説明

食品処理システム

【課題】全体的構成の簡素化及び省スペース化を図った食品処理システムを提供する。
【解決手段】食品処理装置3の一側近傍にラック搬入ステーション7を備えると共に他側近傍にラック搬出ステーション9を備え、前記ラック搬入ステーション7に、ラック5を引込み自在かつ前記食品処理装置3内へラック5を挿入自在な第1のラック移送装置15を備え、前記ラック搬出ステーション9に、前記食品処理装置3内からラック5を引き出し自在かつ当該ラック搬出ステーション9から外部へ押出し自在な第2のラック移送装置15Aを備え、前記ラック移送装置15,15Aに備えたラック移送手段23はそれぞれ水平に旋回自在であり、前記ラック搬入ステーション7を間にして前記食品処理装置3の反対側に、ラック5に備えた複数段のトレイ収容部13に対して上部側からトレイ11を順次搬入するためのトレイ搬入装置55を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め所望形状に形成された例えばパン生地などのごとき食品生地を、例えば蒸し処理や発酵処理などのごとき適宜の食品処理を行うための食品処理システムに係り、さらに詳細には、前記食品生地を載置した複数のトレイを複数段に収容したラックを、適宜の食品処理を行う食品処理装置に対する搬入,搬出の自動化を図り、かつ全体的構成の小型化,簡素化を図った食品処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
食品生地の食品処理として、例えばパン生地の発酵処理を行う場合、パン生地を載置した複数のトレイを、ラック内に複数段に収容し、このラックを発酵室に対して搬入,搬出するシステムが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−21022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に記載の構成は、コンベアによって搬送されてきた天板をラックローダ内に複数段に収容した後、このラックローダに隣接して配置した天板ラックに対して、ローディングプッシャーに備えた押圧部でもって全ての天板を同時に押圧して、前記天板ラックに対して天板を複数段に移載する構成である。上述のように複数の天板を収容した天板ラックは、モノレールホイスト及びローディングコンベアによって発酵室内へ搬入される。
【0004】
そして、上記発酵室内の天板ラックは、発酵室内に備えた室内モノレールホイストによって発酵室内の所定位置へ移送され、発酵処理の管理が行われる。発酵処理が行われた後の天板ラックは、前記室内モノレールホイストによって出口に備えたアンローディングコンベア上に移載され、このアンローディングコンベアによって前記発酵室から搬出される構成である。
【0005】
したがって、特許文献1に記載の構成においては、発酵室内に複数の天板ラックを搬入して大量の食品生地の発酵処理を行うことができるものの、例えばローディングプッシャーや室内モノレールホイストが必要であって、システム全体の小型化,構成の簡素化を図る上において問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前述のごとき従来の問題に鑑みてなされたもので、食品生地の食品処理を行うための箱状の食品処理装置の一側近傍にラック搬入ステーションを備えると共に前記食品処理装置の他側近傍にラック搬出ステーションを備えた食品処理システムであって、前記ラック搬入ステーションに、当該ラック搬入ステーション外からラックを引込み自在かつ当該ラック搬入ステーションから前記食品処理装置内へラックを挿入自在な第1のラック移送装置を備え、前記ラック搬出ステーションに、前記食品処理装置内からラックを引き出し自在かつ当該ラック搬出ステーション内のラックを当該ラック搬出ステーションから外部へ押出し自在な第2のラック移送装置を備え、前記第1,第2のラック移送装置に備えたラック移送手段はそれぞれ水平に旋回自在であることを特徴とするものである。
【0007】
また、前記食品処理システムにおいて、前記ラック搬入ステーションに隣接した位置に、前記ラック搬入ステーションに位置するラックに備えた複数段のトレイ収容部に対して上部側からトレイを順次搬入するためのトレイ搬入装置を備えていることを特徴とするものである。
【0008】
また、前記食品処理システムにおいて、前記食品処理装置の一側又は他側に、水平に開閉自在な開閉扉を備え、この開閉扉の開閉動作に連動して前記ラック移送装置に備えたラックガイド部に整合自在な旋回ラックガイド部材を水平に旋回可能に備えていることを特徴とするものである。
【0009】
