説明

顔料分散液、これを用いたインクジェット用インク、インクカートッリッジ、画像形成体および画像形成方法

【課題】 短時間で効率的に作製でき、耐光性、色調の鮮明性、液安定性、顔料粒子径安定性等の特性に優れた、とくにインクジェット用インクに好適に使用し得るピグメントバイオレット19を含む顔料分散液、これを用いたインクジェット用インク、インクカートッリッジ、画像形成体および画像形成方法を提供する。
【解決手段】 少なくとも水、ピグメントバイオレット19、およびノニオン系界面活性剤を含有することを特徴とする顔料分散液、該顔料分散液に、水溶性有機溶剤、界面活性剤、防腐剤および防カビ剤からなる群から選択された少なくとも1種の添加剤を配合してなるインクジェット用インク、該インクを含有することを特徴とするインクカートリッジ、該インクを用いて受容体に画像が形成されている画像形成体、該インクを用いて受容体に画像を形成することを特徴とする画像形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐光性、色調の鮮明性、液安定性、顔料粒子径安定性等の特性に優れた顔料分散液、これを用いたインクジェット用インク、インクカートッリッジ、画像形成体および画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット記録方式に用いるインクとしては、各種の水溶性染料を水単体、もしくは水と水溶性溶剤からなる溶媒中に溶解し、必要に応じて各種添加剤を添加したものが主流であった(例えば、特許文献1、2、3参照。)。
しかし、このような染料系インクを用いて印字を行なった場合、被記録材上での記録画像の耐水性が悪く、水をこぼしたりすると容易に記録部分の染料のにじみが生ずるという問題や、耐光性が悪いため、記録部分に光が当ると色調変化や濃度低下が発生するという問題があった。
染料系インクの上記問題を改良するため、着色剤として染料のかわりにカーボンブラックや各種有機顔料を用いた、いわゆる顔料系インクをインクジェット記録方式に適用することが開示されている(例えば、特許文献4、5、6、7、8参照。)。
顔料系インクを用いて印字を行なった場合、被記録材上で乾燥したインクは着色剤が顔料であるため、水がかかっても染料のように溶解してにじみが発生することはなく、耐水性が良好である。
また、顔料は染料に比較して光に対する反応性が低いため、顔料系インクの耐光性は染料系インクに較べ優れている。
このような顔料系インクは一般に、顔料と液媒体と分散剤よりなる混合物をボールミル、サンドミル等の分散機で分散処理を行ない製造した顔料分散液に、必要に応じて各種添加剤を添加して製造するが、インクジェット用インクに使用する顔料分散液はノズル詰まり防止、印字画像の鮮明性、2次色再現性、透明性確保のため、通常200nm以下、好ましくは150nm以下の粒子径レベルまで顔料粒子を微粒子化分散する必要がある。さらに、工業的に安価に製造するためには、短時間で微粒子化を行う必要がある。
また、ノズル詰まり防止上、上記微粒子化分散された顔料分散液は、経時および/または高温、低温等の保存環境下で初期の粒子径を維持できなければならない。
しかしながら、マゼンタ色近似の顔料であるピグメントバイオレット19(Pigment Violet 19)は、その分子構造に起因すると考えられる結晶性の良さから、微粒子化分散しても再凝集しやすく、従来、当業界で使用されてきた一般的な分散剤では、初期の粒子径を維持することが困難であった。
【0003】
【特許文献1】特開昭63−51485号公報
【特許文献2】特開昭63−56575号公報
【特許文献3】特開平1−198671号公報
【特許文献4】特開昭57−10660号公報
【特許文献5】特開昭57−10661号公報
【特許文献6】特公平1−15542号公報
【特許文献7】特開平2−255875号公報
【特許文献8】特開平2−255876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、短時間で効率的に作製でき、耐光性、色調の鮮明性、液安定性、顔料粒子径安定性等の特性に優れた、とくにインクジェット用インクに好適に使用し得るピグメントバイオレット19を含む顔料分散液、これを用いたインクジェット用インク、インクカートッリッジ、画像形成体および画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討した結果、ピグメントバイオレット19とノニオン系界面活性剤との組み合わせが上記課題の解決に有効であることを見出し、本発明を完成することができた。
【0006】
上記課題は、下記(1)〜(23)の構成によって解決される。
(1)少なくとも水、ピグメントバイオレット19、およびノニオン系界面活性剤を含有することを特徴とする顔料分散液。
(2)少なくとも水、ピグメントバイオレット19と体質顔料との混合物および/または複合物、およびノニオン系界面活性剤を含有することを特徴とする顔料分散液。
