説明

顕微鏡試料を調製するための装置と方法

顕微鏡分析用試料を調製し保存する装置、方法、およびシステムを開示する。該装置は、変位型ピペットに取り付けることによって、顕微鏡分析用試料を調製するのに望ましい試薬で貯留部を満たすことのできる貯留部を提供する。いくつかの実施形態では、標本が透過型電子顕微鏡(TEM)グリッド上に含まれていてもよい。他の実施形態では、試料は光学顕微鏡(LM)標本または走査型電子顕微鏡(SEM)標本であってもよい。さらに別の実施形態では、本発明は、TEMグリッドを調製する装置、TEM、SEM、またはLM標本を調製する装置、およびグリッドと標本の両方を保存する装置など、顕微鏡検査用試料を調製する方法を提供する。さらに別の実施形態では、本発明は、長期保存を提供しつつ、複数の試料の調製、分析、および組織学的評価を追跡するシステムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2006年5月22日に出願された米国特許仮出願第60/747928号の優先権を主張するものであり、当該仮出願の全文はあらゆる目的のため参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は概して、特に透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)および光学顕微鏡(LM)などの光学および電子顕微鏡を用いた分析用標本を扱うためおよび調製するために使用される装置と方法に向けられている。
【背景技術】
【0003】
光学顕微鏡、透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡、およびその他の機器は、科学技術の多数の分野において多様な合成材料や生体材料の超微細構造を理解するのに広範に使用されている。たとえば、光学顕微鏡試料は、動植物の様々な器官の成長を特定するための観察に利用される。また、LM試料の主要な使用法の1つは、病気を疑われる組織の生検試料の組織病理学的観察である。TEMは、生体試料と非生体試料の両方を研究するために使用され、原子スケールの解像度を提供することができる。TEMは、金属粒子構造、ポリマーのミクロ構造やナノ構造、コンピュータチップなどの半導体装置を観察し、細胞の小器官および分子の組織を視覚化するために日常的に使用される。このような画像は、通常は生体材料ではほとんど不可能だが、解像度を約0.1nmまで小さくすること可能である。TEM標本およびLM標本は、電子または光子がそれぞれ標本を横断し画像を生成できるように、一般的にスライスあるいは他の方法で薄い切片にされる。SEMは、ターゲット/試料の画像を生成するために電子を利用するという点でTEMに類似している。ただし、SEMの解像度は通常TEMの解像度ほど微細ではないが、約5nmの分子レベルの解像度を可能にする高解像度バージョンもある。バルク材料の表面状態を撮像できるSEM能力のため、標本調製は通常、標本を断面にスライスすることを必要としない。
【0004】
顕微鏡の観察対象は、被検査材料の種類、および使用する顕微鏡の種類に応じて複数の方法で調製される。生体材料の場合、電子顕微鏡で検査されるときにその材料の構造を損なわせない特別な取扱を必要とし、副次的には、撮像を向上あるいは可能にするための特別な取扱が必要となる。
【0005】
SEM機器およびTEM機器はどちらも真空(空気または他の気体の不在)下で撮像を実行する。生体材料は通常50〜95%の水分を保有するため、真空内に直接配置されると、水が蒸発して、標本が崩壊する。したがって、SEM試料およびTEM試料の両方とも、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、および四酸化オスミウムなどの化学物質で構造を強化した後に脱水される。
【0006】
TEM試料は、撮像用電子が試料を「透過」すなわち通過できるように極薄(通常、約40〜100nm)でなければならない。標本をこのように薄く切片化することを可能にすべく、標本内の水を、同じ位置で硬化されるプラスチックに置換している。ウルトラミクロトームと呼ばれる装置を用いて試料を非常に薄くスライスするときに、このプラスチックによって試料が支持される。
【0007】
LM標本、特に生体由来標本は通常、観察のための断面を提供するため、および、光子(光)が標本を透過できるようにするために切断される。TEMと同様、LM切片も、切片化中に標本を支持するように包埋されるが、通常軟らかな様々なプラスチックやワックスが包埋材料として使用される。軟らかい氷にするための添加剤とともに凍らされた水を使用することもでき、そのような氷は組織支持の上で好ましく、また冷凍中の氷結晶損傷を低減する上で好ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
細心の注意を要するという顕微鏡試料の性質、LM、SEM、およびTEM分析の解像度および倍率のため、試料調製には高度に熟練した精巧な操作が必要である。たとえば、LM、SEM、およびTEM試料の調製には20〜40回の流体交換を要することもある。上記試料を大量に調製することがあり、その品質、分析、および同定は、たとえば生検試料にとって多大な下流影響を及ぼすことがある。よって、提案されてきた調製方法や装置は非常に煩雑であったり、ニーズに適わないものであった。
【0009】
たとえば、マコーミックの米国特許第5080869号は、組織学的検査用の試料を調製する装置および方法を開示している。該装置は、試料を保持するのに適したカセットを備え、そのカセットは流体を排出するための穿孔を壁と床面に有する。上記カセットのスタックは、固定化プロセスのために容器内に配置することができる。マコーミックに図示されるように、容器とカセットの内部には、大きなデッドスペースがあり、結果として、適切に試料を処理するために大量の固定培養液、リンス液、およびその他の溶液を必要とする。使用する化学物質の多くは有害で、購入や処理に多額の費用がかかるものもあるため、大きなデッドスペース体積は望ましくない。また、上記カセットは、生体TEMおよび多くの臨床組織病理学的または生検標本で一般的な約1mmの標本の調製および取扱を意図していないため、このような小さな標本が遺失したり置き場所を間違えたりすることが容易に起こり得る。
【0010】
Dudekの米国特許第5543114号は、単体生体標本処理装置を開示している。該装置は、容器から流体を濾すためのアパーチャのある蓋付き容器を備える。Dudekに開示されるように、試料は容器内に置かれ、固定液が一端から入れられ、他端から排出される。Dudekに図示されるように、容器は、試料が遺失したり損傷したりする可能性のある大きなデッドスペースを有する。さらに、容器内の試料を目視したり、切片化したり保管することはできない。
【0011】
同様に、ウィリアムソンらの米国特許第7179424号は、処理中に組織試料を取り扱い、保持するカセットを開示している。他の類似の装置と同様、ウィリアムソンが開示するカセットは大きなデッドスペースを含み、内部の試料をほとんど目視できない。さらにウィリアムソンが教示するカセットは、他のカセットと同時使用できるように修正可能ではなく、高スループット化能力を制限する。また、ウィリアムソンらが教示するように、カセットは比較的高コストの複雑な装置であり、内部に保持される試料を切片化できない。
【0012】
さらに、上記のような小スケールの標本を分析するのに使用される大部分の他の撮像および分析方法は、上記試料を調製するプロセスを簡易化し標準化する方法や装置から恩恵を受けることができる。これらのアプリケーションは、たとえば、二次イオン質量分光(SIMS)、X線フォト電子分光(XPS)としても知られる化学分析用電子分光(ESCA)、および原子プローブ断層撮影などの分析のために小さな標本の取扱、処理、同定を必要とする。マトリックス支援レーザ脱離イオン化法(MALDI)や多くの他の分析および撮像機器準備手順も本発明の範囲に含まれる。
【0013】
よって、複数の試料の固定の同時使用を可能にし、短期保存と長期保存の両方で保持される試料の追跡と同定を可能にする高スループット固定システムを提供する、低コストの装置および方法が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、グリッドのより簡易な調製を提供するTEM、SEM、LM、SIMS、ESCA、XPS、およびMALDI用のTEMグリッドおよび標本、およびより効率的な保存および取扱を可能にする分析用標本の調製に使用される装置と方法が必要とされる。
【0015】
顕微鏡分析用試料を調製し保存する装置、方法、およびシステムを開示する。該装置は、変位型ピペットに取り付けることによって、顕微鏡分析用試料の調製に望ましい試薬で貯留部を満たすことのできる貯留部を提供する。いくつかの実施形態では、標本は、透過型電子顕微鏡(TEM)グリッド上に含めることができる。他の実施形態では、試料は光学顕微鏡(LM)標本または走査型電子顕微鏡(SEM)標本であってもよい。さらに別の実施形態では、本発明は、TEMグリッドをともに調製する装置、TEM、SEM、またはLM標本をともに調製する装置、およびグリッドと標本の両方を内部に保存する装置を含む、顕微鏡検査用試料を調製する方法を提供する。さらに別の実施形態では、本発明は、長期保存も提供しつつ、複数の試料の調製、分析、および組織学的評価を追跡するシステムを提供する。
【0016】
そこで、本発明の一実施形態は、ピペットを受け入れるように適合および構成されている第1の端部と、開口部を有する第2の端部とを有する一体型貯留部を備える、顕微鏡標本を調製する装置を含む。本実施形態では、スクリーンまたはフィルタが第2の端部に設けられる。フィルタが単なる制限開口部である実施形態もあれば、フィルタが複数の小さなアパーチャを有する実施形態もある。さらに、第1の貯留部は、第1の貯留部の第1の端部が第2の貯留部の第2の端部と液密シールを形成するように第2の貯留部と結合するよう寸法を決められ構成されており、貯留部の第2の端部はピペット先端と結合するよう寸法を決められ構成されている。さらに、いくつかの好適な実施形態では、貯留部は評価用顕微鏡標本を収容するように適合されており、ピペットの変位の結果、貯留部は1つまたはそれ以上の試薬で充填または空にされ、1つまたはそれ以上の試薬で貯留部を充填することにより、顕微鏡検査用試料が調製される。
【0017】
さらに別の好適な実施形態では、本発明は、ピペットを受け入れるように適合および構成されている第1の端部と、注入口/排出口を有する第2の端部とを有する一体型貯留部を含む、顕微鏡分析用標本を調製する装置を含む。さらに、第2の端部に設けられるスクリーンが含まれる。本実施形態によると、第1の貯留部は、第1の貯留部の第1の端部が第2の貯留部の第2の端部と液密シールを形成し、貯留部の第2の端部がピペット先端と結合するよう寸法を決められ構成されるように、第2の貯留部と結合するよう寸法を決められ構成されている。本実施形態によると、貯留部は、評価用顕微鏡標本を収容するように構成され、ピペットの変位の結果、貯留部が1つまたはそれ以上の試薬で充填または空にされる。いくつかの好適な実施形態では、貯留部は、貯留部に保持される液体の表面張力を破るように構成されている突出部を内表面に含む。よって、1つまたはそれ以上の試薬での貯留部の充填により、顕微鏡検査用試料が調製される。
【0018】
さらに別の実施形態では、本発明は、ピペットを受け入れるように適合および構成されている第1の端部と、注入口/排出口を有する第2の端部とを有する一体型貯留部に1つまたはそれ以上の標本を配置することを備える、顕微鏡分析用標本の調製方法を提供する。本実施形態では、スクリーンが第2の端部に設けられる。さらに、第1の貯留部は、第1の貯留部の第1の端部が第2の貯留部の第2の端部と液密シールを形成するように、第2の貯留部と結合するよう寸法を決められ構成されており、貯留部の第2の端部はピペット先端と結合するよう寸法を決められ構成されている。さらに、貯留部の第1の端部に変位装置を接続し、変位装置の変位を介して貯留部に固定液を通過させて顕微鏡分析のために標本を調製することを含む。
