説明

顕微鏡装置

【課題】標本に照射する刺激光を所望の照射領域に容易に設定する。
【解決手段】標本Sの画像を取得する観察光学系10と、標本Sに刺激光を照射して刺激する刺激光学系30と、観察光学系10により取得された画像上に、刺激光学系30により刺激される標本SのROIを表示する制御部51と、制御部51により画像上に表示されたROIの大きさおよび/または位置を操作させる操作部55とを備え、制御部51が、ROIに一致するように刺激光の照射領域を調節する顕微鏡装置100を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、標本を光刺激するレーザ光の照射領域の大きさや位置を制御する顕微鏡装置が知られている。(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の顕微鏡装置は、レーザ光源と、ビーム径を変更する光学系と、標本面と共役な位置に配置された視野絞りとを備え、レーザ光源から射出されたレーザ光をビーム径変更光学系により適切なビーム径に変更して視野絞りに照射し、視野絞りの開口の大きさを変えることによりレーザ光の照射領域の大きさを調節することとしている。また、この顕微鏡装置は、対物レンズと、対物レンズの瞳位置と共役な位置に配置されたミラーとを備えており、ミラーの角度を変更することにより、レーザ光の照射領域の位置を調節することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−288321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、通常、ユーザはモニタに表示されている標本の画像を見ながら観察等を行っており、視野絞りの開口の大きさをどの程度変更すれば刺激光の照射領域が所望の大きさになるのか、あるいは、ミラーの角度をどの程度変更すれば刺激光の照射位置が所望の位置になるのかを直感的に判断することが難しいという不都合がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、標本に照射する刺激光を所望の照射領域に容易に設定することができる顕微鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、標本の画像を取得する観察光学系と、前記標本に刺激光を照射して刺激する刺激光学系と、前記観察光学系により取得された画像上に、前記刺激光学系により刺激される前記標本の刺激領域を表示する領域表示部と、該領域表示部により前記画像上に表示された前記刺激領域の大きさおよび/または位置を操作させる操作部と、前記刺激領域に一致するように前記刺激光の照射領域を調節する調節部とを備える顕微鏡装置を提供する。
【0007】
本発明によれば、領域表示部の作動により、観察光学系によって取得された標本の画像上に刺激光学系によって刺激される標本の刺激領域を表示することで、ユーザは、画像上の刺激領域を見ることにより、刺激光学系による刺激光の照射領域を把握することができる。
【0008】
この場合において、ユーザが操作部により画像上の刺激領域の大きさおよび/または位置を操作すると、調節部の作動により画像上の刺激領域に一致するように刺激光の照射領域が調節されるので、ユーザは、刺激光の照射領域をどの程度変更したかを標本の画像を見ながら直感的に判断することができる。したがって、標本に照射する刺激光を所望の照射領域に容易に設定することができる。
【0009】
上記発明においては、前記調節部が、前記刺激領域の大きさに合わせて前記照射領域の大きさを調節し、前記刺激領域の位置に合わせて前記照射領域の位置を調節することとしてもよい。
このように構成することで、画像上の刺激領域と刺激光の照射領域とをより精度よく対応づけることができる。
【0010】
また、上記発明においては、前記刺激領域の大きさがピクセル数により設定され、1ピクセル当たりの長さを規定するパラメータが変更されると、前記領域表示部が前記パラメータに合わせて前記刺激領域のピクセル数を調節することとしてもよい。
【0011】
このように構成することで、1ピクセル当たりの長さを規定するパラメータが変更されることにより画像上の標本の大きさが変化しても、領域表示部の作動により、画像上の標本の変化後の大きさに合わせて刺激領域の大きさを変化させることができる。1ピクセル当たりの長さを規定するパラメータを変更するものとしては、例えば、画像サイズやガルバノズーム等が挙げられる。
【0012】
