説明

顕微鏡用環境室

本発明は、特に化学的及び/又は生物学的試料に適した環境室に関する。前記室は、ハウジング(24)で形成された環境区画(26)を備える。顕微鏡のような分析装置(28)の少なくとも一部が環境区画(26)の内部に配置されている。更に、ハウジング(24)は調整媒体流(42)を供給するための入口(38)を備える。結露に敏感な部品(30,32,34)に結露が生じるのを防ぐため、媒体流(42)の少なくとも一部は、分析装置(28)及び/又は試料担体(36)上に流れるように配向される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学的及び/又は生物学的試料に特に適した環境室に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞のような化学的及び/又は生物学的試料の場合、例えば、細胞の成長や他の反応を分析するためには、長時間決められた環境に試料をさらす必要がある。環境に関して、特に、試料が置かれる環境区画の温度と湿度は非常に重要である。更に、CO2 等の量のようなガス成分が関連していてもよい。
【0003】
特開2003−107364号公報により、試料担体が配置されている環境室が公知である。画定された環境区画が試料担体のみを囲み、顕微鏡のような分析装置によって試料が分析又は観察できるようにする透明な蓋を備えている。そのような環境室の構成は、試料に対して比較的大きく離して分析装置を配置しなければならないという欠点を有する。更に、屈折などが光信号を誤って伝える可能性がある透明の蓋を通して試料を観察することになる。
【特許文献1】特開2003−107364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、試料を分析するためにより良い可能性をもたらす環境室を提供することにある。
【0005】
本発明によれば、この目的は、請求項1の特徴によって達成される。
【0006】
本発明によれば、環境室の、ハウジングによって画定される環境区画は、顕微鏡等の分析装置を少なくとも部分的に囲んでいる。したがって、特に分析装置に必須の部品、例えば顕微鏡の光学及び送光手段は、環境区画の内部に配置されている。特に、それ故、外部壁又は蓋が測定結果を歪曲する可能性がある、試料と分析装置との間に配置されるその外部壁も蓋も必要がなく、分析する試料のごく近くの位置に、光学手段又は分析装置の他の任意の部分を誘導することができる。
【0007】
更に、本発明に係る環境室は、調整媒体流が環境室に導入される入側開口を備える。詳細には、例えば、湿度や温度が定められた空気が導入される。必要ならば、CO2 のような空気が含有するガスが調整される。媒体流は、環境区画の湿度を増加させるために比較的高い湿度を有することがあるため、試料担体や特に分析装置の部分のような冷えた部品に結露の虞がある。そのような部品への結露は、分析結果の顕著な誤認につながるため、本発明は、分析装置及び/又は試料担体に向かって媒体流の少なくとも一部が流れるように媒体流を環境区画に導入する。前記角度は顕微鏡の設計によって決まる、好ましくは、試料担体と分析装置の不可欠な部品との両方に向かって前記流は流される。よって、この領域への結露は避けられる。
【0008】
好ましくは、環境室は、分析装置及び/又は試料担体の相当する部分に媒体流を配向するための配向手段を備える。配向手段は、ハウジングの側壁であってよく、側壁は入側開口を備え、流れを配向する部分に対して特定の角度で配置されている。好ましくは、試料担体に対する、好ましくは試料担体の下側に対する接近流角度は30度乃至60度であり、好ましくは40度乃至50度である。試料担体が環境区画内で水平に配置されている場合、試料担体は好適にはミクロ滴定板であって、流れは下から試料担体に接近する。好ましくは、配向手段は、移動及び/又は調節するようになしてある。これは、別の配向手段を設けることで実現できる。環境区画に媒体流を供給するフレキシブル供給ラインの位置を入側開口に対して変えることが更に可能であり、よって、接近流角度を調節することができる。更に、流れガイド要素又は板等が設けられてもよい。
【0009】
好ましくは、媒体流は、対応する部品、即ち、特に、分析装置の光学手段及び試料担体に向かって、媒体流の50%乃至70%が流れるように配向される。これは、レンズや試料担体の送光手段等の結露に敏感な部品が加熱され、従って湿度の結露を避けられ、加えて、環境区画が均一に加熱されるのに有利である。
【0010】
