説明

飛しょう体

【課題】強度的に強くしかも透過する電波特性が広いレドームを有する飛しょう体を提供すること。
【解決手段】一例の飛しょう体は、目標に向かって飛しょうする飛しょう体であって、その最先端部に有する尖った形状の尖頭部と、前記飛しょう体の前部に内蔵され前記目標を指向する電子走査アンテナと、この電子走査アンテナと前記尖頭部の間に設けられたレドームとを備え、このレドームは、繊維強化樹脂を積層した外層と、この外層の内部に低誘電率の樹脂を素材とする材料を充てんされた内部部材を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、目標に向けて飛しょうする飛しょう体に関する。
【背景技術】
【0002】
目標に向けて飛しょうする飛しょう体の前部には、目標を探知し指向するレーダ用の電子走査アンテナが設けられる。そしてこの電子走査アンテナを保護するためにレドームが設けられる。このレドームとして、樹脂複合材料により形成されたアウタスキンとインナスキンの間に、ハニカム状のコア材を埋めた多層構造のレドームが知られている。
【0003】
また、低誘電率で低誘電損失のセラミックス又は耐熱性プラスチックスから成る内層と内層の両表面を被覆した低誘電率で低誘電損失の高強度セラミックスから成る外層からなるレドームも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−206614号公報
【特許文献2】特開平6−21713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように従来のレドームは内層と外層などの二重構造をしていた。しかし上述のような従来のレドームは飛しょう時の空力荷重に対して強度が弱く座屈するおそれがあり、また、透過する電波帯域がまだ狭いという問題もあった。
【0006】
そこで本発明は、強度的に強くしかも透過する電波特性が広いレドームを有する飛しょう体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態の飛しょう体は、目標に向かって飛しょうする飛しょう体であって、その最先端部に有する尖った形状の尖頭部と、前記飛しょう体の前部に内蔵され前記目標を指向する電子走査アンテナと、この電子走査アンテナと前記尖頭部の間に設けられたレドームとを備え、このレドームは、繊維強化樹脂を積層した外層と、この外層の内部に低誘電率の樹脂を素材とする材料を充てんされた内部部材を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】一実施形態に係る飛しょう体前部の断面図である。
【図2】他の実施形態に係る飛しょう体前部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。図1に一実施形態の飛しょう体の前部の断面を示す。
【0010】
図1において、11は飛しょう体の前部であり、飛しょう体を誘導する部位である飛しょう体シーカが設けられている。この飛しょう体前部11の外筒12内にレーダ用に電子走査アンテナ13が設けられる。この電子走査アンテナ13の前方にレドーム14が設けられ、外周は外層15に覆われる。レドーム14の更に先に、尖頭部(チップ)16が設けられる。電子走査アンテナ13はレドーム14から離して設けられている。
【0011】
電子走査アンテナ13は、複数の素子アンテナが二次元的に配設され、各素子アンテナから送受信される電波の位相を変えることにより電子走査を行う。
【0012】
尖頭部16は、飛しょう体の先端に設けられ、例えばステンレスにより製造される。あるいは、セラミックにより製造することも可能である。
【0013】
従来のアウタスキンに当たる外層15は、例えば繊維強化樹脂を積層して設けられる。
【0014】
レドーム14は、尖頭部16と電子走査アンテナ13の間に設けられる。レドーム14は、上記外層15と、その内部に低誘電率の耐熱樹脂を素材とする材料を充てんして作られる内部部材17とから成る。
【0015】
この実施形態では、遭遇する空力荷重に対しては、座屈に作用する荷重に対して内部に充てんされる低誘電率の耐熱樹脂を素材とする材料とする内部部材17が耐えることにより、必要な強度を確保することができる。
【0016】
また空力加熱による熱流入に対しては、繊維強化樹脂を積層して形成した外層15、内部部材17を用いることにより必要な耐熱性を有する。
【0017】
この実施形態によれば、繊維強化樹脂を積層して形成した部分は外層15だけであり、内部に低誘電率の樹脂を素材とする材料が充てんされてレドームが形成されているので、広帯域の電波の透過性に対する障害を極力、減らすことが可能となる。また、内部は低誘電率の樹脂を素材とする材料を充てんされているので、広帯域の電波に対して所望の電波透過性を確保できる。
【0018】
図2に他の実施形態の飛しょう体の前部の断面を示す。この実施形態においても、飛しょう体前部21の外筒22内にレーダ用に電子走査アンテナ23が設けられる。この電子走査アンテナ23の前方にレドーム24が設けられ、外周は外層25に覆われる。レドーム24の更に先に、尖頭部(チップ)26が設けられる。また、レドーム24は、上記外層25と、その内部に低誘電率の耐熱樹脂を素材とする材料を充てんして作られる内部部材27とから成る。
【0019】
但し、電子走査アンテナ23の前方の一部が、内部部材27に埋められている点が図1に示した実施形態と異なる。
【0020】
通常、飛しょう体が飛しょうするとき、本体が振動し電子走査アンテナ23にも振動が印加される。
【0021】
この実施形態では、電子走査アンテナ23の一部が内部部材27に埋め込まれている。したがって、上記電子走査アンテナ23に印加される振動を内部部材27が吸収することができ、電子走査アンテナ23内部構成品の耐振動性を向上させることが可能となる利点がある。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態を説明したがこれらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0023】
11,21・・・飛しょう体前部
12,22・・・・外筒
13,23・・・・電子走査アンテナ
14,24・・・・レドーム
15,25・・・・外層
16,26・・・・尖頭部(チップ)
17,27・・・・内部部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標に向かって飛しょうする飛しょう体であって、その最先端部に有する尖った形状の尖頭部と、前記飛しょう体の前部に内蔵され前記目標を指向する電子走査アンテナと、この電子走査アンテナと前記尖頭部の間に設けられたレドームとを備え、
このレドームは、
繊維強化樹脂を積層した外層と、この外層の内部に低誘電率の樹脂を素材とする材料を充てんされた内部部材を有することを特徴とする飛しょう体。
【請求項2】
前記電子走査アンテナの一部が前記内部部材中に埋め込まれていることを特徴とする請求項1記載の飛しょう体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−253650(P2012−253650A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126116(P2011−126116)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】