顎運動の測定装置
【課題】各々のコイル間に発生するクロストークによる誤差を少なくして、センサコイルの位置を正確に検出する。
【解決手段】顎運動の測定装置は、交流電源3に接続される励磁コイル1からセンサコイル2に誘導される交流信号から、励磁コイル1に対するセンサコイル2の相対位置を検出する。測定装置は、センサコイル2のX軸コイル2aに誘導される交流信号を、センサコイル2のY軸コイル2bとZ軸コイル2cから誘導されるクロストーク信号で補正し、センサコイル2のY軸コイル2bに誘導される交流信号を、センサコイル2のX軸コイル2aとZ軸コイル2cから誘導されるクロストーク信号で補正し、センサコイル2のZ軸コイル2cに誘導される交流信号を、センサコイル2のX軸コイル2aとY軸コイル2bから誘導されるクロストーク信号で補正して、クロストーク信号で補正された交流信号でもって、センサコイル2を固定する歯の位置を演算する。
【解決手段】顎運動の測定装置は、交流電源3に接続される励磁コイル1からセンサコイル2に誘導される交流信号から、励磁コイル1に対するセンサコイル2の相対位置を検出する。測定装置は、センサコイル2のX軸コイル2aに誘導される交流信号を、センサコイル2のY軸コイル2bとZ軸コイル2cから誘導されるクロストーク信号で補正し、センサコイル2のY軸コイル2bに誘導される交流信号を、センサコイル2のX軸コイル2aとZ軸コイル2cから誘導されるクロストーク信号で補正し、センサコイル2のZ軸コイル2cに誘導される交流信号を、センサコイル2のX軸コイル2aとY軸コイル2bから誘導されるクロストーク信号で補正して、クロストーク信号で補正された交流信号でもって、センサコイル2を固定する歯の位置を演算する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顎の動きを測定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、励磁コイルからセンサーコイルに交流を誘導して顎運動を測定する装置を開発した(特許文献1参照)。
【0003】
この装置は、図1に示すように、上顎又は下顎のいずれかの顎の歯に剛体結合される励磁コイル91と、励磁コイル91を剛体結合している顎と反対側の顎の歯に剛体結合されるセンサコイル92と、励磁コイル91に交流電流を流す交流電源93と、交流で励起される励磁コイル91からセンサコイル92に誘導される信号を演算して、励磁コイル91に対するセンサコイル92の相対的な位置から上顎と下顎の相対位置を検出する演算回路94とを備える。励磁コイル91とセンサコイル92は、互いに離して配設している。励磁コイル91とセンサコイル92は、図2に示すように、互いに直交する方向に巻かれている3組のコイル91a、91b、91c、(92a、92b、92c)を備える。この顎運動の測定装置は、励磁コイル91の各々のコイル91a、91b、91cに交流電源93を接続し、センサコイル92の各々のコイル92a、92b、92cに誘導される交流を演算回路94で演算して、下顎と上顎の相対位置を検出する。
【特許文献1】2004−229943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上の顎運動の測定装置は、励磁コイル91を交流で励磁して、センサコイル92に誘導される交流信号からセンサコイル92の励磁コイル91に対する相対位置を検出する。励磁コイル91とセンサコイル92は、互いに直交するように配設しているX軸コイル91a、92aと、Y軸コイル91b、92bと、Z軸コイル91c、92cを備える。励磁コイル91のX軸コイル91aを励磁してセンサコイル92のX軸コイル92aに誘導される交流信号と、励磁コイル91のY軸コイル91bを励磁してセンサコイル92のY軸コイル92bに誘導される交流信号と、励磁コイル91のZ軸コイル91cを励磁してセンサコイル92のZ軸コイル92cに誘導される交流信号から、センサコイル92の励磁コイル91に対するX軸、Y軸、Z軸の位置を検出する。励磁コイル91であるX軸コイル91aと、Y軸コイル91bと、Z軸コイル91cは、異なる周波数の交流で励磁され、あるいは時分割に順番に切り換えて励磁される。
【0005】
励磁コイルのX軸コイルとY軸コイルとZ軸コイルとを異なる周波数で励磁する顎運動の測定装置は、励磁コイルのX軸コイルをX軸周波数(ωX)で励磁してセンサコイルに誘導されるX軸周波数(ωX)の交流信号を検出し、励磁コイルのY軸コイルをY軸周波数(ωY)で励磁してセンサコイルに誘導されるY軸周波数(ωY)の交流信号を検出し、励磁コイルのZ軸コイルをZ軸周波数(ωZ)で励磁してセンサコイルに誘導されるZ軸周波数(ωZ)の交流信号を検出し、検出される交流信号の電圧レベルからセンサコイルの励磁コイルに対する位置を演算できる。センサコイルが励磁コイルに接近するにしたがって、センサコイルに誘導される交流信号の電圧レベルが大きくなるからである。
【0006】
このとき、励磁コイルのX軸コイルから誘導される交流信号は、センサコイルのX軸コイルとY軸コイルとZ軸コイルに誘導された信号をベクトル合成したものであり、励磁コイルのY軸コイルから誘導される交流信号は、センサコイルのX軸コイルとY軸コイルとZ軸コイルに誘導された信号をベクトル合成したものであり、さらに、励磁コイルのZ軸コイルから誘導される交流信号は、センサコイルのX軸コイルとY軸コイルとZ軸コイルに誘導された信号をベクトル合成したものであり、演算回路94は、これらの信号からセンサコイル92の位置を演算している。この方法は、図2に示すように、X軸コイル92aとY軸コイル92bとZ軸コイル92cを互いに正確に直交する姿勢で配置し、かつX軸コイル92aと、Y軸コイル92bと、Z軸コイル92cの中心軸を一点で交差するように配列して高精度にセンサコイル92の位置を検出できる。しかしながら、現実には、センサコイルを理想的な状態では配置できず、各々のコイル間に発生するクロストークによってセンサコイルの位置検出に誤差が発生する。たとえば、センサコイルのX軸コイルと、Y軸コイルと、Z軸コイルが正確な位置に配置できないと、励磁コイルのX軸コイルを励磁するX軸周波数の交流は、主としてセンサコイルのX軸コイルに誘導されるが、姿勢や位置がずれたセンサコイルのY軸コイルとZ軸コイルにも誘導され、センサコイルのY軸コイルとZ軸コイルに誘導される信号がX軸コイルを励磁してクロストークの原因となる。この現象によって各々のコイル間に発生するクロストークは、センサコイルのX軸コイルと、Y軸コイルと、Z軸コイルを正確に直角な姿勢で配置し、かつ各々のコイルの中心線が一点で交差するように配置して少なくできるが、現実に製作されるセンサコイルは、必ずしも各々のコイルを理想的な状態に配置できず、クロストークが位置検出の精度を低下させる。
【0007】
本発明は、このような欠点を解決することを目的に開発されたもので、本発明の重要な目的は、各々のコイル間に発生するクロストークによる誤差を少なくして、センサコイルのX軸、Y軸、Z軸位置を正確に検出できる顎運動の測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の顎運動の測定装置は、前述の目的を達成するために以下の構成を備える。
顎運動の測定装置は、交流電源3に接続される励磁コイル1と、歯に剛体結合されて励磁コイル1から誘導される交流を検出するセンサコイル2と、このセンサコイル2に誘導される交流信号から、センサコイル2の励磁コイル1に対する相対位置を演算して、センサコイル2を剛体結合している歯の相対位置を検出する演算回路4とを備える。励磁コイル1は、互いに直交する方向に巻かれているX軸コイル1aと、Y軸コイル1bと、Z軸コイル1cとを備え、センサコイル2も、互いに直交する方向に巻かれているX軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2cとを備える。測定装置は、X軸コイル1aと、Y軸コイル1bと、Z軸コイル1cからなる励磁コイル1を交流電源3で励磁し、演算回路4が、センサコイル2のX軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2cに誘導される交流信号を演算して、センサコイル2を固定する歯のX軸、Y軸、Z軸における位置を立体的に演算している。さらに、演算回路4は、センサコイル2のX軸コイル2aに誘導される交流信号を、センサコイル2のY軸コイル2bとZ軸コイル2cから誘導されるクロストーク信号で補正し、センサコイル2のY軸コイル2bに誘導される交流信号を、センサコイル2のX軸コイル2aとZ軸コイル2cから誘導されるクロストーク信号で補正し、センサコイル2のZ軸コイル2cに誘導される交流信号を、センサコイル2のX軸コイル2aとY軸コイル2bから誘導されるクロストーク信号で補正して、クロストーク信号で補正された交流信号でもって、センサコイル2を固定する歯のX軸、Y軸、Z軸の位置を演算している。
【0009】
本発明の請求項2の顎運動の測定装置は、演算回路4が、センサコイル2のX軸コイル2aに誘導される交流信号を、センサコイル2のZ軸コイル2cからY軸コイル2bに誘導され、さらにY軸コイル2bからX軸コイル2aに誘導されるクロストーク信号と、センサコイル2のY軸コイル2bからZ軸コイル2cに誘導され、さらにZ軸コイル2cからX軸コイル2aに誘導されるクロストーク信号で補正すると共に、センサコイル2のY軸コイル2bに誘導される交流信号を、センサコイル2のX軸コイル2aからZ軸コイル2cに誘導され、さらにZ軸コイル2cからY軸コイル2bに誘導されるクロストーク信号と、センサコイル2のZ軸コイル2cからX軸コイル2aに誘導され、さらにX軸コイル2aからY軸コイル2bに誘導されるクロストーク信号で補正し、さらに、センサコイル2のZ軸コイル2cに誘導される交流信号を、センサコイル2のX軸コイル2aからY軸コイル2bに誘導され、さらにY軸コイル2bからZ軸コイル2cに誘導されるクロストーク信号と、センサコイル2のY軸コイル2bからX軸コイル2aに誘導され、さらにX軸コイル2aからZ軸コイル2cに誘導されるクロストーク信号で補正して、クロストーク信号で補正された交流信号で、センサコイル2を固定している歯のX軸、Y軸、Z軸の位置を検出している。
【0010】
本発明の請求項3の顎運動の測定装置は、X軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2cからなるセンサコイル2が、あらかじめコイル状に巻かれたループコイル8を、互いに直交する3つの平面を有するコアー材7の直交する平面7Aに固定している。
【0011】
本発明の請求項4の顎運動の測定装置は、X軸コイル1aと、Y軸コイル1bと、Z軸コイル1cからなる励磁コイル1が、あらかじめコイル状に巻かれたループコイル8を、互いに直交する3つの平面を有するコアー材7の直交する平面7Aに固定している。
【0012】
本発明の請求項5の顎運動の測定装置は、ループコイル2を、平面状に巻かれた平面コイルとしている。さらに、本発明の請求項6の顎運動の測定装置は、コアー材7を直方体としている。さらにまた、本発明の請求項7の顎運動の測定装置は、ループコイル2を円形としている。
【0013】
本発明の請求項8の顎運動の測定装置は、励磁コイル1を上顎11に剛体結合し、センサコイル2を下顎12に剛体結合して、上顎11と下顎12の相対位置を検出している。さらに、本発明の請求項9の顎運動の測定装置は、センサコイルを上顎に剛体結合し、励磁コイルを下顎に剛体結合して、上顎と下顎の相対位置を検出している。
【0014】
本発明の10の顎運動の測定装置は、励磁コイル1を固定する固定台20を有し、この固定台20の定位置に、センサコイル2を歯に剛体結合してなる被験者を配置して、固定台20に対する歯の相対位置を検出して歯の位置を検出している。さらに、本発明の請求項11の顎運動の測定装置は、固定台20が、被験者の頭部を固定する頭部固定機構21を有し、センサコイル2を被験者の下顎11に剛体結合している。
【0015】
本発明の請求項12の顎運動の測定装置は、センサコイル2を直接に歯に固定している。さらに、本発明の請求項13の顎運動の測定装置は、励磁コイル1を直接に歯に固定している。
【発明の効果】
【0016】
