説明

風力発電装置

【課題】気流発生装置における消費電力を抑え、翼面上における流れの剥離を確実に抑制し、効率向上を図ることができる風力発電装置を提供する。
【解決手段】実施形態の風力発電装置10は、第1の電極41と第2の電極43とを誘電体42を介して離間して備え、第1の電極41と第2の電極43との間に電圧を印加可能な放電用電源61を有する気流発生装置40を風車翼32に備える。そして、風車翼32が、翼弦長方向に少なくとも2分割され、分割された風車翼32の少なくとも一つの翼は回転軸に固定され、分割された残りの翼は回動調整可能に固定されている。さらに、気流発生装置40が、分割された風車翼32の少なくとも一つの翼の翼面に備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、放電プラズマの作用により気流を発生させる気流発生装置を備えた風力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、地球温暖化防止の観点から、全地球規模で再生エネルギ発電システムの導入が進められている。そのような状況の中、風力発電は、普及が進められている発電方式の一つである。
【0003】
しかしながら、風力発電は、風速変動や風向変動によって発電量が左右されるため、日本などのように風速および風向がめまぐるしく変わる山岳性気象を有する地域においては、発電出力を安定維持することが困難である。このようなことが、風力発電システムの導入の妨げとなっている。そのため、安定かつ高効率な風力発電システムの開発が要求されている。
【0004】
実機風車において、風速や風向の変動が激しい自然風の影響を受け、風車の回転数は、時間とともに変化する。風車翼のある位置における翼断面(翼素)に注目すると、翼素は、風車翼に向かって流れる主流と風車翼自身の回転によって生じる相対流との合成流れの影響を受ける。そのため、主流(風車を取り巻く風)の速度や向きが変化したり、それによって風車の回転速度が変わると、風車翼に対する合成流れの流入角、すなわち迎角が変化する。
【0005】
一般に、翼の揚力は、迎角に依存し、迎角が大きくなるにつれて揚力は増加する。しかしながら、ある閾値以上に迎角が増大すると、翼の背側の流れが剥離して、揚力が低下する(失速状態)。
【0006】
実機風車では、風速や風向の変動に応じて頻繁に迎角が変わり、迎角が閾値を越えると、流れの剥離が頻繁に生じる。これによって、風車トルクが減少し、発電効率が低下する。これまでの実機風車においては、風の短時間の変動に、ピッチ制御やヨー制御が対応できなかった。そのため、発電が不安定になり、高効率の風力発電システムを実現することができなかった。
【0007】
そこで、放電プラズマによって気流を発生させる気流発生装置を風車翼面に設置して、翼面上を流れる風の流れを制御する技術が検討されている。ここで、図13および図14は、一般的な翼200の翼面上の流れを可視化した写真である。図13では、翼面に設けられた気流発生装置210を作動させていない状態であり、翼面において流れが剥離している(剥離部220)。一方、図14では、図13の状態から気流発生装置210を作動させて気流を発生させ、翼面における流れの剥離が抑制されている。
【0008】
このように、翼面上に気流を発生させることで、翼周りの剥離流れが抑制され、風速や風向が変動した場合においても安定して風車トルクを得られる可能性が見出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−25434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
実機風車においては、風車翼の翼弦長が1〜4m程度に構成されることがある。このような大型風車翼においても、放電プラズマによって気流を発生させる気流発生装置を風車翼面に設置して、翼面上における流れの剥離を確実に抑制することが要求されている。
【0011】
大型風車翼の翼面上における流れの剥離を確実に抑制するためには、例えば、流量および流速が大きな気流を発生させる必要がある。気流発生装置において、流量および流速が大きな気流を発生させるためには、投入電力の大幅な増大が必要となる。
【0012】
そのため、気流発生装置における電力の消費が増大し、風力発電システムとしての効率が低減するという問題があった。
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、気流発生装置における消費電力を抑え、翼面上における流れの剥離を確実に抑制し、効率向上を図ることができる風力発電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
