説明

飛散灰の前処理のための方法とシステム

飛散灰の移送作業時に化学薬剤を添加することにより飛散灰を処理する方法およびシステム。この方法は、飛散灰貯蔵サイロから飛散灰を排出すること、および排出される飛散灰の流量を流量計によって計測することを含む。また、この方法は、飛散灰の流量に対応する、流量計からの信号を生成すること、および化学薬剤供給装置によって、化学薬剤を、飛散灰に、選択された化学薬剤添加速度で添加することをも含む。ここで、化学薬剤添加速度は飛散灰取り出し流量にもとづいて選択される。また、この方法は、飛散灰を処理するために、化学薬剤と飛散灰とを混合すること、および処理された飛散灰を工場または処分場に移送することをも含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、35 U.S.C.§119(e)のもとに、米国仮特許出願第60/607,796号(2004年9月8日提出、“灰の前処理の方法とプロセス”)に対する優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、飛散灰を処理するシステムと方法に関する。より詳しくは、飛散灰移送作業時に化学薬剤を添加することにより飛散灰を前処理するシステムと方法に関する。
【背景技術】
【0003】
石炭燃焼発電所は、通常、煙道ガスを含む飛散灰にアンモニアまたはアンモニアを基剤とする化学薬剤を使用して、(1)不透明度を低下させるための電気集塵器(ESP)の性能を高め、(2)NOx放出規定を満たすために、選択的触媒還元(SCR)と選択的非触媒還元(SNCR)の技術を使用して、窒素酸化物(NOx)を除去する。ESPの性能を高めるための煙道ガスへのアンモニア噴射により、通常、飛散灰にアンモニアが付着する。また、煙道ガス中でのSO3とNH3との気相反応により、硫酸アンモニウム(NH4)2SO4および硫酸水素アンモニウムNH4HSO4の形のアンモニウム塩の飛散灰への付着が起こる。SCRおよびSNCRプロセスのどちらにおいても、アンモニアを使用して下記の反応によって窒素ガスと水蒸気を生成させることにより、NOxを減少させる。
[化1]
4NO+4NH3+O2→4N2+6H2O
[化2]
2NO2+4NH3+O2→3N2+6H2O
【0004】
アンモニアによる飛散灰汚染の程度と濃度は、アンモニア噴射の量、SCRおよびSNCRプロセスの性能、煙道ガス中のSO3の量、ならびにボイラーおよび大気汚染制御装置の動作条件によって、それぞれの発電所で異なる。
【0005】
石炭燃焼発電所で生じる飛散灰は、通常、ポゾラン混合材として、セメントの一部を置き換えるために、コンクリートで使用される。飛散灰は、高性能コンクリートにおいて必須の成分であり、コンクリートの多くの有益な特性に寄与する。たとえば、高密度と長期強度、低透水性、および化学的攻撃に対する高耐久性を与える。また、飛散灰は、生コンクリートの加工性を向上させる。ポルトランドセメントを基材とするモルタルおよびコンクリートのために、アンモニア汚染された飛散灰を使用すると、アンモニア塩が水に溶解してNH4を形成する。セメントアルカリによって生成される高pH(pH>12)条件下では、アンモニウム陽イオン(NH4)が溶解アンモニアガス(NH3)に変化する。アンモニアガスは、生モルタルまたはコンクリート混合物から、コンクリート作業者に触れる空気中に放出される。
【0006】
アンモニア含有灰を用いて製造されるコンクリートから放出されるアンモニアガスが人体に接触するという危険に加えて、この灰を石炭燃焼発電所のごみ埋立地または埋立池(pond)に廃棄すると、人体または環境に対する潜在的な危険も生じうる。飛散灰中のアンモニウム塩化合物は、非常に溶けやすい。アンモニウム塩は、水に接触すると、水中に溶け出し、地下水および近くの河川に運ばれて、環境被害を発生させうる。たとえば、地下水汚染、魚の死、および栄養富化を発生させうる。アンモニアガスは、また、たとえば西部亜瀝青炭の燃焼によって生じるようなアルカリ性飛散灰が水を含んだ場合にも発生しうる。アルカリ性飛散灰が水を含み、湿潤廃棄された場合、発電所の作業者がアンモニアガスにさらされうる。