【0019】
さらに別の好適な実施形態では、本発明は、標本を取得することと、ピペットを受け入れるように適合および構成されている第1の端部と、注入口/排出口を有する第2の端部とを有する一体型貯留部内に標本を配置することとを備える、分析用顕微鏡標本を調製するシステムを含む。さらに、第2の端部に設けられるスクリーンが含まれる。本実施形態によると、第1の貯留部は、第1の貯留部の第1の端部が第2の貯留部の第2の端部と液密シールを形成するように、第2の貯留部と結合するよう寸法を決められ構成され、貯留部の第2の端部は、ピペット先端と結合するよう寸法を決められ構成されている。本実施形態によると、貯留部は評価用顕微鏡標本を収容するように構成され、ピペットの変位の結果、貯留部が1つまたはそれ以上の試薬で充填または空にされる。さらに、統一商品コード(UPC)の使用により標本を収容する貯留部を特定し、試料を特定する情報をUPCと相互に関連付けられた研究所情報管理システムに入力し、顕微鏡分析用試料を調製することが含まれる。本実施形態によると、標本は、分析のために貯留部に保存することができる。
【0020】
本発明に係る方法の各種例示的実施形態におけるこれらのおよび他の特徴は、本発明に係る方法の各種例示的実施形態の以下の詳細な説明に記載される、あるいはそこから自明である。
【0021】
本発明の方法の各種例示的実施形態を、以下の図面を参照して詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
顕微鏡分析用試料を調製し保存する装置、方法、およびシステムを開示する。該装置は、変位型ピペットに対して取付可能な貯留部であって、そのピペットにより顕微鏡分析用試料の調製に望ましい試薬でその貯留部を満たすことのできる貯留部を提供する。いくつかの実施形態では、標本は透過型電子顕微鏡(TEM)グリッドの上に含めてもよい。他の実施形態では、試料は光学顕微鏡(LM)標本または走査型電子顕微鏡(SEM)標本であってもよい。さらに別の実施形態では、本発明は、TEMグリッドを調製する装置、TEM、SEM、またはLM標本を調製する装置、およびグリッドと標本の両方を保存する装置などの、顕微鏡検査用試料を調製する方法を提供する。さらに別の実施形態では、本発明は、長期保存を提供しつつ、複数の試料の調製、分析、および組織学的評価を追跡するシステムを提供する。
【0023】
本発明の説明に先立ち注記するが、実施形態は変形してもよいため、本発明は記載した特定の実施形態に限定されないと理解すべきである。さらに、本明細書で使用する専門用語は、特定の実施形態を説明する目的で使用され、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を制限することを意図していないと理解すべきである。
【0024】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、文脈上明瞭に示されない限り、単数形「a」「an」および「the」は複数形の言及も含むことに留意されたい。よって、たとえば、「細胞」は、複数の細胞と当業者にとって既知なその等価物とを含む。また、「1つの」「1つまたはそれ以上の」「少なくとも1つの」は本明細書では互換性を持って使用することができる。「備える」「含む」「有する」などの用語も互換性を持って使用することができることに留意されたい。
【0025】
特に定義しない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって共通に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるのと同様または等価な任意の方法および材料は、本発明の実施またはテストの際に利用することができるが、好適な方法および材料を以下に記載する。本明細書に言及されるすべての刊行物は、本発明と関連して使用することのできる刊行物で報告される試料調製方法、機器、および方法を説明し開示する目的で、参照により本明細書に組み込まれる。本発明は先立つ発明により上記開示に先行する権利はないと認めるものと解釈される部分は、本明細書にはない。さらに、本明細書で使用されるように、スクリーンまたはフィルタが貯留部の第2の端部の限定された開口部を指す例もあれば、スクリーンまたはフィルタが貯留部の第2の端部の複数の開口部を備えるとする実施形態もあるように、スクリーンおよびフィルタは互換性を持って使用されると認識すべきである。さらに、本明細書に記載されるように、GHMP(グリッド保持マイクロピペット装置)およびSHMP(標本ホルダマイクロピペット装置)は分析標本を収容するように適合された貯留部を備えており、「GHMP」「SHMP」「貯留部」という用語は互換性を持って使用される。
【0026】
本発明は、顕微鏡分析用試料を調製し保存する装置、方法、およびシステムを提供する。該装置は、変位型ピペットに取り付け可能な貯留部であって、そのピペットによって、顕微鏡分析用試料の調製に望ましい試薬で当該貯留部を満たすことのできる貯留部を提供する。いくつかの実施形態では、標本はTEMグリッド上に含めてもよい。他の実施形態では、試料は光学顕微鏡標本またはSEM標本であってもよい。さらに別の実施形態では、試料は、SIMS、ESCA、XPS、またはMALDI標本であってもよい。さらに別の実施形態では、本発明は、TEMグリッドを調製する装置、TEM標本を調製する装置、およびグリッドと標本の両方を保存する装置などの、顕微鏡検査用試料を調製する方法を提供する。さらに別の実施形態では、本発明は、長期保存を提供しつつ、複数の試料の調製、分析、および組織学的評価を追跡するシステムを提供する。これらの実施形態では、試料は、TEM、SEM、LM、SIMS、ESCA、XPS、およびMALDI分析用の標本として使用することができる。
【0027】
一実施形態では、本発明は、ピペットを受け入れるように適合され構成されている第1の端部と、注入口/排出口を有する第2の端部とを有する一体型貯留部を備える、顕微鏡標本を調製する装置を含む。本実施形態では、スクリーンが第2の端部に設けられる。さらに、第1の貯留部は、第1の貯留部の第1の端部が第2の貯留部の第2の端部と液密シールを形成するように第2の貯留部と結合するよう寸法を決められ構成され、貯留部の第2の端部はピペット先端と結合するよう寸法を決められ構成されている。さらに、いくつかの好適な実施形態では、貯留部は評価用顕微鏡標本を収容するように適合させられ、ピペットの変位の結果、貯留部が1つまたはそれ以上の試薬で充填または空にされる。このようにして、1つまたはそれ以上の試薬での貯留部の充填により、顕微鏡検査用試料が調製される。
【0028】
さらに別の好適な実施形態では、本発明は、ピペットを受け入れるように適合および構成されている第1の端部と、注入口/排出口を有する第2の端部とを有する一体型貯留部を含む、顕微鏡分析用標本を調製する装置を含む。さらに、第2の端部に設けられるスクリーンが含まれる。本実施形態によると、第1の貯留部は、第1の貯留部の第1の端部が第2の貯留部の第2の端部と液密シールを形成し、貯留部の第2の端部がピペット先端と結合するよう寸法を決められ構成されるように、第2の貯留部と結合するよう寸法を決められ構成されている。本実施形態によると、貯留部は、評価用顕微鏡標本を収容するように構成され、ピペットの変位の結果、貯留部が1つまたはそれ以上の試薬で充填または空にされる。いくつかの好適な実施形態では、貯留部は、貯留部に保持される液体の表面張力を破るように構成されている突出部を内表面に含む。1つまたはそれ以上の試薬での貯留部の充填により、顕微鏡検査用試料が調製される。
【0029】
さらに別の実施形態では、本発明は、ピペットを受け入れるように適合および構成されている第1の端部と、注入口/排出口を有する第2の端部とを有する一体型貯留部に、1つまたはそれ以上の標本を配置することを備える、顕微鏡分析用標本の調製方法を提供する。本実施形態では、スクリーンが第2の端部に設けられる。さらに、第1の貯留部は、第1の貯留部の第1の端部が第2の貯留部の第2の端部と液密シールを形成するように、第2の貯留部と結合するよう寸法を決められ構成されて、貯留部の第2の端部はピペット先端と結合するよう寸法を決められ構成されている。さらに、貯留部の第1の端部に変位装置を接続し、変位装置の変位を介して貯留部に固定液を通過させて、顕微鏡分析用に標本を調製することが含まれる。
【0030】
さらに別の好適な実施形態では、本発明は、標本を取得することと、ピペットを受け入れるように適合および構成されている第1の端部と、注入口/排出口を有する第2の端部とを有する一体型貯留部内に標本を配置することとを備える、分析用顕微鏡標本を調製するシステムを含む。さらに、第2の端部に設けられるスクリーンまたはフィルタが含まれる。いくつかの実施形態では、スクリーンまたはフィルタが限定された開口部を備え、他の実施形態ではフィルタが複数のアパーチャを含む。本実施形態によると、第1の貯留部は、第1の貯留部の第1の端部が第2の貯留部の第2の端部と液密シールを形成するように、第2の貯留部と結合するよう寸法を決められ構成され、貯留部の第2の端部は、ピペット先端と結合するよう寸法を決められ構成されている。本実施形態によると、貯留部は評価用顕微鏡標本を収容するように構成され、ピペットの変位の結果、貯留部が1つまたはそれ以上の試薬で充填または空にされる。さらに、統一商品コード(UPC)の使用により標本を収容する貯留部を特定し、試料を特定する情報をUPCと相互に関連付けられた研究所情報管理システムに入力し、顕微鏡分析用試料を調製することが含まれる。本実施形態によると、標本を分析のために貯留部に保存することができる。
【0031】
TEM撮像は標本内の元素の原子番号に敏感である。このため、多くの試料が、生体材料(主に炭素、酸素、窒素、リン、および水素)に見られるよりも高い原子番号を有する原子で染色される、あるいはラベリングされる必要がある。通常使用される染色およびラベリング元素は、オスミウム(試料に強度も提供する)、ウラニウム、鉛、および鉄を含む。
【0032】
LM試料は、コントラストを向上させるために染色も必要とする。これらの染色剤は、有機および無機染料、蛍光染料、およびその他の特殊標識であることが多い。
SEM試料は、「ブドウからレーズンへ」の標本の崩壊を起こさせる表面張力なしで脱水を可能にする手順および化学物質を用いて、グルタルアルデヒドや、ホルムアルデヒド、四酸化オスミウムでの強化後に脱水することができる。最も一般的な方法は、臨界点乾燥器と呼ばれる装置を用いて臨界点方法で乾燥させることである。特殊なフリーズドライ手順や、これらの表面張力を最小化する特別な化学物質での乾燥などの他の手順を使用することもできる。
【0033】
TEM標本は、スライス、切片化、粉砕、スパッタリング、当該材料の極薄標本を調製するその他の手段によって調製される。通常、検査(観察対象)用に調製される標本は約20〜100ナノメートルの薄さである、あるいは場合によっては最大約1〜10マイクロメートル厚である。これらの観察対象は、TEMグリッドと呼ばれる、極薄の特別に調製されたスクリーン状の支持部上に置かれる。これらのグリッドは、光学顕微鏡で観察対象を支持するために使用するガラススライドに類似する。TEMグリッドは通常、標準的な直径は3mm(または時には3.05mmおよび稀に約2mm)で、Ni、Cu、Au、Mo、合金、または、特別な用途の場合は、ポリマー(たとえば、ナイロン)、炭素、またはBeなどのその他の材料の極薄膜で調製される。グリッドは、処理中およびその後のTEM撮像中に観察対象を支持するのに使用される。グリッドは、光学顕微鏡、SEM、他の顕微鏡、および追加の撮像および分析機器を含むTEM検査またはその他の分析中に、(比較的)平坦に標本を保持するのを助ける。透過型顕微鏡(たとえば、TEMおよび光学顕微鏡)では、グリッド内の穴または開口部上に横たわる観察対象のこれらの部分が可視である。
