説明

食品包装用シート

【課題】容器包装リサイクル法での紙マークを表示可能で、パン等の食品の水分を外部に排出可能な通気性を有しつつ、袋体内に一定程度の水分を残留させることができ、製袋機によって簡便かつ高速に食品を包装できる食品包装用シートを提供すること。
【解決手段】少なくとも天然繊維と合成繊維として多分岐ポリエチレン繊維とを含有する外層と、少なくとも天然繊維と合成繊維として多分岐ポリエチレン繊維とを含有しヒートシール性を有する内層とを備えた、少なくとも2層以上のシート全体において全繊維に対して多分岐ポリエチレン繊維が占める割合が30重量%以上50重量%未満であり、かつ合成繊維が占める割合は50重量%未満であり、内層において合成繊維が占める割合(重量%)から、外層におけるそれ(重量%)を差し引いた値が、0以上50以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器包装リサイクル法での紙マークを表示することができ、紙の風合いにより高級感を演出し購買意欲をかき立てることが可能な食品包装用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品等は衛生面からの保護を目的として合成樹脂製の袋体内に入れて販売しており、一般にパン、おにぎり、菓子等の食品については、透明フィルムによる包装がよく知られている。この種の食品包装体は、中身の食品と、フィルムの外側に施された印刷とがそのまま見え、見る角度によってはフィルムが光を直接反射するので、あまり高級感が感じられないものであった。また、パンを、密閉性の高い透明フィルムによって包装すると、焼きたてのパンから発生する水蒸気が包装用シート内部に残り、パン外側に付着し、フランスパンやメロンパン等における表面のサクサク感が失われる問題があった。製造時においては極めて状態の良いパンであったにも関わらず、販売までの間の時間の経過によりパンから徐々に外部に出る水分がそのまま袋内に残り、パンの表面を湿らせ、製造時の状態を変質させてしまうことになる。
【0003】
フランスパン、ハードロールパン等のハード系パン、デニッシュパン、パイ生地パン、メロンパン等のセミハード系パン等に代表される、パンの表皮がカリッとして歯ごたえがあり、中はふっくらとして柔らかい食感を有する焼きたてパンを店頭で販売する際には、包装されずそのままの状態で販売用のトレイの上に並べられることもある。しかし、店内でパンを焼いて販売する場合以外は、袋に入れて搬送しなければならず、店頭で販売する場合でも商品が包装されずむき出しのまま扱われているため、子供等が直接手で触れたり、時にはパン表皮に虫がとまったり、埃が付着したりすることもあり得るため、衛生性を保つことが必ずしも容易ではない。
【0004】
合成樹脂の袋体に孔を設けて通気性を保つ袋体もあるが、袋体同士を重ねて陳列した場合にはその孔が塞がってしまい、期待する通気性を発揮できないものとなっていた。またこの孔の部分から異物(塵・埃)が袋体内に混入する恐れもあり、食品衛生上問題がある。孔が空いていることにより、包装内に針等を混入する悪戯の区別がつきにくくなり、結果として犯罪、悪戯を防ぐことが出来ないので、悪戯防止包装(Tamper Resist Packaging)が要請されている。これはパンに限定されるものではなく、他の食品についても一定の品質を維持する上では同様の問題が生じる。
【0005】
また紙単体からなる包装体(紙袋)の場合は、通気性が大きいため、乾燥によってパン内部のシットリ感が失われる問題がある。紙袋に入っている時間が短ければ問題は無いが、例えば一晩程度経ってしまうと、水分が外部に放出され過ぎて、パン自体が固くなってしまい、パン内部のやわらかさ、シットリ感が失われてしまう。さらに紙袋の場合、包装体自体に接着性やヒートシール性がないため包装工程で製袋することが難しく、包装速度が上がらないので不利であった。また包装時には接着剤、糊、テープ等を使用しなければならず、貼り合わせに使用する接着剤、糊のはみ出しにより食品に接着剤が触れる恐れがあり食品衛生上問題があり、作業性も低下する。またテープを使用した場合も作業性が低下する問題があった。
【0006】
