説明

食品紙容器

【課題】 水分が多い食品を収容しても形が崩れることが無く、衛生的で高級感がある食品容器を提供する。
【解決手段】 少なくとも底部と側壁部と仕切り部を有する食品容器であって、少なくとも前記側壁部及び仕切り部は、原紙の両面に樹脂層を設けてなる積層シートからなり前記積層シートを水中に30分浸漬したときに端面から水が浸透した距離が10mm以下であることを特徴とする。また、前記原紙がミルクカートン紙であることが好ましく、さらに前記側壁部の外周に第2の側壁部を有することが好ましい。さらに上記の食品容器は弁当箱として用いることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総菜等の食品を収納する弁当箱等の食品容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ご飯や総菜等の食品を入れる弁当箱等の食品容器には、形状、構造、デザインが異なる多種多様なものがある。また材質も木製、発泡スチロール製、プラスチック製、紙製といった様に各種あるが、紙製の容器は安価で、使用後にリサイクルすることもできるため、多く用いられている。例えば、特許文献1には表面に木目模様がプリントされた板紙を用いた容器が記載されている。
【0003】
また、上述した食品容器には、原紙表面を樹脂層で覆った積層シートを用いられることが一般的である。さらに弁当箱のように他種類の食品を同時に収納する場合、食品同士が混ざることがないように、容器内に仕切りが設けられることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭58−46015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した積層シートの表裏面は樹脂層に覆われているため、食品に含まれる液体成分(油分や水分等)が積層シートに浸透することはない。しかし、積層シートの端面においては原紙がむき出しになっているため、この部分から食品の液体成分が浸透すると、積層シートが軟化して使用者に不便を感じさせるし、見栄えも良くない。また、積層シートが厚い場合、折り曲げやすくするために、樹脂で覆われている積層シート表面をV字状にカットする加工(Vカット加工)がなされることがあるが、V字状にカットされた面は原紙がむき出しになり、やはり、液体成分が浸透しやすくなり、同様の問題が発生する。
また、食品容器の仕切りとするために、複数の短冊板状積層シートに適宜切り欠き部を設け、これを介して互いに組み合わせた後、容器内に設置するが、仕切り部となる積層シートの切り欠き部分においても原紙がむき出しになり、同様の問題となる。
【0006】
従って、本発明は、水分が多い食品を収容しても形が崩れることが無く、衛生的で高級感がある食品容器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明による食品容器は少なくとも底部と側壁部と仕切り部を有する食品容器であって、少なくとも前記側壁部及び仕切り部は、原紙の両面に樹脂層を設けてなる積層シートからなり前記積層シートを水中に30分浸漬したときに端面から水が浸透した距離が10mm以下であることを特徴とする。
また、前記原紙がミルクカートン紙であることが好ましく、さらに前記側壁部の外周に第2の側壁部を有することが好ましい。さらに上記の食品容器は弁当箱として用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、少なくとも底部と側壁部と仕切り部を有する食品容器において、前記側壁及び仕切り部に用いる積層シートを水中に30分浸漬したときに端面から水が浸透した距離が10mm以下とすることで、水分が多い食品を収容しても容器や仕切り部の形が崩れることが無い。また、原紙をミルクカートン紙にすることで、衛生的に優れた食品容器を得ることができる。さらに前記側壁部の外周に第2の側壁部を有することで、食品容器外壁に様々な意匠を付与することが可能となり、高級感を有する食品容器とすることが可能となる。また、本発明により水分や油分等が多い食品を収容しても形が崩れることが無く、衛生的で高級感がある弁当箱を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の食品容器の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の食品容器の一実施例を示す斜視図であり、図2は本発明の別の実施例を示す斜視図である。本発明の食品容器は底部1と側壁部2と仕切り部3及び蓋4を有し、仕切り部3は、例えば、図3に示される大小の仕切り部材31,32を組み合わせて形成される。前記仕切り部材31,32には切り欠き部34が設けられ、それぞれの切り欠き部を合わせるようにして仕切り部材31,32を組み合わせ、十字形状の仕切り部とすることができる。
【0010】
(容器形状)
本発明においては、容器の形状は特に限定されないが、図1、2に示した角型以外に、略円型など、一般的な容器形状に形成されていればよい。本発明は、主として弁当箱の用途に利用されるため、箱の内側に仕切り部を設ける。このようにすることで、箱に複数の食材を収容するのに便利であり、十分な仕切りや高さを有する仕切り壁を設ければ、漏れた汁が隣り合う収納部に流れることなく、他の食材を汚す恐れもない。
【0011】
(側壁部及び仕切り部)
本発明において、側壁部及び仕切り部は、原紙の両面に樹脂層を設けてなる積層シートからなり、前記積層シートは、これを水中に30分浸漬したときに端面から水が浸透した距離が10mm以下であることを特徴とする。ここで、端面からの浸透する距離が10mm以下とする手段としては、原紙中にサイズ剤等の樹脂成分を含有させることや、原紙の密度を高くすること等を挙げることができる。
側壁部や仕切り部は収容した食品に接するため、シート端面の面積ができるだけ小さくなるような加工(例えば、クルミ加工等)を施されることが好ましい。また、側壁部端面を外側に折り曲げる(折り返し加工する)、短面にエッジテープ(ポリエチレン製、ポリプロピレン製等)を覆い被せる用に貼り付けたり、食品用糊(例えばホットメルト)を塗ったりしてもよい。
【0012】
(積層シート 原紙)