【0034】
通常20〜50μm厚であるTEMグリッドの薄さのため、TEMグリッドは非常に脆く、取扱が困難で、容易に曲がる。グリッドが曲がると、観察対象が損傷し、あるいは落下して、TEMでの観察対象焦点面の変動により撮像がより困難になる可能性がある。また、小さなサイズのため、グリッドは容易に落下して、取扱中に遺失することが多い。検査用の観察対象を調製するために複数の処理ステップを実行するのに何時間または何日もかかる場合があるので、珍しいまたは貴重な観察対象ならびに多くの他の標本にとってもこのことは非常に問題である。処理プロトコル(方法)は大きく変動するが、通常は化学的固定、複数の化学染色剤の添加、中間のリンス、抗体標識などの生体試薬への暴露、化学的または溶媒エッチャント、アルコールまたはその他の溶媒での脱水処理、急速冷凍およびその他の低温処理、ミクロトームで切断する樹脂内の包埋、脱水プロトコルの一環として使用される臨界点方法として既知な一般的なプロトコルを含む昇圧処理などである。当業者にとって既知な多くの追加のプロトコルおよび手順があり、新たなプロトコルおよび既存のプロトコルの変更が新しい研究のために開発されているため、これらはほんの一部である。通常、現行の慣行では、グリッドは繊細な鉗子(ピンセット)を用いて手動で1つの溶液または処理から次の溶液または処理に送られる。移動毎に損失または損傷の明確なリスクがあるため、起こりうる損失または損傷を最小限にとどめ、複数のグリッドの同時処理に必要な時間と努力を軽減するため、いくつかの異なる装置が記載されてきた。
【0035】
固定、リンス、包埋、染色、およびTEM用およびLM用の生体(およびいくつかの非生体)標本を調製するのに使用されるその他の処理のプロセス全体は、標本が40回を超える流体交換で処理されることが必要となる場合が多い。SEM標本調製、特に生体材料は通常、20回を超える流体交換を要する。標本は非常に小さく、普通はサイズが約1立方ミリメートルで、裸眼では見えないため、この多ステップ処理間に標本を遺失したり、置き間違えたり、損傷させたり、取り違えたりすることは極めて容易に生じ得る。
【0036】
グリッドを処理する装置には、非常に様々なデザインと用途が見られる。最も一般的な種類が、ポリマー、ガラス、またはセラミック製の数センチメートルの平坦な基板または皿で、グリッドを浸す流体(染色剤やリンスなど)の液滴を保持するために表面に小さな窪みまたはウェル(典型的には0.5〜1cm)を有する。様々なこれらのプレートタイプのウェルは非常に疎水性の高い材料で製造されるため、通常水溶性のまたは時にはエタノールなどの溶媒である流体がまとめてグリッドを飲み込む液滴になる。多くのTEMユーザは、ポリエチレン膜(たとえば、パラフィルム)の小さなシート上に水性の染色剤の液滴を載置することによって染色を簡単に実行し、疎水性の表面を提供する。これらの単純な装置の商用版は、Electron Microscopy Sciences(EMS)染色プレート、PELCO(Ted Pella Inc.)免疫染色パッド、PELCO(Ted Pella Inc.)Mesa染色パッド、およびQuad9正方グリッドGripper(Structure Probe Inc.)などである。グリッドは、鉗子を用いて手で摘み上げ、次の溶液の液滴中に配置することによって、1つの溶液から次の溶液へと処理される。もしくは、ピペットは第1の溶液を吸い上げ(除去し)、それを第2の溶液と取り換えるのにも使用することができる。様々なこれらのパッドまたはプレートは、ポリマー表面にスリットが切り込まれるエラストマーポリマー基板であるので、グリッド縁部をスリットに挿入して支持部に垂直に保持することができる。この種の装置の一例がChien Staining Pad(Ted Pella Inc.)である。グリッドは、グリッドがまるで鉗子によって保持されているように、エラストマーからの押圧で適所に保持される。グリッドは、装置の浴用チャンバ内で試薬を変更することによって、1つの溶液から次の溶液へと処理される。上記これらの装置はすべて、通常数平方センチメートルのサイズで、一体型のカバーを提供しない。したがって、蒸発および試薬との大気相互作用が問題となる可能性がある。多くは、個々のグリッドを識別可能にするナンバリングまたはその他のインデキシングスキームを提供する。ただし、必須の取扱中に容易にグリッドを置き間違えたり、遺失してしまう。エラストマーベースの締付けは、スロットへの挿入深度に応じて保持強度が可変である。さらに、保持強度は、染色または処理試薬との化学的相互作用により、時間の経過とともに弱まる可能性がある。よって、グリッドは常に確実に保持されているとは限らず、支持された指定位置から外に落下して取り違えたり、遺失してしまう場合がある。
【0037】
上記装置は通常、大半の標準的な化学的および生物学的染色などの単純な流体交換を必要とする標本調製プロトコルに適合可能である。ただし、これらの装置は、これらの装置を永久的に染色し損傷する可能性のある侵襲的な試薬(たとえば、OsOまたはRuO)を使用する、特定の一般的な液体および気体染色手順などの他のプロトコルにとって問題である。さらに、これらの装置のいくつかの開放的な性質は非常に急速に蒸発しがちなエタノールなどの溶媒の急速な蒸発を可能とするため、1つの流体が排出されてから第2の流体が導入されるまでの期間の流体交換中に、標本は空気乾燥されがちであるので、これらの装置は脱水プロトコル(たとえば、段階的なエタノール処理)にとって便利でも適切でもない。これらの装置は同様に、大きなサイズと遅い流体交換のため臨界超過COのような臨界点乾燥手順にも、大きなサイズ(グリッドに対して)により高(熱)質量が急速冷却を阻害するため低温手順にも適さない。さらに、上記装置は、十分高速な冷却を可能とするように、観察対象に低温流体の十分な流速も提供しない。グリッドを保持するのにエラストマー押圧を利用する装置は、エラストマー材料が低温下や、多くの侵襲的な試薬(たとえば、OsO、RuO、高圧CO、いくつかの溶剤)への暴露中にエラストマー特性または押圧特性を失うことにより、インデックスされた位置から観察対象を引き離す、あるいは場合により完全に遺失するため、これらの手順に適切ではない。
【0038】
LM、TEM、SEM SIMS、ESCA、XPS、およびMALDIの標本を調製する装置は様々な形を取る。最も一般的には、標本は各種試薬で連続的に処理される際にバイアル、皿、または小瓶に保持される。開放された瓶およびバイアルを使用すると手順を入念に制御することができるが、上記処理は通常無駄が多く、標本は損失または損傷を導きやすい。LMおよび組織病理学的処理用の標本を保持するために単純なバイアルまたは皿を使用する代替策は、損失または損傷のリスクを軽減するため、組織標本を保持するカセットを使用することである。その後、上述し、マコーミックおよびウィリアムソンが開示したようなカセットは、手動で、あるいは専用機器で自動的に試薬から試薬へと移動させられる。
【0039】
装置の中には自動処理を利用できるものもある。たとえば、Tissue−Tek(登録商標)TEC(商標)5(Sakura Finetek USA、Inc.)やLeica ASP300S(Leica Microsystems、Inc.)などの機器が利用可能である。電子顕微鏡の場合、RMC Baltec EMP5160(BAL−TEC AG)、EMS LYNX(Electron Microscopy Sciences、Inc.)またはSPI FastCat(商標)(Structure Probe、Inc.)などの類似の自動組織処理装置がある。これらは約50個の標本を一度に処理することができ、それぞれが、固定および包埋ステップの大半のために、組織病理学的カセットよりも大幅に小さい個々の多孔性カセットに保持される。自動装置は簡便性を提供するが、大量使用を除けば非常に高額である。さらに、上記自動装置は、手動処理よりも多くの液体量を必要とし、試薬の貯留部を必要とするため、特に日常的に使用されない場合は無駄が多い。また、特に抗体標識などの非常に高額な試薬、あるいはRuOなどの非常に有毒または有害試薬を使用する場合には、そうした試薬がこれらの高価な機器に損傷を及ぼす恐れがあるため、上記の無駄は複雑であるかもしれない。さらに、自動処理装置は、マイクロ波固定および低温プロトコルなどの多くの重要な処理方法を実行することができない。自動処理装置およびバイアル処理は、標本の一体的包埋も実行できないため、標本はバイアルまたはカセットから取り外し、最終的な包埋のために包埋カプセルまたは平坦な包埋トレイ内に配置しなければならない。カセットは、バイアルおよび自動処理で処理される標本を明確に特定し追跡するためにラベリングすることができるが、最終的な包埋などのいくつかのステップのため標本をカセットから取り外さなくてはならないので、上記機器および方法はすべての標本調製ステップにラベルを提供するわけではない。
【0040】
顕微鏡分析用試料を調製し保存する装置、方法、およびシステムを開示する。該装置は、変位型ピペットに取り付けることによって、顕微鏡観察用試料の調製に望ましい試薬で貯留部を満たすことのできる貯留部を提供する。いくつかの実施形態では、試料は透過型電子顕微鏡グリッドであってもよい。他の実施形態では、試料は顕微鏡標本であってもよい。さらに別の実施形態では、本発明は、TEMグリッドを調製する装置、TEM、SEM、LM、SIMS、ESCA、XPS、およびMALDI標本を調製する装置、およびグリッドと標本の両方を保存する装置などの、顕微鏡検査用試料を調製する方法を提供する。
【実施例1】
【0041】
グリッド保持マイクロピペット装置および試料保持マイクロピペット装置
本発明の一実施形態を図1A〜1Eに示す。図1Aに示されるように、先細の管状ホルダ1などの貯留部は、管腔内に個々のTEMグリッド2(または同様の観察対象)を受け入れる。各グリッド2は、チューブのテーパー勾配またはサイズや、チューブ内の小さな突出部によって貯留部周囲に保持され、また、グリッド面上の観察対象がチューブ壁との接触損傷から保護されるようにその縁部によって保持される。多数のプロファイルは、グリッド2を保持し、グリッド面(平坦面)のチューブ側面との接触を防止するために使用することができる。図1Bに示されるように広い、または開放された管腔3は、高粘性試薬で望ましい、あるいは高速な流体交換が望まれる場合に改良された流れを提供し、より狭い形状の管腔3は、染色またはその他の処理に必要な量を軽減し、図1Cおよび1Dに示されるようにグリッド動作をより確実に防止する。複数の突出部5は、図1Eに示されるようにチューブ内に2つ以上のグリッドを保持することができる。各種実施形態では、GHMP貯留部の内面の小さな突出部6は、表面張力を「破る」ことによって毛細血管充填を促進するように管腔内に配置することができる。先細GHMP貯留部1の頂部または第1の端部250および第2の端部252は、Pipetteman(登録商標)(Gilson、Inc.)と一般的に称される商用自動装置または類似のピペット装置、またはシリンジ、または自動液体取扱装置またはシステムなどのピペット装置7と適合するように設計される。他の装置との接合のために中間カップラ(図示せず)も使用することができる。最も単純な用途では、ピペット装置が、グリッド保持チューブまたはマイクロピペットGHMP1から流体を導入および排出し、染色またはその他の処理を可能にするために使用される(たとえば、マイクロピペット処理装置)。GHMP1により、ほぼすべてのグリッド標本調製手順およびグリッド保存をGHMP1内で達成することができる。このために、個々のグリッドの手での取扱が格段に減ることによって、損傷、損失、置き間違い、および取り違えが大幅に低減する。
