説明

顔料配向制御媒体の製造方法及び顔料配向制御媒体

【課題】 製造ラインによる製造が可能な顔料配向制御媒体及び顔料配向制御媒体の製造方法を提供する。
【解決手段】 塗料12内で磁場により配向した顔料14(14a〜14f)がほぼ直立したときに微粒子13(13a〜13h)間の隙間に挟まれ、顔料配向制御媒体10を磁場から外しても顔料14(14a〜14f)の直立状態がある一定時間保持される。この一定時間内に磁場外で塗料12を固化させるための工程を導入することができるので、製造ラインによる顔配向制御媒体10の製造が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料配向制御媒体の製造方法及び顔料配向制御媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材上にパール顔料含有紫外線硬化樹脂を塗布した媒体を電磁石のヨーク間に配置し、電磁石に通電することによりそのパール顔料に磁場を印加して配向させ所定のパターンを有する媒体を製造する場合、紫外線硬化樹脂内でパール顔料が動きやすくなるように顔料を添加させることが行われていた(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平7−265786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来技術では、顔料が動きやすくなるように紫外線硬化樹脂として低い粘度(500mPa・s以下)のものが使用されていたため、磁場から媒体を外すと紫外線を照射する前に顔料が動いてしまうので、製造ラインによる製造を行うのが困難であった。
そこで、本発明の目的は製造ラインによる製造が容易な顔料配向制御媒体の製造方法及び顔料配向制御媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、基材上に、樹脂と、磁気異方性を有する顔料と、微粒子とを含有させた塗料を塗工して塗工層を形成し、該塗工層に磁場を印加して前記顔料を配向させ、前記塗料を硬化させることを特徴とする。
【0005】
請求項1記載の発明によれば、磁場によりほぼ垂直方向に配向した顔料が微粒子の隙間に入り込み、顔料配向制御媒体を磁場から外してもある一定時間はそのままの状態が保持される。この一定時間内に磁場外で塗料を固化させるための工程を導入することができるので、製造ラインによる顔料配向制御媒体の製造が容易となる。
【0006】
請求項2記載の発明は、基材上に、樹脂と、磁気異方性を有する顔料と、微粒子とを含有させた塗料を塗工して塗工層を形成し、該塗工層に磁場を印加して前記顔料を配向させ、前記基材を磁場環境から外した後0.1秒から30秒の間に前記塗料を硬化させることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明によれば、磁場によりほぼ垂直方向に配向した顔料が微粒子の隙間に入り込み、顔料配向制御媒体を磁場から外しても後0.1秒から30秒の間はそのままの状態が保持される。この時間内に磁場外で塗料を固化させるための工程を導入することができるので、製造ラインによる顔料配向制御媒体の製造が容易となる。
【0008】
請求項3記載の発明は、基材と、該基材上に設けられた顔料含有層とを備え、該顔料含有層が、微粒子と、磁場により配向された磁気異方性とを有する顔料とを含有した樹脂層を硬化させてなることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明によれば、磁場により顔料がほぼ垂直方向に配向すると微粒子の隙間にその顔料が入り込み、顔料配向制御媒体を磁場から外してもある一定時間はそのままの状態が保持される。この一定時間内に磁場外で塗料を固化させるための工程を導入することができるので、製造ラインによる顔料配向制御媒体の製造が容易となる。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記樹脂が無溶媒系の樹脂を用いて、かつ硬化前の粘度が500mPa・s以下であることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明によれば、溶媒を用いると、溶媒が蒸発する時に塗料の体積が減るため、直立した顔料が倒れてしまう場合がある。これを防止するために無溶媒系の樹脂を用いることが好ましい。硬化前の粘度が500mPa・s以下であることにより、顔料が動きやすくなる。このため、顔料が垂直方向に配向した場合に微粒子の隙間に入り込みやすくなると共に配向状態が保持されやすくなり、塗料を効率的に硬化させることができる。