近年、世界的な関心が高まっている地球環境問題については、各国で様々な取り組みが進んでいる。国民生活に身近な環境問題の一つである廃棄物問題、とくに容器包装廃棄物について、消費者の分別排出、自治体の分別収集、事業者のリサイクル責任を明確にした「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(容器包装リサイクル法)」が1997年4月から本格施行され、循環型経済社会の構築に向けた動きが加速している。従来の、パン、おにぎり、菓子等の食品の包装体のほとんどが容器包装リサイクル法によりプラマークを表示しなければならないものであった。プラマークを表示することにより、特定事業者は、指定法人に委託料金を支払い、指定法人はこの委託費を用いて、あらかじめ登録された再商品化事業者の中から入札により全国の自治体の指定保管場所ごとに再商品化事業者を選定し、再商品化を委託している。このため今までの包装体は、費用の負担、環境への負担が大きいものとなっている。
【0007】
特許文献1では、包装紙の風合いによって高級感をもたせるために、内側に透明フィルム、外側に和紙調の風合いのある包装紙が記載されているが、これは上述のように密閉性の高いもので、内部の水蒸気残留の問題があった。
【0008】
特許文献2では、高級感のある紙の風合いを持たせ、かつ適度な通気性を確保するために、通気性を持たせたフィルムと紙の風合いを持つ基材とを貼り合わせたパン包装袋が記載されているが、内層はラミネートフィルムであるがゆえ、外装もフィルムを使用すると「プラマーク」表示の義務があり、外装に紙を使用すると、構成差が大きく、温度・湿度変化によりカールが発生する問題があった。
【特許文献1】特開2004−262536号公報
【特許文献2】特開2002−370320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記現状に鑑み、容器包装リサイクル法での紙マークを表示することができ、紙の風合いにより高級感を演出し購買意欲をかき立てることが可能な食品包装用シートであって、パン等の食品から発生する水分を外部に排出可能な通気性を有しつつ、袋体内に一定程度の水分を残留させて、製造直後の食品表面のサクサク感と、食品内部のシットリ感とを維持し食品の新鮮さを保つと共に、一般のフィルムと同様に製袋機によって簡便かつ高速に食品を包装することが可能な、異物混入のない食品包装用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、少なくとも天然繊維と合成繊維として多分岐ポリエチレン繊維とを含有する外層と、少なくとも天然繊維と合成繊維として多分岐ポリエチレン繊維とを含有しヒートシール性を有する内層とを備えた、少なくとも2層以上の複層構成のヒートシール可能な食品包装用シートであって、シート全体において、全繊維に対して多分岐ポリエチレン繊維が占める割合は、30重量%以上50重量%未満であり、かつ合成繊維が占める割合は50重量%未満であり、内層において天然繊維と合成繊維の合計量に対して合成繊維が占める割合(重量%)から、外層において天然繊維と合成繊維の合計量に対して合成繊維が占める割合(重量%)を差し引いた値は、0以上50以下である食品包装用シートに関する。
【0011】
本発明において、前記多分岐ポリエチレン繊維は、高密度多分岐ポリエチレン繊維であることが好ましく、前記内層は、絶乾の原料繊維1tに対して有効成分基準で0.4〜2kgのアルキルケテンダイマーを含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の食品包装用シートは、容器包装リサイクル法での紙マークを表示することができ、紙の風合いにより高級感を演出し購買意欲をかき立てることが可能である。それによって食品を包装した際に、当該食品から生じる水分を外部に排出可能な通気性を有しつつ、袋体内に一定程度の水分を残留させるので、製造直後の食品表面のサクサク感と、食品内部のシットリ感とを維持し、食品の新鮮さを保つことができる。特に本発明の食品包装用シートをパンの包装に用いると、パンの焼きたて時に発生する水蒸気を適度に逃がし、袋内の結露を防止する一方、必要以上に乾燥することなくパンの食感の低下をなくして、焼きたて時のように表皮がカリッとして歯ごたえがあり、中はふっくらして柔らかい食感が保つことができる。しかし本発明の食品包装用シートはパンの包装用に限定されることなく、一定の水分が残留維持するようコントロールすることにより変質を防止でき、且つ長期間保存を必要とするパン以外の食品の包装にも用いることができる。
【0013】
