説明

領域抽出装置、撮像装置、及び領域抽出プログラム

【課題】主要被写体の領域を画像から抽出することができる領域抽出装置、撮像装置、及び領域抽出プログラムを提供する。
【解決手段】領域抽出装置140は、撮像された画像から被写体領域を抽出する領域抽出部142と、前記撮像された画像の画角中心を含む第1領域と前記被写体領域とが重なる部分の面積と、前記第1領域または前記被写体領域の面積との面積比が所定値以上となる主要被写体領域が在るか否かを判定する領域処理部143と、領域処理部143により、前記主要被写体領域が在ると判定された場合、前記主要被写体領域を示す情報を記憶部に記憶させる優先度設定部144と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像から領域を抽出する領域抽出装置、撮像装置、及び領域抽出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像の特徴量のヒストグラムに基づいて、撮像された画像から領域を抽出し、抽出した領域を識別する画像処理装置が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−10079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された画像処理装置は、人が注目する領域、すなわち、主要被写体の領域を画像から抽出することができなかった。
【0005】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、主要被写体の領域を画像から抽出することができる領域抽出装置、撮像装置、及び領域抽出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、撮像された画像から被写体領域を抽出する被写体領域抽出部と、前記撮像された画像の画角中心を含む第1領域と前記被写体領域とが重なる部分の面積と、前記第1領域または前記被写体領域の面積との面積比が所定値以上となる主要被写体領域が在るか否かを判定する判定部と、前記判定部により、前記主要被写体領域が在ると判定された場合、前記主要被写体領域を示す情報を記憶部に記憶させる領域設定部と、を備えることを特徴とする領域抽出装置である。
【0007】
また、本発明は、領域抽出装置と、前記領域抽出装置が記憶させた被写体領域を示す情報に基づいて、前記被写体領域に合焦させるよう焦点を調節する焦点調節部と、前記被写体領域に合焦した状態を撮像する撮像部と、を備えることを特徴とする撮像装置である。
【0008】
また、本発明は、コンピュータに、撮像された画像から被写体領域を抽出する手順と、前記撮像された画像の画角中心を含む第1領域と前記被写体領域とが重なる部分の面積と、前記第1領域または前記被写体領域の面積との面積比が所定値以上となる主要被写体領域が在るか否かを判定する手順と、前記判定部により、前記主要被写体領域が在ると判定された場合、前記主要被写体領域を示す情報を記憶部に記憶させる手順と、を実行させるための領域抽出プログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、領域抽出装置は、主要被写体の領域を画像から抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態における、レンズ鏡筒と、領域抽出装置を備える撮像装置と、記憶媒体との構成を表すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態における、画像に予め定められた各領域を表す図である。
【図3】本発明の一実施形態における、画像に予め定められた各領域と、被写体領域との位置関係の第1例を表す図である。
【図4】本発明の一実施形態における、画像に予め定められた領域に含まれている被写体領域が画像に在るか否かを判定する方法を説明するための図である。
【図5】本発明の一実施形態における、画像に予め定められた各領域と、被写体領域との位置関係の第2例を表す図である。