実施形態の風力発電装置は、第1の電極と第2の電極とを誘電体を介して離間して備え、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加可能な電圧印加機構を有する気流発生装置を風車翼に備える。そして、前記風車翼が、翼弦長方向に少なくとも2分割され、分割された前記風車翼の少なくとも一つの翼は回転軸に固定され、分割された残りの翼は回動調整可能に固定されている。さらに、前記気流発生装置が、分割された前記風車翼の少なくとも一つの翼の翼面に備えられている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施の形態の風力発電装置を模式的に示した斜視図である。
【図2】第1の実施の形態の風力発電装置の風車翼の一つを模式的に示した斜視図である。
【図3】第1の実施の形態の風力発電装置の風車翼が示された図2のA−A断面を模式的に示す図である。
【図4】第1の実施の形態の風力発電装置の他の構成の風車翼の一つを模式的に示した斜視図である。
【図5】第2の実施の形態の風力発電装置の風車翼の一つを模式的に示した斜視図である。
【図6】第2の実施の形態の風力発電装置の風車翼が示された図5のB−B断面を模式的に示す図である。
【図7】第3の実施の形態の風力発電装置の風車翼の一つを模式的に示した斜視図である。
【図8】第3の実施の形態の風力発電装置の風車翼が示された図7のC−C断面を模式的に示す図である。
【図9】第4の実施の形態の風力発電装置の風車翼の一つを模式的に示した斜視図である。
【図10】第4の実施の形態の風力発電装置の風車翼が示された図9のD−D断面を模式的に示す図である。
【図11】第5の実施の形態の風力発電装置の風車翼の一つを模式的に示した斜視図である。
【図12】第5の実施の形態の風力発電装置の風車翼が示された図11のE−E断面を模式的に示す図である。
【図13】一般的な翼の翼面上の流れを可視化した写真である。
【図14】一般的な翼の翼面上の流れを可視化した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態の風力発電装置10を模式的に示した斜視図である。図1に示すように、風力発電装置10において、地面20に設置されたタワー21の頂部に発電機(図示しない)などを収容したナセル22が取付けられている。ナセル22の上面には、風の風向や速度を計測する風向風速計23が設けられている。
【0018】
また、ナセル22から突出した発電機の回転軸にロータ30が取り付けられている。このロータ30は、ハブ31、およびこのハブ31に取り付けられた風車翼32を備えている。風車翼32は、翼弦長方向に分割された分割翼構造を有し、例えば、ピッチ角が変更可能に備えられている。なお、ここでは、3枚の風車翼32を備える一例を示しているが、風車翼の数は、限定されるものではない。風車翼32の前縁部には、風車翼32の翼根から翼端の方向に、所定の間隔をあけて、複数の気流発生装置40が設けられている。
【0019】
次に、風車翼32の構造について説明する。
【0020】
図2は、第1の実施の形態の風力発電装置10の風車翼32の一つを模式的に示した斜視図である。図3は、第1の実施の形態の風力発電装置10の風車翼32が示された図2のA−A断面を模式的に示す図である。
【0021】
なお、図3には、風車翼32の表面における流れを矢印で示している。また、ここでは、一つの風車翼32の構成について説明するが、他の風車翼32の構成も同じである。
【0022】
図2に示すように、風車翼32は、翼根から翼端に向かって翼弦長が徐々に短くなる形状を有している。また、風車翼32は、翼弦長方向に2分割され、前縁側の分割翼である前部分割翼50と、母翼51とを備える。すなわち、風車翼32は、翼根から翼端に向かう翼幅方向に分割部を有して、翼幅方向に延びる、前部分割翼50および母翼51を備える。母翼51は、ハブ31を介して回転軸に取り付けられている。また、前部分割翼50および母翼51は、図3に示すように、翼形状を有している。
【0023】
前部分割翼50は、母翼51との間に隙間を形成するように固定され、いわゆるスラットとしての機能も兼ね備えている。ここで、前部分割翼50は、例えば、風力発電装置10の作動時を想定した流れの数値解析の結果などに基づいて、迎角などが最適な角度に調整されて固定されている。なお、前部分割翼50は、風力発電装置10が設置される環境下において、迎角などを最適な角度に調整可能なように固定されている。