【0007】
同時に譲渡された米国特許第6,790,264号(Control of Ammonia Emission from Ammonia Laden Fly Ash(アンモニア含有飛散灰からのアンモニア放出の制御))により、化学酸化剤を添加してアンモニア含有飛散灰を処理することが知られている。同明細書の全記載事項を参照されたい。化学酸化剤は乾燥飛散灰中のアンモニアとは反応しない。化学酸化剤は水スラリー混合プロセス時に放出される。アンモニア含有飛散灰がセメントスラリーに投入されると、アンモニア含有飛散灰からアンモニウム塩が溶け出す。セメントスラリーの高アルカリ性(高pH)状態により、アンモニウム陽イオン(NH4)が溶解アンモニアガス(NH3)に変化する。化学酸化剤がない場合には、アンモニアガス(NH3)は、混合、搬送、注入、および定置時に、セメントスラリーから放出される。
【0008】
好ましい化学処理剤は、強力な酸化剤であり、たとえばCa(OCl)2、NaOCl、LiOCl、トリクロロ-s-トリアジントリオン(トリクロル(trichlor))、その他の形で普通に見られる次亜塩素酸塩(OCl)であり、アンモニア含有飛散灰に加えられる。化学酸化剤は、アンモニア含有乾燥飛散灰をセメントスラリーに投入する前に、該飛散灰に加えられる。処理済み飛散灰をセメントスラリーと混合すると、アンモニアを無害生成物に変化させる化学変化が起こる。処理剤は水添加によって活性化し、灰またはコンクリートスラリー中の溶解アンモニアと反応し、まずモノクロラミン(NH2Cl)を生成する。したがって、アンモニアガス(NH3)に触れる危険性が低下する。次亜塩素酸塩処理剤の過剰添加により、モノクロラミンがさらに酸化され、窒素ガス(nitrogen gas)(NH2)と塩化物とが生成される。次亜塩素酸塩による塩基性水性相アンモニア酸化反応は下記の通りである。
[化3]
NH4+OCl→NH2Cl+H2O
【0009】
次亜塩素酸によるアンモニアの酸化速度は、pH、温度、時間、初期添加量、および競合還元剤の存在に依存する。ポルトランドセメントを基材とするコンクリートおよびモルタル中でのこの反応のpH状態は、付随するセメント水和からのアルカリの存在によって支配される。予想されるセメントスラリーpHは、12〜14である。新たに混合されたコンクリートの温度は、水和熱のため、周囲温度よりもわずかに熱くなる傾向がある。温度ひび割れを避けるために、最適コンクリート温度は、10〜15℃(50〜60F)の範囲にあるようにし、あるいは大量のコンクリート注入の場合にはこれよりも低くする。反応時間も、通常の標準的なコンクリート作業、すなわち混合、搬送、および定置の基準によって支配される。レディーミクストコンクリートバッチは、少なくとも5〜10分間混合される。ASTM C94は、90分間の混合時間内に定置することを要求している。アンモニア含有飛散灰とコンクリートとの混合物中のアンモニアは、次亜塩素酸塩と反応させるためにもっとも容易に利用できる還元剤である。水中でのアンモニアと次亜塩素酸とのクロラミン生成反応は、99%が数分以内に完了する。理論的には、モノクロラミンの生成には、1:1モル比の次亜塩素酸:アンモニア(Cl:N)が必要である。Cl:Nモル比をさらに増大させると、窒素ガスおよび塩化物塩のさらなる酸化および生成が起こる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
化学薬剤を、高濃度アンモニア含有飛散灰に加えるための、空間効率が高く経済的なプロセスとシステムを開発することが望ましいと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、アンモニア処理した乾燥飛散灰を処理する、空間効率の高い経済的な方法の提供を意図する。一つの側面において、本発明は、化学薬剤を乾燥状態で、アンモニア含有飛散灰に、制御添加し、混合することにより、アンモニア含有飛散灰を処理する方法の提供を意図するものである。添加された薬剤は、灰またはこの灰を含むコンクリート混合物への後続の水添加が行われるまで、活性化しない。この方法は、飛散灰流量の計測と制御、適当な薬剤添加量の計測、灰計測装置内での薬剤と飛散灰の混合、およびここで得られた混合物をタンカートラックその他の乾燥粉末保持容器内に送り込むことを含む。