【図6】本発明の一実施形態における、被写体領域が登録される処理の手順を表すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態における、被写体領域に合焦させるまでの処理の手順を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1には、レンズ鏡筒と、領域抽出装置を備える撮像装置と、記憶媒体との構成が、ブロック図により表されている。撮像装置100は、レンズ鏡筒111から入射される光学像を撮像し、静止画形式又は動画形式の画像を、記憶媒体200に記憶させる。
【0012】
まず、レンズ鏡筒111の構成を説明する。
レンズ鏡筒111は、焦点調整レンズ(以下、「AF(Auto Focus)レンズ」という)112と、レンズ駆動部116と、AFエンコーダ117と、鏡筒制御部118を備える。なお、レンズ鏡筒111は、撮像装置100に着脱可能に接続されてもよいし、撮像装置100と一体であってもよい。
【0013】
AFレンズ112は、レンズ駆動部116により駆動され、後述する撮像部110の撮像素子119の受光面(光電変換面)に、光学像を導く。
【0014】
AFエンコーダ117は、AFレンズ112の移動を検出し、AFレンズ112の移動量に応じた信号を、鏡筒制御部118に出力する。ここで、AFレンズ112の移動量に応じた信号とは、例えば、AFレンズ112の移動量に応じて位相が変化するサイン(sin)波信号であってもよい。
【0015】
鏡筒制御部118は、撮像装置100のCPU190から入力される駆動制御信号に応じて、レンズ駆動部116を制御する。ここで、駆動制御信号とは、AFレンズ112を光軸方向に駆動させる制御信号である。鏡筒制御部118は、駆動制御信号に応じて、例えば、レンズ駆動部116に出力するパルス電圧のステップ数を変更する。
【0016】
また、鏡筒制御部118は、AFレンズ112の移動量に応じた信号に基づいて、レンズ鏡筒111におけるAFレンズ112の位置(フォーカスポジション)を、CPU190に出力する。ここで、鏡筒制御部118は、例えば、AFレンズ112の移動量に応じた信号を、AFレンズ112の移動方向に応じて積算することで、レンズ鏡筒111におけるAFレンズ112の移動量(位置)を算出してもよい。
【0017】
レンズ駆動部116は、鏡筒制御部118の制御に応じてAFレンズ112を駆動し、AFレンズ112をレンズ鏡筒111内で光軸方向に移動させる。
【0018】
次に、撮像装置100の構成を説明する。
撮像装置100は、撮像部110と、領域抽出装置140と、表示部150と、バッファメモリ部130と、操作部180と、記憶部160と、CPU190と、通信部170とを備える。
【0019】
撮像部110は、撮像素子119と、A/D(Analog/Digital)変換部120とを備える。撮像部110は、設定された撮像条件(例えば絞り値、露出値等)に従って、CPU190により制御される。
【0020】
撮像素子119は、光電変換面を備え、レンズ鏡筒111(光学系)により光電変換面に結像された光学像を電気信号に変換して、A/D変換部120に出力する。撮像素子119は、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)で構成されていてもよい。また、撮像素子119は、光電変換面の一部の領域について、光学像を電気信号に変換するようにしてもよい(画像切り出し)。
【0021】
また、撮像素子119は、操作部180を介してユーザからの撮影指示を受け付けた際に得られる画像を、A/D変換部120を介して記憶媒体200に記憶させる。一方、撮像素子119は、操作部180を介してユーザからの撮影指示を受け付けていない状態において、連続的に得られる画像をスルー画像として、バッファメモリ部130及び表示部150に、A/D変換部120を介して出力する。
【0022】
A/D変換部120は、撮像素子119によって変換された電気信号をデジタル化して、デジタル信号である画像をバッファメモリ部130に出力する。
【0023】
操作部180は、例えば、電源スイッチ、シャッタボタン、マルチセレクタ(十字キー)、又はその他の操作キーを備え、ユーザによって操作されることでユーザの操作入力を受け付け、受け付けた操作入力に応じた信号をCPU190に出力する。
【0024】