【0042】
GHMP1の基本設計は損傷からの優れた保護を提供することが分かる。グリッドを保持するスロットの使用は、スロットはより確実であるため、接着剤や留め具に依存したホルダよりも安全性が高い。グリッドは留め具から離れて機能することができ、留め具は観察対象上での留めや留め具内へのグリッドの不十分な配置などのオペレータエラーを起こしがちで、対象が適切に保持されない。ポリマースリットなどの留め具は強度が可変で、酸化剤、架橋剤、および標本を染色または固定するのに使用する他の薬剤などによる特定の化学処理は、ポリマーに損傷を与えて弾性を低減させる。同様に、グリッドを適所に保持する接着塗布の使用は、グリッドが接着剤基板上に配置される場合、標本の不適切な配置があまりにも簡単に起こり、標本が接着剤にくっつく場合があるため問題である。また、グリッド(たとえば、Formvar(登録商標))または炭素膜に通常貼付される標本支持ポリマーが接着剤にくっついて、標本の損失または損傷につながる可能性もある。当該技術に詳しい者であれば、グリッドのどちらの面が観察対象を含むのか特定するのが困難な場合が多く、これが非常に一般的な課題であることを認識している。グリッドがスロット内に保持される装置はこれらの課題を有していない。ただし、上記スロット内で適切な流体の流れを達成するのは困難である可能性がある。しかしながら、GHMPの設計は流れの中央にグリッドを配置することによって、グリッド(観察対象を取り付ける)と処理流体間の優れた流体接触を提供する。
【0043】
図2A〜2Eは、異なる視点から見た先細低量GHMP4に保持されるグリッドを示す。図2Aは、保存のためまたは特定の処理ステップ間にグリッドを適所に保持するために使用できる保持具または栓20を示す。図2Aに示される本発明の実施形態では、保持具または栓20は固体で、栓20は貫通孔のように流体または気体交換を可能にするように生成できると認識すべきである。よって、栓20はグリッド2またはその他の標本を保持する。よって、栓または保持具20はGHMPと一体型、すなわちワンピース品とすることができると理解すべきである。GHMP内で発生するプロセスを見ることが望ましい可能性があるので、いくつかの好適な実施形態では、GHMP4の側面21は図2Dおよび2Eに示されるように平坦であり、光学顕微鏡の場合、図2Bおよび2Cに示されるように透明であり、または分光のための適切な照射を透過させる。たとえば、これにより、動的光学顕微鏡は、その後で、電子顕微鏡用に処理され、電子顕微鏡で高解像度で検査されうるグリッド上で発生する生体または非生体的事象を監視することができる。別の例は、プロセス処理を監視すること、またはプロセス中の上記処理の結果を測定すること、たとえば、染色剤の吸収や水またはその他の材料の観察対象からの除去を監視することである。図3に示される別の実施形態では、GHMP22は互いに積層可能に設計および構成することができる。図示されるように、本実施形態では、複数のGHMP22を一緒に適合させ、複数のGHMP試料を一度に調製する最終段階としてマイクロピペット7を適合させることができる。また、図示されるように、GHMP22の下面は、固定液をGHMP22にピペットで注入させやすくするため、特別なまたは標準的な先細ピペット先端23に取り付けられる。
【0044】
グリッドは通常縁部に保持すべきだが、図4A、4C、および4Dに示される小さなバルク標本30など他の種類の標本または観察対象はそのように保持する必要はない。本実施形態は、標本ホルダマイクロピペットまたはSHMP31と称することができる。流体透過を可能にするが、標本30をとどめるスクリーンまたは類似の構造32は、SHMP31内に標本30を保持するためにSHMP31の底部に組み込まれる。これは、図4Aに示されるSHMP31の上平面図を示す図4Bに示される。その後、スクリーンまたは類似の構造は、SHMP31に完全に挿入される留め栓またはキャップ33に組み込まれる。いくつかの実施形態では、図4Dに示されるように、留めスクリーン35を有する長い栓またはキャップ34はSHMPから延在するので、栓/スクリーン34/35は標本を挿入/取外しするためにSHMPから容易に取り外される。いくつかの実施形態では、上側の栓34は、ピペットまたはその他の装置(図示せず)と接合する、あるいは複数のSHMPやGHMP31の積層を可能にするように成形される。
【0045】
もしくは、当業者であれば、栓35および結合アダプタ36は、任意に組み合わせて使用されるように別個のユニットとして成形し使用することができると理解するだろう。含まれる標本の種類または形状が主な区別であるため、SHMP3およびGHMP1は通常、後の説明では置き換えることができることに留意すべきである。グリッドは固定サイズで製造されるため、SHMPの特定の実施形態はGHMPよりも大きくも小さくもできるが、他の種類の標本もより大きく、または小さくもできる。これらのSHMPは、TEM(および他の顕微鏡検査または分析)のための切片化を可能にするように樹脂内に観察対象を包埋するためのモールドとして使用することができる。SHMPのサイズと形状は、この目的で現在使用されるモールドと互換性がある。樹脂は直接SHMP内で硬化させることができ、その後でSHMPが切り取られる、あるいは硬化した樹脂が上部から除去されて、切片化の準備ができた包埋標本を暴露させる。
【0046】
図5は、相互使用のためにGHMPまたはSHMPの互換性を示す。SHMPは、第2のSHMP38内に保持される標本を捕えるスクリーン素子32を設ける1つのSHMP37を積層することができる。図4Cおよび4Dに示されるスクリーンおよび栓33、34/35などの別個のスクリーンおよび栓を使用することもできる。SHMPの積層は、複数の標本の同時処理を可能にする。
【0047】
図5A〜Cに示される実施形態では、各SHMP37/38は、上部の内径がピペットまたはその他の類似の装置と適合し、下側接続部の外径が追加のSHMPの内側上部または適切なサイズのピペット先端39と適合するように、構成および成形される。ピペット先端は、SHMPの到達範囲を拡張するのに使用することができる。さらに、各SHMPは、限定されたアパーチャi/o(図2に示されるように、線c、または図5Bに示されるように複数のアパーチャ32)を備えるスクリーンを含むように一体成型される。
【0048】
各種他の例示的実施形態では、成型した先端、すなわち、SHMP37のように平坦な、あるいはSHMP38のように先細の先端を有していない下面のあるSHMPは、(入力/出力部を除去することによって)SHMPの体積を低減し、SHMPに必要な保存スペースの必要量を低減し、断面積を増やすことによって粘性流体のピペットでの移動を簡易化する。さらに、多孔性スクリーン素子32は成型中に直接、あるいは製造中に二次的に切断、穿孔、またはその他のプロセスによって生成することができるため、これらのSHMP設計は装置の製造を簡略化する。SHMP38のように楔状、チゼル状、または先細状の底面、またはSHMP22(図3)のようにその他の凹型(SHMPの内部から見て凹型)の底面は、SHMP内で標本を位置決めするのを容易化し、先細形状はSHMP貯留部の体積をさらに低減する。標本は、SHMPの中央底部を凹部に定着させることができる。標本を直接的な操作(SHMPをピペット装置から取り外した後)によって先細状、楔状、またはその他の形状に手動で配向させる、あるいは、標本をSHMPの底部に自動で定着させることができるため、この設計は包埋するのに有益である。多くの用途では、いったん包埋されれば、特定の配向に標本を配置することが望ましい。第2に、標本をSHMPの頂点に配置すると、結果的に標本ブロックは(TEMまたはLMあるいはその他の用途のための)切片化の前にブロックをトリミングする必要が減り、分析用標本を調製するのに必要な時間と努力を軽減する。また、SHMPは、顕微鏡スライド、顕微鏡カバースリップ、および、それ自体観察対象である、あるいは顕微鏡またはその他の分析機器用の観察対象のための基板でありうる多くの他の材料および基板と適合するように成形することができる。
【0049】
SHMPに包埋された標本は、直接トリミングされた後、SHMPから包埋標本「ブロック」をまず除去せずに切片化されうる。当業者であれば、たとえば、37のような平坦形状、38のような楔状/先細形状、または31(図4)のような漏斗状の、使用するSHMPの形状に応じて、トリミングの量が必然的に変動することを認識するであろう。包埋標本は所望すれば最初にSHMPから取り外すことができるが、SHMPはポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、およびポリテトラフルオロエチレンなどのプラスチックを含む、容易に切断されうる材料から製造されるため、たとえば、トリミングおよび切片化は上記取外しなしで直接進めることができる。SHMPが図8に示されるようにラベリングされれば、標本がSHMPから取り外されなくても、ラベル51が保持される。
【0050】
さらに別の実施形態では、図6A〜6Dに示されるように、SHMP112は、ピペット先端39に嵌合することのできるボックス状の構成を備える。本実施形態では、SHMP112は、流体交換および他の処理ステップ中に標本30を保持する従来のピペット先端に挿入されるボックスまたはカセットである。この種のホルダは標本ホルダピペットインサート(SHPI)である。SHPI112は、流体交換を可能にする少なくとも頂部110および底部111上のスクリーン素子を有することができ、開放して標本30を挿入し、閉鎖して標本30を閉じ込めることを可能にする、図6Dに示されるようなヒンジスナップ上面110などの手段を有する。その後、SHPI112は、図6Bに示されるピペット先端39に挿入される。複数のSHPI112ユニットは、図6Cに示されるように、適切な長さだけピペット239に挿入することができる。
【実施例2】
【0051】
SEMおよび類似標本の調製
別の本発明の実施形態は図7A〜7Dに示される。本実施形態は、スクリーンまたはフィルタ40が導電材料(適切な金属など)または導電性を提供するように処理可能な材料から生成される機械的に頑丈な支持部から構成されるSHMP31である。スクリーンまたはフィルタ40は、SHMP31から容易に取り外すことができ、その後自立する。スクリーンまたはフィルタ素子40はSEM用の標本支持部としての使用を簡易化するように伝導性であるが、伝導性が必要とされない光学顕微鏡および原子間力顕微鏡などのその他の用途でも使用することができる。フィルタまたはスクリーン40の孔径は、図7Bに示されるように、観察対象を取り込むように選択される。図7Aに示されるように、小さな観察対象41の溶液(または懸濁液または粉末)はSHMP31内に配置され、その後、ろ過によって伝導性フィルタ支持部40上で凝縮された結果、フィルタ40上で対向する複数の観察対象41となり、SHMP31は、図7Bに示されるように、流体をピペットから強制的に排出することによって観察対象41をフィルタまたはスクリーン支持部40に移送するピペット先端として使用される。図10に示される流体導入装置62は、この移送を可能にするように追加の流体量を導入することができる。観察対象41はまた、遠心分離によりフィルタ40上に蒸着させることができ、SHMP31は、図7Cに概略的に示される遠心分離機(図示せず)内のSHMP31を支持する円柱状ホルダ43内に配置される。円柱状のホルダ43は、遠心分離中にフィルタ40を強制的に通過させられる懸濁液を貯留部44に提供する。
【0052】