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項3または4記載の発明において、前記顔料が前記微粒子により支えられていることで前記顔料の配向が維持されていることを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明によれば、顔料が微粒子により支えられていることで顔料の配向が維持されているので、顔料配向制御媒体を磁場から外しても顔料の直立状態がある一定時間保持される。この一定時間内に磁場外で塗料を固化させるための工程を導入することができるので、製造ラインによる顔配向制御媒体の製造が容易となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、磁場によりほぼ垂直方向に配向した顔料が微粒子の隙間に入り込み、顔料配向制御媒体を磁場から外してもある一定時間はそのままの状態が保持される。この一定時間内に磁場外で塗料を固化させるための工程を導入することができるので、製造ラインによる顔料配向制御媒体の製造が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
〔概 要〕
強磁場環境下では磁気異方性を有する材料であれば、常磁性体や反磁性体でも配向が可能となる。さらに配向させやすい条件の一つとして、塗料の粘度が挙げられる。500mPa・s以下の低粘度であれば、配向が容易となるが、磁場環境から顔料配向制御媒体を外すと配向状態が崩れてしまう(配向状態を保持できない。)。これとは逆に、塗料を高粘度にしてしまうと配向そのものが困難になってしまう(時間がかかる。)この点を解消するため、500mPa・s以下の低粘度の塗料にガラスビーズ等の微粒子を添加することによって、強磁場環境下から顔料配向制御媒体を外してもある一定時間は元の状態を保持することが可能となり、製造ラインによる製造が容易となる。
【0016】
本実施形態の顔料配向制御媒体の製造方法は、基材上に、樹脂と、磁気異方性を有する顔料と、微粒子とを含有させた塗料を塗工して塗工層を形成し、塗工層に磁場を印加して顔料を配向させ、塗料を硬化させることを特徴とする。
【0017】
本実施形態の顔料配向制御媒体は、基材上に、樹脂と、磁気異方性を有する顔料と、微粒子とを含有させた塗料を塗工して塗工層を形成し、塗工層に磁場を印加して顔料を配向させ、基材を磁場環境から外した後0.1秒から30秒の間に塗料を硬化させることを特徴とする。
【0018】
本実施形態の顔料配向制御媒体は、基材と、基材上に設けられた顔料含有層とを備え、顔料含有層が、微粒子と、磁場により配向された磁気異方性を有する顔料とを含有した樹脂層を硬化させてなることを特徴とする。
【0019】
本実施形態の顔料配向制御媒体は、上記構成に加え、樹脂の硬化前の粘度が500mPa・s以下であるのが好ましく、顔料が微粒子により支えられていることで顔料の配向が維持されているのが好ましい。
【0020】
本実施形態によれば、磁場により顔料の配向が変化し、顔料の配向が垂直方向のときには微粒子間に挟まれる。顔料配向制御媒体を磁場から外してもその状態が一定時間保持される。この一定時間内に塗料を固化させるための工程を導入することができるので、製造ラインによる顔料配向制御媒体の製造が容易となる。
【実施例1】
【0021】
図1は本発明の顔料配向制御媒体の製造方法を適用した顔料配向制御媒体の一実施例の概念図である。
同図に示す顔料配向制御媒体(以下「媒体」という。)10は、基材(例えば、紙、樹脂、セラミック等磁力線が透過できれば限定されない。)11と、基材11上に塗工された塗料としての紫外線硬化樹脂層(以下「樹脂層」という。)12と、樹脂層12内に添加された微粒子としてのガラスビーズ(直径10μm)13と、樹脂層12内でガラスビーズ13間の隙間にほぼ直立できるように添加された磁気異方性を有する顔料14とを備えたものである。
【0022】
本実施例ではガラスビーズの比重は顔料の比重より大きい場合を示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、ガラスビーズの比重が顔料の比重より小さくても等しくてもよい。
樹脂層12の粘度は500mPa・s以下である。
顔料としては、磁場の影響により配向するものであれば特に限定されない。
【0023】
同図に示す媒体10は、樹脂層12内で磁場により配向した顔料14がほぼ直立したときにガラスビーズ13間の隙間に挟まれ、媒体10を磁場から外しても顔料14の直立状態がある一定時間保持され、磁場外での媒体10への紫外線照射が可能となるので、製造ラインによる製造が容易となる。