【0012】
1つの側面において、本発明は、飛散灰移送作業中に化学薬剤を添加することにより、飛散灰を処理するシステムの提供を意図する。このシステムは、飛散灰貯蔵サイロ、および該サイロから排出される飛散灰の流量を計測する流量計を有する。この流量計は、飛散灰の流量に対応する信号を生成する。このシステムは、さらに、選択した化学薬剤添加速度で飛散灰に化学薬剤を添加するための化学薬剤供給装置をも有する。プログラマブル論理制御器が、飛散灰の流量に対応する信号を受信し、該信号にもとづいて化学薬剤添加速度を選択するように構成される。このシステムは、また、処理済み飛散灰を送り出す積荷噴出口(load out spout)をも有する。
【0013】
もう1つの側面において、本発明は、飛散灰移送作業中に化学薬剤を添加することにより、飛散灰を処理する方法を提供することを意図する。この方法は、飛散灰貯蔵サイロから飛散灰を排出し、排出される飛散灰の流量を流量計により計測することを含む。この方法は、また、飛散灰の流量に対応する流量計からの信号を生成し、化学薬剤供給装置により、選択した化学薬剤添加速度で化学薬剤を飛散灰に加えることをも含み、ここで、化学薬剤添加速度は、飛散灰取り出し流量にもとづいて選択される。この方法は、また、化学薬剤を飛散灰と混合して飛散灰を処理し、このように処理した化学薬剤を工場または処分場に移送することをも含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の前記その他の特徴および利点は、本発明のシステムおよび方法を例示する各種実施形態の以下の詳細な説明において示され、またはこれらの特徴および利点がこの説明から明らかになるであろう。
【0015】
本発明の前記その他の特徴は、以下の、添付の図面に即した本発明の実施形態の説明を参照することにより、より明瞭になり、また本発明自体がよりよく理解されるであろう。
【0016】
添付の図面においては、対応する参照番号は対応する部品を示す。
【0017】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明を詳しく説明する。ここでは、本発明が実施できるように好ましい実施形態について説明する。本発明を特定の好ましい実施形態によって説明するが、本発明はこれらの好ましい実施形態に限定されるものではない、と理解すべきである。反対に、本発明は、以下の詳細な説明の考察から明らかになる、数多くの変形、変更、および同等物を含む。
【0018】
本発明は、灰移送作業時に加えられる化学薬剤によって、灰を処理するシステムとプロセスに関する。図1には、化学薬剤を飛散灰と混合する乾式灰処理システム10を模式的に示す。このシステム10は、化石燃料燃焼発電所で普通に見られるタイプの飛散灰貯蔵サイロ12を有する。飛散灰は、タンカートラック、軌道車、その他に重力載荷するために、通常、頭上式のサイロ12に貯蔵される。本発明においては、飛散灰は、サイロ12から工場または処分場まで搬送する灰移送作業時に、化学薬剤を飛散灰に連続添加し、混合することによって処理される。1つの実施形態においは、飛散灰は、たとえば同時譲渡された米国特許第6,790,264号に記載されているように、飛散灰中のアンモニアの作用を軽減するために、酸化剤によって処理される。適当な酸化剤としては、たとえば、次亜塩素酸カルシウム(Ca(OCl)2)、次亜塩素酸リチウム(LiOCl)、またはトリクロロ-s-トリアジントリオン(C3N3O3Cl3)の形の次亜塩素酸塩(OCl)があり、飛散灰およびコンクリートの高pHスラリーからのアンモニアガスの放出をなくすかまたは大きく減少させるために、アンモニア含有飛散灰を処理するのに使用される。ここで述べるプロセスとシステムはアンモニア含有飛散灰に添加される酸化剤の添加に関するものであるが、当業者には容易に理解されるように、本発明は、他の乾燥または液体化学薬剤を含む灰の処理に使用して、本発明の範囲を逸脱することなく、灰の品質を向上させ、また生成物に特定の性能属性を付与することもできる。