また、前記食品処理システムにおいて、前記ラック搬入ステーションに、常態においては先端側が上側になるように付勢され、当該ラック搬入ステーションからラックを前記食品処理装置へ搬入するときに、当該ラックに押圧されて水平状に倒れて前記ラックを案内するための回動ラックガイド部材を備えていることを特徴とするものである。
【0010】
また、前記食品処理システムにおいて、前記ラック移送装置において前記ラックを支持するラック支持ベースは多角形状であり、このラック支持ベースの上面に、前記ラックを当該ラック支持ベース上に引き込むときにラックを案内するための引き込み用のラックガイド部と、当該ラック支持ベース上からラックを押し出すときにラックを案内するための押出し用のラックガイド部とを交差する方向に備えていることを特徴とするものである。
【0011】
また、前記食品処理システムにおいて、前記ラック搬入ステーションに対してラックを搬入するためのラック搬入路は前記ラック搬入ステーション側が高く傾斜してあり、上記ラック搬入路の所定位置に、前記ラック搬入ステーション側へのラックの移動は許容するが逆方向へのラックの移動を阻止するためのストッパ機構を備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、食品処理装置の一側に備えたラック搬入ステーションに配置したラック移送装置によって、当該ラック搬入ステーションへのラックの引込み及び前記食品処理装置へのラックの搬入が行われる。そして、前記食品処理装置の他側に備えたラック搬出ステーションに配置したラック移送装置によって、前記食品処理装置からのラックの搬出及びラック搬出ステーションから外部へのラックの押出しが行われるので、食品処理システムの全体的構成の小型化,簡素化を図ることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1,図2を参照するに、本発明の実施形態に係る食品処理システム1は、例えばパン生地などのごとき適宜の食品生地の、食品処理の一例として、例えば蒸し工程処理などのごとき適宜処理を行うための箱状の食品処理装置3を備えており、この食品処理装置3の一側(図1,2において左側)近傍には、当該食品処理装置3に対してラック5の搬入を行うためのラック搬入ステーション7が備えられている。そして、前記食品処理装置3の他側(図1,2において右側)近傍には、前記食品処理装置3からラック5の搬出を行うためのラック搬出ステーション9を備えている。
【0014】
前記ラック5の構成は周知であるが、理解を容易にするために、ラック5の構成について概略的に説明する。ラック5は、4本の支柱5Aを4角形状に配置し、各支柱5Aを棧によって一体的に連結した構成であって、下部の棧5Bは井桁状に構成してある。そして、前記ラック5内には、4角形状のトレイ11を収容するトレイ収容部として、トレイ11の前後両側縁部を支持する断面L形状のトレイ支持レール13が前後に対向して複数段備えられている。さらに、前記ラック5の各支柱5Aの下部にはそれぞれキャスタ5Cが備えられている。したがって、ラック5は、方向性を一定に保持して前後左右方向へ移動することができるものである。
【0015】
前記ラック搬入ステーション7には、前側(図1において下側)からラック5を当該ラック搬入ステーション7に引込み、かつ前記食品処理装置3に対してラック5の挿入(搬入)を行うためのラック移送装置15が配置してある。このラック移送装置15は、図3,図4に示すように、平面視したときに多角形状すなわち4角形状のラック支持ベース17を備えており、このラック支持ベース17の上面の左右両側部(図3においては上下の両側部)には、前記ラック5における左右両側のキャスタ5Cの左右方向(図3において上下方向)への移動を規制して前後方向(図3において左右方向)に案内するための引込み用の左右のラックガイド部19A,19Bが備えられている。
【0016】
上記左右のラックガイド部19A,19Bは、一対のガイド部材を対向して備えた構成又は溝の構成であって、この一対のガイド部材の間に対して左右両側のキャスタ5Cが入り易いように、前側端(入口側)は、前端部の間隔が広くなるようにハの字形に開いてある。そして、このラックガイド部19A,19Bの前後方向の長さは、ラック5に備えた左右のキャスタ5Cにおける前後方向(図3,図4においての左右方向)の間隔寸法よりも小さな寸法に設定してある。したがって、前記ラック支持ベース17上において、ラック5の前後両側のキャスタ5Cは、前記ラックガイド部19A,19Bの前後両端から前後方向に離れた位置に位置するものである。
【0017】