本発明の顎運動の測定装置は、X軸コイルと、Y軸コイルと、Z軸コイルの間に発生するクロストークによる誤差を少なくして、センサコイルのX軸、Y軸、Z軸位置を正確に検出できる特徴がある。それは、本発明の顎運動の測定装置が、センサコイルのX軸コイルに誘導される交流信号を、センサコイルのY軸コイルとZ軸コイルから誘導されるクロストーク信号で補正し、センサコイルのY軸コイルに誘導される交流信号を、センサコイルのX軸コイルとZ軸コイルから誘導されるクロストーク信号で補正し、センサコイルのZ軸コイルに誘導される交流信号を、センサコイルのX軸コイルとY軸コイルから誘導されるクロストーク信号で補正して、クロストーク信号で補正された交流信号でもって、センサコイルを固定する歯のX軸、Y軸、Z軸の位置を演算するからである。
【0017】
さらに、本発明の請求項2の顎運動の測定装置は、請求項1の構成に加えて、センサコイルのX軸コイルに誘導される交流信号を、センサコイルのZ軸コイルからY軸コイルに誘導され、さらにY軸コイルからX軸コイルに誘導されるクロストーク信号と、センサコイルのY軸コイルからZ軸コイルに誘導され、さらにZ軸コイルからX軸コイルに誘導されるクロストーク信号で補正し、センサコイルのY軸コイルに誘導される交流信号を、センサコイルのX軸コイルからZ軸コイルに誘導され、さらにZ軸コイルからY軸コイルに誘導されるクロストーク信号と、センサコイルのZ軸コイルからX軸コイルに誘導され、さらにX軸コイルからY軸コイルに誘導されるクロストーク信号で補正し、センサコイルのZ軸コイルに誘導される交流信号を、センサコイルのX軸コイルからY軸コイルに誘導され、さらにY軸コイルからZ軸コイルに誘導されるクロストーク信号と、センサコイルのY軸コイルからX軸コイルに誘導され、さらにX軸コイルからZ軸コイルに誘導されるクロストーク信号で補正して、クロストーク信号で補正された交流信号で、センサコイルを固定している歯のX軸、Y軸、Z軸の位置を検出する。この顎運動の測定装置は、二次的に発生するクロストークをも補正してセンサコイルの位置を検出するので、さらに高精度に位置を検出できる。
【0018】
本発明の請求項3の顎運動の測定装置は、請求項1の構成に加えて、X軸コイルと、Y軸コイルと、Z軸コイルからなるセンサコイルを、あらかじめコイル状に巻かれたループコイルを、互いに直交する3つの平面を有するコアー材の直交する平面に固定している。また、本発明の請求項4の顎運動の測定装置は、X軸コイルと、Y軸コイルと、Z軸コイルからなる励磁コイルを、あらかじめコイル状に巻かれたループコイルを、互いに直交する3つの平面を有するコアー材の直交する平面に固定している。この構造は、センサコイルや励磁コイルを簡単かつ安価に多量生産しながら、センサコイルの位置を正確に検出できる特徴がある。さらに、センサコイルや励磁コイルを極めて小さくしながら、X軸コイルと、Y軸コイルと、Z軸コイルを互いに正確に直交する姿勢に配置して、安価に多量生産しなが、高精度に位置を検出できる。センサコイルや励磁コイルを安価に多量生産できるのは、あらかじめコイル状に巻かれたループコイルを、互いに直交する3つの平面を有するコアー材の直交する平面に固定して、X軸コイルと、Y軸コイルと、Z軸コイルからなるセンサコイルとしているからである。この構造のセンサコイルは、巻線機で多量生産される3組のループコイルを、成形などの方法で別に製作してなるコアー材の平面に固定して、安価に多量生産できる。とくに、この構造のセンサコイルは、X軸コイルと、Y軸コイルと、Z軸コイルとをコアー材の互いに直交する平面に固定して、互いに直交する姿勢とするので、コイルを巻く工程で、各々のコイルを互いに直交する姿勢に巻く必要がない。互いに直交する平面を有するコアー材の平面にコイルを固定して、コイルの中心線をX軸、Y軸、Z軸に配置できるからである。コアー材は、成形や切削加工でもって、平面を正確に直交する姿勢にできる。また、ループコイルは、コアー材とは別に巻線機で安価に多量生産できるので、これを成形などの方法で安価に多量生産できるコアー材の表面に固定することで、X軸コイルと、Y軸コイルと、Z軸コイルとを正確に直交する姿勢に配置するセンサコイルを安価に多量生産できる特徴がある。また、巻線機でループコイルを製作し、これをコアー材の平面に固定してセンサコイルを製造できるので、センサコイルを極めて小さくできる。
【0019】
とくに、コアー材の表面に固定されるX軸コイルと、Y軸コイルと、Z軸コイルは、中心線の交点を一点にはできずに、互いにコイル間のクロストークが大きくなるが、本発明はコイル間のクロストークを補正してセンサコイルの位置を正確に演算できる。したがって、本発明の請求項3と4の顎運動の測定装置は、コイルを安価に多量生産しながら検出精度を高くできる特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための顎運動の測定装置を例示するものであって、本発明は顎運動の測定装置を以下のものに特定しない。
【0021】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0022】
図3に示す顎運動の測定装置は、上下顎の歯に剛体結合される励磁コイル1及びセンサコイル2と、励磁コイル1に交流を流す交流電源3と、交流で励起される励磁コイル1からセンサコイル2に誘導される信号を演算して、励磁コイル1に対するセンサコイル2の相対的な位置から上顎11と下顎12の相対位置を検出する演算回路4とを備えている。図の測定装置は、上顎11の歯に励磁コイル1を剛体結合し、下顎12の歯にセンサコイル2を剛体結合している。ただし、顎運動の測定装置は、上顎の歯にセンサコイルを剛体結合して、下顎の歯に励磁コイルを剛体結合することもできる。励磁コイル1とセンサコイル2は、取付部材5、6を介して顎の歯に剛体結合している。ただ、励磁コイルとセンサコイルは、取付部材を介して歯茎に固定することもできる。なお、本明細書において、歯とは、義歯を含む広い意味で使用する。
【0023】
図4は、図3に示す測定装置を被験者に装着する状態を示している。この図に示す測定装置は、励磁コイル1を、上顎11の取付部材5を介して上顎11の前方に配設し、センサコイル2を、下顎12の取付部材6を介して頬の外側に配設している。ただし、測定装置は、励磁コイルを頬の外側に配設し、センサコイルを上顎の前方に配設することもできる。さらに、本発明の測定装置は、必ずしも励磁コイルとセンサコイルをこれらの位置に配置する必要はなく、上記の位置から多少ずれた位置に配置することも、あるいは、互いに対向する位置に配置することもできる。たとえば、本発明の測定装置は、図5に示すように、励磁コイル1とセンサコイル2の両方を口腔内に配置することもできる。口腔内に配置される励磁コイル1とセンサコイル2は、直接に歯に固定して上顎11や下顎12に剛体結合することができる。図5の励磁コイル1とセンサコイル2は、歯の表面に直接に接着して剛体結合している。とくに、口腔内に配置される励磁コイル1とセンサコイル2は、好ましくは、上下の顎の運動を測定しやすくするために、前歯の内側もしくは外側に配置される。図5に示す測定装置は、励磁コイル1を上顎11の前歯の外側に直接に剛体結合し、センサコイル2を下顎12の前歯の内側に直接に剛体結合している。図5の測定装置は、励磁コイル1とセンサコイル2の両方を口腔内に配置しているが、測定装置は、励磁コイルとセンサコイルのいずれか一方のみを口腔内に配置することもできる。
【0024】
さらに、図6に示すように、励磁コイル1を被験者の外側に配設して、センサコイル2を上顎11と下顎12の両方に剛体結合し、あるいは、図7に示すように、被験者を励磁コイル1に対して相対的に移動しないように固定して、下顎12にセンサコイル2を剛体結合して下顎12と上顎11との、X軸、Y軸、Z軸における相対位置を検出することもできる。図6の測定装置は、被験者の外側に励磁コイル1を固定する固定台20を備えており、センサコイル2を上顎11と下顎12の歯に剛体結合してなる被験者を固定台20の内部の定位置に配置して、固定台20に対する上顎11と下顎12の歯の相対位置を演算回路4で検出して、歯の位置を検出している。さらに、図7の測定装置は、固定台20が、被験者の頭部を定位置に固定する頭部固定機構21を備えている。この測定装置は、励磁コイル1を固定している固定台20の定位置に、頭部固定機構21を介して被験者の頭部を固定し、被験者の下顎12にセンサコイル2を剛体結合している。この測定装置は、被験者の頭部が固定される固定台20に対する下顎12の歯の相対位置を検出している。
【0025】
さらに、励磁コイル1は、図8と図9に示すように、被験者の外側であって、その中心軸がX軸、Y軸、Z軸に位置するように、互いに直交する姿勢で配置することもできる。これらの図の励磁コイル1は、円形の空芯コイルを、被験者の後方の面と、右側の面と、上方の面とに配置して、X軸コイル1aとY軸コイル1bとZ軸コイル1cとしている。図8の励磁コイル1は、X軸コイル1aとY軸コイル1bとZ軸コイル1cとを、固定台20である直方体のボックスの背面と側面と天井面とに固定して、その中心軸がX軸、Y軸、Z軸に位置するようにしている。また、図9の励磁コイル1は、X軸コイル1aとY軸コイル1bとZ軸コイル1cとを、固定台20である被験者の後方の壁面20Aと右側の壁面20Bと上方の天板20Cの表面に固定して、その中心軸がX軸、Y軸、Z軸に位置するようにしている。この構造は、励磁コイル1の巻き径を大きくして、インダクタンスを大きくし、励磁コイル1から発生する磁界の強度を強くできる特徴がある。図9の励磁コイル1は、被験者の後方と右側と上方とに3枚の固定プレートを互いに直交する姿勢で配置して固定台20としている。この励磁コイル1は、大きな固定台20を、固定プレートごとに分解、運搬して移動できる。ただ、励磁コイルは、測定する室内の壁面や天井を固定台として、その表面にX軸コイルとY軸コイルとZ軸コイルとを固定することもできる。
【0026】
図8と図9に示す測定装置は、センサコイル2を上顎11と下顎12の歯に剛体結合してなる被験者を固定台20の内部の定位置に配置して、固定台20に対する上顎11と下顎12の歯の相対位置を演算回路4で検出して歯の位置を検出している。ただ、測定装置は、下顎の歯にセンサコイルを剛体結合している被験者を固定台の内部の定位置に配置すると共に、頭部固定機構を介して被験者の頭部を固定台に固定して、固定台に対する下顎の歯の相対位置を検出することもできる。
【0027】
図6ないし図9に示す測定装置は、X軸コイル1aとY軸コイル1bとZ軸コイル1cとを、その中心軸が互いに直交する姿勢となるように励磁コイル1を配置している。ただ、測定装置は、励磁コイルのX軸コイルとY軸コイルとZ軸コイルの中心軸が、互いに直交する姿勢から多少ずれる姿勢であっても、被験者の顎運動を測定できる。また、図6ないし図9に示す測定装置は、X軸コイル1aとY軸コイル1bとZ軸コイル1cの中心軸が、1点で交差するように励磁コイル1を配置している。これらの測定装置は、励磁コイル1の中心軸の交差点の近傍にセンサコイル2が位置するように、固定台20の内部に被験者を配置して、最も理想的に顎運動を測定できる。ただ、測定装置は、被験者に固定されたセンサコイルの位置が、励磁コイルの中心軸の交差点から多少ずれる位置であっても、被験者の顎運動を測定できる。
【0028】
図3ないし図5に示す顎運動の測定装置は、センサコイル2と励磁コイル1に同じものを使用している。これらの測定装置は、同じコイルを製作して励磁コイル1とセンサコイル2に使用できる。このため、能率よく安価に多量生産できる。また、センサコイルと励磁コイルは、線径や巻き数を変えることで最適化することもできる。たとえば、励磁コイルには、強い電流を流すために太い線材を使用し、センサコイルには、細い線材を使用して、巻き数を多くして感度を上げることもできる。これらのセンサコイル2と励磁コイル1は、図10と図11に示すように、互いに直交する方向に巻かれているX軸コイル2a、1aと、Y軸コイル2b、1bと、Z軸コイル2c、1cを備える。X軸コイル2a、1aと、Y軸コイル2b、1bと、Z軸コイル2c、1cは、巻線機で円形に巻かれたループコイル8からなり、このループコイル8をコアー材7の表面に固定して、センサコイル2と励磁コイル1としている。図6ないし図9に示すセンサコイル2も、図10と図11に示すセンサコイル2と同じ構造としている。ただ、測定装置は、励磁コイルやセンサコイルのX軸コイルとY軸コイルとZ軸コイルが、互いに直交する姿勢から多少ずれる姿勢であっても、被験者の顎運動を測定できる。ループコイル8は、表面を絶縁している導電線を円形に複数回巻いて接着剤で固定して製作される。ただし、ループコイルは、必ずしも円形に巻く必要はなく、たとえば、線材を多角形に複数回巻いて接着剤で固定することもできる。さらに、ループコイル8は、図12に示すように、磁性材からなるコア9の外周に巻いて製作することもできる。