更に、温度センサは、好ましくは試料担体の近傍に配置される。対応する制御手段によって、試料担体近傍の温度は非常に正確に調整される。更に、湿度センサ、ガスセンサ等も、好ましくは試料担体の近傍に配置される。特に好ましい変形例では、センサ、特に温度センサは、試料担体の下方に配置される。これは、特に滴定板に有利であり、滴定板の底近傍の温度、即ち凡そ滴定板の底自身の温度が決定できる。試料担体の近傍かつ下方に温度センサを配置することによって試料の凡その温度が決定されるように、試料は前記底に直接接触している。温度センサが試料担体の上方に配置された場合、例えば、エアクッションが試料担体の蓋と試料との間に存在し、エアクッションは試料担体と試料との間の熱輸送に影響するため、このように正確に温度を決定することは可能ではないだろう。
【0011】
特に好ましい実施形態では、ハウジングは最適な流れを促すように構成されている。帰結として、ごく少量の結露のみしかハウジングの内部壁には見られない。流れの最適化は、好適には隣接する2つの壁を互いに少なくとも90度の角度に配置することによって実現できる。好ましくは、ハウジングの壁は90度を超える、特に120度を超える角度で互いに配置される。このような構造中、媒体流はハウジングの内部にぶつかって流れ、「隅部の澱み(dead nook)」は殆どない。
【0012】
好ましくは、本発明に係る環境室の室壁は、例えばロボット腕のようなマニピュレータを環境室の内部に挿入できるように1つ又は複数の開口を備えている。好ましくは、開口を封止するための輪状シール又は他のシールが、マニピュレータと室壁との間に設けられる。マニピュレータが不要な場合、あるいは不要となった場合、開口を通して室内から取り出すか、又は引き出すことができる。そして、開口は、例えばスクリューキャップ又は他の任意の閉鎖要素で閉鎖することができる。好ましくは、マニピュレータのみ、即ち、例えばロボット腕のみが、開口を通して室内に挿入される。マニピュレータの操作要素、モータドライブ等は好ましくは室外に配置される。
【0013】
本発明の特に好ましい実施形態では、媒体流を偏向させるための偏向要素が、試料担体、対象担体等が置かれる領域に配置される。このようにして、例えば比較的乾燥した媒体流の場合、確実に、液体試料の揮発の速度を可能な限り遅くすることができる。
【0014】
例えばマニピュレータの操作中の試料の単純な観察のために、又は他の種類の観察のために、環境室の室壁は少なくとも部分的に透明である。更に、室壁は、試料の観察などができる窓を備えていてよい。環境室の窓又は透明な部分は、好ましくは光をさえぎったり閉めたりすることができる。これは、例えば光に敏感な試料を分析する場合有利である。
【0015】
環境室に配置されている試料又は分析対象の温度は、環境室内に所望の温度の媒体流を供給することによってのみ所望の値に調節されてよい。これは、試料又は対象の周囲に対しても、又は環境室についても当てはまる。媒体流によって試料を加熱するのに加えて又はその代わりに、加熱要素を設けることによって加熱することもできる。加熱要素は、例えば、直接環境室中に配置された電気加熱要素であってよく、又、必要なら熱放射体を環境室の外部に配置してもよい。つまり、加熱は対流及び/又は輻射によって行うことができる。
【0016】
特に好ましい変形例では、ハウジングは付加的に出側開口を備え、流動する媒体をリーク媒体としてだけでなく、環境区画から逃がすことができる。これは、環境区画内の圧力を上げることなく、供給される媒体の量を大幅に増やすことができるという利点をもたらす。好ましくは、出側開口はフレキシブル管等のような排出チャネルに結合される。媒体流を閉回路で流動できるように前記チャネルは好適には環境生成装置または制御装置まで伸びている。環境制御装置によって、例えば、空気湿度(湿度)を増すための蒸気を生成する及び/又は媒体流を加熱する及び/又はガスを導入する。従って、本発明は、環境室及び環境制御装置を備える環境制御手段に関する。
【0017】
そのような環境生成装置、特に環境制御装置は、独立した発明である。好ましくは、本発明によれば、環境制御装置は環境室に結合される。
【0018】
細胞のような化学的及び/又は生物学的試料を、長時間に亘って、環境制御装置、特に培養器中の決められた環境に曝すことは通常行われることである。このような関係で、湿度及び温度を所定の範囲に保つことは特に重要である。更に、例えば培養器中のCO2 含有量といった試料雰囲気は重要である。培養器中の湿度、特に空気湿度を制御するために、スポンジに水をかけ、温風をスポンジに通すことは通常行われている。しかしながら、そのような湿度調節は、試料を環境室に導入してから所望の湿度の値に到達するまでの期間が比較的長いという欠点を有する。必要とされる湿度値が80%でかつ容積50乃至70リットルのチャンバにおいて、そのような環境制御装置では前記期間は約3乃至4分の範囲にある。帰結として、例えば予備分析の目的のために環境室から試料を取り出すことはできない。しかしながら、個々の試料を別の培養器で異なる期間培養する必要はなく、全ての培養工程を1つの培養器で行うことができるため、例えば細胞の成長を特定の期間で評価するためには、この場合試料の取り出しは望ましい。
