頭部装着型画像表示装置
【課題】射出光の射出角度を調整することができる頭部装着型画像表示装置を提供する。
【解決手段】画像光を射出する画像射出部と、該画像射出部から射出された前記画像光を入射させ、内部で複数回反射させて射出する導光部と、該導光部の前記画像光を射出する面に配置された接眼レンズと、前記画像射出部、前記導光部および前記接眼レンズのうち少なくとも一つを移動させることによって、前記接眼レンズから射出される画像光の射出角度を調整する移動機構とを具えることを特徴とする。
【解決手段】画像光を射出する画像射出部と、該画像射出部から射出された前記画像光を入射させ、内部で複数回反射させて射出する導光部と、該導光部の前記画像光を射出する面に配置された接眼レンズと、前記画像射出部、前記導光部および前記接眼レンズのうち少なくとも一つを移動させることによって、前記接眼レンズから射出される画像光の射出角度を調整する移動機構とを具えることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置に関し、特に、頭部装着型の画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、映像鑑賞やモバイルでの情報表示用途等での実用化に向け、眼鏡等に取り付けられる頭部装着型の画像表示装置の開発が盛んに行われている。この装置は、一般に、「ヘッドマウントディスプレイ(HMD)」と呼ばれ、表示素子からの画像光を瞳孔に導いて網膜上に結像させることで、装着者に画像の拡大像を虚像として観察させるものである。
【0003】
図13は、一般的な頭部装着型画像表示装置1310の構成を示す模式図である。図13において、表示素子1311に表示された画像Xの画像光1312は、導光部1313に入射し、1回以上の反射を経て導光部1313から射出されて装着者の眼球1320の瞳孔に入り、網膜上で結像される。これにより、装着者は、瞳孔の視軸方向前方に、画像Xの虚像X’を観察することができる。
【0004】
ここで、瞳孔とは、図14に示すように、眼球1320の虹彩1401によって囲まれた部分1402のことをいい、この部分を通った光が網膜1403に投影される。よって、表示画像の全体を適切に観察するには、導光部の射出瞳と、上記瞳孔1402とを対応させる必要がある。
【0005】
特許文献1には、眼鏡フレーム内に内蔵または眼鏡フレームに取り付けて使用される頭部装着型表示装置が提案されている。このような装置は、その特性上、装置全体が小型であることが要求される。一般的に、接眼光学系のサイズが小さくなるほど、接眼光学系の射出瞳が小さくなる傾向にあり、装着者の眼球および瞳孔の位置に対応させることが難しくなる。
【0006】
そのため、特許文献2には、眼鏡レンズに内蔵されたコンバイナ光学系に対し、眼鏡のテンプルに装着された表示パネル、および、表示パネルとコンバイナ光学系との間に配置された集光レンズを一緒に移動させるか、または、これらコンバイナ光学系、表示パネルおよび集光レンズの全てを一体化して移動させることにより、コンバイナ光学系の射出瞳となるアイポイントの位置の調整を図る技術が開示されている。
【0007】
ところが、射出光の射出角度によっては、射出瞳の位置を調整しただけでは装着者に表示画像が適切に観察されない場合がある。これは、装着者によって眼鏡のテンプル部の開き角が異なることが要因の一つである。一般に、装着者の顔幅には個体差があり、顔幅が大きい場合には眼鏡のテンプル部の開き角が大きくなり、顔幅が小さい場合には眼鏡のテンプル部の開き角が小さくなる。これにより、導光部から射出される画像光の射出角が変化し、装着者に適切な角度からずれてしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許3871188号公報
【特許文献2】特開2008−61052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題を解決し、射出光の射出角度を調整することができる頭部装着型画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の要旨構成は以下の通りである。
(1)画像光を射出する画像射出部と、該画像射出部から射出された前記画像光を入射し、内部で複数回反射させて射出する導光部と、該導光部の前記画像光を射出する面に配置された接眼レンズと、前記画像射出部、前記導光部および前記接眼レンズのうち少なくとも一つを移動させることによって、前記接眼レンズから射出される画像光の射出角度を調整する移動機構とを具えることを特徴とする頭部装着型画像表示装置。
【0011】
(2)画像光を射出する画像射出部と、該画像射出部から射出された前記画像光を入射し、内部で複数回反射させて射出する正の屈折力を持つ導光部と、前記画像射出部および前記導光部のうち少なくとも一つを移動させることによって、前記導光部から射出される画像光の射出角度を調整する移動機構とを具えることを特徴とする頭部装着型画像表示装置。
【0012】
(3)前記画像射出部、前記導光部および前記接眼レンズのうち少なくとも1つが固定されている上記(1)に記載の頭部装着型画像表示装置。
【0013】
(4)前記画像射出部、前記導光部のうち少なくとも1つが固定されている上記(2)に記載の頭部装着型画像表示装置。
【0014】
(5)前記導光部がプリズムであり、一の面に入射した画像光を、前記一の面と同じ面から射出させる上記(1)〜(4)のいずれか一に記載の頭部装着型画像表示装置。
【0015】
(6)前記導光部の内部で反射する回数が偶数回である上記(1)〜(5)のいずれか一に記載の頭部装着型画像表示装置。
【0016】
(7)前記移動機構による移動によって射出角度のみが調整され、射出瞳位置は変化しない上記(6)に記載の頭部装着型画像表示装置。
【0017】
