説明

顔料分散組成物、着色感光性組成物、カラーフィルタ、カラーフィルタの製造方法、液晶表示装置、及び、固体撮像素子

【課題】微細な顔料の分散性、及び、コントラストの双方が良好であり、明度の向上した顔料分散組成物、該顔料分散組成物を含む着色感光性組成物及び該着色感光性組成物を用いてなる、色純度及び透過率が高く、コントラストが良好な、色特性の優れたなカラーフィルタを提供する。
【解決手段】(A)平均一次粒子径が10〜30nmの顔料、(B)水酸基、カルボン酸基、スルホン酸基、アミノ基及びそれらの塩から選択される基を少なくとも一つ有するキノフタロン化合物、及び、(C)溶剤を含有し、該(A)顔料と、該(B)キノフタロン化合物との含有比率〔(A):(B)〕が、質量基準で(A):(B)=85:15〜10:90の範囲にある顔料分散組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は顔料分散組成物、それを含む着色感光性組成物、該着色感光性組成物を用いて製造されたカラーフィルタ及び該カラーフィルタの製造方法、該カラーフィルタを備えた液晶表示装置、及び、固体撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルタは、有機顔料や無機顔料を分散させた顔料分散組成物と、多官能モノマー、光重合開始剤、アルカリ可溶性樹脂及びその他の成分とを含有して着色感光性組成物とし、これを用いてフォトリソ法などにより着色パターンを形成することで製造されている。
【0003】
近年、カラーフィルタは、液晶表示装置(LCD)用途においてモニターのみならずテレビ(TV)へと用途が拡大する傾向にある。この用途拡大の傾向に伴い、カラーフィルタには、色度、明度、コントラストなどにおいて高度の色特性が要求されるに至っている。また、イメージセンサ(固体撮像素子)用途のカラーフィルタにおいても、同様に色特性の高いものが求められるようになっている。
【0004】
上記のような要求に対して、着色感光性組成物に含有される顔料を、より微細な状態で分散させること(良好な分散性)が求められている。しかしながら、顔料の粒子径を微細化すると顔料粒子の表面積が大きくなるため、顔料粒子間の凝集力が強くなり、顔料の分散性が不充分である場合には形成された着色レジスト膜にフリンジ(エッジ部のギザギザ)や表面凹凸が生じ、製造されたカラーフィルタの色度や寸法精度が低下したり、コントラストが著しく劣化したりするという問題がある。高度なレベルでの分散性とコントラストを両立することは、困難であることが多い。
【0005】
このような問題を解決するために、分散安定性を促進する様々な色素誘導体が開発されている。例えば、キノフタロン化合物を使用して顔料の分散性を確保することが提案されているが(例えば、特許文献1、2参照。)、顔料分散組成物に対して良好なコントラストを達成し得る微細な顔料に対しては、特許文献1に記載の条件では、分散性が不充分であるという問題があった。
【0006】
また、特許文献2においても、顔料の微細化が不足しており、良好なコントラストを達成するという観点からは微細化顔料の分散安定性が不充分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−167112号公報
【特許文献2】特開2002−179979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の目的は、微細な顔料の分散性、及び、コントラストの双方が良好であり、明度の向上した顔料分散組成物及び該顔料分散組成物を含む着色感光性組成物を提供することにある。
また、本発明のさらなる目的は、前記本発明の着色感光性組成物を用いることで、色純度及び透過率が高く、コントラストが良好な、色特性の優れたなカラーフィルタを提供すること、さらには、このカラーフィルタを用いてなる、明度の高い鮮明な画像の液晶表示装置及び、色特性に優れた固体撮像素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討の結果、平均一次粒子径が10〜30nmの顔料と、特定の置換基を分子内に有するキノフタロン化合物とを、特定の質量比率で溶剤中に含有する顔料分散組成物により、コントラストと分散性のいずれもが良好であるだけでなく、更なる効果としてキノフタロン化合物の優れた色特性により明度の向上が達成された顔料分散組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
【0010】
<1>(A)平均一次粒子径が10〜30nmの顔料、(B)水酸基、カルボン酸基、スルホン酸基、アミノ基及びそれらの塩から選択される基を少なくとも一つ有するキノフタロン化合物、及び、(C)溶剤を含有し、該(A)顔料と、該(B)キノフタロン化合物との含有比率〔(A):(B)〕が、質量基準で(A):(B)=85:15〜10:90の範囲にある顔料分散組成物。
<2> 前記(A)顔料と、前記(B)キノフタロン化合物との含有比率〔(A):(B)〕が、質量基準で(A):(B)=82:18〜15:85の範囲にある<1>記載の顔料分散組成物。
<3> 前記(A)顔料と、前記(B)キノフタロン化合物との含有比率〔(A):(B)〕が、質量基準で(A):(B)=80:20〜20:80の範囲にある<1>記載の顔料分散組成物。
【0011】
<4> 前記(A)顔料が、キノフタロン系顔料、イソインドリン系顔料、アゾ系金属錯体、金属フタロシアニングリーン顔料、ジケトピロロピロール系顔料、及び、アントラキノン系顔料からなる群より選択される少なくとも1種である<1>〜<3>のいずれか1項に記載の顔料分散組成物。
<5> 前記(A)顔料が、銅フタロシアニン顔料、亜鉛フタロシアニン顔料、アゾ系ニッケル錯体顔料、及び、イソインドリン系顔料からなる群より選択される少なくとも1種である<1>〜<3>のいずれか1項に記載の顔料分散組成物。
【0012】
<6> 前記(A)顔料が、無機塩、及び、溶剤の存在下で混練処理された顔料である<1>〜<3>のいずれか1項に記載の顔料分散組成物。
<7> 前記(A)顔料が、無機塩、溶剤、及び、色素誘導体の存在下で混練処理された顔料である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の顔料分散組成物。
<8> 前記色素誘導体が、前記(B)キノフタロン化合物である<7>に記載の顔料分散組成物。
<9> 前記(B)キノフタロン化合物が、下記の一般式(1)で表される化合物ある<1>〜<8>のいずれか1項に記載の顔料分散組成物。
【0013】
【化1】