領域抽出装置140は、記憶部160に記憶されている画像処理条件に基づいて、バッファメモリ部130に一時的に記憶されている画像を画像処理する。画像処理された画像は、通信部170を介して記憶媒体200に記憶される。また、領域抽出装置140は、バッファメモリ部130に一時的に記憶されている画像から、画像の特徴量により定まる被写体領域を抽出する。
【0025】
また、領域抽出装置140は、抽出した被写体領域を示す情報を、記憶部160などに記憶させる。ここで、被写体領域を示す情報とは、例えば、領域の分布を表す情報、及び領域の特徴量を表す情報などである。また、領域抽出装置140は、バッファメモリ部130に一時的に記憶されている画像から抽出した被写体領域に、被写体領域に合焦させるための優先度を設定する。
【0026】
表示部150は、撮像部110によって得られた画像、及び操作画面等を表示する。表示部150は、例えば、液晶ディスプレイである。
【0027】
バッファメモリ部130は、撮像部110によって撮像された画像を、一時的に記憶する。
【0028】
記憶部160は、シーン判定の際にCPU190によって参照される判定条件と、シーン判定によって判断されたシーン毎に対応付けられた撮像条件と、被写体領域を示す情報等とを記憶する。
【0029】
CPU190は、設定された撮像条件(例えば、絞り値、露出値)に従って、撮像部110を制御する。また、CPU190は、被写体領域を示す情報を、領域抽出装置140から取得する。また、CPU190(焦点調節部)は、被写体領域を示す情報に基づいてレンズ鏡筒111の鏡筒制御部118に駆動制御信号を出力することで、画像から抽出された領域のうち、領域抽出装置140が設定した優先度が高い領域に合焦させるよう焦点を調節する。
【0030】
また、CPU190は、被写体領域を示す情報に基づいて、画像処理のプレ処理又はポスト処理として、焦点調整(AF)の設定、露出調整(AE)の設定、ホワイトバランス調整(AWB)の設定、被写体像(オブジェクト)の追尾の設定、夜景か否かの判定の設定、色補正処理の設定、被写体像の拡大表示の設定、パンニング表示の設定、ズーム倍率に連動した明るさの最適化の設定、などを制御する。また、CPU190は、被写体領域を示す情報に基づいて、トーンカーブ(階調カーブ)の設定、静止画及び動画の同時撮影を実行するか否かの設定などを制御する。
【0031】
また、CPU190は、被写体領域を示す情報に基づいて、プレ処理又はポスト処理として、連写するか否かの設定、及び、連写において、合焦させる被写体像の切り替えの設定、焦点距離の連続変更の設定、撮像装置100の発光部(不図示)が発光する閃光の発光量の変更の設定、露光量の変更の設定、又はシャッタスピードの変更を実行するか否かの設定などを制御する。また、CPU190は、操作部180から入力された「操作入力に応じた信号」に基づいて、静止画形式又は動画形式の画像を、領域抽出装置140に画像処理させる。
【0032】
通信部170は、カードメモリ等の取り外しが可能な記憶媒体200と接続され、この記憶媒体200への情報(画像データ、被写体領域を示す情報など)の書込み、読み出し、あるいは消去を行う。
【0033】
記憶媒体200は、撮像装置100に対して着脱可能に接続される記憶部であって、情報(画像データ、被写体領域を示す情報など)を記憶する。なお、記憶媒体200は、撮像装置100と一体であってもよい。
【0034】
次に、領域抽出装置140の詳細について説明する。
領域抽出装置140は、特徴量算出部141と、領域抽出部142と、領域処理部143と、優先度設定部144とを備える。
【0035】
特徴量算出部141は、撮像部110が撮像した画像を、バッファメモリ部130から取得する。また、特徴量算出部141は、バッファメモリ部130から取得した画像における複数の特徴(例えば、色相、彩度、明度、テクスチャ、エッジ)毎に、その特徴量(例えば、輝度情報に基づく特徴量、色情報に基づく特徴量)を算出し、算出した特徴量を領域抽出部142に出力する。
【0036】
領域抽出部142は、特徴量算出部141が算出した特徴量を取得する。また、領域抽出部142は、撮像部110が撮像した画像を、バッファメモリ部130から取得する。また、領域抽出部142は、取得した画像に含まれる領域であって特徴量毎に定まる被写体領域を、画角中心を含む領域(図2を用いて後述する)が定められた画像から抽出する。ここで、領域抽出部142が抽出する被写体領域は、例えば、撮像部110が撮像した画像に含まれる被写体像の領域である。また、画角中心を含む領域は、画像に複数定められてもよい。
