説明

飛行中の航空機に使用する気象情報を補正するためのシステムおよび方法

【課題】気象を検出しそして飛行中の航空機に使用する検出された気象情報を記憶するシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】気象情報記録システムおよび方法は、飛行中の航空機104によって検出された情報を記録するために動作可能である。関心の気象108、110の存在に対応するトリガイベントを発生し、トリガイベントの発生に応答して航空電子システム302により収集された気象情報をメモリに記憶し、記憶された気象情報を遠隔メモリにダウンロードする。トリガイベントを発生は、気象の少なくともひとつの次元を決定し、気象の少なくともひとつの次元を対応する次元の閾値と比較して、気象次元閾値を超える気象の少なくともひとつの次元に応答して気象情報を記憶しても良い。気象情報は乱気流閾値を超える検知された乱気流に次元に応答して記憶されても良い。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
航空機気象レーダシステムは、そのアンテナから所定の方向(方位)にパルス信号または一連のパルス信号を放射する。パルス信号が、放射されたパルス信号の方向に沿って横たわる気象に入射したとき、パルス信号の一部分は、気象内の降雨から反射して戻される。レーダアンテナが戻されたレーダ信号を検出する。受信されたレーダ信号を解析することにより、その気象のレーダシステムからの距離または範囲を決定することが可能になる。
【0002】
受信されたレーダ信号の反射率情報の強度を使用して、気象の特性を決定することができる。反射率情報は、未処理のレーダエコーデータの解析の結果として決定される。反射率情報は、正規化されたエコーパワー推定値と、標準偏差、分散、自己相関および高次モーメントなどの戻りレベル統計値と、平均値、標準偏差、分散および他の高次モーメントなどのドップラ周波数統計値とを含むことができる。処理された反射率情報は、航空機位置に対する、または地球座標に関する位置の関数として参照することができ、および/または航空機に対する、または地球に関する高度の関数として参照することができる。比較的弱い強度は、弱い雨などの弱い降雨に関連付けることができる。比較的より強い強度は、激しい雨などのより激しい降雨に関連付けることができる。極めて強い強度は、航空機に対して危険になり得る極めて激しい降雨に関連付けることができる。
【0003】
航空機気象レーダシステムは、受け取られたデータを処理し、乗組員に対して気象に対応するイメージをディスプレイ上に提示する。ディスプレイは、複数の距離ラインなどをディスプレイ上に表示し、気象の航空機からの相対的な位置を示すことによって、気象の範囲を表示する。ディスプレイ上に表示された着色領域が、気象の横方向の広がり(検出された気象の幅および奥行き)を示す。
【0004】
様々な着色スキームを使用し、受信されたレーダエコー信号の強度に基づいて、検出された気象の特性を表示することができる。例えば、緑色着色領域は、(比較的弱い気象レーダの反射率強度によって決定されたとき)比較的弱い降雨領域を表示するために、使用することができる。黄色着色領域は、(比較的より強い気象レーダの反射率強度によって決定されたとき)比較的激しい降雨領域を表示するために、使用することができる。赤色着色領域は、(極めて強い気象レーダの反射率強度によって決定されたとき)極めて激しい、かつ潜在的に危険な降雨領域を表示するために、使用することができる。
【0005】
いくつかのタイプの航空機気象レーダシステム、および/または他の気象検出システムは、乱気流および/または他のタイプの気象の検出が可能であり得る。乱気流領域を表示するために、マゼンタなどの他の色をイメージ上に重ね合わせることができる。それによって、航空機の乗組員は、航空機に対する乱気流の位置を識別し、航空機に対して潜在的に危険なものとなる恐れがある気象を回避するために、必要に応じて計画飛行経路を調節することが可能になる。
【0006】
しかし、上述の航空機気象レーダシステムは、乗組員に解析された情報を提供する上で、特に洗練されているものではない。例えば、上記の例では、レーダ強度は、3つの範囲、すなわち弱い範囲、中程度の範囲および激しい範囲に分類されている(したがって、ディスプレイ上に緑色、黄色および赤色の着色領域が生成される)。第4のマゼンタ色の着色領域は、乱気流を表示する。したがって、航空機の電子システムでは、比較的簡単な気象モデルが適用され、受け取られたデータが解析される。ここで、気象モデルは、5つのカテゴリの1つに気象情報を構文解析するものとして分類することができる(レーダエコー信号の強度がないことは黒色領域として示され、比較的弱い降雨に対応する弱いレーダエコー信号の強度が、緑色領域として示され、比較的激しい降雨に対応する中程度のレーダエコー信号の強度が、黄色領域として示され、潜在的に危険な降雨に対応する極めて強いレーダエコー信号の強度が、赤色領域として示され、乱気流領域が、マゼンタ色領域として示される)。
【0007】
さらに、そのような航空機気象レーダシステムによって使用されるそのような単純化された気象モデルは、必ずしも最も信頼性があり、かつ最も役に立つ情報を乗組員に提供するとは限らない可能性がある。気象の特性は、地理的位置に基づいて変化することが知られている。例えば、ロッキー山脈の上を覆うストームセルは、カンザス州または太平洋の上を覆うストームセルとはかなり異なっている。しかし、従来の航空機気象レーダシステムは、地形に基づいてストームの特性を区別することが可能でない。従来の航空機気象レーダシステムは、受信されたレーダエコー信号の検出された強度に対応して、ディスプレイ上に着色領域を提示するだけである。
【0008】
航空機気象レーダシステムの中には、異なる地形を考慮するために、受信されたレーダエコー信号の強度範囲を調節するように構成されたものもある。例えば、その全体が参照によって本明細書に組み込まれるWoodell他に与えられた米国特許第7,486,319号は、季節のパラメータ、1日の時刻のパラメータまたは位置パラメータに従って航空機気象レーダシステムを適応させる。レーダエコー信号は、それが検出された環境に応じて正規化される。
【0009】
しかし、Woodell他に与えられた米国特許第7,486,319号の気象モデルの性質は、比較的簡単なままである。例えば、乗組員は、ストームセルが、レーダシステムのディスプレイを見ても、発達中であるのか、衰えつつあるのかを直ちに識別することができない。乗組員は、そのような気象の変化を識別するために、いくらかの期間にわたって、かれらのレーダシステム上に表示されたイメージを観察しなければならない。これには、乗組員が周期的にレーダディスプレイを観察することが求められ、それゆえ乗組員の「ヘッドダウン時間」を増加させる。
【0010】
さらに、乗組員は、経験に基づいて、気象中に雷、雹などがあるのではないかと疑う可能性がある。乗組員がレーダイメージを主観的に解釈するので、乗組員にかかる「認知作業量」が増加する。
【0011】
乗組員は、レーダイメージのかれらの解釈に基づいて、潜在的に危険なものとなる恐れがあると考える気象を回避するために、飛行計画の変更を選ぶことができる。飛行計画からの逸脱によって、通常、目的地まで飛行するために、追加の飛行時間および飛行距離が加えられ、したがって燃料費が増加する。しかし、たとえ航空機の乗組員が、レーダイメージからその気象が潜在的に危険なものであると結論を出したとしても、その気象は、実際、通過するのに危険でなく、安全であった可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】Woodell他、米国特許第7,486,319号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