【0014】
(前記一般式(1)中、X〜Xはそれぞれ独立に水素原子、塩素原子、又は臭素原子を表す。R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、−OC2n−Y、−SO2n−Y、−SONHC2n−Y、−CO2n−Y、−NHCOC2n−Y、又は、−N(C2n−Y)を表し、全てが水素原子であることはない。nは0〜20の整数を表し、Yは水素原子、−OH、−SOH、−COH、−CO[NH、−SO[NH、又は、−N(Rを表す。Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
【0015】
<10> (D)重合性化合物、(E)光重合開始剤、及び、<1>〜<9>のいずれか1項に記載の顔料分散組成物を含有する着色感光性組成物。
<11> <10>に記載の着色感光性組成物を、直接若しくは他の層を介して基板上に付与して感光性膜を形成する感光性膜形成工程と、形成された感光性膜にパターン露光及び現像を順次行なうことにより着色パターンを形成する着色パターン形成工程と、を有するカラーフィルタの製造方法。
<12> <11>に記載の製造方法によって得られた着色パターンを備えるカラーフィルタ。
<13> <12>に記載のカラーフィルタが具備された表示装置。
<14> <12>に記載のカラーフィルタを備えてなる固体撮像素子。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、コントラストと分散性の双方が良好で、且つ、明度の向上がなされた顔料分散組成物及び、該顔料分散組成物を含む着色感光性組成物を提供することができる。
また、前記本発明の着色感光性組成物を用いることで、色純度及び透過率が高く、コントラストが良好で、高い色特性の着色パターンを備えるカラーフィルタ、該カラーフィルタを用いてなる、輝度の高い鮮明な画像の液晶表示装置、及び、色特性に優れた固体撮像素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】色ムラ試験において、550mm×650mm基板における色度の測定箇所の座標を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の顔料分散組成物、着色感光性組成物、カラーフィルタ、及びカラーフィルタの製造方法について詳細に説明する。
【0019】
<顔料分散組成物>
本発明の顔料分散組成物は、(A)平均一次粒子径が10〜30nmの顔料、(B)水酸基、カルボン酸基、スルホン酸基、アミノ基及びそれらの塩から選択される基を少なくとも一つ有するキノフタロン化合物、及び、(C)溶剤を含有し、且つ、該(A)顔料と、該(B)キノフタロン化合物との含有比率〔(A):(B)〕が、質量基準で(A):(B)=85:15〜10:90の範囲にあることを特徴とする。
以下、本発明の顔料分散組成物を構成する各成分について詳述する。
【0020】
〔(A)平均一次粒子径が10〜30nmの顔料〕
本発明の着色組成物に用いることができる着色剤としては、平均一次粒子径が10nm以上30nm以下であれば、従来公知の種々の無機顔料及び有機顔料から任意に選択した顔料を用いることができる。以下、本発明に使用しうる代表的な顔料を挙げる。
【0021】
本発明で使用することができる赤色顔料は、通常カラーフィルタの製造に用いられる赤色顔料全般が挙げられ、具体的には 例えば、C.I.Pigment Red 1、2、3、4、5、6、7、9、10、14、17、22、23、31、38、41、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、49:2、52:1、52:2、53:1、57:1、60:1、63:1、66、67、81:1、81:2、81:3、83、88、90、105、112、119、122、123、144、146、149、150、155、166、168、169、170、171、172、175、176、177、178、179、184、185、187、188、190、200、202、206、207、208、209、210、216、220、224、226、242、246、254、255、279、などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではなく、種々の赤色顔料を使用することができる。
【0022】
本発明で使用することができる黄色顔料は、通常カラーフィルタの製造に用いられる黄色顔料全般が挙げられ、具体的には 例えば、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、10、11、12、13、14、15、16、17、18、20、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、86、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、125、126、127、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、199、213、214などが挙げられるが、特にこれらに限定されずに種々の黄色顔料を使用することができる。
【0023】
本発明で使用することができる緑色顔料は、通常カラーフィルタの製造に用いられる緑色顔料全般が挙げられ、具体的には 例えば、C.I.Pigment Green7、10、36、37、58、特開2008−19383号公報、特開2007−320986号公報、特開2004−70342号公報等に記載のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料などであるが、特にこれらに限定されずに種々の緑色顔料を使用することができる。
【0024】
上記の顔料のなかでも、後述する(B)キノフタロン化合物の色特性との関係上、キノフタロン系顔料、イソインドリン系顔料、アゾ系金属錯体、金属フタロシアニングリーン顔料、ジケトピロロピロール系顔料、アントラキノン系顔料からなる群より選択されるいずれかの顔料を1種単独、又は、2種以上組み合わせて用いることが好ましい。
上記キノフタロン系顔料としては、C.I.Pigment Yellow 138、イソインドリン系顔料としては、C.I.Pigment Yellow 139、185、アゾ系金属錯体としては、C.I.Pigment Yellow 150、金属フタロシアニングリーン顔料としては、C.I.Pigment Green 7、36、58、ジケトピロロピロール系顔料としては、C.I.Pigment Red254、255、アントラキノン系顔料としては、C.I.Pigment Red 177などが挙げられる。
【0025】
これらのなかでも、ハロゲン化銅フタロシアニン顔料(例えばC.I.Pigment Green7、36)、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料(例えばC.I.Pigment Green58)、アゾ系ニッケル錯体顔料(例えばC.I.Pigment Yellow 150)、イソインドリン系顔料(例えばC.I.Pigment Yellow 139、185)から選択される顔料と後述する特定の官能基を有するキノフタロン化合物とを組み合わせて用いることが特に好ましい。
【0026】
本発明に使用される顔料としては、平均一次粒子径が10nm以上30nm以下の範囲のものを用いる。この範囲の平均一次粒子径の顔料を用いることにより、分散性安定性や着色力に優れ、かつ、輝度が高く、コントラストの高いカラーフィルタ用着色感光性組成物を得ることができる。
【0027】
なお、本発明における平均一次粒子径とは、透過型電子顕微鏡で視野内の粒子を撮影し、二次元画像上の、凝集体を構成する顔料の一次粒子の400個につき、その長い方の径(長径)と短い方の径(短径)の平均値を各々求め、それを平均した値である。
【0028】
平均一次粒子径が10nm〜30nmの範囲である顔料の調製方法には特に制限はなく、いずれの方法で微粒子化され、上記範囲に粒子径が調整されたものでもよいが、容易に結晶成長を抑制でき、かつ平均一次粒子径の比較的小さい顔料粒子が得られる点で、顔料を上記平均一次粒子径に調整する方法として、ソルベントソルトミリング処理を採用するのが好ましい。
【0029】
このソルベントソルトミリング処理とは、顔料と、無機塩と、有機溶剤とを混練摩砕する処理を指す。粒子径の大きい顔料は乾式摩砕してからソルベントソルトミリングを行ってもよい。なお、顔料の混練摩砕を行うに際して、顔料種によっては、無機塩と、有機溶剤に加え、結晶成長抑止の観点から色素誘導体を共存させることが好ましい。色素誘導体を共存させることで混練摩砕時の結晶成長が抑止され、色素誘導体を含まない場合と比較してより微細な顔料を得ることが出来る。
具体的には、顔料と、無機塩と、所望により併用される色素誘導体と、それらを溶解しない有機溶剤とを混練機に仕込み、その中で混練摩砕を行う。この際の混練機としては、例えばニーダーやミックスマーラー等が使用できる。
【0030】
上記無機塩としては、水溶性無機塩が好適に使用でき、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を用いることが好ましい。また、平均粒子径0.5〜50μmの無機塩を用いることがより好ましい。この様な無機塩は、通常の無機塩を微粉砕することにより容易に得られる。
【0031】
平均一次粒子径が10nm〜30nmの範囲である顔料を得るに当たっては、ソルベントソルトミリングにおける顔料の使用量に対する無機塩使用量の比率を高くするのが好ましい。即ち当該無機塩の使用量は、質量換算で顔料1部に対して5〜20部とするのが好ましく、7〜15部とするのがより好ましい。
【0032】
有機溶剤としては、結晶成長を抑制し得る有機溶剤を使用することが好ましく、このような有機溶剤としては水溶性有機溶剤が好適に使用でき、例えばジエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングルコール、液体ポリプロピレングリコール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール等を用いることができる。
【0033】
この際の水溶性有機溶剤の使用量は、特に限定されるものではないが、質量換算で顔料1部に対して0.01〜5部、0.1〜2部の範囲であることが好ましい。
【0034】
所望により無機塩と共存させる色素誘導体としては、混練摩砕する顔料の種類により適宜選択しうるが、キノフタロン化合物、フタロシアニン化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、ベンツイミダゾロン化合物などの誘導体が挙げられ、なかでも、結晶成長抑止と色相との観点から、キノフタロン化合物、フタロシアニン化合物、等の誘導体が好ましい。
色素誘導体を併用する際の使用量は、特に限定されるものではないが、質量換算で顔料100部に対して 1〜20部であることが好ましく、1〜15部の範囲であることがさらに好ましい。
【0035】
ソルベントソルトミリング時の温度は、30〜150℃が好ましく、50〜100℃がより好ましい。ソルベントソルトミリングの時間は、5〜20時間が好ましく、8〜18時間がより好ましい。
【0036】
こうして、顔料、無機塩、および有機溶剤を主成分として含む混合物が得られるが、この混合物から有機溶剤と無機塩を除去し、必要に応じて顔料を主体とする固形物を洗浄、濾過、乾燥、粉砕等をすることにより、特定の平均一次粒子径となるように微細化された顔料の粉体を得ることができる。
【0037】
混練摩砕後の洗浄としては、水洗、湯洗のいずれも採用できる。洗浄回数は、1〜5回の範囲で繰り返してもよい。水溶性無機塩及び水溶性有機溶剤を用いた前記混合物の場合は、水洗することで容易に有機溶剤と無機塩とが除去される。
【0038】
上記した濾別、洗浄後の乾燥としては、例えば、乾燥機に設置した加熱源による80〜120℃の加熱等により、顔料の脱水及び/又は脱溶剤をする回分式あるいは連続式の乾燥等が挙げられ、乾燥機としては一般に箱型乾燥機、バンド乾燥機、スプレードライアー等がある。
また、乾燥後の粉砕は、比表面積を大きくしたり、一次粒子の平均粒子径を小さくしたりするための操作ではなく、例えば箱型乾燥機、バンド乾燥機を用いた乾燥の場合の様に顔料がランプ状等のとなった際に顔料を解して粉体化するために行うものであり、例えば、乳鉢、ハンマーミル、ディスクミル、ピンミル、ジェットミル等による粉砕等が挙げられる。
【0039】
本発明の顔料の一次粒子は、更に縦横のアスペクト比が1〜3の範囲であると、各用途分野において粘度特性が向上し、流動性がより高くなる。アスペクト比を求めるには、前記した様な、一次粒子の平均粒子径を求める場合と同様に、透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡で視野内の粒子を撮影する。そして、二次元画像上の、凝集体を構成する一次粒子の400個につき長い方の径(長径)と、短い方の径(短径)の平均値を求め、これらの値を用いて算出する。
なお、 本発明に使用される顔料としては、平均一次粒子径が10nm以上30nm以下の範囲であることを要するが、分散安定性の観点からは、平均一次粒子径が10nm以上28nm以下であることがより好ましく、10nm以上25nm以下であることがさらに好ましい。
【0040】
本発明の顔料分散組成物における顔料の含有量は、目的に応じて選択しうるが、一般的には、顔料分散組成物中、5〜30質量%であることが好ましく、良好なコントラストを得るという観点からは、8〜20質量%の範囲であることがより好ましい。
【0041】
〔(B)水酸基、カルボン酸基、スルホン酸基、アミノ基及びそれらの塩から選択される基を少なくとも一つ有するキノフタロン化合物〕
本発明で用いられるキノフタロン化合物は、置換基として水酸基、カルボン酸基、スルホン酸基、アミノ基、及びそれらの塩から選択される基を少なくとも一つ分子内に有する。これら置換基は、キノフタロン化合物に直接結合するものであってもよいが、さらに、分散性向上の観点から、必要に応じてアルキル基などの連結基を介して結合したものであっても良い。
本発明に用いうる特定置換基を有するキノフタロン化合物は、例えば、特開2003−167112公報の段落番号〔0015〕〜〔0019〕に記載される方法により入手することができる。
本発明で用いられるキノフタロン化合物の合成法の一例を以下に挙げる。
キノフタロン顔料:4,5,6,7−テトラクロロ−2−[2−(4,5,6,7−テトラクロロ−2,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−1H−インデン−2−イル)−8−キノリニル]−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン(PY138)を濃硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸、またはこれらの混合液などに投入してスルホン化反応を行う。反応液を大量の水で希釈するか、あるいは、金属アルカリ水溶液またはアミン水溶液により中和し、得られた懸濁液を濾過した後に水系の洗浄液で洗浄し、乾燥する。中和を行わない場合、得られるスルホン化誘導体は酸となり、中和を行うと塩となる。
上記の合成過程で中和を行う場合、金属アルカリ水溶液を用いるよりもアミン水溶液を用いるほうが好ましい。これは、中和にアルカリ金属水溶液を用いると、アルカリ金属がカラーフィルタの画素中に残留することにより、液晶の電気特性に悪影響を及ぼすという事態を招く懸念があるためである。中和に用いるアミン水溶液としては、アンモニア、モノエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)などの水溶液を用いることができるが、本発明では特にこれらに限定されずに種々のアミン水溶液を使用することができる。
本発明の好ましいキノフタロン化合物のより具体的な例としては、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0042】
【化2】

【0043】
(前記一般式(1)中、X〜Xはそれぞれ独立に水素原子、塩素原子、又は臭素原子を表す。R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、−OC2n−Y、−SO2n−Y、−SONHC2n−Y、−CO2n−Y、−NHCOC2n−Y、又は、−N(C2n−Y)を表し、全てが水素原子であることはない。nは0〜20の整数を表し、Yは水素原子、−OH、−SOH、−COH、−CO[NH、−SO[NH、又は、−N(Rを表す。Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
一般式(1)で表されるキノフタロン化合物のなかでも、X〜Xのうち4箇所以上が塩素原子又は臭素原子であるものが好ましく、X〜Xの8箇所全てが塩素原子であるものが特に好ましい。
〜Rの1〜3箇所に水素原子以外の上記置換基のいずれかが導入されたものが好ましく、特にRまたはRの位置に、上記置換基のいずれかが1〜2個導入されたものが特に好ましい。導入される置換基Yとしては、スルホン酸基、カルボン酸基、アミノ基等が好ましく、キノフタロン化合物と置換基Yとを連結する連結基における炭素数nとしては、1〜12のものが好ましく、1〜6のものが特に好ましい。
本発明に用いうる特定置換基を有するキノフタロン化合物の好ましい構造の例を以下に示すが、本発明はこれらに制限されるものはない。
【0044】
【化3】

【0045】
【化4】

【0046】
【化5】

【0047】
【化6】

【0048】
【化7】

【0049】
本発明の顔料分散組成物における(B)キノフタロン化合物の添加量としては、前記(A)顔料と、(B)キノフタロン化合物との含有比率〔(A):(B)〕が、質量基準で(A):(B)=85:15〜10:90の範囲にあることを要する。即ち、(B)キノフタロン化合物の添加量が、(A)顔料に対して少なすぎる場合には顔料分散安定化効果が十分に発揮されず、他方、キノフタロン化合物の量が多すぎる場合には、顔料粒子界面の極性が高くなりすぎてしまい、顔料分散安定性が低下する懸念がある。
(A)顔料と、前記(B)キノフタロン化合物との含有比率〔(A):(B)〕は、82:18〜15:85の範囲にあることが好ましく、80:20〜20:80の範囲にあることがより好ましい。
【0050】
〔(C)溶剤〕
本発明の顔料分散組成物は、さらに溶剤を含有する。
本発明に用いうる(C)溶剤としては、エステル類、例えば酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、アルキルエステル類、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチルなどの3−オキシプロピオン酸アルキルエステル類;3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル等;
エーテル類、例えばジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート等;
ケトン類、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等;
芳香族炭化水素類、例えばトルエン、キシレン、等が挙げられる。
【0051】
これらのうち、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等が好適である。
溶剤は、単独で用いる以外に2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
顔料分散組成物における(C)溶剤の含有量は、顔料分散組成物の用途などに応じて適宜選択される。顔料分散組成物が後述する着色感光性組成物の調製に用いられる場合には、取り扱い性の観点から、(A)顔料、(B)キノフタロン化合物、及び、所望により併用される顔料分散剤を含む固形分濃度が5〜50質量%となるように含有することができる。
【0053】
〔その他の成分〕
本発明の顔料分散組成物には、前記(A)成分〜(C)成分に加え、本発明の効果を損なわないかぎりにおいて種々の添加剤を併用することができる。
(顔料分散剤)
本発明の顔料分散組成物に用いうる顔料分散剤としては、下記一般式(i)、(ii)、又は、(i)−2で表される単量体を重合或いは共重合することにより、これら単量来由来の繰り返し単位が導入された高分子化号物であることが好ましい。
【0054】
【化8】