一部の観察対象は上記沈澱ステップを必要とせず、自動的に支持部40上に定着されると理解すべきである。本実施形態では、SHMP31は、観察対象41のろ過または遠心分離が標本調製の早期、後期、または中間のステップで発生することができるように、いかなる順番でも選択して、あらゆる所望の処理ステップで使用することができる。図7Dは、その上に観察対象を蒸着し、マイクロピペットチューブから取り外し、さらに、たとえばSEM用の蒸発金属の導電層で塗布するなどして分析用に調製することのできる、頑丈なスクリーン40を示す。所望すれば、標本41は、SEMまたはTEM撮像後の保存用にSHMP31に戻すことができる。反復検査(および追加処理または保存用にSHMPへの返送)を簡易化するため、フィルタ40は明確に特定された上側標本支持面45、および下側対向面46を有する。上側標本支持面45は、当該標本領域の配置を可能にするように、グリッドまたは「ファインダ」パターンを伴って調製することができる。SHMP31は様々なサイズと形状を有することができる。1つの有益なサイズと形状は、TEMグリッドを保持する固定具をSEMやTEM内で使用できるようにするため、スクリーンまたはフィルタを名目上3mmの径に適合させることである。いくつかの用途では、TEMグリッドをフィルタまたはスクリーンとして使用することができる。
【実施例3】
【0053】
明確な特定
サイズが小さいために、個々の顕微鏡標本をマークする、あるいは特定することは困難である。標本は通常は可視でなく、あるいは、精査顕微鏡などによる拡大なしでは識別不能であるので、どの特定のマーキングまたは装置も有効であるには小さすぎる。さらに、上記マーキングは、少なくとも特別な機器なしではユーザにより便利にグリッド上で行うことができない。また、大半の標本のサイズはわずか数ミリメートルなので、組織標本または非生体標本は容易にマークすることができない。現行では、調製中または保存中の特定方法は、グリッドボックスのナンバ付けされた位置またはラベリングされたバイアルなど、特定のための標本の位置に依存する。グリッドはTEM標本調製の最終段階であり、単独の標本が切片化されて、数十個のグリッド上に搭載されるが、上記処理には多大な日数がかかるため、グリッドの特定とロジスティックの管理は重要事項である。したがって、本発明がいかに顕微鏡標本の追跡と特定を簡易化するかの例として、グリッドの特定を使用する。グリッド処理はグリッドボックスの中で行われないため、グリッドはボックスから取り出し、各準備手順、他の処理、および言うまでもなく分析または他の検査のためにボックスに戻さなければならない。本発明では、1つのグリッドを常に単独のGHMP内で、または1つの標本をSHMP内で保持し、処理し、保存することができる。よって、いったんグリッドが調製されてGHMPに挿入されれば、電子顕微鏡での検査のため、または他の機器での分析中を除き、グリッドを取り出す必要はない(上述したように、所望され適切であれば、2つ以上のグリッドを、そのように設計された単独のGHMP、またはSHMP内の2つ以上の他の観察対象に保持することができる)。これで、損傷または損失のリスクが大幅に低減される。よって、1つの標本または観察対象(TEMグリッドなど)がほぼ常に本発明(GHMPまたはSHMP)に属するGHMP/SHMP設計の大きな利点は、観察対象が明確に特定され、そのGHMPまたはSHMPの特定によって追跡可能なことである。
【0054】
図8A〜8Eは、GHMP/SHMPが各種方法によって明確にラベル付けされる一実施形態を示す。GHMP/SHMP貯留部31は、各グリッド(または、SHMPなどの他の標本)に対して1つのホルダを使用することが実行可能となるように十分小型で安価であり、上記特定を各ユニットに容易に適用するのに十分なほど大きく、固定、保存、または保管の目的において不便で無駄が多くなるほどには大きくない。図8Aは、上記特定が、上記ラベリング51に関して処理される領域上でエンドユーザによってGHMP/SHMP上に手書きされる数字またはその他のマーク、図8Bに示されるレーザエッチングまたは成形されたマーク52などの予めプリントされた数字またはマーク、図8Cに示されるGHMP/SHMPに貼付されたステッカー53、図8Dに示される統一商品コード(UPC)またはその他の機械読取可能マーク54、あるいは図8Eに示される無線識別タグ(RFID)55などの遠隔読取可能マークであり得ることを示す。当業者にとっては、カラーコーディングやGHMP/SHMPユニット内での特定マーカまたは信号生成マーカの成形など、示されていないが本発明の範囲に属する多くの追加の特定手段があることは自明である。よって、GHMP/SHMP31は向上された標本特定を提供し、これは、たとえば臨床病理標本、法的手続内での法医学的標本の分析過程管理の判定、および適切な製造プロセス、適切な研究所慣行、国際標準化機構(ISO)認証などを達成するのに必要なプロトコル、といった多くの用途で極めて重要である。
【0055】
各種の例示的実施形態では、試料識別装置は任意の従来の装置を含むことができる。ただし、いくつかの実施形態では、識別装置は図9A〜9Cに示されるように機械読取可能装置とすることができる。図示されるように、本実施形態では、機械読取可能コードは、各種の2Dバーコード56または他の機械読取可能コードを含むことができる。上記機械読取可能マーキングは、手動または自動装置による読取を容易にするため標本ホルダ(SHMP、GHMP、SHPI)上の様々な位置に配置することができる。たとえば、図9Aに示されるように、マーキングは、SHMP31上に成形されるフラップまたは突起57上のSHMP/GHMP/SHPI本体31に貼付することができる。他の取り付け場所としては、所与の用途の必要に応じて、図9Cに示されるように、上からまたはキャップ58が開放されているときは(図示せず)キャップ58の内部から読取可能なコードを伴うキャップ58の位置である。もしくは、機械読取可能識別装置を、SHMP31が図9Bに示されるようにホルダ60内に密に梱包されている場合は下から適切なバーコードリーダまたは他のスキャン装置50によって読み取ることができるように、SHMP/GHMP/SHPIの下面59に配置することができる。
【実施例4】
【0056】
固定装置
特定の手順は、標本が常に、あるいはほぼ常に浸されているように、流体の迅速な交換を必要とする。上記手順の1つが、エタノールなどの溶媒の濃度を逐次増加させることによって達成されることが多い標本の脱水(水の除去)である。GHMP(またはSHMP)の密封的な性質は、第1の溶液が排出された後で第2の溶液が導入される前の乾燥を大幅に減速させる一方、不注意な乾燥が発生する可能性がある。GHMP/SHMP装置への追加を図10に示す。図10は、第2の流体の変位によって同時にある流体を除去するのに役立つ本発明の実施形態を示す。よって、標本は常に流体に浸されている。該装置は、2つの別個の流体注入口62をグリッド2(またはその他の観察対象)を含むGHMP1に接続させることのできる「Y」型チューブ61である。各注入口は開口または閉鎖を制御するバルブ63を含むことができる、あるいは上記機能は接続装置によって提供することができる。キャップ64またはバルブは、流体の長期保有のためにGHMP1の流出端に組み込むことができる。各種実施形態では、「Y」型装置61は複数の入力(3個以上)を含み、自動流体取扱システムに組み込むことができる。よって、標本処理は、単に変位型ピペット注入ではなく単方向流システムを用いてSHMP/GHMPで達成することもできる。さらに、「Y」型装置61は、ピペットの貯留部内に容易に保持可能な大量の流体での処理を可能とし、たとえば、図7に示されるようにフィルタまたはスクリーン40上に観察対象41を蒸着させるため、流体の流れを単一方向でのみ発生させることができる。
【実施例5】
【0057】
複数の標本の同時固定
図11は、複数のGHMP1(またはSHMP)内に保持される複数のグリッド2の同時処理を示す。これは、複数のバレルピペッタ71とともにアレイ状の標本/グリッド2を処理することによって達成することができる。GHMP用のホルダ72は、標準的な多バレルピペットが容易に使用できるように標準的な多ウェルプレートで、あるいは、自動またはロボット流体配送システムの使用を可能にするようなその他の便利な間隔および配置で使用されるのと同じ間隔で設計することができる。GHMP1内の標本処理に特有の支持基板は、複数のピペット装置または自動流体取扱システムと調和するGHMP間の間隔を提供し、膜の支持を提供し、いくつかの実施形態では排水管を含みうる廃棄物洗浄用の排水容器73を提供する。要求に応じ、GHMP1の群からの廃棄物流を制御するためバルブ74を含めることができる。特定の実施形態では、上記バルブ74は、複数のGHMPへの流れを同時に制御するため、スライディングバー75またはその他の手段によって始動させることができる。別の実施形態では、廃棄物流は、単独のGHMP1と関連付けられる個々のバルブ76によって制御することができる。図11に示されるように、バルブ75の群が開放される。上記バルブは、流体の長期保有が必要な場合に有益である。
【実施例6】
【0058】
一括群処理
多くの処理手順は、1つのGHMP(またはSHMP)を通ってピペット注入するのではなく、グループ化した標本を一度に浸漬することによってより容易に達成される。上記手順は、逐次濃度の増加するエタノール内への連続的浸漬による脱水、および、特に臨界点手順(高圧チャンバで発生する)による乾燥などのその他の手順を含むことができる。これらの実施形態では、GHMPまたはSHMPはピペットとして使用されるのではなく、標本保存のために使用されているが、独自のピペットの特徴とラベリング保存機能は保持される。
【0059】
各種の例示的実施形態では、図12AおよびBに示されるGHMP/SHMP31ユニット用のホルダ80は、上記手順を目的とする。図12Aはグリッド2を含む4つのGHMP31の断面図で、図12BはGHMP31の2×5アレイを有するホルダ81の上面図である。図12Aは同じ配向の4つのTEMグリッドを示す。図12Bは、本実施形態では配向を制御する必要がないため、様々な配向のTEMグリッド2を示す。TEMグリッド2を含むGHMP31はベース81上に配置され、複数のGHMP31を一緒に挟む上面82で適所に保持される。自由流体流は、ホルダ80の底面81と上面82およびGHMP31の孔83を通過することができる。上面82と底面81は位置合わせされ、たとえば、蝶ネジ84または任意の類似の装置などの固定具で一緒に保持される。各種実施形態では、GHMP/SHMP31内のグリッド2または標本用の拘束具または留め具は留め部材85によって提供することができる。GHMP/SHMPホルダ80の全体の形状は、図12Aおよび12Bに示されるように、ピペットまたは自動流体配送に順応し、特定の臨界点乾燥(CPD)チャンバ(図示せず)またはその他の標本調製装置に適合するように矩形であってもよい。
【0060】
図13Aおよび13Bに示される別の例示的実施形態では、ホルダ91が円形であってもよい。本実施形態では、ホルダ91の形状は、一部の従来のCPDチャンバや円形の研究所ビーカー(図示せず)に合わせて適合修正可能である。もしくは、ホルダは、他の装置に適合する、あるいは高圧フリーザーまたはプロパンジェット冷凍装置などの補助装置の特定の間隔または構造に適応するように他の幾何学的構造で調製することができる。他の実施形態では、標本の用途と種類に応じて、特定の標本はGHMP/SHMP31内での運動を制限する機構を必要とする。図13Bは線a−aに沿った図13Aの側面図で、ホルダトップ82と一体化することのできる拘束具85を示す。標本の拘束および保持は、図2および図4に示される栓20およびスクリーン32で達成することができる。標本2をGHMP/SHMP31内に固定するための栓20やスクリーン32は、ホルダ80のキャップに接続することもできる。複数のGHMP/SHMP31用の上記ホルダ91/80は、たとえば、脱水、急速冷凍、包埋、および自動組織処理装置および着色機内での使用などのその他のプロトコルを含む、多くの異なるプロトコルのために使用することができる。