【0037】
領域抽出部142は、取得した特徴量(例えば、輝度(Y)、色情報(Cr,Cb、RGB))に基づいて、各被写体領域を画像から抽出する。例えば、領域抽出部142は、一定領域内の画像特徴量と、その領域外の画像特徴量とに2値化された画像から、各被写体領域を抽出する。また、領域抽出部142は、各被写体領域にラベルを割り当てる(ラベリング)。
【0038】
また、領域抽出部142は、第1の画像特徴量に基づく被写体領域に外接する第1矩形領域と、第2の画像特徴量に基づく被写体領域に外接する矩形領域とを画像に生成する。以下では、第1の画像特徴量は、色情報に応じた特徴量であるとする。また、色差に基づく被写体領域に外接する矩形領域を、以下、「色差矩形領域」という。また、第2の画像特徴量は、輝度に応じた特徴量であるとする。また、輝度に基づく被写体領域に外接する矩形領域を、以下、「輝度矩形領域」という。
【0039】
領域処理部143は、予め定められた条件を被写体領域が満たすか否かを判定する。例えば、領域処理部143は、ノイズと推定される領域(例えば、所定閾値よりも面積が小さい領域)が画像にある場合、それらの領域を画像から除去(足きり)する。また、例えば、領域処理部143は、背景と推定される領域(例えば、所定閾値よりも面積が大きい領域)が画像にある場合、その領域を画像から除去する。領域処理部143は、除去されずに残っている被写体領域の分布を表す情報を、記憶部160に記憶させる。
【0040】
領域処理部143は、輝度に基づいて画像から抽出した被写体領域の面積を分子とし、この被写体領域に外接する輝度矩形領域の面積を分母とする面積比(充填率)を、輝度矩形領域毎に算出する。また、領域処理部143は、面積比が予め定められた閾値未満である被写体領域及び輝度矩形領域を、分割又は統合する対象から除外する。同様に、領域処理部143は、色差に基づいて画像から抽出した被写体領域の面積を分子とし、この被写体領域に外接する色差矩形領域の面積を分母とする面積比(充填率)を、色差矩形領域毎に算出する。また、領域処理部143は、面積比が予め定められた閾値未満である被写体領域及び色差矩形領域を、分割又は統合する対象から除外する。
【0041】
領域処理部143は、各色差矩形領域の各隅の座標に基づいて、色差に基づく各被写体領域を統合する。また、領域処理部143は、各輝度矩形領域の各隅の座標に基づいて、輝度に基づく各被写体領域を統合する。
【0042】
領域処理部143は、各色差矩形領域の各隅の座標と、各輝度矩形領域の各隅の座標とに基づいて、輝度に基づく各被写体領域を、色差に基づく各被写体領域に統合する。例えば、領域処理部143は、各色差矩形領域の各隅の座標と、各輝度矩形領域の各隅の座標との差が、N(Nは、1以上の整数)画素以内である場合、輝度に基づく各被写体領域を、色差に基づく各被写体領域に統合する。
【0043】
領域処理部143は、輝度矩形領域に色差矩形領域が包含されており、且つ、輝度矩形領域及び色差矩形領域の隅同士の座標差が、予め定められた画素数L以上である場合、輝度に基づく被写体領域と色差に基づく被写体領域とが重複する部分を、輝度に基づく被写体領域から分割する。
【0044】
領域処理部143(判定部)は、画角中心を含む第1領域と被写体領域とが重なる部分の面積と、第1領域又はこの被写体領域の面積との比が予め定められた面積比以上となる被写体領域が、画像に在るか否かを判定する。
【0045】
図2には、画像に予め定められた各領域が表されている。図2(A)では、一例として、画角中心を含む領域310と、領域310を含む領域320aと、領域320aを含む領域330と、領域330を含む領域340とが、画像300に定められている。ここで、画像300の横の長さをXとし、画像300の縦の長さをYとした場合、領域310の横の長さは(X/3)であり、領域310の縦の長さを(Y/3)であるとする。また、領域320aの横の長さは(X/2)であり、領域320aの縦の長さは(Y/2)であるとする。なお、これらの長さは、一例である。
【0046】
領域320aは、さらに複数の領域に分割されていてもよい。図2(B)には、一例として、領域320aが9分割された領域320bが表されている。以下、領域320a及び領域320bのいずれも領域320と表記する。