【0055】
上記一般式(i)、一般式(ii)、及び、一般式(i)−2中、R〜Rは、各々独立に、水素原子、又は1価の有機基を表し、X及びXは、各々独立に、−CO−、−C(=O)O−、−CONH−、−OC(=O)−、又はフェニレン基を表し、L及びLは、各々独立に、単結合、又は2価の有機連結基を表し、Laは、炭素数2〜10のアルキレン基を表し、Lbは、−C(=O)−、又は−NHC(=O)−を表し、A及びAは、各々独立に、1価の有機基を表し、m及びnは、各々独立に、2〜8の整数を表し、p及びqは、各々独立に、1〜100の整数を表す。
このような化合物については、特開2009‐256572号公報 段落番号〔0021〕〜〔0089〕に詳細に記載され、ここに記載の化合物は本発明における顔料分散剤として好適に使用しうる。
顔料分散剤としては、上記化合物の他、例えば、公知の顔料分散剤や界面活性剤を適宜選択して用いることができる。
【0056】
具体的には、多くの種類の化合物を使用可能であり、例えば、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)、(メタ)アクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.90、No.95(共栄社化学工業(株)製)、W001(裕商(株)社製)等のカチオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤;W004、W005、W017(裕商(株)社製)等のアニオン系界面活性剤;EFKA−46、EFKA−47、EFKA−47EA、EFKAポリマー100、EFKAポリマー400、EFKAポリマー401、EFKAポリマー450(いずれもチバ・スペシャルテイケミカル社製)、ディスパースエイド6、ディスパースエイド8、ディスパースエイド15、ディスパースエイド9100(いずれもサンノプコ社製)等の高分子分散剤;ソルスパース3000、5000、9000、12000、13240、13940、17000、24000、26000、28000などの各種ソルスパース分散剤(日本ルーブリゾール(株)社製);アデカプルロニックL31,F38,L42,L44,L61,L64,F68,L72,P95,F77、P84、F87、P94,L101,P103,F108、L121、P−123(旭電化(株)製)及びイソネットS−20(三洋化成(株)製)、Disperbyk 101,103,106,108,109,111,112,116,130,140,142,162,163,164,166,167,170,171,174,176,180,182,2000,2001,2050,2150(ビックケミー(株)社製)が挙げられる。その他、アクリル系共重合体など、分子末端もしくは側鎖に極性基を有するオリゴマーもしくはポリマーが挙げられる。
【0057】
顔料分散組成物を調製するに際に顔料分散剤を併用する場合、その添加量としては、(A)顔料100部に対して、顔料分散剤を質量換算で1〜100部添加することが好ましく、3〜70部添加することがより好ましい。
【0058】
また、本発明の顔料分散組成物は、必要に応じて、(B)水酸基、カルボン酸基、スルホン酸基、アミノ基及びそれらの塩から選択される基を少なくとも一つ有するキノフタロン化合物、とは異なる色素誘導体を添加してもよい。色素誘導体は、既述の如く、顔料に、分散剤と親和性のある部分構造や極性基を導入した化合物であり、当該化合物が有する分散剤と親和性のある部分構造、あるいは極性基を導入した色素誘導体を顔料表面に吸着させ、これを分散剤の吸着点として用いることで、顔料を微細な粒子として顔料分散組成物中に分散させ、その再凝集を防止することができ、コントラストが高く、透明性に優れたカラーフィルタを構成するのに有効である。
【0059】
色素誘導体の顔料分散組成物中における含有量としては、質量換算で顔料100部に対して、1〜30部が好ましく、3〜20部がより好ましい。該含有量が前記範囲内であると、粘度を低く抑えながら、分散を良好に行なえると共に分散後の分散安定性を向上させることができ、透過率が高く優れた色特性が得られ、これを用いて本発明の着色硬化性組成物を調整し、カラーフィルタを作製するときには高コントラストで良好な色特性を有するカラーフィルタを得ることができる。
【0060】
−顔料分散組成物の調製−
本発明の顔料分散組成物の調製態様は、特に制限されないが、例えば、顔料と顔料分散剤と溶剤とを、縦型もしくは横型のサンドグラインダー、ピンミル、スリットミル、超音波分散機等を用いて、0.01〜1mmの粒径のガラス、ジルコニア等でできたビーズで微分散処理を行なうことにより得ることができる。
【0061】
ビーズ分散を行なう前に、二本ロール、三本ロール、ボールミル、トロンミル、ディスパー、ニーダー、コニーダー、ホモジナイザー、ブレンダー、単軸もしくは2軸の押出機等を用いて、強い剪断力を与えながら混練分散処理を行なうことも可能である。
なお、混練、分散についての詳細は、T.C.Patton著“Paint Flow
and Pigment Dispersion”(1964年 John Wile
and Sons社刊)等に記載されている。
【0062】
本発明の顔料分散組成物は、顔料の分散性とコントラストが良好であるため、着色を必要とする種々の用途に使用しうるが、なかでも、カラーフィルタの製造に用いられる着色感光性組成物に好適に用いられる。
【0063】
<着色感光性組成物>
本発明の着色感光性組成物は、既述の本発明の顔料分散組成物と、(D)重合性化合物と、(E)光重合開始剤と、所望によりアルカリ可溶性樹脂と、を含み、必要に応じて、他の成分を含んでいてもよい。以下、本発明の着色感光性組成物に含まれる各成分について詳述する。
【0064】
〔顔料分散組成物〕
本発明の着色感光性組成物は、前記本発明の顔料分散組成物の少なくとも一種を用いて構成されるものである。着色感光性組成物を構成する本発明の顔料分散組成物の詳細については、既述の通りである。
【0065】
本発明の着色感光性組成物中における顔料分散組成物の含有量としては、着色感光性組成物の全固形分(質量)に対して、顔料の含有量が5〜70質量%の範囲となる量が好ましく、15〜60質量%の範囲となる量がより好ましい。顔料分散組成物の含有量が前記範囲内であると、色濃度が充分で優れた色特性を確保するのに有効である。
【0066】
さらに、本発明の着色感光性組成物において、本発明の顔料分散組成物に含まれる(A)顔料及び着色剤としての機能をも有する(B)特定置換基を有するキノフタロン化合物の総量の含有量は、着色感光性組成物中の溶剤を除いた総量に対して5質量%〜60質量%であることが好ましく、10質量%〜55質量%であることがより好ましく、最適には15質量%〜50質量%である。添加量をこの範囲で用いることにより、色特性に優れ、コントラストが高く、輝度の高いカラーフィルタを得ることができる。
【0067】
〔(D)重合性化合物〕
本発明の着色感光性組成物は、重合性化合物の少なくとも一種を含有する。本発明に用いることができる重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、現像促進を図るため、アルキルオキサイド基やカルボン酸基などの有機酸基を構造中にもつ化合物も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0068】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー、イソシアヌール酸EO変性トリアクリレート等がある。
【0069】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
【0070】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
【0071】
これらの重合性化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、最終的な着色感光性組成物の性能設計にあわせて任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。
【0072】
感度の点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数・異なる重合性基(例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感度と強度の両方を調節する方法も有効である。
【0073】
また、着色感光性組成物中の他の成分、例えば、アルカリ可溶性樹脂などのバインダーポリマー、光重合開始剤などとの相溶性、顔料の分散性に対しても、重合性化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させうることがある。
【0074】
また、基板等との密着性を向上させる目的で特定の構造を選択することもあり得る。(D)重合性化合物は、着色感光性組成物中の不揮発性成分に対して、好ましくは5〜70質量%、更に好ましくは10〜60質量%の範囲で使用される。また、これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。そのほか、重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択できる。
【0075】
〔(E)光重合開始剤〕
本発明の感光性樹脂組成物は、(E)光重合開始剤を含有する。
前記(E)光重合開始剤としては、例えば、有機ハロゲン化化合物、オキシジアゾール化合物、カルボニル化合物、ケタール化合物、ベンゾイン化合物、アクリジン化合物、有機過酸化化合物、アゾ化合物、クマリン化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ酸化合物、ジスルホン酸化合物、オキシムエステル化合物、オニウム塩化合物、アシルホスフィン(オキシド)化合物が挙げられる。
【0076】
有機ハロゲン化化合物としては、具体的には、若林等、「Bull Chem.Soc
Japan」42、2924(1969)、米国特許第3,905,815号明細書、特公昭46−4605号公報、特開昭48−36281号公報、特開昭55−32070号公報、特開昭60−239736号公報、特開昭61−169835号公報、特開昭61−169837号公報、特開昭62−58241号公報、特開昭62−212401号公報、特開昭63−70243号公報、特開昭63−298339号公報、M.P.Hutt“Journal of Heterocyclic Chemistry”1(No3),(1970)」等に記載の化合物が挙げられ、特に、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物、s−トリアジン化合物が挙げられる。
【0077】
s−トリアジン化合物として、より好適には、すくなくとも一つのモノ、ジ、又はトリハロゲン置換メチル基がs−トリアジン環に結合したs−トリアジン誘導体、具体的には、例えば、2,4,6−トリス(モノクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−n−プロピル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロロエチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3,4−エポキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔1−(p−メトキシフェニル)−2,4−ブタジエニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−i−プロピルオキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−ナトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ベンジルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(o−ブロモ−p−N,N−(ジエトキシカルボニルアミノ)−フェニル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロモメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メトキシ−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。
【0078】
オキシジアゾール化合物としては、2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキソジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(シアノスチリル)−1,3,4−オキソジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(ナフト−1−イル)−1,3,4−オキソジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−スチリル)スチリル−1,3,4−オキソジアゾールなどが挙げられる。
【0079】
カルボニル化合物としては、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α−ヒドトキシ−2−メチルフェニルプロパノン、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル−(p−イソプロピルフェニル)ケトン、1−ヒドロキシ−1−(p−ドデシルフェニル)ケトン、2−メチル−1−(4’−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキシド、1,1,1−トリクロロメチル−(p−ブチルフェニル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−4−モルホリノブチロフェノン等のアセトフェノン誘導体、チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸エステル誘導体等を挙げることができる。
【0080】
ケタール化合物としては、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルエチルアセタールなどを挙げることができる。
【0081】
ベンゾイン化合物としてはm−ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、メチルo−ベンゾイルベンゾエートなどを挙げることができる。
【0082】
アクリジン化合物としては、9−フェニルアクリジン、9−ピリジルアクリジン、9−ピラジニルアクリジン、1,2−ジ(9−アクリジニル)エタン、1,3−ジ(9−アクリジニル)プロパン、1,4−ジ(9−アクリジニル)ブタン、1,5−ジ(9−アクリジニル)ペンタン、1,6−ジ(9−アクリジニル)ヘキサン、1,7−ジ(9−アクリジニル)ヘプタン、1,8−ジ(9−アクリジニル)オクタン、1,9−ジ(9−アクリジニル)ノナン、1,10−ジ(9−アクリジニル)デカン、1,11−ジ(9−アクリジニル)ウンデカン、1,12−ジ(9−アクリジニル)ドデカン等のジ(9−アクリジニル)アルカン、などを挙げることができる。
【0083】
有機過酸化化合物としては、例えば、トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−オキサノイルパーオキサイド、過酸化琥珀酸、過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシオクタノエート、tert−ブチルパーオキシラウレート、ターシルカーボネート、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、カルボニルジ(t−ブチルパーオキシ二水素二フタレート)、カルボニルジ(t−ヘキシルパーオキシ二水素二フタレート)等が挙げられる。
【0084】
アゾ化合物としては、例えば、特開平8−108621号公報に記載のアゾ化合物等を挙げることができる。
【0085】
クマリン化合物としては、例えば、3−メチル−5−アミノ−((s−トリアジン−2−イル)アミノ)−3−フェニルクマリン、3−クロロ−5−ジエチルアミノ−((s−トリアジン−2−イル)アミノ)−3−フェニルクマリン、3−ブチル−5−ジメチルアミノ−((s−トリアジン−2−イル)アミノ)−3−フェニルクマリン等を挙げることができる。
【0086】
アジド化合物としては、米国特許第2848328号明細書、米国特許第2852379号明細書ならびに米国特許第2940853号明細書に記載の有機アジド化合物、2,6−ビス(4−アジドベンジリデン)−4−エチルシクロヘキサノン(BAC−E)等が挙げられる。
【0087】
ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特公平6−29285号公報、米国特許第3,479,185号、同第4,311,783号、同第4,622,286号等の各明細書に記載の種々の化合物、具体的には、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル))4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイジダゾール、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0088】
有機ホウ酸塩化合物としては、例えば、特開昭62−143044号公報、特開昭62−150242号公報、特開平9−188685号公報、特開平9−188686号公報、特開平9−188710号公報、特開2000−131837号公報、特開2002−107916号公報、特許第2764769号公報、特願2000−310808号公報等の各公報、及び、Kunz,Martin“Rad Tech’98.Proceeding April 19−22,1998,Chicago”等に記載される有機ホウ酸塩、特開平6−157623号公報、特開平6−175564号公報、特開平6−175561号公報に記載の有機ホウ素スルホニウム錯体或いは有機ホウ素オキソスルホニウム錯体、特開平6−175554号公報、特開平6−175553号公報に記載の有機ホウ素ヨードニウム錯体、特開平9−188710号公報に記載の有機ホウ素ホスホニウム錯体、特開平6−348011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−306527号公報、特開平7−292014号公報等の有機ホウ素遷移金属配位錯体等が具体例として挙げられる。
【0089】
ジスルホン化合物としては、特開昭61−166544号公報、特願2001−132318号明細書等に記載される化合物等が挙げられる。
【0090】
オキシムエステル化合物としては、J.C.S.Perkin II(1979)1653−1660)、J.C.S.Perkin II(1979)156−162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995)202−232、特開2000−66385号公報に記載の化合物、特開2000−80068号公報、特表2004−534797号公報に記載の化合物等が挙げられる。市販品としてはチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のイルガキュアOXE−01、OXE−02などが好適である。
【0091】
また、本発明においては下記の一般式(2)又は(3)で表されるオキシムエステル化合物も好適である。
【0092】
【化9】