【0024】
前部分割翼50の翼弦長L1は、長い部分でも1m以下に構成されることが好ましい。翼弦長L1をこの範囲とすることで、前部分割翼50に沿う流れのレイノルズ数(Re、翼弦長基準)を10のオーダにすることができる。気流発生装置40から気流を発生することにより風車翼32の翼面における剥離流れを抑制して揚力を向上することができる。この効果は、Reが10オーダになると急激に低下することが発明者らの研究から明らかになった。一方、Reを10オーダにすることで、風車翼32の揚力を1割から3割またはそれ以上に増大することができる。さらに、翼弦長L1をこの範囲とすることで、前部分割翼50に沿う流れの剥離を抑制するために、気流発生装置40によって気流を発生させる際の消費電力を抑えることができる。
【0025】
ここで、図3に示すように、前部分割翼50の前縁部に設けられた気流発生装置40は、第1の電極41と、この第1の電極41と誘電体42を介して離間して配設された第2の電極43とを備える。
【0026】
第1の電極41は、例えば、板状の導電部材で構成される。第1の電極41の形状は、板状に限らず、例えば、断面が円、矩形などの棒状などであってもよい。
【0027】
第2の電極43は、第1の電極41と同様に、例えば、板状の導電部材で構成される。第2の電極43の形状は、板状の限らず、例えば、断面が円、矩形などの棒状などであってもよい。なお、第2の電極43は、第1の電極41と同じ形状であってもよい。
【0028】
また、第2の電極43は、図3に示すように、第1の電極41よりも誘電体42の表面から深い位置で、かつ第1の電極41よりも気流の流れる方向にずらした位置に、第1の電極41と離間して配置されている。このように気流発生装置40を配置することで、気流発生装置40によって発生された気流が第1の電極41側から第2の電極43側に向かって流れる。
【0029】
誘電体42を構成する誘電材料として、例えば、電気的絶縁材料である、アルミナやガラス、マイカなどの無機絶縁物、ポリイミド、ガラスエポキシ、ゴム、テフロン(登録商標)等の有機絶縁物などが挙げられるが、特に限定されるものではない。誘電体42を構成する誘電材料は、使用される用途や環境に応じて、公知な固体からなる誘電材料から適宜選択することができる。
【0030】
ここでは、第1の電極41の一方の表面が誘電体42の表面と同一面となるように第1の電極41を設け、第2の電極43が誘電体42内に埋設した構成を有する気流発生装置40を示している。なお、第1の電極41を誘電体42内に埋設させた構成、すなわち、第1の電極41の一方の表面が外部に露出されない構成としてもよい。
【0031】
また、前部分割翼50の前縁部に気流発生装置40を設ける場合、図3に示すように、例えば、第1の電極41の第2の電極43側の端縁が、前部分割翼50の前縁上となるように第1の電極41を配置し、第1の電極41よりも前部分割翼50の背側50aとなる位置に第2の電極43を配置することが好ましい。この場合、気流は、前部分割翼50の前縁から翼面の背側50aに向かって流れる。
【0032】
なお、気流発生装置40の構成は、これに限られるものではない。例えば、前部分割翼50の前縁部に溝部を構成し、この溝部に、第1の電極41と、誘電体42と、第1の電極41と誘電体42を介して離間して配設された第2の電極43からなる気流発生装置40を嵌め込むように設置してもよい。この際、流れを乱さないように、気流発生装置40を、前縁部の表面から突出しないように配置することが好ましい。この場合において、前部分割翼50が、例えば、グラスファイバを合成樹脂により固形化したGFRP(グラスファイバ強化樹脂)などの誘電材料で構成されているときには、誘電体42として前部分割翼50自体を機能させてもよい。すなわち、前部分割翼50の表面に直接第1の電極41を配設し、この第1の電極41と離間して前部分割翼50に第2の電極43を直接埋設してもよい。
【0033】
気流発生装置40は、図2に示すように、例えば、前部分割翼50の翼根から翼端に向かう翼幅方向に、複数個独立して配置されている。この場合、各気流発生装置40は、それぞれ単独で制御されてもよいし、複数の気流発生装置40に対して同じ制御を行ってもよい。なお、翼幅が小さい場合には、例えば、1つの気流発生装置40を、前部分割翼50の前縁部に翼幅方向に配置することもできる。
【0034】
