説明

風車

【課題】 本発明は、微風でも、敏感に風向きに反応して、プロペラの前面を風上方向に瞬時に向けることのできる風車を提供する。
【解決手段】 垂直軸周りに旋回可能に配設されたナセル3に、プロペラ5を取り付けてなる風車1において、ナセル3の後部周面に、前後方向を向くと共に、放射方向に突出し、かつ翼根部の弦長よりも、翼端部の弦長が長い複数のブレード6を取付けたことを特徴とする風車1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風車に係り、特に微風時における風向きの変化にも敏感に反応して、風車の前面を、瞬時に風上に向けることのできるようにした方向舵を備える風車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般のプロペラ式風車は、プロペラの回転による反動トルクと、風速の変動とのために、プロペラを常に風に正対させ続けることは困難である。
またプロペラが高速回転しているときに、突然に風が止んだり、弱まったりすると、風車は慣性トルクで回転を続けることとなるが、次いで吹く風の方向が変ると、その方向を向くためにロスが生じる。
更に、大型風車においては、コンピュータで風向きを計測して、向きを制御するものもあるが、機械的な対応に時間的なロスが発生する。
一方特許文献1には、ナセルの左右側部に方向舵が配設された風車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−9822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プロペラ式風車において、高風速時に、ブレードのピッチ角度をコンピュータ制御するものにおいては、風速の変化に即座に対応できないときには、ブレードは、高速風を直に受けることになり、破損が生じる虞がある。
また、風向変化に対応して、コンピュータにより、方向制御を行わせるものにおいては、微風時には制御が困難である。更に、風速を感知してから、機械的に方向を変向させるための時間的ロスがあり、方向を変えた時には、風向きは既に別方向に変っていることも、しばしばあり、時間的ずれのない即時的コントロールができないという課題がある。
【0005】
プロペラ式風車においては、その正面に、常に風が当ることが要求される。風向きは常に変化しているため、プロペラが常に風向きと正対することができると、風の利用度は大きくなる。
特許文献1に記載されている風車は、ナセルの外側に方向舵を配設してある点で、風向きの変化に敏感に反応することができるが、本発明は、これを更に改良したもので、微風時でも、敏感に風向きに反応し、風に対するプロペラの追従性を著しく向上させた風車を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ナセルの周面に配設した方向舵の側面視における弦長を、翼根部よりも翼端部において大としたことを特徴とする風車に関する。
発明の具体的な内容は、次の通りである。
【0007】
(1) 垂直軸周りに旋回可能に配設されたナセルに、プロペラを取付けてなる風車において、ナセルの後部周面に、前後方向を向くとともに放射方向に突出し、かつ、翼根部の弦長よりも、翼端部の弦長が長い複数のブレードを取付けてなる風車。
【0008】
(2) 前記複数のブレードは、ナセルの周面において、正面視において上下に、及び左右方向で対称に配設されている前記(1)に記載の風車。
【0009】
(3) 前記複数のブレードは、平面視において、ナセルの左右における前縁の対向間隔が、後縁のそれよりも広く形成されている前記(1)又は(2)に記載の風車。
【0010】
(4) 前記複数のブレードは、外側面は平坦であり、上下面の前端縁部に、膨出部が形成されている前記(1)〜(3)のいずれかに記載の風車。
【0011】
(5) 前記複数のブレードにおける上下対称の翼端部に、それぞれ対面方向へ傾斜する傾斜部が形成されている前記(1)〜(4)のいずれかに記載の風車。
【0012】
(6) 前記ナセルには、プロペラ軸に連結された発電装置が内装されている前記(1)〜(5)のいずれかに記載の風車。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、次のような効果が奏せられる。
【0014】
(1) 前記(1)に記載の風車において、ナセルに取付けられているブレードの側面形が、翼根部の弦長よりも、翼端部の弦長が長く形成されているので、風向が変化したとき、幅の広い翼端部で風を受けて、微風でもナセルの向きを変えて、プロペラの前面を風上に容易に向けさせることができる。