また、本発明の食品包装用シートは、簡便に製造することができるとともに、シートのカール発生の問題も少なく、そのシート外観も良好である。さらには、内層が良好なヒートシール性を有しているので、一般のフィルムと同様に製袋機によって簡便かつ高速に食品を包装することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の食品包装用シートは、2層以上、好ましくは2層からなる複層構成を有するものであり、内層と外層が積層されて構成されるものである。ここで内層とは、当該シートを用いて食品包装袋とした場合に内部に位置する層をいい、外層とは、食品包装袋とした場合の外面を構成する層をいう。内層を構成する基材シートは、被包装物である食品に接触し得るものであることから、食品衛生上安全なものであることが好ましい。
【0015】
本発明の食品包装用シートにおける内層と外層は、いずれも天然繊維と合成繊維として多分岐ポリエチレン繊維とを含有するものである。
【0016】
前記天然繊維としては、食品衛生上安全なものであれば特に限定されないが、例えば、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)等の化学パルプ;サーモメカニカルパルプ(TMP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)等の機械パルプ;不織布繊維、レーヨン繊維;ケナフ、バガス等の非木材パルプが挙げられる。これらのパルプや繊維のうち、NBKP、NUKP等のNKPが、パルプ強度が強く、多分岐ポリエチレン繊維との絡みも良好であるため好ましい。
【0017】
本発明では、前記天然繊維と共に使用する合成繊維として多分岐ポリエチレン繊維を使用する。当該多分岐ポリエチレン繊維とは、各繊維の末端が4ヶ所以上存在するフィブリル化形状のポリエチレン繊維のことをいう。ポリエチレン繊維以外の合成繊維としては、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維等も使用可能であるが、本発明では主にポリエチレン繊維を使用する。ポリプロピレン繊維は比重が0.910と低いため抄造時に浮種となり、比重が1〜1.3である天然繊維との均一な分散ができず、ムラができ、紙の見栄えも悪く、抄紙後ソフトカレンダー、スーパーカレンダーにより合成繊維を溶融する際、通気性のコントロールが困難になる。またポリプロピレンの融点は165℃であり、ポリエチレンの融点は135℃であるが、パン包装機のヒートシール温度は一般に140℃〜160℃であり、近年は包装スピードを上げるため低融点ヒートシール性の包装紙が求められている中、融点の高いポリプロピレン繊維を使用した包装紙は好ましくない。
【0018】
さらに、ポリエチレン繊維のなかでも、フィブリル化形状の繊維、すなわち多分岐繊維を使用する。フィブリル化形状であると、ポリエチレン繊維が天然繊維と絡みやすくなることによりシート強度が向上し、また多分岐であるために繊維の比表面積が大きく、ヒートシール時に溶融しやすくなり密閉性を向上させることができる。フィブリル化形状でないと、パルプ繊維に絡まないためシート強度が弱く、ポリエチレン繊維が剥がれ落ち、包装に適したシート化が出来ない。
【0019】
多分岐ポリエチレン繊維としては、比重が0.95未満の低密度又は中密度多分岐ポリエチレン繊維や、比重が0.95以上の高密度多分岐ポリエチレン繊維があるが、比重が大きい繊維のほうが抄造時に浮種ができにくく、天然繊維と均一に分散しやすく、シートにムラができにくいことから、高密度多分岐ポリエチレン繊維が好ましい。
【0020】
具体的な商品としては、三井化学社製のSWPポリエチレン繊維があり、そのうちEタイプは高密度多分岐ポリエチレン樹脂(比重0.965)、ULタイプは中密度多分岐ポリエチレン繊維(比重0.935)、NLタイプは低密度多分岐ポリエチレン樹脂(比重0.930)、AUタイプは低密度多分岐ポリエチレン樹脂(比重0.925)である。
【0021】
天然繊維及び合成繊維について原料全体のパルプフリーネスは300〜600ccに規定することが好ましい。300cc未満であると濾水性が悪くなり抄造スピードが著しく低下する。また600ccを超えると、シートの通気性が大きすぎて包装シートに適さない場合がある。より好ましいフリーネスの範囲は450〜550ccである。
【0022】
本発明の食品包装用シートにおいて、内層は、ヒートシール性を有するものである。これによって内層同士を対向させて加熱下で加圧(ヒートシール)することにより、接着剤等を使用せずともシート間の接着が可能になるので、製袋機によって容易に製袋ができるようになる。なお、「ヒートシール性を有する」とは、内層の繊維原料の総量に対する合成繊維の配合率が30重量%以上のものをいう。
【0023】