【0093】
【化10】

【0094】
上記一般式(2)及び(3)中、R及びRは各々独立に一価の置換基を表し、Xは一価の置換基または水素原子を表し、Aは二価の有機基を表し、Arはアリール基を表す。
上記一般式で表されるオキシムエステル化合物の好ましい具体例を以下に示す。
【0095】
【化11】

【0096】
【化12】

【0097】
【化13】

【0098】
【化14】

【0099】
これらの中でも、着色感光性組成物を調製する段階において、溶剤に溶解し易く、生産性が良好であるという観点から、以下のものが特に好ましい。
【0100】
【化15】

【0101】
オニウム塩化合物としては、例えば、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号明細書、特開平4−365049号公報等に記載のアンモニウム塩、米国特許第4,069,055号明細書、同4,069,056号明細書の各明細書に記載のホスホニウム塩、欧州特許第104、143号明細書、米国特許第339,049号明細書、同第410,201号明細書の各明細書、特開平2−150848号公報、特開平2−296514号公報の各公報に記載のヨードニウム塩などが挙げられる。
【0102】
本発明に好適に用いることのできるヨードニウム塩は、ジアリールヨードニウム塩であり、安定性の観点から、アルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基等の電子供与性基で2つ以上置換されていることが好ましい。また、その他の好ましいスルホニウム塩の形態として、トリアリールスルホニウム塩の1つの置換基がクマリン、アントアキノン構造を有し、300nm以上に吸収を有するヨードニウム塩などが好ましい。
【0103】
本発明に好適に用いることのできるスルホニウム塩としては、欧州特許第370,693号明細書、同390,214号明細書、同233,567号明細書、同297,443号明細書、同297,442号明細書、米国特許第4,933,377号明細書、同161,811号明細書、同410,201号明細書、同339,049号明細書、同4,760,013号明細書、同4,734,444号明細書、同2,833,827号明細書、独国特許第2,904,626号明細書、同3,604,580号明細書、同3,604,581号明細書の各明細書に記載のスルホニウム塩が挙げられ、安定性の感度点から好ましくは電子吸引性基で置換されていることが好ましい。電子吸引性基としては、ハメット値が0より大きいことが好ましい。好ましい電子吸引性基としては、ハロゲン原子、カルボン酸などが挙げられる。
また、その他の好ましいスルホニウム塩としては、トリアリールスルホニウム塩の1つの置換基がクマリン、アントアキノン構造を有し、300nm以上に吸収を有するスルホニウム塩が挙げられる。別の好ましいスルホニウム塩としては、トリアリールスルホニウム塩が、アリロキシ基、アリールチオ基を置換基に有する300nm以上に吸収を有するスルホニウム塩が挙げられる。
【0104】
また、オニウム塩化合物としては、J.V.Crivello et al,Macromolecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello
et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩等のオニウム塩等が挙げられる。
【0105】
アシルホスフィン(オキシド)化合物としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のイルガキュア819、ダロキュア4265、ダロキュアTPOなどが挙げられる。
【0106】
光重合開始剤としては、露光感度の観点から、トリハロメチルトリアジン系化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α−ヒドロキシケトン化合物、α−アミノケトン化合物、アシルホスフィン系化合物、フォスフィンオキサイド系化合物、メタロセン化合物、オキシム系化合物、トリアリルイミダゾールダイマー、オニウム系化合物、ベンゾチアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物およびその誘導体、シクロペンタジエン−ベンゼン−鉄錯体およびその塩、ハロメチルオキサジアゾール化合物、3−アリール置換クマリン化合物からなる群より選択される化合物が好ましい。
【0107】
さらに好ましくは、トリハロメチルトリアジン系化合物、α−アミノケトン化合物、アシルホスフィン系化合物、フォスフィンオキサイド系化合物、オキシム系化合物、トリアリルイミダゾールダイマー、オニウム系化合物、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物であり、トリハロメチルトリアジン系化合物、α−アミノケトン化合物、オキシム系化合物、トリアリルイミダゾールダイマー、ベンゾフェノン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物が最も好ましい。
上記の好ましいその他の光重合開始剤の具体例として、4−[o−ブロモ−p−N,N−ジ(エトキシカルボニル)アミノフェニル]−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン)が挙げられる。また、好適な光重合開始剤の市販品としては、イルガキュア−184、イルガキュア−369、イルガキュア−379、イルガキュア−651、イルガキュア−907、イルガキュア−819(以上、チバ スペシャルティ ケミカルズ製)、ダロキュア4265、ダロキュアTPO(以上、メルク製)、アデカ1717(旭電化工業製)、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール(黒金化成製)、EABF(保土ヶ谷化学社製)等が挙げられる。
本発明の着色感光性組成物に用いられる光重合開始剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、露光波長に吸収を持たない開始剤を用いる場合には、露光波長に吸収を有する化合物を増感剤として使用する必要がある。
【0108】
光重合開始剤の含有量は、着色感光性組成物層中の全固形分に対し0.1質量%〜20質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%〜15質量%、特に好ましくは1質量%〜10質量%の範囲である。この範囲で、良好な感度とパターン形成性が得られる。
【0109】
〔アルカリ可溶性樹脂〕
本発明の着色感光性組成物には、アルカリ可溶性樹脂の少なくとも一種を含有することが好ましい。アルカリ可溶性樹脂は顔料分散組成物の調整の段階で含有することも可能であり、顔料分散組成物の調整および着色感光性組成物の調整の段階の両方の工程で分割して添加することも可能である。
アルカリ可溶性樹脂としては、線状有機高分子重合体であって、分子(好ましくは、アクリル系共重合体、スチレン系共重合体を主鎖とする分子)中に少なくとも1つのアルカリ可溶性を促進する基(例えばカルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基など)を有するアルカリ可溶性樹脂の中から適宜選択することができる。このうち、更に好ましくは、有機溶剤に可溶で弱アルカリ水溶液により現像可能なものである。
【0110】
アルカリ可溶性樹脂の製造には、例えば公知のラジカル重合法による方法を適用することができる。ラジカル重合法でアルカリ可溶性樹脂を製造する際の温度、圧力、ラジカル開始剤の種類及びその量、溶媒の種類等々の重合条件は、当業者において容易に設定可能であり、実験的に条件を定めるようにすることもできる。
【0111】
上記の線状有機高分子重合体としては、側鎖にカルボン酸を有するポリマーが好ましい。例えば、特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号の各公報に記載されているような、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等、並びに側鎖にカルボン酸を有する酸性セルロース誘導体、水酸基を有するポリマーに酸無水物を付加させたもの等が挙げられ、さらに側鎖に(メタ)アクリロイル基やアリル基などの不飽和結合部位を有する高分子重合体も好ましいものとして挙げられる。
【0112】
これらの中では特に、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体やベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他のモノマーからなる多元共重合体が好適である。このほか、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルを共重合したもの等も有用なものとして挙げられる。該ポリマーは任意の量で混合して用いることができる。
【0113】
上記以外に、特開平7−140654号公報に記載の、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体などが挙げられる。
【0114】
アルカリ可溶性樹脂の具体的な構成単位については、特に(メタ)アクリル酸と、これと共重合可能な他の単量体との共重合体が好適である。
【0115】
前記(メタ)アクリル酸と共重合可能な他の単量体としては、(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸アリール、ビニル化合物などが挙げられる。ここで、アルキル基及びアリール基の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。
【0116】
前記アルキル(メタ)アクリレート及びアリール(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジルアクリレート、トリルアクリレート、ナフチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等を挙げることができる。
【0117】
前記ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、グリシジルメタクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、CH=CR3132〔ここで、R31は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、R32は炭素数6〜10の芳香族炭化水素環を表す。〕、CH=C(R31)(COOR33)〔ここで、R31は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、R33は炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜12のアラルキル基を表す。〕、等を挙げることができる。
【0118】
これら共重合可能な他の単量体は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましい共重合可能な他の単量体は、CH=CR3132、CH=C(R31)(COOR33)、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート及びスチレンから選択される少なくとも1種であり、特に好ましくは、CH=CR3132及び/又はCH=C(R31)(COOR33)である。これらの、R31、R32及びR33はそれぞれ前記したのと同義である。
【0119】
着色感光性組成物中におけるアルカリ可溶性樹脂の含有量としては、該組成物の全固形分に対して、1〜20質量%が好ましく、より好ましくは2〜15質量%であり、特に好ましくは3〜12質量%である。
【0120】
〔増感色素〕
本発明に用いられる感光性樹脂組成物には、増感色素を添加することが感度向上の観点から好ましい。この増感色素が吸収しうる波長の露光により上記重合開始剤成分のラジカル発生反応や、それによる重合性化合物の重合反応が促進されるものである。
このような増感色素としては、公知の分光増感色素又は染料、又は光を吸収して光重合開始剤と相互作用する染料又は顔料が挙げられる。
【0121】
本発明に用いることのできる増感色素として好ましい分光増感色素又は染料は、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、フタロシアニン類(例えば、フタロシアニン、メタルフタロシアニン)、ポルフィリン類(例えば、テトラフェニルポルフィリン、中心金属置換ポルフィリン)、クロロフィル類(例えば、クロロフィル、クロロフィリン、中心金属置換クロロフィル)、金属錯体、アントラキノン類、(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、等が挙げられる。
【0122】
増感色素の他の好ましい態様として、以下の化合物群に属しており、且つ、350〜450nmに極大吸収波長を有する色素が挙げられる。
例えば、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)が挙げられる。
【0123】
(チオール化合物)
チオール化合物は、共増感剤として作用したり、基板との密着性を高める作用もある。共増感剤は、増感色素や光重合開始剤の活性放射線に対する感度を一層向上させる、あるいはエチレン性不飽和化合物の酸素による重合阻害を抑制する等の作用を有する。
チオール化合物として具体的には、エチレングリコールビスチオプロピオネート(EGTP)、ブタンジオールビスチオプロピオネート(BDTP)、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート(TMTP)、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート(PETP)、下記式で表されるTHEIC−BMPA等のメルカプトプロピオン酸誘導体;エチレングリコールビスチオグリコレート(EGTG)、ブタンジオールビスチオグリコレート(BDTG)、ヘキサンジオールビスチオグリコレート(HDTG)、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート(TMTG)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート(PETG)等のチオグリコール酸誘導体;1,2−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,6−ヘキサメチレンジチオール、2,2’−(エチレンジチオ)ジエタンチオール、meso−2,3−ジメルカプトコハク酸、p−キシレンジチオール、m−キシレンジチオール等のチオール類;ジ(メルカプトエチル)エーテル等のメルカプトエーテル類を例示することができる。これらは、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0124】
【化16】