(8)前記導光部の、当該装置を装着する装着者の視軸方向への投影断面の幅が、4mm以下である上記(1)〜(7)のいずれか一に記載の頭部装着型画像表示装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、画像射出部、導光部および接眼レンズのうち少なくとも一つを移動させることで、画像光の射出角度を調整することができる頭部装着型画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1(a)は、本発明の実施形態に従う頭部装着型画像表示装置を眼鏡に装着した状態を示す模式的平面図であり、図1(b)は、射出光の射出角度を示す模式図である。
【図2】図2(a),(b)は、固定された表示素子および導光部に対して接眼レンズを移動させた場合の射出光の射出角度を示す模式図である。
【図3】図3(a),(b)は、固定された導光部および接眼レンズに対して表示素子を移動させた場合の射出光の射出角度を示す模式図である。
【図4】図4(a),(b)は、固定された接眼レンズおよび表示素子に対して導光部を移動させた場合の射出光の射出角度を示す模式図である。
【図5】図5(a),(b),(c)は、固定された表示素子に対して導光部および接眼レンズを移動させた場合の射出光の射出角度を示す模式図である。
【図6】図6(a),(b)は、固定された導光部に対して導光部および接眼レンズを移動させた場合の射出光の射出角度を示す模式図である。
【図7】図7は、本発明の実施形態に従う頭部装着型画像表示装置を示す模式図である。
【図8】図8(a)〜(c)は、本発明の実施形態に従う頭部装着型画像表示装置を示す模式図である。
【図9】図9(a),(b)は、本発明の実施形態に従う頭部装着型画像表示装置の移動機構を示す模式図である。
【図10】図10(a),(b)は、本発明の実施形態に従う頭部装着型画像表示装置の移動機構を示す模式図である。
【図11】図11(a),(b)は、本発明の実施形態に従う頭部装着型画像表示装置の移動機構を示す模式図である。頭部装着型画像表示装置を示す模式図である。
【図12】図12は、本発明の実施形態に従う頭部装着型画像表示装置と装着者の眼球の瞳孔との関係を示す模式図である。
【図13】図13は、一般的な頭部装着型画像表示装置の構成を示す模式図である。
【図14】図14は、装着者の眼球を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に従う頭部装着型画像表示装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1(a)は、本発明の実施形態に従う頭部装着型画像表示装置110を眼鏡120に装着した状態を示す模式的平面図である。頭部装着型画像表示装置110は、主として画像射出部111および導光部112を具える。頭部装着型画像表示装置110を眼鏡120に取り付ける場合、画像射出部111は、装着者の頭部に装着される眼鏡120の右側テンプル部分121に、支持部111a等により取り付けられる。
【0022】
画像射出部111は、液晶パネルや有機ELパネル等の表示素子を内蔵する。画像射出部111は、眼鏡120のテンプル部121に沿い装着者の前方へ延び、その先端は、右側眼鏡レンズ122の側方で、取付部113を介して導光部112と結合されている。導光部112は、眼鏡120の右側眼鏡レンズ122の前方を、画像射出部111から装着者の視野内まで略水平に延びている。後述するように、導光部112は、画像射出部111から射出される画像光を導光し、先端の接眼窓から眼球130に向けて画像光を射出する。
【0023】
本発明において、画像光の射出角度を調整するとは、図1(b)に示すように、画像光の接眼光学系の光軸に対する角度を、装着者の眼球の位置に合わせることをいう。
【0024】
この導光部112における画像光の振る舞いについて、詳細に説明する。
図2(a)、(b)は、いずれも台形状のプリズムを用いた導光部200を用い、固定された導光部200および画像射出部(図2では表示素子)201に対して接眼レンズ202を移動させた場合の、導光部200から接眼レンズ202を介して射出される射出光の射出角度を示したものである。図2(a)は、導光部200が入射した画像光を5回反射して射出する場合を示し、図2(b)は、導光部が入射した画像光を2回反射して射出する場合を示したものである。なお、図2(a)、(b)にはいずれも、接眼レンズ202を左右に移動した2つの状態の様子が示されている。
【0025】
図2(a)に示すように、導光部200が入射した画像光を5回反射して射出する場合、接眼レンズ202を紙面上で右側に移動させると、接眼レンズ202から射出される画像光の射出角度は、光学系の光軸に対して右側にずれ、逆に、接眼レンズ202を紙面上で左側に移動させると、接眼レンズ202から射出される画像光の射出角度は、光学系の光軸に対して左側にずれる。
【0026】
同様に、図2(b)に示すように、導光部200が入射した画像光を2回反射して射出する場合、接眼レンズ202を紙面上で右側に移動させると、接眼レンズ202から射出される画像光の射出角度は、光学系の光軸に対して右側にずれ、逆に、接眼レンズ202を紙面上で左側に移動させると、接眼レンズ202から射出される画像光の射出角度は、光学系の光軸に対して左側にずれる。
【0027】
図3(a)、(b)は、いずれも台形状のプリズムを用いた導光部300を用い、固定された導光部300および接眼レンズ302に対して画像射出部(図3では表示素子)301を移動させた場合の、導光部300から接眼レンズ302を介して射出される射出光の射出角度を示したものである。図3(a)は、導光部300が入射した画像光を5回反射して射出する場合を示し、図3(b)は、導光部300が入射した画像光を2回反射して射出する場合を示したものである。なお、図3(a)、(b)にはいずれも、表示素子301を左右に移動した2つの状態の様子が示されている。
【0028】
図3(a)に示すように、導光部300が入射した画像光を5回反射して射出する場合、表示素子301を紙面上で右側に移動させると、接眼レンズ302から射出される画像光の射出角度は、光学系の光軸に対して左側にずれ、逆に、表示素子301を紙面上で左側に移動させると、接眼レンズ302から射出される画像光の射出角度は、光学系の光軸に対して右側にずれる。
【0029】