本発明の食品包装用シートにおいて、シート全体において、全繊維に対して多分岐ポリエチレン繊維が占める割合は、30重量%以上50重量%未満である。30重量%未満であると水分の放出が大きく、メロンパン等においてシットリ感がなくなる。50重量%以上であると、容器包装リサイクル法での紙マークを表示することができなくなり、プラマークを表示しなければならなくなる。また、シート全体において、全繊維に対して合成繊維の占める割合が50重量%以上であっても同様である。好ましくは35〜45重量%である。
【0024】
また、内層において天然繊維と合成繊維の合計量に対して合成繊維が占める割合(重量%)から、外層において天然繊維と合成繊維の合計量に対して合成繊維が占める割合(重量%)を差し引いた値は、0以上50以下である。50を超えると外層と内層の構成差が大きいために、積層シートにカールが発生して、シートの使用時に困難が生じる。一方、0未満となると、包装機でヒートシールをして製袋する際に、外層中の多分岐ポリエチレン繊維が包装機のシールバーに融着し、包装トラブルが発生する可能性が高い。カール抑制の観点から20以下が好ましい。
【0025】
以上の2つの関係を満足するように、内層と外層における天然繊維と多分岐ポリエチレン繊維を含めた合成繊維の配合比を決定する。
【0026】
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲内で、多分岐ポリエチレン繊維以外の合成繊維や、紙に添加しうる一般的な薬品、例えば湿潤紙力剤や、サイズ剤等、を添加することができる。
【0027】
前記湿潤紙力剤は天然繊維間の結合を強化し、紙の強度を向上させる成分である。湿潤紙力剤としては特に限定されないが、例えば、メラミン−ホルマリン樹脂、尿素−ホルマリン(ホルムアルデヒド)樹脂、ポリアミドエピクロロヒドリン等が挙げられる。なかでも、ポリアミドエピクロロヒドリンは天然繊維間の結合のみでなく、天然繊維−合成繊維間の結合も強化できるため、特に好ましい。ポリアミドエピクロロヒドリンの中でも特に、PRTR法の特定化学物質である低分子有機塩素化合物の混入量が1重量%未満のものが好ましい。このような製品としては星光PMC社製のWS4024が挙げられる。
【0028】
湿潤紙力剤の添加量は絶乾の原料繊維1tに対して、有効成分基準で1.2〜7.5kgが好ましく、特に2.5〜6.5kgが好ましい。1.2kg未満では添加の効果がなく、7.5kgを超えると過剰添加となり、系内での汚れが異物として抄き込まれるため、食品包装体として好ましくない。
【0029】
前記サイズ剤としては特に限定されないが、例えば、酸性サイズ剤(溶液ロジンサイズ剤、合成サイズ剤、酸性ロジンエマルションサイズ剤、弱酸性エマルションサイズ剤等)、中性サイズ剤(アルキルケテンダイマー(AKD)サイズ剤、アルケニル無水コハク酸(ASA)サイズ剤、中性ロジンエマルションサイズ剤、ポリマー系サイズ剤、溶液型サイズ剤等)等が挙げられる。食品包装用シートは中性紙であるため、pH7付近でサイズ効果の出易い中性サイズ剤が好ましい。
【0030】
AKDサイズ剤の原料は動植物油であり、融点は40〜60℃である。製品がエマルションであるため、取り扱いが容易であり、ASAに比べ、加水分解が遅い特徴がある。エマルジョンタイプはパルプへの定着が均一であり、発泡性が少ない。
【0031】
ASAサイズ剤の原料は、石油化学系炭化水素であり、融点は0℃以下(室温で油状)である。ASAは、乳化性を向上させるために界面活性剤を混合しているものであってもよい。この場合のASA乳化液の適正な粒度は0.4〜1.5μmである。粒子径が小さいと加水分解が早く、粒子径が大きいと加水分解速度が遅いが、抄紙系内および紙中におけるASA分布が不均一になりサイズ性能が劣る傾向がある。
【0032】
中性ロジンエマルジョンサイズ剤の原料は、松科の植物に含まれる松脂(マツヤニ)であり、植物中で生合成される樹脂酸である。中性ロジンエマルジョンサイズ剤は、高温下でロジンが溶出し、サイズ効果の低下がみられる。
【0033】
非ヒートシール層である外層には、耐水性や印刷適性の向上のため、アルキルケテンダイマー、又はアルケニル無水コハク酸(ASA)を添加することが好ましい。一方、ヒートシール層である内層に対しては、ドライヤー、カレンダーロールへの融着によるポリエチレン繊維の剥がれ、シートの見栄えの悪化、シート上の穴開き等を抑制するために、アルキルケテンダイマーを添加することが好ましい。内層にアルキルケテンダイマーを添加する場合には、その添加量は内層を構成する絶乾の原料繊維1tに対して、有効成分基準で0.4〜2kgが好ましく、特に0.6〜1.4kgが好ましい。0.4kg未満では当該成分を添加する効果があまりなく、2kgを超えると過剰添加となり、系内での汚れが異物として抄き込まれるので、食品包装用途であまり好ましくない。