【実施例7】
【0061】
長期保存用装置
図14は、GHMPおよびSHMP31の長期保存用の容器100を含む本発明の別の実施形態を示す。図示されるように、図11に示した複数のバレルピペッタ71とともに使用するホルダに類似する、複数のSHMP用のホルダ101を使用することができる。本実施形態では、ホルダ101は容器ベース102内にぴったりと嵌合するように設計し構成される。いくつかの例示的実施形態では、ホルダ101は、廃棄物や、乾燥剤、染色剤用のスペースまたは領域103を提供するように、ベース102内に嵌合する。さらに、容器100には、内部に保存されたGHMP/SHMPが大気から封止されるように、ベースに気密シールを提供するよう構成された上面104が含まれる。たとえば保管用保存のための保存容器100は、単位体積当たりのSHMP/GHMPの数を最大化するため、異なる間隔や位置を利用することができる。通常、ホルダ101は、高圧下での溶媒との使用のために大きな化学抵抗が必要とされ、溶液内に浸しておくために高密度が要求されるCPDなどの処理に使用されるよりも、ポリマーなどの比較的安価な材料から形成される。これらの実施形態では、保存容器100はいくつかの特徴を有する。たとえば、ホルダ100の挿入位置の提供、染色剤(染色の際)または乾燥剤(標本を乾燥させる)を配置するスペース103、または、その他の処理の提供などである。緊密に適合するカバーまたは蓋104、(たとえば、スナップ式またはヒンジ式)はGHMP/SHMP31を適所に保持し、緊密なシールを提供し、TEMグリッド2または他の標本を内部に保持する個々のGHMP/SHMP31に蓋をかぶせる役割を果たすことができる。各種の例示的実施形態では、保存容器100は、化学的蒸気染色などの特定の手順のためにシールされたコンパートメントも提供する。さらに、各種実施形態では、保存容器は図9に示されるように、ラベルの読取を容易にする特徴を組み込むこともできると認識すべきである。
【実施例8】
【0062】
標本切片化
図15A〜15Cは、LMまたはTEM分析用にSHMPまたはGHMP貯留部内に包埋された標本を切片化するプロセスを示す。図15Aに示されるように、包埋標本30を有するSHMP162はミクロトームチャック170に締め付けられる。バーコード56またはその他のラベルは保持される。包埋標本30を有するSHMP162は、図15Bに示されるようにミクロトーム切片化することができるように、レーザまたはその他の切断ツールを用いてトリミングされる。トリミングは、SHMP本体171およびSHMPスクリーン172(各種実施形態では、これらは十分軟らかい材料から成形される)を通って行うことができる。次に、包埋標本30は、ガラス、金属、ダイヤモンド、またはその他の切断エッジまたはナイフで、ミクロトーム173(または超ミクロトーム)を用いて切片化される。最初の断片は、スクリーン174および場合によってはSHMP本体162の片(図15Bに示す)を含むことができるが、その後の断片は図15Cに示されるように標本175を主に含む。本発明は、TEM、SEM、および液体処理プロトコル(たとえば、染色)、ポリマー包埋を含む樹脂処理、さほど一般的でない気相処理プロトコル、および臨界点乾燥プロトコルなどの二次的な機器ベースの手順で調製される多くの他の種類の分析機器用の標本処理を可能とし、向上させる。TEM、LM用の生体および非生体標本調製のためのほぼすべての既知のプロトコルと、SEMおよび多くのその他の機器用の多くのプロトコルとは容易に適合させることができ、本発明でより容易に実行することができる。システムも極めて適応可能である。したがって、今後、標本調製のために開発される手順も、本発明での使用に適合可能である可能性が高い。さらに、すべてまたはほぼすべての処理ステップは単独のカプセル(GHMPまたはSHMP)内で行われるため、損失、損傷、または取り違えの可能性は他の既知の方法と比べて大幅に低減される。さらに本発明の能力を立証するため、本発明の柔軟性と有用性を示すいくつかの追加の特徴、態様、および利点を以下説明する。
【実施例9】
【0063】
試料シール用システムマット
多くの標本処理プロトコル中、ピペット装置との接続を保持することが望ましくない、あるいは不可能である延長期間中に、本明細書に記載の各種標本ホルダ内に材料を維持する手段が要求される可能性がある。たとえば、染色で長い定温放置時間があるとき、長時間の固定ステップ中、マイクロ波炉で実行される際に処理が向上されるとき、従来の炉での包埋の熱硬化重合中などである。図16Aに示される装置は、ピペットまたはホルダ内に液体を保持するために必要な品質のシールを提供し、マイクロ波照射、加熱、および化学的抵抗などにさらされる状況に耐えうる材料から製造される、上記成形マット120である。各種実施形態では、適切な材料は正確な状況に応じて変動するが、多くの実施形態では、上記材料はシリコンゴム、適切なポリウレタン、その他のエラストマーを含み、一部の非エラストマーが通常適切な場合があると理解すべきである。マット120の断面はSHMP121を保持することを目的とする。図16Aに示されるマット120の上面図は、12個のSHMP121を保持する目的のマット120内で6×2アレイの穴123を示す。穴123間の間隔は、図16Bに示されるように、多チャネルピペッタや自動処理液体取扱システムの間隔に適応するように設計することができる。
【0064】
図16Cは、いくつかの実施形態では、マット120が、使用する様々なGHMP/SHMPのそれぞれに対して異なる形状の穴123を有することができることを示す。適切な形状の穴123は、各種SHMP、GHMP、本明細書に記載されるSHPIを挿入された従来のピペット先端、および当業者にとって自明のその他の標本ホルダのそれぞれに対して所望される任意の構造で生成することができる。
【0065】
マット120は他の有益な機能を果たすことができる。SHMP121は、標本のSHMPへの最初の挿入を容易にするためにマット120内に配置することができる。SHMP121はこの段階で、標本を湿らせる、あるいは固定を開始するためにバッファまたは固定剤を充填することができる。処理が標本が切片化のために包埋されるプロトコルの終了に近づくにつれ、マット120は追加の目的を果たすことができる。充填されたSHMP121の開放上面により、最終的な包埋の前に標本を所望の配向に物理的に操作することができる。SHMP内に配置された最後の包埋媒体は非常に粘性が高い場合があるので、その他の流体交換に対して実行されるようにピペット注入により包埋媒体を導入するのではなく、流し込みまたは別のピペットにより包埋媒体を上から投入することができる。その後、マット120をキュア装置に挿入することができる。
【実施例10】
【0066】
試料を遠隔調製するためのシステム
標本調製は、光学または電子顕微鏡検査用の完全な標本調製に必要な研究施設から離れて実行されることが多い。上記位置は、医者が患者からの生検を取得することができる小規模の病院やクリニックを含む。上記位置では、回収された生検が次に、組織病理検査前に調製を完了させることのできる施設に送られる。上記位置では、固定を開始する簡便な手段が望ましい。図17は、SHMP装置または類似の装置とともに使用することを意図したシステムを示す。
【0067】
図17Aに示されるように、標本130が取得され、SHMP131に挿入された後、図17Bに示されるように蓋をかぶせられる132。図17Cに示されるように、蓋をかぶせられたSHMPは次にバイアル133内に配置される。その後、バイアル133は、図17D/Eに示されるように、固定剤の貯留部またはアンプル135からバイアル133を満たす充填装置134に接続される。次いで、図17Fに示されるように、充填装置134が取り外され、キャップ136がバイアル上に置かれる。バイアル133は、標本調製および分析用に、ラベリングして適切な設備に送ることができる。もしくは、充填装置134は充填のために直接SHMP131に接続することもできる。ただし、その後の処理のために研究所施設に移送中にSHMPを保護するため、充填されたSHMP131を保持する別個のバイアル133が望ましい。上記固定プロトコルは通常、有毒固定剤を使用するが、野外での使用が必要な場合、本発明の本実施形態は上記固定剤を取り扱う安全で簡単な方法を提供する。別の実施形態では、バイアル充填装置134は、標本調製ラボに配送されるまでバイアル133に取り付けられたままである。いったん標本調製ラボに受け入れられたら、SHMPはバイアルから取り外されて、たとえば図15A〜Cに示されるように処理される。
【実施例11】
【0068】
大型標本の取扱
図18は、特に大型の標本を取り扱うのに有効な本発明の実施形態を示す。標準的マイクロピペッタの径よりも大きな標本は、SHMP140およびピペッタ142を適合させるアダプタ141に接続された大型のSHMP140に収納させることができる。本実施形態では、SHMPとアダプタの体積は、わずかピペット装置の変位体積だけであってもよい。
【0069】
図19は、粘性試薬で標本31を調製するのに有益な本発明の実施形態を示す。本実施形態では、ピストンアクチュエータ150が、SHMP151のチャンバにより強制的に粘性流体を引き込むことができるように、標本31のより近くに吸引変位力を印加する。
【実施例12】
【0070】
試料の連続文書化
回収点から分析点を通過する標本の連続文書化および追跡は、本明細書に開示される装置およびシステムの1つの利点である。機械読取可能ラベリングは自動追跡を提供するが、実質的な利点はテキストラベリングからも取得される。図20AおよびBは、電子顕微鏡試料(図20A)または光学顕微鏡試料(図20B)のいずれかを調製する際に研究所情報管理システム(LIMS)161で実行される標本の機械読取可能バーコードラベリングを用いる、標本の自動追跡の実行を示す。当業者であれば、同じ原則が、SEM試料およびSHMPやGHMPを用いて調製される他の標本にも適用可能であることを認識するであろう。
【0071】
図20Aは、TEM試料の調製を示す。TEM標本31はバーコードラベリングされたSHMP160に挿入される。その後、バーコードはスキャンによりLIMSデータベース161に取り込まれて、矢印で示されるように、標本31の詳細をLIMSデータベース161に送る。SHMP160は、特定の標本のそれぞれに関してLIMSデータベース161に入力された指示に従い標本31を調製するために使用される。制御は、技術者がユーザインタフェース270を介して従うデジタル指示を提供することによって間接的に、あるいは、指示が自動標本処理装置(図示せず)を制御する直接的に実行される。包埋の完了後、固定されたSHMPブロック162は超ミクロトームで切片化される。グリッド2が調製されると、それらはバーコードラベリングされたGHMP163に挿入される。次に、バーコードラベリングされたGHMP163はスキャンによりLIMSデータベース161に取り込まれ、161でアップロードされたGHMP160のファイルにリンクされうる。その後、グリッド2は、指示を介して、あるいは直接的な機械制御によってプロトコルを制御するために使用されるバーコードスキャンで処理される。処理後、グリッドは保管保存のためにGHMPにとどまる。GHMP163は内部に含まれる標本グリッドがTEM164で検査されるときは常にスキャンされ、その結果として生じる画像がさらにLIMSデータベース161にリンクされる。
【0072】
