説明

顔料分散組成物及びその製造方法

液状のエステルブレンド賦形剤に分散された顔料を含有する組成物であって、賦形剤中に分散された顔料の量が、従来の顔料分散体よりも十分に大きく、当該分散体は、化粧品への配合を容易にするよう流動性が向上しているものを開示する。前記エステルブレンドは、ヘキサカプリル酸ジペンタエリスリトール、ステアリン酸トリデシル、及びジカプリル酸ネオペンチルグリコールとブレンドされたトリメリット酸トリデシルを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、出願日が2005年6月3日である米国仮出願番号60/687235の利益を主張する。
【0002】
本発明は、液状賦形剤に分散した顔料を含む組成物に関する。より具体的に、本発明は、エステルブレンド中の顔料分散物であって、エステルブレンド中に分散した顔料の量が、従来の液状賦形剤中に分散した顔料の量よりも十分に多いものに関する。また、本発明の組成物は改善された流動性を発揮するので、前記顔料分散体の化粧品への配合が容易になる。
【背景技術】
【0003】
リップスティック、頬紅、皮膚用の着色スティックなど多数の化粧品は、所望の色を皮膚やくちびるに付けるために顔料を比較的多量にふくんでいる。このような化粧品の企画や製造における現行の課題は、化粧品全体での顔料の均一な分散を、コストや時間がかかるプロセスを経ずに行うことである。
【0004】
典型的には、リップスティックの製造で、まず顔料をひまし油等の賦形剤と事前混合した後、この混合物を、残りの組成物成分を含む溶解物に添加する。賦形剤への顔料の添加量は(a)顔料を湿潤し分散して安定な分散体を与える賦形剤の能力と、(b)顔料分散体の流動性(例えば顔料分散体には、残りの処方成分への投入、及びこれとの混合が可能になるよう十分な流動性が求められる)とによって制限される。多くの場合、賦形剤には比較的多量の顔料を湿潤し分散する能力があるが、流動性が乏しく、化粧品への顔料分散体の配合は難しく、費用がかかる。
【0005】
このため、当該技術分野では、簡便に化粧品に配合できるよう優れた流動性を保持しながらも高濃度の顔料を含む顔料分散体に対するニーズがある。
【発明の開示】
【0006】
本発明の態様は液状賦形剤中の顔料分散を最大化することである。本発明の別の態様は、簡易に化粧品に配合することができるよう流動性が優れた、顔料を高濃度で含む顔料分散体を提供することである。本発明の分散体組成物における高濃度の顔料、及び組成物が持つ優れた流動性は化粧品の製造コストを削減して、適用後に高レベルの光沢を賦与する処方を提供する。
【0007】
特に、本発明の顔料分散物は、ヒマシ油やトリメリット酸トリデシルなど現在使用されている賦形剤よりも、顔料分散物へのより高濃度の顔料の配合(すなわちより多量の仕込み)を可能にするエステルブレンドを含むものである。本発明のエステルブレンドは約1.5倍以下の高レベルの顔料が賦形剤に分散することを可能にする。さらに、得られた顔料分散体の流動性に関して顕著な改善が見られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
ひまし油はパーソナルケア産業、特にリップスティックで使用される顔料分散体の標準的な賦形剤である。しかしひまし油には、分散可能な顔料の量、及び得られた分散体の流動性に関して上述した欠点がある。
【0009】
本発明によれば、エステルの特定のブレンドが、顔料を分散するのに驚くほど優れた賦形剤であることが判明した。当該エステルブレンドは4種類のエステルを含有しており、当該ブレンドは4種類のエステルのいずれかや、4種類のエステルのうち2つ又は3つの組合せすべてと比較して優秀な賦形剤である。また、本発明のエステルブレンドはひまし油や、現在使用されている他の分散剤よりも優秀である。
【0010】
本発明で使用されるエステルブレンドは米国特許4659573号で開示されており、これを参照してここに取り込む。前記エステルは、トリメリット酸トリデシル(TDTM)を、ヘキサカプリル酸/ヘキサカプリン酸ジペンタエリスリトール(DPHC)、ステアリン酸トリデシル(TDS)、及びジカプリル酸/ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(NPGC)とブレンドしたものを含む。