また、上記発明においては、前記刺激光学系が、倍率が異なる複数の対物レンズを備え、前記調節部が、前記照射領域の大きさを前記対物レンズの倍率と関連づけて調節することとしてもよい。
このように構成することで、対物レンズを倍率が異なる他の対物レンズに切り替えても、切り替えられた対物レンズの倍率に関わらず、調節部の作動により刺激光の照射領域の大きさを一定の大きさに維持することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、標本に照射する刺激光を所望の照射領域に容易に設定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る顕微鏡装置の概略構成を示す図である。
【図2】画像上に表示された標本およびROIの一例を示す図である。
【図3】制御部が記憶する刺激光のスポット径と可変絞りの開口の大きさとを対応づけたテーブルの一例を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る顕微鏡装置の概略構成を示す図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る顕微鏡装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態に係る顕微鏡装置について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る顕微鏡装置100は、図1に示すように、標本Sを共焦点観察する観察光学系10と、標本Sを光刺激する刺激光学系30とを備えている。
観察光学系10は、レーザ光を発する光源1と、レーザ光の通過をオンオフするシャッタ3と、シャッタ3を通過したレーザ光を2次元的に走査するガルバノミラー等のスキャナ5と、スキャナ5により走査されたレーザ光を集光し中間像を結像させる瞳投影レンズ7とを備えている。
【0016】
また、この観察光学系10は、瞳投影レンズ7により中間像を結像したレーザ光を集光して略平行光にする結像レンズ11と、結像レンズ11により略平行光になったレーザ光を標本S上に集光し、標本Sにおいて発生した蛍光を集光する対物レンズ13と、対物レンズ13により集光されスキャナ5を介して戻る蛍光をレーザ光の光路から分岐するダイクロイックミラー15と、ダイクロイックミラー15により分岐された蛍光を集光する共焦点レンズ17と、共焦点レンズ17の焦点位置に配置された共焦点ピンホール19と、共焦点ピンホール19を通過した蛍光からレーザ光を除去するバリアフィルタ21と、バリアフィルタ21によりレーザ光が除去された蛍光を検出する光検出器(光電子増倍管)23とを備えている。
符合12はミラーを示し、符合14は対物レンズ13の瞳位置を示している。
【0017】
刺激光学系30は、レーザ光(刺激光)を発する光源31と、刺激光の通過をオンオフするシャッタ33と、シャッタ33を通過した刺激光のビーム径を変更するビーム径変更光学系35と、ビーム径変更光学系35によりビーム径が変更された刺激光の光束を制限する大きさ可変の開口を有する可変絞り37と、可変絞り37により光束が制限された刺激光を集光する集光レンズ39と、集光レンズ39により集光された刺激光を2次元的に走査するガルバノミラー等のスキャナ41と、スキャナ41により走査された刺激光を略平行光にする瞳投影レンズ43と、瞳投影レンズ43により略平行光になった刺激光を観察光学系10の光路(観察光路)に結合するダイクロイックミラー45とを備えている。符合34はミラーである。
【0018】
また、この刺激光学系30は、前述の結像レンズ11、ミラー12、対物レンズ13、ダイクロイックミラー15、共焦点レンズ17、共焦点ピンホール19、バリアフィルタ21、および、光検出器23を観察光学系10と共用するようになっている。ビーム径変更光学系35は、ズームレンズを用いてビーム径の拡大率を可変にする構成であってもよいし、挿脱可能な構成とすることによりビーム径の拡大率を変化するものであてもよい。
【0019】
また、顕微鏡装置100には、装置全体の制御や画像構築等を行う制御部(領域表示部、調節部)51と、制御部51により構築された画像等を表示するモニタ53と、制御部51を操作させる操作部55とが備えられている。
【0020】
制御部51は、光検出器23から蛍光の輝度情報を受け取り、スキャナ5の揺動角度位置と対応づけて逐次記憶することにより、標本Sの2次元画像を構築するようになっている。制御部51により構築された画像はモニタ53に送られて表示される。
【0021】
