説明

食品の乾燥方法および食品の乾燥手段を備えた貯蔵庫

【課題】家庭等で簡便に野菜類や肉、魚類などの食品を、菌の増殖や食品の栄養価などを維持しながら高品位に乾燥する乾燥方法を提供する。
【解決手段】食品103と接する気体空間の圧力を凍結雰囲気で変動させ、食品103と接する気体空間を減圧した際、気体空間の飽和水蒸気量が増大し、食品103表面の水分の気化が促進されることにより、食品103中の水分が蒸発し、さらに、圧力変動処理を繰り返すことにより、食品103の水分をさらに減少させ、適度な水分含量になるまで乾燥を促進させることにより、簡便に高品位な乾燥食品を得ることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜、果物、肉、魚類などの生鮮食品や調理品(お惣菜)において、品質を維持しながら、食品が保持する水分を低減する乾燥方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、女性の社会進出にともなう共働き家庭の増加や核家族化にともない、まとめ買いのニーズが高まっていることから、家庭用冷蔵庫では長期的に肉や魚、野菜などの生鮮食品を高品位に保存することが切望されている。
【0003】
生鮮食品を長期的に高品位に保存する方法として、冷凍保存は、付着する菌の増殖を抑制し、食品の自己消化を抑制するなどの理由から、一般的に最もよく行われている。しかしながら、調理する際には、解凍の手間やそれに伴う時間を要するため、調理の利便性を考慮すると、冷凍保存は望ましくない。また、冷凍品の解凍の際に生じるドリップの流出や、電子レンジ解凍時の解凍ムラや過剰加熱による部分的な端煮えなどによっても、食品の品質劣化が懸念される。さらに、野菜や果物類を凍結すると細胞膜の破壊により、解凍時に水分流出が生じ、著しい品質劣化が生じる。
【0004】
一方で、長期的な保存方法として、食品を乾燥させる方法がある。例えば、魚の干物などのように、魚介類の身を開いて干すことにより、表面に固い膜を作り、保存性を高め、さらに、独特の食感と風味を味わう食品である(特許文献1参照)。
【0005】
図3は、従来の食品乾燥装置の概略図を示すものである。図3に示すように、乾燥室1の天井部に放熱板2が設けられ、この放熱板2の上面に電熱加熱式発熱体3と、この発熱体3を底面とする空気加熱室4が配置されており、この空気加熱室4で加熱された温風を乾燥室1内に供給して循環させるようになっている。
【0006】
乾燥室1の対向する壁面にはそれぞれ多孔壁5、5aが背後に分散室6、6aを形成するように設けられている。この乾燥室1には送風機7で加圧され、空気調節装置8(空気加熱装置)で温度調節された空気がダクト9を通じて壁面に沿って構成された分散室6に供給され、多孔壁5面に全体的に分散されて多数の小孔より乾燥室1内に横向きに外部循環加熱空気hgとして噴出され、台車10内に多段に支持されている乾燥板11の間を通過して対向する多孔壁5aの多数の孔より背後にある分散室6a内に流入し、ダクト9aを通じて送風機7に還流するようになっている。
【0007】
また、ダクト9aには冷却装置を併設した除湿装置13が弁14を介して流量調節可能に接続され、ダクト9a内を流動する加熱空気(循環空気)を冷却して湿度を除去するようになっている。
【0008】
更に、乾燥室1には排気ブロア15と給気ファン16が接続され、排気ブロア15で乾燥室1内の空気を排出して所定の減圧状態に保持すると共に、給気フアン16で新気を供給するようになっている。なお、装置の設計によってはダクト9内を通過する加熱空気の全量を除湿装置13を通過させて全量の湿度を調節することができるように構成しても良い。
【0009】
天井面に設けられた放熱板2は、乾燥室1内に向かう下面にセラミックス層を形成した金属板2aと、その背面に配置されたヒーター2bで構成され、この金属板2aの背後にダクト状の空気加熱室4を形成している。従って、このヒーター2bは下面より遠赤外線Rを放射し、上面で空気加熱室1を通過する空気を加熱するようになっている。
【0010】
また、放熱板2の一方の側には吸気口4aが、他方の側には排気口4bがそれぞれ設けられ、この吸気口4aの近傍には強力なシロッコファン4cが設けられている。そして、乾燥室1内の空気を吸引してフアン4cで加圧して空気加熱室4内を通過する間にヒーター2bによって加熱されて所定の温度の熱風hとなって排気口4bより乾燥室1内の床面の近傍まで到達するように高速で排出される。
【0011】