【0011】
当該ブレンドでのTDTMの含量はエステルブレンドを基準にして約5〜約85重量%、好ましくは約5〜約60重量%、より好ましくは約8〜約50重量%、最も好ましくは約10〜約45重量%、例えば約12〜約40重量%である。エステルブレンドの残分は残りの3種類のエステルDPHC、TDS、及びNPGCそれぞれを、エステルブレンドを基準にして各々、約2〜約60重量%の量で含有する。好ましくは、各々エステルブレンドの重量基準で、DPHCは約20%〜約55%の量で存在し、TDSは約5%〜約20%の量で存在し、NPGCは約2%〜約15%の量で存在する。
【0012】
以下は本発明で有用なエステルブレンドの一例である。当該ブレンドは、個々のエステルをブレンドが均質になるまで単純に混合することで調製される。
【0013】
【表1】

例1のブレンドは粘度が約340S.S.Uである。
【0014】
上述したエステルブレンドは顔料を分散するのに使用され、(a)顔料の高レベルの仕込み、すなわち、ひまし油又はTDTM単独の場合で50〜60%(重量基準)と比較して最大70%(重量基準)の顔料、(b)化粧品に多量の顔料を容易に配合できる、粘度が低い分散体、及び(c)化粧品の高レベルの光沢、及び顔料の伸び、を提供する。
【0015】
このため本発明の組成物は顔料を約5重量%〜約70重量%と、前記エステルブレンドを約30重量%〜約95重量%とを含有する。好ましい形態では、本発明の組成物は、顔料を少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%含有する。
【0016】
本発明の組成物は、均質になるまで顔料とエステルブレンドを単純に混合することで調製される。得られた組成物は十分に低い粘度を持ち、化粧品への当該組成物の配合を速く、容易にする。
【0017】
ここで使用する用語「顔料」は、化粧品で通常使用される不溶粒子のすべてを指す。顔料は有機化合物、無機化合物、又はこれらの混合物であってよく、リップスティックで使用される赤など濃色系又は彩色系のものであってもよく、あるいは、顔面メーキャップ組成物で使用される二酸化チタン又はアース・カラー粒子など未着色であるか又は押さえた彩色のものであってもよい。
【0018】
パーソナルケア分野で一般に使用される顔料及び染料としては限定されないが、以下のものが含まれる。D&CブルーNo.4,D&CブラウンNo.1,D&CグリーンNo.5,D&CグリーンNo.6,D&CグリーンNo.8,D&CオレンジNo.4,D&CオレンジNo.5,D&CオレンジNo.10,D&CオレンジNo.11,D&CオレンジNo.17,D&CレッドNo.6,D&CレッドNo.7,D&CレッドNo.8,D&CレッドNo.9,D&CレッドNo.17,D&CレッドNo.19,D&CレッドNo.21,D&CレッドNo.22,D&CレッドNo.27,D&CレッドNo.28,D&CレッドNo.30,D&CレッドNo.31,D&CレッドNo.33,D&CレッドNo.34,D&CレッドNo.36,D&CバイオレットNo.2,D&CイエローNo.7,D&CイエローNo.8,D&CイエローNo.10,D&CイエローNo.11,Ext.D&CバイオレットNo.2,Ext.D&CイエローNo.7,FD&CブルーNo.1,FD&CグリーンNo.3,FD&CレッドNo.3,FD&CレッドNo.4,FD&CレッドNo.40,FD&CイエローNo.5,FD&CイエローNo.6;