【0125】
本発明で用いられるチオール化合物は、下記一般式(I)で表されるものが、より好ましい。
【0126】
【化17】

【0127】
一般式(I)中、Rは、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、Aは、N=C−Nと共にヘテロ環を形成する原子団を表す。
【0128】
一般式(I)において、Rは、アルキル基、又はアリール基を表す。
前記アルキル基としては、炭素原子数が1から20までの直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を挙げることができ、炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状、並びに炭素原子数5から10までの環状のアルキル基がより好ましい。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2−ノルボルニル基等を挙げることができる。
【0129】
前記アリール基としては、単環構造のものに加え、1個から3個のベンゼン環が縮合環を形成したもの、ベンゼン環と5員不飽和環が縮合環を形成したものなどを挙げることができ、具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、アセナブテニル基、フルオレニル基等を挙げることができ、これらの中では、フェニル基、ナフチル基がより好ましい。
【0130】
また、一般式(I)において、Aは、N=C−Nと共にヘテロ環を形成する原子団を表す。
この原子団を構成する原子としては、炭素原子、窒素原子、水素原子、硫黄原子、セレン原子等が挙げられる。
なお、AとN=C−Nとで形成されるヘテロ環は、更に置換基を有していてもよく、導入しうる置換基としては、上記アルキル基やアリール基に導入可能な置換基と同様のものが挙げられる。
【0131】
また、チオール化合物として、更に好ましくは、下記一般式(II)又は一般式(III)で表されるものである。
【0132】
【化18】

【0133】
一般式(II)中、Rは、アリール基を表し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基、又はアリール基を表す。
一般式(III)中、Rは、アルキル基、又はアリール基を表し、Xは、一般式(II)のXと同義である。
【0134】
一般式(II)及び(III)におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。
【0135】
一般式(II)及び(III)におけるアルキル基は、一般式(I)のRで表されるアルキル基と同義であり、その好ましい範囲も同様である。
また、一般式(II)及び(III)におけるアリール基は、一般式(I)のRで表されるアリール基と同義であり、その好ましい範囲も同様である。
【0136】
一般式(II)及び(III)における各基は、更に置換基を有していてもよく、その置換基としては、一般式(I)のRで表されるアルキル基やアリール基に導入可能な置換基として挙げられているものと同様である。
【0137】
一般式(II)及び(III)中、Xは、水素原子であることが、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、適宜PGMEAと称する。)溶解性の観点でより好ましい。
一般式(II)中、Rは、フェニル基であることが、感度とPGMEA溶解性の観点で最も好ましい。
一般式(III)中、Rは、メチル基、エチル基、フェニル基、ベンジル基であることが、感度とPGMEA溶解性の観点でより好ましい。
【0138】
一般式(II)及び(III)の中で、PGMEA溶解性の観点で、一般式(III)で表される化合物が最も好ましい。
【0139】
これらのチオール化合物は、J.Appl.Chem.,34、2203−2207(1961)に記載の方法で合成することができる。
【0140】
本発明の着色感光性組成物において、一般式(I)で表される化合物は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよく、また、一般式(II)で表される化合物から選択される化合物と、一般式(III)で表される化合物から選択される化合物と、から選択される化合物と、をそれぞれ併用してもよい。
【0141】
着色感光性組成物中のチオール化合物の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.1〜5.0質量%であることが好ましく、0.2〜4質量%であることがより好ましい。この範囲内にあると、重合性を損なうことがないため好ましい。
【0142】
〔溶剤〕
本発明の着色感光性組成物は、一般に上記成分と共に溶剤を用いて好適に調製することができる。
溶剤としては、エステル類、例えば酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、アルキルエステル類、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、並びに、3−オキシプロピオン酸メチル及び3−オキシプロピオン酸エチルなどの3−オキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル)、並びに、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、及び2−オキシプロピオン酸プロピルなどの2−オキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル)、並びに、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル等;
【0143】
エーテル類、例えばジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート等;
ケトン類、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等;芳香族炭化水素類、例えばトルエン、キシレン、等が挙げられる。
【0144】
これらのうち、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等が好適である。
溶剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0145】
〔その他成分〕
本発明の着色感光性組成物には、必要に応じて、フッ素系有機化合物、熱重合防止剤、着色剤、その他充填剤、アルカリ可溶性樹脂以外の高分子化合物、界面活性剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤などの各種添加物を含有することができる。
以下、好ましい併用成分について説明する。
【0146】
〈フッ素系有機化合物〉
フッ素系有機化合物を含有することで、塗布液としたときの液特性(特に流動性)を改善でき、塗布厚の均一性や省液性を改善することができる。すなわち、基板と塗布液との界面張力を低下させて基板への濡れ性が改善され、基板への塗布性が向上するので、少量の液量で数μm程度の薄膜を形成した場合であっても、厚みムラの小さい均一厚の膜形成が可能である点で有効である。
【0147】
フッ素系有機化合物のフッ素含有率は3〜40質量%が好適であり、より好ましくは5〜30質量%であり、特に好ましくは7〜25質量%である。フッ素含有率が前記範囲内であると、塗布厚均一性や省液性の点で効果的であり、組成物中への溶解性も良好である。
【0148】
フッ素系有機化合物としては、例えば、メガファックF171、同F172、同F173、同F177、同F141、同F142、同F143、同F144、同R30、同F437(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC430、同FC431、同FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC1068、同SC−381、同SC−383、同S393、同KH−40(以上、旭硝子(株)製)等が挙げられる。
【0149】
フッ素系有機化合物は特に、例えば塗布形成される塗布膜を薄くしたときの塗布ムラや厚みムラの防止に効果的である。また、液切れを起こしやすいスリット塗布においても効果的である。
フッ素系有機化合物の添加量は、顔料分散組成物または着色感光性組成物の全質量に対して、0.001〜2.0質量%が好ましく、より好ましくは0.005〜1.0質量%である。
【0150】
〈熱重合開始剤〉
本発明の着色感光性組成物には、熱重合開始剤を含有させることも有効である。熱重合開始剤としては、例えば、各種のアゾ系化合物、過酸化物系化合物が挙げられ、前記アゾ系化合物としては、アゾビス系化合物を挙げることができ、前記過酸化物系化合物としては、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネートなどを挙げることができる。
【0151】
〈界面活性剤〉
本発明の着色感光性組成物には、塗布性を改良する観点から、各種の界面活性剤を用いて構成することが好ましく、ノニオン系、カチオン系、アニオン系の各種界面活性剤を使用できる。中でも、ノニオン系界面活性剤でパーフルオロアルキル基を有するフッ素系界面活性剤が好ましい。
フッ素系界面活性剤の具体例としては、大日本インキ化学工業(株)製のメガファック(登録商標)シリーズ、3M社製のフロラード(登録商標)シリーズなどが挙げられる。
【0152】
上記以外に、着色感光性組成物には、添加物の具体例として、ガラス、アルミナ等の充填剤;イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体、酸性セルロース誘導体、水酸基を有するポリマーに酸無水物を付加させたもの、アルコール可溶性ナイロン、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとから形成されたフェノキシ樹脂などのアルカリ可溶の樹脂;ノニオン系、カチン系、アニオン系等の界面活性剤、具体的にはフタロシアニン誘導体(市販品EFKA−745(森下産業社製));オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業社製)、(メタ)アクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.90、No.95(共栄社油脂化学工業社製)、W001(裕商社製)等のカチオン系界面活性剤;
【0153】
その他添加物等の例として、アデカプルロニックL31、F38、L42、L44、L61、L64、F68、L72、P95、F77、P84、F87、P94、L101、P103、F108、L121、P−123(旭電化社製)及びイソネットS−20(三洋化成社製);2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、アルコキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤;及びポリアクリル酸ナトリウム等の凝集防止剤を挙げることができる。
【0154】
また、未硬化部のアルカリ溶解性を促進し、着色感光性組成物の現像性の更なる向上を図る場合には、着色感光性組成物に有機カルボン酸、好ましくは分子量1000以下の低分子量有機カルボン酸の添加を行なうことができる。
具体的には、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、ジエチル酢酸、エナント酸、カプリル酸等の脂肪族モノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、ジメチルマロン酸、メチルコハク酸、テトラメチルコハク酸、シトラコン酸等の脂肪族ジカルボン酸;トリカルバリル酸、アコニット酸、カンホロン酸等の脂肪族トリカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、クミン酸、ヘメリト酸、メシチレン酸等の芳香族モノカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリト酸、トリメシン酸、メロファン酸、ピロメリト酸等の芳香族ポリカルボン酸;フェニル酢酸、ヒドロアトロパ酸、ヒドロケイ皮酸、マンデル酸、フェニルコハク酸、アトロパ酸、ケイ皮酸、ケイ皮酸メチル、ケイ皮酸ベンジル、シンナミリデン酢酸、クマル酸、ウンベル酸等のその他のカルボン酸が挙げられる。
【0155】
(熱架橋性化合物)
本発明において、熱架橋性化合物とはアルカリ可溶性樹脂のカルボキシル基と熱架橋する化合物を言い、熱架橋することによって架橋密度が高くなり、形成された着色硬化膜の耐薬品性の向上が図られる。
本発明に使用できる熱架橋性化合物としては、ビスフェノールA型、クレゾールノボラック型、ビフェニル型、脂環式エポキシ化合物のエポキシ化合物などが挙げられるが、メラミン系化合物など熱架橋性を示す化合物を使用しても良い。
【0156】
エポキシ化合物の具体的な例としては、例えばビスフェノールA型としては、エポトートYD−115、YD−118T、YD−127、YD−128、YD−134、YD−8125、YD−7011R、ZX−1059、YDF−8170、YDF−170など(以上東都化成製)、デナコールEX−1101、EX−1102、EX−1103など(以上ナガセ化成製)、プラクセルGL−61、GL−62、G101、G102(以上ダイセル化学製)の他に、これらの類似のビスフェノールF型、ビスフェノールS型も挙げることができる。またEbecryl3700、3701、600(以上ダイセルユーシービー製)などのエポキシアクリレートも使用可能である。
【0157】
クレゾールノボラック型としては、エポトートYDPN−638、YDPN−701、YDPN−702、YDPN−703、YDPN−704など(以上東都化成製)、デナコールEM−125など(以上ナガセ化成製)、ビフェニル型としては3,5,3’,5’−テトラメチル−4,4’ジグリシジルビフェニルなどがあげられる。
【0158】
脂環式エポキシ化合物としては、セロキサイド2021、2081、2083、2085、エポリードGT−301、GT−302、GT−401、GT−403、EHPE−3150(以上ダイセル化学製)、サントートST−3000、ST−4000、ST−5080、ST−5100など(以上東都化成製)などを挙げることができる。他にアミン型エポキシ樹脂であるエポトートYH−434、YH−434L、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の骨格中にダイマー酸を変性したグリシジルエステル等も使用できる。
【0159】
これらの熱架橋性化合物の中で好ましくは、脂環式エポキシ化合物又は下記一般式(I)で示されるノボラック型エポキシ化合物であり、エポキシ当量が150〜220のものが特に好ましい。このような素材としてはダイセル化学製セロキサイド2021、2081、2083、2085、エポリードGT−301、GT−302、GT−401、GT−403、EHPE−3150、DIC社製エピクロンN−660、N−665、N−670、N−673、N−680、N−690、N−695、N−685−EXP、N−672−EXP、N−655−EXP−S、N−865、N−865−80M、YDCN−701、YDCN−702、YDCN−703、YDCN−704、YDCN−704Lなどが使用可能であり、セロキサイド2021、2083、2085、EHPE−3150、エピクロンN−660、N−665、N−670、N−673、N−680、N−690、N−695、YDCN−704L等が特に好ましいものである。
【0160】
【化19】