そして、前記ラック支持ベース17の上面の前後両側部(図3において左右両側部)には、ラック5における前後両側のキャスタ5Cの前後方向の移動を規制して左右方向に案内する押出し用(搬入用)のラックガイド21A,21Bが備えられている。この搬入用のラックガイド21A,21Bは、引込み用の前記ラックガイド部19A,19Bと同様の構成である。したがって、搬入用のラックガイド21A,21Bの構成についての詳細については説明を省略する。
【0018】
前記ラック移送装置15における前記ラック支持ベース17上にラック5を引込み、前記食品処理装置3に対してラック5の搬入を行うために、前記ラック移送装置15にはラック移送手段23が水平に旋回自在に備えられている。より詳細には、前記ラック支持ベース17の中央部には、ロータリーアクチュエータ25によって水平に旋回される旋回台27が前記ラックガイド部19A,19B:21A,21Bより高位に備えられている。
【0019】
そして、上記旋回台27には、旋回台27から放射方向へ水平に突出するように移動自在なスライダ29が備えられている。このスライダ29は、前記旋回台27に備えたエアーシリンダ等のごとき往復動用アクチュエータ31によって往復動されるもので、このスライダ29の先端部と後端部に回転自在に備えたチエンスプロケット等のごとき回転体33A,33Bに掛回したチエン等のごときエンドレス部材35の一部は、前記旋回台27の先端部に備えたブラケット37に連結してある。
【0020】
そして、前記エンドレス部材35の一部には、前記スライダ29に案内されて往復動自在なフック支持部材38が連結してあり、このフック支持部材38の両側には、小型のエアーシリンダなどのごとき上下動用アクチュエータ39(図2,図6参照)が備えられている。この上下動用アクチュエータ39に上下動自在に備えられたピストンロッドのごとき上下作動杆41には、前記ラック5における下部材5Bの一部を係合自在なU字形状のフック43が備えられている。
【0021】
したがって、前記ラック5における下部材5Bの一部に前記フック43を係合した状態に保持して、前記往復動用アクチュエータ31によって前記スライダ29を往復動することにより、前記ラック移送装置15の外部から当該ラック移送装置15における前記ラック支持ベース17上にラック5を引込むことができる。また前記ラック支持ベース17上からラック移送装置15の外側へ押出すこと(搬出すること)ができるものである。
【0022】
前記ラック移送装置15における前記ラック支持ベース17上へのラック5の引込みが容易に行われ得るように、前記ラック支持ベース17の前側(図3,4においての右側)には、後側(ラック支持ベース17側)が前記ラック支持ベース17と同一高さとなるように傾斜した傾斜台45が配置してある。そして、この傾斜台45の傾斜面には、前記ラック5における左右両側のキャスタ5Cの左右方向への移動を規制して、前記ラック移送装置15における前記ラック支持ベース17上の引込み用の前記ラックガイド部19A,19Bへ案内する左右のラック搬入路47A,47Bが備えられている。
【0023】
上記ラック搬入路47A,47Bの所定位置には、このラック搬入路47A,47Bに搬入されたラック5のキャスタ5Cを当接係止自在のストッパ49が備えられている。上記ストッパ49は、前記ラック移送装置15方向へのラック5の移動は許容するが、前記ラック搬入路47の傾斜によって下方向へ(逆方向へ)ラック5が移動することを阻止する機能を有するものである。
【0024】
より詳細には、前記ストッパ49は、例えば適宜のスプリング等のごとき付勢手段(図示省略)によって前記ラック搬入路47に常に突出してある。そして、前記ラック搬入路47内をラック5のキャスタ5Cが前記ラック移送装置15方向へ移動するとき、前記キャスタ5Cと干渉してラック搬入路47から没入するように構成してある。
【0025】
以上のごとき構成により、手動によってラック5を前記傾斜台45のラック搬入路47A,47Bに沿って押進し、上記ラック5のキャスタ5Cが前記ストッパ49を押し退けてストッパ49を越えると、ストッパ49がラック搬入路47A,47Bに突出してキャスタ5Cを係止するので、前記ラック搬入路47A,47Bが、前側(図4において右側)が低くなるように傾斜しているにも拘わらず、ラック5は傾斜に沿って下降することなく所定位置に停止した状態に保持される。
【0026】
したがって、ラック移送装置15におけるスライダ29を、図4に示すように、前方向へ水平に突出移動し、フック43をラック5における下部材5Bに対応した後、上下動用アクチュエータ39を作動して前記フック43を上昇すると、前記フック43が前記下部材5Bの一部に係合する。このように、フック43を下部材5Bの一部に係合した後、前記スライダ29を前記旋回台27上の元の位置に復帰すると、ラック5は前側からラック支持ベース17上に引込まれることになる。
【0027】