【0029】
X軸コイル2a、1aと、Y軸コイル2b、1bと、Z軸コイル2c、1cは、ループコイル8の巻き数と巻き径でインダクタンスが特定される。X軸コイル2a、1aと、Y軸コイル2b、1bと、Z軸コイル2c、1cは、ループコイル8の巻き数を多く、また巻き径を大きくしてインダクタンスを大きくできる。励磁コイル1のループコイル8は、インダクタンスで発生させる磁界の強度を決定し、インダクタンスが大きくなるほど、X軸コイル1aと、Y軸コイル1bと、Z軸コイル1cから発生する磁界強度は強くなる。インダクタンスの大きい励磁コイル1は、磁界強度を強くして、センサコイル2に誘導される交流電圧を大きくする。センサコイル2のループコイル8は、インダクタンスを大きくしてX軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2cに誘導される交流信号の電圧レベルを大きくする。センサコイル2に誘導される交流信号の電圧レベルが高くなると、センサコイル2の位置を検出する測定精度を高くできる。したがって、X軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2cとなるループコイル8のインダクタンスを大きくすることは、測定精度を高くすることに有効である。
【0030】
ただ、ループコイルのインダクタンスを大きくすることは、ループコイルを大きく、重くする。励磁コイルとセンサコイルは、小さくして軽いのが良い。患者に簡単に装着できると共に、装着した状態で、患者が自由に顎を運動できるからである。とくに、図5に示すように、被験者の口腔内で歯の表面に直接に接着して、上顎11や下顎12に剛体結合されるセンサコイル2や励磁コイル1は、とくに小さくすることが大切である。したがって、ループコイルのインダクタンス、すなわち巻き数と巻き径は、センサコイルと励磁コイルを剛体結合する位置、測定精度等を考慮して最適値に設定される。たとえば、ループコイル8は、口腔内に固定するセンサコイル2や励磁コイル1にあっては、たとえば巻き径を10mm以下、好ましくは5mm以下として、インダクタンスを約200μH以上、好ましくは500μH以上とする。
【0031】
コアー材7は、互いに直交する3つの平面を有し、3つの平面7Aにループコイル8を固定して、互いに直交するX軸コイル2a、1aと、Y軸コイル2b、1bと、Z軸コイル2c、1cを設けている。図10のコアー材7は直方体で、直方体の互いに直交する3つの平面7Aにループコイル8を固定している。ループコイル8を定位置に固定するために、コアー材7は、図11の断面図に示すように、平面にループコイル8を入れる凹部7Bを設けている。凹部7Bは、その内形をループコイル8の外形として、ループコイル8を嵌着して定位置に固定する。また、凹部の深さをループコイルの厚さよりも深くして、ループコイルを凹部に入れてループコイルがコアー材から突出しない構造とすることもできる。突出しないようにループコイルを凹部に入れているコアー材は、ループコイルを入れる状態で表面をコーティングしてループコイルを保護できる構造にできる。
【0032】
直方体のコアー材7にX軸コイル2a、1aと、Y軸コイル2b、1bと、Z軸コイル2c、1cとなるループコイル8を固定するセンサコイル2と励磁コイル1は、コアー材7を磁性材として、コアー材7でもってループコイル8のインダクタンスを大きくできる。ただし、コアー材は、必ずしも磁性材とする必要はなく、プラスチック等の非磁性材として、ループコイルを空芯コイルとして使用することもできる。
【0033】
また、図12に示すように、コア9に巻いているループコイル8は、平面に設ける凹部7Bの内形をコア9を嵌着できる形状として、ループコイル8を定位置に固定できる。
【0034】
さらに、図13に示すコアー材7は、互いに直交する平面7AをX軸方向に並べて、この平面にループコイル8を固定している。この図のコアー材7は、3枚の板材10を互いに直交するように連結している。このコアー材7は、図において左から右に向かって、Z軸コイル2c、1c、X軸コイル2a、1a、Y軸コイル2b、1bとなるループコイル8をコアー材7に固定している。このコアー材7も、ループコイル8を固定する部分に凹部7Bを設け、この凹部7Bにループコイル8を入れて定位置に固定できる。
【0035】
以上のセンサコイル2は、コアー材7の互いに直交する平面7Aに、ループコイル8を固定している。ただ、本発明の測定装置は、センサコイルの構造を、必ずしも以上の構造に特定しない。センサコイル2は、図14に示すように、X軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2cとからなる3個のコイルを、互いに直交する方向に巻くこともできる。図のセンサコイル2は、特定立体である球体を囲むように、X軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2cとを、互いに直交する方向に巻いている。さらに、図示しないが、センサコイルは、X軸コイルとY軸コイルとZ軸コイルを巻く特定立体を、直方体とすることもできる。
【0036】
交流電源3は、励磁コイル1のX軸コイル1aと、Y軸コイル1bと、Z軸コイル1cを異なる周波数の交流で励磁する。交流電源3は、X軸コイル1aを角速度ω1、Y軸コイル1bをω2、Z軸コイル1cをω3の周波数で励起する発振手段を内蔵している。交流電源3は、複数の発振回路で周波数の異なる交流を発生させることもできるが、マイクロコンピュータとD/Aコンバータとを使用して、周波数が異なるサイン波を作ることもできる。この交流電源は、マイクロコンピュータでデジタル量のサイン波を作り、これをD/Aコンバータでアナログ量に変換する。
【0037】
演算回路4は、センサコイル2のX軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2cに誘導される交流から、励磁コイル1とセンサコイル2の相対位置と相対姿勢、すなわち、励磁コイル1とセンサコイル2を剛体結合している上顎11と下顎12の相対位置と相対姿勢とを演算する。演算回路4は、センサコイル2のX軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2cに誘導される交流信号の振幅から、センサコイル2の励磁コイル1に対する距離と姿勢を演算する。センサコイル2が励磁コイル1から離れる程、センサコイル2のX軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2cに誘導される交流の振幅が小さくなり、センサコイル2の励磁コイル1に対する姿勢により、各々のX軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2cに誘導される交流の振幅の比率が変化するからである。したがって、演算回路4は、センサコイル2の各々のX軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2cに誘導される交流信号の信号レベルから、センサコイル2の励磁コイル1に対する相対位置と相対姿勢とを演算できる。
【0038】
図15に示す演算回路4は、センサコイル2のX軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2cに誘導される交流信号を一定の増幅率で増幅するアンプ31と、アンプ31から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ32と、A/Dコンバータ32でデジタル信号に変換された交流信号を演算する演算部33と、センサコイル2であるX軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2cにクロストーク検査信号を入力するクロストーク検査回路34とを備える。
【0039】
この演算回路4は、センサコイル2のX軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2cの出力信号を、アンプ31で所定の振幅に増幅し、増幅されたアナログ信号をA/Dコンバータ32でデジタル信号に変換し、演算部33が変換されたデジタル信号を演算して、励磁コイル1とセンサコイル2の位置を検出する。
【0040】
演算回路4は、センサコイル2のX軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2cに誘導される交流信号、すなわちA/Dコンバータ32から出力されるデジタル信号を、FFT等の数学的な手法を用いてフーリエ級数に展開して、X軸周波数と、Y軸周波数と、Z軸周波数の信号レベル、すなわち振幅をデジタル値として検出する。
【0041】
各々の周波数の信号レベルは、励磁コイル1とセンサコイル2の距離が長くなると小さくなる。したがって、X軸周波数の信号レベルからは、励磁コイル1のX軸コイル1aとセンサコイル2との間隔が演算でき、Y軸周波数の信号レベルからは、励磁コイル1のY軸コイル1bとセンサコイル2との間隔が演算でき、Z軸周波数の信号レベルからは、励磁コイル1のZ軸コイル1cとセンサコイル2との間隔が演算できる。
【0042】
ただ、各々の周波数の信号レベルには、クロストークによる誤差が含まれている。この誤差による精度の低下を防止するために、演算回路4は、センサコイル2のX軸コイル2aに誘導される交流信号を、センサコイル2のY軸コイル2bとZ軸コイル2cから誘導されるクロストーク信号で補正し、センサコイル2のY軸コイル2bに誘導される交流信号を、センサコイル2のX軸コイル2aとZ軸コイル2cから誘導されるクロストーク信号で補正し、さらにセンサコイル2のZ軸コイル2cに誘導される交流信号を、センサコイル2のX軸コイル2aとY軸コイル2bから誘導されるクロストーク信号で補正して、クロストーク信号で補正された交流信号で、センサコイル2の位置を演算する。
【0043】
各々のコイル間のクロストークは、コイルに固有の特性であって、全てのコイルに一定な値とはならない。また、各々のコイル間のクロストークは一定ではない。クロストークは、センサコイル2のX軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2cとの間で発生する。演算回路4は、励磁コイル1からセンサコイル2に誘導される交流信号の信号レベルで位置を演算するが、各々のセンサコイル2に誘導される交流信号には、励磁コイル1のみでなく、別のセンサコイル2から誘導される交流信号も含まれている。X軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2c間におけるクロストークを皆無にはできないからである。
【0044】
たとえば、X軸コイルと、Y軸コイルと、Z軸コイル間のクロストークが−40dB(1/100)であるセンサコイルは、それ自体に誘導される交流信号でもって、別のセンサコイルに1/100の電圧を誘導する。したがって、仮に、励磁コイルをX軸周波数で励磁する状態でX軸コイルのX軸周波数の信号レベルが100mV、Y軸コイルのX軸周波数の信号レベルが2mV、Z軸コイルのX軸周波数の信号レベルが3mVとし、Y軸コイルからX軸コイルへのクロストークが−40dB、Z軸コイルからX軸コイルへのクロストークも−40dBとすれば、Y軸コイルからX軸コイルには2mV×1/100のクロストーク信号が誘導され、Z軸コイルからは3mV×1/100のクロストーク信号が誘導される。したがって、センサコイルのX軸コイルに励磁コイルから誘導される正確な交流信号は、Y軸コイルからのクロストーク信号と、Z軸コイルからのクロストーク信号を減算するように補正した値となる。したがって、X軸コイルの補正された交流信号は、[100−(2/100)−(3/100)]となる。
【0045】
図15に示す演算回路4は、センサコイル2の各々のコイル間のクロストークを検出するために、各々のコイルにクロストーク検査信号を入力するクロストーク検査回路34を備える。なお、図15に示すクロストーク検査回路34は、センサコイル2の各々のコイル間のクロストークを検出するために、各々のコイルを励起する回路の一例を示すものであって、本発明は、クロストーク検査回路を、図に示す回路構成に特定するものではない。クロストーク検査回路には、センサコイルの各々のコイルを励起できる種々のものが使用できる。図15に示すクロストーク検査回路34は、クロストーク検査信号の発振回路35と、この発振回路35から出力されるクロストーク検査信号を各々のコイルに入力する入力回路36とを備える。クロストーク検査回路34の発振回路35は、交流電源の発振回路を併用できる。ただし、クロストーク検査回路に専用の発振回路を設けることもできる。交流電源と別に設けた専用の発振回路は、交流電源の発振周波数に等しく、あるいはほぼ等しい周波数の交流を発振する。周波数が変化してクロストークが変化するのを防止するためである。