【0047】
図3には、画像に予め定められた各領域と、被写体領域との位置関係の第1例が表されている。以下では、被写体領域400〜410が、領域抽出部142により画像300から抽出されたとする。また、被写体領域400は、領域310に完全に含まれているとする。また、被写体領域410は、その一部が領域310に含まれているとする。また、被写体領域440は、その一部が領域320に含まれているとする。
【0048】
図4には、画像に予め定められた領域に含まれている被写体領域が画像に在るか否かを判定する方法を説明するための図が表されている。図4(A)では、領域310と被写体領域410aとの重なる部分の面積と、被写体領域410aの面積との比が予め定められた面積比(例えば、50[%])以上となる被写体領域410aが、画像300に在るとする。この場合、被写体領域410aは、画像300内に在る主要被写体領域であると、領域処理部143により判定される。
【0049】
一方、図4(B)では、領域310と被写体領域410bとの重なる部分の面積と、領域310の面積との比が予め定められた面積比(例えば、50[%])以上となる被写体領域410bが、画像300に在るとする。この場合、被写体領域410bは、画像300内に在る主要被写体領域であると、領域処理部143により判定される。
【0050】
また、領域処理部143は、画像に定められた第1領域と被写体領域とが重なる部分の面積と、第1領域又はこの被写体領域の面積との比が予め定められた面積比以上となる被写体領域が、画像に無い場合、第1領域を含む第2領域と被写体領域とが重なる部分の面積と、第2領域又はこの被写体領域の面積との比が予め定められた面積比以上となる被写体領域が、画像に在るか否かを判定する。
【0051】
図5には、画像に予め定められた各領域と、被写体領域との位置関係の第2例が表されている。図5では、領域310内に被写体領域が無く、且つ、領域320と被写体領域440との重なる部分の面積と、被写体領域440の面積との比が予め定められた面積比(例えば、50[%])以上となる被写体領域440が、画像300に在るとする。この場合、被写体領域440は、画像300内に在る主要被写体領域であると、領域処理部143により判定される。被写体領域430についても同様である。
【0052】
図1に戻り、領域抽出装置140の詳細について説明を続ける。優先度設定部144は、予め定められた条件(例えば、ノイズと推定される領域でない条件)を満たす被写体領域に、画像における「領域の優先度」を定める。この「領域の優先度」とは、人がより注目しているであろう領域の優先度である。優先度設定部144は、設定した「領域の優先度」を、被写体領域を示す情報の1つとして、記憶部160及び記憶媒体200に、領域毎に記憶させる。
【0053】
また、優先度設定部144は、領域310(図2を参照)と被写体領域とが重なる部分の面積と、領域310又はこの被写体領域の面積との比が予め定められた面積比以上となる被写体領域が、画像300に在る場合、予め定められた面積比以上となる被写体領域を示す情報を、優先度が高い領域(主要被写体領域)を示す情報として、記憶部160及び記憶媒体200に記憶させる(登録する)。
【0054】
また、優先度設定部144は、領域310と被写体領域とが重なる部分の面積と、領域310又はこの被写体領域の面積との比が予め定められた面積比以上となる被写体領域が、画像300に無い場合、領域処理部143による判定結果に基づいて、次のように動作する。
【0055】
優先度設定部144は、領域310を含む領域320(図2を参照)と被写体領域とが重なる部分の面積と、領域320又はこの被写体領域の面積との比が予め定められた面積比以上となる被写体領域が、画像300に在る場合、予め定められた面積比以上となる面積が領域320に含まれている被写体領域を示す情報を、優先度が高い領域(主要被写体領域)を示す情報として、記憶部160及び記憶媒体200に記憶させる(登録する)。
また、優先度設定部144は、領域330及び領域340についても、同様に処理を実行する。
【0056】
また、領域の優先度は、次のように定められてもよい。以下では、優先度を示す数字が小さいほど、領域の優先度が高いものとする。また、以下に示す優先度は、一例である。
【0057】
優先度1.