カルミン,D&CブルーNo.1アルミニウム・レーキ,D&CグリーンNo.3アルミニウム・レーキ,D&CオレンジNo.4アルミニウム・レーキ,D&CオレンジNo.5アルミニウム・レーキ,D&CオレンジNo.5ジルコニウム・レーキ,D&CオレンジNo.10アルミニウム・レーキ,D&CオレンジNo.17レーキ,D&CレッドNo.3アルミニウム・レーキ,D&CレッドNo.4アルミニウム・レーキ,D&CレッドNo.6アルミニウム・レーキ,D&CレッドNo.6バリウム・レーキ,D&CレッドNo.6バリウム/ストロンチウム・レーキ,D&CレッドNo.6カリウム・レーキ,D&CレッドNo.6ストロンチウム・レーキ,D&CレッドNo.7アルミニウム・レーキ,D&CレッドNo.7バリウム・レーキ,D&CレッドNo.7カルシウム・レーキ,D&CレッドNo.7カルシウム/ストロンチウム・レーキ,D&CレッドNo.7ジルコニウム・レーキ,D&CレッドNo.8ナトリウム・レーキ,D&CレッドNo.9アルミニウム・レーキ,D&CレッドNo.9バリウム・レーキ,D&CレッドNo.9バリウム/ストロンチウム・レーキ,D&CレッドNo.9ジルコニウム・レーキ,D&CレッドNo.19アルミニウム・レーキ,D&CレッドNo.19バリウム・レーキ,D&CレッドNo.19ジルコニウム・レーキ,D&CレッドNo.21アルミニウム・レーキ,D&CレッドNo.21ジルコニウム・レーキ,D&CレッドNo.27アルミニウム・レーキ,D&CレッドNo.27バリウム・レーキ,D&CレッドNo.27カルシウム・レーキ,D&CレッドNo.27ジルコニウム・レーキ,D&CレッドNo.30・レーキ,D&CレッドNo.31カルシウム・レーキ,D&CレッドNo.33アルミニウム・レーキ,D&CレッドNo.34カルシウム・レーキ,D&CレッドNo.36・レーキ,D&CレッドNo.40アルミニウム・レーキ,D&CイエローNo.5アルミニウム・レーキ,D&CイエローNo.5ジルコニウム・レーキ,D&CイエローNo.6アルミニウム・レーキ,D&CイエローNo.7ジルコニウム・レーキ,D&CイエローNo.10アルミニウム・レーキ,Ext.D&CイエローNo.7アルミニウム・レーキ,FD&CブルーNo.1アルミニウム・レーキ,FD&CレッドNo.3アルミニウム・レーキ,FD&CレッドNo.4アルミニウム・レーキ,FD&CイエローNo.5アルミニウム・レーキ,FD&CイエローNo.6;
アルミニウム・レーキ,アルミニウム粉末,アナトー,ベータ−カロチン,クエン酸ビスマス,オキシ塩化ビスマス,ブロンズ粉,カラメル,銅クロロフィリン錯体,水酸化クロム・グリーン,水酸化クロム・グリーン類,銅粉末,EDTA二ナトリウム−銅,アンモニウム鉄フェロシアン塩,グアイアズレン,グアニン,ヘナ,酸化鉄,酢酸鉛,マンガンバイオレット,マイカ,銀,二酸化チタン,群青,ウルトラマリン・グリーン,ウルトラマリン・ピンク,ウルトラマリン・レッド,ウルトラマリン・バイオレット、及び酸化亜鉛。
【0019】
本発明の化粧品で使用され、本発明のエステルブレンド中に分散できる染料の好ましい例としては限定されないが、鉄黄、弁柄、黒色酸化鉄、二酸化チタン等の無機顔料や、D&Cレッド♯6レーキ、D&Cレッド♯7レーキ、FD&Cイエロー♯5レーキ、D&Cレッド♯27レーキ、D&Cレッド♯21、及びD&Cレッド♯9等の有機顔料が含まれる。
【0020】
顔料破砕評価
エステル及びブレンド
(a)ジカプリル酸/ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(NPGC)
(b)ステアリン酸トリデシル(TDS)
(c)トリメリット酸トリデシル(TDTM)
(d)ヘキサカプリル酸/ヘキサカプリン酸ジペンタエリスリトール(DPC)
(e)テトラカプリル酸/テトラカプリン酸ペンタエリスリトール(PE−810)
(f)ひまし油(CO)
(g)以下の4種類のエステル(重量%)を含むブレンド:
NPGC−3%
TDS−9%
TDTM−40%
DPC−47%
顔料/染料−添加量
エステル及びエステルブレンド(w/w)基準
レッド6(有機)−60%
イエロー5(有機)−37.5%
二酸化チタン(無機)−70%
酸化鉄(無機)−70%
すべての顔料を3段ロールミルで破砕し、得られた破砕物を湿潤及び流動特性について評価した。
【0021】
ブレンド(g)に含まれる各エステルを単独で評価し(すなわち(a)−(d))、また、エステル(a)−(d)の2種類及び3種類のブレンドのすべての組合せも評価した。PE−810及びCOは単独のみで評価した。