【0046】
図の入力回路36は、発振回路35から出力される信号をアースラインを接続しないで伝送する入力トランス37と、入力トランス37の二次側に接続している電流制限抵抗38とスイッチング素子39との直列回路を備える。電流制限抵抗38とスイッチング素子39は、入力トランス37の各々の出力側に接続されて、入力トランス37の出力を一対の直列回路を介してセンサコイル2の各々のコイルに入力する。スイッチング素子39は、オン状態で双方向に電流を流すことができる素子、たとえばリレーやFETである。この入力回路36は、交流のクロストークを検出するときに一対のスイッチング素子39をオンに切り換えて、発振回路35の出力を各々のセンサコイル2、すなわちX軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2cに入力する。
【0047】
演算回路4は、クロストーク検査回路34を以下のように制御して、各々のセンサコイル2間のクロストークを検出する。
[X軸コイルから、Y軸コイルとZ軸コイルへのクロストークを検出する動作]
(1)X軸コイル2aに接続しているクロストーク検査回路34の発振回路35を動作状態とする。
(2)X軸コイル2aの入力側に接続しているスイッチング素子39をオンに切り換える。
(3)励磁コイル1を励磁しない状態とする。
(4)X軸コイル2aに入力されるクロストーク検査信号の信号レベルを検出すると共に、Y軸コイル2bとZ軸コイル2cに誘導される交流信号の信号レベルを検出する。各々のコイルの信号レベルは、X軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2cの出力信号を、アンプ31で増幅し、A/Dコンバータ32でデジタル信号に変換して検出する。
(5)X軸コイル2aの信号レベルに対するY軸コイル2bの信号レベルを演算して、X軸コイル2aからY軸コイル2bへのクロストークを演算する。たとえば、X軸コイル2aの信号レベルが100mVであって、Y軸コイル2bの信号レベルが1mVであると、X軸コイル2aからY軸コイル2bへのクロストークは1/100、すなわち−40dBと演算する。
(6)同じように、X軸コイル2aの信号レベルに対するZ軸コイル2cの信号レベルを演算して、X軸コイル2aからZ軸コイル2cへのクロストークを演算する。
【0048】
[Y軸コイルから、X軸コイルとZ軸コイルへのクロストークを検出する動作]
(1)Y軸コイル2bに接続しているクロストーク検査回路34の発振回路35を動作状態とする。
(2)Y軸コイル2bの入力側に接続しているスイッチング素子39をオンに切り換える。
(3)励磁コイル1を励磁しない状態とする。
(4)Y軸コイル2bに入力されるクロストーク検査信号の信号レベルを検出すると共に、X軸コイル2aとZ軸コイル2cに誘導される交流信号の信号レベルを検出する。
(5)Y軸コイル2bの信号レベルに対するX軸コイル2aの信号レベルを演算して、Y軸コイル2bからX軸コイル2cへのクロストークを演算する。
(6)同じように、Y軸コイル2bの信号レベルに対するZ軸コイル2cの信号レベルを演算して、Y軸コイル2bからZ軸コイル2cへのクロストークを演算する。
【0049】
[Z軸コイルから、X軸コイルとY軸コイルへのクロストークを検出する動作]
(1)Z軸コイル2cに接続しているクロストーク検査回路34の発振回路35を動作状態とする。
(2)Z軸コイル2cの入力側に接続しているスイッチング素子39をオンに切り換える。
(3)励磁コイル1を励磁しない状態とする。
(4)Z軸コイル2cに入力されるクロストーク検査信号の信号レベルを検出すると共に、X軸コイル2aとY軸コイル2bに誘導される交流信号の信号レベルを検出する。
(5)Z軸コイル2cの信号レベルに対するX軸コイル2aの信号レベルを演算して、Z軸コイル2cからX軸コイル2aへのクロストークを演算する。
(6)同じように、Z軸コイル2cの信号レベルに対するY軸コイル2bの信号レベルを演算して、Z軸コイル2cからY軸コイル2bへのクロストークを演算する。
【0050】
センサコイルの各々のコイル間のクロストークは、センサコイルにより変化するので、演算回路は、センサコイルを変更する毎に、クロストークを検出して各々のコイルに誘導される交流信号の信号レベルを補正する。
【0051】
演算回路4は、以上のように励磁コイル1から誘導される交流信号のみでなく、各々のセンサコイル2に誘導される信号からのクロストークを補正して、X軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2cに励磁コイル1から誘導される交流信号の信号レベルを正確に検出し、この信号レベルからセンサコイル2の位置を演算する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明者が先に開発した顎運動の測定装置の概略構成図である。
【図2】図1に示す測定装置の励磁コイルの拡大斜視図である。
【図3】本発明の一実施例にかかる顎運動の測定装置の概略構成図である。
【図4】図3に示す測定装置を被験者に装着する状態を示す概略斜視図である。
【図5】本発明の他の実施例にかかる顎運動の測定装置の概略構成図である。
【図6】本発明の他の実施例にかかる顎運動の測定装置の概略構成図である。
【図7】本発明の他の実施例にかかる顎運動の測定装置の概略構成図である。
【図8】本発明の他の実施例にかかる顎運動の測定装置の概略構成図である。
【図9】本発明の他の実施例にかかる顎運動の測定装置の概略構成図である。
【図10】センサコイルの一例を示す拡大斜視図である。
【図11】図10に示すセンサコイルのA−A線断面図である。
【図12】センサコイルの他の一例を示す断面図である。
【図13】センサコイルの他の一例を示す斜視図である。
【図14】センサコイルの他の一例を示す斜視図である。
【図15】演算回路の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0053】
1…励磁コイル 1a…X軸コイル
1b…Y軸コイル
1c…Z軸コイル
2…センサコイル 2a…X軸コイル
2b…Y軸コイル
2c…Z軸コイル
3…交流電源
4…演算回路
5…取付部材
6…取付部材
7…コアー材 7A…平面
7B…凹部
8…ループコイル
9…コア
10…板材
11…上顎
12…下顎
20…固定台 20A…壁面
20B…壁面
20C…天板
21…頭部固定機構
31…アンプ
32…A/Dコンバータ
33…演算部
34…クロストーク検査回路
35…発振回路
36…入力回路
37…入力トランス
38…電流制限抵抗
39…スイッチング素子
91…励磁コイル 91a…コイル
91b…コイル
91c…コイル
92…センサコイル 92a…コイル
92b…コイル
92c…コイル
93…交流電源
94…演算回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、顎の動きを測定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、励磁コイルからセンサーコイルに交流を誘導して顎運動を測定する装置を開発した(特許文献1参照)。
【0003】
この装置は、図1に示すように、上顎又は下顎のいずれかの顎の歯に剛体結合される励磁コイル91と、励磁コイル91を剛体結合している顎と反対側の顎の歯に剛体結合されるセンサコイル92と、励磁コイル91に交流電流を流す交流電源93と、交流で励起される励磁コイル91からセンサコイル92に誘導される信号を演算して、励磁コイル91に対するセンサコイル92の相対的な位置から上顎と下顎の相対位置を検出する演算回路94とを備える。励磁コイル91とセンサコイル92は、互いに離して配設している。励磁コイル91とセンサコイル92は、図2に示すように、互いに直交する方向に巻かれている3組のコイル91a、91b、91c、(92a、92b、92c)を備える。この顎運動の測定装置は、励磁コイル91の各々のコイル91a、91b、91cに交流電源93を接続し、センサコイル92の各々のコイル92a、92b、92cに誘導される交流を演算回路94で演算して、下顎と上顎の相対位置を検出する。
【特許文献1】2004−229943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上の顎運動の測定装置は、励磁コイル91を交流で励磁して、センサコイル92に誘導される交流信号からセンサコイル92の励磁コイル91に対する相対位置を検出する。励磁コイル91とセンサコイル92は、互いに直交するように配設しているX軸コイル91a、92aと、Y軸コイル91b、92bと、Z軸コイル91c、92cを備える。励磁コイル91のX軸コイル91aを励磁してセンサコイル92のX軸コイル92aに誘導される交流信号と、励磁コイル91のY軸コイル91bを励磁してセンサコイル92のY軸コイル92bに誘導される交流信号と、励磁コイル91のZ軸コイル91cを励磁してセンサコイル92のZ軸コイル92cに誘導される交流信号から、センサコイル92の励磁コイル91に対するX軸、Y軸、Z軸の位置を検出する。励磁コイル91であるX軸コイル91aと、Y軸コイル91bと、Z軸コイル91cは、異なる周波数の交流で励磁され、あるいは時分割に順番に切り換えて励磁される。
【0005】
励磁コイルのX軸コイルとY軸コイルとZ軸コイルとを異なる周波数で励磁する顎運動の測定装置は、励磁コイルのX軸コイルをX軸周波数(ωX)で励磁してセンサコイルに誘導されるX軸周波数(ωX)の交流信号を検出し、励磁コイルのY軸コイルをY軸周波数(ωY)で励磁してセンサコイルに誘導されるY軸周波数(ωY)の交流信号を検出し、励磁コイルのZ軸コイルをZ軸周波数(ωZ)で励磁してセンサコイルに誘導されるZ軸周波数(ωZ)の交流信号を検出し、検出される交流信号の電圧レベルからセンサコイルの励磁コイルに対する位置を演算できる。センサコイルが励磁コイルに接近するにしたがって、センサコイルに誘導される交流信号の電圧レベルが大きくなるからである。
【0006】
このとき、励磁コイルのX軸コイルから誘導される交流信号は、センサコイルのX軸コイルとY軸コイルとZ軸コイルに誘導された信号をベクトル合成したものであり、励磁コイルのY軸コイルから誘導される交流信号は、センサコイルのX軸コイルとY軸コイルとZ軸コイルに誘導された信号をベクトル合成したものであり、さらに、励磁コイルのZ軸コイルから誘導される交流信号は、センサコイルのX軸コイルとY軸コイルとZ軸コイルに誘導された信号をベクトル合成したものであり、演算回路94は、これらの信号からセンサコイル92の位置を演算している。この方法は、図2に示すように、X軸コイル92aとY軸コイル92bとZ軸コイル92cを互いに正確に直交する姿勢で配置し、かつX軸コイル92aと、Y軸コイル92bと、Z軸コイル92cの中心軸を一点で交差するように配列して高精度にセンサコイル92の位置を検出できる。しかしながら、現実には、センサコイルを理想的な状態では配置できず、各々のコイル間に発生するクロストークによってセンサコイルの位置検出に誤差が発生する。たとえば、センサコイルのX軸コイルと、Y軸コイルと、Z軸コイルが正確な位置に配置できないと、励磁コイルのX軸コイルを励磁するX軸周波数の交流は、主としてセンサコイルのX軸コイルに誘導されるが、姿勢や位置がずれたセンサコイルのY軸コイルとZ軸コイルにも誘導され、センサコイルのY軸コイルとZ軸コイルに誘導される信号がX軸コイルを励磁してクロストークの原因となる。この現象によって各々のコイル間に発生するクロストークは、センサコイルのX軸コイルと、Y軸コイルと、Z軸コイルを正確に直角な姿勢で配置し、かつ各々のコイルの中心線が一点で交差するように配置して少なくできるが、現実に製作されるセンサコイルは、必ずしも各々のコイルを理想的な状態に配置できず、クロストークが位置検出の精度を低下させる。
【0007】
