説明

風量調整装置

【課題】車両の空気調節装置の吹出し口に対して使用者がする掌の動作を簡単な構成及び処理によって検出し、吹出し風量を調整することができる風量調整装置を提供する。
【解決手段】車両の空気調節装置8の吹出し口82に近接してされる掌9の動作に応じた検出信号を出力する検出部2と、検出信号の継続時間及び繰返し間隔を計測することにより掌9の特定の動作を検出し、その動作に対応して風量を調整する制御部3と、風量や調整結果を音響又は光信号を用いて使用者に報知する報知手段4と、を備える。検出部2は掌9の動きを検出するためのセンサ20を備え、センサ20として反射型光電変換センサ、静電容量センサ等を用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に備えられる空気調節装置の風量調整装置に関し、詳しくは、空気調節装置の吹出し口に対してされる使用者の掌の動作を検出することによって吹出し口からの風量を調節する風量調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車においては、空気調節装置やオーディオ装置、ナビゲーションシステムなど搭載される機器・装置が増加し、それぞれの機能も高度になっている。これに伴い、各装置を操作調整するための摘みや操作ボタン等が多数配設されることとなり、使用者がいずれかの装置を操作しようとするときには、操作ボタン等の位置に視線を向け、表示や目盛を視認しなければならないのが実状である。このため、使用者が運転者であれば、運転中に意図通りの操作を行うことが困難であり、視線を走行方向からそらすことは脇見運転につながることとなる。
従来、使用者が運転中に前方を視たまま各種装置の操作を行うことができるようにするため、使用者の手振り等を検出することによって操作情報を認識し、それに基づいて対象装置等に操作入力する技術が知られている。例えば、撮像手段を用いて使用者の手を検出し、手の形状で示された指示情報によって車載機器を操作調整する非接触式情報入力装置がある(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−50177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車載機器・装置を操作調整するための摘みや操作ボタン等は、それぞれ人が操作し易いようにするため小さくすることができず、様々な装置に対応した操作ボタン等を多数配設しなければならないことはデザイン上の制約となっている。また、前記のように、使用者は、操作ボタン等の位置や表示を視認しなければ各装置の操作をすることが困難であるという問題がある。
さらに、操作ボタン等による操作がその装置の動作をイメージさせるものでない場合が多いため、使用者は意図した操作を直感的に行うことができないという問題がある。車載装置の操作方法は、シートの操作レバーを前方にスライドさせるとシートが前方に移動するような、使用者が操作による動作を直感的にイメージできるものであることが望まれる。しかし、例えば、多くの空調装置の風量調節にはプッシュボタンや回転式の摘み等が用いられており、操作とそれによる装置の動作とが、使用者のイメージの上で結び付かない場合が多い。
【0005】
また、従来、前記非接触式情報入力装置のように、使用者の手振り等を認識することにより、手振り等で示された指示に基づいて装置を操作することができる入力装置が提案されている。これらによれば、各種装置の操作部を視認する必要がなく、運転者は前方から視線をそらすことなく操作をすることができる。しかしながら、各装置に対する指示操作方法が、その装置自体の機能や動作と直感的に結びつかないという問題がある。また、その操作指示が簡単な構成及び処理によって実現されることが必要である。
車載装置の操作の中でも、空気調節装置からの風量の調節は頻繁に行われる操作であるため、使用者が容易に操作場所や操作方法を想起できることが望ましい。風量の調節を風の吹出し口に向けて指示することができれば分かり易い。また、人は暑く感じるときには掌や団扇で扇いで風を出す仕種をし、風を避けるときに掌を風に向けて差し出して風を止める仕種をすることは、自然に観察されるところである。
【0006】
本発明は、かかる人の自然な仕種に着目して、簡単な構成及び処理によって使用者の動作を検出し、車両の空気調節装置からの吹出し風量を調整することができる風量調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の通りである。