以上のように構成された食品乾燥装置において、被乾燥食品に対して少なくとも温風を作用させる加熱乾燥工程と、この加熱乾燥工程に続いて常温以下の冷風に接触させる冷風乾燥工程からなる乾燥サイクルを、複数回くり返して行う食品の熟成乾燥を行うことによって、加熱乾燥による乾燥速度を速める操作と常温以下の冷風を作用させる冷風乾燥工程の総合的な作用が生じ、天日乾燥や冷風乾燥のように長い時間を必要とせず、熟成を高めた乾燥方法を提供することが可能となった。
【特許文献1】特開2003−225077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来の構成では、温風を作用させる加熱乾燥工程と、この加熱乾燥工程に続いて常温以下の冷風に接触させる冷風乾燥工程からなる乾燥工程を複数回くりかえすことによって、乾燥度を高めるものであるが、35〜45℃程度の菌の増殖が最も活発に生じる温度帯の温風を食品に接触させることによって、食品に付着している菌の著しい増殖による食品の腐敗が促進する可能性が高いという課題があった。また、上記加熱乾燥工程と冷風乾燥工程を複数回くりかえすことによって、水分が抜け乾燥しすぎて、食品の身が硬くなり食感が悪くなるという課題もあった。さらに、温風を作用させる加熱装置と冷風を作用させる冷却装置を併用させなければならず、装置が大規模であり、家庭で簡便に使用できないという課題もあった。
【0013】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、菌の増殖を抑制し、新鮮さを保ちながら食品の乾燥を行なうものであり、家庭ではもちろんのこと、食品加工現場においても、簡便かつ自動的に乾燥操作を行うことのできる食品の乾燥方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記従来の課題を解決するために、本発明は、食品を凍結する凍結工程と、前記凍結工程において前記食品と接する気体空間の圧力を凍結雰囲気の中で変動させる変圧工程と、前記変圧工程において前記食品の水分含量を検知して所定の水分含量に達するまで乾燥させる乾燥工程とを有するものである。
【0015】
これにより、食品と接する気体空間を減圧した際、気体空間の飽和水蒸気量が増大し、食品表面の水分の気化が促進される。そして、食品中の水分が蒸発し、さらに、凍結雰囲気においてこのような圧力変動処理を繰り返すことにより、食品の水分がさらに減少し、適度な水分含量になるまで乾燥が促進する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の凍結雰囲気下で減圧工程を繰り返し行うことによって食品を乾燥する方法によると、凍結雰囲気は、乾燥中に菌の増殖や食品の自己消化の抑制が可能な温度であることから劣化を抑制し、さらに食品のビタミンなど栄養素の失活を抑制しながら、適度に食品の水分を蒸発させることが可能である。その結果、得られた食品は保存性の向上、栄養の維持、旨み濃縮、風味維持などの効果が得られる。また、調理性の向上効果として、調理時間の短縮、味のしみ込み促進などの効果が得られる。減圧することにより、低酸素雰囲気となるため、脂質酸化の抑制も可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
請求項1に記載の発明は、食品を凍結する凍結工程と、前記凍結工程において前記食品と接する気体空間の圧力を凍結雰囲気の中で変動させる変圧工程と、前記変圧工程において前記食品の水分含量を検知して所定の水分含量に達するまで乾燥させる乾燥工程とを有するものである。
【0018】
まず、食品と接する気体空間を減圧した際、気体空間の飽和水蒸気量が増大し、食品表面の水分の気化が促進される。これにより、凍結雰囲気の中においてこのような圧力変動処理を繰り返すことにより、食品の水分がさらに減少し、乾燥が促進する。
【0019】
水分含量を検知することによって、乾燥レベルを制御することによって、過剰な乾燥を抑制するなど、使用者が望む水分含量の乾燥状態を提供することが可能となる。
【0020】
所定の水分含量に達するまで乾燥することによって、保存性の向上、旨み凝縮の効果が生じる。特に、凍結雰囲気の中で行うことによって、微生物の増殖を緩和させることが可能であり、保存性が向上する。また、圧力変動を加えることによって、微生物細胞膜に対しての負荷が生じ、微生物細胞膜を破裂させることによって、微生物の増殖を抑制する効果が生じ、より保存性が向上する。
【0021】
さらに、食品と接する気体空間を減圧させることにより、低酸素雰囲気となるため、脂質酸化の抑制も可能である。
【0022】
さらに、上記方法によって乾燥された、食品の加熱調理においては、調理時間の短縮、調味料を加えた際の味のしみ込み増大などの効果が生じる。
【0023】