本発明は、このような欠点を解決することを目的に開発されたもので、本発明の重要な目的は、各々のコイル間に発生するクロストークによる誤差を少なくして、センサコイルのX軸、Y軸、Z軸位置を正確に検出できる顎運動の測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の顎運動の測定装置は、前述の目的を達成するために以下の構成を備える。
顎運動の測定装置は、交流電源3に接続される励磁コイル1と、歯に剛体結合されて励磁コイル1から誘導される交流を検出するセンサコイル2と、このセンサコイル2に誘導される交流信号から、センサコイル2の励磁コイル1に対する相対位置を演算して、センサコイル2を剛体結合している歯の相対位置を検出する演算回路4とを備える。励磁コイル1は、互いに直交する方向に巻かれているX軸コイル1aと、Y軸コイル1bと、Z軸コイル1cとを備え、センサコイル2も、互いに直交する方向に巻かれているX軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2cとを備える。測定装置は、X軸コイル1aと、Y軸コイル1bと、Z軸コイル1cからなる励磁コイル1を交流電源3で励磁し、演算回路4が、センサコイル2のX軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2cに誘導される交流信号を演算して、センサコイル2を固定する歯のX軸、Y軸、Z軸における位置を立体的に演算している。さらに、演算回路4は、センサコイル2のX軸コイル2aに誘導される交流信号を、センサコイル2のY軸コイル2bとZ軸コイル2cから誘導されるクロストーク信号で補正し、センサコイル2のY軸コイル2bに誘導される交流信号を、センサコイル2のX軸コイル2aとZ軸コイル2cから誘導されるクロストーク信号で補正し、センサコイル2のZ軸コイル2cに誘導される交流信号を、センサコイル2のX軸コイル2aとY軸コイル2bから誘導されるクロストーク信号で補正して、クロストーク信号で補正された交流信号でもって、センサコイル2を固定する歯のX軸、Y軸、Z軸の位置を演算している。
【0009】
本発明の請求項2の顎運動の測定装置は、演算回路4が、センサコイル2のX軸コイル2aに誘導される交流信号を、センサコイル2のZ軸コイル2cからY軸コイル2bに誘導され、さらにY軸コイル2bからX軸コイル2aに誘導されるクロストーク信号と、センサコイル2のY軸コイル2bからZ軸コイル2cに誘導され、さらにZ軸コイル2cからX軸コイル2aに誘導されるクロストーク信号で補正すると共に、センサコイル2のY軸コイル2bに誘導される交流信号を、センサコイル2のX軸コイル2aからZ軸コイル2cに誘導され、さらにZ軸コイル2cからY軸コイル2bに誘導されるクロストーク信号と、センサコイル2のZ軸コイル2cからX軸コイル2aに誘導され、さらにX軸コイル2aからY軸コイル2bに誘導されるクロストーク信号で補正し、さらに、センサコイル2のZ軸コイル2cに誘導される交流信号を、センサコイル2のX軸コイル2aからY軸コイル2bに誘導され、さらにY軸コイル2bからZ軸コイル2cに誘導されるクロストーク信号と、センサコイル2のY軸コイル2bからX軸コイル2aに誘導され、さらにX軸コイル2aからZ軸コイル2cに誘導されるクロストーク信号で補正して、クロストーク信号で補正された交流信号で、センサコイル2を固定している歯のX軸、Y軸、Z軸の位置を検出している。
【0010】
本発明の請求項3の顎運動の測定装置は、X軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2cからなるセンサコイル2が、あらかじめコイル状に巻かれたループコイル8を、互いに直交する3つの平面を有するコアー材7の直交する平面7Aに固定している。
【0011】
本発明の請求項4の顎運動の測定装置は、X軸コイル1aと、Y軸コイル1bと、Z軸コイル1cからなる励磁コイル1が、あらかじめコイル状に巻かれたループコイル8を、互いに直交する3つの平面を有するコアー材7の直交する平面7Aに固定している。
【0012】
本発明の請求項5の顎運動の測定装置は、ループコイル2を、平面状に巻かれた平面コイルとしている。さらに、本発明の請求項6の顎運動の測定装置は、コアー材7を直方体としている。さらにまた、本発明の請求項7の顎運動の測定装置は、ループコイル2を円形としている。
【0013】
本発明の請求項8の顎運動の測定装置は、励磁コイル1を上顎11に剛体結合し、センサコイル2を下顎12に剛体結合して、上顎11と下顎12の相対位置を検出している。さらに、本発明の請求項9の顎運動の測定装置は、センサコイルを上顎に剛体結合し、励磁コイルを下顎に剛体結合して、上顎と下顎の相対位置を検出している。
【0014】
本発明の10の顎運動の測定装置は、励磁コイル1を固定する固定台20を有し、この固定台20の定位置に、センサコイル2を歯に剛体結合してなる被験者を配置して、固定台20に対する歯の相対位置を検出して歯の位置を検出している。さらに、本発明の請求項11の顎運動の測定装置は、固定台20が、被験者の頭部を固定する頭部固定機構21を有し、センサコイル2を被験者の下顎11に剛体結合している。
【0015】
本発明の請求項12の顎運動の測定装置は、センサコイル2を直接に歯に固定している。さらに、本発明の請求項13の顎運動の測定装置は、励磁コイル1を直接に歯に固定している。
【発明の効果】
【0016】
本発明の顎運動の測定装置は、X軸コイルと、Y軸コイルと、Z軸コイルの間に発生するクロストークによる誤差を少なくして、センサコイルのX軸、Y軸、Z軸位置を正確に検出できる特徴がある。それは、本発明の顎運動の測定装置が、センサコイルのX軸コイルに誘導される交流信号を、センサコイルのY軸コイルとZ軸コイルから誘導されるクロストーク信号で補正し、センサコイルのY軸コイルに誘導される交流信号を、センサコイルのX軸コイルとZ軸コイルから誘導されるクロストーク信号で補正し、センサコイルのZ軸コイルに誘導される交流信号を、センサコイルのX軸コイルとY軸コイルから誘導されるクロストーク信号で補正して、クロストーク信号で補正された交流信号でもって、センサコイルを固定する歯のX軸、Y軸、Z軸の位置を演算するからである。
【0017】
さらに、本発明の請求項2の顎運動の測定装置は、請求項1の構成に加えて、センサコイルのX軸コイルに誘導される交流信号を、センサコイルのZ軸コイルからY軸コイルに誘導され、さらにY軸コイルからX軸コイルに誘導されるクロストーク信号と、センサコイルのY軸コイルからZ軸コイルに誘導され、さらにZ軸コイルからX軸コイルに誘導されるクロストーク信号で補正し、センサコイルのY軸コイルに誘導される交流信号を、センサコイルのX軸コイルからZ軸コイルに誘導され、さらにZ軸コイルからY軸コイルに誘導されるクロストーク信号と、センサコイルのZ軸コイルからX軸コイルに誘導され、さらにX軸コイルからY軸コイルに誘導されるクロストーク信号で補正し、センサコイルのZ軸コイルに誘導される交流信号を、センサコイルのX軸コイルからY軸コイルに誘導され、さらにY軸コイルからZ軸コイルに誘導されるクロストーク信号と、センサコイルのY軸コイルからX軸コイルに誘導され、さらにX軸コイルからZ軸コイルに誘導されるクロストーク信号で補正して、クロストーク信号で補正された交流信号で、センサコイルを固定している歯のX軸、Y軸、Z軸の位置を検出する。この顎運動の測定装置は、二次的に発生するクロストークをも補正してセンサコイルの位置を検出するので、さらに高精度に位置を検出できる。
【0018】
本発明の請求項3の顎運動の測定装置は、請求項1の構成に加えて、X軸コイルと、Y軸コイルと、Z軸コイルからなるセンサコイルを、あらかじめコイル状に巻かれたループコイルを、互いに直交する3つの平面を有するコアー材の直交する平面に固定している。また、本発明の請求項4の顎運動の測定装置は、X軸コイルと、Y軸コイルと、Z軸コイルからなる励磁コイルを、あらかじめコイル状に巻かれたループコイルを、互いに直交する3つの平面を有するコアー材の直交する平面に固定している。この構造は、センサコイルや励磁コイルを簡単かつ安価に多量生産しながら、センサコイルの位置を正確に検出できる特徴がある。さらに、センサコイルや励磁コイルを極めて小さくしながら、X軸コイルと、Y軸コイルと、Z軸コイルを互いに正確に直交する姿勢に配置して、安価に多量生産しなが、高精度に位置を検出できる。センサコイルや励磁コイルを安価に多量生産できるのは、あらかじめコイル状に巻かれたループコイルを、互いに直交する3つの平面を有するコアー材の直交する平面に固定して、X軸コイルと、Y軸コイルと、Z軸コイルからなるセンサコイルとしているからである。この構造のセンサコイルは、巻線機で多量生産される3組のループコイルを、成形などの方法で別に製作してなるコアー材の平面に固定して、安価に多量生産できる。とくに、この構造のセンサコイルは、X軸コイルと、Y軸コイルと、Z軸コイルとをコアー材の互いに直交する平面に固定して、互いに直交する姿勢とするので、コイルを巻く工程で、各々のコイルを互いに直交する姿勢に巻く必要がない。互いに直交する平面を有するコアー材の平面にコイルを固定して、コイルの中心線をX軸、Y軸、Z軸に配置できるからである。コアー材は、成形や切削加工でもって、平面を正確に直交する姿勢にできる。また、ループコイルは、コアー材とは別に巻線機で安価に多量生産できるので、これを成形などの方法で安価に多量生産できるコアー材の表面に固定することで、X軸コイルと、Y軸コイルと、Z軸コイルとを正確に直交する姿勢に配置するセンサコイルを安価に多量生産できる特徴がある。また、巻線機でループコイルを製作し、これをコアー材の平面に固定してセンサコイルを製造できるので、センサコイルを極めて小さくできる。
【0019】
とくに、コアー材の表面に固定されるX軸コイルと、Y軸コイルと、Z軸コイルは、中心線の交点を一点にはできずに、互いにコイル間のクロストークが大きくなるが、本発明はコイル間のクロストークを補正してセンサコイルの位置を正確に演算できる。したがって、本発明の請求項3と4の顎運動の測定装置は、コイルを安価に多量生産しながら検出精度を高くできる特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための顎運動の測定装置を例示するものであって、本発明は顎運動の測定装置を以下のものに特定しない。
【0021】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0022】
図3に示す顎運動の測定装置は、上下顎の歯に剛体結合される励磁コイル1及びセンサコイル2と、励磁コイル1に交流を流す交流電源3と、交流で励起される励磁コイル1からセンサコイル2に誘導される信号を演算して、励磁コイル1に対するセンサコイル2の相対的な位置から上顎11と下顎12の相対位置を検出する演算回路4とを備えている。図の測定装置は、上顎11の歯に励磁コイル1を剛体結合し、下顎12の歯にセンサコイル2を剛体結合している。ただし、顎運動の測定装置は、上顎の歯にセンサコイルを剛体結合して、下顎の歯に励磁コイルを剛体結合することもできる。励磁コイル1とセンサコイル2は、取付部材5、6を介して顎の歯に剛体結合している。ただ、励磁コイルとセンサコイルは、取付部材を介して歯茎に固定することもできる。なお、本明細書において、歯とは、義歯を含む広い意味で使用する。
【0023】
図4は、図3に示す測定装置を被験者に装着する状態を示している。この図に示す測定装置は、励磁コイル1を、上顎11の取付部材5を介して上顎11の前方に配設し、センサコイル2を、下顎12の取付部材6を介して頬の外側に配設している。ただし、測定装置は、励磁コイルを頬の外側に配設し、センサコイルを上顎の前方に配設することもできる。さらに、本発明の測定装置は、必ずしも励磁コイルとセンサコイルをこれらの位置に配置する必要はなく、上記の位置から多少ずれた位置に配置することも、あるいは、互いに対向する位置に配置することもできる。たとえば、本発明の測定装置は、図5に示すように、励磁コイル1とセンサコイル2の両方を口腔内に配置することもできる。口腔内に配置される励磁コイル1とセンサコイル2は、直接に歯に固定して上顎11や下顎12に剛体結合することができる。図5の励磁コイル1とセンサコイル2は、歯の表面に直接に接着して剛体結合している。とくに、口腔内に配置される励磁コイル1とセンサコイル2は、好ましくは、上下の顎の運動を測定しやすくするために、前歯の内側もしくは外側に配置される。図5に示す測定装置は、励磁コイル1を上顎11の前歯の外側に直接に剛体結合し、センサコイル2を下顎12の前歯の内側に直接に剛体結合している。図5の測定装置は、励磁コイル1とセンサコイル2の両方を口腔内に配置しているが、測定装置は、励磁コイルとセンサコイルのいずれか一方のみを口腔内に配置することもできる。