【0019】
本発明に係る環境制御装置は、調整される気体媒体を流すチャネル又は区画又は部屋を備える。通常、前記媒体は、必要ならばCO2 のようなガスを混合された空気である。更に、環境制御装置は、チャネルに結合している入側開口及び出側開口を有する蒸気室を備える。噴霧装置又は加熱装置のような蒸気発生手段に結合している蒸気室では、例えば水蒸気といった蒸気が生成される。噴霧装置が蒸気発生手段として用いられた場合、エアロゾル、即ち、細かく分散した液滴が気体媒体中に生成される。加熱は液体の蒸発につながる。加熱による液体浴からの蒸発には既に蒸発エンタルピーが含まれている、一方で、噴霧の場合、前記エンタルピーは加熱手段によって与えられなければならない。
【0020】
本発明によれば、蒸気室からチャネルへ輸送される蒸気の量を制御するための制御手段は、蒸気室の入側開口及び/又は出側開口に配置されている。本発明によれば、蒸気又はエアロゾルは、よって直接には調整される媒体には導入されず、先ず蒸気室に蓄えられる。従って、短時間で調整される媒体に供給される、蒸気室の蒸気を生成することが可能となる。制御手段が、蒸気室からチャネルに最大の蒸気容量の流れを供給するように、蒸気室の入側及び/又は出側開口を完全に開放した場合、本発明に係る環境制御装置は、80%を超える、特に90%を超える、より好適には95%を超える空気湿度に、5分未満、特に3分未満で到達することを可能とする。
【0021】
約40乃至50リットル/秒の気体媒体の体積流、50乃至80リットルの環境室の体積、及び約1リットルの蒸気室の体積で、この値に到達可能である。
【0022】
好ましくは、蒸気発生手段は、水又は液体の蒸発によって高い空気湿度を生成するための加熱装置である。エアロゾルを生成する噴霧手段と比較して、蒸気は、エアロゾルのように表面に容易に結露したり凝縮したりすることがないという利点となる。
【0023】
本発明に係る制御手段によって、蒸気室の入側及び/又は出側開口の開放断面を好適には変化させることができる。開放断面が単純な方式で素早く変えられるように、好ましくは移動可能な蓋要素で実現される。好ましくは、蓋要素はその移動度が開放断面に比例する扉である。本発明に係る環境制御装置が、特に、化学的及び/又は生物学的試料のための培養器で環境制御のために用いられる場合、蒸気室の入側開口は好適にはチャネルと結合される。これにより、不純物を含む可能性のある外部の空気が入側開口を通して系内に供給されることがないという利点となる。
【0024】
更に、移動可能な蓋要素は、スロット状の出側開口に対して移動可能な円筒形要素であってよい。円筒形要素は、スムーズに移動するのに適したように相当する環状のベアリング中に配置される。
【0025】
出口面積が開き位置によって変えられるように、開口に折り蓋を設けることも更に可能である。折り蓋は、好適には折り蓋の開放角度が直接に断面積と比例するように構成される。これは顕著に制御操作を容易にする。
【0026】
好ましくは、環境制御装置は、調整される媒体に含まれる不純物、バクテリアなどを濾別するフィルタ手段を備える。好ましくは、フィルタ手段は蒸気室の上流、特に蒸気室の出側開口の上流に配置される。従って、媒体は蒸気が入れ替えられる又は更に添加される前に濾過される。
【0027】
更に、本発明に係る環境制御装置は、調整された媒体を加熱及び/又は冷却する調整手段を備えてよい。調整手段は、蒸気を導入したばかりの媒体が引き続き調整手段を通して流れるように、好ましくは、蒸気室の下流に配置されている。必要ならば冷却の目的でも用いることのできる調整手段を備えることは、蒸気の導入によって上がった媒体の温度を、そのような温度上昇が望ましくない場合、再び下げることができるという利点となる。従って、媒体温度とは独立して広い範囲で媒体の湿気含有量を制御することが可能である。前記範囲は、物理的制限、即ち、詳細には、温度の関数としての媒体が湿気を吸収する能力(露点)によって実質的に制限される。蒸発の目的で蒸気室に存在する液体は、好ましくは40乃至65度の温度に調整され、さもなければ、調整される媒体の温度に与える影響が大きすぎ、大幅な冷却を必要とするであろうことが、実験によって示された。更に、冷却処理は、好適には90%の高い湿度で、温度を30度未満に保つことを可能にする。
【0028】
好ましくは、蒸気室は加熱手段によって蒸発する液体を擁している。液体の量を特定の決められた範囲に保つために、蒸気室は好ましくは液体供給手段と結合される。液体供給手段は、必要なら、液体が自動的に補給されるように自動充填レベルメータを備えてよい。
【0029】