【0022】
ブレンド(g)を使用して調製した顔料破砕物は湿潤性が良好であり、その結果、他の被験賦形剤よりも良好な流動性を示した。エステル(f)及びブレンド(g)はイエロー5を湿潤する点で同等であった。TDS、TDTM、DPC及びPE−810は満足できるほどは二酸化チタンを湿潤しなかったので、破砕物というより粉末であった。ブレンド(g)によって証明された優秀な流動性は良好な湿潤性を示唆しており、その破砕物を、製剤に配合するのを容易にする。さらに、良好な湿潤性は通常、破砕物の高光沢につながる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料を約5重量%〜約70重量%と、TDTM、TDS、DPHC、及びNPGCを含むエステルブレンドを約30重量%〜約95重量%とを含む組成物。
【請求項2】
前記顔料を少なくとも約50重量%含む請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記顔料を少なくとも約60重量%含む請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記エステルブレンドは、TDTMを約5〜約85重量%、TDSを約2〜約60重量%、NPGCを約2〜約60重量%、DPHCを約2〜約60重量%含む請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記エステルブレンドは、当該ブレンドを基準にして、TDTMを約10〜約45重量%、TDSを約5〜約20重量%、NPGCを約2〜約15重量%、DPHCを約20〜約55重量%含む請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記顔料は濃色系顔料である請求項1記載の組成物。
【請求項7】
前記顔料は未着色であるか又は押さえた彩色のものである請求項1記載の組成物。
【請求項8】
前記顔料は有機化合物、無機化合物、又はそれらの混合物である請求項1記載の組成物。
【請求項9】
前記顔料は、鉄黄、弁柄、黒色酸化鉄、二酸化チタン、D&Cレッド♯6レーキ、D&Cレッド♯7レーキ、FD&Cイエロー♯5レーキ、D&Cレッド♯27レーキ、D&Cレッド♯21、D&Cレッド♯9、及びこれらの混合物からなる群より選択される請求項8記載の組成物。
【請求項10】
顔料60〜70重量部を、TDTM、TDS、DPHC、及びNPGCを含むエステルブレンド30〜40重量部と混合することを含む、安定な濃縮顔料分散体の形成方法。
【請求項11】
前記エステルブレンドは、TDTMを約5〜約85重量%、TDSを約2〜約60重量%、NPGCを約2〜約60重量%、DPHCを約2〜約60重量%含む請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記エステルブレンドは、当該ブレンドを基準にして、TDTMを約10〜約45重量%、TDSを約5〜約20重量%、NPGCを約2〜約15重量%、DPHCを約20〜約55重量%含む請求項10記載の方法。
【請求項13】
請求項1記載の組成物を含む化粧品。
【請求項14】
リップスティック、顔面メーキャップ、及び着色スティックからなる群より選択される請求項13記載の化粧品。

【公表番号】特表2008−542498(P2008−542498A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514681(P2008−514681)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2006/019400
【国際公開番号】WO2007/011449
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(503440071)リポ ケミカルズ インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】