【0024】
さらに、図6に示すように、励磁コイル1を被験者の外側に配設して、センサコイル2を上顎11と下顎12の両方に剛体結合し、あるいは、図7に示すように、被験者を励磁コイル1に対して相対的に移動しないように固定して、下顎12にセンサコイル2を剛体結合して下顎12と上顎11との、X軸、Y軸、Z軸における相対位置を検出することもできる。図6の測定装置は、被験者の外側に励磁コイル1を固定する固定台20を備えており、センサコイル2を上顎11と下顎12の歯に剛体結合してなる被験者を固定台20の内部の定位置に配置して、固定台20に対する上顎11と下顎12の歯の相対位置を演算回路4で検出して、歯の位置を検出している。さらに、図7の測定装置は、固定台20が、被験者の頭部を定位置に固定する頭部固定機構21を備えている。この測定装置は、励磁コイル1を固定している固定台20の定位置に、頭部固定機構21を介して被験者の頭部を固定し、被験者の下顎12にセンサコイル2を剛体結合している。この測定装置は、被験者の頭部が固定される固定台20に対する下顎12の歯の相対位置を検出している。
【0025】
さらに、励磁コイル1は、図8と図9に示すように、被験者の外側であって、その中心軸がX軸、Y軸、Z軸に位置するように、互いに直交する姿勢で配置することもできる。これらの図の励磁コイル1は、円形の空芯コイルを、被験者の後方の面と、右側の面と、上方の面とに配置して、X軸コイル1aとY軸コイル1bとZ軸コイル1cとしている。図8の励磁コイル1は、X軸コイル1aとY軸コイル1bとZ軸コイル1cとを、固定台20である直方体のボックスの背面と側面と天井面とに固定して、その中心軸がX軸、Y軸、Z軸に位置するようにしている。また、図9の励磁コイル1は、X軸コイル1aとY軸コイル1bとZ軸コイル1cとを、固定台20である被験者の後方の壁面20Aと右側の壁面20Bと上方の天板20Cの表面に固定して、その中心軸がX軸、Y軸、Z軸に位置するようにしている。この構造は、励磁コイル1の巻き径を大きくして、インダクタンスを大きくし、励磁コイル1から発生する磁界の強度を強くできる特徴がある。図9の励磁コイル1は、被験者の後方と右側と上方とに3枚の固定プレートを互いに直交する姿勢で配置して固定台20としている。この励磁コイル1は、大きな固定台20を、固定プレートごとに分解、運搬して移動できる。ただ、励磁コイルは、測定する室内の壁面や天井を固定台として、その表面にX軸コイルとY軸コイルとZ軸コイルとを固定することもできる。
【0026】
図8と図9に示す測定装置は、センサコイル2を上顎11と下顎12の歯に剛体結合してなる被験者を固定台20の内部の定位置に配置して、固定台20に対する上顎11と下顎12の歯の相対位置を演算回路4で検出して歯の位置を検出している。ただ、測定装置は、下顎の歯にセンサコイルを剛体結合している被験者を固定台の内部の定位置に配置すると共に、頭部固定機構を介して被験者の頭部を固定台に固定して、固定台に対する下顎の歯の相対位置を検出することもできる。
【0027】
図6ないし図9に示す測定装置は、X軸コイル1aとY軸コイル1bとZ軸コイル1cとを、その中心軸が互いに直交する姿勢となるように励磁コイル1を配置している。ただ、測定装置は、励磁コイルのX軸コイルとY軸コイルとZ軸コイルの中心軸が、互いに直交する姿勢から多少ずれる姿勢であっても、被験者の顎運動を測定できる。また、図6ないし図9に示す測定装置は、X軸コイル1aとY軸コイル1bとZ軸コイル1cの中心軸が、1点で交差するように励磁コイル1を配置している。これらの測定装置は、励磁コイル1の中心軸の交差点の近傍にセンサコイル2が位置するように、固定台20の内部に被験者を配置して、最も理想的に顎運動を測定できる。ただ、測定装置は、被験者に固定されたセンサコイルの位置が、励磁コイルの中心軸の交差点から多少ずれる位置であっても、被験者の顎運動を測定できる。
【0028】
図3ないし図5に示す顎運動の測定装置は、センサコイル2と励磁コイル1に同じものを使用している。これらの測定装置は、同じコイルを製作して励磁コイル1とセンサコイル2に使用できる。このため、能率よく安価に多量生産できる。また、センサコイルと励磁コイルは、線径や巻き数を変えることで最適化することもできる。たとえば、励磁コイルには、強い電流を流すために太い線材を使用し、センサコイルには、細い線材を使用して、巻き数を多くして感度を上げることもできる。これらのセンサコイル2と励磁コイル1は、図10と図11に示すように、互いに直交する方向に巻かれているX軸コイル2a、1aと、Y軸コイル2b、1bと、Z軸コイル2c、1cを備える。X軸コイル2a、1aと、Y軸コイル2b、1bと、Z軸コイル2c、1cは、巻線機で円形に巻かれたループコイル8からなり、このループコイル8をコアー材7の表面に固定して、センサコイル2と励磁コイル1としている。図6ないし図9に示すセンサコイル2も、図10と図11に示すセンサコイル2と同じ構造としている。ただ、測定装置は、励磁コイルやセンサコイルのX軸コイルとY軸コイルとZ軸コイルが、互いに直交する姿勢から多少ずれる姿勢であっても、被験者の顎運動を測定できる。ループコイル8は、表面を絶縁している導電線を円形に複数回巻いて接着剤で固定して製作される。ただし、ループコイルは、必ずしも円形に巻く必要はなく、たとえば、線材を多角形に複数回巻いて接着剤で固定することもできる。さらに、ループコイル8は、図12に示すように、磁性材からなるコア9の外周に巻いて製作することもできる。
【0029】
X軸コイル2a、1aと、Y軸コイル2b、1bと、Z軸コイル2c、1cは、ループコイル8の巻き数と巻き径でインダクタンスが特定される。X軸コイル2a、1aと、Y軸コイル2b、1bと、Z軸コイル2c、1cは、ループコイル8の巻き数を多く、また巻き径を大きくしてインダクタンスを大きくできる。励磁コイル1のループコイル8は、インダクタンスで発生させる磁界の強度を決定し、インダクタンスが大きくなるほど、X軸コイル1aと、Y軸コイル1bと、Z軸コイル1cから発生する磁界強度は強くなる。インダクタンスの大きい励磁コイル1は、磁界強度を強くして、センサコイル2に誘導される交流電圧を大きくする。センサコイル2のループコイル8は、インダクタンスを大きくしてX軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2cに誘導される交流信号の電圧レベルを大きくする。センサコイル2に誘導される交流信号の電圧レベルが高くなると、センサコイル2の位置を検出する測定精度を高くできる。したがって、X軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2cとなるループコイル8のインダクタンスを大きくすることは、測定精度を高くすることに有効である。
【0030】
ただ、ループコイルのインダクタンスを大きくすることは、ループコイルを大きく、重くする。励磁コイルとセンサコイルは、小さくして軽いのが良い。患者に簡単に装着できると共に、装着した状態で、患者が自由に顎を運動できるからである。とくに、図5に示すように、被験者の口腔内で歯の表面に直接に接着して、上顎11や下顎12に剛体結合されるセンサコイル2や励磁コイル1は、とくに小さくすることが大切である。したがって、ループコイルのインダクタンス、すなわち巻き数と巻き径は、センサコイルと励磁コイルを剛体結合する位置、測定精度等を考慮して最適値に設定される。たとえば、ループコイル8は、口腔内に固定するセンサコイル2や励磁コイル1にあっては、たとえば巻き径を10mm以下、好ましくは5mm以下として、インダクタンスを約200μH以上、好ましくは500μH以上とする。
【0031】
コアー材7は、互いに直交する3つの平面を有し、3つの平面7Aにループコイル8を固定して、互いに直交するX軸コイル2a、1aと、Y軸コイル2b、1bと、Z軸コイル2c、1cを設けている。図10のコアー材7は直方体で、直方体の互いに直交する3つの平面7Aにループコイル8を固定している。ループコイル8を定位置に固定するために、コアー材7は、図11の断面図に示すように、平面にループコイル8を入れる凹部7Bを設けている。凹部7Bは、その内形をループコイル8の外形として、ループコイル8を嵌着して定位置に固定する。また、凹部の深さをループコイルの厚さよりも深くして、ループコイルを凹部に入れてループコイルがコアー材から突出しない構造とすることもできる。突出しないようにループコイルを凹部に入れているコアー材は、ループコイルを入れる状態で表面をコーティングしてループコイルを保護できる構造にできる。
【0032】
直方体のコアー材7にX軸コイル2a、1aと、Y軸コイル2b、1bと、Z軸コイル2c、1cとなるループコイル8を固定するセンサコイル2と励磁コイル1は、コアー材7を磁性材として、コアー材7でもってループコイル8のインダクタンスを大きくできる。ただし、コアー材は、必ずしも磁性材とする必要はなく、プラスチック等の非磁性材として、ループコイルを空芯コイルとして使用することもできる。
【0033】
また、図12に示すように、コア9に巻いているループコイル8は、平面に設ける凹部7Bの内形をコア9を嵌着できる形状として、ループコイル8を定位置に固定できる。
【0034】
さらに、図13に示すコアー材7は、互いに直交する平面7AをX軸方向に並べて、この平面にループコイル8を固定している。この図のコアー材7は、3枚の板材10を互いに直交するように連結している。このコアー材7は、図において左から右に向かって、Z軸コイル2c、1c、X軸コイル2a、1a、Y軸コイル2b、1bとなるループコイル8をコアー材7に固定している。このコアー材7も、ループコイル8を固定する部分に凹部7Bを設け、この凹部7Bにループコイル8を入れて定位置に固定できる。
【0035】
以上のセンサコイル2は、コアー材7の互いに直交する平面7Aに、ループコイル8を固定している。ただ、本発明の測定装置は、センサコイルの構造を、必ずしも以上の構造に特定しない。センサコイル2は、図14に示すように、X軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2cとからなる3個のコイルを、互いに直交する方向に巻くこともできる。図のセンサコイル2は、特定立体である球体を囲むように、X軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2cとを、互いに直交する方向に巻いている。さらに、図示しないが、センサコイルは、X軸コイルとY軸コイルとZ軸コイルを巻く特定立体を、直方体とすることもできる。
【0036】
交流電源3は、励磁コイル1のX軸コイル1aと、Y軸コイル1bと、Z軸コイル1cを異なる周波数の交流で励磁する。交流電源3は、X軸コイル1aを角速度ω1、Y軸コイル1bをω2、Z軸コイル1cをω3の周波数で励起する発振手段を内蔵している。交流電源3は、複数の発振回路で周波数の異なる交流を発生させることもできるが、マイクロコンピュータとD/Aコンバータとを使用して、周波数が異なるサイン波を作ることもできる。この交流電源は、マイクロコンピュータでデジタル量のサイン波を作り、これをD/Aコンバータでアナログ量に変換する。
【0037】
演算回路4は、センサコイル2のX軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2cに誘導される交流から、励磁コイル1とセンサコイル2の相対位置と相対姿勢、すなわち、励磁コイル1とセンサコイル2を剛体結合している上顎11と下顎12の相対位置と相対姿勢とを演算する。演算回路4は、センサコイル2のX軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2cに誘導される交流信号の振幅から、センサコイル2の励磁コイル1に対する距離と姿勢を演算する。センサコイル2が励磁コイル1から離れる程、センサコイル2のX軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2cに誘導される交流の振幅が小さくなり、センサコイル2の励磁コイル1に対する姿勢により、各々のX軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2cに誘導される交流の振幅の比率が変化するからである。したがって、演算回路4は、センサコイル2の各々のX軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2cに誘導される交流信号の信号レベルから、センサコイル2の励磁コイル1に対する相対位置と相対姿勢とを演算できる。