乗組員の「ヘッドアップ」時間を増加させ、乗組員の「認知作業負荷」を軽減させる、向上した航空機気象レーダシステムを提供することは、望ましいはずである。すなわち、乗組員に、乗組員が向かっているところを見る時間をもっと多く与え、および/または乗組員に、他の事柄に集中させることを可能にすることは、望ましいはずである。さらに、実際には危険でない気象を迂回する、不必要な飛行計画の逸脱を回避することは、望ましい。
【0014】
気象を検出しそして飛行中の航空機に使用する検出された気象情報を記憶するシステムおよび方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
例示的な実施形態は、関心の気象の存在に対応するトリガイベントを発生し、前記トリガイベントに応答して航空電子システムにより収集された気象情報を記憶し、そして前記記憶された気象情報を遠隔メモリにダウンロードする。
【0016】
別の態様によれば、例示的な実施形態は、少なくともひとつの気象センサと、前記少なくともひとつの気象センサに通信可能に結合された処理システムと、所定の閾値を超える気象情報に応答して発生されたトリガイベントに応答して決定された気象情報を記憶する搭載メモリを備える。
【0017】
好ましい実施形態および代替の実施形態を、以下の図面を参照して詳細に下記に述べる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】レーダが検出可能な気象の存在する空間領域を通過する、飛行体の計画飛行経路の一部分を示す透視図である。
【図1B】飛行体の計画飛行経路に沿ったプロファイルを示す図である。
【図2】気象モデル開発システム中で実施される動的気象モデルシステムの実施形態のブロック図である。
【図3】航空機の航空電子システム中で実施される動的気象モデルシステムの例示的な実施形態のブロック図である。
【図4】レーダイメージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1Aは、2つのストームセル108および110など、レーダが検出可能な気象の存在する空間領域106を通過する、航空機104などの飛行体の計画飛行経路102の一部分を示す透視図である。図1Bは、航空機104の計画飛行経路に沿ったプロファイルを示す図である。ここで、航空機104は、極めて異なる地形の上を覆う気象を横切って通過するものとする。航空機104は、物品および/または人を商業的に輸送することができる。用語「天候」は、これらに限定されないが、ストームセル、乱気流領域、雷、降雨、雹、雪、ウインドシェア、着氷状態、および航空機104が遭遇することがあり得るような状態など、いずれかのタイプの気象レーダが検出可能な気象現象を一般に言う。
【0020】
各ストームセル108および110に関連付けられるものは、この例示的な例では、それぞれ乱気流領域112および114である。示された乱気流領域112は、ストームセル108の前側に沿って存在し、飛行経路102に沿って全体的に横たわっている。同様に、示された乱気流領域114は、ストームセル110の前側に沿って存在し、やはり、飛行経路102に沿って全体的に横たわっている。乱気流領域112および114は、ストームセル108および110から描写するために斜交平行線を付して概念的に表されている。
【0021】
図1Bのプロファイルの図に、計画飛行経路102に沿って横たわる空間領域106の下の仮想の地上プロファイルを示す。地上プロファイルの図に、計画飛行経路102が、全体的に高度が低いことによって特徴付けられた平坦な地上面116を現在横切っていることを概念的に示す。次いで、このプロファイルの図に、計画飛行経路102が、高度が比較的高いことによって特徴付けられた山脈の範囲118を横切ることになることを概念的に示す。
【0022】
航空機104から離れた様々な範囲の距離120、122および124が、また、図1Aの透視図および図1Bのプロファイル図の両方に示されている。これらの距離120、122および124は、航空機104からのストームセル108および110と、乱気流領域112および114の範囲(相対的距離)を示す。
【0023】
乗組員は、ストームセル108および110を見たとき、ストームセル108と110の間の相違を識別するのに困難であるはずである。というのは、ストームセル108および110は、まさに同じように見えるからである。例えば、ストームセル108および110の高度、高さおよび幅は、まさに同じように見える。従来のレーダシステムは、かなり同じように見える、ストームセル108および110のイメージを恐らく生成するはずである。
【0024】
たとえ従来のレーダシステムが、季節パラメータ、1日の時刻パラメータまたは位置パラメータに従って航空機気象レーダシステムを適応させる、上述のWoodell他に与えられた米国特許第7,486,319号における場合などのように、異なる地形を考慮するために、受信されたレーダエコー信号を調節するように構成されたとしても、表示されるレーダイメージの性質は、やはり、比較的同じようになる。ストームセル108および110は、恐らく同じ領域を有することになる。ストームセル108および110のレーダイメージの両方は、緑色着色(比較的弱い降雨を示す)、黄色着色(比較的激しい降雨を示す)、および赤色着色(極めて激しい、かつ潜在的に危険な降雨を示す)の領域を有することになる。乱気流が検出可能な場合、マゼンタ色領域を表示することができる。つまり、ストームセル108および110について表示されるレーダイメージは、ストームセル110が潜在的に危険なものである可能性が高いことを乗組員に知らせることができない恐れがある。さらに、乗組員は、ストームセル108および110が発達中であるのか否か、衰えつつあるのか否か、どれくらい速く移動しているのか、また関心がある他の情報を知り得ないことになる。
【0025】
乱気流は、可視的な気象現象でなく、したがって航空機104の乗組員が見ることはできない。したがって、航空機104の乗組員は、乱気流領域112および114の存在を視覚的に識別することができない。それゆえ、乱気流の存在は、航空機104が乱気流領域112および114中に入った後まで、知り得ないことになる。乗組員は、乱気流の厳しさに応じて、乱気流を通過し、または乱気流から逃れるために、反射的に対策を取ることを強いられる恐れがある。
【0026】
たとえ乱気流が航空機の電子気象検出システムによって検出可能であっても、乱気流の厳しさおよび/または広がりは、高い精度で容易に決定できるものではない恐れがある。したがって、航空機の電子気象検出システムは、乗組員に、乱気流領域112および114の厳しさおよび/またはその広がりを報告することができない恐れがある(航空機104が乱気流領域112および114に入った後まで)。
【0027】
いくつかの状況では、乗組員は、かれらの経験によって、目に見えるストームセル108および110が、潜在的に危険な乱気流領域を含んでいるのかどうか、または、それに近いものなのかどうかを感覚的に判断することになる。気象の性質に影響を及ぼす1つの要因は、気象の下の地上の特性である。上記の例では、ストームセル108および110は、一部分はかなり異なるレベルの乱気流と関連付けられる可能性が高い。というのは、ストームセル108および110がその上を覆う地勢に相違があるからである。
