、「再生モード」の動作制御に際し、音量調整部115を制御して、音出力ユニット130L〜130SRのスピーカ131L〜131SRからの出力音量を調整する。この出力音量の制御に際して、制御部251は、操作入力ユニット160に入力された音量指定や、集音ユニット140による集音結果から得られる騒音レベルに基づいて音量調整指令VLCを生成し、音量調整部115へ向けて送る。
【0058】
制御部251は、「自動音場補正モード」の動作制御に際して、操作入力ユニット160からの自動音場補正の開始指令、中断指令及び再開指令が入力された報告を操作入力データIPDとして受けて、自動音場補正の開始、中断及び再開の制御を行う。かかる制御は、制御部251が、自動音場補正管理部252へ動作指令ACIを発行することにより行われる。
【0059】
また、制御部251は、「自動音場補正モード」の動作制御に際して、自動音場補正部253から、スピーカの種類、出力音量及びテスト音声信号の種類を指定したテスト音声出力要求REQを受ける。このテスト音声出力要求REQを受けると、制御部251は、出力信号選択部113、音量調整部115及び計測信号発生部116を制御して、指定されたスピーカから、指定された音量で、指定されたテスト音声を出力させる制御を行う。
【0060】
また、制御部251は、「自動音場補正モード」の動作制御に際して、自動音場補正部253から、処理結果ACRを受ける。この処理結果ACRを受けた制御部251は、処理結果ACRにより指定された、音声出力タイミング設定情報、バランス設定情報及び周波数特性設定情報に従って、信号遅延部230に対する遅延時間設定、音量調整部115に対する音量設定及び周波数特性補正部220に対する周波数特性設定を行うようになっている。
【0061】
上記の自動音場補正管理部252は、制御部251による制御のもとで、自動音場補正部253の動作の開始、中断及び再開の制御を行う。なお、後述するように、自動音場補正部253は、複数の種類の調整処理を行うようになっており、自動音場補正管理部252は、当該複数の調整処理ごとに、処理の開始、中断及び再開を制御するようになっている。かかる機能を有する自動音場補正管理部252は、図10に示されるように、記憶部261と、中断制御部262と、再開制御部263と、実行制御部265とを備えている。
【0062】
上記の記憶部261は、自動音場補正部253における処理結果を記憶する。この記憶部261には、図11に示されるように、カレントバッファポインタCBPと、第1バッファBUF1と、第2バッファBUF2とが設けられており、いわゆるトグルバッファ構成が実現されている。そして、第jバッファBUFj(j=1,2)のそれぞれは、図12に示されるように、自動音場補正部253における各段階の処理結果が格納されるようになっている。なお、後述するように、自動音場補正部253における第1段階処理はスピーカ確認処理であり、第2段階処理は位置関係確認処理となっている。
【0063】
なお、以下の説明において、第jバッファBUFj(j=1,2)のうち、カレントバッファポインタCBPが示している方のバッファを「カレントバッファ」ともいい、カレントバッファポインタCBPが示している方でないバッファを「前回バッファ」ともいう。
【0064】
図10に戻り、上記の中断制御部262は、制御部251からの動作指令ACIにおける中断指令ACIPを受ける。この中断指令ACIPを受けると、中断制御部262は、中断指令SPIを再開制御部263及び実行制御部265へ向けて送る。
【0065】
上記の再開制御部263は、制御部251からの動作指令ACIにおける再開指令ACIRを受ける。この再開指令ACIRを受けると、再開制御部263は、第1段階処理であるスピーカ確認処理及び第2段階処理である位置関係確認処理を実行させるべき旨の第1の再開指令を動作指令RSIとして実行制御部265へ向けて送る。
【0066】
また、再開制御部263は、第1の再開指令に対応する動作が完了した旨の応答RSPを実行制御部265から受けると、記憶部261から第1及び第2バッファBUF1,BUF2内の第1段階処理結果及び第2段階処理結果を読出データMRDとして読み出す。そして、再開制御部263は、第1バッファBUF1内の第1段階処理結果及び第2段階処理結果と、第2バッファBUF2内の第1段階処理結果及び第2段階処理結果とが一致するといえるか否かを判定する。これにより、前回の自動音場補正が、今回の自動音場補正と同一の条件で行われたものであったか否かが判定される。
【0067】
当該判定の結果が否定的であった場合には、再開制御部263は、第3段階処理から所定順序に従って処理を実行させるべき旨の第2の再開指令を動作指令RSIとして実行制御部265へ向けて送る。
【0068】
一方、当該判定の結果が肯定的であった場合には、再開制御部263は、前回バッファを参照し、中断された前回の自動音場補正によりどの段階まで処理が終了していたかを判断する。引き続き、再開制御部263は、前回の自動音場補正において既に終了しており、省略可能な個別音場補正処理の存在を確認する。そして、再開制御部263は、中断された前回の自動音場補正において終了した段階の次の段階を指定して、指定された段階から所定順序に従って処理を実行させるべき旨の第3の再開指令を動作指令RSIとして実行制御部265へ向けて送る。
【0069】
また、再開制御部263は、中断制御部262からの中断指令SPIを受ける。この中断指令SPIを受けた再開制御部263は、直ちに処理を中止する。
【0070】
上記の実行制御部265は、制御部251からの動作指令ACIにおける通常実行指令ACINを受ける。この通常実行指令ACINを受けた実行制御部265は、第1段階から所定順序に従った実行を自動音場補正部253にさせるべく、動作制御指令ACSを順次、自動音場補正部253へ向けて送る。