上述の環境装置に好ましくは結合される本発明に係る環境室は、特に、皮膚の培養に適している。本発明に係る環境室中で皮膚を培養する場合、前記室中に配置された顕微鏡によって培養工程中の観察及び/又は分析を行うことが可能である。更に、環境室が顕微鏡等を備えず、本発明に係る環境制御装置に結合された環境室中で、皮膚培養又は他の細胞の培養を行ってもよい。
【0030】
本発明の好ましい実施例が添付図を参照してより詳細に述べられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
環境室は、複数の側壁12、14(図2)、前壁16(図1)、後壁18、上壁20及び底壁22を備える。壁12乃至22は、環境区画26を画定するハウジング24を形成する。ハウジング24は、底壁22および、ハウジング24が顕微鏡28の上に置かれるように、前壁16に凹所を有する。前壁16と底壁22とは、分析装置又は顕微鏡28に支持され、外部に対して環境区画26を実質的に密に封止する封止要素27を備える。分析装置の必須な構成物は、図示された実施例では顕微鏡28であるが、環境区画26の内部に配置されている。これらの構成物は、特に、通常複数のレンズを備える光学手段30、及び送光手段32である。更に、通常移動可能な構造である試料台34、及び詳細にはミクロ滴定板であって、試料台34上に配置されている試料担体36が、環境区画26の内部に設けられている。
【0032】
環境区画26内に数時間又は数日ものかなりの長期間に亘って均一な環境を作り出すために、側壁14は、媒体流42を供給するためのフレキシブル管40又は他の任意の供給手段が結合した入側開口38を備える。媒体流42は、好ましくは、特に、湿度、温度、及び必要ならば媒体流に含まれる個々のガスのガス含有量が外部環境制御手段の空気によって調整された空気流である。媒体流42は、試料担体36が水平に配置された場合、試料担体36の下方の側方を流れるように(図2)配向される。試料担体36に対する好ましい接近流角度αは30度乃至60度である。媒体流42は、試料担体36に向かって流されるだけでなく、光学手段30及び送光手段32に対しても流される。特に、媒体流42は、試料担体に配される化学的及び/又は生物学的試料の環境がよく調整されるように、試料担体36の下側44に向かって流される。
【0033】
試料担体36近傍の温度、即ち試料自身の凡その温度が容易に測定できるように、温度センサ46は試料担体36の下方に配置されている。
【0034】
更に、ハウジング24は後壁18に出側開口48を備える。出側開口48もフレキシブル管等が結合し、媒体流の循環が確実となるように、媒体流を環境制御手段に帰還させている。出側開口48は、可能な限り環境区画26を通じて均一な流れを作るべく、入側開口38に略対向して配置されている。更に、ハウジング24は、図面に示された実施例では簡略化された表現になってはいるが、最適な流れを促すように構成されている。詳細には、隣接する側壁は、好ましくは、互いに少なくとも90度、特に少なくとも120度の角度で配置されている。例えば、「隅部の澱み(dead nook)」を避けるために、図1に示されるように後壁18から上壁20へ環境区画26内部に延在する追加的な壁が、後壁18と上壁20との間に挿入されてよい。それによって、上壁20と挿入された壁との間と共に、後壁18と挿入された壁との間にも90度以上の角度が実現できる。更に、隅部での結露が起こるのを避けるため、隅部に丸みを持たせても良い。
【0035】
好ましくは、ハウジング24は、容易に試料担体36を交換できるようにドアを備えている。ドアは、例えば、前壁16に設けられてよく、特に密閉可能であってよい。
【0036】
本発明に係る環境室は、特に共焦点顕微鏡に適しており、前記顕微鏡は撮像又は非撮像顕微鏡であってよい。特に共焦点の撮像顕微鏡は、好ましくはCCDアレイの類を備えており、好ましくは試料の写真撮影用である。
【0037】
本発明に係る環境制御装置は、調整されるべき気体媒体が、矢印112で示される方向に流れるチャネル110を備える。この目的のために、調整されるべき媒体は、気体媒体から粒子やバクテリアなどを除くフィルタ116を通してファン114によってチャネル110に吸い込まれる。媒体がフィルタ116とチャネル110を通して流された場合、媒体は、加熱及び/又は冷却手段である調整手段118を通して流通手段又はファン114によって輸送される。媒体は、従って、矢印112で示される方向に環境制御装置を通して流される。
【0038】