1.車両の空気調節装置の吹出し口からの風量を使用者の掌の動作によって調整する風量調整装置であって、該吹出し口に近接してされる掌の動作に応じた検出信号を出力する検出部と、該検出信号の継続時間及び繰返し間隔を計測することにより該掌の特定の動作を検出し、該動作に対応して該風量を調整する制御部と、該風量又は該調整結果を音響又は光信号を用いて使用者に報知する報知手段と、を備えることを特徴とする風量調整装置。
2.前記制御部は、前記継続時間及び前記繰返し間隔が所定の範囲であるとき前記特定の動作の一つと判定し、前記風量を増減させる前記1.記載の風量調整装置。
3.前記制御部は、前記繰返し間隔に対する前記継続時間の比率が所定の範囲にあるとき前記特定の動作の一つと判定し、前記風量を増減させる前記1.又は2.に記載の風量調整装置。
4.前記制御部は、前記検出信号の繰返し回数に対応して前記風量を増す前記1.乃至3.のいずれかに記載の風量調整装置。
5.前記制御部は、前記検出信号の繰返しの速さに対応して前記風量を増す前記1.乃至3.のいずれかに記載の風量調整装置。
6.前記制御部は、前記継続時間が所定時間を超えるとき前記特定の動作の別の一つと判定し、前記風量を減らす前記1.乃至5.のいずれかに記載の風量調整装置。
7.前記制御部は、前記継続時間の長さに対応して前記風量を減らす前記6.記載の風量調整装置。
8.前記制御部は、前記検出信号の所定回数の繰返し後又は所定の継続後に、あらためて前記継続時間及び前記繰返し間隔を計測することにより前記特定の動作を判定し、前記風量を増減する前記1.乃至7.のいずれかに記載の風量調整装置。
9.前記検出部は発光素子及び受光素子を備え、該発光素子から出射され前記掌によって反射された光量の変化を該受光素子により検出する前記1.乃至8.のいずれかに記載の風量調整装置。
10.前記検出部は赤外線センサを備え、前記掌から放射され該赤外線センサにより受光される赤外線量の変化を検出する前記1.乃至8.のいずれかに記載の風量調整装置。
11.前記検出部は静電容量センサを備え、前記掌による静電容量の変化を該静電容量センサにより検出する前記1.乃至8.のいずれかに記載の風量調整装置。
12.前記検出部は撮像手段を備え、前記制御部は該撮像手段によって取得された画像により前記継続時間及び前記繰返し間隔を計測する前記1.乃至8.のいずれかに記載の風量調整装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の風量調整装置によれば、使用者の掌の動作に応じた検出信号を出力する検出部と、該検出信号の継続時間及び繰返し間隔を計測することにより該掌の特定の動作を検出し、該動作に対応して該風量を調整する制御部を備えるため、空気調節装置の吹出し口に掌を近づけて扇いだり風を制止したりする使用者の自然な動作を簡易な構成により検出し、使用者が意図した風量に調整することができる。運転者は前方に視線を向けたまま風量の調整をすることができ、車両に風量調節のための操作ボタン等を備える必要もなくなる。さらに、音響又は光信号による報知手段を備えるため、使用者は前方から視線をそらすことなく風量やその調整結果を知ることができる。
前記継続時間及び前記繰返し間隔が所定の範囲であるとき前記特定の動作の一つと判定し、前記風量を増減させれば、ノイズや偶発的な信号を取り除くことができ、使用者が掌で扇ぐような動作を確実に検出して風量を調整することができる。
また、前記繰返し間隔に対する前記継続時間の比率が所定の範囲にあるとき前記特定の動作の一つと判定し、前記風量を増減させれば、使用者が掌で繰返し扇ぐような動作を確実に検出して風量を調整することができる。
【0009】
前記検出信号の繰返し回数に対応して前記風量を増せば、使用者が掌で扇ぐ回数によって段階的に風量を調整することができる。
また、前記検出信号の繰返しの速さに対応して前記風量を増せば、使用者が掌で繰返して扇ぐ早さによって風量を調整することができ、使用者の自然な感覚に合った風量調整が可能になる。
前記継続時間が所定時間を超えるとき前記特定の動作の別の一つと判定し、前記風量を減らせば、使用者が吹出し口に近づけた掌を静止させて風を制止するような自然な動作を検出することによって風量を減らし、又は送風を止めることができる。
また、前記継続時間の長さに対応して前記風量を減らせば、使用者の前記制止する動作の長さによって所望レベルまで風量を減らし、又は送風を止めることができる。
前記検出信号の所定回数の繰返し後又は所定の継続後に、あらためて前記継続時間及び前記繰返し間隔を計測することにより前記特定の動作を判定し、前記風量を増減すれば、偶発的な信号や使用者による不規則な動作の影響を取り除くことができ、掌の特定の動作を確実に検出して風量を調整することができる。
【0010】
前記検出部は発光素子及び受光素子を備え、該発光素子から出射され前記掌によって反射された光量の変化を該受光素子により検出すれば、簡易な回路構成により、掌の動作を安定に検出することができる。