【0028】
例えば、ストームセル108が比較的平坦な、高度が低い地表面116の上にあるとする。したがって、乗組員は、かれらの経験によって、たとえ表示されたレーダイメージが、極めて激しい降雨と関連付けられた赤色領域を表示したとしても、ストームセル108が、横切って通過しても恐らく安全である、非対流的なセルであると結局確信することになる可能性がある。それと対照的に、ストームセル110は、山脈と互いに影響し合っているので、ストームセル110は、大変異なる可能性が高い。乗組員は、かれらの経験によって、ストームセル110近くの乱気流がより厳しい恐れがあると結局確信することになる可能性がある。しかし、航空機の乗組員は、航空機の気象検出システムから提供されたレーダエコー情報に基づいて、ストームセル108および110の性質を正しく解釈しなかった恐れがある。
【0029】
図2は、気象モデル開発システム202中で実施される動的気象モデルシステム200の例示的な実施形態のブロック図である。動的気象モデルシステム200の実施形態は、航空機104が遭遇する、異なるタイプの気象を表す、複数の気象モデル204を生成する。さらに、気象モデル204は、蓄積されたフィールドデータおよび観測結果に基づいて、解析され検証され、したがって気象モデル204は、航空機104が通常遭遇する気象をより正確に表すように発展する。動的気象モデルシステム200の実施形態は、例えば、民間航空機に搭載することができる。
【0030】
多くのタイプの気象モデル204が、動的気象モデルシステム200の実施形態では用いられる。気象モデル204は、航空機104(図1)が飛行中である間に遭遇することがあり得る、様々なタイプの気象に対応する。気象モデルは、ストームの物理的寸法のモデルなど、比較的簡単なものとすることができる(ストームの高さ、ストームの幅、および/またはストームの高度など)。他の気象モデルは、比較的複雑なものとすることができ、気象の多くの特性をモデル化することができる(乱気流、降雨、発達速度、速度、および/または移動方向など)。
【0031】
例示的な気象モデル204は、例えば、ロッキー山脈の上を覆う冬季のストームに対応することができる。気象モデル204の他の限定的でない例は、メキシコ湾からフロリダに接近する夏季のストームに対応することができる。様々な気象モデル204が多くの異なるタイプの気象(雷のストーム、雨雲、ハリケーン、竜巻、非対流的な気象、対流的な気象など)に対応することができることを理解されたい。さらに、気象モデル204は、追加として、または代替えとして、地形に対応することができる。すなわち、特定の気象モデルは、飛行中の航空機104がモデル化された気象に遭遇することがあり得る地理的位置に対応することができる。上述のように、いくつかの気象モデル204は、飛行中の航空機104がモデル化された気象に遭遇することがあり得る季節および/または1日の時刻に対応することができる。
【0032】
動的気象モデルシステム200の実施形態を備えた航空機104は、航空機104がその定期的な運航計画の間に通過する気象に関するフィールドデータおよび観測結果を定期的に収集する。動的気象モデルシステム200を備えた多くの航空機104によって、大量の気象情報が時間とともに収集され保存される。次いで、フィールドデータおよび観測結果は、中央リポジトリに送られ、気象モデル開発システム202によって解析される。
【0033】
気象モデル204は、実際の気象について収集されたフィールドデータおよび観測結果に基づいており、航空機104が飛行中の間に遭遇することがあり得る気象の特性を予測するために使用される。例えば、航空機104が特定のタイプのストーム(具体的なタイプの地形の上を覆い、年の特定の季節の間に、および/または1日の特定の時刻に)に接近しつつある場合、動的気象モデルシステム200は、接近した乱気流(乗組員はこれを見ることができない)など、なんらかの予測可能な危険な状態があり得るのかどうかを決定するために、解析を実施する。つまり、例えば、航空機104によって現在収集された気象情報は、気象モデル204に入力され、その解析によって潜在的に危険な乱気流の存在が予測される。
【0034】
例示的な気象モデル開発システム202は、データインターフェース206と、任意選択のディスプレイ208と、処理システム210と、ユーザインターフェース212と、メモリ216とを含む。気象モデル開発システム202は、ここに示されていない、または述べられていない他の構成要素および/またはシステムを含むことができることを理解されたい。
【0035】
上述の構成要素は、例示的な実施形態では、通信バス218を介して互いに通信可能に結合される。代替の実施形態では、上述の構成要素は、異なる方法で互いに通信可能に結合することができる。例えば、1つまたは複数の上述の構成要素は、処理システム210に直接結合することができ、または処理システム210に、介在する構成要素(図示せず)を介して結合することができる。いくつかの実施形態では、上述の構成要素は、他の機能を有することができる別個の装置中で別々に実現することができる。
【0036】
動的気象モデルシステム200の例示的な実施形態は、協同して働く複数のモジュールを含む。モジュールは、気象モデル生成モジュール220、気象モデル性能解析モジュール222、レーダ情報処理モジュール224、および任意選択の気象モデル解析レポートモジュール226として識別される。モジュール220、222、224および226は、メモリ216に常駐し、処理システム210によって取り出され、実行される。他の実施形態では、モジュール220、222、224および226は、共通のモジュールとして一緒に実装することができ、他のモジュール中に統合することができ、あるいは他のメモリ(図示せず)に常駐することができる。
【0037】
気象モデルデータベース228が、メモリ216に記憶される。例示的な実施形態では、気象モデルデータベース228は、様々なタイプの気象に対応する複数の気象モデル204を含む。気象モデルデータベース228(またはその一部分)は、他のデータベースと一緒に実装することができ、バッファなどの様々なフォーマットで実装することができ、および/または他のメモリに実装することができる。
【0038】
気象モデル204は、気象特性データベース230(複数のパラメータ232および複数の可変パラメータ範囲234がその中に常駐する)と、アルゴリズム236を使用して、定義される。パラメータ232は、モデル化された気象を特性付ける量または値に対応する。可変パラメータ範囲234は、モデル化された気象を特性付ける値の可変範囲に対応する。したがって、可変パラメータ範囲234は、上側可変範囲値および下側可変範囲値によって定義される。アルゴリズム236は、指定されたパラメータ232および可変パラメータ範囲234に基づいて、気象を数理的にモデル化し、および/または解析する。
【0039】
いくつかのアルゴリズム236によって、気象の物理的特性がモデル化される。例えば、ストームセルの高さは、そのストームセルに接近した、またはその中にある乱気流の強度および/またはタイプをモデル化するために使用される対応する可変パラメータ範囲234に影響を与える可能性がある。他の例として、気象は、その垂直方向に集積された液体(VIL)の含水測定量によって特性付けることができる。ストームセル108および110の特定領域についてのVIL含水測定量は、レーダエコー信号の解析から決定される。VIL含水測定量は、高さ、幅および/または奥行きに応じて変化することができる。