これに対し、図3(b)に示すように、導光部300が入射した画像光を2回反射して射出する場合、表示素子301を紙面上で右側に移動させると、接眼レンズ302から射出される画像光の射出角度は、光学系の光軸に対して右側にずれ、逆に、表示素子301を紙面上で左側に移動させると、接眼レンズ302から射出される画像光の射出角度は、光学系の光軸に対して左側にずれる。
【0030】
図4(a)、(b)は、いずれも台形状のプリズムを用いた導光部400を用い、固定された画像射出部(図4では表示素子)401および接眼レンズ402に対して導光部400を移動させた場合の、導光部400から接眼レンズ402を介して射出される射出光の射出角度を示したものである。図4(a)は、導光部400が入射した画像光を5回反射して射出する場合を示し、図4(b)は、導光部400が入射した画像光を2回反射して射出する場合を示したものである。なお、図4(a)、(b)にはいずれも、導光部400を左右に移動した2つの状態の様子が示されている。
【0031】
図4(a)に示すように、導光部400が入射した画像光を5回反射して射出する場合、導光部400を紙面上で右側または左側に移動させた場合、接眼レンズ402から射出される画像光の射出角度のずれはわずかである。
【0032】
一方、図4(b)に示すように、導光部400が入射した画像光を2回反射して射出する場合、導光部400を紙面上で右側に移動させると、接眼レンズ402から射出される画像光の射出角度は、光学系の光軸に対して左側にずれ、逆に、導光部400を紙面上で左側に移動させると、接眼レンズ402から射出される画像光の射出角度は、光学系の光軸に対して右側にずれる。
【0033】
図5(a)、(b)は、いずれも台形状のプリズムを用いた導光部500を用い、固定された画像射出部(図5では表示素子)501に対して導光部500および接眼レンズ502を移動させた場合の、導光部500から接眼レンズ502を介して射出される射出光の射出角度を示したものである。図5(a)は、導光部500が入射した画像光を5回反射して射出する場合を示し、図5(b)は、導光部500が入射した画像光を2回反射して射出する場合を示したものである。なお、図5(a)、(b)にはいずれも、導光部500を左右に移動した2つの状態の様子が示されている。
【0034】
図5(a)に示すように、導光部500が入射した画像光を5回反射して射出する場合、導光部500および接眼レンズ502を紙面上で右側に移動させると、接眼レンズ502から射出される画像光の射出角度は、光学系の光軸に対して右側にずれ、逆に、導光部500および接眼レンズ502を紙面上で左側に移動させると、接眼レンズ502から射出される画像光の射出角度は、光学系の光軸に対して左側にずれる。
【0035】
一方、図5(b)に示すように、導光部500が入射した画像光を2回反射して射出する場合、導光部500および接眼レンズ502を紙面上で右側に移動させると、接眼レンズ502から射出される画像光の射出角度は、光学系の光軸に対して左側にずれ、逆に、導光部500および接眼レンズ502を紙面上で左側に移動させると、接眼レンズ502から射出される画像光の射出角度は、光学系の光軸に対して右側にずれる。図5(b)から明らかなように、この場合、射出瞳の一致する点が存在することになり、射出瞳の位置を固定したまま射出角度を調整することができる。また、図5(c)に示すように、例えば固定された射出瞳位置に眼球中心を配置することで、射出瞳の小さな小型な光学系であっても画面がケラレることなく表示角度のみを調整することができる。
【0036】
図6(a)、(b)は、いずれも台形状のプリズムを用いた導光部600を用い、固定された導光部600に対して接眼レンズ602および画像射出部(図6では表示素子)601を移動させた場合の、導光部600から接眼レンズ602を介して射出される射出光の射出角度を示したものである。図6(a)は、導光部600が入射した画像光を5回反射して射出する場合を示し、図6(b)は、導光部600が入射した画像光を2回反射して射出する場合を示したものである。なお、図6(a)の2つの図は、いずれも接眼レンズ602および表示素子601を異なる方向(離れる方向)へ移動させた場合を示したものであり、図6(b)の2つの図は、接眼レンズ602および表示素子601を同じ方向へ移動させた場合を示したものである。
【0037】
図6(a)に示すように、導光部600が入射した画像光を5回反射して射出する場合、接眼レンズ602を紙面上で左側に、表示素子601を紙面上で右側に移動させると、接眼レンズ602から射出される画像光の射出角度は、光学系の光軸に対して左側にずれ、逆に、接眼レンズ602を紙面上で右側に、表示素子601を紙面上で左側に移動させると、接眼レンズ602から射出される画像光の射出角度は、光学系の光軸に対して右側にずれる。
【0038】
これに対し、図6(b)に示すように、導光部600が入射した画像光を2回反射して射出する場合、接眼レンズ602を紙面上で左側に、表示素子601を紙面上で左側に移動させると、接眼レンズ602から射出される画像光の射出角度は、光学系の光軸に対して左側にずれ、逆に、接眼レンズ602を紙面上で右側に、表示素子601を紙面上で右側に移動させると、接眼レンズ602から射出される画像光の射出角度は、光学系の光軸に対して右側にずれる。
【0039】
本発明に従う頭部装着型画像表示装置は、図2〜6に示したように、画像射出部、導光部および接眼レンズのうち少なくとも一つを移動させることによって、導光部から射出される射出光の射出角度を調整することができる。また、画像射出部、導光部および接眼レンズのうち少なくとも1つを固定することにより、移動機構を簡易なものとすることができる。
【0040】
図2〜6では、画像光の光軸(表示素子の法線)と導光部の入射面とが直交する場合を示したが、通常眼鏡レンズは湾曲しているため、角度の調整により導光部と眼鏡レンズとが接触してしまうおそれがある。ところが、表示素子は配置スペースや本体内への組み付けを考慮すると、略正面を向いているほうが好ましいため、表示素子から導光部に入射する光軸を法線とする面に対して、傾いた方向に移動させることで、眼鏡レンズとの接触を避けて移動が可能である。そこで、図7に示すように、導光部700の画像表示部701からの角度αを90度を超える角度とすることで、眼鏡レンズへの接触を効果的に防止することができる。このとき、導光部700と画像表示部701本体部との間には、光路長を調節するためのプリズム703を配設するのが好ましい。