また、制御部51は、可変絞り37の開口の大きさおよびスキャナ41の揺動角度範囲を読み出し、図2に示すように、構築した画像上に、刺激光学系30により標本Sを刺激する領域を示すROI(刺激領域)58を表示するようになっている。ROI58は、例えば、刺激光の照射領域を同心的に囲むように、刺激光の照射領域と略同一の大きさあるいはそれより若干大きい円形状で表される。また、ROI58の大きさはピクセル数により設定される。
【0022】
操作部55は、ユーザにより操作されるキーボード、マウスあるいはジョイスティック等により構成されている。ユーザはこれらの操作部55を操作することにより、モニタ53の画像上に表示されたROI58の大きさおよび位置を変更することができるようになっている。
【0023】
前記制御部51は、画像上のROI58と刺激光の照射領域とが一致するように、ROI58の大きさに合わせて刺激光の照射領域の大きさ(スポット径)を調節し、また、ROI58の位置に合わせて刺激光の照射領域の位置(スポット位置)を調節するようになっている。
【0024】
具体的には、制御部51は、ROI58の大きさに対応して刺激光のスポット径が変化するように、ROI58の寸法に合わせて可変絞り37の開口の大きさを制御するようになっている。例えば、制御部51は、刺激光のスポット径と可変絞り37の開口の大きさとを段階的に対応づけた図3に示すようなテーブルを記憶しており、テーブルに従い、ROI58の寸法に近いスポット径になるように可変絞り37の開口の大きさを設定するようになっている。
【0025】
また、制御部51は、ROI58の位置に対応して刺激光のスポット位置が変化するように、ROI58の座標に合わせてスキャナ41の揺動角度範囲を制御するようになっている。例えば、制御部51は、ROI58のXY座標に略一致するスポット位置になるように、スキャナ41を構成する2つのガルバノミラーの揺動角度範囲をそれぞれシフトするようになっている。
【0026】
このように構成された本実施形態に係る顕微鏡装置100の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る顕微鏡装置100を用いて標本Sを観察するには、まず、観察光学系10により標本Sの2次元画像を取得する。観察光学系10による標本Sの2次元画像の取得は、光源1を作動させてレーザ光を射出し、シャッタ3、ダイクロイックミラー15、スキャナ5、瞳投影レンズ7、結像レンズ11、ミラー12および対物レンズ13を介して標本Sに照射されたレーザ光を、スキャナ5の作動によって、標本S上において2次元的に走査することにより行われる。この場合において、レーザ光はシャッタ3により標本Sへの照射時間が制御される。
【0027】
レーザ光が照射された標本Sにおいては蛍光物質が励起されて蛍光が発生し、対物レンズ13により蛍光が集光される。対物レンズ13により集光された蛍光は、ミラー12、結像レンズ11、瞳投影レンズ7、および、スキャナ5を介して戻り、ダイクロイックミラー15によってレーザ光の光路から分岐されて集光レンズ17により集光される。集光レンズ17により集光された蛍光のうち、共焦点ピンホール19を通過しバリアフィルタ21によりレーザ光が除去されたものが光検出器23により検出される。
【0028】
光検出器23により蛍光が検出されると、その輝度情報が制御部51に入力される。制御部51により、蛍光の輝度情報に基づいて標本Sの2次元画像が構築され、モニタ53に画像が表示される。これにより、ユーザはモニタ53の画像上で標本Sを観察することができる。
【0029】
次に、刺激光学系30により標本Sを光刺激する。標本Sの光刺激は、光源31を作動させて刺激光を射出し、シャッタ33、ミラー34、ビーム径変更光学系35、可変絞り37、集光レンズ39、スキャナ41、瞳投影レンズ43、ダイクロイックミラー45、結像レンズ11、ミラー12、対物レンズ13を介して標本Sに刺激光を照射することにより行われる。この場合において、刺激光はシャッタ33により標本Sへの照射時間が制御される。また、刺激光はビーム径変更光学系35により適切なビーム径に変更される。
【0030】
刺激光が標本Sに照射されると、制御部51の作動により、可変絞り37の開口の大きさおよびスキャナ41の揺動角度範囲が読み出され、モニタ53に表示されている標本Sの画像上に、刺激領域を示すROI58が表示される。これにより、ユーザは、刺激光学系30の光刺激による標本Sの動作を観察しながら、刺激光の照射領域を把握することができる。
【0031】