チャネル110の下方には蒸気室120が設けられている。蒸気室120は、共通のハウジング122の内部にチャネル110と共に配置されている。そして、分離壁124がハウジング122の内部をチャネル110と蒸気室120とに分割している。蒸気室120には、熱を発生する加熱要素126が結合されている。加熱要素126は、ハウジング122の下側128を加熱する。それによって、蒸気室内の水又は他の任意の液体130は加熱され、液体130の上方に蒸気132を発生する。蒸気室120は、実施例に図示されており、チャネル110に結合されている入側開口134を備える。入側開口134は分離壁124に設けられている。入側開口134に加えて又はその代わりに、他の入側開口がハウジング122の蓋136に設けられてよい。この他の入側開口は、フィルタ116の下方の領域の、分離壁124に横方向に並んでいる側壁136に配置されている。この目的のために、分離壁124は、図面に示されるようにハウジング122の下側128に平行に連続して延在しておらず、一方の側で約90度曲がって側壁136に結合している。
【0039】
更に、蒸気室120は、チャネル110に結合している出側開口138を備える。環境制御装置を通じて輸送される媒体の空気湿度を増すために、出側開口138を通して、蒸気132はチャネル110の中に供給される。
【0040】
図示された実施例では、扉又は蓋要素の形状の制御手段140が出側開口138近傍に設けられている。扉又は蓋要素140は、出側開口138のそれと通常対応する寸法の開口を備える。扉140は、矢印142によって示される方向に移動可能である。これは、制御手段が最大開放位置にある時、出側開口138及び扉140の開口が完全に重なることを可能とする。出側開口138を通してチャネル110に流れる蒸気の量を制御するため、扉140は、出側開口138の一部のみが開くように、矢印142の方向に移動することができる。矢印方向に扉140を移動することによって、出側開口138の開口断面は変えることができる。
【0041】
液体130の液レベルを長期間一定に保つために、充填レベルメータが蒸気室120内に設けられてよく、蒸気室120は貯蔵タンクに結合されていてよい。
【0042】
更に、供給ノズルや入口などを通じて、例えばCO2 のようなガスを媒体流に導入することが可能である。
【0043】
扉140(図3)の代わりに折り蓋150(図4)が、出側開口138の開口断面を制御するのに設けられてもよい。折り蓋150は、軸152を中心にして揺動可能で、折り蓋150の開放の角度に応じて、異なる量の蒸気を蒸気室120からチャンバー110に流すことができる。好ましくは、折り蓋150は、開口138に向く折り蓋の縁154を備えており、折り蓋の縁154は膜としての構造を有し、折り蓋のそれと一致する外側の輪郭を有する。外側の輪郭の選択や構造によって、折り蓋150の開放の角度と、出側開口138の開放される出側断面との間の比例関係が、制御動作を容易にするために実現可能となる。
【0044】
特に好ましい実施形態では、図1及び2を参照して述べられた環境室は、図3及び4を参照して述べられた環境制御装置と結合される。この目的のために、出口144(図3)はフレキシブル管40(図2)と結合してよい。出側開口48(図2)に設けられるフレキシブル管はフィルタ116の入口146(図3)と結合してよい。よって、2つの装置要素は、2つのフレキシブル管のみを通じて結合され、互いに離れた位置関係に配置してよい。このモジュール化の概念は、個々の装置構成物が異なる構造で互いに結合することを可能とする。更に、例えば、環境室に干渉するかもしれない環境室の近辺に、環境制御装置(図3)を配置する必要がないなど、その配置の自由度は、実験室で利便的に活用される。
【0045】
更に、本発明に係る装置は制御装置を備える。この装置は、種々のセンサやアクチュエータ等と通信又は結合することができる。この制御装置及び結合される手段、例えばセンサによって、媒体を調整することができる。特に、湿度、温度、CO2 量、他のガス等の含有量が調整される。更に、対応するアクチュエータは、媒体42の接近流角度(図2)を変えることができる。これは、もちろんプラスチック製でよいガイド板などの偏向要素を用いたり、フレキシブル管40や入側開口38の位置を変えたりすることによって実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】顕微鏡に上に置かれた環境室の側方からの部分断面略示図である。
【図2】図1のII−II線に沿った部分断面略示図である。
【図3】環境制御装置の斜視部分断面略示図である。
【図4】前記環境制御装置に設けられた制御手段の他の実施形態の側断面略示図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に化学的及び/又は生物学的試料のための環境室において、環境区画(26)を画定するハウジング(24)と、少なくとも一部が試料の分析のための環境区画内に配置されている分析装置(28)と、調整媒体流(42)を供給するためにハウジング(24)内に設けられた入側開口(38)とを備え、
