説明

食品生地の分割装置

【課題】本発明は、餅生地などの粘弾性を有する食品生地から餅生地片などの食品生地片を分割する分割装置において、分割装置への食品生地片の粘着が抑制できる食品生地の分割装置を提供することを目的とする。
【解決手段】食品生地供給装置から圧送される食品生地を押し出す複数の吐出口が側壁に備えられた有底筒と、前記吐出口から押し出された食品生地を複数の食品生地片に分割するためのカッタ刃を有し前記有底筒に外嵌され往復動するカッタスリーブを備えた食品生地の分割装置において、前記吐出口から押し出される食品生地に粘着防止剤を供給する粘着防止剤供給機構を備えた食品生地の分割装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、餅生地などの食品生地の分割装置、さらに詳しくは、有底筒の側壁に形成された複数の吐出口から押し出される食品生地を、前記有底筒の側壁を往復動するカッタスリーブで切断する食品生地の分割装置に関する。
【背景技術】
【0002】
白玉ぜんざいなどの餅入り食品は、白玉餅などの餅類と餡類を組合せ、それらをプラスチック製の容器に収容した態様で甘味処やスーパー等の店舗で提供されている。前記白玉ぜんざいは、容器に餡類を収容した後、前記餡類の中に直径1〜2cm程度の白玉餅を複数個入れることにより餡類の中に白玉餅の一部が露出するよう埋没させて製造されており、特に甘党には食指を動かす構成である。
【0003】
しかしながら、餡類に複数個の白玉餅を供給し埋没させる作業は手作業によることが多く煩雑な作業であり、工業的に大量生産する場合には生産性が良くないという問題があった。
【0004】
従来の食品生地の分割装置として、食品生地供給装置から圧送される食品生地(ドーナツ生地)を有底筒の側壁に形成された複数の押し出し口から押し出し、押し出された食品生地を前記有底筒の外周部(側壁)を往復動する切断部材としてのカッタスリーブで切断することにより複数の食品生地片が同時に分割される(例えば、特許文献1)。
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に開示された食品生地分割装置では、餅生地などの粘弾性を有する食品生地を分割する際に、分割された餅生地片が分割装置に粘着するという問題がある。そして、分割装置の下方に容器を配設し、該容器内に餅生地片を落下収容させる場合には、容器に所要数の餅生地片が収容されない、あるいは、容器に対する餅生地片の落下位置が乱れるという問題がある。
【0006】
また、分割装置に食品生地が粘着する場合にアルコール、油や水などの液状の粘着防止剤、あるいは、流動性のある半固形状の食用油脂などを所要箇所に塗布して粘着を防止する手段が用いられている。しかしながら、粘着防止剤を収容する容器に連通したノズルから粘着防止剤を供給(噴霧など)する場合には、例えばコンプレッサから圧縮空気を供給する必要がある。しかしながら、コンプレッサなどの電動機付き圧力発生機を用いると装置全体が大型化したり、電力を消費するなど経費がかかるという問題がある。
【特許文献1】実公平1−9426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、餅生地などの粘弾性を有する食品生地から餅生地片などの食品生地片を分割する分割装置において、分割装置への食品生地片の粘着が抑制できる食品生地の分割装置を提供することを目的とする。
【0008】
さらに、容器内に食品生地片を落下収容させる場合には、食品生地片の供給不足や配置の乱れのない安定した分割作業ができる食品生地の分割装置を提供することを目的とする。
【0009】