(3)前記体質顔料が硫酸バリウムであることを特徴とする(2)に記載の顔料分散液。
(4)前記ノニオン系界面活性剤が、下記一般式(I)で表される化合物であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の顔料分散液。
【0007】
【化2】

【0008】
(式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリル基、アラルキル基を表わし、lは0〜7の整数を表わし、nは20〜200の整数を表わす。)
【0009】
(5) 前記ノニオン系界面活性剤が、ポリオキシエチレン(n=40)β−ナフチルエーテルであることを特徴とする(4)に記載の顔料分散液。
(6)ピグメントバイオレット19とノニオン系界面活性剤の質量比率が、前者:後者として1:0.1〜1:2であることを特徴とする(1)、(4)または(5)に記載の顔料分散液。
(7)ピグメントバイオレット19と体質顔料との混合物および/または複合物と、ノニオン系界面活性剤の質量比率が、前者:後者として1:0.1〜1:2であることを特徴とする(2)〜(5)のいずれかに記載の顔料分散液。
(8)ピグメントバイオレット19の平均粒子径が、10〜200nmであることを特徴とする(1)、(4)、(5)または(6)に記載の顔料分散液。
(9)ピグメントバイオレット19と体質顔料との混合物および/または複合物の平均粒子径が、10〜200nmであることを特徴とする(2)、(3)、(4)、(5)または(7)に記載の顔料分散液。
(10)ピグメントバイオレット19の濃度が、5〜50質量%であることを特徴とする(1)、(4)、(5)、(6)または(8)に記載の顔料分散液。
(11)ピグメントバイオレット19と体質顔料との混合物および/または複合物の濃度が、5〜50質量%であることを特徴とする(2)、(3)、(4)、(5)、(7)または(9)に記載の顔料分散液。
(12)(1)〜(11)のいずれかに記載の顔料分散液に、水溶性有機溶剤、界面活性剤、防腐剤および防カビ剤からなる群から選択された少なくとも1種の添加剤を配合してなることを特徴とするインクジェット用インク。
(13)ピグメントバイオレット19の濃度が、1〜15質量%であることを特徴とする(12)に記載のインクジェット用インク。
(14)ピグメントバイオレット19と体質顔料との混合物および/または複合物の濃度が、1〜15質量%であることを特徴とする(12)に記載のインクジェット用インク。
(15)(12)〜(14)のいずれかに記載のインクジェット用インクを含有することを特徴とするインクカートリッジ。
(16)画像形成装置に着脱可能であることを特徴とする(15)に記載のインクカートリッジ。
(17)(12)〜(14)のいずれかに記載のインクジェット用インクを用いて受容体に画像が形成されていることを特徴とする画像形成体。
(18)(12)〜(14)のいずれかに記載のインクジェット用インクを用いて受容体に画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
(19)画像形成装置から受容体に、(12)〜(14)のいずれかに記載のインクジェット用インクを吐出させることを特徴とする(18)に記載の画像形成方法。
(20)前記画像形成装置が、インクジェットプリンターであることを特徴とする(19)に記載の画像形成方法。
(21)前記インクジェットプリンターが、ピエゾ方式のインクジェットプリンターであることを特徴とする(20)に記載の画像形成方法。
(22)前記インクジェットプリンターが、サーマル方式のインクジェットプリンターであることを特徴とする(20)に記載の画像形成方法。
(23)前記受容体が紙であることを特徴とする(17)に記載の画像形成体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、短時間で効率的に作製でき、耐光性、色調の鮮明性、液安定性、顔料粒子径安定性等の特性に優れた、とくにインクジェット用インクに好適に使用し得るピグメントバイオレット19を含む顔料分散液、これを用いたインクジェット用インク、インクカートッリッジ、画像形成体および画像形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の顔料分散液は、少なくとも水、ピグメントバイオレット19、およびノニオン系界面活性剤を含有することを特徴としている。本発明の顔料分散液は、とくにインクジェット用インクに好適である。ノニオン系界面活性剤を使用することにより、とくに平均粒子径が小さく、かつ平均粒子径の安定性が向上する。ピグメントバイオレット19は、キナクリドンのみからなる単体で用いてもよいし、体質顔料との混合物でもよいし、公知の方法により体質顔料と複合化してもよい。
【0012】
