説明

食品安定剤とその製法およびそれを用いた飲食物

【課題】
酢酸カルシウム含有物特有の苦み等を軽減し、食品としての風味を生かす食品安定剤を提供する。
【解決手段】
酢酸カルシウムを食品の安定剤として利用をはかるため、調味料として食味の良好な醸造酢に適量を溶解させることで食味を改良し、これを希釈液としてアミノ酸、ビタミン、増粘剤、酸化防止剤、酵素、乳化剤、糖類、有機酸塩、保存剤の1種または2種以上を加え、食品の味、鮮度、香気、色調、保水、保存性を補助する安定剤とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明を利用するに際して、食品の成分中に栄養素をはじめ品質を改良する添加物を的確に分散浸透させ、食味をはじめ、物性、保存性等の効果を維持し食品の品質を安定させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は先に、酢酸、醸造酢に天然物由来のミネラルを混和した食品改良剤を提案した。
【特許文献1】特願2005−123563
【特許文献2】特許第3694091号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
食品資源を有効に活用するための技術は常に求められており、より安全性に優れた食品を安定して消費者に提供することの社会的意義は大きい。
【0004】
食品の品質を向上する技術として有機酸塩は広く利用されているが、その中でも酢酸塩では酢酸ナトリウムの利用が多く、酢酸カルシウムについては少ない。酢酸カルシウムを食品に使用した場合、食味において苦味を伴う刺激があり、臭気も好ましくない。したがって、より安全な食品安定剤を提供することには大きなニーズがある。
【0005】
本発明はこれらの欠点を解消してなされたものであり、その第1の目的は食品の風味を殺さずかつ良好な食品安定機能を提供することとなる。
【発明の効果】
【0006】
これらの欠点を解消してなされたものであり、その第1の目的は食品の風味を殺さずかつ良好な食品安定機能を提供するこの発明は醸造酢に一定濃度の酢酸カルシウムと物質の混和物を入れることにより食品の安定効果を発揮させる。かつ食品の味、香気および色調を保持し、鮮度、保水、保存性の高い食品安定剤である。
【0007】
上記のように構成された請求項1の発明を一定量加えることによって食品の風味を損なわない飲食物を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決し、前記目的を達成するためになされたもので、第1の観点の発明の食品安定剤は、中和滴定酸度4.5%の醸造酢に酢酸カルシウム
を19%から23%の濃度で溶解し、これを希釈液としてアミノ酸、タンパク質、ビタミン、増粘剤、酸化防止剤、酵素、乳化剤、糖類、有機酸塩、保存剤、食塩および糖類を1種または2種以上を加えたものである。
【0009】
第2の観点の発明の飲食物は、中和滴定酸度4.5%の醸造酢に酢酸カルシウムを19%から23%の濃度で溶解し、これを希釈液としてアミノ酸、タンパク質、ビタミン、増粘剤、酸化防止剤、酵素、乳化剤、糖類、有機酸塩、保存剤、食塩および糖類を1種または2種以上を加えた食品安定剤。を0.3%から3%を加えたものである。
【0010】
第3の観点の発明の食品安定剤の製造方法は、中和滴定酸度4.5%の醸造酢に酢酸カルシウムを19%から23%の濃度で溶解して希釈液を生成し、当該生成した希釈液に、アミノ酸、タンパク質、ビタミン、増粘剤、酸化防止剤、酵素、乳化剤、糖類、有機酸塩、保存剤、食塩および糖類を1種または2種以上を加えて食品安定剤を製造する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係わる食品安定剤について説明する。
【実施例1】
【0012】
アルコールを原料とする中和滴定酸度4.5%の醸造酢に、一水和酢酸カルシウムを17%から25%まで1%ごとに10区分用意し、これを混合溶解して試料とした。
この醸造酢のpHは2.4であり、各希釈液のpHは表1に示す。
各希釈液の濃度の差によるpH緩衝能を試験し、これを比較することで安定剤としての最適混合濃度を得ることができる。
【0013】
希釈液では溶解性を配慮して酢酸カルシウム一水和物を試料としたが無水和物でもよい。
醸造酢の酸度は、日本農林規格(JAS)により酸度4.3%以上とされ、市販品の大半は酸度4.5%である。またその種類もアルコール酢のほかに米酢、果実酢、穀物酢とあるがいずれの酢を用いてもよい。
比較例と実施例での各試料の配合の比率は特に記述する以外はすべて重量比とした。
希釈液試料は混和量単位に区分し1から10までとした。
各試料をpH7.0の水に対して0.1%から0.5%まで添加して、pHの変化を計測し緩衝能を試験した。