第1の電極41および第2の電極43は、図3に示すように、それぞれケーブル配線60a、60bを介して、電圧印加機構として機能する放電用電源61に電気的に接続されている。この放電用電源61を起動することで、第1の電極41と第2の電極43との間に電圧が印加される。
【0035】
放電用電源61は、例えば、ナセル22内に設けられ、風車翼32の内部、ハブ31を介して配線されたケーブル配線60a、60bを介して、気流発生装置40への電圧の印加を行う。なお、回転部と静止部は、例えば、ブラシや放電ギャップによって電気的に接続される。
【0036】
放電用電源61は、例えば、パルス状(正極性、負極性、正負の両極性(交番電圧))や交流状(正弦波、断続正弦波)の波形を有する電圧を出力する。放電用電源61は、電圧値、周波数、電流波形、デューティ比などの電流電圧特性などを変化させて、第1の電極41と第2の電極43との間に電圧を印加することができる。
【0037】
次に、風車翼32の翼面上の流れについて説明する。
【0038】
風車翼32の周りに流れが付着しているとき、翼上面の流速と翼下面の流速の差から風車翼32には揚力が発生する。風車翼32の迎角を大きくすると揚力は増大するが、ある迎角以上では、例えば、前部分割翼50の翼上面から流れが剥離して揚力が低下する。
【0039】
その際、放電用電源61から第1の電極41と第2の電極43との間に電圧を印加し、翼上面に沿って気流を発生させることで、翼境界層における流速分布が変化し、流れの剥離の発生が抑えられる。また、その他の空力現象に起因する騒音や振動などを低減することができる。
【0040】
また、図3に示すように、前部分割翼50と母翼51との隙間から母翼51の背側51aに向かう流れによって、風車翼32全体の揚力が向上される。
【0041】
なお、気流発生装置40においては、上記したように、第1の電極41と第2の電極43との間に電圧が印加され、一定の閾値以上の電位差となると、第1の電極41と第2の電極43との間に放電が誘起される。この放電は、バリア放電とよばれ、低温プラズマが生成される。
【0042】
この放電においては、気体中の電子のみにエネルギを与えることができるため、気体をほとんど加熱せずに気体を電離して電子およびイオンを生成することができる。生成された電子やイオンは、電界によって駆動され、それらが気体分子と衝突することで運動量が気体分子に移行する。すなわち、放電を印加することで、電極付近から誘電体42の表面に沿う気流が発生する。この気流の大きさや向きは、電極間に印加する電圧、周波数、電流波形、デューティ比などの電流電圧特性を変化させることで制御可能である。
【0043】
上記したように、第1の実施の形態の風力発電装置10によれば、前部分割翼50の前縁部に気流発生装置40を設け、気流を発生させることで、前部分割翼50の翼上面における流れの剥離を抑制することができる。これによって、効率を向上させることができる。
【0044】
また、風車翼32を前部分割翼50および母翼51を備える分割翼構造とすることで、前部分割翼50に沿う流れの剥離を抑制するために機能させる気流発生装置40の消費電力を抑えることができる。さらに、前部分割翼50と母翼51との隙間から母翼51の背側に向かう流れによって、風車翼32全体の揚力が向上される。
【0045】
このように、第1の実施の形態の風力発電装置10によれば、高効率で安定した風力発電を行うことができる。
【0046】
ここで、第1の実施の形態の風力発電装置10は、上記した構成に限られるものではない。図4は、第1の実施の形態の風力発電装置10の他の構成の風車翼32の一つを模式的に示した斜視図である。
【0047】
図4に示すように、前部分割翼50の前縁から後縁に沿う方向に、所定の間隔をあけて複数の気流発生装置40を設けてもよい。ここでは、最も翼根側に設けられた気流発生装置40において、前部分割翼50の前縁から後縁に沿う方向に2つの気流発生装置40を設けている。なお、他の位置においても、前部分割翼50の前縁から後縁に沿う方向に、複数の気流発生装置40を設けてもよい。
【0048】
このように、前部分割翼50の前縁から後縁に沿う方向に複数の気流発生装置40を備えることで、流量および流速が大きな気流を発生させることができる。また、このような構成を備えることで、例えば、翼弦長が長くなる翼根側において、より確実に流れの剥離などを抑制することができる。
【0049】
なお、分割された分割翼の前縁から後縁に沿う方向に複数の気流発生装置40を備える構成は、以下に示す他の実施の形態においても適用することができ、同様の作用効果を得ることができる。
【0050】