体質顔料としては、アルミナホワイト、クレー、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム等が挙げられるが、これらのうち、分散安定性の観点から硫酸バリウムが好ましい。ピグメントバイオレット19と体質顔料の質量比率は、前者:後者として好ましくは1:0〜1:0.3である。体質顔料が0.3を超えると、分散安定性が低下する傾向にある。
【0013】
本発明に使用されるノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル等のアルキルエーテル型;ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンオレイルアミノエーテル等のアルキルアミノエーテル型;ポリオキシエチレンラウリン酸アミドエーテル、ポリオキシエチレンステアリン酸アミドエーテル、ポリオキシエチレンオレイン酸アミドエーテル、ラウリン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド等のアルキルアミドエーテル型;ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンポリスチリルフェニルエーテルホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシエチレンモノスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンナフチルエーテル等のアリルフェニルエーテル型;グリセリンモノラウレート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレート、グリセリントリオレート等のグリセリン脂肪酸エステル型;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレート等のソルビタン脂肪酸エステル型;ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンジステアレート、ポリオキシエチレンジオレート、ポリオキシエチレンオレート等の脂肪酸エーテルエステル型;ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油エーテル等の植物油エーテルエステル型;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート等のソルビタンエーテルエステル型;ポリオキシアルキレンブチルエーテル、ポリオキシアルキレンオクチルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキル(C14〜15)エーテル等のモノオール型ポリエーテル;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン縮合物等のジオール型ポリエーテル;トリメチロールプロパントリス(ポリオキシアルキレン)エーテル、ポリオキシアルキレンジグリセリルエーテル等のポリオール型ポリエーテル等が挙げられる。
【0014】
これらのうち、ポリオキシエチレンナフチルエーテル系のものが好ましく、分散安定性の観点から、下記一般式(I)で表される化合物がさらに好ましい。
【0015】
【化3】

【0016】
式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリル基、アラルキル基を表わし、lは0〜7の整数を表わし、nは20〜200の整数を表わす。Rの炭素数が20を超えると、分散安定性に劣り、粘度も上昇する傾向がある。nは30〜100がより好ましい。nが20未満では、分散安定性が劣り、200を超えると分散液およびインクの粘度が高くなるとともに、分散液作成時の分散速度が遅くなる。
【0017】
最適には、一般式(I)において、l=0、n=40であり、β位置換のポリオキシエチレン(n=40)β−ナフチルエーテルである。
【0018】
ピグメントバイオレット19とノニオン系界面活性剤の質量比率、あるいはピグメントバイオレット19と体質顔料との混合物および/または複合物と、ノニオン系界面活性剤の質量比率は、前者:後者として1:0.1〜1:2であることが好ましい。ノニオン界面活性剤の質量比率が0.1より小さくなると、分散安定性が低下し、2より大きくなると分散安定性が低下するとともに、分散液およびインクの粘度が高くなる傾向にある。
【0019】
顔料分散液におけるピグメントバイオレット19、あるいは、ピグメントバイオレット19と体質顔料との混合物および/または複合物(以下、本発明で言う顔料と記載する)の粒子の平均粒子径は、10〜200nmであるのがよい。本発明で言う顔料の粒子の平均粒子径が10nm未満では、分散液における本発明で言う顔料の分散が困難となり、コスト高となり、また顔料分散液、インクの保存安定性並びに紙およびフィルムなどのような受容体における画像の耐光性が低下する傾向にある。平均粒子径が200nmを超えると、本発明のインクジェット用インクをインクジェットプリンターで吐出させ画像を形成する際、ノズルの目詰まりを引き起こし易く、またこのインクを用いて、紙およびフィルムなどのインクの受容体に形成された画像の色調の鮮明性も低下する傾向がある。