【0041】
図8は、本発明の他の実施形態であり、正の屈折力を持つ自由曲面プリズムからなる導光部800を具える頭部装着型画像表示装置を示したものである。導光部800は、導光部800の一の面800aに入射した画像光が、内部で奇数回(図8では5回)反射し、一の面800aと同じ側の面800bから射出される場合を示したものである。図8(b)は、図8(a)に示した位置から導光部800を左側に移動させた例であり、図8(c)は、図8(a)に示した位置から導光部800を右側に移動させた例である。
【0042】
この構成においても、図8から明らかなように、図5(a)に示した例と同様、導光部から射出される射出光の射出角度を調整することができる。
【0043】
図9(a)、(b)は、本発明に従う頭部装着型画像表示装置に設けられる移動機構の構造を示す模式図であり、画像射出部901、導光部900および接眼レンズ902のうち、導光部900および接眼レンズ902を一体に移動させる移動機構を示したものである。図9(a)は、図1において装着者と対面する側から見た正面図で、それぞれ移動前後の機構を示し、図9(b)は、図1において装着者の頭部側から見た上面図であり、それぞれ移動前後の機構を示している。移動機構は、例えば、導光部900と画像射出部901とを連結する取付部903に凹状のスライドガイド904を設け、そこへ、導光部900の光学面として作用しない面に設けられた凸状のスライドガイド905を係合させて移動させる構成とすることができる。
【0044】
図10(a)、(b)は、本発明に従う頭部装着型画像表示装置に設けられる他の移動機構の構造を示す模式図であり、画像射出部1001、導光部1000および接眼レンズ1002のうち、接眼レンズ1002のみを移動させる移動機構を示したものである。図10(a)、(b)はいずれも、図1において装着者の頭部側から見た上面図であり、それぞれ移動前後の機構を示している。移動機構は、接眼レンズ1002にスライドガイド1004を設けて導光部1000に係合させ、接眼レンズ1002を移動させるように構成されている。
【0045】
図11(a)、(b)は、本発明に従う頭部装着型画像表示装置に設けられる別の移動機構の構造を示す模式図であり、画像射出部1101、導光部1100および接眼レンズ1102のうち、導光部1100のみを移動させる移動機構を示したものである。図10(a)、(b)はいずれも、図1において装着者の頭部側から見た上面図であり、それぞれ移動前後の機構を示している。移動機構は、接眼レンズ1102に設けられたスライドガイド1104に導光部1100を係合させ、導光部1100を移動させるように構成されている。
【0046】
なお、本発明の形態による説明では、頭部装着型画像表示装置を眼鏡に装着した状態での左右方向の角度調整のみ記載しているが、画像射出部、導光部および接眼レンズのうち少なくとも1つを、図1〜11の紙面と垂直方向(上下方向)に移動させることによって、導光部から射出される射出光の射出角度を紙面と垂直方向に調整することも可能である。さらに、左右移動と上下移動を組み合わせて、射出角度を左右および上下方向に調整できるように構成してもよい。
【0047】
さらに、本実施形態では左右方向に配置した導光部の例を示したが、回転させて、上下方向に導光部を配置することも可能であり、その場合は本実施例の左右方向が上下方向に置きかえられる。また、移動機構の移動成分が左右方向や上下方向の方向成分を含んでいれば、当然本発明に含まれる。
【0048】
本発明は、上記実施形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。例えば、図1等には右目用の装置を示したが、左目用や両目用の構成とすることもできる。また、画像を背景が透けて見えるシースルー画像として観察させるため、図12に示すように、先端部の幅Wが人間の通常環境における瞳孔径である4mmよりも細い接眼光学部となるよう構成することもできる。さらに、本発明の移動機構についても、上述した実施形態に限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
110 頭部装着型画像表示装置
111 画像射出部
112 導光部
120 眼鏡
130 眼球
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置に関し、特に、頭部装着型の画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、映像鑑賞やモバイルでの情報表示用途等での実用化に向け、眼鏡等に取り付けられる頭部装着型の画像表示装置の開発が盛んに行われている。この装置は、一般に、「ヘッドマウントディスプレイ(HMD)」と呼ばれ、表示素子からの画像光を瞳孔に導いて網膜上に結像させることで、装着者に画像の拡大像を虚像として観察させるものである。
【0003】
図13は、一般的な頭部装着型画像表示装置1310の構成を示す模式図である。図13において、表示素子1311に表示された画像Xの画像光1312は、導光部1313に入射し、1回以上の反射を経て導光部1313から射出されて装着者の眼球1320の瞳孔に入り、網膜上で結像される。これにより、装着者は、瞳孔の視軸方向前方に、画像Xの虚像X’を観察することができる。
【0004】
ここで、瞳孔とは、図14に示すように、眼球1320の虹彩1401によって囲まれた部分1402のことをいい、この部分を通った光が網膜1403に投影される。よって、表示画像の全体を適切に観察するには、導光部の射出瞳と、上記瞳孔1402とを対応させる必要がある。
【0005】
特許文献1には、眼鏡フレーム内に内蔵または眼鏡フレームに取り付けて使用される頭部装着型表示装置が提案されている。このような装置は、その特性上、装置全体が小型であることが要求される。一般的に、接眼光学系のサイズが小さくなるほど、接眼光学系の射出瞳が小さくなる傾向にあり、装着者の眼球および瞳孔の位置に対応させることが難しくなる。