また、コンプレッサなどの電動機付き圧力発生機を用いることなく前記吐出口から押し出される食品生地に粘着防止剤を供給できる食品生地の分割装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は前述のごとき問題に鑑みてなされたもので、請求項1に係る発明は、食品生地供給装置から圧送される食品生地を押し出す複数の吐出口が側壁に備えられた有底筒と、前記吐出口から押し出された食品生地を複数の食品生地片に分割するためのカッタ刃を有し前記有底筒に外嵌され往復動するカッタスリーブを備えた食品生地の分割装置において、前記吐出口から押し出される食品生地に粘着防止剤を供給する粘着防止剤供給機構を備え、該粘着防止剤供給機構は、粘着防止剤を貯留する粘着防止剤用容器と前記有底筒の側壁と前記カッタスリーブの内壁に囲繞され形成される粘着防止剤収容部とを連通するように備え、前記粘着防止剤収容部の容積が前記有底筒と前記カッタスリーブとを相対的に往復動することにより拡大縮小可能に備えられたことを特徴とする食品生地の分割装置である。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載された食品生地の分割装置において、前記粘着防止剤用容器と前記粘着防止剤収容部との間に前記粘着防止剤用容器側から前記粘着防止剤収容部側へのみ粘着防止剤を通過させる逆止め弁を配管し、前記粘着防止剤収容部の容積が拡大する際には、前記粘着剤用容器から粘着防止剤を前記粘着防止剤収容部に吸引して収容し、前記粘着防止剤収容部の容積が縮小する際には、前記粘着防止剤収容部に収容された粘着防止剤を前記有底筒と前記カッタスリーブのカッタ刃の間から排出することを特徴とした食品生地の分割装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の食品生地の分割装置によれば、従来のごとく食品生地供給装置から圧送される食品生地を押し出す複数の吐出口が側壁に備えられた有底筒と、前記吐出口から押し出された食品生地を複数の食品生地片に分割するために前記有底筒の外周部(側壁)を往復動するカッタスリーブを備えるだけでなく、有底筒とカッタスリーブの相対的な往復動に連動して前記吐出口から押し出され食品生地に粘着防止剤を供給する粘着防止剤供給機構を備えることにより分割装置への食品生地片の粘着が抑制できる。
【0013】
また、有底筒とカッタスリーブとが相対的に往復動する毎に、粘着防止剤を前記吐出口から押し出され食品生地の切断部位に供給することが可能となる。
【0014】
また、前記粘着防止剤供給機構には、有底筒の側壁とカッタスリーブの内壁とに囲繞される粘着防止剤収容部が形成され、該粘着防止剤収容部が有底筒とカッタスリーブの相対的な往復動に追従してその容積が拡大縮小するポンプ機構として構成されるため、空気圧などの流体圧を用いて粘着防止剤を噴霧するなどの必要がなく、コンプレッサなどの電動機付き圧力発生機が不要となるため、分割装置全体の小型化が可能となると共に、経費を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の第1の実施の形態に係る分割装置33を備えた餅入り食品製造装置1について図面を用いて説明する。図1は、分割装置33を備えた餅入り食品製造装置1を概略的に示した正面説明図である。図2は、分割装置33の説明図であり、(a)図は、(b)図におけるA−A断面矢視による上面断面図、(b)図は、(a)図におけるB−B断面矢視による正面断面図である。図3は、分割装置33の有底筒25から押し出された餅生地9が餅生地片17に分割される工程を概略的に示した断面による正面説明図である。
【0016】
本発明の第1の実施の形態に係る餅入り食品3は、容器39の底部に充填された餡57の中に粘弾性食品として複数個の餅生地片7をその一部が露出するよう埋没させている。なお、本発明における餅とは、粳米、餅米、粟、稗などを原材料として製造される団子、柏餅、白玉餅、ういろう、牛肥餅、大福生地などの餅類全般を示している。
【0017】
図1乃至図3を参照するに、餅入り食品製造装置1は、包餡機5を備えている。まず、一般的な包餡機5について説明する。包餡機5は、基台6の上部に内包材7を収容し重合ノズル部11に内包材7を供給する内包材供給部13と外皮材9を収容し重合ノズル部11に外皮材9を供給する外皮材供給部15を備えている。一般的な重合ノズル部11は、内包材7を外皮材9で被覆した棒状食品を押し出すものであり、内包材7の流路である内筒19と、該内筒19の外側に外皮材9の流路である外筒21を備えている。そして、前記内筒19の下端には、内包材7を押し出す内ノズルを着脱交換可能に螺合している。また、外筒21の下端には、前記内ノズルを囲むように外ノズルがねじ付きリング部材27により着脱交換可能に取り付けられている。