【0034】
本発明の食品包装用シートの製造方法としては、長網、短網、円網等の公知の抄紙機により外層、内層をそれぞれ抄造し、両層を積層して抄き合わせを行った後、弾性ロールと130〜150℃程度の金属ロールとの組み合わせからなるソフトカレンダー、スーパーカレンダー等により合成繊維を溶融(熱加工)すればよい。最後に熱加工することで、適度な通気性が得られるとともに、合成繊維が部分的に適度にフィルム化されるので、通常のパルプよりも優れた耐水性、耐油性、耐薬品(酸、アルカリ)性を付与することができる。
【0035】
外層と内層は同程度の米坪であることがカール適性に優れるため好ましく、抄き合わせ後の合計米坪を20〜100g/m程度とすればよい。
【0036】
本発明の食品包装用シートは、三角形、四角形、菱形、円形等といった任意の形状に切断し、内層を内側にして食品を挟み込んだ後、開放辺をヒートシールすることによって内層同士を融着して食品を包装することができる。また、本発明の食品包装用シートは、任意の形状に切断し、それを2枚重ねて、食品投入口を残して周囲をヒートシールすることにより、食品包装袋とすることができる。この食品包装袋によって食品を包装するには、前記食品投入口から食品を投入し、当該食品投入口をヒートシールすればよい。
【実施例】
【0037】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1〜18及び比較例1〜25
各実施例及び比較例では原料として以下のものを使用した。
(1)天然繊維
針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、カナディアンフリーネス500cc
(2)合成繊維
「H」:高密度多分岐ポリエチレン繊維(三井化学社製、品番:SWP E−400、平均繊維長:0.9mm、カナディアンフリーネス:500±10cc)
「M」(実施例10のみ):中密度多分岐ポリエチレン繊維(三井化学社製、品番:SWP UL−410)
「L」(実施例11のみ):低密度多分岐ポリエチレン繊維(三井化学社製、品番:SWP AU−690)
「N」(比較例24のみ):多分岐でないポリエチレン繊維(三井化学社製、品番:E380)
「P」(比較例25のみ):多分岐ポリプロピレン繊維(三井化学社製、品番:SWP Y−600)
(3)湿潤紙力剤
ポリアミドエピクロロヒドリン系湿潤紙力剤(星光PMC社製、品番:WS4024(25%品))
(4)サイズ剤
無印:アルキルケテンダイマー(AKD)サイズ剤(星光PMC社製、AD1602(20%品))
「*」(実施例12のみ):中性ロジンエマルジョンサイズ剤(星光PMC社製、品番:CC−1404)
「**」(実施例13のみ):アルケニル無水コハク酸(ASA)サイズ剤(星光PMC社製、品番:AS−1532)
繊維原料として上記の天然繊維及び合成繊維を使用し、合成繊維の配合比のみを表1及び表2に記載したが、合計で100重量%となるような配合比で両繊維を使用した。さらに、上記の湿潤紙力剤を、絶乾の繊維原料1tに対して有効成分基準で5kg使用した。さらに内層のみにおいて、上記のサイズ剤を、絶乾の繊維原料1tに対して有効成分基準で、表1及び2記載の量(kg)使用した。
【0038】
内層は短網抄紙機により、外層は円網抄紙機により、それぞれ乾燥重量で米坪15g/mとなるよう抄造をした後、積層して抄き合わせを行い、合計の米坪が30g/mの積層シートを得た。さらにマシンカレンダー(金属ロール温度:140℃)処理により、合成繊維の溶融・熱加工を行った。
【0039】
なお表2中の従来品としては、OPPフィルム(二村化学社製、品番:FOH#25)とレーヨン紙(9g/m)とをドライラミネートにより接着したものを使用した。
【0040】
以下の評価を行った結果を表1及び表2に示す。
[1]分散時繊維浮種:パルプを水中で分散した際、天然繊維と合成繊維の分散性、合成繊維の浮き、塊の発生、及びそれらによるシートの地合への影響を評価した。
A:天然繊維と合成繊維が均一に分散し、系内にも汚れが発生せず、シートの地合も良好である。
B:微量の合成繊維の浮種が発生したが、シートの地合に影響を与えない。
C:多少の合成繊維の浮種が発生したが、シートの地合に影響を与えない。
D:合成繊維が浮き、分散しないため、地合が悪く、要求品質を満たさない。