【0040】
他のアルゴリズムモデルは、可変パラメータ範囲234が時間の関数として時間的に変化する。例えば、ストームセルがある特定の速度で発達するものとしてモデル化された場合、1つまたは複数の可変パラメータ範囲234は、時間の関数として変化することになる。ストームセルが1日の特定の時刻においてモデル化された場合、いくつかのアルゴリズム236は、気象モデル解析の時間の長さに応じて、可変パラメータ範囲234を変化させることができる。
【0041】
他の例示的なパラメータ232は、地理的位置に基づいて気象の属性が相互に関連付けられる、地理的位置である。上述のように、気象の性質は、気象がその上を覆って横たわる地形の関数とすることができる。例えば、たとえ大洋の上を覆うストームセルと、山脈または平坦な陸地の上を覆うストームセルが観察者に同じように見えても、および/またはそれらが同じようなレーダエコー信号を生成しようとも、大洋の上を覆うストームセルは、山脈または平坦な陸地の上を覆うストームセルとかなり異なる。地理的位置のパラメータ232は、緯度と経度を使用して定義される。したがって、このパラメータ232は、気象モデル204の特定のモデルを選択するために使用することができる。
【0042】
他の例示的なパラメータ232は、解析された1日の時刻に基づいて気象の属性が相互に関連付けられる、1日の時刻である。例えば、午前中では、ロッキー山脈の上を覆う気象は、太陽が空気温度を上昇させるとき地上の水分が蒸発するので、午前中に発達する傾向がある。午後遅くでは、ロッキー山脈の上を覆う気象は、その山脈の上にある空気が冷えるので、衰えがちになる。したがって、この1日の時刻のパラメータ232は、気象モデル204の特定のモデルを選択するために使用することができる。
【0043】
他の例示的なパラメータ232は、年の季節である。メキシコ湾からフロリダに接近する夏季のストームセルは、冬の間のストームセルとかなり異なる。したがって、この季節のパラメータ232は、また、気象モデル204の特定のモデルを選択するために、使用することができる。
【0044】
例示的な可変パラメータ範囲234は、レーダエコー信号から決定されるVIL含水測定量である。VIL含水測定量のための閾値は、パラメータ232として記憶され、気象を特性付けるために使用される。VIL含水測定量の可変パラメータ範囲234のための値が、VIL含水測定量をモデル化するアルゴリズム236に入力されたとき、モデル化されたVIL含水測定量の値と、VIL含水測定量の閾値の比較は、どのタイプの気象モデル204が気象特性を予測するのに、最も適しているのかを定めるために、使用することができる。
【0045】
他の例示的な可変パラメータ範囲234は、航空機104によって検知された大気温度である。他の例示的な可変パラメータ範囲234は、航空機104によって検知された湿度である。大気温度および/または湿度のための閾値は、パラメータ232として記憶され、気象を特性付けるために使用される。例えば、ストームセルは、大変熱い湿った夏の日には、比較的より冷たい、かつより乾燥した夏の日のストームセルと比較して、かなり異なって振る舞う。したがって、大気温度および/または湿度の可変パラメータ範囲234の値が提供された後で、選択された気象モデル204の大気温度および/または湿度に関連したアルゴリズム236は、気象特性を予測するために使用することができる。
【0046】
他の可変パラメータ範囲234は、気象モデル204の特性および/または属性を解析するために使用することができる。他の変数は、これらに限定されないが、気象の高さ、幅、および/または奥行きを含む。レーダエコー信号の強度は、また、1つまたは複数の可変パラメータ範囲234のための値をもたらすことができる。気象に関する移動方向、加速度、速度および他の時間に関連した特性は、レーダエコー情報から決定することができる。航空機104の特性は、また、1つまたは複数の可変パラメータ範囲234のための値をもたらすことができる。例えば、航空機104の検知された不意の垂直加速度の大きさは、乱気流値として使用することができる。
【0047】
アルゴリズム236の限定しない例は、気象発達速度モデル、気象減衰速度モデル、降雨強度モデル、乱気流モデル(強度および/または方向)、気象移動モデル(速度および/または方向)などを含む。任意の考え出されたアルゴリズム236を、気象モデル204によってモデル化された特定のタイプの気象の特性をモデル化するために、使用することができることを理解されたい。
【0048】
気象モデル204は、観測された気象および収集されたフィールドデータに基づく。観測された気象を特性付ける気象情報は、気象情報データベース238に保存される。観測された気象の情報(すなわち、レーダエコーデータおよび慣性測定計装データ)は、特定のタイプの気象を通過し、またはその近傍を通る航空機104の電子気象検出システムによって蓄積することができる。気象観測結果は、また、航空機の乗組員によって入力することができる。地上レーダ基地または気象観測所などのリモートソースによって収集された気象情報は、また、気象情報データベース238に収集し記憶することができる。
【0049】
例えば、1月にロッキー山脈の上を飛行する航空機104は、観測された冬季のストームを特性付ける情報を収集することができる。航空機104によって収集された気象情報は、気象情報データベース238に保存される。例えば、航空機104によって収集されたレーダエコー信号の強度情報は、気象情報データベース238に保存される。さらに、観測された冬季ストームに関する位置、1日の時刻および季節のパラメータは、気象情報データベース238に保存される。ストームの高さ、幅、奥行きおよび移動速度(これは恐らく時間とともに変化していた)の観測結果は、また、気象情報データベース238に保存することができる。
【0050】
他の例として、メキシコ湾からフロリダに接近する、観測された夏季のストームを特性付ける情報は、気象情報データベース238に保存することができる。ある期間の間、観測された気象を特徴付ける情報は、多くの異なるタイプの観測された気象に関して保存することができる。
【0051】
観測された気象の情報は、また、これらには限定されないが、乱気流の強度情報、気象の観測された発達速度および/または減衰速度、温度情報、観測された降雨レベル(雨、雪および/または雹)、観測された雷発生頻度率、気象の観測された移動の方向および/または速度、および気象の観測された物理的な幾何学的位置関係(高さ、幅、奥行きなど)を含む。さらに、上述の情報は、気象中の「どこに」観測された特性が位置するかを識別する情報を含むことができる。例えば、ストームセルの最上部の温度は、ストームセルの下部の温度と異なることがあり得る。
【0052】
さらに、任意の特定のタイプの気象に関し、多くの同じような気象のタイプに関する気象情報を気象情報データベース238に記憶することができる。例えば、メキシコ湾からフロリダに接近する数十、または数百さえもの観測された夏季のストームに関する気象情報を気象情報データベース238に保存することができる。
【0053】