上述のように、ラック支持ベース17上にラック5が引込まれるとき、ラック5のキャスタ5Cは、ラック支持ベース17上に備えた引込み用のラックガイド部19A,19Bに案内されて左右方向の移動を規制される。したがって、ラック支持ベース17上においてのラック5の左右方向の位置決めは正確に行われるものである。また、前記スライダ29の復帰移動を停止することによってラック5の前後方向の位置決めが行われるので、前記ラック支持ベース17上においてのラック5の前後方向の位置決めも正確に行われるものである。
【0028】
前述のごとく、ラック搬入ステーション7に備えたラック移送装置15におけるラック支持ベース17上に前側からラック5を引込んだ後、フック43を下降してラック5の下部材5Bから離脱する。その後、ロータリアクチュエータ25の作動によって旋回台27を図3において反時計回り方向に90°旋回し、図5に示すように、前記スライダ29を左右方向、すなわち前記食品処理装置3に対して接近離反するように位置決めし、前記フック43を上昇して下部材5Bにおける左側部の一部に係合する。そして、旋回台27からスライダ29を水平に突出作動することにより、ラック5は前記食品処理装置3方向へ搬出されることになる。
【0029】
箱状の前記食品処理装置3は、前記ラック移送装置15側からのラック5の搬入を許容し、かつ前記ラック移送装置15の反対側へのラック5の搬出を許容するために、すなわち、図1において、左側からのラック5を搬入し右側へ搬出するために、前記食品処理装置3の左右両側面には前後方向へ水平に開閉自在な前後の開閉扉51A,51Bがそれぞれ備えられている。さらに、前記食品処理装置3の左右両側部には、例えばトーションスプリングなどのごとき付勢手段(図示省略)によって内側方向へ水平に回動するように付勢された前後一対の旋回ラックガイド部材53A,53Bが備えられている。
【0030】
前記一対の旋回ラックガイド部材53A,53Bは、前記ラック搬入ステーション7に備えた前記ラック移送装置15における前後の前記搬入用のラックガイド部21A,21Bと左右方向に直線状に整合する位置に備えられており、前記開閉扉51A,51Bが閉じた状態にあるとき、上記開閉扉51A,51Bの外側面に当接するように付勢されている。そして、前記開閉扉51A,51Bが前後方向に開かれると、付勢手段の付勢によって水平に回動して、前記ラック搬入ステーション7の前記ラック移送装置15から搬入されるラック5を案内するように、前記ラック移送装置15に備えた前後のラックガイド部21A,21Bと直線状に整合するものである。
【0031】
なお、前記開閉扉51A,51Bが元の状態に閉じるときには、旋回ラックガイド部材53A,53Bは付勢手段の付勢力に抗して開閉扉51A,51Bにより元の状態に回動復帰され、開閉扉51A,51Bに当接した状態に保持されるものである。
【0032】
したがって、前述したごとく、前記ラック移送装置15上から前記食品処理装置3内へラック5を搬入するとき、当該食品処理装置3における左側の開閉扉51A,51Bは開かれた状態にあり、左側の旋回ラックガイド部材53A,53Bは前記ラック移送装置15に備えた前後のラックガイド部材21A,21Bに左右方向に直線状に整合した状態にあるものである。
【0033】
なお、上記説明においては、旋回ラックガイド部材53A,53Bを食品処理装置3側に備えた場合について説明したが、旋回ラックガイド部材53A,53Bは前記ラック移送装置15側に設けることもできるものである。そして、前記旋回ラックガイド部材53A,53Bを備えることにより、前記食品処理装置3と前記ラック移送装置15との間に多少の隙間が存在する場合であっても、前記ラック移送装置15側から食品処理装置3側へラック5を円滑に搬入(移送)することができるものである。
【0034】
また、前記旋回ラックガイド部材53A,53Bに代えて、垂直方向に回動自在な回動ラックガイド部材とすることも可能である。すなわち、前記ラック搬入ステーション7側に、回動ラック部材の基端部側を上下方向に回動自在に備えると共に先端側(右端側)が上昇するようにトーションスプリングなどの付勢手段によって付勢した構成とする。そして、前記ラック搬入ステーション7から前記食品処理装置3へラック5を搬入するとき、ラック5に備えたキャスタ5Cにより押圧されて水平状態に倒れる構成とするものである。
【0035】
すなわち、常態においては先端側が上側になるように付勢され、ラック搬入ステーション7からラック5を食品処理装置3へ搬入するとき、当該ラック5に押圧され水平状に倒れてラック5を案内するための回動ラック部材を、ラック搬入ステーション7に備えた構成とするものである。
【0036】