【0018】
前記重合ノズル部11の下方には、重合ノズル部11から連続して押し出される棒状食品を包被切断する切断装置が備えられている。前記切断装置は公知の機構のものであり、例えば本出願人が特許出願した特許第3009140号公報などに記載された実施形態に基づくものを使用することができる。前記切断装置は、昇降ケースの仮想の円周上に等間隔に配置された例えば6個の回動軸(垂直軸)に6個のシャッタ片を備え、該シャッタ片でシャッタ組立体を構成している。該シャッター組立体は、その中央に前記シャッタ片で囲繞された切断開口部が開閉可能に備えられいる。そして、前記切断開口部を閉動作することにより前記切断開口部を通過する前記棒状食品から饅頭などの食品を切断するものである。また、前記切断装置の昇降ケースは、基台の内部に備えられた上下機構(図示せず)に連動連結された支持フレーム38に着脱自在に取り付けられ、前記シャッタ組立体の開閉動作に同調して上下動するものである。
【0019】
本発明の第1の実施の形態に係る包餡機5は、食品生地供給装置としての外皮材供給部15に粘弾性食品生地としての餅生地9を収容し、内包材供給部13には何も収容しない。そして、重合ノズル部11の内筒19の下端には、前記内ノズルではなく栓部材23を螺着固定している。また、前記外筒21の下端には、前記栓部材23を囲むように有底筒25がねじ付きリング部材27により着脱交換可能に取り付けられている。
【0020】
分割装置33は、前記有底筒25、後述するカッタスリーブ機構81及び粘着防止剤供給装置91を備えている。前記有底筒25は、上側筒部25Uと、前記上側筒部25Uに交換可能に螺着固定された下側有底筒部25Lにより構成されている。前記上側筒部25Uは、前記リング部材27に係止されるフランジ部25Aと円筒状の上側壁25Cを備えた筒部材である。また、前記下側有底部25Lは、前記上側壁25Cより外径の大きな円筒状の下側壁25Eと底部25Tを備え、さらに前記下側壁25Eの下側部分には円形の吐出口25Gが複数備えられている。なお、吐出口25Gの形状は円形に限らず楕円形、ダルマ形、四角形などの多角形など所望の形状にすることが可能であり、これらの形状の変更により餅生地片17の形状が変化して外観的にも楽しむことができる。
【0021】
また、前記支持フレーム38には、前記切断装置の代わりにカッタスリーブ機構81が着脱自在に取り付けられ、前記支持フレーム38と共に上下動可能に備えられている。カッタスリーブ機構81は、前記有底筒25の側壁に外嵌されたカッタスリーブ83、及び該カッタスリーブ83を着脱可能に保持すると共に前記支持フレーム38に取り付けられるスリーブホルダ85を備えている。
【0022】
前記カッタスリーブ83は、上側外筒部83Uとその下側に下側外筒部としてのカッタ部83Lをボルト止めなどして一体的に備えられている。前記上側外筒部83Uの上下方向の略中央部分の側部には、前記スリーブホルダ85の図2における左右の板状の保持部85Aを挿嵌する溝部83Aが両側に備えられている。従って、前記重合ノズル部11、前記有底筒25及び前記カッタスリーブ85は、図1の紙面に垂直な方向、つまり図2(a)に示される紙面の上下方向に前記スリーブホルダ85から一体的に着脱することができる。
【0023】
前記上側外筒部83Uの内壁は下方を広くした段付きに形成され、該内壁の上部には、上内壁83Cが前記有底筒25の上側壁25Cに僅かな隙間を設けて遊嵌されている。そして、前記上内壁83Cの上下方向の略中央部分には、リング用溝83Bが刻設され、該リング用溝83BにOリング75が上側壁25Cに摺動可能に内装されている。また、前記上内壁83Cの下側には、前記上内壁83Cの内径より大きな内径を有する下内壁83Fが形成されている。さらに、前記上側外筒部83Uの上下方向の略中央部分の側部(前記溝部83Aに直交する位置)には、外側から下内壁83Fに貫通する給油口83Dに逆止め弁としての管継手77が螺合されている。
【0024】