環境区画(26)内で媒体流(42)が少なくとも部分的には分析装置(28)及び/又は試料担体(36)に向かって流れることを特徴とする環境室。
【請求項2】
媒体流(42)を配向させるための配向装置を特徴とする請求項1に記載の環境室。
【請求項3】
媒体流(42)が試料担体の下側(44)に向かって流れるように媒体流(42)は配向されることを特徴とする請求項1又は2に記載の環境室。
【請求項4】
試料担体(36)が水平に配置された場合、入側開口(38)は 試料担体(36)の下方で横方向に変位して配置されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1つに記載の環境室。
【請求項5】
試料担体(36)に対して30度乃至60度の接近流角度を特徴とする請求項1乃至4の何れか1つに記載の環境室。
【請求項6】
媒体流(42)は、分析装置(28)及び/又は試料担体(36)に対して媒体流(42)の少なくとも50%乃至70%が流れるように配向されることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1つに記載の環境室。
【請求項7】
分析装置(28)の結露に敏感な部品(30、32、34)が媒体流(42)中に配されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1つに記載の環境室。
【請求項8】
試料担体(36)の近傍、特に試料担体(36)の下側(44)近傍に配置されている温度センサ(46)を特徴とする請求項1乃至7の何れか1つに記載の環境室。
【請求項9】
ハウジング(24)に設けられており、該出側開口(48)は、好ましくは入側開口(38)に略対向して配置されている出側開口(48)を特徴とする請求項1乃至8の何れか1つに記載の環境室。
【請求項10】
ハウジングは最適な流れを促すように構成されていることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1つに記載の環境室。
【請求項11】
ハウジングの隣接する壁(12、14、16、18、20、22)は、互いに少なくとも90度、好ましくは少なくとも120度の角度で配置されていることを特徴とする請求項1乃至10の何れか1つに記載の環境室。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか1つに記載の環境室を備える環境制御手段において、入側開口(38)は環境制御装置と結合されており、調整される気体媒体はチャネル(110)を通して流され、蒸気室(120)はチャネルに結合する入側開口(134)及び出側開口(138)を有し、蒸気発生手段(126)は蒸気室(120)に結合し、制御手段(140)は、蒸気室(120)からチャネル(110)に供給される蒸気の量を制御するために入側開口(134)及び/又は出側開口(138)に設けられていることを特徴とする環境制御手段。
【請求項13】
制御手段(140)は入側開口(134)及び/又は出側開口(138)の開放断面を制御するのに適していることを特徴とする請求項12に記載の環境制御手段。
【請求項14】
調整される媒体の一部が蒸気室(120)を流れるように入側開口(134)はチャネル(110)と結合していることを特徴とする請求項12又は13に記載の環境制御手段。
【請求項15】
蒸気発生手段(126)は、気化するように媒体を加熱するための加熱手段を備えることを特徴とする請求項12乃至14の何れか1つに記載の環境制御手段。
【請求項16】
チャネル(110)内に媒体流を生じさせるための流通手段(114)を特徴とする請求項12乃至15の何れか1つに記載の環境制御手段。
【請求項17】
チャネル(110)に結合しているフィルタ手段(116)を特徴とする請求項12乃至16の何れか1つに記載の環境制御手段。
【請求項18】
チャネル(110)に結合している調整手段(118)を特徴とする請求項12乃至17の何れか1つに記載の環境制御手段。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−506147(P2007−506147A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527331(P2006−527331)
【出願日】平成16年9月20日(2004.9.20)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010531
【国際公開番号】WO2005/030394
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(504344831)エボテック テクノロジーズ ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】