請求項2に記載の発明は、前記圧力の変力を変動させる工程は、減圧工程と大気圧導入工程とからなるものである。圧力変動をこの2工程とすることにより、凍結装置の簡素化および省スペース化を図ることが可能となる。
【0024】
請求項3に記載の発明は、前記大気圧導入工程により導入するガスの湿度がガス導入先の湿度より低い(低湿)ことを特徴とするものである。これにより、より効率的に食品の水分の蒸発が容易かつ、高速化する効果が得られる。
【0025】
請求項4に記載の発明は、前記減圧工程において、食品特有の匂いを選択的に吸着する手段を有することを特徴とするものである。例えば、魚の生臭い匂いに特異的なN系のガスのみを選択的に吸着する手段を介するなど、貯蔵庫内から貯蔵庫外への気体の移動をさせることにより、貯蔵庫内の悪臭の要因となる特異的なガスを除去することが可能である。また、野菜類の老化の要因となるエチレンガスを選択的に吸着することも可能である。
【0026】
請求項5に記載の発明は、食品が所定の水分含量に達するまでのいずれかの過程において、前記食品と接する気体空間の圧力を変動させる工程と前記食品を凍結させる工程を少なくとも一回以上有し、前記食品を乾燥させることを特徴とした食品の乾燥機能を有する貯蔵庫である。この貯蔵庫で、所定の水分含量の乾燥食品を作ることが可能であり、家庭でも簡単に適度に食品の水分を蒸発させることによって、保存性の向上、調理時間の短縮、旨み濃縮、風味維持などの効果が得られる。
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、従来例または先に説明した実施の形態と同一構成については同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0028】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0029】
図1は本発明の実施の形態1における減圧乾燥装置の断面図である。図2はケース内圧力と第一の開閉弁および第二の開閉弁の制御を示すフローチャートである。
【0030】
図1に示すように、本体101の内部には、扉102により引き出され、内部に食品103を収納するケース104と、扉102を閉じた際にケース104を密閉構造化する蓋105が設けられている。ケース104と蓋105との接合部にはパッキン(図示せず)が設けられており、扉102が閉状態となり、ケース104内が減圧された際に内部の真空度を維持する構造をなしている。
【0031】
蓋105はストッパー(図示せず)で本体101内に指示固定されており、使用者が扉102を引き出す際には、ケース104のみが上部を開口した状態で引き出される構成となる。また、ケース104内に入れられた食品103は、上部を開口した、たとえば発泡系樹脂からなる食品容器106内に入れられた状態で置かれている。
【0032】
蓋105には、ケース104内の大気を吸引する吸入配管107が、ケース104からの漏れが無いよう溶接またはシール材にて導入部がシールされて接続している。吸入配管107はケース104とケース104内を減圧するポンプ108とを接続しており、ケース104とポンプ108の途中経路には第一の開閉弁109が設けられ、ケース104内の空気の吸引量を調節している。
【0033】
吸入配管内107にはケース104内の食品103から生じる気体の臭いを選択的に吸着させる吸着剤110を設けている。さらに、ここでは図示はしないが、ケース104内の食品103が特に、菌の付着が多い魚類や肉類である場合、ケース104内の大気を吸入する際に、食品103内に含まれる菌類が吸い上げられ、吸入配管107内に付着し、菌類が増殖する可能性が懸念されるため、それらの付着した菌類を滅菌する手段を装着している。滅菌する手段は特には限定しないが、汎用性が高く、小型であることが好ましいことから、紫外波長領域の波長を有するLEDや青色の波長を有するLEDを、吸入配管107に設置し、吸入したケース104内の大気に含まれる菌類に、連続あるいは点滅照射することによって死滅させる手段も考えられる。ポンプ108に接続された吸入配管107は、ポンプ108によってケース104より吸入された空気を排出するものである。
【0034】
また、排気配管111は第一の開閉弁109とケース104の途中で分岐しており、分岐配管には第二の開閉弁112が設けられている。第二の開閉弁112によって、ケース104内が減圧状態の際に、ケース104内へ流入する空気量を調節し、ケース104内の圧力を大気圧まで変動させることができる。
【0035】
このようなポンプ108、第一の開閉弁109および第二の開閉弁112の動作は、ケース104内の圧力センサ113によって、制御基盤114により制御されるものである。