前記カッタ部83Lの上部には、外周にリング用溝83Iが刻設され、該リング用溝83IにOリング79が装着された状態で前記上側外筒部83Uの下部に嵌挿されてシールされている。前記カッタ部83Lの下部には、環状のカッタ刃83Jが形成されている。また、前記カッタ部83Lの内壁は段付きに形成されており、その上部には、前記有底筒25の下側壁25Eの外径より大きく、かつ、前記上側外筒部83Uの下内壁83Fの内径と同じ内径を有する上内壁83Kを備えている。また、上内壁83Kの下側には、前記下側壁25Eの外径より僅かに大きな内径を有する下内壁83Eを備えている。
【0025】
前記カッタスリーブ83は、前記有底筒25に設けられた前記吐出口25Gの開口部分(生地の通路)を開閉するように上下動(往復動)し、複数の吐出口25Gから押し出される餅生地9を前記カッタ刃83Jで切断して複数の餅生地片17に分割する。なお、前記下側壁25Eと前記下内壁83Eとの僅かな隙間は、前記下内壁83Eと前記下側壁25Eの僅かな隙間に前記粘着防止剤Rを介在できると共に、前記有底筒25に設けられた前記吐出口25Gから押し出される餅生地9を前記カッタ刃83Jで切断できる程度の滑動状態になるように形成されている。
【0026】
また、前記粘着防止剤供給装置91には、前記有底筒25の側壁25C,25Eを含む側壁と前記カッタスリーブ83の内壁83C,83Kを含む内壁とに囲繞されて形成された粘着防止剤収容部93が備えられ、また、カッタスリーブ83に螺合された管継手77には、配管部材87を介して粘着防止剤Rとしての例えばアルコールが収容された粘着防止剤用容器89が連通されている。なお、前記管継手77は、前記粘着防止剤Rが粘着防止剤用容器89側からカッタスリーブ本体83側、つまり、粘着防止剤収容部93側にのみ流れる逆止め弁として配管されている。
【0027】
したがって、前記カッタスリーブ83の上昇に追従して前記粘着防止剤収容部93の容積が拡大する際には、前記粘着防止剤収容部93内が負圧状態になり前記粘着防止剤用容器89から前記粘着防止剤Rが吸引される。なお、前記有底筒25の下側壁25Eと前記カッタスリーブ83の下内壁83Eとの僅かな隙間に介在する前記粘着防止剤Rが前記隙間を封じるように作用するため、前記粘着防止剤収容部93が負圧状態になっても前記隙間から外気を吸引することはない。
【0028】
また、前記カッタスリーブ83の下降に追従して前記粘着防止剤収容部93の容積が縮小する際には、前記粘着防止剤Rは加圧され逆止め弁77の作用により前記粘着防止剤用容器89に戻ることはなく、前記有底筒25の下側壁25Eと前記カッタスリーブ83の下内壁83Eの隙間を通って前記カッタ刃83Jの先端部分より排出される。つまり、前記粘着防止剤収容部93は、前記粘着防止剤Rを吸引及び排出するポンプ機構として構成される。
【0029】
前記分割装置33の下方には、餅入り食品3を収容する容器39を搬送する搬送装置としての搬送コンベア41が備えられている。該搬送コンベア41は、複数のローラーに掛回された無端状のベルト43を備えており、前記容器39を所要の距離ずつ搬送するよう駆動と停止を繰り返して間欠的に搬送駆動するものである。
【0030】
前記包餡機5の上流側(図1において右側)には、前記容器39を所要のタイミングに応じて前記搬送コンベア41に供給する容器供給装置45を備えている。容器供給装置45は公知のものでよく、例えば本出願人が特許出願した特許第3563677号公報に記載された実施形態に基づくものを使用することができる。
【0031】
また、前記搬送コンベア41の上流端及び下流端の上方に餡、みたらし、ごまだれ、ホイップクリームやゼリー液などのフィリング材57を定量に吐出する吐出装置47,49を備えている。該吐出装置47,49は、公知の吐出装置でよく、例えば餡57などを収容するホッパー51の下方にギヤポンプ53を連接し、さらに、その下方にノズル55を備えたものである。
【0032】
次に、餅入り食品3を成形する工程について説明する。まず、容器供給装置45から容器39が搬送コンベア41に供給され吐出装置47のノズル55の下方において一時停止する。この間、ノズル55から餡57が所定量押し出され容器39内に充填される。その後、搬送コンベア41が容器39を所要の距離ずつ間欠的に搬送し、容器39は、重合ノズル部11に装着された分割装置33の下方に一時停止する。