気象情報は、データインターフェース206を介して気象モデル開発システム202に送られる。データインターフェース206は、物理的データ媒体240、ローカルエリアネットワーク(LAN)242、インターネット244または公衆交換電話システム(PSTN)246を含む、様々な媒体から入力されるデータを受け取るように動作可能である。データインターフェース206は、また、無線信号を受信するためのトランシーバ(図示せず)を含むことができる。
【0054】
上述のように、いずれかの特定の気象モデル204のための気象アルゴリズム236は、気象モデル204中で使用される、様々なタイプの可変パラメータ範囲234の間の関係を数理的に特性付ける。気象を解析するために、解析された、または観測された、一式の気象情報の値が、選択された気象モデル204のために、パラメータ232および可変パラメータ範囲234にロードされる。次いで、気象アルゴリズム236が、気象パラメータ232および可変パラメータ範囲234の入力値を使用して、選択された気象モデル204のために実行される。その解析結果に基づいて、選択された気象モデル204によって表された、気象の解析されるタイプの様々な特性および/または属性を評価することができる。
【0055】
気象の解析は、様々な方法で使用することができる。例えば、気象の解析は、特定の気象モデル204の有効性を評価するために、気象モデル性能解析モジュール222によって使用することができる。つまり、航空機104によってもたらされた観測された情報に基づいて、気象モデル204の選択されたモデルは、観測された気象の情報を解析するために、使用することができる。その解析と観測された気象の情報の間で良好に一致することは、選択された気象モデル204が有効であることを示すはずである。解析された気象モデル204と観測された気象の情報の間での不一致は、気象モデル204が、解析のために誤って選択されたことを示す、または選択された気象モデル204に修正が必要である恐れがあることを示している可能性がある。
【0056】
選択された気象モデル204に修正が必要な場合、気象アルゴリズム236の改善点を決定するために、気象モデル生成モジュール220を実行することができる。航空機104が通過した、またはその近くを通った、観測された気象を正確に解析するために適用可能な気象モデル204が存在しない場合、気象モデル生成モジュール220を、新しい気象モデル204を生成するために、実行することができる。あるいは、気象モデル204は、プログラマによって手動で変更し、または追加することができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、気象モデル生成モジュール220は、ニューラルネットワークとして、および/または人工知能として実現される。したがって、ニューラルネットワークをベースとし、または人工知能をベースとする気象モデル生成モジュール220中に内在する知能および学習機能に基づいて、気象アルゴリズム236は、自動的に修正することができ、および/または、新しい気象モデルを自動的に生成することができる。例えば、メキシコ湾からフロリダに接近する、いくつかの観測された夏季ストームを解析した後、同じようなストームに関するVIL含水測定量の傾向を、ニューラルネットワークとして、および/または人工知能として実現された気象モデル生成モジュール220によって、観測することができる。したがって、様々なVIL含水測定量の閾値を定めるパラメータ232は、気象モデル204が観測された夏季ストームの特性により良好に対応するように、修正することができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の気象災害は、気象の解析の結果からに基づいて、予測することができる。したがって、そのとき、予測された気象災害を示すために、適切な警告または勧告を創案することができる。例えば、ロッキー山脈の上を覆う冬季ストームをモデル化する気象モデル204は、冬季ストームの前縁が、極めて厳しい、かつ潜在的に危険でさえある乱気流領域と予想できることを示すことができる。したがって、動的気象モデルシステム200の実施形態では、乱気流の発生が予測されたことに基づいて、乱気流の発生が予想されることを明らかにする適切な警告または勧告が生成される。
【0059】
気象モデル解析レポートモジュール226が、様々なタイプの出力レポートを作成する。そのような出力レポートは、ディスプレイ208上でユーザに提示することができる。追加として、または代替えとして、出力レポートは、プリントするためにプリンタに送り、またはメモリ216(または他の適切なメモリ媒体)に保存することができる。追加として、または代替えとして、出力レポートは、記憶するために物理的データ媒体240に送り、および/またはLAN242、インターネット244またはPSTN246を介して、他のメモリ、プリンタおよび/またはディスプレイに送ることができる。
【0060】
図3は、航空機104(図1)の航空電子システム302中に実現される動的気象モデルシステム200の例示的な実施形態のブロック図である。動的気象モデルシステム200が航空機104中に実装されたとき、複数の気象モデル204は、受け取られたレーダエコー情報、ならびに、これらには限定されないが、航空機104の知られた位置、季節情報、および/または1日の時刻情報など、他の情報に基づいて、解析することができる。次いで、その気象の解析は、検出された気象のタイプを決定するために、および/またはその気象の特性を予測するために、使用することができる。
【0061】
航空機104が飛行中の間、動的気象モデルシステム200の搭載実施形態は、航空電子システム302によって収集されたリアルタイムの情報に基づいて、対流的なストームセルと非対流的なストームセルを区別することが可能である。他の例として、動的気象モデルシステム200の実施形態は、検出された気象が発達中または衰えつつあるのか否かを予測することが可能である。さらに、動的気象モデルシステム200の実施形態は、検出された気象の移動の速度および/または方向を予測することが可能である。また、動的気象モデルシステム200の実施形態は、検出された気象の中に、および/またはその近くに存在し得る雹、雷または厳しい乱気流などの危険な状態の存在を予測することが可能である。いくつかの実施形態では、潜在的に危険な状態が予測されたとき、乗組員への適切な警告および/または勧告が生成される。したがって、航空機104が飛行中の間、動的気象モデルシステム200の搭載実施形態では、接近した気象をより良好に特性付ける情報が乗組員に提供され、したがって乗組員の「ヘッドダウン」時間を減少させ、乗組員の「認知作業負荷」を軽減させることを理解されたい。それゆえ、航空機104の乗組員は、かれらが向かっているところを見るために、および/または他の事柄に集中するために、より多く時間をかけられる。さらに、乗組員は、動的気象モデルシステム200によってもたらされる高度化された情報によって、実際には危険でない気象を迂回する、不必要な飛行計画の逸脱を避けることが可能になる。
【0062】
航空電子システム302は、全地球測位システム(GPS)304、データインターフェース306、慣性計測ユニット(IMU)308、気象レーダシステム310、処理システム312、ディスプレイシステム314、メモリ316および乗組員インターフェース318を含む。気象レーダシステム310は、レーダ信号を放射し、レーダエコー信号を受信するように動作可能であるアンテナ320を含む。ディスプレイシステム314は、ディスプレイ322を含む。航空電子システム302は、ここでは示されていない、または述べられていない、多くの他の構成要素および/またはシステムを含むことを理解されたい。