【0161】
前記式中、lは5〜100の整数であり、Rはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表す。
【0162】
本発明の組成物においては、2種以上の多官能エポキシ化合物を含有してもよい。
本発明に係る多官能エポキシ化合物の硬化性組成物中における含有量としては、顔料を除いた全固形分に対して、2〜20質量%が好ましく、3〜10質量%がより好ましい。該含有量が前記範囲内であると、膜の耐溶剤性に優れる。また、多すぎるとベーク後の黄着色により、カラーフィルタの品質が損なわれたり、少なすぎると耐NMP性に劣ってしまったりする問題が生じる。
【0163】
〈熱重合防止剤〉
本発明の着色感光性組成物には、さらに熱重合防止剤を加えておくことが好ましく、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−メルカプトベンゾイミダゾール等が有用である。
【0164】
本発明の着色感光性組成物は、既述の本発明の顔料分散組成物に、(D)重合性化合物、及び(E)光重合開始剤を(好ましくは、アルカリ可溶性樹脂及び溶剤と共に)含有させ、これに必要に応じて界面活性剤等の添加剤を混合することによって調製することができる。
【0165】
<カラーフィルタ及びその製造方法>
本発明のカラーフィルタの製造方法は、既述の本発明の着色感光性組成物を、直接若しくは他の層を介して基板上に付与して感光性膜を形成する感光性膜形成工程と、形成された感光性膜にパターン露光及び現像を順次行なうことにより着色パターンを形成する着色パターン形成工程と、を有することを特徴とするものであり、この製造方法により、本発明の着色硬化性組成物により形成された、顔料分散性、コントラストに優れ、明度が改良された着色パターンを有する本発明のカラーフィルタを得る。
【0166】
本発明のカラーフィルタは、既述の本発明の着色感光性組成物を用いて、ガラスなどの基板上に直接、或いは、下塗り層、密着向上層などの他の層を介して、着色された膜(着色パターン)を形成することにより作製されるものである。以下、本発明のカラーフィルタの製造方法について、一つの例を挙げて工程順に説明する。
(着色感光性組成物層の形成)
例えば、本発明の着色感光性組成物を、基板に直接又は他の層を介して付与して感光性組成物層を形成する。
感光性組成物の塗布は、常法により行うことができ、好ましくは、回転塗布、スリット塗布、流延塗布、ロール塗布等の塗布方法により塗布される。
基板上に付与(好ましくは塗布)された本発明の着色感光性組成物による膜の乾燥(プリベーク)は、ホットプレート、オーブン等を用いて50〜140℃の温度範囲で10〜300秒の条件にて行なうことができる。
【0167】
本発明の着色感光性組成物を基板上に付与して膜形成する場合、膜の乾燥厚みとしては、一般に0.3〜5.0μmであり、好ましくは0.5〜3.5μmであり、最も望ましくは1.0〜2.5μmである。
【0168】
(パターン露光)
次に、形成された感光性組成物層に、所定のマスクパターンを介するなどの方法でパターン露光する。このパターン露光により、露光領域が硬化する。
この際、露光に用いる放射線としては、特にg線、h線、i線、j線等の紫外線が好ましい。
(現像)
パターン露光後に未硬化部を現像液で現像除去することにより、着色パターン(例えば、着色画素)が形成される。後述するように、着色パターンは、各色(例えば3色あるいは4色)順次、形成され、3色或いは4色の着色画素を有するカラーフィルタが得られる。
現像では、露光後の未硬化部を現像液に溶出させ、硬化部のみを残存させる。現像温度としては、通常20〜30℃であり、現像時間としては20〜90秒である。
現像液としては、未硬化部における着色感光性組成物の膜を溶解する一方、硬化部を溶解しないものであれば、いずれのものも用いることができる。具体的には、種々の有機溶剤の組合せやアルカリ性の水溶液を用いることができる。
【0169】
前記有機溶剤としては、本発明の顔料分散組成物又は着色感光性組成物を調製する際に使用できる既述の溶剤として列挙したものが挙げられる。
【0170】
前記アルカリ性の水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硅酸ナトリウム、メタ硅酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−7−ウンデセン等のアルカリ性化合物を、濃度が0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜1質量%となるように溶解したアルカリ性水溶液が挙げられる。
なお、アルカリ性水溶液を現像液として使用した場合には、一般に現像後に水で洗浄(リンス)が行なわれる。
【0171】
現像後は、余剰の現像液を洗浄除去し、乾燥を施した後、一般に100〜250℃の温度で加熱処理(ポストベーク)が施される。
ポストベークは、硬化を完全なものとするための現像後の加熱であり、通常約200℃〜250℃の加熱(ハードベーク)を行なう。このポストベーク処理は、現像後の塗布膜を、上記条件になるようにホットプレートやコンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式あるいはバッチ式で行なうことができる。
【0172】
以上の操作を所望の色相数に合わせて、各色毎に順次繰り返し行なうことにより、複数色の着色された硬化膜が形成されてなるカラーフィルタを作製することができる。
上記工程により、最も好適にカラーフィルタを作製することができる。
本発明の着色感光性組成物を用いて、上記工程にて製造することにより、液晶表示素子や固体撮像素子に用いられるカラーフィルタを、プロセス上の困難性が少なく、高品質でかつ低コストに作製することができる。
【0173】
着色パターンを形成する基板としては、例えば、液晶表示装置等に用いられる無アルカリガラス、ソーダガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラス、及びこれらに透明導電膜を付着させたものや、固体撮像素子等に用いられる光電変換素子基板、例えばシリコン基板等、並びにプラスチック基板が挙げられる。これらの基板上には、通常、各画素を隔離するブラックストライプが形成されている。
【0174】
プラスチック基板には、その表面にガスバリヤー層及び耐溶剤性層から選択される少なくとも1層を有していることが好ましい。
基板上に他の層を介して着色感光性組成物を付与する場合の、他の層としては、ガスバリヤー層、耐溶剤性層、などが挙げられる。
【0175】
本発明のカラーフィルタは、本発明の着色硬化性組成物を用いて形成された着色パターンを備えるが、着色硬化性組成物は、含有する(A)顔料の分散性とコントラストが良好であり、かつ、明度が改良されているため、色相に優れた着色パターンを形成することができるために、液晶表示素子に好適に用いることができ、優れた色相を要求される液晶表示素子等に好適である。つまり、本発明のカラーフィルタは、液晶表示素子に適用されることが好ましい。
【0176】
<液晶表示素子>
本発明の液晶表示素子は、本発明のカラーフィルタを備えてなるものである。
より具体的には、カラーフィルタの内面側に配向膜を形成し、電極基板と対向させ、間隙部に液晶を満たして密封することにより、本発明の液晶表示素子であるパネルが得られる。
本発明の態様によれば、顔料の凝集に起因する色むらの発生が抑制され、コントラストが良好で、明度が改良された着色パターンを備える、色むらが少なく、コントラストが高いカラーフィルタを提供することができ、このカラーフィルタを用いることで、高品位の着色画素を備える液晶表示素子を提供することができる。
【0177】
<固体撮像素子>
本発明の固体撮像素子は、本発明のカラーフィルタを備えてなるものである。本発明によれば、色特性に優れた固体撮像素子を提供することができる。
固体撮像素子の構成としては、カラーフィルタを備え、固体撮像素子として機能する構成であれば、特に限定はなく、例えば以下のような構成が挙げられる。
支持体上に、CCDイメージセンサー(固体撮像素子)の受光エリアを構成する複数のフォトダイオード及びポリシリコン等からなる転送電極を有し、前記フォトダイオード及び前記転送電極上にフォトダイオードの受光部のみ開口したタングステン等からなる遮光膜を有し、遮光膜上に遮光膜全面及びフォトダイオード受光部を覆うように形成された窒化シリコン等からなるデバイス保護膜を有し、前記デバイス保護膜上にカラーフィルタを有する構成である。
さらに、前記デバイス保護層上であってカラーフィルタの下(支持体に近い側)に集光手段(例えばマイクロレンズ等。以下同様。)を有する構成や、カラーフィルタ上に集光手段を有する構成等であってもよい。
【実施例】
【0178】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」「部」は質量基準である。
(合成例1:(B)キノフタロン化合物(1)の合成)
キノフタロン顔料(4,5,6,7−テトラクロロ−2−[2−(4,5,6,7−テトラクロロ−2,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−1H−インデン−2−イル)−8−キノリニル]−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン)(ビー・エー・エス・エフ社製“パリオトール”イエローK0961HD)10gを攪拌しながら15℃の発煙硫酸(25%SO )130g中に投入した。3時間攪拌した後、氷250g上に加えた。30分間放置後、生じた懸濁液を濾過し、得られた生成物を50mlの水で水洗した。水330ml中へ前記生成物を投入し、pHが7になるまでアンモニア水溶液を添加することで、アンモニア水溶液で中和した。その後、塩化アンモニウム75gを添加して80℃で30分間攪拌し、析出した沈殿物を60℃で濾過した。得られたウェット結晶を水で洗浄した後、80℃で乾燥し、17gのキノフタロン誘導体スルホン化物のアンモニウム塩(1)を得た。
このキノフタロン誘導体スルホン化物のアンモニウム塩(1)を180℃で3時間熱処理し、アンモニウム塩が除去されたキノフタロン誘導体スルホン化物(2)〔本発明に係る(B)特定置換基を有するキノフタロン化合物(1):下記構造〕16g(収率94%)を得た。
【0179】
【化21】



【0180】
(合成例2:(B)キノフタロン化合物(2)の合成)
合成例1で得たキノフタロン誘導体スルホン化物(2)〔(B)キノフタロン化合物(1)〕10gにクロロホルム中、氷冷下で塩化オキサリル(和光純薬社製)2.2g、N,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬社製)1mLを添加して、50℃で2時間攪拌した。反応混合液を氷浴中で水150mLに加え、析出した結晶をろ過してスルホン酸クロリド化合物(3)〔本発明に係る(B)特定置換基を有するキノフタロン化合物(2):下記構造〕7.4gを得た。(収率72%)
【0181】
【化22】