【0033】
図3(a)に示された分割装置33は、カッタスリーブ83が最上昇した状態を示している。餅生地9は、外皮材供給部15より供給され重合ノズル部11の外筒21と内筒19との間の環状の通路を流下し、前記外筒21の下側に取り付けられた有底筒25の下側壁25Eに設けられた複数の吐出口25Gから放射状に押し出される。そして、所定時間が経過した後、前記スリーブホルダ85が降下してカッタスリーブ83を押し下げると、分割装置33の粘着防止剤収容部93の容積が縮小し、該粘着防止剤収容部93に収容されたアルコールRが有底筒25の下側壁25Eとカッタスリーブ83の下内壁83Eの僅かな隙間を通過してカッタ刃83Jの先端位置から排出される。
【0034】
カッタ刃83Jの先端位置から排出されるアルコールRは、有底筒25の露出した下側壁25Eをつたい、前記吐出口23Gから押し出された餅生地9の上方から流れ落ち、前記餅生地9に塗布される。さらに、カッタスリーブ83が前記吐出口25Gを上側から塞ぎ吐出口25Gの開口を狭めるよう降下し、前記カッタ刃83Jが前記餅生地9を切断する切断部位にアルコールRが供給される。そして、図3(b)に示されるようにカッタスリーブ83が最降下した際には、複数の餅生地片17が分割される。
【0035】
この状態から包餡機5の支持プレート38に取り付けられたスリーブホルダ85が上昇してカッタスリーブ83を押し上げると、前記粘着防止剤収容部93の容積が増大し、前記粘着防止剤用容器89からアルコールRが吸引される。
【0036】
分割された餅生地片17は、前記餅生地9に塗布されたアルコールRによりカッタ刃83Jや有底筒25の底面に粘着することなく、下方に待機していた容器39の内側に落下し、容器39内において先に充填された餡57の上層として重ねられる。図3(b)に示された容器39内に点線で示された餅生地片17は、円周方向に離間してほぼ等間隔に配設され、餡9から露出した態様となっている。
【0037】
分割され落下する食品生地片17の落下位置は、前記カッタスリーブ83の下降速度により変化する。つまり、前記カッタスリーブ83の下降速度を制御することにより食品生地片17の落下位置を調節することが可能である。例えば、カッタスリーブ83の下降速度が相対的に遅い場合と速い場合における前記食品生地片17の落下位置の相違について説明する。カッタスリーブ83の下降速度が相対的に遅い場合には、前記カッタスリーブ83の下降に伴って、前記有底筒25の吐出口25Gから外側に向かって突出した餅生地9の先端部分が餅生地9の切断側を支点として下方に傾斜し、さらに、それらの先端部分が内側に向かって移動したところで切断される。従って、複数の餅生地片17は、前記カッタスリーブ83のカッタ刃83Jの先端部分の内側において互いに接近したところで分割され、前記容器39内の餡57の上面に放射状に載置される。
【0038】
また、前記カッタスリーブ83の下降速度が相対的に速い場合には、前記有底筒25の吐出口25Gから外側に向かって突出した餅生地9の先端部分が殆ど下方に傾斜することなく餅生地9が切断されるため、分割された複数の餅生地片17は、前記カッタスリーブ83のカッタ刃83Jの先端部分の外側において互いに離間したところで分割され、前記容器39内の餡57の上面に放射状に載置される。
【0039】
上記説明から理解できるように、前記カッタスリーブ83の下降速度を制御することにより、餅生地片17が分割される際に吐出口25Gから押し出された餅生地9の先端部分の位置が変化するため、食品生地片17の落下位置を調節することが可能である。
【0040】
次いで、餅入り製品3を収容した容器39は、搬送コンベア41により下流側へ間欠的に搬送される。そして、必要に応じて吐出装置49からホイップクリームやゼリー液などのフィリング材57が前記餅入り食品3の上面に充填される。そして、容器39に蓋材を取り付け冷蔵保存されるなど次工程に搬送される。
【0041】