この場合において、ユーザが操作部55を操作しROI58の大きさを変更すると、制御部51の作動により、変更後のROI58の寸法と刺激光のスポット径とがほぼ一致するように、テーブルに基づいて可変絞り37の開口の大きさが変更される。例えば、ユーザがROI58を大きくした場合は、ROI58に合わせて刺激光のスポット径も広くなり、一方、ユーザがROI58を小さくした場合は、ROI58に合わせて刺激光のスポット径も狭くなる。
【0032】
また、ユーザがROI58の位置を変更すると、制御部51により、変更後のROI58の座標と刺激光のスポット位置とがほぼ一致するように、スキャナ41のガルバノミラーの揺動角度範がXY方向に変更される。例えば、ROI58の動きに合わせて刺激光の照射位置が移動させられる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態に係る顕微鏡装置100によれば、ユーザが操作した画像上のROI58の大きさおよび位置に合わせて、制御部51により刺激光のスポット径およびスポット位置を調節することで、ユーザは、刺激光の照射領域の大きさおよび位置をどの程度変更したかを標本Sの画像を見ながら直感的に判断することができる。したがって、標本Sの大きさや可変絞り37の開口の大きさを計算する手間を省き、標本Sに照射する刺激光を所望のスポット径およびスポット位置に容易かつ迅速に設定することができる。
【0034】
本実施形態は、以下のように変形することができる。
第1の変形例としては、例えば、1ピクセル当たりの長さを規定するパラメータ、例えば、モニタ53に表示される画像を構成するピクセル数(画像サイズ)やスキャナ5の振り角により決まる画像の倍率(ガルバノズーム)等を変更すると、制御部51が、そのパラメータに合わせて、ROI58を構成するピクセル数を調節することとしてもよい。
【0035】
例えば、モニタ53に表示される標本Sの画像サイズを変更すると、すなわち、画像を構成するピクセル数が変更されると、制御部51により、変更後の画像のピクセル数に合わせてROI58のピクセル数が変更される。また、例えば、スキャナ5の振り角が変更されると、制御部51により、変更後の画像の倍率に合わせてROI58のピクセル数が変更される。このようにすることで、画像上の標本Sの大きさが変化しても、変化後の標本Sの大きさに合わせてROI58の大きさを変化させることができる。
【0036】
第2の変形例としては、例えば、倍率が異なる複数の対物レンズ13がレボルバ(図示略)により切替可能に支持され、制御部51が刺激光の照射領域の大きさを各対物レンズ13の倍率と関連づけて調節することとしてもよい。この場合、制御部51において、基準とする1の対物レンズ13(基準対物レンズ13とする。)に対しては、前述のテーブルに基づいて可変絞り37の開口の大きさを設定し、他の対物レンズ13に対しては、以下の式により、可変絞り37の開口の大きさを設定することとすればよい。
他の対物レンズ13に対する可変絞り37の開口の大きさ=基準対物レンズ13に対する可変絞り37の開口の大きさ/(基準対物レンズ13の倍率/他の対物レンズ13の倍率)
【0037】
このようにすることで、基準対物レンズ13を異なる倍率の他の対物レンズ13に切り替えても、切り替えられた他の対物レンズ13の倍率に関わらず、刺激光のスポット径を一定の大きさに維持することができる。対物レンズ13の倍率は、例えば、ユーザが入力することとすればよい。対物レンズ13の倍率に誤差がある場合は、誤差を含んだ倍率を入力することが好ましい。
【0038】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態に係る顕微鏡装置について、図4を参照して説明する。
本実施形態に係る顕微鏡装置200は、観察光学系10に代えて、落射照明部60と観察光学系80とを備える点で第1の実施形態と異なる。
以下、第1の実施形態に係る顕微鏡装置100と構成を共通する箇所には、同一符号を付して説明を省略する。
【0039】
落射照明部60は、照明光を発する光源61と、光源61から発せられた照明光を略平行光にするコリメートレンズ63と、コリメートレンズ63により略平行光になった照明光の波長を制限する励起フィルタ65と、励起光フィルタ65により波長が制限された照明光を集光する集光レンズ67と、集光レンズ69により集光された照明光を対物レンズ13の瞳位置14にリレーする落射投光管光学系69と、落射投光管光学系69によりリレーされる照明光を観察光学系80の光路(観察光路)に結合するダイクロイックミラー71とを備えている。
【0040】