【0019】
好ましくは、飛散灰は、重力排出によってサイロ12から取り出される。サイロ12からの飛散灰の取り出し速度は、流量制御器13によって制御される。好ましくは、流量制御器13は、自動回転仕切り弁である。しかし、サイロ12からの飛散灰の重力排出を制御する他の手段、たとえば、ノッチ付きの(notched)調節シリンダー、回転エアロック、その他の流量制御器を使用することができる。飛散灰は、サイロ12から流量制御弁13を通って流量計14まで、物質搬送機構16たとえば供給エアスライドによって搬送される。好ましくは、流量計14は、慣性流量計(inertial flow meter)であり、好ましくは、この流量計は、回転ホイールを使用して、飛散灰がサイロ12から供給されるときに飛散灰の流量を測定する。しかし、他の公知の計量装置、たとえばコリオリ効果にもとづいて測定を行うもの、その他の流量計を使用することができる。1つの好ましい実施形態においては、流量制御弁13は、流量計14から得られる流量信号に応答して、またはこれに別様にもとづいて、調節され、弁の位置を制御し、サイロ12からの飛散灰の実質的に一定で定常的な流れを与える。
【0020】
示されているように、化学薬剤供給装置18は、飛散灰が流量計14にはいるときに、化学薬剤を飛散灰に加える。化学薬剤が灰移送位置の近くで使用できて便利なように、化学薬剤取り扱いおよび搬送システム22が、化学薬剤供給装置18に薬剤を供給するために備えられている。1つの実施形態においては、化学薬剤取り扱いおよび搬送システム22が、化学薬剤貯蔵容器24と物質搬送コンベヤーたとえばスクリューコンベヤー25を有している。貯蔵容器24には、真空システム(図示せず)その他の搬送手段によって、貯蔵ドラム(図示せず)から薬剤を供給することができる。スクリューコンベヤー25は、貯蔵容器24から化学薬剤供給装置18に化学薬剤を搬送する。化学薬剤供給装置18は、飛散灰が流量計14にはいるときに、搬送スクリュー30により、選択された添加速度で化学薬剤を供給する。
【0021】
次に、乾燥化学薬剤と乾燥飛散灰とは、好ましくは、流量計14内の回転ホイール32によって、混合される。乾燥灰と化学薬剤との混合物は、次に、コンベヤー34によって、混合生成物貯蔵容器に運ばれる。または、積荷噴出口36によって軌道またはトラックタンカー内に送られる。このように化学薬剤によって処理された飛散灰は、このあと、作業現場で使用することができる。この処理済み飛散灰が、セメントスラリーの高pH環境下で水と混合されると、化学薬剤がアンモニアを酸化して、安定な反応生成物が生じ、この生成物は大気中に飛散せず、したがってアンモニアガスの放出が少なくなる。好ましくは、化学薬剤によるこのアンモニアの酸化は、処理済み飛散灰が作業現場でセメントスラリーに混合されてから行う。
【0022】
図2には、化学薬剤をアンモニア含有飛散灰と混合する湿式処理システム110が模式的に示されている。ここで考えられるのは、飛散灰を処理する設備で、飛散灰の性質および飛散灰の用途に応じて、前記の乾式処理システム10と湿式処理システム110との両方を使い分けるということである。さらに、処理システム10、110の多くの要素は、当業者には明らかなように、類似の機能を有し、両方のシステムの部分として使用できて便利である。しかし、また、場合によっては、乾式処理システム10のみ、または逆に湿式処理システム110のみが必要であることも予想される。したがって、本発明は、そのようにここに述べるシステムの1つだけを使用することをも意図する。湿式処理システム110は、一般に、コンクリート用に販売されるのではなく、ごみ埋立地に廃棄される飛散灰に使用され、あるいは、低価値の埋め立て用途、たとえば鉱山および土地の埋め立てに使用される。これらの“廃棄”および土地用途の場合、アンモニア含有飛散灰の処理の目的は、浸出によるアンモニアの環境への放出を防ぐことであり、かつ/または、高pH灰、またはある程度の凝集性と強度とを与えるために少量のセメントで処理した灰からのアンモニアガス放出に人がさらされるのを防ぐことである。たとえば、この灰は、約15〜20%の水分で処理して、過剰なほこり放出なしで開放トラックおよび土地用途での取り扱いが容易になるようにすることができる。流水移送の場合、灰を貯蔵池または廃棄池まで運ぶのに水が使用され、水分含有率は95%にも達しうる。