なお、このような回動ラック部材を、前記食品処理装置3のラック搬出ステーション9側に設けることも可能である。この場合は、回動ラック部材でもって、食品処理装置3からラック搬出ステーション9へ搬出されるラック5を案内することになるものである。
【0037】
ところで、前記ラック移送装置15におけるラック支持ベース17は前述したように多角形状に形成してあって、このラック支持ベース17の中央部にラック移送手段23を水平に旋回自在に備えた構成であるから、例えば前記ラック支持ベース17上にラック5を載置した状態においてラック支持ベース17及び移送手段23を一体的に水平に旋回する場合の構成に比較して、前記ラック支持ベース17を前記食品処理装置3に近接して配置することができ、全体の省スペース化を図ることができるものである。
【0038】
前記食品処理装置3内に搬入されたラック5を搬出するために、前記ラック搬出ステーション9には、前記ラック移送装置15と同様の構成のラック移送装置15Aが配置してある。したがって、当該ラック移送装置15Aにおいて前記ラック移送装置15と同一機能を奏する構成要素には同一符号を付することとして、ラック移送装置15Aについての重複した説明は省略する。
【0039】
上記構成により、前記食品処理装置3における右側の開閉扉51A,51Bが開くと、前記ラック移送装置15Aが前記ラック搬入ステーション7における前記ラック移送装置15の搬入動作と逆の動作を行うことにより、前記食品処理装置3内からラック5をラック搬出ステーション9に備えたラック移送装置15Aにおけるラック支持ベース17上にラック5を搬出することができる。そして、当該ラック移送装置15Aの前側に配置した傾斜台45A上にラック5を送出することができるものである。
【0040】
上記傾斜台45Aは、前述した傾斜台45と同様の構成であって、送出された前記ラック5を一時的に停止するためのストッパ(図示省略)を備えている。このストッパは、前記傾斜台45Aに対して手動的に着脱されるものである。したがって、前記傾斜台45A上に送出されたラック5は、前記ストッパを取り外すことにより、傾斜台45A上から搬出することができるものである。
【0041】
上記説明より理解されるように、ラック5は、ラック搬入ステーション7に備えたラック移送装置15によって食品処理装置3内へ搬入され、そして、ラック搬出ステーション9に備えたラック移送装置15Aによって前記食品処理装置3内からラック5を搬出する。その後、ラック5を前記ラック搬入ステーション7に手動的に戻すことができる。すなわちラック5を循環移動して使用することができるものである。
【0042】
前述のごとく、食品処理装置3内へ搬入されるラック5における複数段のトレイ支持レール13に対して複数のトレイ11を収容する場合、手動的にトレイ11を収容することもできる。しかし、前記ラック5に対するトレイ11の収容を自動的に行うために、前記ラック搬入ステーション7に隣接した位置には、トレイ搬入装置55が備えられている。このトレイ搬入装置55は、前記ラック搬入ステーション7のラック移送装置15におけるラック支持ベース17上に位置するラック5の複数段のトレイ収容部としてのトレイ支持レール13に対して上部側からトレイ11を順次搬入する作用をなすものである。
【0043】
ところで、前記トレイ搬入装置55は、図1においては前記ラック搬入ステーション7を間にして前記食品処理装置3の反対側に配置した構成でもって例示してある。しかし、前記トレイ搬入装置55は、前記ラック搬入ステーション7の後側に配置する構成とすることも可能である。
【0044】
前記トレイ搬入装置55によってラック5に対して搬入されるトレイ11上に、例えばアンパンやまんじゅうなどのごとき包皮食品などの食品生地57を供給するための包皮食品供給装置59が備えられている。なお、この種の包皮食品供給装置59は周知であるから、包皮食品供給装置59についての詳細な説明は省略する。
【0045】
さらに、上記包皮食品供給装置59から次々に供給される食品生地57を載置するためのトレイ11を供給するためにトレイフィーダ61が備えられていると共に、上記トレイフィーダ61から移送されたトレイ11上に前記食品生地57を複数列,複数行に整列載置するための食品生地整列載置装置63が備えられている。なお、この種のトレイフィーダ61及び食品生地整列載置装置63は公知のものでよいものであるから、詳細な説明は省略する。
【0046】
前記食品生地整列載置装置63を経過することによって複数の食品生地57を載置したトレイ11を前記トレイ搬入装置55に対して送り込むために、前記トレイ搬入装置55を間にして前記ラック搬入ステーション7の反対側には、トレイ送込み装置65が備えられている。このトレイ送込み装置65は、当該トレイ送込み装置65のテーブル67上に移送されたトレイ11を前記トレイ搬入装置55に対して送り込むために、前記テーブル67の上方には、図2に示すように、ロッドレスシリンダなどのごとき往復動用アクチュエータ69が備えられている。