【0063】
上述の構成要素は、例示的な実施形態では、通信バス324を介して、互いに通信可能に結合される。航空電子システム302の代替の実施形態では、上述の構成要素は、異なる方法で、互いに通信可能に結合することができる。例えば、1つまたは複数の上述の構成要素は、処理システム312に直接結合することができ、または介在する構成要素(図示せず)を介して処理システム312に結合することができる。
【0064】
気象レーダシステム310は、これらに限定されないが、航空機104に近接して位置する気象を検出するように動作可能な気象レーダシステムなど、任意の適切なレーダシステムとすることができる。アンテナ320は、レーダパルスを放射し、近くの気象からレーダアンテナ320に反射して戻った、対応するレーダエコー信号を受信するように動作可能である。アンテナ320は、往復運動で、上下方向で、および/または関心がある他の方向でスイープされ、したがって気象レーダシステム310が、気象の位置(方位、高度、および距離)を決定することが可能である。動的気象モデルシステム200の実施形態は、航海用レーダなどのレーダの他のタイプ、および/またはその応用で実現することができる。
【0065】
動的気象モデルシステム200の例示的な実施形態は、協同して働く複数のモジュールを含む。モジュールは、レーダ情報処理モジュール326、飛行計画処理モジュール328、気象モデル解析モジュール330、および気象情報ディスプレイモジュール332として識別される。モジュール326、328、330および332は、メモリ316に常駐し、処理システム312によって取り出されて実行される。他の実施形態では、モジュール326、328、330および332は、共通モジュールとして一緒に実装することができ、他のモジュール中に統合することができ、または他のメモリ(図示せず)に常駐することができる。
【0066】
例示的な実施形態では、気象モデルデータベース334が、メモリ316に記憶される。例示的な実施形態では、気象モデルデータベース334は、様々なタイプの気象に対応する、複数の気象モデル336を含む。気象モデルデータベース334(またはその一部分)は、他のデータベースと一緒に実装することができ、バッファなど、様々なフォーマットで実装することができ、および/または他のメモリ中に実装することができる。
【0067】
航空機の気象モデルデータベース334(気象特性データベース338、関連した気象パラメータ340、関連した気象可変パラメータ範囲342、および関連した気象アルゴリズム344を含む、その複数の気象モデル336を有する)は、既に生成された気象モデルデータベース228(気象モデルデータベース230、関連した気象パラメータ232、気象可変パラメータ範囲234、および気象アルゴリズム236を有する、その複数の気象モデル204を有する)に対応する。つまり、現在の気象モデルデータベース228は、メモリ316に転送され、保存される。
【0068】
気象モデルデータベース334(その複数の気象モデル336、関連した気象パラメータ340、気象可変パラメータ範囲342、および気象アルゴリズム344を有する)は、気象モデル開発システム202によって行うことができる変更および/または追加によって、定期的に更新することができる。更新情報は、データインターフェース306を使用して、または他の適切なデータ転送手段を使用してメモリ316にダウンロードまたは転送される。
【0069】
レーダ情報処理モジュール326は、航空機104が飛行中の間に気象レーダシステム310のアンテナ320によって検出されたレーダエコー信号を処理する。例示的な実施形態では、レーダ情報処理モジュール326は、レーダ強度情報を決定する。特定の方位、高度および範囲におけるレーダエコー信号の強度は、観測気象情報データベース346中に、対応するレンジビンにおける強度値として記憶される。いくつかの実施形態では、レーダエコー信号の強度情報は、三次元(3−D)の気象情報データベース346の複数のレンジビン中に記憶され、またそのボクセルとして参照される。
【0070】
タイムスタンプおよび関心のある他の情報は、また、記憶された気象情報と一緒に含めることができる。検出された気象の時間経過による変化に対応する情報の解析およびモデル化を可能にするために、四次元(4−D)時空間モデルを生成するように、タイムスタンプによってデータを保存することが可能になる。
【0071】
航空機104が飛行中のとき、気象情報ディスプレイモジュール332は、検出された気象情報に対応する表示可能なイメージを構築する。表示可能なイメージは、ディスプレイシステム314に伝達され、ディスプレイ322上に提示される。
【0072】
飛行中、航空機104は、任意の近くの気象を検出する。その気象の検出に応答して、動的気象モデルシステム200は、気象を解析する。気象の解析プロセスは、まず始めに、解析のために気象モデル336の1つ(または複数)を選択する。特定の気象モデル336の選択は、航空機104の位置、季節情報、および/または1日の時刻情報など、様々な要因(決定可能なパラメータおよび変数の値)に基づく。例えば、航空機104の現在位置(および任意選択で現在の日付および時刻)がGPS304によって提供される。代替の実施形態では、他の装置(図示せず)が位置情報、1日の時刻情報、および/または現在の日付を提供する。検出された気象の幅および/または高さなど、検出された気象の全体的な特性は、また、解析のために気象モデル336を選択するために、使用することができる。
【0073】
気象モデル336が解析のために選択された後で、受け取られたレーダエコー情報が選択された気象モデル336に入力される。また、他の利用できる情報を使用することができる。IMU308は、航空機104が現在遭遇している乱気流を確かめるために使用することができる加速度情報を提供する。他のセンサ(図示せず)は、大気温度情報を提供することができる。したがって、航空電子システム302は、リアルタイムのデータを収集し、パラメータ340および可変パラメータ範囲342のための値を決定する。
【0074】
次いで、モデル化された気象の決定された特性が、観測された気象の情報と比較されて、モデル化された気象336が、合理的な正確さおよび/または信頼性のレベルで、観測された気象を表しているのかどうかが決定される。複数の気象モデル336が解析された場合、最もよく一致した気象モデル336が選択される。
【0075】
解析された気象モデル336と観測された気象の間で良好な一致が得られた後で、気象モデル336は、観測された気象と関連付けられる可能性が高い特性を予測するために、さらに処理される。例えば、図1の例の気象状況に戻ると、ストームセル108および110は、それぞれ乱気流領域112および114と関連付けられる。最もよく一致した気象モデル336は、乱気流領域112および114の存在を予測することが可能である。
【0076】
様々な理由のため、気象レーダシステム310は、検出された気象の近くにある乱気流の検出が可能でない恐れがある。しかし、乱気流を予測したモデル解析に鑑み、動的気象モデルシステム200の実施形態では、乱気流の存在が予測されることを示す警告および/または勧告が生成される。例えば、気象情報ディスプレイモジュール332によって生成されたイメージ上にマゼンタ色を使用して、予測された乱気流を示すことができる。追加として、または代替えとして、予測された乱気流を示す英数字のメッセージを、ディスプレイ322上に表示するために、気象情報ディスプレイモジュール332によって生成することができる。