動いている領域(動いている領域が画像に複数ある場合、画角からはみ出していない領域、又は画角の中央に分布する領域)。また、パンニングしたことにより、動いている領域が画像に広く分布している場合は、動いていない領域。
これらの領域は、優先度「1」に設定される。
人は、動いている領域及びパンニングした際に変化量の少ない領域に注目するためである。
【0058】
優先度2.
画角(構図)、奥行(パースペクト)、被写体距離(デプス、深度)に関する領域。画角の中央付近に分布する領域。画像に奥行がある場合、至近側に分布する領域のうち、画角からはみ出していない領域であって、面積が所定の領域内である(極端に大きくない)領域。
これらの領域は、優先度「2」に設定される。
主要な被写体像の領域が、至近から無限までの広い領域に存在する可能性があるためである。
【0059】
優先度3.
人の顔検出、動物(ペット)の顔検出、顔が検出された領域における肌色検出、動物の毛並みのテクスチャ(模様)、又は植物のテクスチャに基づいて抽出された領域。
これらの領域は、優先度「3」に設定される。
人または動物が撮像されている場合、人は、その顔に注目するためである。
【0060】
優先度4.
特異である特徴量(例えば、色相環において不連続である色相)がある領域。背景の領域とそれ以外の領域とに分割された領域。彩度が高い領域。周囲と比較して明度が著しく異なる領域。周囲と比較して色相(色合い)が著しく異なる領域。テクスチャ(模様)が周囲と異なる領域。周囲と比較して空間周波数(画像周波数)が高い領域。ある特徴量において不連続な分布が一定量あり、その特徴量に基づいてラベリングされた結果、領域が形成された場合に、画像において違和感がある領域。
これらの領域は、優先度「4」に設定される。
【0061】
優先度5.
特定の色相又は彩度に基づいて抽出された領域。
これらの領域は、優先度「5」に設定される。
人は、赤色、黄色、肌色の領域に注目するためである。
【0062】
優先度6.
明度(明暗)に基づいて抽出された領域。
これらの領域は、優先度「6」に設定される。
【0063】
優先度7.
テクスチャ(模様)に基づいて抽出された領域。
これらの領域は、優先度「7」に設定される。
【0064】
優先度8.
空間周波数(画像周波数)に基づいて抽出された領域。
これらの領域は、優先度「8」に設定される。
【0065】
優先度9.
縦又は横に延びたエッジで囲まれた領域であって、一定以上の太さがある領域。
これらの領域は、優先度「9」に設定される。
【0066】
次に、領域抽出装置の処理の手順を説明する。
図6は、被写体領域が登録される処理の手順を表すフローチャートである。領域処理部143は、領域310(図3を参照)と被写体領域とが重なる部分の面積と、領域310又は被写体領域の面積との比が予め定められた面積比以上となる被写体領域が、画像に在るか否かを判定する(ステップS1)。
【0067】
領域310と被写体領域とが重なる部分の面積と、領域310又は被写体領域の面積との比が予め定められた面積比以上となる被写体領域が、画像に無い場合(ステップS1−No)、領域処理部143は、領域320と被写体領域とが重なる部分の面積と、領域320又は被写体領域の面積との比が予め定められた面積比以上となる被写体領域が、画像に在るか否かを判定する(ステップS2)。
【0068】
領域320と被写体領域とが重なる部分の面積と、領域320又は被写体領域の面積との比が予め定められた面積比以上となる被写体領域が、画像に無い場合(ステップS2−No)、領域処理部143は、領域330と被写体領域とが重なる部分の面積と、領域330又は被写体領域の面積との比が予め定められた面積比以上となる被写体領域が、画像に在るか否かを判定する(ステップS3)。
【0069】
領域330と被写体領域とが重なる部分の面積と、領域330又は被写体領域の面積との比が予め定められた面積比以上となる被写体領域が、画像に無い場合(ステップS3−No)、領域処理部143は、領域340と被写体領域とが重なる部分の面積と、領域340又は被写体領域の面積との比が予め定められた面積比以上となる被写体領域が、画像に在るか否かを判定する(ステップS4)。
【0070】
領域340と被写体領域とが重なる部分の面積と、領域340又は被写体領域の面積との比が予め定められた面積比以上となる被写体領域が、画像に無い場合(ステップS4−Yes)、予め定められた面積比以上となる全ての各被写体領領域を示す情報を、優先度が高い被写体領域(主要被写体領域)を示す情報として、記憶部160に記憶させる(ステップS5)。
【0071】