【0036】
また、一連の動作は、食品容器106の初期重量を重量センサ115によって検知し、所定の重量減少に達するまで繰り返し行われ、制御基盤114によって制御されるものである。
【0037】
また、本体101はケース104内を冷却する冷却サイクルを有している。冷却サイクルは、図示しない圧縮機、凝縮機、キャピラリーチューブを有し、強制対流式蒸発器116により、ケース104内を冷却できる構造になっている。強制対流式蒸発器116で冷却された冷気は、送風機117により本体101内に強制通風される。送風機117と本体の間に設けられたダンパーサーモ118は本体101内部の冷気流入量を調整するものであり、本体スイッチや、温度センサなどからの電気的入力を受けて、モーター119の駆動力によってダンパーサーモ118が開閉するよう構成されている。
【0038】
このような冷凍装置より供給される冷気は、吹き出し口120より本体101内部へ供給され、間接冷却によりケース104の外周から内部をゆるやかに冷却するものである。また、吹き出し口120より供給され、ケース104の外周を冷却し終えた冷気は、本体101に接合した吸い込みダクト121より前記冷却器に戻され、再び冷却された後本体101内へ供給される。本実施の形態ではこのようにして冷凍サイクルを形成している。
【0039】
図2は本実施の形態における減圧乾燥装置の操作のフローチャートである。
【0040】
図2に沿って、本実施の形態における減圧乾燥装置による乾燥操作を説明する。
【0041】
まず、食品103の投入までについて説明する。まず、食品103が野菜の場合は、汚れをおとし、皮むきなどの下処理が必要な場合は下処理を行った後、適当な大きさに切断した状態で、タッパーなどの食品容器106に入れ、蓋やラップをはずした状態にしておく。
【0042】
また、魚や肉の場合は、事前に塩や胡椒など調味料で味付けをする場合は、先にその動作を行った後、一般的にスーパーなどの店頭で販売される際に使用している発泡樹脂容器やタッパーなどの食品容器106に入れ、蓋やラップをはずした状態としておく。事前操作のいらない場合は、食品容器106をラップをはずした状態としておく。
【0043】
扉102を引き出し、ケース104内に食品103の入った食品容器106を設置する。扉102を完全に閉じると同時に、本体101内の蓋105がケースを被覆し、パッキン等によって密閉構造となる。
【0044】
次いで、使用者は食品103の種類を選択し、さらには、使用目的に応じて、乾燥状態(乾燥モード)を選択する。例えば、食品3が生イカであるとして、近年では味わい、食感ともに消費者に好まれる傾向がある、生干しや、一夜干しという、軽く水分をぬくだけの方法により、乾燥しすぎないようにしたい場合は、ソフト乾燥モードを選択する。
【0045】
また、一方で例えば、食品3がさつま芋であるとして、干し芋を作りたい場合には、使用者が柔らかさを残して仕上げたい時には、ソフト乾燥モードを選択し、硬めに仕上げたい時にはハード乾燥モードを選択するように設定が可能であり、その他の食品に対しても同様である。
【0046】
次に、使用者がスタートボタンを押すと、重量センサ115が食品容器106の初期重量を計測した後、冷凍サイクルの作動と、ポンプ108の作動開始、第一の開閉弁109の開、第二の開閉弁112の閉が制御基盤114より行われる。これにより、蓋105に接続された吸入配管107よりケース104内の空気が吸い出され、開状態となった第一の開閉弁109を通過してポンプ108内に吸入され、ケース104内の減圧が開始する。この動作は使用者が選択した食品および、乾燥モードに基づいて、重量センサ115が所定の重量減少に達するまで繰り返し行われ、制御基盤114によって制御されるものである。
【0047】
ポンプ108に吸入された空気は、排気配管111を通り、外気に放出される。このとき、第二の開閉弁112は閉状態であるため、ケース104内の空気が第二の開閉弁112を通じて漏れたり、外気がケース104内に流入することはない。
【0048】
また、冷凍サイクルの作動が開始し、圧縮機や凝縮機、キャピラリーチューブが作動すると、強制対流式蒸発器116で冷却された冷気が、送風機117により本体101内に強制通風される。冷却開始直後ではダンパーサーモ118は最大限開かれているが、温度センサにより、ケース104内や食品103が所定の凍結温度に達したことを検知すると、制御基盤114より入力され、その開度は小さくなる。このような冷凍サイクルにより供給される冷気は、吹き出し口120より本体101内部へ供給され、間接冷却によりケース104の外周から内部をゆるやかに冷却する。これにより、ケース104内部に収納している食品103は所定温度に到達するまで、速やかに冷却される。
