説明

食品生地の吐出方法及び装置

【課題】漏斗状キャビティを内側に規定するように配列された複数のテーパーローラ2を回転させて、キャビティ内の食品生地Dをキャビティの下部吐出口から連続的に棒状に吐出させるに際し、生地Dの捩じれを防止する。
【解決手段】複数のテーパーローラ2を偏心回転させることにより、漏斗状キャビティ内の生地を狭圧及び解放すると、その生地は径方向へ振動し、一方向への捩じれが防止され、吐出口から捩れの無い棒状生地が吐出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパン生地や菓子生地等の食品生地、特に粘弾性生地や発酵生地を棒状に吐出させるための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本願の出願人は、竪型ローラを用いた食品生地の吐出装置を開示している(特許文献1乃至4参照)。これらの従来文献に記載された吐出装置においては、円錐状の竪型テーパーローラが用いられている。複数、例えば6つのテーパーローラは、それらの内側に漏斗状のキャビティを規定するように円環状に配列され、その漏斗状キャビティの下端部(狭径側)が生地の吐出口を形成している。そのキャビティに供給された生地は、テーパーローラの回転によって従動回転しながら下方へ案内されて、吐出口で絞られて棒状に連続的に吐出される。このように棒状に成形された生地は、後続する切断工程で切断成形されて円盤状又は球状などの所定の形状に成形される。
【特許文献1】特許第2934206号
【特許文献2】特許第2973105号
【特許文献3】特許第3117945号
【特許文献4】特公昭39−12276号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の吐出装置においては、竪型ローラの回転によって漏斗状キャビティ内の食品生地を捩る力が生じる。この生地を捩じる力は、生地の内部圧力(生地内圧)の差に起因して生じる。即ち、竪型ローラの回転によって下方へ案内される生地の生地内圧は、漏斗状キャビティの開放度が大きい上部(拡径側)よりも狭細な下部(吐出口側)で高くなる。従って生地がキャビティの上部から下部へ移動するにつれて、その生地内圧の差に起因して生地に捩じれが生じる。
【0004】
この捩れは、キャビティ内で生地が破断し、或いは生地全体が捩じれる結果として、吐出された生地の表面に皺が生じるなど、生地の品質低下の原因となる。これはパン生地の発酵生地などの柔らかい生地では特に問題となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って本発明は、食品生地の捩じれを防止して、食品生地を棒状に吐出するための方法及び装置を与える。
【0006】
本発明の方法は、回転軸を有する複数の竪型ローラを用いて食品生地を棒状に吐出する方法であって、複数の竪型ローラは、吐出すべき食品生地を受け入れる漏斗状のキャビティを内側に規定し、且つその漏斗状キャビティの狭細な下端が食品生地の吐出口を規定するように、キャビティの外周に沿って環状に配列されており、この方法は、a.竪型ローラの各々を回転軸の周りに互いに同方向に回転させることにより、キャビティ内の食品生地を従動回転させつつ吐出口へ向けて案内する推力を与える回転段階と、b.回転段階の際に、複数の回転する竪型ローラがキャビティの中心軸に対して、キャビティ内の食品生地を狭圧するように近接する近接動作と、且つその狭圧を解放するように離間する離間動作とを繰り返すことにより食品生地を径方向へ振動させながら、この食品生地を吐出口から棒状に吐出させる段階とを含む。
【0007】
本発明による食品生地を円柱状に吐出する装置は、
吐出すべき食品生地を受け入れる漏斗状のキャビティを内側に規定し、且つその漏斗状キャビティの狭細な下端が食品生地の吐出口を規定するように、キャビティの外周に沿って環状に配列されて、各々が回転軸を有する複数の竪型ローラと、
竪型ローラの各々を前記回転軸の周りに互いに同方向に回転させることにより、前記キャビティ内の食品生地を従動回転させつつ吐出口へ向けて案内する推力を与える回転駆動手段と、
複数の竪型ローラの回転の際に、これら回転する竪型ローラが、キャビティの中心軸に対して、キャビティ内の食品生地を狭圧するように近接する近接動作と、且つその狭圧を解放するように離間する離間動作とを繰り返しながら、キャビティ内の食品生地を吐出口から円柱状に吐出させるように、複数の回転する竪型ローラを偏心させる偏心手段とを備える装置。