【0023】
湿式処理システム110は、移送作業時に飛散灰を処理する前記の乾式処理システム10と同様の考えによるものであるが、化学薬剤は乾燥飛散灰に乾燥状態では加えられず、灰を状態調節または流水移送するのに必要な水の一部に加えられる。灰を状態調節するのに使用される水の一部には、化学薬剤が加えられて、この水は、化学薬剤を搬送し、以下で説明するように、該薬剤が灰湿潤混合物内に分散するのを容易にする。化学薬剤を運ぶのに使用される水は、好ましくは、飛散灰を状態調節または流水移送するのに必要な全水量の一部、たとえば必要全水量の約5〜20%である。しかし、これ以外の割合の水を使用することもできる。このあと、適当な水分含有率とするための残りの必要水量を、飛散灰に加える。たとえば、流水移送の場合、非常に小さな割合の水を使用して、薬剤を流水移送水システム内に送り込むことができる。薬剤スラリーが、流水移送される灰に接触すると、薬剤は流水移送水中の溶解アンモニアを酸化する。
【0024】
図1の乾燥システムに関して前述したように、図2の湿式処理システム110は、サイロ12と流量制御器13とを有し、後者はサイロ12から流量計14への飛散灰の重力放出を制御する。また、同じ化学薬剤供給装置18も、化学薬剤の添加のために使用される。しかし、湿式処理システム110の場合、化学薬剤供給装置18は、乾燥薬剤を湿潤スラリー混合コーン112内に送り込む。化学薬剤は、選択された速度で乾燥薬剤を計量する化学薬剤供給装置18と、混合コーン112内で化学薬剤を水に懸濁または溶解させるエダクター114とを使用して、水に溶解されるか、または水スラリーとされる。次に、溶解薬剤またはスラリーは、スラリーポンプ116によって、湿潤灰状態調節システム120に運ばれる。
【0025】
化学薬剤スラリーは、ミキサー(たとえば、混和機、湿式アンローダー、その他)内、または湿潤灰状態調節システム120の移送ライン122内で、必要に応じて、灰に投入される。適当な水分含有率のために必要な水の残量は、水加圧ポンプ124によって、ミキサー122内に加えられる。次に、処理済み湿潤灰は、流水移送またはコンベヤー126によって移送され、必要に応じて、処分場もしくは使用現場、または適当なトラック、または軌道車に排出される。ここに示す例の場合、化学薬剤溶液またはスラリーは、送られて、灰スラリーと混合され、スラリー搬送ラインおよび受容貯蔵池内でアンモニアが処理される。飛散灰中のアンモニアは、好ましくは、実質的に分解され、灰取り扱いおよび廃棄作業によってアンモニアが環境中に放出されるのを防ぐ。この反応は、pH、化学薬剤添加量、および水分含有率に依存して、約10〜30分で完了しうる。
【0026】
図1と2との両方を参照すると、本発明においては、乾式灰処理システム10および/または湿式灰処理システム110は、飛散灰の流量を監視し、必要レベルの処理を行うのに必要な化学薬剤添加速度を調節する。1つの実施形態においては、流量計14が、サイロ12から取り出される飛散灰の流量に対応する信号を生成する。たとえば、1つの実施形態においては、流量計14が、飛散灰の流量を、トン/分単位で測定し、この流量に対応する信号を生成する。図3においては、流量計14で生成される流量信号132が、プログラムされた論理制御器(PLC)130に送られる。PLC 130は、流量信号132と、作業者が入力する必要な化学薬剤添加量134(たとえば、(化学薬剤ポンド数)/(1トンの灰)単位)とを使用して、化学薬剤添加速度を決定する。次に、PLC 130は、化学薬剤添加速度136に対応する信号を化学薬剤供給装置18に送信し、それによって、該装置18は、適当な量(たとえば、化学薬剤ポンド数/分単位)の化学薬剤を送り出す。好ましくは、システム10は、この過程を連続的に(すなわち、1秒間あたり何回も)実行し、正確に、必要量の化学薬剤を飛散灰に供給する。