一方、ステップS1において、領域310と被写体領域とが重なる部分の面積と、領域310又は被写体領域の面積との比が予め定められた面積比以上となる被写体領域が、画像に在る場合(ステップS1−Yes)、予め定められた面積比以上となる全ての各被写体領領域を示す情報を、優先度が高い被写体領域(主要被写体領域)を示す情報として、記憶部160に記憶させる(ステップS6)。
【0072】
また、ステップS2において、領域320と被写体領域とが重なる部分の面積と、領域320又は被写体領域の面積との比が予め定められた面積比以上となる被写体領域が、画像に在る場合(ステップS2−Yes)、予め定められた面積比以上となる全ての各被写体領領域を示す情報を、優先度が高い被写体領域(主要被写体領域)を示す情報として、記憶部160に記憶させる(ステップS7)。
【0073】
また、ステップS3において、領域330と被写体領域とが重なる部分の面積と、領域330又は被写体領域の面積との比が予め定められた面積比以上となる被写体領域が、画像に在る場合(ステップS3−Yes)、予め定められた面積比以上となる全ての各被写体領領域を示す情報を、優先度が高い被写体領域(主要被写体領域)を示す情報として、記憶部160に記憶させる(ステップS8)。
【0074】
また、ステップS4において、領域340と被写体領域とが重なる部分の面積と、領域340又は被写体領域の面積との比が予め定められた面積比以上となる被写体領域が、画像に在る場合(ステップS4−No)、CPU190は、被写体領域無しで、AF評価領域のコントラスト値に基づいて、コントラスト・スキャン(焦点調整処理)を実行する(ステップS9)。
【0075】
図7は、被写体領域に合焦させるまでの処理の手順を表すフローチャートである。特徴量算出部141は、撮像された画像(スルー画像、又はスルー画像列)を、バッファメモリ部130から取り込み(ステップSa1)、取り込んだ画像に対して、基本的な画像処理を実行する(ステップSa2)。
【0076】
領域抽出部142は、撮像された画像がリサイズされたクロップ画像(64×40画素)を、バッファメモリ部130を介して色差毎に読み込む(ステップSa3)。領域抽出部142は、クロップ画像における複数の画像特徴量に基づいて、2値化画像を生成する(ステップSa4)。また、領域抽出部142は、2値化画像から被写体領域を抽出し、抽出した領域にラベルを割り当てる(ステップSa5)。
【0077】
領域処理部143は、ノイズと推定される領域が画像にある場合、それらの領域を画像から除去する(ステップSa6)。また、領域処理部143は、背景と推定される領域が画像にある場合、その領域を画像から除去する(ステップSa7)。
【0078】
優先度設定部144は、画像における「領域の優先度」を被写体領域毎に定める。ここで、優先度設定部144は、被写体領域を示す情報を、記憶部160及び記憶媒体200に記憶させる。また、優先度設定部144は、予め定められた条件に基づいて、被写体領域を分割する(ステップSa8)。また、優先度設定部144は、予め定められた条件に基づいて、被写体領域を統合する(ステップSa9)。
【0079】
また、領域抽出部142は、優先度設定部144が優先度を定めた被写体領域を、AF評価領域に合うよう矩形に整形する(ステップSa10)。CPU190は、AF評価領域のコントラスト値に基づいて、コントラスト・スキャン(焦点調整処理)を実行する(ステップSa11)。また、CPU190は、コントラスト・スキャンの結果に基づいて、至近に在る被写体が撮像されている被写体領域を優先し、その被写体領域に合焦させる(ステップSa12)。
【0080】
以上のように、領域抽出装置140は、撮像された画像から被写体領域を抽出する領域抽出部142と、前記撮像された画像の画角中心を含む第1領域と前記被写体領域とが重なる部分の面積と、前記第1領域または前記被写体領域の面積との面積比が所定値以上となる主要被写体領域が在るか否かを判定する領域処理部143(判定部)と、領域処理部143により、前記主要被写体領域が在ると判定された場合、前記主要被写体領域を示す情報を記憶部に記憶させる優先度設定部144(領域設定部)と、を備える。
この構成により、領域抽出装置140は、第1領域と被写体領域とが重なる部分の面積と、第1領域又は被写体領域の面積との比が予め定められた面積比以上となる被写体領域が、画像に在る場合、前記面積比以上となる被写体領域を示す情報を、記憶部に記憶させる。これにより、領域抽出装置140は、被写体領域を示す情報に基づいて、主要被写体の領域を画像から抽出することができる。
【0081】