【0006】
そのため、特許文献2には、眼鏡レンズに内蔵されたコンバイナ光学系に対し、眼鏡のテンプルに装着された表示パネル、および、表示パネルとコンバイナ光学系との間に配置された集光レンズを一緒に移動させるか、または、これらコンバイナ光学系、表示パネルおよび集光レンズの全てを一体化して移動させることにより、コンバイナ光学系の射出瞳となるアイポイントの位置の調整を図る技術が開示されている。
【0007】
ところが、射出光の射出角度によっては、射出瞳の位置を調整しただけでは装着者に表示画像が適切に観察されない場合がある。これは、装着者によって眼鏡のテンプル部の開き角が異なることが要因の一つである。一般に、装着者の顔幅には個体差があり、顔幅が大きい場合には眼鏡のテンプル部の開き角が大きくなり、顔幅が小さい場合には眼鏡のテンプル部の開き角が小さくなる。これにより、導光部から射出される画像光の射出角が変化し、装着者に適切な角度からずれてしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許3871188号公報
【特許文献2】特開2008−61052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題を解決し、射出光の射出角度を調整することができる頭部装着型画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の要旨構成は以下の通りである。
(1)画像光を射出する画像射出部と、該画像射出部から射出された前記画像光を入射し、内部で複数回反射させて射出する導光部と、該導光部の前記画像光を射出する面に配置された接眼レンズと、前記画像射出部、前記導光部および前記接眼レンズのうち少なくとも一つを移動させることによって、前記接眼レンズから射出される画像光の射出角度を調整する移動機構とを具えることを特徴とする頭部装着型画像表示装置。
【0011】
(2)画像光を射出する画像射出部と、該画像射出部から射出された前記画像光を入射し、内部で複数回反射させて射出する正の屈折力を持つ導光部と、前記画像射出部および前記導光部のうち少なくとも一つを移動させることによって、前記導光部から射出される画像光の射出角度を調整する移動機構とを具えることを特徴とする頭部装着型画像表示装置。
【0012】
(3)前記画像射出部、前記導光部および前記接眼レンズのうち少なくとも1つが固定されている上記(1)に記載の頭部装着型画像表示装置。
【0013】
(4)前記画像射出部、前記導光部のうち少なくとも1つが固定されている上記(2)に記載の頭部装着型画像表示装置。
【0014】
(5)前記導光部がプリズムであり、一の面に入射した画像光を、前記一の面と同じ面から射出させる上記(1)〜(4)のいずれか一に記載の頭部装着型画像表示装置。
【0015】
(6)前記導光部の内部で反射する回数が偶数回である上記(1)〜(5)のいずれか一に記載の頭部装着型画像表示装置。
【0016】
(7)前記移動機構による移動によって射出角度のみが調整され、射出瞳位置は変化しない上記(6)に記載の頭部装着型画像表示装置。
【0017】
(8)前記導光部の、当該装置を装着する装着者の視軸方向への投影断面の幅が、4mm以下である上記(1)〜(7)のいずれか一に記載の頭部装着型画像表示装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、画像射出部、導光部および接眼レンズのうち少なくとも一つを移動させることで、画像光の射出角度を調整することができる頭部装着型画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1(a)は、本発明の実施形態に従う頭部装着型画像表示装置を眼鏡に装着した状態を示す模式的平面図であり、図1(b)は、射出光の射出角度を示す模式図である。
【図2】図2(a),(b)は、固定された表示素子および導光部に対して接眼レンズを移動させた場合の射出光の射出角度を示す模式図である。
【図3】図3(a),(b)は、固定された導光部および接眼レンズに対して表示素子を移動させた場合の射出光の射出角度を示す模式図である。
【図4】図4(a),(b)は、固定された接眼レンズおよび表示素子に対して導光部を移動させた場合の射出光の射出角度を示す模式図である。
【図5】図5(a),(b),(c)は、固定された表示素子に対して導光部および接眼レンズを移動させた場合の射出光の射出角度を示す模式図である。
【図6】図6(a),(b)は、固定された導光部に対して導光部および接眼レンズを移動させた場合の射出光の射出角度を示す模式図である。
【図7】図7は、本発明の実施形態に従う頭部装着型画像表示装置を示す模式図である。
【図8】図8(a)〜(c)は、本発明の実施形態に従う頭部装着型画像表示装置を示す模式図である。
【図9】図9(a),(b)は、本発明の実施形態に従う頭部装着型画像表示装置の移動機構を示す模式図である。
【図10】図10(a),(b)は、本発明の実施形態に従う頭部装着型画像表示装置の移動機構を示す模式図である。
【図11】図11(a),(b)は、本発明の実施形態に従う頭部装着型画像表示装置の移動機構を示す模式図である。頭部装着型画像表示装置を示す模式図である。
【図12】図12は、本発明の実施形態に従う頭部装着型画像表示装置と装着者の眼球の瞳孔との関係を示す模式図である。
【図13】図13は、一般的な頭部装着型画像表示装置の構成を示す模式図である。
【図14】図14は、装着者の眼球を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に従う頭部装着型画像表示装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1(a)は、本発明の実施形態に従う頭部装着型画像表示装置110を眼鏡120に装着した状態を示す模式的平面図である。頭部装着型画像表示装置110は、主として画像射出部111および導光部112を具える。頭部装着型画像表示装置110を眼鏡120に取り付ける場合、画像射出部111は、装着者の頭部に装着される眼鏡120の右側テンプル部分121に、支持部111a等により取り付けられる。