【0071】
また、実行制御部265は、中断制御部262からの中断指令SPIを受ける。この中断指令SPIを受けた実行制御部265は、自動音場補正部253において、その時点で実行している段階の処理を中止すべき旨の動作制御指令ACSを自動音場補正部253へ向けて送る。そして、実行制御部265は、その後における自動的な動作制御指令ACSの発行を中止する。
【0072】
また、実行制御部265は、再開制御部263から動作指令RSIを受ける。この動作指令RSIが上記の第1の再開指令であった場合には、実行制御部265は、第1段階処理及び第2段階処理を順次実行させるべく、動作制御指令ACSを順次、自動音場補正部253へ向けて送る。また、動作指令RSIが上記の第2の再開指令であった場合には、実行制御部265は、第3段階から所定順序に従った実行を自動音場補正部253にさせるべく、動作制御指令ACSを順次、自動音場補正部253へ向けて送る。
【0073】
なお、実行制御部265は、通常動作指令ACIN又は上記の第1の再開指令を受けた場合には、動作制御指令ACSの発行に先立って、記憶部261内のカレントバッファポインタCBPを更新する。そして、実行制御部265は、更新後のカレントバッファの内容を初期化する。
【0074】
さらに、動作指令RSIが上記の第3の再開指令であった場合には、実行制御部265は、第3の再開指令において指定された段階から所定順序に従った実行を自動音場補正部253にさせるべく、動作制御指令ACSを順次、自動音場補正部253へ向けて送る。なお、第3の再開指令において指定された段階が第3段階以外である場合には、前回バッファにおける第3段階から、指定された段階の前の段階までの処理結果を、カレントバッファ内にコピーする。
【0075】
また、実行制御部265は、自動音場補正部253からの第1段階処理結果であるスピーカ構成情報PRS、第2段階処理結果である位置関係確認情報PRL、及び第3段階以降の処理結果ACRを受ける。こうした結果を受けた実行制御部265は、それらをカレントバッファ内に書き込むべく、書込データMWDとして記憶部261へ送る。
【0076】
図9に戻り、上記の自動音場補正部253は、自動音場補正管理部252による管理のもとで、自動音場補正処理を行う。かかる機能を有する自動音場補正部253は、図13に示されるように、スピーカ確認手段としてのスピーカ構成確認部271と、位置関係確認手段としての位置関係確認部272と、音声出力タイミング調節手段としての同期補正制御部273とを備えている。また、自動音場補正部253は、音量バランス調整手段としてのバランス補正制御部274と、周波数特性調整手段としての周波数特性補正制御部275とを備えている。なお、本実施形態では、スピーカ構成確認部271及び位置関係確認部272からスピーカ状態確認手段が構成されるようになっている。また、本実施形態では、同期補正制御部273、バランス補正制御部274及び周波数特性補正制御部275から音場補正手段が構成されるようになっている。
【0077】
上記のスピーカ構成確認部271は、自動音場補正管理部252からの動作制御指令ACSにおけるスピーカ構成確認制御指令ACSCを受ける。このスピーカ構成確認制御指令ACSCとしてスピーカ構成確認開始指令を受けると、スピーカ構成確認部271は、スピーカ構成確認処理を実行する。このスピーカ構成確認処理に際して、スピーカ構成確認部271は、初期に想定されているスピーカ構成に従って、想定スピーカが存在しているか否かを確認する。また、スピーカ構成確認制御指令ACSCとしてスピーカ構成確認終了指令を受けると、スピーカ構成確認部271は、スピーカ構成確認処理を終了する。
【0078】
かかるスピーカ構成確認処理に際し、スピーカ構成確認部271は、存在が想定されているスピーカのそれぞれについて、スピーカの種類、出力音量及びテスト音声信号の種類を指定したテスト音声出力要求REQCを、制御部251へ向けて送る。こうしたテスト音声出力要求REQCは、スピーカの種類と出力音量との組み合わせごとに発行される。ここで、指定される出力音量の値は、予め定められた順序で段階的に増加するようになっている。なお、本実施形態では、テスト音声出力要求REQCでは、テスト音声信号として特性計測信号FGDが指定されるようになっている。
【0079】
そして、スピーカ構成確認部271は、テスト音声出力要求REQCの発行ごとに、集音ユニット140からの集音結果データAADを監視する。この監視により、指定したスピーカからの出力音声が集音されたと判断できた場合には、スピーカ構成確認部271は、指定したスピーカが存在すると判定する。一方、予め定められた最大音量まで出力音量を増加させたとしても、指定したスピーカからの出力音声が集音されたと判断できない場合には、スピーカ構成確認部271は、指定したスピーカが存在しないと判定する。
【0080】
こうした集音結果の監視結果により、スピーカ構成確認部271は、音響装置100のスピーカ構成を確認する。この確認結果の情報は、スピーカ構成情報PRSとして自動音場補正管理部252へ報告される。
【0081】
なお、スピーカ構成確認部271によるスピーカ構成確認処理は、上述したように、自動音場補正に際して、最初の段階すなわち第1段階として行われるようになっている。
【0082】
上記の位置関係確認部272は、自動音場補正管理部252からの動作制御指令ACSにおける位置関係確認制御指令ACSPを受ける。この位置関係確認制御指令ACSPとして位置関係確認開始指令を受けると、位置関係確認部272は、各スピーカと集音位置との位置関係を確認する位置関係確認処理を実行する。また、位置関係確認制御指令ACSPとして位置関係確認終了指令を受けると、位置関係確認部272は、位置関係確認処理を終了する。