【0014】
[表1]

【0015】
各試料を添加するのに対応して水のpHも変化をするが、試料5が最も強い酸性度を示し緩衝能が最大であることが確認できた。また、9,10では溶質の一部が析出、沈殿が生じpHが上昇した。
【実施例2】
【0016】
希釈液の保水効果について試験をした。希釈液番に乳化剤のシュガーエステル2%を加えた試験液1Aから10Aを用意した。試験品には水分量を80%に調整したマッシュポテトを用意し、これに試験液各1%を加え計量し、温度36℃、約4分で換気の温蔵庫内に静置し4時間経過後の各試料を計量して蒸散水分量を計測し、その蒸散量から保水効果を比較し乳化の安定効果について試験をした。最初の重量100に対する各試料の水分量の比率を表2に示す。試験液5Aは試料番号5の記載と同一である。
【0017】
[表2]

【0018】
最小減量の5Aは保水量が最大であることが確認できた。
【実施例3】
【0019】
希釈液にアミノ酸を併用し抗菌効果について試験をした。希釈液にグリシンを各10%添加し改良剤1Bから10Bとした。試験材料として農産物で土壌菌の存在が推定される生そばを用意し、試験液を生そばに対して各1%添加しアミノ酸との相乗による安定効果について試験をした。初発生菌数は2X10/1gであった。また対照品はグリシンのみを0.1%を添加した。試験は15℃で2日間保存し保存性の指標として生菌数を計測しこの結果を表3に示す。上段は試験液区分、下段は菌数の対数である。
【0020】
[表3]

【0021】
試験液5Bは7X10で3Bから7Bまでより有効である結果であった。また対照品
は4X10であった。またこれらを茹でて7名にて試食し感応試験をしたが、内6名が
改良材Bを用いた生そばの食味は対照品より良好であると表明した。この結果、改良剤5
Bは抗菌効果が最大であることから、保存性と併せて食味においても有効であることが確
認できた。
【0022】
なお、タンパク質の小麦グルテンを添加した場合でも同様の効果を得られた。
【実施例4】
【0023】
ビタミンCの太陽光による酸化試験により希釈液の安定性について試験をした。三角フラスコを5個用意しこれに水100mlを入れ結晶ビタミンCを200mg溶解させ、これに希釈液を各0.3%添加して試験区1Cから10Cとした。また別に希釈液を無添加の対照を用意した。
【0024】
これらを直射日光下の屋外に放置し2日間経過後のビタミンCの残存量を簡易ビタミンC計にて計測した。
【0025】
[表4]

【0026】
対照は12mgであり、試験5Cは31mgであり3C,4C,6C,7Cのいずれも効果はあるが特に5Cは酸化防止に有効であることを確認した。
【実施例5】
【0027】
パンの品質向上に利用されている酵素のアミラーゼを用いて希釈液酵素との相乗効果について試験をした。各希釈液100mlにパパイア由来のアミラーゼ製剤0.2gを20gのソルビトールに溶解して加えた改良剤1Eから10Eまでを試験液とし、パン生地のドウ1.1kgを11個に均一に分割し、内1個を対照とし、10個に試験液を各1gを添加して混練し、直径4cm高さ11cmの型に収納しスチーム器にて15分間蒸した後その容積を計測し比較した。
【0028】
[表5]