【0047】
そして、上記往復動用アクチュエータ69には当該アクチュエータ69によって左右方向に往復動されるスライダ71が備えられており、このスライダ71には、当該スライダ71に備えたエアーシリンダなどのごとき上下動用アクチュエータ(図示省略)によって上下動されるプッシャー73が上下動自在に備えられている。このプッシャー73は、下降されたときに、前記テーブル67上のトレイ11の左端縁に当接する高さ位置となり、前記往復動用アクチュエータ69によって、図2において右方向へ移動されるときに、前記トレイ11を前記トレイ搬入装置55に対して送り込む作用をなすものである。
【0048】
前記トレイ搬入装置55は、前記トレイ送込み装置65から送り込まれたトレイ11を受け取る受取りコンベア75を備えたエレベータ77が上下動自在に備えている。このエレベータ77は、トレイ搬入装置55に備えたサーボモータ又はブレーキ付モータなどのごとき適宜のモータ79の駆動によって上下方向に同期して走行移動される複数のチエン又はタイミングベルトなどのごときエンドレス部材81によって上下動されるもので、前記ラック搬入ステーション7に位置するラック5において複数段に備えた各トレイ支持レール13に対応した高さ位置に位置決め自在に構成してある。
【0049】
そして、前記受取りコンベア75上のトレイ11を前記ラック5に対して搬入するために、前記受取りコンベア75の上方位置には、前記往復動用アクチュエータ69と同様の往復動用アクチュエータ83が備えられていると共に、前記スライダ71と同様のスライダ85が備えられている。さらに、前記プッシャー73と同様に、スライダ85に備えた上下動用アクチュエータ(図示省略)によって上下動されるプッシャー87が備えられている。
【0050】
したがって、前記トレイ送込み装置65から受取りコンベア75上にトレイ11が送り込まれる毎にエレベータ77を上下動し、ラック搬入ステーション7に位置するラック5のトレイ支持レール13に対して上段側から順次搬入し収容することができるものである。よって、ラック5の各トレイ支持レール13に対してトレイ11を収容するとき、予め収容してあるトレイ11上に、例えば収容しようとしているトレイ11に付着している手粉などの余分なものを落下するようなことがないものであり、既に収容されているトレイ11上の食品生地57に悪影響を与えるようなことはないものである。
【0051】
既に理解されるように、ラック搬入ステーション7において食品生地57を載置したトレイ11を複数段に収容したラック5を前述したごとく食品処理装置3内へ搬入することにより、食品生地57の適宜処理を行うことができるものである。そして、前記食品処理装置3からラック搬出ステーション9側へ搬出したラック5からトレイ11を取り出すことにより、前述したようにラック5を循環使用することができる。そして、トレイ11上から処理後の食品生地57を次工程へ除去した後、トレイ11を前記トレイフィーダ61へ搬入することにより、トレイ11を循環使用することができるものである。
【0052】
以上のごとき説明より理解されるように、前記構成によれば、食品処理装置3の左右両側のラック搬入ステーション7及びラック搬出ステーション9にそれぞれラック移送装置15,15Aを配置して、食品処理装置3に対するラック5の搬入,搬出のみを自動的に行うことができる。この構成においては、システムの構成要素としては、食品処理装置3と同一構成のラック移送装置15,15Aとなるので、構成の簡素化を図ることができると共に省スペース化を図ることができ、小量生産に対応することができるものであり、前述したごとき従来の問題を解消し得るものである。
【0053】
そして、前記構成に加えて、包皮食品供給装置59,トレイフィーダ61,食品生地整列載置装置63,トレイ送り込み装置65及びトレイ搬入装置55の各構成要素を追加した構成のシステムとすることにより、トレイ11に対する食品生地57の移載,ラック5に対するトレイ11の搬入収容等をも自動化することができ、省力化を図ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態に係る食品処理システムの全体的構成を示した平面説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係る食品処理システムの全体的構成を示した正面説明図である。
【図3】ラック搬入ステーションに備えたラック移送装置の平面説明図でラックを引込む状態を示す説明図である。
【図4】ラック搬入ステーションに備えたラック移送装置の左側断面説明図でラックを引込む状態を示す説明図である。