【0020】
なお、本発明で言う顔料の平均粒子径とは、日機装(株)製マイクロトラックUPAによって測定される値である。
【0021】
顔料分散液における、本発明で言う顔料の濃度は、5〜50質量%であるのが好ましい。5質量%未満であると、インクの原液としての顔料分散液における顔料の濃度が低すぎて、一定量の顔料を含むインクを調製するために多量の顔料分散液を必要とする。その結果、多量の顔料分散液を調製するために長い時間を必要とし、インクの原液としての顔料分散液の生産性が低下する。50質量%を超えると、顔料分散液の粘度が高くなりすぎて、本発明で言う顔料の分散が困難になる傾向がある。
【0022】
また、本発明による顔料分散液を使用してインクジェット用インクを調製する場合には、インク中の本発明で言う顔料の濃度は、1〜15質量%であることが好ましい。1質量%未満であると、紙、フィルムなどの受容体上に形成された画像の濃度が低すぎ、15質量%を超えるとインクの粘度が高くなり、インクを吐出するノズルの目詰まりを引き起こし易くなる。
【0023】
また本発明のインクジェット用インクは、前記の顔料分散液に、水溶性有機溶剤、界面活性剤、防腐剤および防カビ剤からなる群から選択された少なくとも1種の添加剤をさらに配合して得ることができる。これらの添加剤を1種以上含むことによって、必要な有機物を溶解させることが可能なインク、本発明で言う顔料や、その他の分散質の分散性をさらに高めたインク、並びに防腐効果、防カビ効果を備えたインク等を提供することができる。
【0024】
前記水溶性有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イロプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;エチレングリコール、1,2−プロパンジオールのようなプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールのようなブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、チオグリコール、ヘキシレングリコールのような炭素数2〜6個のアルキレン基を有するアルキレングリコール類;グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオールのようなトリオール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールのようなポリアルキレングリコール類;上記のアルコール類および上記のアルキレングリコール類、トリオール類またはポリアルキレングリコールを脱水縮合して得られる、エチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(またはエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテルのような(モノエーテル誘導体およびジエーテル誘導体を含む)多価アルコールの低級アルキルエーテル類;テトラヒドロフラン、ジオキサンのようなエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド化合物;アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類;ジアセトンアルコールのようなケトンアルコール類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンのようなアルカノールアミン類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。
これらの中でも、ジエチレングリコール等の多価アルコール類、トリエチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類を用いるのが好ましい。
【0025】
界面活性剤としては、本発明で使用するノニオン系界面活性剤以外に、公知のカチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
【0026】
防腐剤および防カビ剤としては、安息香酸ナトリウム、ソルビタン酸カリウム、チアベンダゾール、ベンズイミダゾール、サイアベンダゾール、チアゾスルファミド、ピリジンチオールオキシド等の公知の防腐剤および防カビ剤が挙げられる。
【0027】
本発明のインクジェット用インクに含まれる上記の添加剤の含有量は、好ましくは、インクの全量に対して、0〜50質量%である。
【0028】
本発明の顔料分散液は、液体であり、例えば一般のインク(記録液)、インクの原液などに利用することができる。とくに本発明の顔料分散液は、前記のようにインクジェット用インクとして好適に利用することができる。