また、領域処理部143は、前記主要被写体が無いと判定した場合、前記第1領域を含む第2領域と前記被写体領域とが重なる部分の面積と、前記第2領域または前記被写体領域の面積との面積比が所定値以上となる主要被写体領域が在るか否かを判定する。
この構成により、領域抽出装置140は、第2領域と被写体領域とが重なる部分の面積と、第2領域又は被写体領域の面積との比が前記面積比以上となる被写体領域を示す情報を、記憶部に記憶させる。これにより、領域抽出装置140は、被写体領域を示す情報に基づいて、主要被写体の領域を画像から抽出することができる。
【0082】
また、撮像装置100は、領域抽出装置140と、領域抽出装置140が記憶させた被写体領域を示す情報に基づいて、前記被写体領域に合焦させるよう焦点を調節するCPU190(焦点調節部)と、前記被写体領域に合焦した状態を撮像する撮像部110と、を備える。
この構成により、領域抽出装置140は、被写体領域を示す情報を記憶させる。これにより、撮像装置100は、被写体領域を示す情報に基づいて、主要被写体の領域に合焦させた状態で画像を撮像することができる。
【0083】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない領域の設計等も含まれる。
【0084】
また、上記に説明した領域抽出装置、撮像装置を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、実行処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
【0085】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0086】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。
さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0087】
100…撮像装置、110…撮像部、111…レンズ鏡筒、140…領域抽出装置、141…特徴量算出部、142…領域抽出部、143…領域処理部(判定部)、144…優先度設定部(領域設定部)、145…記憶部、190…CPU(焦点調節部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像された画像から被写体領域を抽出する被写体領域抽出部と、
前記撮像された画像の画角中心を含む第1領域と前記被写体領域とが重なる部分の面積と、前記第1領域または前記被写体領域の面積との面積比が所定値以上となる主要被写体領域が在るか否かを判定する判定部と、
前記判定部により、前記主要被写体領域が在ると判定された場合、前記主要被写体領域を示す情報を記憶部に記憶させる領域設定部と、
を備えることを特徴とする領域抽出装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記主要被写体が無いと判定した場合、前記第1領域を含む第2領域と前記被写体領域とが重なる部分の面積と、前記第2領域または前記被写体領域の面積との面積比が所定値以上となる主要被写体領域が在るか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の領域抽出装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の領域抽出装置と、
前記領域抽出装置が記憶させた被写体領域を示す情報に基づいて、前記被写体領域に合焦させるよう焦点を調節する焦点調節部と、
前記被写体領域に合焦した状態を撮像する撮像部と、
を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
コンピュータに、
撮像された画像から被写体領域を抽出する手順と、
前記撮像された画像の画角中心を含む第1領域と前記被写体領域とが重なる部分の面積と、前記第1領域または前記被写体領域の面積との面積比が所定値以上となる主要被写体領域が在るか否かを判定する手順と、
前記判定部により、前記主要被写体領域が在ると判定された場合、前記主要被写体領域を示す情報を記憶部に記憶させる手順と、
を実行させるための領域抽出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−252389(P2012−252389A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122431(P2011−122431)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】