【0008】
本発明の方法及び装置において、複数の竪型ローラは、同期して往復回転させてもよく、一方向へ回転させてもよい。その各々のローラは、下方から上方へ向かって先細りになるテーパーローラとしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る食品生地の吐出方法及び装置によれば、複数の竪型ローラを回転させる際に、これら回転する竪型ローラに、キャビティの中心軸に対して、キャビティ内の食品生地を狭圧するように近接させる近接動作と、且つその狭圧を解放するように離間させる離間動作とを繰り返させる。キャビティ内の食品生地には竪型ローラの狭圧及び解放により径方向へ振動することにより、生地の一方向への捩じれが防止される。
【実施例】
【0010】
図1a、図1b及び図2は本発明による吐出装置の実施例を示す。これらの図において、吐出装置をなす複数、例えば3つの偏心回転可能な竪型ローラ2は、その各々が下方から上方へ向かって先細りになる円錐形状のテーパーローラであり、漏斗状のキャビティを内側に規定するように環状に配置されている。この漏斗状キャビティには食品生地Dが供給される。隣接するローラ2相互間の間隔は、ここから生地Dが漏れ出ることのないように適宜に設定されている。キャビティの狭細な下端は、複数のローラ2の下端部により規定されて吐出口を形成している。
【0011】
偏心回転するローラ2の回転軸は、初期位置の軸(例えばローラの中心軸に一致する軸)2aと、この初期軸2aから漏斗状空間の中心軸C側へ偏心した軸2bとの間で偏心可能である(回転軸が偏心軸2bにあるときのローラ2を仮想線2’で示す)。
【0012】
従って漏斗状空間の径は、ローラ2の回転軸が初期軸2aにあるときは初期径であり(図1a)、ローラ2の回転軸が偏心軸2bにあるときは縮小する(図1b)。換言すれば、ローラ2の回転軸が偏心軸2b(図1b)にあるときは、ローラ2が漏斗状空間の中心軸C(図2)に対して近接して生地Dを狭圧し、ローラ2の回転軸が初期軸2aへ復帰したときは、ローラ2が漏斗状空間の中心軸Cから離間して生地Dの狭圧を解放する。ローラ2の偏心回転に伴って、漏斗状空間の中心軸Cに対するローラ2の近接(生地Dの狭圧)と離間(生地Dの解放)とが繰り返される。
【0013】
ローラ2を偏心回転させる機構については、公知の機械的機構を用いることができるので、ここでは説明しない。
【0014】
漏斗状空間に食品生地Dを供給し、各テーパーローラ2を初期軸2a及び偏心軸2bの周りで偏心回転させると、生地Dには垂直下方への推力と回転力とが働く。これにより生地Dは回転しながら吐出口へ案内され、且つ吐出口で絞られて、ここから円柱状に吐出される。
【0015】
この際、従来の吐出装置におけるように、ローラ2の偏心が無ければ(即ち回転軸が固定されているならば)、生地Dの内圧は、漏斗状空間の上部よりも下部(吐出口側)で高くなる。従って生地Dが漏斗状空間を上部から下部へ移動するにつれて、その生地内圧の差に起因して生地に捩じれが生じることになる。
【0016】
一方、本発明の吐出装置によれば、各テーパーローラ2が偏心回転しているので、ローラ2の回転による生地吐出中に、各ローラ2が漏斗状空間の中心軸Cに対して近接及び離間を繰り返すことにより、漏斗状空間の径が縮小拡大し、生地Dが径方向に振動する。これにより吐出口側における生地内圧が解放されて不所望な上昇が防止され、生地Dの捩れが防止される。
【0017】
ローラ2の回転方向は、各ローラを同期させて図中に矢印で示すように往復回転させてもよいが、これに限定されるものではなく、一方向のみの回転としてもよい。
【0018】
ローラ2の回転度、各ローラ2が漏斗状空間の中心軸に近接及び離間する頻度、各ローラ2と漏斗状空間の中心軸との間の距離は、成形すべき生地Dの性質等に応じて設定できるように可変にしてもよい。
【0019】
本発明における吐出装置は、例えば図3に示すように、吐出口から吐出された棒状生地Dを次工程(矢印方向)へ搬送する送りコンベア4上に配置してもよい。この場合、棒状生地の捩じれが無いため、棒状生地の安定した連続供給がなせる。また図4に示すように、吐出装置とコンベア4との間に、吐出された棒状生地を所望の形状(例えば球形、円盤状当)に切断成形する公知の切断機構6を配置してもよい。この場合も、切断機構6へは捩れの無い棒状生地が円滑に供給されるので、切断機構6へ供給される生地の捩れに起因する不所望な成形切断が防止され、棒状生地から切断成形された所望の形状(図示の例では球形)の食品Pを連続供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1a】図1aは本発明に係る吐出装置を概略的に示す側面図であって、偏心回転するテーパーローラの回転軸が初期軸にあり、生地の狭圧が解放されている状態を示す図である。