[2]抄造時系内汚れ:抄造時の系内での汚れの発生、及びそれによるシートへの影響を評価した。
A:系内に汚れが発生せず、シートに汚れが付着しない。
B:系内に微量の汚れが発生したが、シートに影響を与えない。
C:系内に多少の汚れが発生したが、シートに影響を与えない。
[3]熱加工操業性:抄き合わせ工程後に行う熱加工時の操業性を評価した。
A:カレンダー、ソフトカレンダーに合成繊維がとられることがない。
B:カレンダー、ソフトカレンダーに合成繊維が微量にとられる傾向がみられるが、問題はない。
C:カレンダー、ソフトカレンダーに合成繊維が多少とられる傾向がみられるが、問題はない。
[4]紙マーク:積層シート全体の天然繊維の比率が50重量%以上であること。
◎:紙マーク表示可能
△:紙マーク表示可能であるが、プラマークも表示する必要がある。
×:紙マーク表示不可能
[5]カール:積層シートを温度23℃状態で、湿度を20%〜80%に変化させ、机上及び吊るした状態でカールの発生の有無を目視評価した。
◎:机上及び吊るした状態とも、カールは見られなかった。
〇:吊るした状態では若干カールしたが、机上ではカールが見られず、実用上問題はない。
×:机上及び吊るした状態とも、カールは見られた。
[6]メロンパンサクサク感:積層シートでメロンパンを包装してから3日後、メロンパン表面にサクサク感があるかを評価した。
◎:はっきりとサクサク感の歯応えがあった。
○:サクサク感は感じた。
×:サクサク感に欠けた。
[7]メロンパンシットリ感:上記サクサク感と同条件で、シットリ感を評価した。
◎:モチっとしており、はっきりとシットリ感があった。
・ :シットリ感は感じた。
×:パサついており、シットリ感は感じられなかった。
[8]ヒートシール性:シール温度160℃、圧力0.5kg/cmで内層同士をシール機によりヒートシールした際に評価を行った。
◎:問題なく内層同士がヒートシールできた。
〇:やや接着強度が弱いものの、意図せず剥がれることはなく、問題ないレベルである。
×:接着強度が弱く、意図しない剥がれが発生した。
[9]包装適性:製袋機のシールバーの汚れを評価した。
◎:製袋時、シールバーの汚れがなく製袋作業に問題がなかった。
○:製袋時、多少シールバーが汚れたが、製袋作業に支障はなかった。
×:製袋時、シールバーの汚れがひどく、製袋作業に支障をきたした。
[10]食品包装シート外観:食品包装用シートの外観を目視で評価した。
A:食品包装シートの外観に繊維トラレや薬品の汚れ跡などがなかった。
B:食品包装シートの外観に微量の繊維トラレや薬品粕がみられたが、問題のないレベルであった。
C:食品包装シートの外観に多少の繊維トラレや薬品粕がみられたが、製品化できるレベルであった。
D:食品包装シートの外観に繊維とられや薬品の汚れ跡が目立ち、製品化できないレベルであった。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の食品包装用シートにより、パン、おにぎり、菓子等の食品を収納し、包装することのできる食品包装袋が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも天然繊維と合成繊維として多分岐ポリエチレン繊維とを含有する外層と、
少なくとも天然繊維と合成繊維として多分岐ポリエチレン繊維とを含有しヒートシール性を有する内層とを備えた、少なくとも2層以上の複層構成のヒートシール可能な食品包装用シートであって、
シート全体において、全繊維に対して多分岐ポリエチレン繊維が占める割合は、30重量%以上50重量%未満であり、かつ合成繊維が占める割合は50重量%未満であり、
内層において天然繊維と合成繊維の合計量に対して合成繊維が占める割合(重量%)から、外層において天然繊維と合成繊維の合計量に対して合成繊維が占める割合(重量%)を差し引いた値は、0以上50以下である食品包装用シート。
【請求項2】
前記多分岐ポリエチレン繊維が、高密度多分岐ポリエチレン繊維である請求項1記載の食品包装用シート。
【請求項3】
前記内層が、絶乾の原料繊維1tに対して有効成分基準で0.4〜2kgのアルキルケテンダイマーを含有する請求項1又は2記載の食品包装用シート。

【公開番号】特開2008−229871(P2008−229871A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−68302(P2007−68302)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】