本発明の顔料分散液は、水、本発明で言う顔料、ノニオン系界面活性剤、必要に応じて添加剤の混合物をサンドミル、パールミル、ダイノーミル、ボールミル、ロールミル、ナノマイザー、ホモジナイザー等の公知の分散機を用いて攪拌し、水を含む分散媒に顔料の粒子を分散させることによって得られる。
また、本発明の顔料分散液を使用してインクジェット用インクを作製するには、本発明の顔料分散液に、水溶性有機溶剤、界面活性剤、防腐剤および防カビ剤からなる群から選択された少なくとも1種の添加剤をさらに配合し、攪拌・混合の後、フィルターを通じて濾過、または遠心分離装置にかける等の方法によって、粗大粒子を除去し、さらに必要に応じて脱気すればよい。
【0029】
本発明によれば、本発明で言う顔料の粒子の平均粒子径をより低減させた顔料分散液を提供することができる。また、本発明による顔料分散液においては、顔料分散液を保存する場合にも、本発明で言う顔料の粒子の平均粒子径における変動も低減させることができる。これにより、本発明の顔料分散液をインクジェット用インクに用いる場合に、インクを吐出するノズルから安定してインクを吐出することができる。加えて、本発明によれば、紙やフィルムなどのような受容体上の画像の耐光性および色調の鮮明性に優れたインクジェット用インクを提供することができる。さらに、本発明の顔料分散液は、短時間で効率的に製造することが可能である。
【0030】
上記のインクジェット用インクは、インクカートリッジに収容される。すなわち本発明によれば、本発明によるインクジェット用インクが収容されているインクカートリッジを提供することができる。
【0031】
画像形成装置および本発明のインクジェット用インクを用いて、紙やフィルムなどのような受容体に印字して画像を形成する場合、インクカートリッジは、好ましくは、画像形成装置に着脱可能であるのが好ましい。例えば、本発明のインクカートリッジを、プリンターのような画像形成装置に用いる場合には、インクカートリッジは、プリンターに着脱可能であるのが好ましい。インクカートリッジが画像形成装置に着脱可能であると、本発明のインクジェット用インクを画像形成装置に容易に設置および交換することができる。
【0032】
また本発明によれば、本発明のインクジェット用インクを用いて受容体に所望の画像を形成する画像形成方法、および該インクを用いて受容体に所望の画像が形成されている画像形成体を提供することができる。
【0033】
この本発明の画像形成方法は、好ましくは、画像形成装置から受容体に本発明のインクジェット用インクを吐出させることを含む。すなわち、インクジェット用インクをインクジェット方式によって受容体を吐出させて、受容体に、印字を含む所望の画像を形成する。画像形成装置から受容体へ本発明のインクジェット用インクを吐出させることによって受容体に画像を形成する場合には、様々な種類の受容体に所望の画像を形成することができる。
受容体としては紙が安価であり、文書としての一般性および画像の自然さから好ましく使用される。
【0034】
また、インクジェット方式を用いるための画像形成装置は、インクジェットプリンターである。画像形成装置が、インクジェットプリンターであると、単純な機構を用いて受容体に所望の画像を形成することができる。とくに、インクジェットプリンターにおいては、紙などの受容体を送り出すための機構が単純であるため、受容体の送り出しに関するトラブルが少ない。
このようなインクジェットプリンターとしては、連続噴射型あるいはオンデマンド型のインクジェットプリンターが挙げられる。とくに、オンデマンド型のインクジェットプリンターは、必要な時に必要な量のインクを吐出することができる。このようなオンデマンド型のインクジェットプリンターとしては、ピエゾ方式、サーマルインクジェット方式、バブルジェット(登録商標)方式、静電方式等のプリンターが挙げられる。これらのインクジェットプリンターにおいて、ピエゾ方式またはサーマル方式のインクジェットプリンターを用いることがこのましい。画像形成装置としてピエゾ方式のインクジェットプリンターを用いると、吐出するインクとして、様々な種類のインクを使用することができ、画像形成装置から吐出されるインクの量を複雑に制御することもできる。また画像形成装置としてサーマル方式のインクジェットプリンターを用いると、インクを吐出するノズルの数を容易に増加させることができ、その結果、受容体に画像を形成する速度を向上させることができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例および比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は何らこれらの例に限定されるものではない。なお、例中の部数は質量部を表わすものである。
【0036】
実施例1
処方1
ピグメントバイオレット19 30部
(大日精化社製CFR−311)
ポリオキシエチレン(n=40)β−ナフチルエーテル 15部