【0038】
図15に示す演算回路4は、センサコイル2のX軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2cに誘導される交流信号を一定の増幅率で増幅するアンプ31と、アンプ31から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ32と、A/Dコンバータ32でデジタル信号に変換された交流信号を演算する演算部33と、センサコイル2であるX軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2cにクロストーク検査信号を入力するクロストーク検査回路34とを備える。
【0039】
この演算回路4は、センサコイル2のX軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2cの出力信号を、アンプ31で所定の振幅に増幅し、増幅されたアナログ信号をA/Dコンバータ32でデジタル信号に変換し、演算部33が変換されたデジタル信号を演算して、励磁コイル1とセンサコイル2の位置を検出する。
【0040】
演算回路4は、センサコイル2のX軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2cに誘導される交流信号、すなわちA/Dコンバータ32から出力されるデジタル信号を、FFT等の数学的な手法を用いてフーリエ級数に展開して、X軸周波数と、Y軸周波数と、Z軸周波数の信号レベル、すなわち振幅をデジタル値として検出する。
【0041】
各々の周波数の信号レベルは、励磁コイル1とセンサコイル2の距離が長くなると小さくなる。したがって、X軸周波数の信号レベルからは、励磁コイル1のX軸コイル1aとセンサコイル2との間隔が演算でき、Y軸周波数の信号レベルからは、励磁コイル1のY軸コイル1bとセンサコイル2との間隔が演算でき、Z軸周波数の信号レベルからは、励磁コイル1のZ軸コイル1cとセンサコイル2との間隔が演算できる。
【0042】
ただ、各々の周波数の信号レベルには、クロストークによる誤差が含まれている。この誤差による精度の低下を防止するために、演算回路4は、センサコイル2のX軸コイル2aに誘導される交流信号を、センサコイル2のY軸コイル2bとZ軸コイル2cから誘導されるクロストーク信号で補正し、センサコイル2のY軸コイル2bに誘導される交流信号を、センサコイル2のX軸コイル2aとZ軸コイル2cから誘導されるクロストーク信号で補正し、さらにセンサコイル2のZ軸コイル2cに誘導される交流信号を、センサコイル2のX軸コイル2aとY軸コイル2bから誘導されるクロストーク信号で補正して、クロストーク信号で補正された交流信号で、センサコイル2の位置を演算する。
【0043】
各々のコイル間のクロストークは、コイルに固有の特性であって、全てのコイルに一定な値とはならない。また、各々のコイル間のクロストークは一定ではない。クロストークは、センサコイル2のX軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2cとの間で発生する。演算回路4は、励磁コイル1からセンサコイル2に誘導される交流信号の信号レベルで位置を演算するが、各々のセンサコイル2に誘導される交流信号には、励磁コイル1のみでなく、別のセンサコイル2から誘導される交流信号も含まれている。X軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2c間におけるクロストークを皆無にはできないからである。
【0044】
たとえば、X軸コイルと、Y軸コイルと、Z軸コイル間のクロストークが−40dB(1/100)であるセンサコイルは、それ自体に誘導される交流信号でもって、別のセンサコイルに1/100の電圧を誘導する。したがって、仮に、励磁コイルをX軸周波数で励磁する状態でX軸コイルのX軸周波数の信号レベルが100mV、Y軸コイルのX軸周波数の信号レベルが2mV、Z軸コイルのX軸周波数の信号レベルが3mVとし、Y軸コイルからX軸コイルへのクロストークが−40dB、Z軸コイルからX軸コイルへのクロストークも−40dBとすれば、Y軸コイルからX軸コイルには2mV×1/100のクロストーク信号が誘導され、Z軸コイルからは3mV×1/100のクロストーク信号が誘導される。したがって、センサコイルのX軸コイルに励磁コイルから誘導される正確な交流信号は、Y軸コイルからのクロストーク信号と、Z軸コイルからのクロストーク信号を減算するように補正した値となる。したがって、X軸コイルの補正された交流信号は、[100−(2/100)−(3/100)]となる。
【0045】
図15に示す演算回路4は、センサコイル2の各々のコイル間のクロストークを検出するために、各々のコイルにクロストーク検査信号を入力するクロストーク検査回路34を備える。なお、図15に示すクロストーク検査回路34は、センサコイル2の各々のコイル間のクロストークを検出するために、各々のコイルを励起する回路の一例を示すものであって、本発明は、クロストーク検査回路を、図に示す回路構成に特定するものではない。クロストーク検査回路には、センサコイルの各々のコイルを励起できる種々のものが使用できる。図15に示すクロストーク検査回路34は、クロストーク検査信号の発振回路35と、この発振回路35から出力されるクロストーク検査信号を各々のコイルに入力する入力回路36とを備える。クロストーク検査回路34の発振回路35は、交流電源の発振回路を併用できる。ただし、クロストーク検査回路に専用の発振回路を設けることもできる。交流電源と別に設けた専用の発振回路は、交流電源の発振周波数に等しく、あるいはほぼ等しい周波数の交流を発振する。周波数が変化してクロストークが変化するのを防止するためである。
【0046】
図の入力回路36は、発振回路35から出力される信号をアースラインを接続しないで伝送する入力トランス37と、入力トランス37の二次側に接続している電流制限抵抗38とスイッチング素子39との直列回路を備える。電流制限抵抗38とスイッチング素子39は、入力トランス37の各々の出力側に接続されて、入力トランス37の出力を一対の直列回路を介してセンサコイル2の各々のコイルに入力する。スイッチング素子39は、オン状態で双方向に電流を流すことができる素子、たとえばリレーやFETである。この入力回路36は、交流のクロストークを検出するときに一対のスイッチング素子39をオンに切り換えて、発振回路35の出力を各々のセンサコイル2、すなわちX軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2cに入力する。
【0047】
演算回路4は、クロストーク検査回路34を以下のように制御して、各々のセンサコイル2間のクロストークを検出する。
[X軸コイルから、Y軸コイルとZ軸コイルへのクロストークを検出する動作]
(1)X軸コイル2aに接続しているクロストーク検査回路34の発振回路35を動作状態とする。
(2)X軸コイル2aの入力側に接続しているスイッチング素子39をオンに切り換える。
(3)励磁コイル1を励磁しない状態とする。
(4)X軸コイル2aに入力されるクロストーク検査信号の信号レベルを検出すると共に、Y軸コイル2bとZ軸コイル2cに誘導される交流信号の信号レベルを検出する。各々のコイルの信号レベルは、X軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2cの出力信号を、アンプ31で増幅し、A/Dコンバータ32でデジタル信号に変換して検出する。
(5)X軸コイル2aの信号レベルに対するY軸コイル2bの信号レベルを演算して、X軸コイル2aからY軸コイル2bへのクロストークを演算する。たとえば、X軸コイル2aの信号レベルが100mVであって、Y軸コイル2bの信号レベルが1mVであると、X軸コイル2aからY軸コイル2bへのクロストークは1/100、すなわち−40dBと演算する。
(6)同じように、X軸コイル2aの信号レベルに対するZ軸コイル2cの信号レベルを演算して、X軸コイル2aからZ軸コイル2cへのクロストークを演算する。
【0048】
[Y軸コイルから、X軸コイルとZ軸コイルへのクロストークを検出する動作]
(1)Y軸コイル2bに接続しているクロストーク検査回路34の発振回路35を動作状態とする。
(2)Y軸コイル2bの入力側に接続しているスイッチング素子39をオンに切り換える。
(3)励磁コイル1を励磁しない状態とする。
(4)Y軸コイル2bに入力されるクロストーク検査信号の信号レベルを検出すると共に、X軸コイル2aとZ軸コイル2cに誘導される交流信号の信号レベルを検出する。
(5)Y軸コイル2bの信号レベルに対するX軸コイル2aの信号レベルを演算して、Y軸コイル2bからX軸コイル2cへのクロストークを演算する。
(6)同じように、Y軸コイル2bの信号レベルに対するZ軸コイル2cの信号レベルを演算して、Y軸コイル2bからZ軸コイル2cへのクロストークを演算する。
【0049】
[Z軸コイルから、X軸コイルとY軸コイルへのクロストークを検出する動作]
(1)Z軸コイル2cに接続しているクロストーク検査回路34の発振回路35を動作状態とする。
(2)Z軸コイル2cの入力側に接続しているスイッチング素子39をオンに切り換える。
(3)励磁コイル1を励磁しない状態とする。
(4)Z軸コイル2cに入力されるクロストーク検査信号の信号レベルを検出すると共に、X軸コイル2aとY軸コイル2bに誘導される交流信号の信号レベルを検出する。
(5)Z軸コイル2cの信号レベルに対するX軸コイル2aの信号レベルを演算して、Z軸コイル2cからX軸コイル2aへのクロストークを演算する。
(6)同じように、Z軸コイル2cの信号レベルに対するY軸コイル2bの信号レベルを演算して、Z軸コイル2cからY軸コイル2bへのクロストークを演算する。
【0050】
センサコイルの各々のコイル間のクロストークは、センサコイルにより変化するので、演算回路は、センサコイルを変更する毎に、クロストークを検出して各々のコイルに誘導される交流信号の信号レベルを補正する。
【0051】
演算回路4は、以上のように励磁コイル1から誘導される交流信号のみでなく、各々のセンサコイル2に誘導される信号からのクロストークを補正して、X軸コイル2aと、Y軸コイル2bと、Z軸コイル2cに励磁コイル1から誘導される交流信号の信号レベルを正確に検出し、この信号レベルからセンサコイル2の位置を演算する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明者が先に開発した顎運動の測定装置の概略構成図である。
【図2】図1に示す測定装置の励磁コイルの拡大斜視図である。
【図3】本発明の一実施例にかかる顎運動の測定装置の概略構成図である。
【図4】図3に示す測定装置を被験者に装着する状態を示す概略斜視図である。
【図5】本発明の他の実施例にかかる顎運動の測定装置の概略構成図である。
【図6】本発明の他の実施例にかかる顎運動の測定装置の概略構成図である。
【図7】本発明の他の実施例にかかる顎運動の測定装置の概略構成図である。
【図8】本発明の他の実施例にかかる顎運動の測定装置の概略構成図である。
【図9】本発明の他の実施例にかかる顎運動の測定装置の概略構成図である。
【図10】センサコイルの一例を示す拡大斜視図である。
【図11】図10に示すセンサコイルのA−A線断面図である。
【図12】センサコイルの他の一例を示す断面図である。
【図13】センサコイルの他の一例を示す斜視図である。
【図14】センサコイルの他の一例を示す斜視図である。
【図15】演算回路の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0053】
1…励磁コイル 1a…X軸コイル
1b…Y軸コイル
1c…Z軸コイル
2…センサコイル 2a…X軸コイル
2b…Y軸コイル
2c…Z軸コイル
3…交流電源
4…演算回路
5…取付部材
6…取付部材
7…コアー材 7A…平面
7B…凹部
8…ループコイル
9…コア
10…板材
11…上顎
12…下顎