【0029】
対照品を100とした容積比率は、試験液5Eは107であった。各試験液とも効果は認められるが5Eの容積比は最も大きい結果であった。この結果酵素の活性を維持しパンの容積を増加させる効果があると確認できた。
【実施例6】
【0030】
希釈液が乳化安定についての効果を試験するため卵白を材料としたホイップクリームを用意した。希釈液に同量の増粘剤カラギーナンを加えて1Gから10Gまでの試験液とし、ホイップクリームを均等に10分割したものをメスシリンダーに注入した。これにそれぞれ試験液を1%相当添加し試験品とした。
別にカラギーナン1%のみの対照品を用意した。
【0031】
作成時の容積を100として室温下にて3時間経過後の容積を計測し希釈液と増粘剤との相乗効果を試験しこれを表6に記載した。
【0032】
[表6]

【0033】
5Gは92であり、対照品は81であり約13%の改良があった。この結果、改良剤5Gは乳化の安定に有効であることが確認できた。
【0034】
なお、2種類以上のアミノ酸、タンパク質、ビタミン、増粘剤、酸化防止剤、酵素、乳化剤、糖類、有機酸塩、保存剤、食塩、糖類を組み合わせたときも同様の食品安定効果を発揮した。
【0035】
上述した実施例により得られた食品安定剤を一定量加えたクッキーを用意した。添加し
た食品安定剤の濃度をそれぞれ0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、2.
8%、2.9%、3.0%、3.1%、3.2%ずつ混和した食品を12人の被験者に味
わってもらった。クッキーには食味改良の製菓用油脂と大豆レシチンを配合し、安定剤と
の相乗効果が与える食味について被験者による感応実験の結果を表7に示す。
なお、良好と答えた被験者の数が半数以上の場合は+とし、半数の場合は±とし、半数以
下の場合はマイナスとした。
【0036】
[表7]

【0037】
表7からわかるように0.3%から3.0%の添加品について良好であり0.2%以下と3.1%以上は評価が低くなった。この結果、添加量は0.3%から3.0%の範囲が
適していると確認できた。
【実施例7】
【0038】
上記過程により得られた食品安定剤を一定量加えた飲食物の2日後の細菌数を測定したの結果を表8に示す。
キャベツの浅漬を作り開放容器に収納し、試験液を0.1%から0.5%
と2.8%から3.2%までを重量比をもって添加し25℃にて2日間保存してこれの
大腸菌群の消長について試験した。浅漬の漬け汁を各1mlを採取し培地に接種し培養
試験は酵素発色法による発色の有無により、大腸菌群が陰性は−、陽性は+で表示をした。
【0039】
[表8]

上段は試験液の添加量で、下段は大腸菌群の培養結果を表示した。
【0040】
表8からわかるように0.2%以下および3.1%以上では効果がなく、0.3%から
3.0%までが有効範囲であり試験液の添加量の範囲をこれにより定めた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
中和滴定酸度4.5%の醸造酢に酢酸カルシウムを19%から23%の濃度で溶解し、これを希釈液としてアミノ酸、タンパク質、ビタミン、増粘剤、酸化防止剤、酵素、乳化剤、糖類、有機酸塩、保存剤、食塩および糖類を1種または2種以上を加えた食品安定剤。
【請求項2】
中和滴定酸度4.5%の醸造酢に酢酸カルシウムを19%から23%の濃度で溶解し、これを希釈液としてアミノ酸、タンパク質、ビタミン、増粘剤、酸化防止剤、酵素、乳化剤、糖類、有機酸塩、保存剤、食塩および糖類を1種または2種以上を加えた食品安定剤。を0.3%から3%を加えた飲食物。
【請求項3】
中和滴定酸度4.5%の醸造酢に酢酸カルシウムを19%から23%の濃度で溶解して希釈液を生成し、
当該生成した希釈液に、アミノ酸、タンパク質、ビタミン、増粘剤、酸化防止剤、酵素、乳化剤、糖類、有機酸塩、保存剤、食塩および糖類を1種または2種以上を加えて食品安定剤を製造する
食品安定剤製造方法。











【公開番号】特開2008−263799(P2008−263799A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107658(P2007−107658)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(000129150)株式会社カランテ (5)
【Fターム(参考)】