【図5】図3に示す状態からラック移送装置上にラックを引込んだ状態を示す平面説明図である。
【図6】図4に示す状態からラック移送装置上にラックを引込んだ状態を示す側面説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1 食品処理システム
3 食品処理装置
5 ラック
5B 下部桟
5C キャスタ
7 ラック搬入ステーション
9 ラック搬出ステーション
11 トレイ
13 トレイ支持レール(トレイ収容部)
15,15A ラック移送装置
17 ラック支持ベース
19A,19B 引込み用のラックガイド部
21A,21B 押出し用(搬入用)のラックガイド部
23 ラック移送手段
27 旋回台
29 スライダ
31,83 往復動用アクチュエータ
37 フック支持部材
43 フック
45 傾斜台
47A,47B ラック搬入路
49 ストッパ
51A,51B 開閉扉
53A,53B 旋回ラックガイド部材
55 トレイ搬入装置
57 食品生地
75 受取りコンベア
77 エレベータ
85 スライダ
87 プッシャー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品生地の食品処理を行うための箱状の食品処理装置の一側近傍にラック搬入ステーションを備えると共に前記食品処理装置の他側近傍にラック搬出ステーションを備えた食品処理システムであって、前記ラック搬入ステーションに、当該ラック搬入ステーション外からラックを引込み自在かつ当該ラック搬入ステーションから前記食品処理装置内へラックを挿入自在な第1のラック移送装置を備え、前記ラック搬出ステーションに、前記食品処理装置内からラックを引き出し自在かつ当該ラック搬出ステーション内のラックを当該ラック搬出ステーションから外部へ押出し自在な第2のラック移送装置を備え、前記第1,第2のラック移送装置に備えたラック移送手段はそれぞれ水平に旋回自在であることを特徴とする食品処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の食品処理システムにおいて、前記ラック搬入ステーションに隣接した位置に、前記ラック搬入ステーションに位置するラックに備えた複数段のトレイ収容部に対して上部側からトレイを順次搬入するためのトレイ搬入装置を備えていることを特徴とする食品処理システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の食品処理システムにおいて、前記食品処理装置の一側又は他側に、水平に開閉自在な開閉扉を備え、この開閉扉の開閉動作に連動して前記ラック移送装置に備えたラックガイド部に整合自在な旋回ラックガイド部材を水平に旋回可能に備えていることを特徴とする食品処理システム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の食品処理システムにおいて、前記ラック搬入ステーションに、常態においては先端側が上側になるように付勢され、当該ラック搬入ステーションからラックを前記食品処理装置へ搬入するときに、当該ラックに押圧されて水平状に倒れて前記ラックを案内するための回動ラックガイド部材を備えていることを特徴とする食品処理システム。
【請求項5】
請求項1,2,3又は4に記載の食品処理システムにおいて、前記ラック移送装置において前記ラックを支持するラック支持ベースは多角形状であり、このラック支持ベースの上面に、前記ラックを当該ラック支持ベース上に引き込むときにラックを案内するための引き込み用のラックガイド部と、当該ラック支持ベース上からラックを押し出すときにラックを案内するための押出し用のラックガイド部とを交差する方向に備えていることを特徴とする食品処理システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の食品処理システムにおいて、前記ラック搬入ステーションに対してラックを搬入するためのラック搬入路は前記ラック搬入ステーション側が高く傾斜してあり、上記ラック搬入路の所定位置に、前記ラック搬入ステーション側へのラックの移動は許容するが逆方向へのラックの移動を阻止するためのストッパ機構を備えていることを特徴とする食品処理システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−278935(P2009−278935A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135730(P2008−135730)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000115924)レオン自動機株式会社 (98)
【Fターム(参考)】