【0022】
画像射出部111は、液晶パネルや有機ELパネル等の表示素子を内蔵する。画像射出部111は、眼鏡120のテンプル部121に沿い装着者の前方へ延び、その先端は、右側眼鏡レンズ122の側方で、取付部113を介して導光部112と結合されている。導光部112は、眼鏡120の右側眼鏡レンズ122の前方を、画像射出部111から装着者の視野内まで略水平に延びている。後述するように、導光部112は、画像射出部111から射出される画像光を導光し、先端の接眼窓から眼球130に向けて画像光を射出する。
【0023】
本発明において、画像光の射出角度を調整するとは、図1(b)に示すように、画像光の接眼光学系の光軸に対する角度を、装着者の眼球の位置に合わせることをいう。
【0024】
この導光部112における画像光の振る舞いについて、詳細に説明する。
図2(a)、(b)は、いずれも台形状のプリズムを用いた導光部200を用い、固定された導光部200および画像射出部(図2では表示素子)201に対して接眼レンズ202を移動させた場合の、導光部200から接眼レンズ202を介して射出される射出光の射出角度を示したものである。図2(a)は、導光部200が入射した画像光を5回反射して射出する場合を示し、図2(b)は、導光部が入射した画像光を2回反射して射出する場合を示したものである。なお、図2(a)、(b)にはいずれも、接眼レンズ202を左右に移動した2つの状態の様子が示されている。
【0025】
図2(a)に示すように、導光部200が入射した画像光を5回反射して射出する場合、接眼レンズ202を紙面上で右側に移動させると、接眼レンズ202から射出される画像光の射出角度は、光学系の光軸に対して右側にずれ、逆に、接眼レンズ202を紙面上で左側に移動させると、接眼レンズ202から射出される画像光の射出角度は、光学系の光軸に対して左側にずれる。
【0026】
同様に、図2(b)に示すように、導光部200が入射した画像光を2回反射して射出する場合、接眼レンズ202を紙面上で右側に移動させると、接眼レンズ202から射出される画像光の射出角度は、光学系の光軸に対して右側にずれ、逆に、接眼レンズ202を紙面上で左側に移動させると、接眼レンズ202から射出される画像光の射出角度は、光学系の光軸に対して左側にずれる。
【0027】
図3(a)、(b)は、いずれも台形状のプリズムを用いた導光部300を用い、固定された導光部300および接眼レンズ302に対して画像射出部(図3では表示素子)301を移動させた場合の、導光部300から接眼レンズ302を介して射出される射出光の射出角度を示したものである。図3(a)は、導光部300が入射した画像光を5回反射して射出する場合を示し、図3(b)は、導光部300が入射した画像光を2回反射して射出する場合を示したものである。なお、図3(a)、(b)にはいずれも、表示素子301を左右に移動した2つの状態の様子が示されている。
【0028】
図3(a)に示すように、導光部300が入射した画像光を5回反射して射出する場合、表示素子301を紙面上で右側に移動させると、接眼レンズ302から射出される画像光の射出角度は、光学系の光軸に対して左側にずれ、逆に、表示素子301を紙面上で左側に移動させると、接眼レンズ302から射出される画像光の射出角度は、光学系の光軸に対して右側にずれる。
【0029】
これに対し、図3(b)に示すように、導光部300が入射した画像光を2回反射して射出する場合、表示素子301を紙面上で右側に移動させると、接眼レンズ302から射出される画像光の射出角度は、光学系の光軸に対して右側にずれ、逆に、表示素子301を紙面上で左側に移動させると、接眼レンズ302から射出される画像光の射出角度は、光学系の光軸に対して左側にずれる。
【0030】
図4(a)、(b)は、いずれも台形状のプリズムを用いた導光部400を用い、固定された画像射出部(図4では表示素子)401および接眼レンズ402に対して導光部400を移動させた場合の、導光部400から接眼レンズ402を介して射出される射出光の射出角度を示したものである。図4(a)は、導光部400が入射した画像光を5回反射して射出する場合を示し、図4(b)は、導光部400が入射した画像光を2回反射して射出する場合を示したものである。なお、図4(a)、(b)にはいずれも、導光部400を左右に移動した2つの状態の様子が示されている。
【0031】
図4(a)に示すように、導光部400が入射した画像光を5回反射して射出する場合、導光部400を紙面上で右側または左側に移動させた場合、接眼レンズ402から射出される画像光の射出角度のずれはわずかである。
【0032】
一方、図4(b)に示すように、導光部400が入射した画像光を2回反射して射出する場合、導光部400を紙面上で右側に移動させると、接眼レンズ402から射出される画像光の射出角度は、光学系の光軸に対して左側にずれ、逆に、導光部400を紙面上で左側に移動させると、接眼レンズ402から射出される画像光の射出角度は、光学系の光軸に対して右側にずれる。
【0033】
図5(a)、(b)は、いずれも台形状のプリズムを用いた導光部500を用い、固定された画像射出部(図5では表示素子)501に対して導光部500および接眼レンズ502を移動させた場合の、導光部500から接眼レンズ502を介して射出される射出光の射出角度を示したものである。図5(a)は、導光部500が入射した画像光を5回反射して射出する場合を示し、図5(b)は、導光部500が入射した画像光を2回反射して射出する場合を示したものである。なお、図5(a)、(b)にはいずれも、導光部500を左右に移動した2つの状態の様子が示されている。
【0034】
図5(a)に示すように、導光部500が入射した画像光を5回反射して射出する場合、導光部500および接眼レンズ502を紙面上で右側に移動させると、接眼レンズ502から射出される画像光の射出角度は、光学系の光軸に対して右側にずれ、逆に、導光部500および接眼レンズ502を紙面上で左側に移動させると、接眼レンズ502から射出される画像光の射出角度は、光学系の光軸に対して左側にずれる。