(第2の実施の形態)
図5は、第2の実施の形態の風力発電装置11の風車翼32の一つを模式的に示した斜視図である。図6は、第2の実施の形態の風力発電装置11の風車翼32が示された図5のB−B断面を模式的に示す図である。なお、図6には、風車翼32の表面における流れを矢印で示している。また、第1の実施の形態の風力発電装置10と同じ構成部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略または簡略する(以下の実施の形態において、同様である)。
【0051】
第2の実施の形態の風力発電装置11の風車翼32は、図5に示すように、翼弦長方向に2分割され、母翼51と、後縁側の分割翼である後部分割翼52とを備える。すなわち、風車翼32は、翼根から翼端に向かう翼幅方向に分割部を有して、翼幅方向に延びる、母翼51および後部分割翼52を備える。母翼51は、ハブ31を介して回転軸に取り付けられている。また、母翼51および後部分割翼52は、図6に示すように、翼形状を有している。
【0052】
後部分割翼52は、母翼51との間に隙間を形成するように固定され、いわゆるフラップとしての機能も兼ね備えている。ここで、後部分割翼52は、例えば、風力発電装置11の作動時を想定した流れの数値解析の結果などに基づいて、迎角などが最適な角度に調整されて固定されている。なお、後部分割翼52は、風力発電装置10が設置される環境下において、迎角などを最適な角度に調整可能なように固定されている。
【0053】
後部分割翼52の翼弦長L2は、第1の実施の形態における前部分割翼50の翼弦長L1の範囲とする理由と同じ理由から、長い部分でも1m以下に構成されることが好ましい。
【0054】
後部分割翼52の前縁部には、図5に示すように、風車翼32の翼根から翼端の方向に、所定の間隔をあけて、複数の気流発生装置40が設けられている。気流発生装置40の構成および設置方法などは、第1の実施の形態におけるそれらと同じである。
【0055】
このように、後部分割翼52の前縁部に気流発生装置40を設け、気流を発生させることで、後部分割翼52の翼上面における流れの剥離を抑制することができる。これによって、効率を向上させることができる。
【0056】
また、風車翼32を母翼51および後部分割翼52を備える分割翼構造とすることで、後部分割翼52に沿う流れの剥離を抑制するために機能させる気流発生装置40の消費電力を抑えることができる。
【0057】
さらに、図6に示すように、母翼51と後部分割翼52との隙間から後部分割翼52の背側52aに向かう流れによって、風車翼32全体の揚力が向上される。
【0058】
このように、第2の実施の形態の風力発電装置11によれば、高効率で安定した風力発電を行うことができる。
【0059】
なお、母翼51の前縁部に、風車翼32の翼根から翼端の方向に複数の気流発生装置40を設けてもよい。これにより、母翼51の翼上面における流れの剥離を抑制することができる。
【0060】
(第3の実施の形態)
図7は、第3の実施の形態の風力発電装置12の風車翼32の一つを模式的に示した斜視図である。図8は、第3の実施の形態の風力発電装置12の風車翼32が示された図7のC−C断面を模式的に示す図である。なお、図8には、風車翼32の表面における流れを矢印で示している。
【0061】
第3の実施の形態の風力発電装置12の風車翼32は、図7に示すように、翼弦長方向に3分割され、前縁側の分割翼である前部分割翼50と、母翼51と、後縁側の分割翼である後部分割翼52とを備える。すなわち、風車翼32は、翼根から翼端に向かう翼幅方向に分割部を有して、翼幅方向に延びる、前部分割翼50、母翼51および後部分割翼52を備える。母翼51は、ハブ31を介して回転軸に取り付けられている。また、前部分割翼50、母翼51および後部分割翼52は、図8に示すように、翼形状を有している。
【0062】
ここで、前部分割翼50は、第1の実施の形態で説明したとおりの構成であり、後部分割翼52は、第2の実施の形態で説明したとおりの構成である。
【0063】
前部分割翼50および後部分割翼52の前縁部には、図7に示すように、風車翼32の翼根から翼端の方向に、所定の間隔をあけて、複数の気流発生装置40が設けられている。気流発生装置40の構成および設置方法などは、第1の実施の形態におけるそれらと同じである。
【0064】
このように、前部分割翼50および後部分割翼52の前縁部に気流発生装置40を設け、気流を発生させることで、前部分割翼50および後部分割翼52の翼上面における流れの剥離を抑制することができる。これによって、効率を向上させることができる。