また、前記検出部は赤外線センサを備え、前記掌から放射され該赤外線センサにより受光される赤外線量の変化を検出すれば、検出部の消費電力を小さくすることができる。
また、前記検出部は静電容量センサを備え、前記掌による静電容量の変化を該静電容量センサにより検出すれば、センサーと人体との距離によって静電容量が変化するため、掌の動作を安定に検出することができる。
また、前記検出部は撮像手段を備え、前記制御部は該撮像手段によって取得された画像により前記継続時間及び前記繰返し間隔を計測すれば、掌の特定の動作を簡単な画像処理により確実に検出することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
車両の空気調節装置の吹出し口は、運転席、助手席、後部座席等に着座する使用者の上半身や足元等に空気を吹出すように各所に配設されている。本発明の風量調整装置は、それら吹出し口に対して、使用者がする手の動作を検出することにより吹出し風量を調節できるようにするものである。このため、本風量調整装置は、人が暑く感じるときにする掌を団扇のように扇いで風を出す動作(扇ぎ動作)と、風を避けるときにする掌を風に向けて差し出して風を止める動作(制止動作)を、基本的な動作として検出し、それに基づいて風量を調整する。
【0012】
(風量調整装置の構成)
本発明の風量調整装置1は、図1に示すように、制御部3を中心に構成され、検出部2及び報知手段4を備える。制御部3には、検出部2、空気調節装置8の送風機81が接続される。送風機81により、吹出し口82から空気が送り出される。風量調整装置1は、空気調節装置8に備えられる各吹出し口に対応して備えることができる。風量調整装置1を構成する各部には、車両のバッテリから給電を受ける電源回路(図示せず)によって、必要な電力を供給することができる。
【0013】
検出部2は、吹出し口82に近付けられた使用者の掌9を検出し、その掌9の動きに応じた検出信号を制御部3に出力するように構成される。
制御部3は電子制御ユニット(ECU)であり、検出部2からの上記検出信号により掌9の特定の動作を検出し、その動作に対応して風量を調整する信号を送風機81に送る。制御部3には、上記検出信号がオンである継続時間、及び繰返し検出信号がオンとなる間隔を計測するための計時手段を備え、それによって検出信号の時間的な変化の特徴を抽出するように構成される。ただし、上記繰返しの間隔の計測においては、上記検出信号がオン状態のままで繰返しがない場合も含む。
制御部3の処理機能は、ハードウェア、ソフトウェアのいずれによって実現されてもよく、好適には、CPU、メモリ(ROM、RAM等)、タイマ又はカウンタ、入出力回路等を備えるマイクロコントローラ(マイクロコンピュータ)を中心に、入出力インターフェース等周辺回路を備えることにより構成することができる。デジタル信号プロセッサ(DSP)、プログラム可能な論理回路、ゲートアレーその他の論理回路を用いて構成されてもよい。
【0014】
報知手段4は、風量調整装置1の動作状態や風量の調整結果などを、音響又は光信号を用いて使用者に報知するための手段である。鳴音器、表示器(発光ダイオード等)などを適宜に備えることにより、掌の動作を検知したときや風量を変更するとき等に、鳴音や点灯によって使用者に知らせることができる。また、報知手段4として音声を生成する音声出力手段を備えることによって、スピーカを用いて音声による報知をするように構成することができる。
【0015】
検出部2は、空気調節装置8のダクトからの吹出し口82に近付けられた使用者の掌9の動きを検出するように構成される。このため、検出部2には、近接した掌9の動きを検出するためのセンサ20を備える。
センサ20によって、吹出し口82の近傍(例えば吹出し口82の位置から数cm〜20cm程度)の範囲(検出域7)が検出されればよい。また、センサ20は、吹出し口82に向かって差し出された掌の動きを検出し易い位置に設けられればよい。好適には、図3に示すように、吹出し口82の外面周辺に配設することができるが、これに限るものではない。
センサ20によって検出する掌の基本的な動作は、前記の通り、吹出し口82に対して掌によって扇ぐような扇ぎ動作(例えば図3(a))と、吹出し口82に向かって掌を静止させるような制止動作(例えば図3(b))とすることができる。扇ぎ動作の方向は、図2に示すように、おおよそ、吹出し口82に対して垂直のx方向(遠近方向)に掌を振る動作、吹出し口82に対して平行なyz面内の方向(上下左右方向)に掌を振る動作があり得る。センサ20は、検出域7においてこのような掌の動きに応じた光量、静電容量等の時間的変化を検出できればよい。
【0016】