【0083】
なお、位置関係確認開始指令では、上述のスピーカ構成確認部271によって得られたスピーカ構成情報が指定されるようになっている。
【0084】
かかる位置関係確認処理では、まず、指定されたスピーカ構成に含まれるスピーカのそれぞれについて、スピーカの種類、所定の位置関係確認用出力音量及びテスト音声信号の種類を指定したテスト音声出力要求REQPを、制御部251へ向けて送る。こうしたテスト音声出力要求REQPは、スピーカの種類ごとに発行される。なお、テスト音声出力要求REQPでは、テスト音声信号として同期計測信号SGDが指定されるようになっている。
【0085】
そして、位置関係確認部272は、テスト音声出力要求REQPの発行ごとに、集音ユニット140からの集音結果データAADを監視する。この監視により、位置関係確認部272は、指定したスピーカからの出力音声が、指定されたスピーカから出力されてから集音ユニット140へ到達するまでの伝搬遅延時間を推定する。こうして推定された各スピーカの伝搬遅延時間が、位置関係確認情報PRLとして、位置関係確認部272から自動音場補正管理部252へ報告される。
【0086】
なお、位置関係確認部272による位置関係確認処理は、上述したように、自動音場補正に際して、第2段階の処理として行われるようになっている。
【0087】
上記の同期補正制御部273は、自動音場管理部252からの動作制御指令ACSにおける同期補正制御指令ACSDを受ける。この同期補正制御指令ACSDとして同期補正開始指令を受けると、同期補正制御部273は、各スピーカに供給される音声出力信号AOSL〜AOSSRに付与されるべき遅延時間補正の制御処理である同期補正を開始する。また、同期補正制御指令ACSDとして同期補正終了指令を受けると、同期補正制御部273は、同期補正を終了する。
【0088】
なお、同期補正開始指令では、上述のスピーカ構成確認部271によって得られたスピーカ構成情報、及び、位置関係確認部272によって得られた位置関係確認情報が指定されるようになっている。
【0089】
かかる同期補正処理に際して、同期補正制御部273は、同期補正開始指令において指定されているスピーカ構成情報及び位置関係確認情報に基づいて、音声出力信号AOSL〜AOSSRのそれぞれに付与されるべき遅延時間(DLL〜DLSR)を算出する。この算出結果は、同期補正制御部273から、同期補正情報ACRDとして制御部251及び自動音場補正管理部252へ報告される。
【0090】
上記のバランス補正制御部274は、自動音場補正管理部252からの動作制御指令ACSにおける音量バランス補正制御指令ACSBを受ける。この音量バランス補正制御指令ACSBとして、音量バランス補正開始指令を受けると、バランス補正制御部274は、各スピーカに供給される音声出力信号AOSL〜AOSSRに対して行われるべき音量補正の制御処理を開始する。また、音量バランス補正制御指令ACSBとして、音量バランス補正終了指令を受けると、バランス補正制御部274は、音量補正の制御処理を終了する。
【0091】
なお、音量バランス補正開始指令では、上述のスピーカ構成確認部271によって得られたスピーカ構成情報が指定されるようになっている。
【0092】
かかる音量バランス補正制御に際して、バランス補正制御部274は、まず、指定されたスピーカ構成に含まれるスピーカのそれぞれ、又は、所定の組み合わせについて、スピーカの種類、所定のバランス測定用出力音量及びテスト音声信号の種類を指定したテスト音声出力要求REQBを、制御部251へ向けて送る。こうしたテスト音声出力要求REQBは、スピーカの種類ごとに発行される。なお、テスト音声出力要求REQBでは、テスト音声信号として特性計測信号FGDが指定されるようになっている。
【0093】
そして、バランス補正制御部274は、テスト音声出力要求REQBの発行ごとに、集音ユニット140からの集音結果データAADを監視する。この監視により、バランス補正制御部274は、指定したスピーカからの出力音声の集音ユニット140のマイクロフォンの位置における音量バランスを推定する。こうした音量バランスの推定を、左右方向及び前後方向について終了すると、バランス補正制御部274は、音声出力信号AOSL〜AOSSRに対して行われるべき音量補正値を算出する。この算出結果は、バランス補正制御部274から、音量バランス補正情報ACRBとして制御部251及び自動音場補正管理部252へ報告される。
【0094】
上記の周波数特性補正制御部275は、制御部251からの動作制御指令ACSにおける周波数特性補正制御指令ACSFを受ける。この周波数特性補正制御指令ACSFとして周波数特性補正開始指令を受けると、周波数特性補正制御部275は、各スピーカに供給される音声出力信号AOSL〜AOSSRに対して行われるべき周波数特性補正の制御処理を開始する。また、周波数特性補正制御指令ACSFとして周波数特性補正終了指令を受けると、周波数特性補正制御部275は、周波数特性補正の制御処理を終了する。
【0095】
なお、周波数特性補正開始指令では、上述のスピーカ構成確認部271によって得られたスピーカ構成情報が指定されるようになっている。
【0096】
かかる周波数特性補正制御に際して、周波数特性補正制御部275は、まず、指定されたスピーカ構成に含まれるスピーカのそれぞれについて、スピーカの種類、所定の周波数特定測定用出力音量及びテスト音声信号の種類を指定したテスト音声出力要求REQFを、制御部251へ向けて送る。こうしたテスト音声出力要求REQFは、スピーカの種類と出力音量との組み合わせごとに発行される。なお、テスト音声出力要求REQFでは、テスト音声信号として特性計測信号FGDが指定されるようになっている。