【0065】
また、風車翼32を、前部分割翼50、母翼51および後部分割翼52を備える分割翼構造とすることで、前部分割翼50および後部分割翼52に沿う流れの剥離を抑制するために機能させる気流発生装置40の消費電力を抑えることができる。
【0066】
さらに、図8に示すように、前部分割翼50と母翼51との隙間から母翼51の背側51aに向かう流れ、および母翼51と後部分割翼52との隙間から後部分割翼52の背側52aに向かう流れによって、風車翼32全体の揚力が向上される。
【0067】
このように、第3の実施の形態の風力発電装置12によれば、高効率で安定した風力発電を行うことができる。
【0068】
(第4の実施の形態)
図9は、第4の実施の形態の風力発電装置13の風車翼32の一つを模式的に示した斜視図である。図10は、第4の実施の形態の風力発電装置13の風車翼32が示された図9のD−D断面を模式的に示す図である。なお、図10には、風車翼32の表面における流れを矢印で示している。
【0069】
第4の実施の形態の風力発電装置13の風車翼32は、図9に示すように、翼弦長方向に3分割され、前縁側の分割翼である前部分割翼50と、母翼51と、後縁側の分割翼である後部分割翼52とを備える。なお、前部分割翼50、母翼51および後部分割翼52の構成は、第3の実施の形態のそれらと同じである。
【0070】
前部分割翼50および母翼51の後縁部には、図9に示すように、風車翼32の翼根から翼端の方向に、所定の間隔をあけて、複数の気流発生装置40が設けられている。気流発生装置40の構成は、第1の実施の形態における構成と同じである。
【0071】
ここでは、図10に示すように、第1の電極41の一方の表面が、前部分割翼50や母翼51の翼面と同一面となるように第1の電極41を設け、第2の電極43が誘電体42内に埋設した構成を有する気流発生装置40を示している。なお、第1の電極41を誘電体42内に埋設させた構成、すなわち、第1の電極41の一方の表面が外部に露出されない構成としてもよい。
【0072】
また、第1の電極41、誘電体42および第2の電極43から構成される気流発生装置40の厚さが薄く、翼面上に設置しても流れに影響を与えない場合には、気流発生装置40を翼面上に設置してもよい。
【0073】
このように設置された気流発生装置40から発生する気流は、前部分割翼50や母翼51の背側50a、51aの翼面上を後縁に向かって流れる。
【0074】
このように、前部分割翼50および母翼51の後縁部に気流発生装置40を設け、気流を発生させることで、剥離流れが生じやすい後縁部の流れを翼面側に引き寄せ、大規模な剥離流れの発生を抑制することができる。これによって、効率を向上させることができる。
【0075】
また、風車翼32を、前部分割翼50、母翼51および後部分割翼52を備える分割翼構造とすることで、図10に示すように、前部分割翼50と母翼51との隙間から母翼51の背側51aに向かう流れ、および母翼51と後部分割翼52との隙間から後部分割翼52の背側52aに向かう流れによって、風車翼32全体の揚力が向上される。
【0076】
このように、第4の実施の形態の風力発電装置13によれば、高効率で安定した風力発電を行うことができる。
【0077】
(第5の実施の形態)
図11は、第5の実施の形態の風力発電装置14の風車翼32の一つを模式的に示した斜視図である。図12は、第5の実施の形態の風力発電装置14の風車翼32が示された図11のE−E断面を模式的に示す図である。なお、図12には、風車翼32の表面における流れを矢印で示している。
【0078】
第5の実施の形態の風力発電装置14の風車翼32は、図11に示すように、翼弦長方向に3分割され、前縁側の分割翼である前部分割翼50と、母翼51と、後縁側の分割翼である後部分割翼52とを備える。なお、前部分割翼50、母翼51および後部分割翼52の構成は、第3の実施の形態のそれらと同じである。
【0079】
前部分割翼50、母翼51および後部分割翼52の前縁部には、図11に示すように、風車翼32の翼根から翼端の方向に、所定の間隔をあけて、複数の気流発生装置40が設けられている。また、母翼51の後縁部には、図11に示すように、風車翼32の翼根から翼端の方向に、所定の間隔をあけて、複数の気流発生装置40が設けられている。
【0080】
なお、気流発生装置40の構成は、第1の実施の形態における構成と同じである。また、気流発生装置40の設置方法は、前縁部に気流発生装置40を備える場合は、第1の実施の形態の設置方法と同じであり、後縁部に気流発生装置40を備える場合は、第4の実施の形態の設置方法と同じである。