【0027】
PLC 130は、システム10の動作全体を制御するためにも使用される。たとえば、PLC 130は、必要な化学薬剤添加量134の作業者入力と流量計14からの灰流量132とに加えて、好ましくは、以下の入力、すなわちa)始動/停止システム信号138、b)湿潤システム110に対する水流量/圧力信号140、およびc)各種のプロセス制御および安全信号142(薬剤在庫量多/少、薬剤温度、移送システム真空度、その他)を受信する。PLC 130の出力は、化学薬剤添加速度136のほかに、a)システムの始動および停止のための弁(すなわち、流量制御弁13、水システムの弁)の開放/閉鎖144、b)各種動作状態および報告信号146、およびc)各種警報148(たとえば、薬剤少在庫、薬剤高温、水流量/圧力の損失、灰供給、薬剤供給の中断、その他)を含むことができる。
【0028】
以下、システム10、110内での飛散灰処理の方法について説明する。飛散灰は、重力排出によって飛散灰貯蔵サイロ12から取り出される。飛散灰の流量は、流量計14によって測定され、流量信号132が生成される。流量信号132により、流量制御器が制御され、サイロ12から実質的に一定の流量が得られるようにされる。また、流量信号132は、必要な化学薬剤添加速度136の決定にも使用され、化学薬剤供給装置18は、この添加速度を使用して、薬剤が適当な速度で飛散灰に添加され、必要な薬剤添加量134が得られるようにする。PLC 130は、流量信号を連続的に監視し、適当な化学薬剤添加速度が維持されるようにする。次に、化学薬剤を飛散灰と混合または混和し、化学薬剤が飛散灰中に実質的に均一に分散するようにする。化学薬剤は、乾式処理システム10の場合のように乾燥状態で添加することができ、あるいは湿式処理システム110の場合のように、水スラリーまたは水に溶解した状態で添加することができる。次に、処理済みの灰は工場または処分場に移送される。
【0029】
前記実施形態の場合、約0.25:1〜3:1、好ましくは1:1〜2:1、もっとも好ましくは1.5〜1のモル添加率Cl:Nが、アンモニアを減少させ、アンモニウム化合物含有セメント混合物からのアンモニアガス放出を防ぐために好ましい。たとえば、1:1のモル比を使用すると、Nアンモニア対モノクロラミンとして100 mg/kgの酸化を行うために必要な、灰1トンあたりのCa(OCl)2は、理論量(kg単位)として、0.51 kgである。次亜塩素酸リチウム(LiOCl)の場合に、1:1モル比を使用すると、Nアンモニア(N ammonia)対モノクロラミンとして100 mg/kgの酸化を行うために必要な、灰1トンあたりのLiOClは、理論量(kg単位)として、0.42 kgである。ここで使用する次亜塩素酸塩含有酸化剤という言葉は、次亜塩素酸成分を含むか、または水添加によりそのような成分を生成する化合物を示すのに使用する。たとえば、三塩素化合物は、水添加により、次亜塩素酸またはシアヌル酸を生成する。高pHの場合、次亜塩素酸はイオン化して次亜塩素酸塩イオンとなる。
【0030】
好ましくは、アンモニア含有飛散灰中のアンモニア濃度は、プロセスの一部として決定される。飛散灰中のアンモニアの濃度は、PLC 130に入力される、必要薬剤添加量134の決定に使用される。1つの実施形態においては、アンモニア濃度は高速選別試験法(rapid screening test procedure)によって決定することができる。高速選別試験法では、飛散灰の代表サンプルを得ることが必要である。所定量の飛散灰を、閉じたビーカー内で既知量の水と混合し、アンモニウム塩を溶解する。飛散灰と水スラリーとのpHは、アンモニウム陽イオン(NH4)をアンモニアガス(NH3)に変えるために、水酸化ナトリウムにより、12.0よりも高い値に上昇させられる。フラスコの閉じたヘッドスペース内のアンモニアガス濃度が、使い捨てのアンモニアガス検知管を用いて測定される。ヘッドスペースガスのサンプルが、手持ち空気サンプル採取ポンプにより、検知管を通るように採取される。ビーカーヘッドスペース内のアンモニアガス濃度は、目盛り付き検知管における色変化、通常黄色から青色への変化により決定される。検知管によって測定されるアンモニアガス濃度は、ビーカー内に入れられた灰中のアンモニア濃度に直接関係する。しかし、アンモニア含有飛散灰中のアンモニア濃度を決定する任意の方法が、本発明の範囲を逸脱することなく使用できる。