【図1b】図1bは図1aと同様な図であって、図1aの状態から偏心回転テーパーローラが内方へ偏心して、生地を狭圧する状態を示す図である。
【図2】図2は図1a及び図1bに示す吐出装置の概略的な俯瞰図であって、テーパーローラの偏心回転動作を示す図である。
【図3】図3は本発明の吐出装置を送りコンベア上に配置した適用例を示す図である。
【図4】図4は本発明の吐出装置に切断機構を用いる例を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
2 テーパーローラ
D 生地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を有する複数の竪型ローラを用いて食品生地を棒状に吐出する方法であって、前記複数の竪型ローラは、吐出すべき食品生地を受け入れる漏斗状のキャビティを内側に規定し、且つその漏斗状キャビティの狭細な下端が食品生地の吐出口を規定するように、前記キャビティの外周に沿って環状に配列されており、この方法は、
a.前記竪型ローラの各々を前記回転軸の周りに互いに同方向に回転させることにより、前記キャビティ内の食品生地を従動回転させつつ前記吐出口へ向けて案内する推力を与える回転段階と、
b.前記回転段階の際に、前記複数の回転する竪型ローラが前記キャビティの中心軸に対して、前記キャビティ内の食品生地を狭圧するように近接する近接動作と、且つその狭圧を解放するように離間する離間動作とを繰り返すことにより食品生地を径方向へ振動させながら、この食品生地を前記吐出口から棒状に吐出させる段階とを含む方法。
【請求項2】
請求項1の方法において、前記回転段階の際に、前記複数の竪型ローラを同期して往復回転させる方法。
【請求項3】
請求項1の方法において、前記回転段階の際に、前記複数の竪型ローラを一方向へ回転させる方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の方法において、前記竪型ローラの各々は、下方から上方へ向って先細りになるテーパーローラである方法。
【請求項5】
食品生地を円柱状に吐出する装置であって、
吐出すべき食品生地を受け入れる漏斗状のキャビティを内側に規定し、且つその漏斗状キャビティの狭細な下端が食品生地の吐出口を規定するように、前記キャビティの外周に沿って環状に配列されて、各々が回転軸を有する複数の竪型ローラと、
前記竪型ローラの各々を前記回転軸の周りに互いに同方向に回転させることにより、前記キャビティ内の食品生地を従動回転させつつ前記吐出口へ向けて案内する推力を与える回転駆動手段と、
前記複数の竪型ローラの回転の際に、これら回転する竪型ローラが、前記キャビティの中心軸に対して、前記キャビティ内の食品生地を狭圧するように近接する近接動作と、且つその狭圧を解放するように離間する離間動作とを繰り返しながら、前記キャビティ内の食品生地を前記吐出口から円柱状に吐出させるように、前記複数の回転する竪型ローラを偏心させる偏心手段とを備える装置。
【請求項6】
請求項5の装置において、前記回転駆動手段が、前記複数の竪型ローラを同期して往復回転させる装置。
【請求項7】
請求項5の装置において、前記回転駆動手段が、前記複数の竪型ローラを一方向へ回転させる装置。
【請求項8】
請求項5乃至7の何れか一項に記載の装置方法において、前記竪型ローラの各々は、下方から上方へ向って先細りになるテーパーローラである装置。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−215452(P2007−215452A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−38146(P2006−38146)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(000115924)レオン自動機株式会社 (98)
【Fターム(参考)】