20…固定台 20A…壁面
20B…壁面
20C…天板
21…頭部固定機構
31…アンプ
32…A/Dコンバータ
33…演算部
34…クロストーク検査回路
35…発振回路
36…入力回路
37…入力トランス
38…電流制限抵抗
39…スイッチング素子
91…励磁コイル 91a…コイル
91b…コイル
91c…コイル
92…センサコイル 92a…コイル
92b…コイル
92c…コイル
93…交流電源
94…演算回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源(3)に接続される励磁コイル(1)と、歯に剛体結合されて励磁コイル(1)から誘導される交流を検出するセンサコイル(2)と、このセンサコイル(2)に誘導される交流信号から、センサコイル(2)の励磁コイル(1)に対する相対位置を演算して、センサコイル(2)を剛体結合している歯の相対位置を検出する演算回路(4)とを備え、
前記励磁コイル(1)が、互いに直交する方向に巻かれているX軸コイル(1a)と、Y軸コイル(1b)と、Z軸コイルと(1c)を備え、前記センサコイル(2)も、互いに直交する方向に巻かれているX軸コイル(2a)と、Y軸コイル(2b)と、Z軸コイル(2c)とを備え、
X軸コイル(1a)と、Y軸コイル(1b)と、Z軸コイル(1c)からなる前記励磁コイル(1)を交流電源(3)で励磁し、前記演算回路(4)が、センサコイル(2)のX軸コイル(2a)と、Y軸コイル(2b)と、Z軸コイル(2c)に誘導される交流信号を演算して、センサコイル(2)を固定する歯のX軸、Y軸、Z軸における位置を立体的に演算するようにしてなる顎運動の測定装置において、
演算回路(4)が、センサコイル(2)のX軸コイル(2a)に誘導される交流信号を、センサコイル(2)のY軸コイル(2b)とZ軸コイル(2c)から誘導されるクロストーク信号で補正し、
センサコイル(2)のY軸コイル(2b)に誘導される交流信号を、センサコイル(2)のX軸コイル(2a)とZ軸コイル(2c)から誘導されるクロストーク信号で補正し、
センサコイル(2)のZ軸コイル(2c)に誘導される交流信号を、センサコイル(2)のX軸コイル(2a)とY軸コイル(2b)から誘導されるクロストーク信号で補正して、
クロストーク信号で補正された交流信号でもって、センサコイル(2)を固定する歯のX軸、Y軸、Z軸の位置を演算するようにしてなることを特徴とする顎運動の測定装置。
【請求項2】
前記演算回路(4)が、センサコイル(2)のX軸コイル(2a)に誘導される交流信号を、センサコイル(2)のZ軸コイル(2c)からY軸コイル(2b)に誘導され、さらにY軸コイル(2b)からX軸コイル(2a)に誘導されるクロストーク信号と、センサコイル(2)のY軸コイル(2b)からZ軸コイル(2c)に誘導され、さらにZ軸コイル(2c)からX軸コイル(2a)に誘導されるクロストーク信号で補正し、
センサコイル(2)のY軸コイル(2b)に誘導される交流信号を、センサコイル(2)のX軸コイル(2a)からZ軸コイル(2c)に誘導され、さらにZ軸コイル(2c)からY軸コイル(2b)に誘導されるクロストーク信号と、センサコイル(2)のZ軸コイル(2c)からX軸コイル(2a)に誘導され、さらにX軸コイル(2a)からY軸コイル(2b)に誘導されるクロストーク信号で補正し、
センサコイル(2)のZ軸コイル(2c)に誘導される交流信号を、センサコイル(2)のX軸コイル(2a)からY軸コイル(2b)に誘導され、さらにY軸コイル(2b)からZ軸コイル(2c)に誘導されるクロストーク信号と、センサコイル(2)のY軸コイル(2b)からX軸コイル(2a)に誘導され、さらにX軸コイル(2a)からZ軸コイル(2c)に誘導されるクロストーク信号で補正して、
クロストーク信号で補正された交流信号で、センサコイル(2)を固定している歯のX軸、Y軸、Z軸の位置を検出するようにしてなることを特徴とする顎運動の測定装置。
【請求項3】
X軸コイル(2a)と、Y軸コイル(2b)と、Z軸コイル(2c)からなる前記センサコイル(2)が、あらかじめコイル状に巻かれたループコイル(8)を、互いに直交する3つの平面を有するコアー材(7)の直交する平面(7A)に固定してなることを特徴とする請求項1に記載される顎運動の測定装置。
【請求項4】
X軸コイル(1a)と、Y軸コイル(1b)と、Z軸コイル(1c)からなる前記励磁コイル(1)が、あらかじめコイル状に巻かれたループコイル(8)を、互いに直交する3つの平面を有するコアー材(7)の直交する平面(7A)に固定してなることを特徴とする請求項1または3に記載される顎運動の測定装置。
【請求項5】
前記ループコイル(8)が、平面状に巻かれた平面コイルである請求項3または4に記載される顎運動の測定装置。
【請求項6】
前記コアー材(7)が直方体である請求項3または4に記載される顎運動の測定装置。
【請求項7】
前記ループコイル(8)が円形である請求項3または4に記載される顎運動の測定装置。
【請求項8】
前記励磁コイル(1)が上顎(11)に剛体結合されて、センサコイル(2)が下顎(12)に剛体結合されて、上顎(11)と下顎(12)の相対位置を検出するようにしている請求項1に記載される顎運動の測定装置。
【請求項9】
前記センサコイルが上顎に剛体結合されて、励磁コイルが下顎に剛体結合されて、上顎と下顎の相対位置を検出するようにしている請求項1に記載される顎運動の測定装置。
【請求項10】
前記励磁コイル(1)を固定する固定台(20)を有し、この固定台(20)の定位置に、センサコイル(2)を歯に剛体結合してなる被験者を配置して、固定台(20)に対する歯の相対位置を検出して歯の位置を検出する請求項1に記載される顎運動の測定装置。
【請求項11】
前記固定台(20)が、被験者の頭部を固定する頭部固定機構(21)を有し、センサコイル(2)が被験者の下顎(12)に剛体結合される請求項10に記載される顎運動の測定装置。
【請求項12】
前記センサコイル(2)が直接に歯に固定される請求項1に記載される顎運動の測定装置。
【請求項13】
前記励磁コイル(1)が直接に歯に固定される請求項1または12に記載される顎運動の測定装置。
【請求項1】
交流電源(3)に接続される励磁コイル(1)と、歯に剛体結合されて励磁コイル(1)から誘導される交流を検出するセンサコイル(2)と、このセンサコイル(2)に誘導される交流信号から、センサコイル(2)の励磁コイル(1)に対する相対位置を演算して、センサコイル(2)を剛体結合している歯の相対位置を検出する演算回路(4)とを備え、
前記励磁コイル(1)が、互いに直交する方向に巻かれているX軸コイル(1a)と、Y軸コイル(1b)と、Z軸コイルと(1c)を備え、前記センサコイル(2)も、互いに直交する方向に巻かれているX軸コイル(2a)と、Y軸コイル(2b)と、Z軸コイル(2c)とを備え、
X軸コイル(1a)と、Y軸コイル(1b)と、Z軸コイル(1c)からなる前記励磁コイル(1)を交流電源(3)で励磁し、前記演算回路(4)が、センサコイル(2)のX軸コイル(2a)と、Y軸コイル(2b)と、Z軸コイル(2c)に誘導される交流信号を演算して、センサコイル(2)を固定する歯のX軸、Y軸、Z軸における位置を立体的に演算するようにしてなる顎運動の測定装置において、
演算回路(4)が、センサコイル(2)のX軸コイル(2a)に誘導される交流信号を、センサコイル(2)のY軸コイル(2b)とZ軸コイル(2c)から誘導されるクロストーク信号で補正し、
センサコイル(2)のY軸コイル(2b)に誘導される交流信号を、センサコイル(2)のX軸コイル(2a)とZ軸コイル(2c)から誘導されるクロストーク信号で補正し、
センサコイル(2)のZ軸コイル(2c)に誘導される交流信号を、センサコイル(2)のX軸コイル(2a)とY軸コイル(2b)から誘導されるクロストーク信号で補正して、
クロストーク信号で補正された交流信号でもって、センサコイル(2)を固定する歯のX軸、Y軸、Z軸の位置を演算するようにしてなることを特徴とする顎運動の測定装置。
【請求項2】
前記演算回路(4)が、センサコイル(2)のX軸コイル(2a)に誘導される交流信号を、センサコイル(2)のZ軸コイル(2c)からY軸コイル(2b)に誘導され、さらにY軸コイル(2b)からX軸コイル(2a)に誘導されるクロストーク信号と、センサコイル(2)のY軸コイル(2b)からZ軸コイル(2c)に誘導され、さらにZ軸コイル(2c)からX軸コイル(2a)に誘導されるクロストーク信号で補正し、
センサコイル(2)のY軸コイル(2b)に誘導される交流信号を、センサコイル(2)のX軸コイル(2a)からZ軸コイル(2c)に誘導され、さらにZ軸コイル(2c)からY軸コイル(2b)に誘導されるクロストーク信号と、センサコイル(2)のZ軸コイル(2c)からX軸コイル(2a)に誘導され、さらにX軸コイル(2a)からY軸コイル(2b)に誘導されるクロストーク信号で補正し、
センサコイル(2)のZ軸コイル(2c)に誘導される交流信号を、センサコイル(2)のX軸コイル(2a)からY軸コイル(2b)に誘導され、さらにY軸コイル(2b)からZ軸コイル(2c)に誘導されるクロストーク信号と、センサコイル(2)のY軸コイル(2b)からX軸コイル(2a)に誘導され、さらにX軸コイル(2a)からZ軸コイル(2c)に誘導されるクロストーク信号で補正して、
クロストーク信号で補正された交流信号で、センサコイル(2)を固定している歯のX軸、Y軸、Z軸の位置を検出するようにしてなることを特徴とする顎運動の測定装置。
【請求項3】
X軸コイル(2a)と、Y軸コイル(2b)と、Z軸コイル(2c)からなる前記センサコイル(2)が、あらかじめコイル状に巻かれたループコイル(8)を、互いに直交する3つの平面を有するコアー材(7)の直交する平面(7A)に固定してなることを特徴とする請求項1に記載される顎運動の測定装置。
【請求項4】
X軸コイル(1a)と、Y軸コイル(1b)と、Z軸コイル(1c)からなる前記励磁コイル(1)が、あらかじめコイル状に巻かれたループコイル(8)を、互いに直交する3つの平面を有するコアー材(7)の直交する平面(7A)に固定してなることを特徴とする請求項1または3に記載される顎運動の測定装置。
【請求項5】
前記ループコイル(8)が、平面状に巻かれた平面コイルである請求項3または4に記載される顎運動の測定装置。
【請求項6】
前記コアー材(7)が直方体である請求項3または4に記載される顎運動の測定装置。
【請求項7】
前記ループコイル(8)が円形である請求項3または4に記載される顎運動の測定装置。
【請求項8】
前記励磁コイル(1)が上顎(11)に剛体結合されて、センサコイル(2)が下顎(12)に剛体結合されて、上顎(11)と下顎(12)の相対位置を検出するようにしている請求項1に記載される顎運動の測定装置。
【請求項9】
前記センサコイルが上顎に剛体結合されて、励磁コイルが下顎に剛体結合されて、上顎と下顎の相対位置を検出するようにしている請求項1に記載される顎運動の測定装置。
【請求項10】
前記励磁コイル(1)を固定する固定台(20)を有し、この固定台(20)の定位置に、センサコイル(2)を歯に剛体結合してなる被験者を配置して、固定台(20)に対する歯の相対位置を検出して歯の位置を検出する請求項1に記載される顎運動の測定装置。
【請求項11】
前記固定台(20)が、被験者の頭部を固定する頭部固定機構(21)を有し、センサコイル(2)が被験者の下顎(12)に剛体結合される請求項10に記載される顎運動の測定装置。
【請求項12】
前記センサコイル(2)が直接に歯に固定される請求項1に記載される顎運動の測定装置。
【請求項13】
前記励磁コイル(1)が直接に歯に固定される請求項1または12に記載される顎運動の測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−187709(P2010−187709A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−4890(P2008−4890)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(304020292)国立大学法人徳島大学 (307)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(304020292)国立大学法人徳島大学 (307)
【Fターム(参考)】
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