前記餅入り食品3の成形工程は、従来のごとく食品生地供給装置から圧送される食品生地を有底筒の側壁に形成された複数の押出口から押し出し、押し出された食品生地を前記有底筒の外周部(側壁)を往復摺動するカッタスリーブで切断するだけではなく、カッタスリーブ83の降下により吐出口25Gから押し出された餅生地9に粘着防止剤Rを塗布できるため、分割された餅生地片17が分割装置33に粘着することを防止できる。したがって、所要数の餅生地片17をほぼ同時に分割落下させることができ、例えば、分割装置33の下方に配置された容器39に所要数の餅生地片17を安定して供給することができる。
【0042】
また、前記餅生地片17は、分割装置33への粘着による落下時機や落下位置の乱れが抑制され、容器39に安定して収容させることができる。
【0043】
本発明の実施の形態に係る餅入り食品製造装置1は概ね上述の通りであるが、これに限定されることなく特許請求の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、粘着防止剤収容部93を形成する有底筒25の上側壁25Cの外径を下側壁25Eの外径より大きく形成し、それらに対応するように、カッタスリーブ83の上内壁83Cの内径を下内壁83Eの内径より大きく形成し、前記上側壁25Cと前記上内壁83C、及び下側壁25Eと下内壁83Eとを摺動可能に備えた粘着防止剤収容部を形成することもできる。このように設けられた粘着防止剤収容部は、カッタスリーブ83が上昇する際に粘着防止剤Rをカッタ刃83Jの先端位置から排出し、カッタスリーブ83が下降する際に粘着防止剤Rを粘着防止剤収容部に吸引するものである。このような粘着防止剤収容部であっても、有底筒25の吐出口25Gから押し出される食品生地9に粘着防止剤Rを塗布することが可能である。
【0044】
また、前記実施の形態においては、有底筒25に対しカッタスリーブ83を往復動するよう説明したが、カッタスリーブ83に対し有底筒25を往復動させてもよく、有底筒25とカッタスリーブ83との相対的な往復動により粘着剤収容部93の容積を拡大縮小させることによりカッタスリーブ83の先端位置から粘着防止剤Rを排出することが可能である。
【0045】
また、前記説明においては、前記粘着防止剤用容器89と前記粘着防止剤収容部93とを逆止め弁77を介して配管し、前記粘着防止剤収容部93の容積が縮小した場合に、前記粘着防止剤収容部93から前記粘着防止剤用容器89に流れようとする粘着防止剤Rの逆流を制止し、粘着防止剤収容部93に収容された粘着防止剤Rにかかる圧力を高めてカッタスリーブ83の先端部位から粘着防止剤Rが排出されるようにした。しかしながら、前記逆止め弁77を用いることなく前記粘着防止剤収容部93に収容された粘着防止剤Rにかかる圧力を高めることも可能である。例えば、配管部材において一方向に流れる流量に対し、反対方向に流れる(逆流する)流量を制限できる逆流制御弁のごとき弁部材を用いても前記粘着防止剤収容部93の容積が縮小した場合に、粘着防止剤収容部93に収容された粘着防止剤Rにかかる圧力を高めることが可能である。このような逆流制御弁を用いることにより、カッタスリーブ83の先端部位から排出される粘着防止剤Rの排出量を調整することができる。
【0046】
また、前記逆止め弁77や逆流制御弁のごとき弁部材を用いることなく、前記粘着防止剤収容部93の容積を縮小する速度を調節することにより粘着防止剤収容部93に収容された粘着防止剤Rにかかる圧力を高めることが可能であり、前記カッタスリーブ83の先端部位から前記粘着防止剤Rを排出することが可能である。例えば、前記粘着防止剤収容部93の容積が縮小する速度が相対的に遅い場合と相対的に速い場合の相違について説明する。前記粘着防止剤収容部93の容積が縮小する速度が相対的に遅い場合には、前記粘着防止剤収容部93から押し出される粘着防止剤Rが前記配管部材を逆流して前記粘着防止剤用容器89に戻されるため前記カッタスリーブ83の先端部位から粘着防止剤Rは排出されない。しかし、前記速度が相対的に速い場合には、前記粘着防止剤収容部93から押し出される粘着防止剤Rが前記配管部材を通過するのに抵抗が高まり、結果として前記粘着防止剤収容部93に収容された粘着防止剤Rにかかる圧力が高まり、前記カッタスリーブ83の先端部位から前記粘着防止剤Rを排出することができる。