【0097】
そして、周波数特性補正制御部275は、テスト音声出力要求REQFの発行ごとに、集音ユニット140からの集音結果データAADを監視する。この監視結果を周波数解析することにより、周波数特性補正制御部275は、指定したスピーカからの出力音声の周波数特性を推定する。こうした周波数特性の推定を、指定されたスピーカ構成における全てのスピーカについて終了すると、周波数特性補正制御部275は、音声出力信号AOSL〜AOSSRに対して行われるべき周波数特性補正の態様を算出する。この算出結果は、周波数特性補正制御部275から、周波数特性補正情報ACRFとして制御部251及び自動音場補正管理部252へ報告される。
【0098】
[動作]
次に、上記のように構成された音響装置100の動作について、「自動音場補正モード」のときの動作、特に、自動音場補正の再開処理に主に着目して説明する。
【0099】
利用者が操作入力ユニット160に通常の自動音場補正指令を入力することにより、音響装置100の「自動音場補正モード」の動作が開始する。こうして、「自動音場補正モード」の動作が開始すると、図14に示されるように、制御部251が、通常実行指令ACINを自動音場補正管理部252へ送る。自動音場補正管理部252では、実行制御部265が通常実行指令ACINを受ける。この通常実行指令ACINを受けた実行制御部265が、ステップS11の通常実行制御処理を開始する。
【0100】
かかる通常実行制御処理では、実行制御部265が、まず、記憶部261内のカレントバッファポインタを更新するとともに、カレントバッファの内容を初期化する。引き続き、実行制御部265は、第1段階から所定順序に従った実行を自動音場補正部253にさせるべく、動作制御指令ACSによる個別段階の処理の開始指令を順次、自動音場補正部253へ向けて送る。こうした個別段階の処理の開始指令を受けると、自動音場補正部253が、ステップS12における個別段階処理を開始する。
【0101】
すなわち、実行制御部265は、まず、第1段階処理であるスピーカ構成確認処理を開始させるべく、自動音場補正部253のスピーカ構成確認部271へ向けて、スピーカ構成確認開始指令を発行する。このスピーカ構成確認開始指令を受けたスピーカ構成確認部271は、存在が想定されているスピーカのそれぞれについて、スピーカの種類、出力音量及びテスト音声信号の種類を指定したテスト音声出力要求REQCを、制御部251へ向けて送る。こうしたテスト音声出力要求REQCは、上述したように、スピーカの種類と出力音量との組み合わせごとに発行される。
【0102】
テスト音声出力要求REQCを受けるたびに、制御部251は、出力信号選択部113、音量調整部115及び計測信号発生部116を制御して、指定されたスピーカから、指定された音量で、指定されたテスト音声を出力させる。
【0103】
一方、スピーカ構成確認部271は、テスト音声出力要求REQCの発行ごとに、集音ユニット140からの集音結果データAADを監視する。この監視により、指定したスピーカからの出力音声が集音されたと判断できた場合には、スピーカ構成確認部271は、指定したスピーカが存在すると判定する。一方、予め定められた最大音響まで出力音量を増加させたとしても、指定したスピーカからの出力音声が集音されたと判断できない場合には、スピーカ構成確認部271は、指定したスピーカが存在しないと判定する。
【0104】
こうした集音結果の監視結果により、スピーカ構成確認部271は、音響装置100のスピーカ構成を確認する。この確認結果の情報は、スピーカ構成情報PRSとして実行制御部265へ報告される。スピーカ構成情報PRSを受けた実行制御部265は、当該スピーカ構成情報PRSをカレントバッファ内に格納する。
【0105】
引き続き、実行制御部265は、第2段階処理である位置関係確認処理を開始させるべく、自動音場補正部253の位置関係確認部272へ向けて、位置関係確認開始指令を発行する。この位置関係確認開始指令を受けた位置関係確認部272は、指定されたスピーカ構成に含まれるスピーカのそれぞれについて、スピーカの種類、出力音量及びテスト音声信号の種類を指定したテスト音声出力要求REQPを、制御部251へ向けて送る。こうしたテスト音声出力要求REQPは、スピーカの種類と出力音量との組み合わせごとに発行される。
【0106】
テスト音声出力要求REQPを受けるたびに、制御部251は、出力信号選択部113、音量調整部115及び計測信号発生部116を制御して、指定されたスピーカから、指定された音量で、指定されたテスト音声を出力させる。
【0107】
一方、位置関係確認部272は、テスト音声出力要求REQPの発行ごとに、集音ユニット140からの集音結果データAADを監視する。この監視により、位置関係確認部272は、指定したスピーカからの出力音声が、指定されたスピーカから出力されてから集音ユニット140へ到達するまでの伝搬遅延時間を推定する。こうした伝搬遅延時間の推定を、指定されたスピーカ構成に含まれる全てのスピーカについて終了すると、位置関係確認部272は、これらの推定結果を、位置関係確認情報PRLとして、位置関係確認部272から自動音場補正管理部252へ報告する。位置関係確認情報PRLを受けた実行制御部265は、当該位置関係確認情報PRLをカレントバッファ内に格納する。
【0108】
次に、実行制御部265は、第3段階以降の処理を所定順序に従って行わせるための制御を行う。かかる第3段階以降の処理としては、本実施形態としては、同期補正処理、音量バランス補正処理及び周波数特性補正処理がある。なお、これらの処理の実行順序は、実験、シミュレーション、経験等に基づき、最終的な補正結果を好適なものとするという観点から定められる。