積層シートの原紙に用いられる紙の種類は特に限定されないが、主に板紙が用いられる。具体的には、ダンボール紙、コートボール紙、マニラボール紙、ミルクカートン紙用原紙などを用いることができる。ミルクカートン紙用原紙は、再生紙を含まないバージンパルプで作られており、また、蛍光増白剤等の抄紙助剤の含有量が少なく、衛生的で好ましい。原紙の坪量は100〜1500g/mが好ましく、より好ましくは200〜1000g/mである。坪量が小さすぎると容器の強度が弱くなり、坪量が大きすぎると紙が厚すぎて成形が困難となる傾向となる。樹脂層からなるフィルムとのバランスは、例えば、坪量600g/mに対して、フィルム厚10〜40μm、好ましくは15〜30μm程度にすればよい。なお、複数の紙を接着剤等で貼り合わせて1枚のシートとしたものを積層シート原紙として用いることもできる。
【0013】
(積層シート 樹脂層)
積層シートの樹脂層に用いられる樹脂は、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等のうちから選べるが、特に成形性や、耐熱、耐油性などの観点からPP、PET、PBTが好ましい。樹脂層は紙層の一面もしくは両面に形成されるが、フィルムを接着剤等で原紙に貼り合わせて設けてもよいし、原紙に前記樹脂を押出ラミネートして設けてもよい。また、樹脂層は単層でも複層でもよい。樹脂層の厚さはトータルで20〜100μmの範囲が好ましい。樹脂層の厚さが薄すぎると形状の維持が難しく、100μmを超えても得られる効果に差が無い。なお、樹脂層としてPETやPP、PBTを用いれば、耐油性、耐熱性に優れた容器が得られ、電子レンジの使用も可能である。
本発明の食品容器においては、一般の紙容器と同様オフセット、グラビア、フレキソ印刷等これまでに知られている方法を用いて表面に印刷を行うこともできる。また、樹脂層が透明である場合、樹脂層と接する原紙表面に印刷を行うことで、積層シートに模様を付与することもできる。
【0014】
(底部)
本発明の食品容器の底部はシート状であればいずれの材料を使用すること可能であり、紙の両面に樹脂層を設けた積層シートであることが好ましい。側壁部や仕切り部と同じ積層シートを用いても良いし、側壁部と仕切り部とは異なる積層シートを用いることもできる。
【0015】
(第2の側壁部)
本発明においては、上述した側壁部の外側に第2の側壁部を設けることができる。なお、第2の側壁部と区別するために上述の側壁部を第1の側壁部と称する。
第2の側壁部はシート状であればいずれの材料を使用すること可能であり、上述した紙の両面に樹脂層を設けた積層シートであることが好ましい。なお、第2の側壁部は、第1の側壁部と同じ積層シートを用いることもできるし、求められる機能に応じて、第1の側壁部とは異なる積層シートを用いることもできる。
【実施例】
【0016】
以下に、本発明の食品容器について、実施例をあげてさらに説明する。
(実施例1)
原紙となる板紙として625g/mのミルクカートン原紙(ウェアハウザー製)を使用し、アクリル系接着剤をコートし、フィルム貼り機により原紙両面に20μmのポリプロピレンフィルムを貼合して積層シートを作製した。
この積層シートを用いて、図1に示される容器(身箱部)と仕切りを作成した。
【0017】
(比較例1)
原紙となる板紙を750g/mのコートボール原紙(ジェットスター、日本大昭和板紙製紙社製)とした以外は実施例1と同様にして積層シート及び容器を作成した。
【0018】
(比較例2)
原紙となる板紙を550g/mのコートボール原紙(UFコート、王子製紙社製)とした以外は実施例1と同様にして積層シート及び容器を作成した。
【0019】
(比較例3)
原紙となる板紙を450g/mのコートボール原紙(NEW−DV、北越製紙社製)とした以外は実施例1と同様にして積層シート及び容器を作成した。
【0020】
(評価)
1)浸透テスト
実施例1、比較例1〜3で得られた積層シートを3×6cmの大きさにカットし、これをプラスチックトレーに入れた油(日清サラダ油)又は水(水道水)中に浸漬する。このとき、積層シート中心部に5gのおもりを載せて、積層シートが完全に油又は水中に沈むようにする。浸漬してから30分経過後、積層シートを取り出し、ペーパータオルで表面に付着した水分や油分を拭き取った後に長辺方向、短辺方向の、油または水が端面より浸透した距離を測定する。
【0021】
2)食品収容テスト(保形性)
容器に白飯と唐揚げを収容し、蓋をしてから2時間後の容器の形状を観察した。
○:容器、仕切りともに形状の崩れがない。
×:容器、仕切りのうちいずれか1つ又は両方に、シート端面部の崩れが見られる。
【0022】
上記結果を表1にまとめる。
【0023】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の食品容器の一実施例を示す斜視図である。
【図2】本発明の食品容器の別の実施例を示す斜視図である。
【図3】本発明のしきりのブランクを示す図である。
【符号の説明】
【0025】
1 底部
2 側壁部
3 仕切り部
31、32 仕切り部材
34 切り欠き部
4 蓋
5 身箱
6 第2の側壁部
A 本発明の食品容器の一実施例
B 本発明の食品容器の別の実施例

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも底部と側壁部と仕切り部を有する食品容器であって、少なくとも前記側壁部及び仕切り部は、原紙の両面に樹脂層を設けてなる積層シートからなり、前記積層シートは水中に30分浸漬したときに端面から水が浸透する距離が10mm以下であることを特徴とする食品容器。
【請求項2】
前記原紙がミルクカートン紙であることを特徴とする請求項1に記載された食品容器。
【請求項3】
前記側壁部の外周に第2の側壁部を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された食品容器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載された食品容器を用いた弁当箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−37485(P2011−37485A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186721(P2009−186721)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(502394520)日本紙パック株式会社 (33)
【Fターム(参考)】