【0081】
このように、前部分割翼50、母翼51および後部分割翼52の前縁部に気流発生装置40を設け、気流を発生させることで、前部分割翼50、母翼51および後部分割翼52の翼上面における流れの剥離を抑制することができる。これによって、効率を向上させることができる。
【0082】
また、風車翼32を、前部分割翼50、母翼51および後部分割翼52を備える分割翼構造とすることで、前部分割翼50、母翼51および後部分割翼52に沿う流れの剥離を抑制するために機能させる気流発生装置40の消費電力を抑えることができる。
【0083】
さらに、母翼51の後縁部に気流発生装置40を設け、気流を発生させることで、剥離流れが生じやすい後縁部の流れを翼面側に引き寄せ、大規模な剥離流れの発生を抑制することができる。これによって、効率を向上させることができる。
【0084】
また、風車翼32を、前部分割翼50、母翼51および後部分割翼52を備える分割翼構造とすることで、図12に示すように、前部分割翼50と母翼51との隙間から母翼51の背側51aに向かう流れ、および母翼51と後部分割翼52との隙間から後部分割翼52の背側52aに向かう流れによって、風車翼32全体の揚力が向上される。
【0085】
このように、第5の実施の形態の風力発電装置14によれば、高効率で安定した風力発電を行うことができる。
【0086】
なお、上記した実施の形態では、分割された風車翼32の前縁部や後縁部に気流発生装置40を備える一例を示したが、例えば、流れの剥離が生じる他の翼面部分に気流発生装置40を備えてもよい。
【0087】
以上説明した実施形態によれば、気流発生装置における消費電力を抑え、翼面上における流れの剥離を確実に抑制し、効率向上を図ることが可能となる。
【0088】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0089】
10,11,12,13,14…風力発電装置、20…地面、21…タワー、22…ナセル、23…風向風速計、30…ロータ、31…ハブ、32…風車翼、40…気流発生装置、41…第1の電極、42…誘電体、43…第2の電極、50…前部分割翼、50a,51a,52a…背側、51…母翼、52…後部分割翼、60a…ケーブル配線、61…放電用電源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と第2の電極とを誘電体を介して離間して備え、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加可能な電圧印加機構を有する気流発生装置を風車翼に備える風力発電装置であって、
前記風車翼が、翼弦長方向に少なくとも2分割され、分割された前記風車翼の少なくとも一つの翼は回転軸に固定され、分割された残りの翼は回動調整可能に固定され、
前記気流発生装置が、分割された前記風車翼の少なくとも一つの翼の翼面に備えられていることを特徴とする風力発電装置。
【請求項2】
前記気流発生装置が、分割された前記風車翼の少なくとも一つの翼の翼面の前縁部に配設されていることを特徴とする請求項1記載の風力発電装置。
【請求項3】
前記気流発生装置が、分割された前記風車翼の少なくとも一つの翼の翼面の後縁部に配設されていることを特徴とする請求項1または2記載の風力発電装置。
【請求項4】
前記翼面の翼根から翼端に沿う方向に、所定の間隔をあけて複数の前記気流発生装置が配設されていることを特徴とする請求項2または3記載の風力発電装置。
【請求項5】
前記翼面の前縁から後縁に沿う方向に、所定の間隔をあけて複数の前記気流発生装置が配設されていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項記載の風力発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−60930(P2013−60930A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201560(P2011−201560)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「省エネルギー革新技術開発事業/先導研究/動的流れ場に対するプラズマ気流制御最適化の研究開発」業務委託、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】