【0109】
上記の同期補正処理に際しては、実行制御部265が、自動音場補正部253の同期補正制御部273へ向けて同期補正開始指令を発行する。この同期補正開始指令を受けた同期補正制御部273は、指定された各スピーカに関する伝搬遅延時間に基づいて、音声出力信号AOSL〜AOSSRのそれぞれに付与されるべき遅延時間(DLL〜DLSR)を算出する。この算出結果は、同期補正制御部273から、同期補正情報ACRDとして制御部251及び実行制御部265へ報告される。
【0110】
同期補正情報ACRDを受けた実行制御部265は、当該同期補正情報ACRDをカレントバッファ内に格納する。また、同期補正情報ACRDを受けた制御部251は、同期補正情報ACRDにおいて報告された遅延時間の指定を、信号遅延部230へ送る。こうして、同期補正処理が終了する。
【0111】
上記の音量バランス補正処理に際しては、実行制御部265が、自動音場補正部253のバランス補正制御部274へ向けて音量バランス補正開始指令を発行する。この音量バランス補正開始指令を受けたバランス補正制御部274は、まず、指定されたスピーカ構成に含まれるスピーカのそれぞれ、又は、所定の組み合わせについて、スピーカの種類、出力音量及びテスト音声信号の種類を指定したテスト音声出力要求REQBを、制御部251へ向けて送る。こうしたテスト音声出力要求REQBは、スピーカの種類と出力音量との組み合わせごとに発行される。
【0112】
そして、バランス補正制御部274は、テスト音声出力要求REQBの発行ごとに、集音ユニット140からの集音結果データAADを監視する。この監視により、バランス補正制御部274は、指定したスピーカからの出力音声の集音ユニット140のマイクロフォンの位置における音量バランスを推定する。こうした音量バランスの推定を、左右方向及び前後方向について終了すると、バランス補正制御部274は、音声出力信号AOSL〜AOSSRに対して行われるべき音量補正値を算出する。この算出結果は、バランス補正制御部274から、音量バランス補正情報ACRBとして制御部251及び実行制御部265へ報告される。
【0113】
音量バランス補正情報ACRBを受けた実行制御部265は、当該音量バランス補正情報ACRBをカレントバッファ内に格納する。また、音量バランス補正情報ACRBを受けた制御部251は、音量バランス補正情報ACRBにおいて報告された音量補正指定を、音量調整部115へ送る。こうして、音量バランス補正処理が終了する。
【0114】
上記の周波数特性補正処理に際しては、実行制御部265が、自動音場補正部253の周波数特性補正制御部275へ向けて周波数特性補正開始指令を発行する。この周波数特性補正開始指令を受けた周波数特性補正制御部275は、まず、指定されたスピーカ構成に含まれるスピーカのそれぞれについて、スピーカの種類、出力音量及びテスト音声信号の種類を指定したテスト音声出力要求REQFを、制御部251へ向けて送る。こうしたテスト音声出力要求REQFは、スピーカの種類と出力音量との組み合わせごとに発行される。
【0115】
そして、周波数特性補正制御部275は、テスト音声出力要求REQFの発行ごとに、集音ユニット140からの集音結果データAADを監視する。この監視結果を周波数解析することにより、周波数特性補正制御部275は、指定したスピーカからの出力音声の周波数特性を推定する。こうした周波数特性の推定を、指定されたスピーカ構成における全てのスピーカについて終了すると、周波数特性補正制御部275は、音声出力信号AOSL〜AOSSRに対して行われるべき周波数特性補正の態様を算出する。この算出結果は、周波数特性補正制御部275から、周波数特性補正情報ACRFとして制御部251及び実行制御部265へ報告される。
【0116】
周波数特性補正情報ACRFを受けた実行制御部265は、当該周波数特性補正情報ACRFをカレントバッファ内に格納する。また、周波数特性補正情報ACRFを受けた制御部251は、周波数特性補正情報ACRFにおいて報告された周波数特性補正指定を、周波数特性補正部220へ送る。こうして、周波数特性補正が終了する。
【0117】
以上のようなステップS11,S12の処理中に、利用者により操作入力ユニット160に自動音場補正の中断指令が入力されたことが制御部251に通知されると、制御部251が、中断指令ACIPを中断制御部262へ送る。この中断指令ACIPを受けた中断制御部262は、中断指令SPIを実行制御部265へ送る。
【0118】
中断指令SPIを受けた実行制御部265は、自動音場補正部253において、その時点で実行している段階の処理を中止すべき旨の動作制御指令ACSを自動音場補正部253へ向けて送る。そして、実行制御部265は、その後における自動的な動作制御指令ACSの発行を中止する。この結果、ステップS11及びステップS12の処理が終了する。
【0119】
なお、中断指令SPIは、再開制御部263へも送られる。中断指令SPIを受けると、再開制御部263は、後述する再開制御処理を直ちに中止する。
【0120】
上記のようにして、自動音場補正の中断後、利用者により操作入力ユニット160に自動音場補正の再開指令が入力されたことが制御部251に通知されると、図15に示されるように、制御部251が、再開指令ACIRを再開制御部263へ送る。この再開指令ACIRを受けた再開制御部263は、ステップ21の再開制御処理を開始する。
【0121】
この再開制御処理では、図16に示されるように、まず、ステップS31において、再開制御部263が、第1段階処理であるスピーカ確認処理及び第2段階処理である位置関係確認処理を実行させるべき旨の第1の再開指令を動作指令RSIとして実行制御部265へ向けて送る。引き続き、ステップS32において、再開制御部263は、中断指令SPIを受けたか否かを判定する。この判定の結果が肯定的であった場合(ステップS32:Y)には、処理ステップS21の処理が終了する。