【0015】
(2) 前記(2)に記載の風車においては、ブレードはナセルの周面において、上下及び左右方向に対称に配設されているので、正面視でブレードは×状となり、ブレードに沿って流れる気流は、プロペラの前面に当ってこれを回転させる。
風向きが変って、側面からブレードに風が当るときには、ブレードは風に押されるので、ナセルは垂直軸を中心に旋回し、プロペラの前面を、容易に風上に向けさせることができる。
【0016】
(3) 前記(3)に記載の風車においては、複数のブレードは、平面視において、ナセルの左右における前縁の対向間隔が、後縁の対向間隔よりも広く形成されているため、左右のブレードの間を通過する気流は、幅が狭くなる後部で高圧になり、プロペラの前面に当って、これを効率よく回転させる。
【0017】
(4) 前記(4)に記載の風車によると、ブレードの左右外側面は平坦であり、
上下面の前端縁部に膨出部が形成されているので、左右のブレードの間を通過す
る気流は、膨出部で高速化され、後方へ至りプロペラの前面に当って、これを効果的に回転させる。
【0018】
(5) 前記(5)に記載の風車においては、複数のブレードにおける上下対称の翼端部に、それぞれ上下の対向方向へ傾斜する傾斜部が形成されているので、風向きが変化して、ブレードの外側面に当ったとき、翼端方向へ移動する気流は、上下に位置する傾斜部で抑止されて、拡散されることなく、ブレードを押すので、弱風の風向き変化についても、敏感に反応して、ナセルの向を瞬時で変え、プロペラの前面を容易に風上に向けさせることができる。
【0019】
(6) 前記(6)に記載のナセルには、プロペラ軸に連結された発電装置が内装されているので、プロペラの回転に伴い発電をさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る方向舵を備える風車の平面図である。
【図2】同側面図である。
【図3】同正面図である。
【図4】図3におけるIV−IV線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ナセルの周面に、前後方向を向く複数の方向舵を、放射方向へ向けて配設する。
【実施例1】
【0022】
本発明の実施例1を、図面を参照して説明する。図において、風車1におけるナセル3は、支柱2の上部に設けられた垂直軸周りに旋回可能に取付けられている。ナセル3の後部より後方へ突出するプロペラ軸4の後端部には、プロペラ5が固定され、プロペラ軸4の前端部は、ナセル3内の図示しない発電装置に連結されている。プロペラ5の翼端部には、前方、すなわちナセル3の方向へ向かって傾斜する傾斜部5Aが形成されている。
【0023】
ナセル3の後部における外周面には、正面視×状に放射方向へ突出する、複数のブレード6が配設されて、これにより方向舵7が形成されている。
ブレード6の枚数は、左右二枚ずつ合計四枚が好ましいが、これに限定されるものではない。
【0024】
ブレード6は、正面視において翼根部の板厚は薄く、翼端方向へ次第に厚く形成され、左右にそれぞれ二枚ずつ対称的に配設されている。
ナセル3の左右側方の上下に位置するブレード6,6の翼端部には、図3に明示するように、それぞれ、遠心方向へ徐々に傾斜する先細状の傾斜部6Aが形成されている。
【0025】
図1,図2に示すように、各ブレード6は、側面視において、翼根部の弦長は短く、翼端部の弦長は長く逆テーパ状に形成されており、その後縁部6Bはナセル3とほぼ直交し、前縁部6Cは、翼端部に向って前向きに傾斜している。
【0026】
各ブレード6の断面形は、図4に示すように、ナセル3の軸心線Sに対して、外側面6Eは平坦面で、上面の、前端縁部には求心方向の膨出部6Dが形成され、下面もこれと対称的に形成されている。
【0027】
ナセル3に対するブレード6の取付角度は、軸心線Sと平行であるが、ナセル3の後部は細く形成されているので、図1に示す平面視では、前縁部6Cは、軸心線Sに対して前向きに傾斜している。
【0028】
従って、図3におけるナセル3よりも上方において、左右のブレード6の間を通過する気流は、図4における前縁部6Cから、膨出部6Dへ通過する過程で高速化され、膨出部6Dを通過すると、次第に気圧が高まり、かつ左右のブレード6の後部の対向間隔が狭くなっているので、X矢示の高圧気流となって、プロペラ5の前面に当り、プロペラ5の回転速度を高めることとなる。
【0029】
特に、図1に明示するように、左右のブレード6は、翼根部よりも翼端部の弦長が長いことと、前縁6Cに同時に当る気流は、翼根部よりも翼端部の方を通過