図20Bは光学顕微鏡試料の調製を示す。光学顕微鏡標本は、TEM標本と同様の方法で取り扱われる。標本31はバーコードラベリングされたSHMP165に挿入され、その後、バーコードは、ユーザインタフェース270を介して標本の詳細をアップロードするLIMSデータベース161にスキャン取り込みされる。SHMP165は、特定の標本のそれぞれに対してLIMSデータベース161に入力される指示に従い標本31を調製するのに使用される。包埋の完了後、固定されたSHMPブロック162はミクロトームで切片化される166。LM顕微鏡の場合、断片は、バーコードプリンタ167から(バーコードがLIMS記録にリンクされるよう確保する他の手段によってプリントまたはラベリングされたLIMS161から)バーコードでプリントされる光学顕微鏡スライド168上に配置される。次に、バーコードラベリングされたスライド168は、各種実施形態において、染色と使用される他の処理プロトコルの自動ダウンロードを提供するバーコードスキャンでさらに処理される。次に、バーコードは、スライド168がLM169で検査されるときは常にスキャンされ、その結果として生じる画像がさらにLIMSデータベース161にリンクされる。
【実施例13】
【0073】
TEM試料の調製例
図21は、本発明に係るTEM試料を調製する一手順を示す。図示されるように、ステップS1では、標本がSHMPに挿入され、ステップS2では、SHMPに蓋がかぶせられる。次に、ステップS3では、ピペッタがSHMPに接続される(図示される実施形態では、単独の先端ピペット装置が使用される)。その後、ステップS4では、ピペッタが、固定、染色、および包埋を実行するために通常何十回もの流体交換で標本を処理するのに使用される。ステップS5では、断片がミクロトーム上で切片化され、TEMグリッドが調製される。ステップS6では、グリッドがGHMPに挿入され、ピペッタに接続される(図示される実施形態では、ステップS7で、複数の先端ピペッタが使用される)。その後、グリッドはさらに複数の流体交換を経て処理される。ステップS8では、完全に調製されたグリッドがGHMPに保存される。図示される実施形態では、GHMPはバーコードでラベリングされる。各種の例示的実施形態では、完全自動ピペット状装置がユーザの需要または希望にかかわらず使用可能である(図示)ことを認識すべきである。
【0074】
本発明は、液体処理プロトコル(たとえば、染色)、ポリマー包埋などの樹脂処理、一般的でない気相処理プロトコル、および臨界点乾燥プロトコルなどの二次的な機器ベースの手順で調製される、TEM、SEM、および多くの他の種類の分析機器用の標本の処理を可能にし、向上させる。LMおよびTEM用の生体および非生体標本調製のためのほとんどすべての既知のプロトコル、およびSEMや多くのその他の機器のための多くのプロトコルは、容易に適応させ、より容易に本発明とともに実行させることができる。システムも極めて適応可能である。したがって、今後、標本調製のために開発される手順も、本発明との使用のために適合可能となる可能性が高い。さらに、すべてまたはほぼすべての処理ステップは単独のカプセル(GHMPまたはSHMP)内で行われるので、損失、損傷、または取り違えの可能性は他の既知の方法よりも大幅に低減される。
【0075】
さらに、本発明の利便性を立証するため、本発明の柔軟性と用途を示す追加の特徴、態様、および利点を以下説明する。
低温処理
GHMPまたはSHMPは、低温冷凍、冷凍染色、凍結置換、高圧冷凍、および長期低温保存などのほとんどの低温処理プロトコルで使用することができる。グリッドはGHMP内に配置することができる、あるいは、他の標本はSHMP内に配置し、その後、GHMP/SHMPユニット内に向けられたノズルまたはノズル群を有するプロパンジェット(または他の寒剤)で急速冷凍させることができる。図12AおよびBおよび13に示されるようなホルダは、上記装置を適合するように適切に変更された寸法のGHMP/SHMPユニットを支持するために使用することができる。同様に、高圧冷凍は、高圧寒剤の急速充填を可能とするように適切な配向にGHMP/SHMPユニットを支持するホルダで達成することもできる。急速冷凍は、寒剤を直接GHMPの管腔に向けるホルダを用いて、液体エタン、液体窒素(LN)スラッシュ、またはその他の寒剤に浸漬することによって達成することができる。GHMP/SHMPは小さく、それらの管腔を通じての優れた流れを提供し、低熱質量材料製であるため、標本の必要な急速冷却が内部で達成される。いったん観察対象が冷凍すれば、その後の処理は、観察対象ユニットの除去なしで凍結置換、冷凍固定、冷凍ラベリング、および冷凍染色などをGHMP/SHMP内で達成することができる。GHMP(たとえば、図12Aおよび図12Bと図13に示されるような金属)用の高熱質量ホルダは、標本を温めずにある位置から別の位置への移送を促進する。上記ホルダは、LN2などの寒剤に漬けておくために十分高密度である。
【0076】
有害な、損傷を与える、有毒なプロトコル
GHMPおよびSHMPは、損傷なしに大半の処理に耐えることのできる低価格のポリマー(ポリエチレンやポリプロピレンなど)から製造される、あるいはGHMP/SHMPは、より高い化学抵抗が要求される場合、ポリテトラフルオロエチレンまたはその他の材料などのより高価なポリマーで作成することができる。小さな個々のGHMP/SHMPユニットは安価で使い捨て可能であるため、永久的な染色または損傷(たとえば、OsOおよびRuO)を引き起こす有毒で、損傷を与える可能性のある手順のために懸念なく使用することができる。上記染色は実際には、上記処理が実行されたというラベルを提供する。高額なホルダでは、他の標本用に使用される装置を永久的に染色することが望まれない可能性がある。ただし、GHMP/SHMPユニットは他の標本には使用されない。さらに、標本調製のために使用される多くのプロセスおよび試薬は有毒で、放射能を持ち、または他の形で有害である。いったん使用されれば、GHMPはコストの心配なく、適切に処理し(たとえば、消毒や加圧滅菌)、中性化し、(場合によっては有毒廃棄物として)廃棄することができる。
【0077】
試薬の低減
各GHMP/SHMPは非常に小さな内部容積を有するため、処理を達成するのに必要な材料の量を低減する。多くの生化学(たとえば、抗体)標識および有毒物質などの高額な試薬の場合、このことは重要である。
【0078】
汚染の低減
各観察対象は独自のバイアル(SHMPまたはGHMP)内で処理されるため、1つの標本から次の標本に移る際の二次感染の可能性を最小限にとどめる。
【0079】
本発明は先に概説した各種の例示的実施形態と組み合わせて説明されるが、様々な代替や、変更、変形、改良、実質的等価物は、既知であるか、現時点で予測不能であるかにかかわらず、少なくとも当業者には自明となるであろう。したがって、本発明に係る例示的実施形態は上述したように、説明的であって限定的ではない。各種変更は本発明の精神と範囲を逸脱せずに実行することができる。したがって、本発明は、これらの例示的実施形態のすべての既知の、または後で開発される代替や、変更、変形、改良、実質的等価物を包含することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】透過型電子顕微鏡グリッドを保持している貯留部すなわちグリッド保持マイクロピペット装置(GHMP)を示す、本発明の各種例示的実施形態の概略図である。図1Aは、TEMグリッドを保持しているGHMPの一実施形態の側面図である。図1Bは、広い管腔を有するGHMPの一実施形態の上平面図である。図1Cは、狭い管腔を有するGHMPの一実施形態の上平面図である。図1Dは、狭い管腔を有するGHMPの別の実施形態の上平面図である。図1Eは、複数のグリッドを保持するように適合された本発明の一実施形態である。
【図2】本発明に係るGHMPの一実施形態の概略図である。図2Aは、グリッドを保持し、栓をかぶせられるGHMPの側平面図である。図2Bは、検査窓の配向位置を示す側平面図であり、線「a」はGHMPの結合セクションを示し、線「b」はグリッド保持セクションを示し、線「c」は注入口/排出口(i/o)セクションを示す。図2Cは、90度回転させられた図2Bに示される実施形態の側平面図である。図2Dは、図2Bの上平面図である。図2Eは、明瞭に観察することのできる低量GHMP保持透過型電子顕微鏡グリッドを示す図2Cの上平面図である。
【図3】グリッド上に標本を取り込み、従来のピペット先端に嵌合させるために一緒に積み重ねられた複数のGHMPを示す、本発明の一実施形態の概略図である。
【図4】本発明の別の実施形態であって、観察用標本の調製の際に標本を保持するために最適化された標本ホルダマイクロピペット装置(SHMP)の概略図である。図4Aは、標本を保持するSHMPの側平面図である。図4Bは、図4Aに示される実施形態の上平面図である。図4Cは、SHMPに挿入された留め栓を示す本発明の一実施形態の側平面図である。図4Dは、標本が、i/o端部では一体スクリーンを介して、結合セクションでは留めスクリーンを介して、さらにSHMPに結合される長い栓でSHMP内に保持される本発明のさらに別の実施形態を示す。第2のSHMP(またはGHMP)を長栓に嵌合することのできるモジュールの特徴も示される。
【図5】標本ホルダマイクロピペット装置(SHMP)を示す本発明の別の実施形態の概略図である。図5Aは、成形スクリーンを有する平坦底部のSHMPを示す。図5Bは、図5Aに示されるSHMPの上平面図である。図5Cは、従来のピペット先端と一緒に結合された各種SHMP(またはGHMP)の結合を示す。図示されるように、SHMPは任意の所望の形状、たとえば、平坦、楔状、チゼル状などを有することができる。
【図6】SHMPの別の実施形態を示す概略図である。図6Aは、ボックスまたはカセットに類似するSHMPを示す。図6Bは、従来のまたは特別に設計されたピペット先端(本明細書では標本ホルダピペットインサート(SHPI)とも称する)に挿入されたSHMPを示す。図6Cは、ピペット先端に挿入された複数のSHPIを示す。図6DはSHPIの搭載方法を示す。
【図7】複数の標本を保持するように最適化された本発明の一実施形態を示す。図7Aは、固定のために内部に置かれた複数の標本を有するSHMPを示す側平面図である。図7Bは、図7Aに示される標本の付着を示す。図7Cは、遠心力によるろ過を可能にするように設計されたアダプタを有する本発明の一実施形態を示す。図7Dは、顕微鏡グリッドとして使用されるように設計された図7Aの取外し可能スクリーンを示す。
【図8】A〜Dは、ラベルまたはその他の形式の識別表示がSHMPまたはGHMPに設けられている本発明の各種実施形態の概略図である。
【図9】A、Bは、GHMPおよびSHMPと組み合わせたバーコードなどの機械読取可能コードの使用と位置を示す本発明の各種実施形態の概略図である。
【図10】瞬間的でも、TEMグリッドまたは標本を調製する特に細心の注意を要する手順の準備の際に流体を存在させないことが所望されない、流体交換のために最適化された本発明の一実施形態の概略図である。
【図11】本発明の一実施形態において、複数の標本またはグリッド調製のために最適化された調製用マイクロピペットの概略図である。
【図12】一括調製のための複数のマイクロピペット処理装置用のホルダを含む本発明の一実施形態の概略図である。図12Aは、同実施形態の側平面図である。図12Bは、同実施形態の上平面図である。
【図13】本発明に係る複数のマイクロピペット処理装置を含む本発明の別の実施形態を示す概略図である。図13Aは、同実施形態の上平面図である。図13Bは、同実施形態の線a−aに沿った側平面切断図である。
【図14】1つまたはそれ以上のマイクロピペット処理装置を保管するために使用される保存ボックスの一実施形態の概略図である。
【図15】光学または透過型顕微鏡用のSHMPまたはGHMP内に包埋された標本を切片化するプロセスを示す、本発明の一実施形態の概略図である。図15Aは、ミクロトームチャックに保持されるSHMPを示す。図15Bは、ミクロトーム内で切片化された固定標本を含むSHMPを示す。図15Cは、SHMP/標本を通って連続的スライスを行うミクロトームを示す。