センサ20の例として、図4に示すような発光素子21と受光素子22を備えた反射型光電センサを挙げることができる。例えば、発光素子21として赤外領域の光を放出する発光ダイオードを用いることができ、受光素子22には赤外領域の光を受光するフォトトランジスタ等を用いることができる。発光素子21から出射された赤外光が掌9によって反射され、受光素子22によって受光される。受光量は掌9の位置や向きによって変化するため、受光量の変化によって掌9の動きを検出することができる。発光素子21や受光素子22には、検出域7を最適にするように光学レンズを備えてもよいし、外乱光の影響を受けないように、受光素子22に可視光を遮断する光学フィルタを備えてもよい。
上記発光素子21及び受光素子22を用いて、検出部2は、例えば、図5に示すように構成することができる。発信回路211が生成するパルス信号によって送信回路212を介して発光素子21が駆動され、発光素子21から赤外光のパルス信号が出射される。掌等による反射光は受光素子22によって受光され、光電変換される。受光素子22の出力電流は受信回路221によって電圧信号に変換されるとともに増幅され、比較回路222によって所定の閾値と比較される。そして、同期回路223によって送信パルスと同期がとられ、フィルタ回路224によってノイズ除去及び波形整形されて、検出信号Dが出力される。
【0017】
センサ20として、パッシブ型赤外線センサを備えてもよい。パッシブ型赤外線センサは、前記のような発光素子を使用することなく、掌9から放射される赤外線を光検出素子により受光して、その受光量の変化によって掌の動きを検出することができる。光検出素子としては、例えば、サーモパイル、ボロメータ、フォトダイオード等を挙げることができる。
【0018】
また、センサ20として、静電容量センサを採用することもできる。静電容量センサは接地(車体)との間の静電容量を検出するものであり、比誘電率が大きい人体による静電容量の変化を容易かつ安定に検出することができる。静電容量の値は、静電容量センサの電極と人体すなわち掌9との距離及び対向面積に応じて変化するため、吹出し口82に近接した掌9の動きを静電容量の変化として検出することができる。
【0019】
また、検出部2に撮像手段を備えてもよい。撮像手段として、例えば赤外線カメラを使用すれば、周囲環境の明るさに影響されないで、掌9の動きを画像情報として取得することができる。カメラによって吹出し口82近傍の検出域7のみを撮像して掌9を抽出すればよく、また、掌9の位置の時間的変化を検出すればよいため、画像処理を簡単にすることができる。
【0020】
(風量調整装置の動作)
図3は、空気調整装置8の吹出し口82の上方にセンサ20が設けられ、その吹出し口82の前方に使用者の掌(9a、9b)が差し出された状態を説明する図である。例えば、センサ20が前記反射型光電センサである場合、光が発光素子の光軸を中心とする検出域7に放射されるとともに、受光素子によりほぼ検出域7内の対象物からの反射光を受光するようにすることができる。そして、掌9が吹出し口82に近い光軸上にあれば受光量が大きく、光軸から外れたときや遠ざかったときには受光量が小さくなる。したがって、図3(a)に示すように掌9aを扇ぐように振った場合には、その動きに応じて受光量が変動する。また、同図(b)に示すように、掌9bを静止させた場合には、その間の受光量は大きく変動しないこととなる。
【0021】
図6は、掌9によって扇ぎ動作がされた場合の風量調整装置1の動作例を説明するもので、グラフの横軸は時間である。掌9により扇ぎ動作がされると、その動作に応じてセンサ20による検出レベル(受光量、静電容量等)が変化する。検出部2において所定の閾値L1と比較することにより、図6(b)に示す検出信号Dを生成することができる。
検出信号Dは、掌9を感知したときonとなる。扇ぎ動作がされた場合、検出信号Dは、on、offが反復される(D、D、D、・・・)。検出信号Dがonである期間を継続時間Tbとし、検出信号Dがonとなる間隔を繰返し間隔Taとする。
制御部3は、上記継続時間Tb及び繰返し間隔Taから、掌9の基本的な動作である扇ぎ動作を検出することができる。通常、扇ぎ動作の速さは一様ではないため、継続時間Tb及び繰返し間隔Taは、反復されるごとに異なる。また、ノイズの他、使用者又は他の要因によって偶然に生じた信号を除く必要がある。このため、例えば、継続時間Tb及び繰返し間隔Taが所定の範囲(例えば、Tbは0.05秒以上、Taは0.2秒〜1秒)であるとき扇ぎ動作と判定するようにすることができる。
また、繰返し間隔Taに対する継続時間Tbの比率が所定の範囲にある場合に扇ぎ動作と判定するようにしてもよい。さらに、継続時間Tb、繰返し間隔Ta及び上記比率のいずれも所定の範囲にあることを扇ぎ動作の判定条件としてもよい。