【0031】
本発明は、プログラマブル論理制御器を用いて監視、作動させられる内蔵薬剤供給器を有する連続秤量/混合装置を使用することにより、費用のかかる多段ステップ要素の必要をなくすものである。
【0032】
以上、本発明を実施するための最良の形態について説明し、また本発明を使用するやり方と方法との最良の形態について説明した。しかし、本発明は、上で説明したものと完全に同等で、これを変形および代替する構成とすることができる。したがって、上の説明は、本発明を上で開示した特定実施形態に限定するものではない。逆に、本発明には、特許請求の範囲において包括的に表現する本発明の意図と範囲とを逸脱することのない、すべての変形および代替構成が含まれる。特許請求の範囲は、本発明の対象物をはっきりと示し、明確に主張するものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の1つの実施形態による乾式飛散灰処理システムの模式図である。
【図2】本発明の1つの実施形態による湿式飛散灰処理システムの模式図である。
【図3】図1および2の処理システムで使用するプログラマブル論理制御器の模式図である。
【符号の説明】
【0034】
10 乾式灰処理システム
12 飛散灰貯蔵サイロ
13 流量制御器
14 流量計
16 物質搬送機構
18 化学薬剤供給装置
22 化学薬剤取り扱いおよび搬送システム
24 化学薬剤貯蔵容器
25 物質搬送コンベヤー
30 搬送スクリュー
32 回転ホイール
34 コンベヤー
36 積荷噴出口
110 湿式処理システム
112 混合コーン
114 排出器
116 スラリーポンプ
120 湿潤灰状態調節システム
124 水加圧ポンプ
126 コンベヤー
130 論理制御器(PLC)
132 流量信号
134 化学薬剤添加量
136 化学薬剤添加速度
138 始動/停止システム信号
140 水流量/圧力信号
142 プロセス制御および安全信号
144 弁の開放/閉鎖
146 動作状態および報告信号
148 警報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛散灰の移送作業時に化学薬剤を添加することにより飛散灰を処理する方法であって、
飛散灰貯蔵サイロから飛散灰を排出し、
排出される飛散灰の流量を流量計によって計測し、
飛散灰の流量に対応する、流量計からの信号を生成し、
化学薬剤供給装置によって、化学薬剤を、飛散灰に、選択された化学薬剤添加速度で添加し、ここで、化学薬剤添加速度が飛散灰取り出し流量にもとづいて選択され、
飛散灰を処理するために、化学薬剤と飛散灰とを混合し、
処理された飛散灰を工場または処分場に移送する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
飛散灰が、制御される重力排出によってサイロから排出されることを特徴とする請求項1に記載の飛散灰を処理する方法。
【請求項3】
飛散灰の重力排出が流量制御器によって制御されることを特徴とする請求項2に記載の飛散灰を処理する方法。
【請求項4】
飛散灰の流量が慣性流量計によって測定されることを特徴とする請求項3に記載の飛散灰を処理する方法。
【請求項5】
慣性流量計内の回転ホイールが、化学薬剤を飛散灰に混合して分散させるのに使用されることを特徴とする請求項4に記載の飛散灰を処理する方法。
【請求項6】
選択された化学薬剤添加速度で化学薬剤を飛散灰に添加するステップが、プログラマブル論理制御器(PLC)によって制御されることを特徴とする請求項1に記載の飛散灰を処理する方法。
【請求項7】
化学薬剤が、飛散灰中のアンモニアの効果を軽減させるための酸化剤であり、ここで、灰中のアンモニアが分解されて、灰取扱いと処分作業においてアンモニアが環境に放出されるのが防がれることを特徴とする請求項1に記載の飛散灰を処理する方法。
【請求項8】