【0122】
一方、ステップS32における判定の結果が否定的(ステップS32:N)であった場合には、処理はステップS33へ進む。このステップS33では、再開制御部263が、応答RSPを受けたか否かを判定する。
【0123】
ステップS33における判定の結果が否定的であった場合(ステップS33:N)には、処理はステップS32へ戻る。そして、ステップS33における判定の結果が肯定的となるまで、ステップS32,S33の処理が繰り返される。すなわち、応答RSP又は中断指令SPIの受信待ち状態となる。なお、応答RSPを受け、ステップS33における判定の結果が肯定的となった後の処理については、後述する。
【0124】
図15に戻り、再開制御部263からの第1の再開指令を受けた実行制御部265は、ステップS22の再開実行前処理を開始する。この再開実行前処理では、まず、実行制御部265が、まず、記憶部251内のカレントバッファポインタを更新するとともに、カレントバッファの内容を初期化する。
【0125】
引き続き、実行制御部265は、第1段階開始指令であるスピーカ構成確認開始指令を、自動音場補正部253のスピーカ構成確認部271へ向けて送る。このスピーカ構成確認開始指令を受けたスピーカ構成確認部271は、ステップS23において、第1段階処理であるスピーカ構成確認処理を上述のようにして実行し、確認結果であるスピーカ構成情報PRSを実行制御部265へ送る。
【0126】
スピーカ構成情報PRSを受けた実行制御部265は、当該スピーカ構成情報PRSをカレントバッファ内に格納する。引き続き、実行制御部265は、第2段階開始指令である位置関係確認開始指令を、自動音場補正部253の位置関係確認部272へ向けて送る。この位置関係確認開始指令を受けた位置関係確認部272は、ステップS24において、第2段階処理である位置関係確認処理を上述のようにして実行し、確認結果である位置関係確認情報PRLを実行制御部265へ送る。
【0127】
位置関係確認情報PRLを受けた実行制御部265は、当該位置関係確認情報PRLをカレントバッファ内に格納する。引き続き、実行制御部265は、応答RSPを再開制御部263へ送る。
【0128】
上述した図16におけるステップS32,S33の処理を繰り返している実行制御部265が、応答RSPを受けると、ステップS33における判定の結果が肯定的となり(ステップS33:Y)、処理がステップS34へ進む。このステップS34では、実行制御部265が、前回バッファ内にスピーカ確認情報が存在し、かつ、カレントバッファ内のスピーカ確認情報と、前回バッファ内のスピーカ確認情報とが一致するか否かを確認する。
【0129】
ステップS34における判定の結果が否定的であり(ステップS34:N)、前回の自動音場補正が今回の自動音場補正と同様の条件で実行されたと判断できないために、音場補正をやり直すことが必要であると判断される場合には、処理はステップS38へ進む。このステップS38では、再開制御部263が、第3段階処理から所定順序に従って処理を実行させるべき旨の第2の再開指令を実行制御部265へ向けて送る。その後、ステップ21の処理が終了する。
【0130】
一方、ステップS34における判定の結果が肯定的であった(ステップS34:Y)場合には、処理はステップS35へ進む。このステップS35では、実行制御部265が、前回バッファ内に位置関係確認情報が存在し、かつ、カレントバッファ内の位置関係確認情報と、前回バッファ内の位置関係確認情報とが許容範囲内で一致するか否かを確認する。
【0131】
ステップS35における判定の結果が否定的であり(ステップS35:N)、前回の自動音場補正が今回の自動音場補正と同様の条件で実行されたと判断できないために、音場補正をやり直すことが必要であると判断される場合には、処理はステップS38へ進む。このステップS38では、上述のように、再開制御部263が、第2の再開指令を実行制御部265へ向けて送る。その後、ステップ21の処理が終了する。
【0132】
一方、ステップS35における判定の結果が肯定的であった(ステップS34:Y)場合には、前回の自動音場補正が今回の自動音場補正と同様の条件で実行されたと判断され、処理はステップS36へ進む。このステップS36では、再開制御部263が、前回バッファを参照し、中断された前回の自動音場補正によりどの段階まで処理が終了していたかを判断する。引き続き、再開制御部263は、前回の自動音場補正において既に終了しており、省略可能な個別段階処理を特定する。
【0133】
次に、ステップS37において、再開制御部263が、中断された前回の自動音場補正において終了した段階の次の段階を指定して、指定された段階から所定順序に従って処理を実行させるべき旨の第3の再開指令を実行制御部265へ向けて送る。その後、ステップ21の処理が終了する。
【0134】
図15に戻り、再開制御部263からの第2又は第3の再開指令を受けた実行制御部265は、ステップS25の再開実行処理を開始する。この再開実行処理では、今後に実行することが必要な個別段階処理を、所定順序に従って自動音場補正部253に実行させるべく、動作制御指令ACSによる個別段階の処理の開始指令を順次、自動音場補正部253へ向けて送る。こうした個別段階の処理の開始指令を受けると、自動音場補正部253が、ステップS26における個別段階処理を開始する。
【0135】
以後、上述したステップS11,S12の場合と同様にして、必要な個別段階処理が、所定順序に従って実行される。
【0136】