【0049】
また、吹き出し口より供給され、ケース104の外周を冷却し終えた冷気は、本体101に接合した吸い込みダクト121より前記冷却器に戻され、再び冷却された後本体101内へ供給される。
【0050】
そして、ケース104内が所定の圧力まで減圧されたことを圧力センサ113が検知すると、制御基盤114を通じてポンプ108の停止および第一の開閉弁109の閉が行われる。これにより、完全に密閉構造となったケース104内は所定の減圧状態に維持される。
【0051】
この状態において、まず、食品103が非凍結の場合であれば、ケース104内の減圧によって食品103の周囲に付着している水滴・水分の気化が生じるため、食品103の水分を除し、乾燥が促進する。
【0052】
また、食品103が微凍結している場合、食品103の凍結は表面から生じるため、食品103表面が氷の被膜で被われた状態において減圧処理を行うことにより、食品103表面の氷被膜の昇華が生じ、乾燥を促進させることが可能となる。
【0053】
続いて、ケース104内部の所定の圧力への到達が検知され、一定時間が経過した後、制御基盤114より入力が生じ、第二の開閉弁112が開となり、吸入配管107よりケース104内へ急激な外気の導入が生じる。このとき導入される外気によってケース104内には空気層の対流が生じ、対流を受けた食品103はその風圧によって、さらに乾燥が促進した状態となる。尚、このとき導入される外気が、ケース104内の湿度より低いものであることにより、さらに乾燥効率が向上する。ケース104内へ導入される外気をケース104内の湿度より低いものとする方法としては、ここでは特には限定しないが、104内へ導入される外気をケース104内の温度より低温とすることや、吸入配管107内において外気の水分を除去する吸水膜などを介すことによる方法などが考えられる。
【0054】
この後、食品の種類や乾燥モードの選択に応じて、重量センサ115により食品103が所定の重量に達したことが検知できれば、一連の減圧乾燥装置の動作は終了し、所定の温度で保存することが可能となる。例えば乾燥モードをソフト乾燥モードで選択している場合は、この方法によって作られた食品103は水分含量が比較的大きいため、冷蔵保存が必要であるため、10度以下の温度で保存することが望ましい。一方、ハード乾燥モードを選択している場合は、水分含量が小さいため、冷蔵保存をせず、室温保存も可能である。
【0055】
しかしながら、所定の重量に達していない場合は、引き続き所定の重量に到達するまで、一連の動作が繰り返し行われる。
【0056】
所定重量到達後、本減圧乾燥装置でそのまま保存することも可能であり、食品103が所定の重量に到達した後には、ケース104内は所定の温度および減圧状態を維持することが可能である。この場合、所定の温度は、食品103の種類や水分含量によって最適性が異なる。例えば、水分含量の多い野菜の場合は、冷凍保存により細胞膜が破壊され、脱水が生じることから食感が悪くなるため、食品103が微凍結する温度以上で保存することが望ましい。
【0057】
以上のように、本実施の形態の減圧乾燥装置においては、食品103を凍結させる過程において、食品103の接する大気に減圧、大気導入のサイクルを少なくとも1回以上付与するものである。これにより、食品103の乾燥を促進することが可能となる。食品103に付着する菌などの増殖を抑制しながら乾燥することが可能であり、高品位な乾燥食品を作ることが可能である。したがって、保存日数も増加し、長期的な保存が可能となる。
【0058】
また、食品103が保有するビタミンなどの栄養分や風味のもととなる匂いなどは熱に非常に不安定なものも多く、温風を作用させることによって失活してしまうもことが懸念されるが、本実施の形態の減圧乾燥装置においては、冷凍雰囲気下で乾燥工程を行うため、栄養分や匂い成分の維持等も可能である。
【0059】
さらに、乾燥後も減圧された状態、即ち、低酸素状態での保存が可能であるため、特に魚や肉などの脂質酸化の抑制効果やミオグロビンのメト化による変色の抑制効果もあり、長期的に風味や品質を維持して保存することが可能となる。さらに、保存中にも定期的に圧力変動を加えることにより、長期的に高品位に乾燥した状態を維持することが可能となる。
【0060】
また、食品103の種類や乾燥モードをあらかじめ選択することによって、使用者の好みに応じた乾燥を自動的に行うことが可能となり、利便性や調理性の向上が得られる。
【0061】