流量計からの信号が、所定の添加量にもとづいて化学薬剤の添加速度を決定するのに使用され、ここで、前記所定の添加量が飛散灰中のアンモニア濃度を決定することによって選択されることを特徴とする請求項7に記載の飛散灰を処理する方法。
【請求項9】
飛散灰が任意の乾燥または液体化学薬剤の搬送体として使用されて、飛散灰によって最終生成物に特定の性能属性が付与されることを特徴とする請求項1に記載の飛散灰を処理する方法。
【請求項10】
飛散灰が、化学薬剤を含む水スラリーまたは溶解化学薬剤を含む水溶液を使用して、処分または土地に関する利用のために、流水移送によって移送されることを特徴とする請求項1に記載の飛散灰を処理する方法。
【請求項11】
化学薬剤が、化学薬剤供給装置およびエダクターによって、水に溶解されるかまたは水スラリーとされることを特徴とする請求項10に記載の飛散灰を処理する方法。
【請求項12】
化学薬剤溶液またはスラリーが、水で状態調節された飛散灰上に噴霧するために混和機に送られることを特徴とする請求項11に記載の飛散灰を処理する方法。
【請求項13】
化学薬剤溶液またはスラリーが、アンモニアを処理するために、スラリー移送ラインおよび受容貯蔵池に送られて灰スラリーと混合されることを特徴とする請求項12に記載の飛散灰を処理する方法。
【請求項14】
飛散灰の移送作業時に化学薬剤を添加することにより飛散灰を処理するシステムであって、
飛散灰貯蔵サイロ、
該サイロから排出される飛散灰の流量を計測する流量計であって、飛散灰の流量に対応する信号を生成する流量計、
化学薬剤を、飛散灰に、選択された化学薬剤添加速度で添加する化学薬剤供給装置、
飛散灰の流量に対応する前記信号を受信し、該信号にもとづいて化学薬剤添加速度を選択するように構成されたプログラマブル論理制御器、
処理された飛散灰を送るための積荷噴出口、
から成ることを特徴とするシステム。
【請求項15】
飛散灰が、制御される重力排出によってサイロから排出されることを特徴とする請求項14に記載の飛散灰を処理するシステム。
【請求項16】
さらに、飛散灰の重力排出速度を制御する流量制御器を有することを特徴とする請求項15に記載の飛散灰を処理するシステム。
【請求項17】
流量計が、飛散灰中に化学薬剤を混合して分散させるのに使用される回転ホイールを有する慣性流量計であることを特徴とする請求項16に記載の飛散灰を処理するシステム。
【請求項18】
化学薬剤が、飛散灰中のアンモニアの効果を軽減させるための酸化剤であり、灰中のアンモニアが分解されて、灰取扱いと処分作業においてアンモニアが環境に放出されるのが防がれ、流量計からの信号が、所定の添加量にもとづいて化学薬剤の添加速度を決定するのに使用され、前記所定の添加量が飛散灰中のアンモニア濃度を決定することによって選択されることを特徴とする請求項17に記載の飛散灰を処理するシステム。
【請求項19】
さらに、化学薬剤供給装置から化学薬剤を受け取るように構成された湿式混合コーンを有し、ここで、化学薬剤が、化学薬剤供給装置およびエダクターによって、水に溶解されるかまたは水スラリーとされることを特徴とする請求項18に記載の飛散灰を処理するシステム。
【請求項20】
化学薬剤溶液またはスラリーが、水で状態調節された飛散灰上に噴霧するために混和機に送られることを特徴とする請求項19に記載の飛散灰を処理するシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−512239(P2008−512239A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−531295(P2007−531295)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/031820
【国際公開番号】WO2006/029190
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(507075484)ヘッドウォーターズ インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】