その他、扇ぎ動作の検出は種々のアルゴリズムによって行うことができる。
【0022】
制御部3は、以上のように掌9による扇ぎ動作が検出されたときは、吹出し口82からの風量を増すように制御する。風量は、制御部3から送風機81に風量切換信号等を出力することによって増減させることができる。
風量を増加させるアルゴリズムも、種々工夫することができる。
例えば、検出信号Dの繰返し回数、すなわち掌9による扇ぎ動作の反復回数に対応して、風量を増すようにすることができる。また、検出信号Dの繰返し間隔Taの短さ、すなわち掌9による扇ぎ動作の速さに対応して、風量を増すようにすることができる。
いずれの場合であっても、偶発的な信号の影響を除くため、扇ぎ動作が所定回繰り返されるまでは、風量の変更をしないようにしてもよい。その場合には、検出信号Dが所定回数繰返された後に、あらためて継続時間Tb及び繰返し間隔Taを計測することにより扇ぎ動作と判定されるときに、風量を増せばよい。例えば、図6(c)は、初期の2回の検出信号D,Dは無効として、その後の検出信号Dによって風量を1段階増し、Dによってさらに1段階増す場合を示す。
【0023】
次に、図7は、掌9による別の基本的な動作である前記制止動作の検出と、それによる風量制御の例を示す。
掌9が吹出し口82に向けて差し出された状態では、その間、センサ20により掌9が検出され続けるため、検出レベルは閾値L1を超え、検出信号Dはonの状態が継続することとなる。したがって、単純には、検出信号Dの継続時間Tbが所定の時間を超える場合には制止動作と判定し、風量を減らすようにすることができる。また、継続時間Tbの長さに対応して風量を減らすようにしてもよい。
前記と同様に、使用者又は他の要因によって偶然に生じた信号等の影響を除くための処理を加えることもできる。例えば、図7(c)は、検出信号Dがonとなってから所定の時間(Tm)on状態が継続するまでは風量の変更をしないようにして、その後、検出信号Dの継続時間Tcごとに風量を1段階ずつ減らす場合を示す。
制止動作の検出を確実にするために、最初に数回の扇ぎ動作をした後に掌9を静止させた場合に制止動作と判定する等、使用方法及び判定のアルゴリズムは種々変形することができる。
【0024】
図8は、図6及び図7に示した動作例について、制御の概略を示すフローチャートである。
風量調整装置1は、初期状態(S0)から、検出部2によって検出信号Dが出力されるまで待機する(S10)。
検出信号Dがonとなった後、その時間的変化をみるため継続時間Tb及び繰返し間隔Taを計測する(S20)。そして、継続時間Tb及び繰返し間隔Taがあらかじめ定められた基準の範囲内であるかどうかを判断する(S25)。
継続時間Tb及び繰返し間隔Taが所定の範囲内である場合には、扇ぎ動作であることを確実に検出するため、所定範囲内の検出信号Dが所定回数繰り返して生起したことを確認する(S30)。
所定範囲内の検出信号Dが所定回数生起した場合には、扇ぎ動作による制御(S40〜S55)を開始する。扇ぎ動作による制御においては、あらためて継続時間Tb及び繰返し間隔Taを計測し(S40)、所定の範囲内であるかどうかを確認する(S45)。所定の範囲から外れる場合には、扇ぎ動作が中止等されたものと判断されるため、初期状態(S0)に戻る。
上記ステップS45において、所定の範囲内であった場合には、風量を1段増加させるように送風機81を制御する(S55)。その際、報知手段4によって風量を増すことを使用者に知らせることができる(S50)。
さらに、上記プロセス(S40、S45、S55)を繰り返すことによって、扇ぎ動作の繰返し回数に対応して風量を順次増加させることができる。
【0025】
前記ステップS25において、継続時間Tb及び繰返し間隔Taが所定の範囲内になく、したがって扇ぎ動作である可能性がない場合には、検出信号Dが所定時間(Tm)継続してonになっているかどうかを判定し(S60)、継続的にon状態でなければ、ノイズや偶発的な要因による信号であると考えられるため、初期状態(S0)に戻る。
継続的にon状態であった場合には制止動作である可能性があるため、制止動作による制御(S70〜S85)を開始する。制止動作による制御においては、さらに一定時間(Tc)、検出信号Dが継続してonであれば(S70)、風量を1段減少させるように送風機81を制御する(S85)。その際、報知手段4によって風量を減らすことを使用者に知らせることができる(S80)。
さらに、上記プロセス(S70、S85)を繰り返すことによって、制止動作が継続されている時間の長さに応じて風量を順次減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の風量調整装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の風量調整装置によって検出する掌の扇ぎ動作を説明するための図である。