【0047】
また、前記説明においては、有底筒25の上側壁25Cや下側壁25E、及びカッタスリーブ83の上内壁83Cや下内壁83Kの形状を円筒形として説明したが、例えば、六角柱などの多角形などに形成することも可能である。
【0048】
また、カッタスリーブ83のカッタ刃83Jの先端位置をその全周において同一仮想平面上に形成するばかりでなく、例えば、有底筒25とカッタスリーブ83の相対的な往復動方向に直交する方向(図3において左右方向)に対し傾斜するよう設けてもよく、食品生地9の切断が容易となる。
【0049】
また、前記説明においては、単生地である餅生地9から複数の餅生地片17を分割するよう説明したが、例えば、前記内包材供給部13から前記餅生地9とは異なる食品生地を供給し、内ノズルなどを用いて前記有底筒25内に導入し、前記吐出口25Gから層状や同心状に重ね合わされた食品生地を押し出して食品生地片に分割することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態に係る分割装置33を備えた餅入り食品製造装置1を概略的に示した正面説明図である。
【図2】分割装置33の説明図であり、(a)図は、(b)図におけるA−A断面矢視による上面断面図、(b)図は、(a)図におけるB−B断面矢視による正面断面図である。
【図3】分割装置33の有底筒25から押し出された餅生地9が餅生地片17に分割される工程を概略的に示した断面による正面説明図である。
【符号の説明】
【0051】
1 餅入り食品製造装置
3 餅入り食品
5 包餡機
9 食品生地、餅生地
11 重合ノズル部
17 食品生地片、餅生地片
25 有底筒
25E 下側壁
25G 吐出口
25U 上側筒部
25L 下側筒部
33 分割装置
77 逆止め弁、管継手
83 カッタスリーブ
83E 下内壁
83J カッタ刃
83U 上側外筒部
83L 下側外筒部、カッタ部
89 粘着防止剤用容器
91 粘着防止剤供給機構
93 粘着防止剤収容部
R 粘着防止剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品生地供給装置から圧送される食品生地を押し出す複数の吐出口が側壁に備えられた有底筒と、前記吐出口から押し出された食品生地を複数の食品生地片に分割するためのカッタ刃を有し前記有底筒に外嵌され往復動するカッタスリーブを備えた食品生地の分割装置において、前記吐出口から押し出される食品生地に粘着防止剤を供給する粘着防止剤供給機構を備え、該粘着防止剤供給機構は、粘着防止剤を貯留する粘着防止剤用容器と前記有底筒の側壁と前記カッタスリーブの内壁に囲繞され形成される粘着防止剤収容部とを連通するように備え、前記粘着防止剤収容部の容積が前記有底筒と前記カッタスリーブとを相対的に往復動することにより拡大縮小可能に備えられたことを特徴とする食品生地の分割装置。
【請求項2】
請求項1に記載された食品生地の分割装置において、前記粘着防止剤用容器と前記粘着防止剤収容部との間に前記粘着防止剤用容器側から前記粘着防止剤収容部側へのみ粘着防止剤を通過させる逆止め弁を配管し、前記粘着防止剤収容部の容積が拡大する際には、前記粘着剤用容器から粘着防止剤を前記粘着防止剤収容部に吸引して収容し、前記粘着防止剤収容部の容積が縮小する際には、前記粘着防止剤収容部に収容された粘着防止剤を前記有底筒と前記カッタスリーブのカッタ刃の間から排出することを特徴とした食品生地の分割装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−295428(P2008−295428A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148249(P2007−148249)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(000115924)レオン自動機株式会社 (98)
【Fターム(参考)】