以上説明したように、本実施形態では、自動音場補正を中断された後に再開する場合に、前回の自動音場補正の実行状況に基づいて、実行を省略可能な個別音場補正を特定する。そして、省略可能な個別音場補正を除く個別音場補正のみを実行する。したがって、自動音場補正が途中で中断されたとしても、中断された自動音場補正の処理結果を、合理的かつ効率的に利用するので、再開された自動音場補正の実行時間を合理的に短縮することができる。
【0137】
また、本実施形態では、省略可能な個別音場補正の判断を、スピーカ構成、及び、各スピーカと集音位置との位置関係が変化していないことを前提条件として行うので、中断された自動音場補正の処理結果を高い合理性をもって利用することができる。
【0138】
[実施形態の変形]
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0139】
例えば、上記の実施形態では、省略可能な個別音場補正の判断を、スピーカ構成、及び、各スピーカと集音位置との位置関係が変化していないことを前提条件として行うようにした。これに対し、スピーカ構成のみに基づいて、省略可能な個別音場補正の判断を行うようにしてもよい。
【0140】
また、上記の実施形態では、スピーカ構成確認時のテスト音声信号として特性計測信号を採用するようにしたが、同期計測信号を採用するようにしてもよい。
【0141】
また、上記の実施形態では、スピーカ構成確認に際して、各スピーカの存在のみを確認するようにしたが、各スピーカの出力特性を更に考慮することもできる。
【0142】
また、最初の個別各種音場補正として同期補正を行う場合には、位置関係確認部272と同期補正部273とを合体させることもできる。
【0143】
また、上記の実施形態における個別音場補正の種類は例示であり、音場補正の種類を少なくしたり、他の種類の音場補正を加えたりすることもできる。
【0144】
また、同期計測信号SGDとして、半波正弦波、インパルス波、三角波、鋸切り波、スポット正弦波、ホワイトノイズ、ピンクノイズ等を採用することができる。
【0145】
また、上記の実施形態では、ドライブユニット120をCDのドライブユニットとしたが、固定ディスクやDVDのドライブユニットとすることもできる。さらに、ラジオ放送や地上デジタルテレビ放送等の放送波受信回路や外部機器の音声入力回路等とすることもできる。
【0146】
また、上記の実施形態では、4チャンネルサラウンド方式を採用し、4個の音出力ユニットを備えることとしたが、音声コンテンツの読み出し結果であるオーディオ信号を適宜分離もしくは混合し、2個以上3個以下、又は、5個以上のスピーカから音出力をさせるようにする音響装置に音発明を適用することができる。
【0147】
なお、上記の実施形態における制御処理部を中央処理装置(CPU:Central Processor Unit)やDSP(Digital Signal Processor)を備えるコンピュータとして構成し、制御処理部の機能を、プログラムの実行によっても実現するようにすることができる。これらのプログラムは、CD−ROM、DVD等の可搬型記録媒体に記録された形態で取得されるようにしてもよいし、インターネットなどのネットワークを介した配送の形態で取得されるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】本発明の一実施形態に係る音響装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】図1の4個のスピーカの配置位置を説明するための図である。
【図3】図1の制御ユニットの構成を説明するためのブロック図である。
【図4】図3のチャンネル信号処理部の構成を説明するためのブロック図である。
【図5】図4の周波数特性補正部の構成を説明するためのブロック図である。
【図6】図4の信号遅延部の構成を説明するためのブロック図である。
【図7】図3の出力信号選択部の構成を説明するためのブロック図である。
【図8】図3の計測信号発生部の構成を説明するためのブロック図である。
【図9】図3の制御処理部の構成を説明するためのブロック図である。
【図10】図9の自動音場補正管理部の構成を説明するためのブロック図である。
【図11】図10の記憶部における記憶内容を説明するための図である。
【図12】図11のバッファにおける記憶内容を説明するための図である。
【図13】図9の自動音場補正部の構成を説明するためのブロック図である。
【図14】図1の装置における自動音場補正の開始から中断までの処理を説明するためのシーケンス図である。
【図15】図1の装置における自動音場補正の再開処理を説明するためのシーケンス図である。
【図16】図15における再開制御処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0149】
100 … 音響装置
131L〜131SR … スピーカ
140 … 集音ユニット(集音手段)
252 … 自動音場補正管理部(音場補正制御手段及び判定手段)
271 … スピーカ構成確認部(スピーカ確認手段、スピーカ状態確認
手段の一部)
272 … 位置関係確認部(位置関係確認手段、スピーカ状態確認手段
の一部))
273 … 同期補正制御部(音声出力タイミング調整手段、音場補正手
段の一部)
274 … バランス補正制御部(音量バランス調整手段、音場補正手段
の一部)
275 … 周波数特性補正制御部(周波数特性調整手段、音場補正手段
の一部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動音場補正の機能を有し、複数のスピーカから音場空間へ向けて音声を出力する音響装置であって、
前記音場空間内の集音位置における音声を集音する集音手段と;