【0035】
一方、図5(b)に示すように、導光部500が入射した画像光を2回反射して射出する場合、導光部500および接眼レンズ502を紙面上で右側に移動させると、接眼レンズ502から射出される画像光の射出角度は、光学系の光軸に対して左側にずれ、逆に、導光部500および接眼レンズ502を紙面上で左側に移動させると、接眼レンズ502から射出される画像光の射出角度は、光学系の光軸に対して右側にずれる。図5(b)から明らかなように、この場合、射出瞳の一致する点が存在することになり、射出瞳の位置を固定したまま射出角度を調整することができる。また、図5(c)に示すように、例えば固定された射出瞳位置に眼球中心を配置することで、射出瞳の小さな小型な光学系であっても画面がケラレることなく表示角度のみを調整することができる。
【0036】
図6(a)、(b)は、いずれも台形状のプリズムを用いた導光部600を用い、固定された導光部600に対して接眼レンズ602および画像射出部(図6では表示素子)601を移動させた場合の、導光部600から接眼レンズ602を介して射出される射出光の射出角度を示したものである。図6(a)は、導光部600が入射した画像光を5回反射して射出する場合を示し、図6(b)は、導光部600が入射した画像光を2回反射して射出する場合を示したものである。なお、図6(a)の2つの図は、いずれも接眼レンズ602および表示素子601を異なる方向(離れる方向)へ移動させた場合を示したものであり、図6(b)の2つの図は、接眼レンズ602および表示素子601を同じ方向へ移動させた場合を示したものである。
【0037】
図6(a)に示すように、導光部600が入射した画像光を5回反射して射出する場合、接眼レンズ602を紙面上で左側に、表示素子601を紙面上で右側に移動させると、接眼レンズ602から射出される画像光の射出角度は、光学系の光軸に対して左側にずれ、逆に、接眼レンズ602を紙面上で右側に、表示素子601を紙面上で左側に移動させると、接眼レンズ602から射出される画像光の射出角度は、光学系の光軸に対して右側にずれる。
【0038】
これに対し、図6(b)に示すように、導光部600が入射した画像光を2回反射して射出する場合、接眼レンズ602を紙面上で左側に、表示素子601を紙面上で左側に移動させると、接眼レンズ602から射出される画像光の射出角度は、光学系の光軸に対して左側にずれ、逆に、接眼レンズ602を紙面上で右側に、表示素子601を紙面上で右側に移動させると、接眼レンズ602から射出される画像光の射出角度は、光学系の光軸に対して右側にずれる。
【0039】
本発明に従う頭部装着型画像表示装置は、図2〜6に示したように、画像射出部、導光部および接眼レンズのうち少なくとも一つを移動させることによって、導光部から射出される射出光の射出角度を調整することができる。また、画像射出部、導光部および接眼レンズのうち少なくとも1つを固定することにより、移動機構を簡易なものとすることができる。
【0040】
図2〜6では、画像光の光軸(表示素子の法線)と導光部の入射面とが直交する場合を示したが、通常眼鏡レンズは湾曲しているため、角度の調整により導光部と眼鏡レンズとが接触してしまうおそれがある。ところが、表示素子は配置スペースや本体内への組み付けを考慮すると、略正面を向いているほうが好ましいため、表示素子から導光部に入射する光軸を法線とする面に対して、傾いた方向に移動させることで、眼鏡レンズとの接触を避けて移動が可能である。そこで、図7に示すように、導光部700の画像表示部701からの角度αを90度を超える角度とすることで、眼鏡レンズへの接触を効果的に防止することができる。このとき、導光部700と画像表示部701本体部との間には、光路長を調節するためのプリズム703を配設するのが好ましい。
【0041】
図8は、本発明の他の実施形態であり、正の屈折力を持つ自由曲面プリズムからなる導光部800を具える頭部装着型画像表示装置を示したものである。導光部800は、導光部800の一の面800aに入射した画像光が、内部で奇数回(図8では5回)反射し、一の面800aと同じ側の面800bから射出される場合を示したものである。図8(b)は、図8(a)に示した位置から導光部800を左側に移動させた例であり、図8(c)は、図8(a)に示した位置から導光部800を右側に移動させた例である。
【0042】
この構成においても、図8から明らかなように、図5(a)に示した例と同様、導光部から射出される射出光の射出角度を調整することができる。
【0043】
図9(a)、(b)は、本発明に従う頭部装着型画像表示装置に設けられる移動機構の構造を示す模式図であり、画像射出部901、導光部900および接眼レンズ902のうち、導光部900および接眼レンズ902を一体に移動させる移動機構を示したものである。図9(a)は、図1において装着者と対面する側から見た正面図で、それぞれ移動前後の機構を示し、図9(b)は、図1において装着者の頭部側から見た上面図であり、それぞれ移動前後の機構を示している。移動機構は、例えば、導光部900と画像射出部901とを連結する取付部903に凹状のスライドガイド904を設け、そこへ、導光部900の光学面として作用しない面に設けられた凸状のスライドガイド905を係合させて移動させる構成とすることができる。
【0044】
図10(a)、(b)は、本発明に従う頭部装着型画像表示装置に設けられる他の移動機構の構造を示す模式図であり、画像射出部1001、導光部1000および接眼レンズ1002のうち、接眼レンズ1002のみを移動させる移動機構を示したものである。図10(a)、(b)はいずれも、図1において装着者の頭部側から見た上面図であり、それぞれ移動前後の機構を示している。移動機構は、接眼レンズ1002にスライドガイド1004を設けて導光部1000に係合させ、接眼レンズ1002を移動させるように構成されている。
【0045】