【実施例2】
【0024】
図2(a)〜(d)は本発明の顔料配向制御媒体の製造方法に係る一実施例を示す説明図である。
媒体10は、磁場(0.3T以上)を発生させるための電磁石のヨーク(図示せず)間に、基板11が下向きになるように水平に配置される。紫外線硬化樹脂12の粘度が500mPa・s以下であり、ガラスビーズ13の比重が顔料の比重より大きい場合、時間の経過と共に、ガラスビーズ13の上に顔料14が折り重なるように樹脂層12内に沈む(図2(a))。
【0025】
電磁石に通電することによりヨーク間に磁力線が形成される。ヨーク間には多数の磁力線が発生するが、これらの磁力線群うちの4本の磁力線L1〜L4が媒体10を交差するように(図の縦方向に)透過すると各顔料14が磁力線の方向(矢印方向)に配向する(図2(b))。
【0026】
樹脂層12の粘度が500mPa・s以下の低粘度であるため、各顔料14が動きやすい状態となり、磁力線L1〜L4の方向に沿って各顔料14がそれぞれ即座に水平方向(横配向)から垂直方向に一斉に配向(縦配向)する。各顔料14は垂直方向に配向することにより、ガラスビーズ13の隙間に突き刺さるような状態となる(図2(c))。
【0027】
電磁石への通電を停止すると、ヨーク間の磁力線が消滅し、磁力線L1〜L4も消滅する。磁力線L1〜L4が消滅すると各顔料14は、重力の影響により不安定な垂直方向の配向から安定な水平方向の配向に戻ろうとする。
しかしながら、垂直方向に配向した各顔料14はガラスビーズ13間に挟まれる。
【0028】
すなわち、これら各顔料14は、各ガラスビーズ13の間に挟まれてある一定時間(例えば、約0.1〜30秒)保持される。
【0029】
このため、磁力線L1〜L4によって配向した媒体10を磁力線L1〜L4から外しても、ある一定時間だけ状態が保存されるので、樹脂層12に紫外線を照射して硬化させる工程を設けることができる。
従って、製造ラインによる製造が容易となる。
【実施例3】
【0030】
図3(a)〜(c)は本発明の顔料配向制御媒体の製造方法に係る他の実施例を示す説明図である。
図2(a)〜(d)に示した実施例との相違点は、顔料配向制御媒体に磁場を印加しながら顔料及び微粒子を沈降させる点である。
基板11が水平になるように配置された媒体10(図1参照)に磁力線が交差するように(図の縦方向)磁場(0.3T以上)を印加すると各顔料14は磁力線に沿って、すなわち縦方向に配向する(図3(a))。
【0031】
微粒子13の比重が顔料14の比重より大きく、かつ樹脂層12が500mPa・s以下の低粘度であるため、微粒子13が顔料14より先に基板11に向かって沈降する(図3(b))。
【0032】
微粒子13が基板11上に到着した後、顔料14が到着するが、顔料14は垂直方向に配向しているので、微粒子13の間の隙間に差し込むように沈降する。この状態で磁場を媒体10から外す(もしくは媒体10を磁場から外す)か電磁石の電源を切っても顔料14は微粒子13の間の隙間に差し込まれているので、顔料14が微粒子13により支えられていることで顔料14の配向が維持されている。このため、、ある一定時間(約0.1秒〜30秒)だけ状態が保存されるので、樹脂層12に紫外線を照射して硬化させる工程を設けることができる。
従って、製造ラインによる製造が容易となる。
【実施例4】
【0033】
図4(a)〜(c)は本発明の顔料配向制御媒体の製造方法に係る他の実施例を示す説明図である。
図3(a)〜(d)に示した実施例との相違点は、微粒子の比重より顔料の比重が大きい点である。
基板11が水平になるように配置された媒体10(図1参照)に磁力線が交差するように(図の縦方向)磁場(0.3T以上)を印加すると各顔料14は磁力線に沿って、すなわち縦方向に配向する(図4(a))。
【0034】
顔料14の比重が微粒子13の比重より大きく、かつ樹脂層12が500mPa・s以下の低粘度であるため、顔料14が微粒子13より先に基板11に向かって沈降する(図4(b))。
【0035】
顔料14が基板11上に到着した後、微粒子13が到着するが、顔料14は垂直方向に配向しているので、微粒子13は顔料14の間の隙間に差し込むように沈降する。この状態で磁場を媒体10から外す(もしくは媒体10を磁場から外す)か電磁石の電源を切っても顔料14は微粒子13の間の隙間に差し込まれているので、顔料14が微粒子13により支えられていることで顔料14の配向が維持されている。このため、、ある一定時間(約0.1秒〜30秒)だけ状態が保存されるので、樹脂層12に紫外線を照射して硬化させる工程を設けることができる。
従って、製造ラインによる製造が容易となる。