【0182】
(合成例3:(B)キノフタロン化合物(3)の合成)
合成例2で得たキノフタロンスルホン酸クロリド化合物(3)〔本発明に係る(B)特定置換基を有するキノフタロン化合物(3)〕5.0gにクロロホルム中、氷冷下で6−クロロ−1−ヘキシルアミン(Rare Chemicals社製)0.9gを添加し、室温で2時間攪拌した。反応混合液を水150mLに加え、析出した結晶をろ過して水洗し、減圧下で乾燥してスルホアミドアルキルクロリド化合物(4)〔本発明に係る(B)特定置換基を有するキノフタロン化合物(3):下記構造〕4.3gを得た。(収率76%)
【0183】
【化23】

【0184】
(合成例4:(B)キノフタロン化合物(4)の合成)
合成例3で得たキノフタロンスルホアミドクロリド化合物(4)〔本発明に係る(B)特定置換基を有するキノフタロン化合物(3)〕4.3gに、水と無水亜硫酸ナトリウム(関東化学製)を過剰量加え、オートクレーブ中180℃で12時間加熱した。放冷後、結晶をろ過してスルホアミドアルキルスルホン酸化合物(5)〔本発明に係る(B)特定置換基を有するキノフタロン化合物(4)〕3.7gを得た。(収率82%)
【0185】
【化24】

【0186】
(合成例5:(B)キノフタロン化合物(5)の合成)
合成例4で得たキノフタロンスルホアミドアルキルスルホン酸化合物(5)〔本発明に係る(B)特定置換基を有するキノフタロン化合物(4)〕5.0gに、ジクロロメタン中、氷冷下でトリエチルアミン(和光純薬製)0.7gと4−クロロ−1−ブタノール(東京化成製)0.7gを添加し、室温で2時間攪拌した。反応混合液を水150mLに添加し、析出した結晶をろ過してクロロアルキルスルホネート化合物(6)〔本発明に係る(B)特定置換基を有するキノフタロン化合物(5)〕3.8gを得た。(収率69%)
【0187】
【化25】

【0188】
(合成例6:(B)キノフタロン化合物(6)の合成)
合成例5で得たキノフタロンクロロアルキルスルホネート化合物(6)〔本発明に係る(B)特定置換基を有するキノフタロン化合物(5)〕3.8gに、水と無水亜硫酸ナトリウム(関東化学製)を過剰量加え、オートクレーブ中180℃で12時間加熱した。放冷後、結晶をろ過して水洗し、減圧下乾燥してスルホン酸化合物(7)〔本発明に係る(B)特定置換基を有するキノフタロン化合物(6)〕3.2gを得た。(収率80%)
【0189】
【化26】

【0190】
(合成例7:オキシム化合物1の合成)
まず、下記のスキームで化合物Aを合成する。
エチルカルバゾール(100.0g、0.512mol)をクロロベンゼン260mlに溶解し、0℃に冷却後、塩化アルミニウム(70.3g、0.527mol)を加える。続いて、o−トリルクロリド(81.5g、0.527mol)を40分かけて滴下し、室温に昇温して3時間攪拌する。次に、0℃に冷却後、塩化アルミニウム(75.1g、0.563mol)を加える。4−クロロブチリルクロリド(79.4g、0.563mol)を40分かけて滴下し、室温に昇温して3時間攪拌する。35質量%塩酸水溶液156mlと蒸留水392mlとの混合溶液を0℃に冷却し、反応溶液を滴下する。析出した固体を吸引濾過後、蒸留水とメタノールで洗浄し、アセトニトリルで再結晶後、下記構造の化合物A(下記構造:収量164.4g、収率77%)を得た。
【0191】
【化27】

【0192】
次に、化合物Aを用いて下記のスキームで化合物Bを合成する。
化合物A(20.0g、47.9mmol)をテトラヒドロフラン(以下、THFと称する。)64mlに溶解し、4−クロロベンゼンチオール(7.27g、50.2mmol)とヨウ化ナトリウム(0.7g、4.79mmol)を加える。続いて反応液に水酸化ナトリウム(2.0g、50.2mmol)を加え、2時間還流する。次に、0℃に冷却後、ソジウムメチラート28%メタノール溶液(日本触媒(株)製:SM−28)(11.1g、57.4mmol)を20分かけて滴下し、室温に昇温して2時間攪拌する。次に、0℃に冷却後、亜硝酸イソペンチル(6.73g、57.4mmol)を20分かけて滴下し、室温に昇温して3時間攪拌する。反応液をアセトン120mlに希釈し、0℃に冷却した0.1N塩酸水溶液に滴下する。析出した固体を吸引濾過後、蒸留水で洗浄した。続いて、アセトニトリルで再結晶し、下記構造の化合物B(下記構造:収量17.0g、収率64%)を得た。
【0193】
【化28】

【0194】
続いて、化合物Bを用いて下記のスキームでオキシム化合物1を合成する。
化合物B(18.0g、32.4mmol)を90mlのN−メチルピロリドンに溶解し、トリエチルアミン(3.94g、38.9mmol)を加えた。次に、0℃に冷却後、アセチルクロライド(3.05g、38.9mmol)を20分かけて滴下後、室温に昇温して2時間攪拌する。反応液を0℃に冷却した蒸留水150mlに滴下し、析出した固体を吸引濾過後、0℃に冷却したイソプロピルアルコール200mlで洗浄し、乾燥後、下記構造のオキシム化合物1(収量19.5g、収率99%)を得た。
【0195】
【化29】

【0196】
得られたオキシム化合物1の構造はNMRにて同定した。
H−NMR 400MHz CDCl):8.86(s,1H),8.60(s,1H),8.31(d,1H,J=8.0Hz),8.81(d,1H,J=8.0Hz),7.51−7.24(m.10H),7.36(q,2H,7.4Hz),3.24−3.13(m,4H),2.36(s,3H),2.21(s,3H),1.50(t,3H,7.4Hz).
【0197】
(微細化顔料の調製例1:顔料(P−1)の作製)
ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料(DIC社製FASTGEN A110)100重量部、硫酸ナトリウム200部、ジエチレングリコール600部を双腕型ニーダーに仕込み5時間混練した。上記の混合物を水1000mlに投入して溶剤、無機塩を除去した後、オーブンにて乾燥させることで微細化顔料(P−1)を得た。得られた顔料の平均一次粒子径をTEMにて観察したところ、粒子径は23nmであった。
(微細化顔料の調製例2:顔料(P−2)の作製)
前記調製例1で用いたハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料をアゾ系ニッケル錯体顔料(ランクセス社製E4GN−GT)に変更した以外は、調製例1と同様にして、微細化顔料(P−2)を得た。得られた顔料の平均一次粒子径をTEMにて観察したところ、粒子径は20nmであった。
【0198】
(微細化顔料の調製例3:顔料(P−3)の作製)
前記調製例1で用いたハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を銅フタロシアニングリーン顔料C.I.ピグメントグリーン36(東洋インキ製造社製Rionol Green 6YK)に変更した以外は同様にして、微細化顔料(P−3)を得た。得られた顔料の平均一次粒子径をTEMにて観察したところ、粒子径は21nmであった。
(微細化顔料の調製例4:顔料(P−4)の作製)
前記調製例1で用いたハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料をイソインドリン系黄色顔料C.I.ピグメントイエロー139(ビー・エー・エス・エフ社製“パリオトール”イエローD1819)に変更した以外は調製例1と同様にして、微細化顔料(P−4)を得た。得られた顔料の平均一次粒子径をTEMにて観察したところ、粒子径は26nmであった。
【0199】
(実施例1)
顔料分散組成物(d−1)の調製
(A)顔料として上記調製例1で得られた顔料(P−1)9.2部、顔料(P−2)3.5部、(B)キノフタロン化合物として化合物(7)2.3部、及び、分散剤としてソルスパース24000GR(日本ルーブリゾール社製)9.0部、(C)溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAと記載することがある) 76部を混合した後、サンドグラインダーミルにて3時間分散することで顔料分散組成物(d−1)を得た。
得られた顔料分散組成物の粘度をE型粘度計にて測定した所、9.2mPa・sと非常に安定しており、良好な分散安定性が得られていることが確認された。
(実施例2〜18)
顔料分散組成物(d−2〜d−18)の調製
顔料分散組成物(d−1)の調製において用いた顔料とキノフタロン化合物を、下記表1〜表2に示す顔料及びキノフタロン化合物に変更した以外は顔料分散組成物(d−1)の調製例と同様にして顔料分散組成物(d−2〜d−25)を得た。また、それぞれの顔料分散組成物の粘度を実施例1と同様にして測定した結果を表1に表記する。
【0200】
(実施例19〜24)
顔料分散組成物(d−19〜d−24)の調製
顔料分散組成物(d−1)の調製において、顔料とキノフタロン化合物を、下記表1〜表2に示す顔料及びキノフタロン化合物に変更し、分散剤ソルスパース24000GRの添加量を7.2部、(C)溶剤PGMEAの添加量を77.8部に変更した以外は顔料分散組成物(d−1)の調製例と同様にして顔料分散組成物(d−19〜d−24)を得た。また、それぞれの顔料分散組成物の粘度を実施例1と同様にして測定した結果を表1に表記する。
(比較例1〜4)
顔料分散組成物(d−25〜d−28)の調製
顔料分散組成物(d−1)の調製において、顔料とキノフタロン化合物を、下記表1〜表2に示す顔料及びキノフタロン化合物に変更した以外は顔料分散組成物(d−1)の調製例と同様にして顔料分散組成物(d−25〜d−28)を得た。また、それぞれの顔料分散組成物の粘度を実施例1と同様にして測定した結果を表1に表記する。
(比較例5〜8)
顔料分散組成物(d−29〜d−32)の調製
顔料分散物(d−1)の調製において、顔料とキノフタロン化合物を、下記表1〜表2に示す顔料及びキノフタロン化合物に変更し、分散剤ソルスパース24000GRの添加量を7.2部、(D)溶剤PGMEAを77.8部に変更した以外は顔料分散組成物(d−1)の調製例と同様にして顔料分散組成物(d−29〜d−32)を得た。また、それぞれの顔料分散組成物の粘度を実施例1と同様にして測定した結果を表1に表記する。
【0201】
(比較例9)
顔料分散組成物(d−33)の調製
顔料分散組成物(d−13)の調製における顔料(P−4)を、微細化処理を施していないイソインドリン系黄色顔料C.I.ピグメントイエロー139(平均1次粒子径 48nm)に置き換えた以外は顔料分散組成物(d−1)の調製例と同様にして顔料分散組成物(d−33)を得た。得られた顔料分散組成物の粘度をE型粘度計にて測定した所、31.2mPa・sであった。
【0202】
【表1】