して、後縁6Bに至る速度は早くなることにより、翼端部を高速で通過する気流は、プロペラ5の先端部である傾斜部5A付近に当ることになる。
従って、この高速流は傾斜部5Aで拡散させられることはなく、テコの原理で、プロペラ5を効率良く回転させることができる。
【0030】
図2において、ブレード6の側面に沿って通過するY矢示気流も、上下のブレード6の後縁6B同士の対向部間が、前縁部の対向間隔よりも小幅に形成されているため、気圧は高められてプロペラ5の前面に当り、プロペラ5の回転効率は高められる。
すなわち、このブレード6は、これに沿って通過する風流を、コアンダ効果によって高速化し、かつ後部のプロペラ5へ高圧気流を流動させる効果も有している。
【0031】
風向きが変って、ブレード6の側面に気流が当ると、図2に示すように、ブレード6は、側面の、特に幅の広い翼端部において、気流を多く受けることになり、その押す風力によって、ナセル3は、支柱2を中心に旋回し、プロペラ5の前面は、瞬時に風上へ向くこととなる。
【0032】
また、ブレード6の側面に、斜方向から弱い風が当った場合、ブレード6の側
面に沿って、翼端方向へ拡散しようとする気流は、上下の傾斜部6Aによって拡散が抑制され、その部位における風圧を高めて、ブレード6を風下方向へ押すので、ナセル3は、支柱2の垂直軸を中心にして旋回することになり、プロペラ5の前面を、風上に瞬時に向けることとなる。
【0033】
さらに、ブレード6の、翼端部における弦長を大としてあるので、側面から気
流を受ける時は、容易にナセル3の後部を旋回させて、プロペラ5の前面を瞬時に風上へ向けることができる。
【0034】
同時に、ブレード6の広い面に沿って通過する気流は、コアンダ効果により速度を早められて、プロペラ5の前面に当り、回転効率を高める。
なお、本発明の風車は、例えば建造物等の壁面から水平方向へ突出されたアーム等の支持体の先端部に、垂直軸を設けてナセルを旋回可能に装着することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明によると、プロペラ式風車のナセルの向きを、風向きの変化に対応して瞬時に変化させ、常にプロペラの前面を、風上に向けることができるので、本発明は、プロペラ式風車や風力発電機に、有利に利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1.風車
2.支柱
3.ナセル
4.プロペラ軸
5.プロペラ
5A.傾斜部
6.ブレード
6A.傾斜部
6B.後縁
6C.前縁
6D.膨出部
6E.外側面
7.方向舵

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直軸周りに旋回可能に配設されたナセルに、プロペラを取り付けてなる風車において、ナセルの後部周面に、前後方向を向くと共に、放射方向に突出し、かつ翼根部の弦長よりも、翼端部の弦長が長い複数のブレードを取付けたことを特徴とする風車。
【請求項2】
前記複数のブレードは、ナセルの周面において、正面視において上下に、及び左右方向に対称に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の風車。
【請求項3】
前記複数のブレードは、平面視において、ナセルの左右におけるブレードの前縁の対向間隔が、後縁のそれよりも広く形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の風車。
【請求項4】
前記複数のブレードは、左右外側面は平坦であり、上下面の前端縁部に、膨出部が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の風車。
【請求項5】
前記複数のブレードにおける上下対称の翼端部に、それぞれ
上下の対向方向へ傾斜する傾斜部が形成されていることを特徴とする請求項1〜
4のいずれかに記載の風車。
【請求項6】
前記ナセルには、プロペラ軸に連結された発電装置が内装されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の風車。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−261350(P2010−261350A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112161(P2009−112161)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(508191835)株式会社グローバルエナジー (18)
【Fターム(参考)】