観察光学系80は、ダイクロイックミラー71により落射照明部60から結合された照明光を標本S上に集光し、標本Sから戻る戻り光を集光する対物レンズ13と、対物レンズ13により集光された戻り光から不要な波長の光を除去するバリアフィルタ83と、バリアフィルタ83により不要な波長の光が除去された戻り光を集光する結像レンズ85と、結像レンズ85により集光された戻り光を撮影し、標本Sの画像情報を取得するCCD等の撮像素子87とを備えている。バリアフィルタ83と結像レンズ85との間には、光軸方向に移動可能に設けられたズーム用のレンズ(以下、「ズームレンズ」という。)84が配置されている。ズームレンズ84の光軸方向の位置に応じて、撮像素子87により取得される画像情報の倍率を変更することができるようになっている。
【0041】
刺激光学系30は、瞳投影レンズ43により略平行光になった刺激光をダイクロイックミラー45に集光する集光レンズ44を備えている。
制御部51は、撮像素子87から画像情報を受け取り、2次元的な画像を生成するようになっている。制御部51により生成された2次元画像はモニタ53に表示される。
【0042】
このように構成された本実施形態に係る顕微鏡装置200の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る顕微鏡装置200を用いて標本Sを観察するには、まず、落射照明部60および観察光学系80により標本Sの2次元画像を取得する。具体的には、光源61を作動させて照明光を射出し、コリメートレンズ63、励起フィルタ65、集光レンズ67、落射投光管光学系69、および、ダイクロイックミラー71を介して観察光路に照明光を入射する。
【0043】
観察光路に照明光が入射されると、対物レンズ13により標本Sに照明光が照射されるとともに標本Sから戻る戻り光が集光される。対物レンズ13により集光された戻り光は、バリアフィルタ83により不要な波長の光が除去された後、ズームレンズ84を透過し結像レンズ85により集光されて撮像素子87により撮影される。
【0044】
撮像素子87により戻り光が撮影されると、その画像情報が制御部51に入力され標本Sの2次元画像が生成される。制御部51により生成された画像はモニタ53に表示され、これにより、ユーザはモニタ53の画像上で標本Sを観察することができる。
【0045】
次に、刺激光学系30により標本Sを光刺激する。標本Sの光刺激は、光源31を作動させて刺激光を射出し、シャッタ33、ビーム径変更光学系35、可変絞り37、集光レンズ39、スキャナ41、瞳投影レンズ43、集光レンズ44、ダイクロイックミラー45、落射投光管光学系69、ダイクロイックミラー71、および、対物レンズ13を介して標本Sに刺激光を照射することにより行われる。
【0046】
刺激光が標本Sに照射されると、制御部51の作動により、モニタ53に表示されている標本Sの画像上に、刺激領域を示すROI58が表示される。この場合において、制御部51の作動により、ユーザにより操作されるROIの大きさおよび位置に合わせて刺激光学系30による刺激光のスポット径およびスポット位置が調節される。このように、落射照明部60および観察光学系80により標本Sの2次元画像を取得した場合においても、ユーザは標本Sの画像を見ながら刺激光を所望の照射領域に容易かつ迅速に設定することができる。
【0047】
本実施形態においては、1ピクセル当たりの長さを規定するパラメータ、例えば、ズームレンズ84の位置により決まる画像の倍率を変更すると、制御部51が、そのパラメータに合わせて、ROI58を構成するピクセル数を調節することとしてもよい。例えば、ズームレンズ84の光軸方向に位置が変更されると、制御部51により、変更後の画像の倍率に合わせてROI58のピクセル数が変更される。このようにすることで、画像上の標本Sの大きさが変化しても、変化後の標本Sの大きさに合わせてROI58の大きさを変化させることができる。
【0048】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態に係る顕微鏡装置について、図5を参照して説明する。
本実施形態に係る顕微鏡装置300は、観察光学系10および刺激光学系30に代えて、観察光学系と刺激光学系とを兼用する観察刺激光学系120を備える点で第1の実施形態と異なる。
以下、第1の実施形態に係る顕微鏡装置100と構成を共通する箇所には、同一符号を付して説明を省略する。
【0049】