本実施の形態の減圧乾燥装置によって得られた乾燥食品103を用いて、加熱調理をする場合において、例えば食品103が野菜である場合、ほどよく水分が減少した野菜は成分濃縮効果によって甘みが増し、食感も向上する。さらに、食品103の水分が減少しているため、野菜炒めの際にも水分の流出があまりなく、ベトッとせずパラッとした野菜炒めを作ることが可能である。さらに、食品103の細胞の網目構造がわずかに大きくなっていることから、調味料など浸透性が高く、火の通りもよく調理時間短縮効果も得られる。さらに、調理時間の短縮効果は言いかえれば、加熱エネルギーを減少させることが可能であり、省エネ効果が得られる。
【0062】
また、揚げ物などの惣菜を乾燥することも可能である。この場合、適度に衣の水分が乾燥することによって、パリパリ感を維持しながら保存することが可能である。レンジなどで解凍する際にも、水分が均一化されているため、高品位な解凍をすることが可能であり、揚げたての美味しさを再現することが可能である。
【0063】
なお、本実施の形態では、減圧手段として電動式のポンプ108を用いたが、これらは特に指定するものではない。たとえば、手動式ポンプの使用や、酸素吸着剤や窒素吸着剤などを設けて減圧することも可能である。また、ポンプ108と気体吸着剤とを併用することも可能であり、これによりポンプ108および吸着剤の経時性能の低下を互いに補完するため、冷凍装置を長期的に使用することができる。
【0064】
なお、本実施の形態では、水分含量を初期の食品容器106の重量と乾燥操作中または終了後の食品容器106重量との差を初期の食品容器106の重量で割った重量減少率で相関をとり、表すこととしたが、この方法に限定するものではない。したがって、本実施の形態では、食品103の水分含量は重量センサ115を用いて検知したが、検知する手段についても特に限定するものではなく、例えば、時間によるシーケンスを用いて制御してもかまわない。
【0065】
また、減圧工程における所定の圧力については特に指定するものではないが、凍結雰囲気下で減圧工程を行うことによって、大気圧より0.08から0.03MPa程度とすることで、十分な水分除去効果を得ることができる。
【0066】
なお、本実施の形態によれば、天日干しや熱風乾燥によって作る方法に比べて、衛生的な環境下で、菌の増殖や脂質酸化などの自己消化を抑制しながら、高品位な乾燥食品を作ることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上のように、本発明にかかる食品の乾燥方法は、乾燥中に菌の増殖や、自己消化やビタミンなどの熱に弱い栄養素の失活による食品の劣化を抑制しながら、適度に食品の水分を蒸発させることが可能である。その結果、得られた食品は保存性の向上、調理時間の短縮、旨み濃縮、風味維持などの効果が得られるので、業務用または家庭用の冷凍装置や家庭用冷蔵庫などへの応用展開が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施の形態1における減圧乾燥装置の断面図
【図2】本発明の実施の形態1における減圧乾燥装置の操作のフローチャート
【図3】従来の食品乾燥装置を示す図
【符号の説明】
【0069】
103 食品
109 吸着剤
115 重量センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を凍結する凍結工程と、前記凍結工程において前記食品と接する気体空間の圧力を凍結雰囲気の中で変動させる変圧工程と、前記変圧工程において前記食品の水分含量を検知して所定の水分含量に達するまで乾燥させる乾燥工程とを有する食品の乾燥方法。
【請求項2】
前記圧力の変力を変動させる工程は、減圧工程と大気圧導入工程とからなる請求項1に記載の食品の乾燥方法。
【請求項3】
前記大気圧導入工程により導入するガスの湿度がガス導入先の湿度より低いことを特徴とする請求項1または2に記載の食品の乾燥方法。
【請求項4】
前記減圧工程において、食品特有の匂いを選択的に吸着する手段を有することを特徴とした請求項1から3のいずれか一項に記載の食品の乾燥方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の食品の乾燥方法を用いた食品の乾燥手段を備えた貯蔵庫。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−39000(P2009−39000A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−205300(P2007−205300)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】