図11(a)、(b)は、本発明に従う頭部装着型画像表示装置に設けられる別の移動機構の構造を示す模式図であり、画像射出部1101、導光部1100および接眼レンズ1102のうち、導光部1100のみを移動させる移動機構を示したものである。図10(a)、(b)はいずれも、図1において装着者の頭部側から見た上面図であり、それぞれ移動前後の機構を示している。移動機構は、接眼レンズ1102に設けられたスライドガイド1104に導光部1100を係合させ、導光部1100を移動させるように構成されている。
【0046】
なお、本発明の形態による説明では、頭部装着型画像表示装置を眼鏡に装着した状態での左右方向の角度調整のみ記載しているが、画像射出部、導光部および接眼レンズのうち少なくとも1つを、図1〜11の紙面と垂直方向(上下方向)に移動させることによって、導光部から射出される射出光の射出角度を紙面と垂直方向に調整することも可能である。さらに、左右移動と上下移動を組み合わせて、射出角度を左右および上下方向に調整できるように構成してもよい。
【0047】
さらに、本実施形態では左右方向に配置した導光部の例を示したが、回転させて、上下方向に導光部を配置することも可能であり、その場合は本実施例の左右方向が上下方向に置きかえられる。また、移動機構の移動成分が左右方向や上下方向の方向成分を含んでいれば、当然本発明に含まれる。
【0048】
本発明は、上記実施形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。例えば、図1等には右目用の装置を示したが、左目用や両目用の構成とすることもできる。また、画像を背景が透けて見えるシースルー画像として観察させるため、図12に示すように、先端部の幅Wが人間の通常環境における瞳孔径である4mmよりも細い接眼光学部となるよう構成することもできる。さらに、本発明の移動機構についても、上述した実施形態に限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
110 頭部装着型画像表示装置
111 画像射出部
112 導光部
120 眼鏡
130 眼球
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像光を射出する画像射出部と、
該画像射出部から射出された前記画像光を入射し、内部で複数回反射させて射出する導光部と、
該導光部の前記画像光を射出する面に配置された接眼レンズと、
前記画像射出部、前記導光部および前記接眼レンズのうち少なくとも一つを移動させることによって、前記接眼レンズから射出される画像光の射出角度を調整する移動機構と
を具えることを特徴とする頭部装着型画像表示装置。
【請求項2】
画像光を射出する画像射出部と、
該画像射出部から射出された前記画像光を入射し、内部で複数回反射させて射出する正の屈折力を持つ導光部と、
前記画像射出部および前記導光部のうち少なくとも一つを移動させることによって、前記導光部から射出される画像光の射出角度を調整する移動機構と
を具えることを特徴とする頭部装着型画像表示装置。
【請求項3】
前記画像射出部、前記導光部および前記接眼レンズのうち少なくとも1つが固定されている請求項1に記載の頭部装着型画像表示装置。
【請求項4】
前記画像射出部、前記導光部のうち少なくとも1つが固定されている請求項2に記載の頭部装着型画像表示装置。
【請求項5】
前記導光部がプリズムであり、一の面に入射した画像光を、前記一の面と同じ面から射出させる請求項1〜4のいずれか一項に記載の頭部装着型画像表示装置。
【請求項6】
前記導光部の内部で反射する回数が偶数回である請求項1〜5のいずれか一項に記載の頭部装着型画像表示装置。
【請求項7】
前記移動機構による移動によって射出角度のみが調整され、射出瞳位置は変化しない請求項6に記載の頭部装着型画像表示装置。
【請求項8】
前記導光部の、当該装置を装着する装着者の視軸方向への投影断面の幅が、4mm以下である請求項1〜7のいずれか一項に記載の頭部装着型画像表示装置。
【請求項1】
画像光を射出する画像射出部と、
該画像射出部から射出された前記画像光を入射し、内部で複数回反射させて射出する導光部と、
該導光部の前記画像光を射出する面に配置された接眼レンズと、
前記画像射出部、前記導光部および前記接眼レンズのうち少なくとも一つを移動させることによって、前記接眼レンズから射出される画像光の射出角度を調整する移動機構と
を具えることを特徴とする頭部装着型画像表示装置。
【請求項2】
画像光を射出する画像射出部と、
該画像射出部から射出された前記画像光を入射し、内部で複数回反射させて射出する正の屈折力を持つ導光部と、
前記画像射出部および前記導光部のうち少なくとも一つを移動させることによって、前記導光部から射出される画像光の射出角度を調整する移動機構と
を具えることを特徴とする頭部装着型画像表示装置。
【請求項3】
前記画像射出部、前記導光部および前記接眼レンズのうち少なくとも1つが固定されている請求項1に記載の頭部装着型画像表示装置。
【請求項4】
前記画像射出部、前記導光部のうち少なくとも1つが固定されている請求項2に記載の頭部装着型画像表示装置。
【請求項5】
前記導光部がプリズムであり、一の面に入射した画像光を、前記一の面と同じ面から射出させる請求項1〜4のいずれか一項に記載の頭部装着型画像表示装置。
【請求項6】
前記導光部の内部で反射する回数が偶数回である請求項1〜5のいずれか一項に記載の頭部装着型画像表示装置。
【請求項7】
前記移動機構による移動によって射出角度のみが調整され、射出瞳位置は変化しない請求項6に記載の頭部装着型画像表示装置。
【請求項8】
前記導光部の、当該装置を装着する装着者の視軸方向への投影断面の幅が、4mm以下である請求項1〜7のいずれか一項に記載の頭部装着型画像表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−63638(P2012−63638A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208592(P2010−208592)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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