【0077】
検出された気象の他の特性は、動的気象モデルシステム200の実施形態では、予測することができる。予測された気象の特性が潜在的に危険なものである場合(雹、雷または極めて激しい降雨など)、適切な警告および/または勧告を生成することができる。したがって、乗組員は、予測された気象の特性に気付かされる。
【0078】
動的気象モデルシステム200の実施形態はまた、関心がある他の気象の特性を予測することができる。航空機104が気象に接近しているとき、航空電子システム302が、ある認識できる時間の間に気象を検出することを理解されたい。ある期間にわたって収集された実際の気象データ、および選択され解析された気象モデル336に基づいて、検出された気象の移動の速度および移動方向を予測することができる。検出された気象の性質の他の変化を予測することができる。例えば、検出された気象が発達中であるのか否か、または検出された気象が衰えつつあるのか否か、またどれぐらいの速度で、発達または減衰が生じていると予想されるのかについて、予測することができる。
【0079】
飛行計画処理モジュール328は、飛行計画情報を処理する。航空機104の現在の飛行計画は、検出された気象の予測された特性に適合させることができる。いくつかの実施形態では、飛行計画は、検出された気象の予測された特性に基づいて、飛行中動的に調節することができる。例えば、検出された気象の解析によって、気象の中に危険な乱気流が含まれている可能性があると予測することができる。したがって、飛行計画処理モジュール328は、その気象を回避するために、現在の飛行計画を変更するように勧めることができる。
【0080】
図4に、航空機104のディスプレイ322上に表示される仮想のレーダイメージ402を示す。レーダイメージ402は、2つのストームセルのアイコン108および110と、2つの乱気流領域のアイコン112および114とを有する、上述の空間領域106(図1)を通る計画飛行経路102の図を提示する。ストームセルアイコン108および110と、乱気流領域アイコン112および114によって、レーダイメージ402上に航空機104の相対的位置が表示される。アイコンは、一定の形状および/または大きさのものとすることができる。さらに、アイコンは、気象に関連した現象の実際の大きさに対応する任意に形作られた領域を、区別を示すパターン、色、および/または境界線を用いて、表すことができる。
【0081】
便宜上、ストームセルアイコンの参照番号108および110は、図1に示されたストームセルを識別するために使用された参照番号108および110と同じとする。同様に、乱気流領域アイコンの参照番号112および114は、図1に示された乱気流領域を識別するために使用された参照番号112および114と同じとする。
【0082】
ストームセルアイコン108および110は、それらそれぞれの検出されたストームセル108および110の横方向の広がりを示す。上述のように、航空機の航空電子システム302は、乱気流領域112および114の検出が可能でない恐れがある。しかし、動的気象モデルシステム200は、乱気流領域112および114の存在を予測することができる。したがって、気象モデル解析モジュール330は、気象情報ディスプレイモジュール332と協同して乱気流領域アイコン112および114を生成し、それを表示されたレーダイメージ402上に表示することができる。
【0083】
さらに、気象モデル解析モジュール330は、検出されたストームセル108および110に対応する気象モデル336の解析に基づいて、乱気流領域112および114の厳しさレベルを予測することが可能である場合がある。次いで、乱気流の厳しさレベルは、表示されたレーダイメージ402上になど、適切な方法で乗組員に示される。ここで、乱気流領域アイコン112は、比較的弱く陰影が付けられたアイコンとして表示され、乱気流領域112が特に厳しくなく、したがって、危険でないと予測されることを示す。これとは対照的に、乱気流領域114は、航空機104に対して潜在的な危険をもたらす可能性がある比較的高い強度を有すると予測される。したがって、表示されたレーダイメージ402は、乱気流領域114が危険であると予測されることを示すような方法で、乱気流領域アイコン114を表示することができる。
【0084】
乱気流領域アイコン112および114は、所定の色、塗りつぶし、陰影付け、および/または強度を含む、任意の適切なスキームを使用して、表示することができる。任意選択の英数字のテキストメッセージ(図示せず)をレーダイメージ402上に提示することができる。
【0085】
さらに、ストームセル110(これは、高度が比較的高い山118の上に横たわっている)を解析するのに適切な気象モデル336は、航空機104に対して潜在的な危険をもたらす可能性がある降雨、雷、および/または雹の厳しい領域を予測するために、使用することができる。したがって、気象モデル解析モジュール330および気象情報ディスプレイモジュール332は、協同して気象アイコン404を生成し、表示されたレーダイメージ402上にそれを表示する。気象アイコン404は、航空機104に対して潜在的に危険なものとなる恐れのある気象の予測された領域を示す。
【0086】
上述のように、気象モデル開発システム202(図2)中の気象モデル204は、フィールドで収集された気象情報に基づいて、生成または更新される。すなわち、航空機104(図1)が様々なタイプの気象を横切って通過し、またはその気象の接近するとき、気象情報が、収集され、観測気象情報データベース346(図3)に保存され、または他の適切なメモリ媒体に保存される。
【0087】
例えば、航空機の気象レーダシステム310が関心のある気象の範囲内に入り始めたとき、気象情報を収集するプロセスが、その気象イベントに対して開始される。つまり、トリガイベントは、関心がある、あるタイプの気象の存在に対応してプロセスを開始し、それによって気象情報が、航空電子システム302によって収集され、気象情報データベース346に保存され、後で、気象モデル開発システム202によって解析される。
【0088】
例示的な実施形態では、トリガイベントは、アンテナ320によって検出されたレーダエコー信号の強度に基づくことができる。例えば、これらには限定されないが、閾値より大きい強度値を有する気象反射率は、トリガイベントとして使用することができる。他のレーダ強度ベースのトリガイベントを使用することができる。レーダエコー信号の強度の値が、所定の閾数のレンジビン中の閾値を超えた場合、気象情報収集プロセスは、自動的に開始することができる。さらに、レーダエコー信号の強度は、所定の期間の間、強度閾値より大きいままであることが必要な場合がある。追加として、または代替えとして、検出されたレーダエコー信号の強度は、航空機の一定の閾範囲内にあることが必要な場合があり、および/または検出されたレーダエコー信号の強度は、閾距離(幅または奥行き)に及ぶことが必要である。レーダエコー信号の強度の値が1つまたは複数のトリガイベントの基準を超えた場合、気象情報収集プロセスは、自動的に開始される。
【0089】
他の実施形態では、気象情報収集は、所定のトリガイベントに応答して開始することができる。例えば、突然で不意の垂直加速度が搭載IMU308によって検出された場合である。突然で不意の垂直加速度は、乱気流を表す。したがって、IMU308からの加速度情報は、レーダエコー情報とともに、後の解析のために保存される。上述のように、様々な適用可能な気象モデル204(図2)は、収集された情報の後の解析に基づいて、更新または修正することができる。