イオン交換水 155部
【0037】
処方1に示す組成を有する混合物(A)およびポリテトラフルオロエチレン被覆攪拌子を500mlのビーカーに入れ、混合物(A)を3時間攪拌した。次に、攪拌した処理済の混合物(A)に、ダイノーミル(株式会社シンマルエンタープライズ社KDL−A型、0.3Lバッチ式ガラスコンテナーセットのもの)において、0.3mmφジルコニアボールを使用して、4時間分散処理を行い、顔料の粒子の平均粒子径が69.0nm(日機装株式会社製マイクロトラックUPA150での測定値)である顔料分散液(A)が得られた。
【0038】
実施例2
実施例1において、混合物(A)の組成を下記の処方2に示す組成に変更し、分散処理に係る時間を5時間に変更した以外は、実施例1と同様にして、平均粒子径89.0nmの顔料分散液(B)を得た。
【0039】
処方2
ピグメントバイオレット19(94質量%)と
硫酸バリウム(6質量%)の混合顔料 30部
(大日本インキ社製、FASTOGEN SUPER RED 7100Y)
ポリオキシエチレン(n=40)β−ナフチルエーテル 15部
イオン交換水 155部
【0040】
比較例1
実施例1において、混合物(A)の組成を下記の処方3に示す組成に変更し、分散処理に係る時間を8時間に変更した以外は、実施例1と同様にして、平均粒子径69.2nmの顔料分散液(C)を得た。
【0041】
処方3
ピグメントバイオレット19 30部
(大日精化社製CFR−311)
ポリオキシエチレンオレイルエーテルアンモニウムサルフェート 15部
(第一工業製薬社製ハイテノール18E)
イオン交換水 155部
【0042】
比較例2
実施例1において、混合物(A)の組成を下記の処方4に示す組成に変更し、分散処理に係る時間を8時間に変更した以外は、実施例1と同様にして、平均粒子径90.1nmの顔料分散液(D)を得た。
【0043】
処方4
ピグメントバイオレット19(94質量%)と
硫酸バリウム(6質量%)の混合顔料 30部
(大日本インキ社製、FASTOGEN SUPER RED 7100Y)
ポリオキシエチレンオレイルエーテルアンモニウムサルフェート 15部
(第一工業製薬社製ハイテノール18E)
イオン交換水 155部
【0044】
上記で得られた顔料分散液(A)、(B)、(C)、(D)を用いて下記インク処方によりインクを調製し、30分攪拌後、孔径0.8μmのメンブランフィルターで濾過、真空脱気して、インクジェット用インク(a)〜(d)を得た。
【0045】
インク処方
顔料分散液(A)〜(D)のいずれか1つ 40.0部
グリセリン 7.5部
ジエチレングリコール 22.5部
ポリオキシエチレン(n=7)2−エチルヘキシルエーテル 2.0部
イオン交換水 28.0部
【0046】
このようにして得られた顔料分散液(A)〜(D)およびインクジェット用インク(a)〜(d)に関して、70℃で7日間の高温保存性試験を行い、これらの高温保存性試験の前後における顔料の粒子の平均粒子径を測定した。
顔料分散液(A)〜(D)における顔料の粒子の平均粒子径に関する測定結果を表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
表1に示すように、顔料分散液(A),(B)における本発明で言う顔料の粒子の平均粒子径に関する高温保存性試験の前後における変動は、顔料分散液(C),(D)における変動よりも顕著に小さいことが確認できた。
【0049】
インクジェット用インクにおける顔料の粒子の平均粒子径に関する測定結果を表2に示す。なお、EPSON社製のピエゾ方式のインクジェットプリンターEM−930CおよびHP社製のサーマル方式のインクジェットプリンターDesk Jet 880Cを用いて、紙に高温保存性試験後のインク(a)〜(d)で印字し、それぞれのプリンターに備えられたノズルから吐出されるインクによるノズルの目詰まりの程度(インクの吐出安定性)についても評価した。
【0050】
【表2】

【0051】
表2の吐出安定性において、○は吐出安定性が高く、ノズルのヘッドにおいてインクの目詰まりがなかったことを示し、×は吐出安定性が低く、ノズルのヘッドにおいてインクの目詰まりがあったことを示す。
【0052】
表2に示すように、ピエゾ方式のインクジェットプリンターおよびサーマル方式のインクジェットプリンターのいずれにおいても、本発明のインクジェット用インク(a),(b)の吐出安定性は高く、ノズルのヘッドにおいてインクの目詰まりは見られなかった。一方、インクジェット用インク(c),(d)は、いずれのプリンターにおいても、吐出安定性が低く、ノズルのヘッドにおいてインクの目詰まりが見られた。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、短時間で効率的に作製でき、耐光性、色調の鮮明性、液安定性、顔料粒子径安定性等の特性に優れた、とくにインクジェット用インクに好適に使用し得るピグメントバイオレット19を含む顔料分散液、これを用いたインクジェット用インク、インクカートッリッジ、画像形成体および画像形成方法を提供することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも水、ピグメントバイオレット19、およびノニオン系界面活性剤を含有することを特徴とする顔料分散液。