【0203】
【表2】

【0204】
表1〜表2から明らかなように、本発明の顔料分散組成物は、(A)顔料と(B)特定置換基を有するキノフタロン化合物との配合量のバランスが適切であり、顔料の種類に係わらず、いずれも粘度が低く分散性、分散安定性が良好であることが分かる。また、実施例17、18に示すように(B)キノフタロン化合物は本発明の範囲内の構造をもつ化合物であれば、同様に分散安定性が良好であることが分かる。これに対し、(A)顔料と(B)キノフタロン化合物との含有比率が本発明の範囲外である比較例1〜8及び顔料の平均一次粒子径が本発明の範囲外である比較例9の顔料分散組成物は、いずれも粘度が高く、分散安定性が不良であったことがわかる。
【0205】
(実施例25)
着色光硬化性組成物(R−1)の調製
下記組成に記載の成分を混合することで着色光硬化性組成物(R−1)を得た。
−組成−
・顔料分散組成物(d−1) 10.74部
・顔料分散組成物(d−5) 3.65部
・アルカリ可溶性樹脂
(Allyl−MA/MAA=80/20 Mw.30,000) 0.25部
・重合性化合物 アロニックスM−510(東亞合成社製) 1.33部
・重合開始剤 IRGACURE OXE01
(チバスペシャリティケミカルズ社製) 0.37部
・界面活性剤メガファックF−554(DIC社製) 0.01部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)8.65部
・3−エトキシプロピオン酸エチル(EEP) 5.00部
【0206】
(実施例26〜47、比較例10〜17)
着色光硬化性組成物(R−2〜R−32)の調製
着色光硬化性組成物(R−1)において用いた顔料分散物の種類を、下記表3〜表6に示す顔料分散物に変更した以外は、実施例25と同様にして着色光硬化性組成物(R−2〜R−32)を得た。なお、下記表3〜表6においては、配合する顔料分散組成物を「分散物1」及び「分散物2」と表記し、使用した顔料分散組成物の符号を記した。
【0207】
実施例25〜56で得た着色光硬化性組成物の評価を以下の基準で行った。結果を表3〜表6に示す。
(コントラスト及び明度の評価)
着色感光性組成物(カラーレジスト液)を、100mm×100mmのガラス基板(EAGLE2000、コーニング社製)上に、乾燥後の塗膜厚が2.0μmになるように塗布し、90℃のオーブンで100秒間乾燥させた(プリベーク)。
その後、60mJ/cm(照度20mW/cm)にてマスク露光し、露光後の塗膜をアルカリ現像液CDK−1(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)の1%水溶液(25℃)をシャワー状に60秒間散布した。その後、純水をシャワー状に散布して現像液を洗い流し、基板を230℃のオーブンで30分間加熱すること(ポストベーク)で、ガラス基板表面に着色感光性組成物により形成された着色層を有する測定用基板を作製した。
(明度:Y値)
得られた基板の色度をMCPD−2000(大塚電子社製)にて測定し、そのY値で明度を判断した。数値が大きいほど明度が高く良好であると判断する。
(コントラスト)
得られた基板を2枚の偏光板の間に挟み、2枚の偏向板の偏向軸が平行時の輝度と直交時の輝度とをトプコン(株)社製のBM−5Aを用いて測定し、平行時の輝度を直交時の輝度で除して得られる値(=平行時の輝度/直交時の輝度)を、コントラストを評価するための指標とした。
【0208】
【表3】

【0209】
【表4】

【0210】
【表5】

【0211】
【表6】

【0212】
表3〜6から明らかなように、本発明に係る顔料分散組成物を含有する着色感光性組成物による実施例25〜47は、いずれも明度、コントラストともに良好な着色硬化層(カラーフィルタの着色パターンに相当)が得られた。これに対し、比較例1〜8の顔料分散組成物を用いた着色感光性組成物(比較例10〜17)による着色硬化膜は、明度、コントラストともに不良であることがわかる。
【0213】
(実施例48〜59)
着色光硬化性組成物(R−32〜R−43)の調製
実施例36(R14)の着色光硬化性組成物において用いた顔料分散組成物、重合性化合物及び溶剤以外の成分を下表7に記載のように変更した以外は同様にして、着色光硬化性組成物(R−32〜R−43)を得た。この着色硬化性組成物を、実施例25と同様に評価した結果を下記表7に併記する。
【0214】
【表7】

【0215】
なお、表7に記載の各成分の詳細は以下に示すとおりである。
重合性化合物:アロニックスM−510
アルカリ可溶性樹脂:(Allyl−MA/MAA=80/20 Mw.30,000)
開始剤1:IRGACURE OXE01(チバスペシャリティケミカルズ社製)
開始剤2:IRGACURE OXE02(チバスペシャリティケミカルズ社製)
開始剤3:オキシム化合物(1)(合成例7で得たもの)
開始剤4:B−CIM、保土ヶ谷化学工業社製
開始剤5:下記構造の化合物(10)
開始剤6:N−フェニルメルカプトベンゾイミダゾール
添加剤1:アゾキシアニソール
添加剤2:アデカスタブAO−60
添加剤3:アデカスタブLA−52
添加剤4:EHPE−3150
界面活性剤:メガファックF−554
【0216】
【化30】


化合物(10)
【0217】
表7に示すように、本発明の着色感光性組成物(R−32〜R−43)は、重合開始剤や添加剤の異なる系においても、明度及びコントラストの良好な着色硬化膜を形成しうることから、カラーフィルタの着色パターンの形成に有用であることがわかる。
【0218】
(比較例18)
着色光硬化性組成物(R−44)の調製
着色光硬化性組成物(R−1)において用いた顔料分散物の種類を、上記表3記載の実施例29に示す顔料分散組成物(d−13)を比較例9で用いた顔料分散組成物(d−33)に変更した以外は、実施例29と同様にして着色光硬化性組成物(R−44)を得た。この着色硬化性組成物(R−44)を、実施例25と同様に評価した結果、基板の色度(x,y,Y)及びコントラストは以下の通りであった。
x:0.280、y:0.599、Y:56.0、コントラスト 11200
実施例48〜実施例59と比較例18との対比において、用いる顔料の平均一次粒子径が本発明の範囲外である比較例18の着色硬化膜はコントラストに劣ることがわかる。
【0219】
(実施例60)
〔カラーフィルタの作製〕
1.着色硬化性組成物層の形成
上記により得られた顔料を含有する着色硬化性組成物(R−3)をレジスト液として、550mm×650mmのブラックマトリックスを設けたガラス基板に下記条件でスリット塗布した後、真空乾燥(66Pa)とプレベーク(prebake)(90℃ 100秒)を施して着色硬化性組成物塗膜(着色硬化性組成物層)を形成した。
【0220】
(スリット塗布条件)
塗布ヘッド先端の開口部の間隙:100μm
塗布速度:150mm/秒
基板と塗布ヘッドとのクリヤランス:150μm
塗布厚(乾燥厚):2μm
塗布温度:23℃
【0221】
2.露光、現像
その後、着色硬化性組成物層をプロキシミティー露光機(日立ハイテクノロジー社製、LE5565A)を用いて、60mJ/cmでパターン状に露光した。露光後の着色硬化性組成物層の全面を、無機系現像液(商品名:CDK−1、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)の1.0%水溶液(25℃)をシャワー圧0.2MPaに設定して、60秒間現像し、純水で洗浄した。
【0222】
3.加熱処理
着色硬化性組成物層上に純水をシャワー状に噴射して現像液を洗い流し、次いで、230℃のオーブンにて30分間加熱した(ポストベーク)。このようにして基板上に緑色着色パターンを形成した。
【0223】
4.赤色、青色着色パターンの形成
この後、青色の着色硬化性組成物(CB−9500L;富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)で着色パターンを形成し、さらに赤色の着色硬化性組成物(CR−9500L;富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)で着色パターンを形成し、ITOを蒸着、光重合性組成物(CSP−3210L;富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を用いてスペーサーを形成し、基板上に緑色、赤色、および青色の着色パターン(画素)を有するカラーフィルタ(1)を得た。
【0224】
(比較例19)
実施例60においてレジストとして用いられた着色硬化性組成物(R−3)を比較例10で用いた着色硬化性組成物(R−11)に変更した以外は同様にして着色パターンを形成し、カラーフィルタ(2)を得た。
【0225】
5.性能評価
(色ムラ評価)
550mm×650mm基板において、図1に示す12箇所の点〔それぞれ座標(1)〜(12)と称する〕における緑色画素部の色度を測定し、そのy値の〔(最大値)−(最小値)〕= yrangeとして色ムラ評価の指標とした。なお、座標の位置は、下記表8に示すとおりである。
【0226】
【表8】

【0227】
ここで、実施例60で得られたカラーフィルタ(1)の色ムラを評価した所、yrange=0.002であり、均一な色特性をもったカラーフィルタであることが確認された。続いて、比較例19のカラーフィルタ(2)の色ムラを評価した所、yrange=0.010となり、色ムラのある不均一な膜であることが分かる。
【0228】
(コントラスト)
得られたカラーフィルタ(1)及びカラーフィルタ(2)を、それぞれ2枚の偏光板の間に挟み、2枚の偏向板の偏向軸が平行時の輝度と直交時の輝度とをトプコン(株)社製のBM−5Aを用いて測定し、平行時の輝度を直交時の輝度で除して得られる値(=平行時の輝度/直交時の輝度)を、コントラストを評価するための指標とした。実施例60で得られたカラーフィルタ(1)及び比較例19で得られたカラーフィルタ(2)を上記の方法にて評価したところ、コントラストはそれぞれ4500、3600であった。このことから、本発明のカラーフィルタ(1)はコントラストに優れていることが確認された。
【0229】
<液晶表示素子>
実施例60で得られたカラーフィルタ(1)を液晶表示素子に組み込んだところ、該液晶表示素子は、色特性、コントラストに優れることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)平均一次粒子径が10〜30nmの顔料、(B)水酸基、カルボン酸基、スルホン酸基、アミノ基及びそれらの塩から選択される基を少なくとも一つ有するキノフタロン化合物、及び、(C)溶剤を含有し、該(A)顔料と、該(B)キノフタロン化合物との含有比率〔(A):(B)〕が、質量基準で(A):(B)=85:15〜10:90の範囲にある顔料分散組成物。
【請求項2】
前記(A)顔料と、前記(B)キノフタロン化合物との含有比率〔(A):(B)〕が、質量基準で(A):(B)=82:18〜15:85の範囲にある請求項1記載の顔料分散組成物。
【請求項3】
前記(A)顔料と、前記(B)キノフタロン化合物との含有比率〔(A):(B)〕が、質量基準で(A):(B)=80:20〜20:80の範囲にある請求項1記載の顔料分散組成物。
【請求項4】
前記(A)顔料が、キノフタロン系顔料、イソインドリン系顔料、アゾ系金属錯体、金属フタロシアニングリーン顔料、ジケトピロロピロール系顔料、及び、アントラキノン系顔料からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の顔料分散組成物。
【請求項5】
前記(A)顔料が、銅フタロシアニン顔料、亜鉛フタロシアニン顔料、アゾ系ニッケル錯体顔料、及び、イソインドリン系顔料からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の顔料分散組成物。
【請求項6】
前記(A)顔料が、無機塩、及び、溶剤の存在下で混練処理された顔料である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の顔料分散組成物。
【請求項7】
前記(A)顔料が、無機塩、溶剤、及び、色素誘導体の存在下で混練処理された顔料である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の顔料分散組成物。
【請求項8】
前記色素誘導体が、前記(B)キノフタロン化合物である請求項7に記載の顔料分散組成物。
【請求項9】
前記(B)キノフタロン化合物が、下記の一般式(1)で表される化合物ある請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の顔料分散組成物。
【化1】


(前記一般式(1)中、X〜Xはそれぞれ独立に水素原子、塩素原子、又は臭素原子を表す。R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、−OC2n−Y、−SO2n−Y、−SONHC2n−Y、−CO2n−Y、−NHCOC2n−Y、又は、−N(C2n−Y)を表し、全てが水素原子であることはない。nは0〜20の整数を表し、Yは水素原子、−OH、−SOH、−COH、−CO[NH、−SO[NH、又は、−N(Rを表す。Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
【請求項10】
(D)重合性化合物、(E)光重合開始剤、及び、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の顔料分散組成物を含有する着色感光性組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の着色感光性組成物を、直接若しくは他の層を介して基板上に付与して感光性膜を形成する感光性膜形成工程と、形成された感光性膜にパターン露光及び現像を順次行なうことにより着色パターンを形成する着色パターン形成工程と、を有するカラーフィルタの製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載のカラーフィルタの製造方法によって得られた着色パターンを備えるカラーフィルタ。
【請求項13】
請求項12に記載のカラーフィルタを備えてなる表示装置。
【請求項14】
請求項12に記載のカラーフィルタを備えてなる固体撮像素子。

【図1】
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【公開番号】特開2011−122125(P2011−122125A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283374(P2009−283374)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】