【実施例5】
【0036】
PETシート上にワイヤーバー#34で塗工し、ぬれた状態のまま強磁場(例えば5T)環境下に5分間さらし、顔料を縦配向させた(水平磁場)。
その後装置内でUV照射を行い固定化させたもの ……A
装置から取り出し、1分間放置し固定させたもの ……B
ワイヤーバー塗工した後、すぐに固定化(ブランク) ……C
上記、A、B、Cにおける顔料の配向状態を観察した。
【0037】
以下に示した材料を用いて媒体10を形成し評価した。
UV樹脂 UV フレキソ ニス(TOKA) 10重量部
顔料 Iriodin524(Merck) 1重量部
微粒子 ガラスビーズEMB−10(Potters-Ballotini) 1重量部
【実施例6】
【0038】
PETシート上にワイヤーバー#34で塗工し、ぬれた状態のまま強磁場(例えば5T)環境下に5分間さらし、顔料を縦配向させた(水平磁場)。
その後装置内でUV照射を行い固定化させたもの ……A
装置から取り出し、1分間放置し固定させたもの ……B
ワイヤーバー塗工した後、すぐに固定化(ブランク) ……C
上記、A、B、Cにおける顔料の配向状態を観察した。
【0039】
以下に示した材料を用いて媒体10を形成し評価した。
UV樹脂 UV フレキソ ニス(TOKA) 10重量部
顔料 Iriodin524(Merck) 1重量部
【0040】
実施例5、6についての結果を表1に示す。
【表1】

褐色 …顔料が縦配向している状態(強磁場によって顔料が強制的に配向している状態)
金属光沢(赤) …顔料が横配向している状態(強磁場の影響が無く、重力の影響で通常なり得る配向状態)
【0041】
このように低粘度塗料に微粒子を添加することによって、磁場環境下で配向させた状態を環境外に出した場合でも、ある一定時間保持し続けることが可能となる。この一定時間内に磁場外で塗料を固化させるための工程を導入することができるので、製造ラインによる顔料配向制御媒体の製造が容易となる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、塗膜面に周囲と異なる色調の形成を行うことに利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の顔料配向制御媒体の製造方法を適用した顔料配向制御媒体の一実施例の概念図である。
【図2】(a)〜(d)は本発明の顔料配向制御媒体の製造方法に係る一実施例を示す説明図である。
【図3】(a)〜(c)は本発明の顔料配向制御媒体の製造方法に係る他の実施例を示す説明図である。
【図4】(a)〜(c)は本発明の顔料配向制御媒体の製造方法に係る他の実施例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0044】
10 顔料配向制御媒体
11 基材
12 塗料(紫外線硬化樹脂層、樹脂層)
13 微粒子(ガラスビーズ)
14 顔料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、樹脂と、磁気異方性を有する顔料と、微粒子とを含有させた塗料を塗工して塗工層を形成し、該塗工層に磁場を印加して前記顔料を配向させ、前記塗料を硬化させることを特徴とする顔料配向制御媒体の製造方法。
【請求項2】
基材上に、樹脂と、磁気異方性を有する顔料と、微粒子とを含有させた塗料を塗工して塗工層を形成し、該塗工層に磁場を印加して前記顔料を配向させ、前記基材を磁場環境から外した後0.1秒から30秒の間に前記塗料を硬化させることを特徴とする顔料配向制御媒体の製造方法。
【請求項3】
基材と、該基材上に設けられた顔料含有層とを備え、該顔料含有層が、微粒子と、磁場により配向された磁気異方性を有する顔料とを含有した樹脂層を硬化させてなることを特徴とする顔料配向制御媒体。
【請求項4】
前記樹脂が無溶媒系の樹脂を用いて、かつ硬化前の粘度が500mPa・s以下であることを特徴とする請求項3記載の顔料配向制御媒体。
【請求項5】
前記顔料が前記微粒子により支えられていることで前記顔料の配向が維持されていることを特徴とする請求項3または4記載の顔料配向制御媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−29897(P2007−29897A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−219229(P2005−219229)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000162113)共同印刷株式会社 (488)
【Fターム(参考)】