【0090】
他のトリガイベントは、雷、雹、雪、および/または着氷の検出を含むことができる。ウインドシェアは、また、検出されたウインドシェアが閾ウインドシェアを超えたとき、トリガとして使用することができる。代替えとして、または追加として、気象情報収集プロセスは、ユーザインターフェース318を介して、航空機104の乗組員によって手動で開始することができる。すなわち、気象情報は、飛行中の航空機104の乗組員からの手動のイベントトリガの受け取りに応答して、記憶される。
【0091】
いくつかの実施形態では、航空電子システム302によって収集された気象情報は、継続したリアルタイムベースで、気象情報データベース346に記憶される。トリガイベントが所定のデータ記憶時間の閾値内に受け取られない場合、記憶された気象情報が捨てられ、消去され、上書きされ、または別の方法でさらには記憶されない。トリガイベントが受け取られた場合、既に記憶されていた気象情報が、恒久的に保存される。したがって、トリガイベントが起きたとき、トリガイベントの直前の期間が、解析のために利用できる。
【0092】
航空電子システム302によって収集された気象情報の記憶は、イベントが持続する間、継続される。記録されるイベントの持続期間の基礎になるために、異なる基準を使用することができる。例えば、同じ乱気流閾値またはより低い乱気流閾値は、気象イベントの終了を識別するために、使用することができる。追加として、または代替えとして、乗組員は、ユーザインターフェース318を介して、気象イベントの終了を手動で合図することができる。他の基準は、レーダエコー信号の強度の変化、または雷、雹、雪および/または着氷の終了の検出を含むことができる。
【0093】
いくつかの実施形態では、気象イベントの判定のとき、気象情報の記録が、ある所定の期間、継続される。したがって、気象イベント後の期間に関連した気象情報を後の解析のために利用できる。
【0094】
上述のトリガイベントの閾値は、気象モデルデータベース334に、またはメモリ316の他の適切な記憶場所に保存することができる。したがって、観察された気象が、長い時間をかけてより多く解析されるにつれて、気象モデル334がより洗練されるので、一層有意義な気象情報が航空機104によって収集されるように、トリガイベント閾値を更新することができる。
【0095】
いくつかの実施形態では、気象を観測する乗組員は、ユーザインターフェース318を介して、彼ら自身の観測結果を気象情報として入力することができる。例えば、気象の色など、航空電子システム302によって検出可能でない気象の観測可能な面があり得る。いくつかの実施形態では、また、観測された気象の捕捉したイメージを気象情報として保存することができる。
【0096】
ある時点で、航空機104の観測気象情報データベース346に保存された気象情報は、気象モデル開発システム202(図2)のリモート気象情報データベース238に転送される。いくつかの実施形態では、気象情報は、データコンパクトディスク(CD)、フロッピディスク、メモリZIPドライブなど、適切な一時的のリモートメモリ媒体に転送される。これらの一時的なリモート媒体は、気象モデル開発システム202の現場に郵送し、または別の方法で送ることができる。次いで、気象情報は、データインターフェース206を介して、気象モデル開発システム202のリモート気象情報データベース238に転送される。
【0097】
代替えとして、または追加として、航空機がその飛行の最後に地上走行して行く空港ゲートで、適切なデータコネクタを利用できる可能性がある。データコネクタは、航空機104上の対応するデータポートに結合することができ、気象情報は、観測気象情報データベース346からリモートメモリに電子的に転送することができる。次いで、気象情報は、適切なリモートメモリ媒体上に保存することができ、および/またはLAN242、インターネット244またはPSTN246を介して、リモート気象モデル開発システム202に直接転送することができる。
【0098】
いくつかの実施形態では、気象情報は、観測気象情報データベース346から無線で転送される。次いで、気象情報は、リモートメモリ媒体上に保存することができ、および/またはLAN242、インターネット244またはPSTN246を介して、リモート気象モデル開発システム202に直接転送することができる。
【符号の説明】
【0099】
102 計画飛行経路
104 航空機
106 空間領域
108、110 ストームセル、気象、ストームセルのアイコン
112、114 乱気流領域、乱気流領域のアイコン
116 地上面
118 山脈の範囲
120、122、124 距離
200 動的気象モデルシステム
202 気象モデル開発システム
204 気象モデル
206 データインターフェース
208 ディスプレイ
210 処理システム
212 ユーザインターフェース
216 メモリ
218 通信バス
220 気象モデル生成モジュール
222 気象モデル性能解析モジュール
224 レーダ情報処理モジュール
226 気象モデル解析レポートモジュール
228 気象モデルデータベース
230 気象特性データベース
232 パラメータ
234 可変パラメータ範囲
236 アルゴリズム
238 気象情報データベース
240 物理的データ媒体
242 ローカルエリアネットワーク、LAN
244 インターネット
246 公衆交換電話網、PSTN
402 仮想のレーダイメージ
404 気象アイコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行中の航空機に接近して気象からのレーダエコーを受信するステップと、
前記受信されたレーダエコーに基づいてレーダエコー強度情報を発生するステップと、
前記発生されたレーダエコー強度情報をレーダエコー強度閾値と比較するステップと、
前記レーダエコー強度閾値より大きい少なくともひとつの特性を有する関心の気象の存在に対応するトリガイベントを発生するステップと、
前記トリガイベントの発生に応答して航空電子システムにより収集された気象情報をメモリに記憶するステップと、
前記記憶された気象情報を遠隔メモリにダウンロードするステップと、
を含む、飛行中の航空機に遭遇される気象用の気象情報を記録するための方法。
【請求項2】
前記トリガイベントを発生するステップは、前記気象の少なくともひとつの次元を決定するステップと、前記気象の少なくともひとつの次元を対応する次元の閾値と比較するステップとを含み、
前記気象情報は気象次元閾値を超える前記気象の少なくともひとつの次元に応答して記憶される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記トリガイベントを発生するステップは、前記飛行中の航空機の乱気流を検知するステップと、
前記検知された乱気流を対応する乱気流閾値と比較するステップと、を含み、
前記気象情報は乱気流閾値を超える前記検知された乱気流に次元に応答して記憶される、請求項1に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−243483(P2010−243483A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−54747(P2010−54747)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】