【図3】本発明の風量調整装置のセンサを空調装置の吹出し口近傍に設け、掌の動作の検出を説明するための模式図である。
【図4】本発明の風量調整装置の検出部に発光素子及び受光素子を備える場合の掌の検出を説明するための模式図である。
【図5】反射型光電センサによる検出部の構成例を示すブロック図である。
【図6】本発明の風量調整装置が掌による扇ぎ動作を検出し、空調装置の吹出し風量を調整する動作例を示す図である。
【図7】本発明の風量調整装置が掌による制止動作を検出し、空調装置の吹出し風量を調整する動作例を示す図である。
【図8】本発明の風量調整装置の制御例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0027】
1;風量調整装置、2;検出部、3:制御部、4;報知手段、8;空気調節装置、9、9a、9b;掌、20;センサ、21;発光素子、22;受光素子、81;送風機、82;吹出し口、D;検出信号、Ta;繰返し間隔、Tb;継続時間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の空気調節装置の吹出し口からの風量を使用者の掌の動作によって調整する風量調整装置であって、
該吹出し口に近接してされる掌の動作に応じた検出信号を出力する検出部と、
該検出信号の継続時間及び繰返し間隔を計測することにより該掌の特定の動作を検出し、該動作に対応して該風量を調整する制御部と、
該風量又は該調整結果を音響又は光信号を用いて使用者に報知する報知手段と、
を備えることを特徴とする風量調整装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記継続時間及び前記繰返し間隔が所定の範囲であるとき前記特定の動作の一つと判定し、前記風量を増減させる請求項1記載の風量調整装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記繰返し間隔に対する前記継続時間の比率が所定の範囲にあるとき前記特定の動作の一つと判定し、前記風量を増減させる請求項1又は2に記載の風量調整装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記検出信号の繰返し回数に対応して前記風量を増す請求項1乃至3のいずれかに記載の風量調整装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記検出信号の繰返しの速さに対応して前記風量を増す請求項1乃至3のいずれかに記載の風量調整装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記継続時間が所定時間を超えるとき前記特定の動作の別の一つと判定し、前記風量を減らす請求項1乃至5のいずれかに記載の風量調整装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記継続時間の長さに対応して前記風量を減らす請求項6記載の風量調整装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記検出信号の所定回数の繰返し後又は所定の継続後に、あらためて前記継続時間及び前記繰返し間隔を計測することにより前記特定の動作を判定し、前記風量を増減する請求項1乃至7のいずれかに記載の風量調整装置。
【請求項9】
前記検出部は発光素子及び受光素子を備え、該発光素子から出射され前記掌によって反射された光量の変化を該受光素子により検出する請求項1乃至8のいずれかに記載の風量調整装置。
【請求項10】
前記検出部は赤外線センサを備え、前記掌から放射され該赤外線センサにより受光される赤外線量の変化を検出する請求項1乃至8のいずれかに記載の風量調整装置。
【請求項11】
前記検出部は静電容量センサを備え、前記掌による静電容量の変化を該静電容量センサにより検出する請求項1乃至8のいずれかに記載の風量調整装置。
【請求項12】
前記検出部は撮像手段を備え、前記制御部は該撮像手段によって取得された画像により前記継続時間及び前記繰返し間隔を計測する請求項1乃至8のいずれかに記載の風量調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−163111(P2010−163111A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8172(P2009−8172)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】