【請求項2】
少なくとも水、ピグメントバイオレット19と体質顔料との混合物および/または複合物、およびノニオン系界面活性剤を含有することを特徴とする顔料分散液。
【請求項3】
前記体質顔料が硫酸バリウムであることを特徴とする請求項2に記載の顔料分散液。
【請求項4】
前記ノニオン系界面活性剤が、下記一般式(I)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の顔料分散液。
【化1】


(式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリル基、アラルキル基を表わし、lは0〜7の整数を表わし、nは20〜200の整数を表わす。)
【請求項5】
前記ノニオン系界面活性剤が、ポリオキシエチレン(n=40)β−ナフチルエーテルであることを特徴とする請求項4に記載の顔料分散液。
【請求項6】
ピグメントバイオレット19とノニオン系界面活性剤の質量比率が、前者:後者として1:0.1〜1:2であることを特徴とする請求項1、4または5に記載の顔料分散液。
【請求項7】
ピグメントバイオレット19と体質顔料との混合物および/または複合物と、ノニオン系界面活性剤の質量比率が、前者:後者として1:0.1〜1:2であることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の顔料分散液。
【請求項8】
ピグメントバイオレット19の平均粒子径が、10〜200nmであることを特徴とする請求項1、4、5または6に記載の顔料分散液。
【請求項9】
ピグメントバイオレット19と体質顔料との混合物および/または複合物の平均粒子径が、10〜200nmであることを特徴とする請求項2、3、4、5または7に記載の顔料分散液。
【請求項10】
ピグメントバイオレット19の濃度が、5〜50質量%であることを特徴とする請求項1、4、5、6または8に記載の顔料分散液。
【請求項11】
ピグメントバイオレット19と体質顔料との混合物および/または複合物の濃度が、5〜50質量%であることを特徴とする請求項2、3、4、5、7または9に記載の顔料分散液。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の顔料分散液に、水溶性有機溶剤、界面活性剤、防腐剤および防カビ剤からなる群から選択された少なくとも1種の添加剤を配合してなることを特徴とするインクジェット用インク。
【請求項13】
ピグメントバイオレット19の濃度が、1〜15質量%であることを特徴とする請求項12に記載のインクジェット用インク。
【請求項14】
ピグメントバイオレット19と体質顔料との混合物および/または複合物の濃度が、1〜15質量%であることを特徴とする請求項12に記載のインクジェット用インク。
【請求項15】
請求項12〜14のいずれかに記載のインクジェット用インクを含有することを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項16】
画像形成装置に着脱可能であることを特徴とする請求項15に記載のインクカートリッジ。
【請求項17】
請求項12〜14のいずれかに記載のインクジェット用インクを用いて受容体に画像が形成されていることを特徴とする画像形成体。
【請求項18】
請求項12〜14のいずれかに記載のインクジェット用インクを用いて受容体に画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
【請求項19】
画像形成装置から受容体に、請求項12〜14のいずれかに記載のインクジェット用インクを吐出させることを特徴とする請求項18に記載の画像形成方法。
【請求項20】
前記画像形成装置が、インクジェットプリンターであることを特徴とする請求項19に記載の画像形成方法。
【請求項21】
前記インクジェットプリンターが、ピエゾ方式のインクジェットプリンターであることを特徴とする請求項20に記載の画像形成方法。
【請求項22】
前記インクジェットプリンターが、サーマル方式のインクジェットプリンターであることを特徴とする請求項20に記載の画像形成方法。
【請求項23】
前記受容体が紙であることを特徴とする請求項17に記載の画像形成体。



【公開番号】特開2006−22200(P2006−22200A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−201393(P2004−201393)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】