【図16】各種SHMPおよびGHMPおよびSHPI付きピペットと、標本処理または延長保存用のベースとの適合性を示す、本発明の一実施形態の概略図である。図16Aは、自動処理装置またはロボットピペッタによる処理に適したベース内に配置された複数のSHMPを示す側平面図である。図16Bは、図16Aに示される実施形態の上平面図である。図16Cは、貯留部の異なる実施形態、SHMPとGHMPの両方をベース内で使用できることを示す側平面図である。
【図17】適切な固定アンプルおよび保存バイアルの使用を含め、遠隔地または野外でのSHMPの実用性を示す概略図である。図17Aは、野外で試料を回収するためのSHMPの使用を示し、そのSHMPは試料保持のため栓またはキャップと適合する。図17Bは、SHMPに安全に保持された標本を示す。図17Cは、SHMPを保持するのに適した容器を示す。図17Dは、固定試薬を保持するアンプルの内容物を、SHMPを保持する容器に注入するのに有益な装置の使用を示す。図17Dは、容器に注入された場合によっては有毒な内容物によるアンプルの破損を示す。図17Eは、固定試薬に含まれる試料で安全に蓋をされた容器を示す。
【図18】特に大きな標本での使用のための本発明の一実施形態の使用を示す概略図である。
【図19】粘性流体で固定または処理されるときの本発明の一実施形態の使用を示す概略図である。
【図20】透過型電子顕微鏡(図20A)および光学顕微鏡(図20B)で使用される試料の調製における、本発明の異なる実施形態の使用を示す概略図である。
【図21】顕微鏡分析および保存用試料を調製するシステムを提供する本発明の一実施形態を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析用顕微鏡標本を調製する装置において、
ピペットを受け入れるように構成されている第1の端部と、開口部を有する第2の端部とを有する一体型貯留部と、前記開口部に隣接して前記第2の端部に配置されるスクリーンとを備え、
前記一体型貯留部は、同様の構成を有する第2の一体型貯留部に対して結合するように構成されており、前記一体型貯留部の前記第1の端部が前記第2の一体型貯留部の第2の端部と結合してシールを形成するものであり、
前記一体型貯留部の前記第2の端部はピペット先端と結合するように構成され、
前記一体型貯留部が評価用顕微鏡標本を受け入れるように構成されており、前記一体型貯留部に搭載されるピペットの変位により、前記開口部を通じて前記貯留部を少なくとも1つの試薬で充填または空にすることができ、前記少なくとも1つの試薬が顕微鏡検査用標本を調製するように選択されたものである、分析用顕微鏡標本を調製する装置。
【請求項2】
前記フィルタが複数の穴を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の端部用の交換可能キャップをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第2の端部用の交換可能キャップをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記貯留部の内面に、前記貯留部内に収容された液体の表面張力を破るように最適化された突出部をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記一体型貯留部が1つまたはそれ以上のグリッドを受け入れるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記1つまたはそれ以上のグリッドには分析用標本が付着されている、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記標本は、前記貯留部内において顕微鏡分析のために調製され、固定され、保存される、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記標本の固定後、前記貯留部および当該貯留部に収容される標本が分析のためにミクロトームによって切片化され得る、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記貯留部が複数の物品を保持するように適合されている、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
コンピュータ読取可能ラベルが貼付されている、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記標本が、透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡、光学顕微鏡、共焦点顕微鏡、二次イオン質量分光、化学分析用電子分光、原子プローブ断層撮影、およびマトリックス支援レーザ脱離イオン化から成る群によって分析される、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
顕微鏡グリッドとして使用するのに適した取外し可能フィルタをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記一体型貯留部が、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、およびそれらの組み合わせから成る群から選択されるプラスチックにより製造されたものである、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
ピペット先端に内部で嵌合するように適合された貯留部を備え、前記ピペット先端を流体で充填することにより、前記流体が前記貯留部に入って顕微鏡分析用試料が調製される、顕微鏡分析用試料を調製する装置。
【請求項16】
顕微鏡分析用標本を調製する装置であって、
a)ピペットを受け入れるように適合され構成されている第1の端部と、開口部を有する第2の端部と、
b)前記第2の端部の周辺に設けられるフィルタと、
を有する一体型貯留部を備え、
前記貯留部は、第1の貯留部の前記第1の端部が第2の貯留部の第2の端部と液密シールを形成するように、第2の貯留部に対して結合するように寸法を決められ構成されており、
前記貯留部の前記第2の端部は、ピペット先端と結合するよう寸法を決められ構成されており、
前記貯留部は、評価用顕微鏡標本を収容するように構成されており、前記ピペットの変位により、前記貯留部を1つまたはそれ以上の試薬で充填または空にすることができ、
前記貯留部は、前記貯留部内に保持される液体の表面張力を破るように構成されている突出部をその内面に有し、
前記貯留部を前記1つまたはそれ以上の固定試薬で充填することにより、前記顕微鏡検査用試料が調製される、装置。
【請求項17】
前記貯留部が1つまたはそれ以上のグリッドを受け入れるように適合されている、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記1つまたはそれ以上のグリッドには標本が取り付けられている、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
固定後、前記貯留部および当該貯留部に収容される標本が分析のために切片化される、請求項16に記載の装置。
【請求項20】
前記顕微鏡分析が、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、共焦点顕微鏡、二次イオン質量分光、化学分析用電子分光、原子プローブ断層撮影、およびマトリックス支援レーザ脱離イオン化から成る群から選択される、請求項16に記載の装置。
【請求項21】
前記第1の端部が、2つ以上の流体注入口を前記貯留部に接続するのに使用可能なアダプタと適合する、請求項16に記載の装置。
【請求項22】
前記貯留部が、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、およびそれらの組み合わせから成る群から選択されるプラスチックから製造される、請求項16に記載の装置。
【請求項23】
前記フィルタが複数のアパーチャから構成される、請求項16に記載の装置。
【請求項24】
顕微鏡分析用標本を調製する方法であって、
a)請求項1の貯留部内に1つまたはそれ以上の標本を配置し、
b)変位装置を前記貯留部の第1の端部に接続し、
c)前記変位装置の変位を介して、前記貯留部に固定液を通過させ
ることを備え、前記標本が顕微鏡分析用に調製される、方法。
【請求項25】
顕微鏡分析のために前記貯留部内で前記標本を切片化することを備える、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記貯留部に統一商品コードを取り付けることをさらに備える、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記統一商品コードで試料調製用のプロトコルを特定することをさらに備える、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記標本がグリッドに付着される、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
野外状況で前記貯留部を満たすのに適した、前記貯留部に適合する充填装置と密封可能バイアルをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
分析用顕微鏡標本を調製するシステムであって、
a)標本を取得し、
b)前記標本を請求項1の貯留部内に配置し、
c)統一商品コード(UPC)の使用により前記標本を収容している前記貯留部を特定し、
d)前記試料を特定する情報を、前記UPCに相互に関連付けられる研究所情報管理システムに入力し、
e)前記顕微鏡分析用試料を調製すること、
を備え、分析用に前記標本を前記貯留部に保存することができる、システム。
【請求項31】
前記貯留部内で前記標本を切片化することをさらに備える、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記標本がグリッド上に含まれる、請求項30に記載のシステム。
【請求項33】
前記分析の結果が前記研究所情報管理システムに入力され、前記UPCによって特定される、請求項30に記載のシステム。
【請求項34】
前記分析が、光学顕微鏡、透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡または共焦点顕微鏡、二次イオン質量分光、化学分析用電子分光、原子プローブ断層撮影、またはマトリックス支援レーザ脱離イオン化を介して実行される、請求項30に記載のシステム。
【請求項35】
複数の試料の並行調製が実行される、請求項30に記載のシステム。
【請求項36】
前記試料が評価され、追跡され、長期評価のために保存される、請求項30に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2010−511144(P2010−511144A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512270(P2009−512270)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/069489
【国際公開番号】WO2007/137272
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(310005009)10エイチ インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】10H,INC.
【Fターム(参考)】