観察刺激光学系120は、シャッタ3とダイクロイックミラー15との間の光路上に挿脱可能な刺激光学ユニット130を備えている。刺激光学ユニット130は、シャッタ3を通過したレーザ光(刺激光)のビーム径を変更するビーム径変更光学系135と、ビーム径変更光学系135によりビーム径が変更された刺激光の光束を制限する大きさ可変の開口を有する可変絞り137と、可変絞り137により光束が制限された刺激光を集光する集光レンズ139とにより構成されている。
【0050】
観察刺激光学系120を観察光学系として機能させる場合は、刺激光学ユニット130を光路上から外すことにより、光源1から発せられシャッタ3を通過させたレーザ光をダイクロイックミラー15によりスキャナ5に入射し、対物レンズ13により標本Sに照射させる。これにより、標本Sにおいて発生した蛍光を光検出器23により検出し、制御部51により2次元画像を構築し、モニタ53の画像上で標本Sを観察することができる。
【0051】
一方、観察刺激光学系120を刺激光学系として機能させる場合は、刺激光学ユニット130を光路上に配置することにより、光源1から発せられシャッタ3を通過した刺激光をビーム径変更光学系135、可変絞り137、集光レンズ139を介してダイクロイックミラー15によりスキャナ5に入射し、対物レンズ13により標本Sに照射させる。これにより、標本Sを光刺激し、制御部51によりモニタ53に表示されている標本Sの画像上に刺激領域を示すROI58を表示させることができる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係る顕微鏡装置300によれば、レーザ光(刺激光)の走査手段が1つ(スキャナ5)の観察刺激光学系120により、刺激光学ユニット120の挿脱を切り替るだけで、標本Sの観察と刺激とを時間差で行うことができる。したがって、観察光学系10および刺激光学系30を備える顕微鏡装置100と比較して安価に構成することができる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、本発明を上記の実施形態および変形例に適用したものに限定されることなく、これらの実施形態および変形例を適宜組み合わせた実施形態に適用してもよく、特に限定されるものではない。
例えば、上記実施形態においては、刺激領域として、刺激光の照射領域と略同一の大きさあるいはそれより若干大きい円形状で表されるROI58を例示して説明したが、ROI58と刺激光の照射領域、例えば、ROI58の大きさと刺激光のスポット径およびROI58の位置と刺激光のスポット位置をそれぞれ関連づけることができればよく、ROI58の表示の仕方はこれに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0054】
10 観察光学系
13 対物レンズ
30 刺激光学系
51 制御部(領域表示部、調節部)
55 操作部
100,200,300 顕微鏡装置
120 観察刺激光学系(観察光学系、刺激光学系)
S 標本

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標本の画像を取得する観察光学系と、
前記標本に刺激光を照射して刺激する刺激光学系と、
前記観察光学系により取得された画像上に、前記刺激光学系により刺激される前記標本の刺激領域を表示する領域表示部と、
該領域表示部により前記画像上に表示された前記刺激領域の大きさおよび/または位置を操作させる操作部と、
前記刺激領域に一致するように前記刺激光の照射領域を調節する調節部とを備える顕微鏡装置。
【請求項2】
前記調節部が、前記刺激領域の大きさに合わせて前記照射領域の大きさを調節し、前記刺激領域の位置に合わせて前記照射領域の位置を調節する請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項3】
前記刺激領域の大きさがピクセル数により設定され、1ピクセル当たりの長さを規定するパラメータが変更されると、前記領域表示部が前記パラメータに合わせて前記刺激領域のピクセル数を調節する請求項1または請求項2に記載の顕微鏡装置。
【請求項4】
前記刺激光学系が、倍率が異なる複数の対物レンズを備え、
前記調節部が、前記照射領域の大きさを前記対物レンズの倍率と関連づけて調節する請求項1から請求項3のいずれかに記載の顕微鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−155299(P2012−155299A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16944(P2011−16944)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】