前記複数のスピーカのそれぞれから出力された音声の前記集音手段による集音結果に基づいて、複数種類の音場補正処理を行う音場補正手段と;
前記自動音場補正の開始、中断及び再開指令の操作入力に応じて、前記音場補正処理の開始、中断及び再開に関する制御を行う音場補正制御手段と;
前記開始指令又は再開指令があった場合に、前記複数のスピーカの状態を確認するスピーカ状態確認手段と;
前記再開指令があった場合に、前記スピーカ状態確認手段の確認結果が前記開始指令時と前記再開指令時において一致するか否か判定する判定手段と;を備え、
前記音場補正制御手段は、前記音場補正処理の再開時に、前記判定手段の判定結果が否定的である場合には前記複数種類の音場補正処理をはじめから所定順序に従って段階的に実行し、肯定的である場合には中断前に終了していた段階の次の段階から前記所定順序に従って段階的に音場補正処理を実行する、ことを特徴とする音響装置。
【請求項2】
前記スピーカ状態確認手段は、前記複数のスピーカのそれぞれの存在を含むスピーカ単体状態を確認するスピーカ確認手段を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の音響装置。
【請求項3】
前記スピーカ単体状態には、前記複数のスピーカのそれぞれの音声出力特性が更に含まれる、ことを特徴とする請求項2に記載の音響装置。
【請求項4】
前記スピーカ確認手段は、前記複数のスピーカのそれぞれから出力された音声の前記集音手段による集音結果に基づいて、前記複数のスピーカのそれぞれのスピーカ単体状態を確認する、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の音響装置。
【請求項5】
前記スピーカ状態確認手段は、前記複数のスピーカのそれぞれと前記集音位置との位置関係を確認する位置関係確認手段を更に備える、ことを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の音響装置。
【請求項6】
前記位置関係確認手段は、前記複数のスピーカのそれぞれから出力された音声の前記集音手段による集音結果から推定される前記複数のスピーカのそれぞれから前記集音手段までの音声の伝搬遅延時間に基づいて、前記位置関係を確認する、ことを特徴とする請求項5に記載の音響装置。
【請求項7】
前記音場補正手段は、前記伝搬遅延時間に基づいて、前記複数のスピーカのそれぞれからの音声の出力タイミングを調整する音声出力タイミング調整手段を備える、ことを特徴とする請求項6に記載の音響装置。
【請求項8】
前記音場補正手段は、前記複数のスピーカのそれぞれからの出力音声の前記集音手段による集音結果に基づいて、前記複数のスピーカのそれぞれから前記集音手段までの音声の伝搬遅延時間を推定した後、前記伝搬遅延時間の推定結果に基づいて、前記複数のスピーカのそれぞれからの音声の出力タイミングを調整する音声出力タイミング調整手段を備える、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の音響装置。
【請求項9】
前記音場補正手段は、前記複数のスピーカのそれぞれからの出力音声の前記集音手段による集音結果に基づいて、前記複数のスピーカのそれぞれからの出力音量のバランスを調整する音量バランス調整手段を備える、ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の音響装置。
【請求項10】
前記音場補正手段は、前記複数のスピーカのそれぞれからの出力音声の前記集音手段による集音結果に基づいて、前記複数のスピーカのそれぞれに供給される音響信号の周波数特性を調整する周波数特性調整手段を備える、ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の音響装置。
【請求項11】
移動体に搭載される、ことを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の音響装置。
【請求項12】
複数のスピーカから音場空間へ向けて音声を出力する音響装置において使用される音場補正方法であって、
自動音場補正の開始指令に応じて、前記複数のスピーカの状態を確認した後、複数種類の音場補正処理をはじめから所定順序に従った段階的な実行を行う音場補正工程と;
前記音場補正工程の実行中における自動音場補正処理の中断指令に応じて、前記音場補正工程を中断する中断工程と;
前記中断工程における中断後における前記自動音場補正処理の再開指令に応じて、前記複数のスピーカの状態を確認した後、前記複数のスピーカの状態が、前記開始指令時と前記再開指令時において一致するか否か判定する判定工程と;
前記判定工程における判定結果が否定的である場合には前記複数種類の音場補正処理をはじめから前記所定順序に従って段階的に実行し、肯定的である場合には中断前に終了していた段階の次の段階から前記所定順序に従って段階的に音場補正処理を実行する再開実行工程と;
を備えることを特徴とする音場補正方法。
【請求項13】
請求項12に記載の音場補正方法を演算手段に実行させる、ことを特徴とする音場補正プログラム。
【請求項14】
請求項13に記載の音場補正プログラムが、演算手段により読み取り可能に記録された記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−159051(P2009−159051A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332250(P2007−332250)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】