説明

食品調理装置及び該食品調理装置を用いた食品調理方法

【課題】1つの装置で、食材のボイル・湯がき等の高温加熱処理と液状調味料やたれ等を温めておくウォーマ等の中温加熱処理を同時に行うことができるようにして、作業性の効率化の改善を図り、かつ、エネルギーの無駄を無くして経済性を向上させる。
【解決手段】食品調理用の水を収容する調理槽3と、該調理槽3の外部から前記水を加熱するガスバーナ5とを備えた食品調理装置において、調理槽3は、前記水を収容するための槽を画定している上面が開口された外周ハウジング4と、該外周ハウジング4の槽内を少なくとも第1槽8,第2槽9,第3槽10の3つの槽に仕切る2つの仕切板部6,7とを備えるとともに、前記水が第1槽8から第2槽9内を通って第3槽10内へ順に流下するように構成して成り、さらにガスバーナ5を外周ハウジング4の底部11を加熱可能に該底部11の下側に配設して成る食品調理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品調理装置及び該食品調理装置を用いた食品調理方法に関するものであり、特に、食品調理用の水を加熱して使用する食品調理装置及び該食品調理装置を用いた食品調理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、中華料理では、使用する野菜等の食材を前もってボイル・湯がく等の前処理をする場合がある。この場合、従来は茹で鍋や茹で釜等の加熱器を使用して前処理をしている。また、同時にソース等の液状調味料を前もって温めておく必要がある場合は、これとは別にウォーマ等の比較的湯温の低い加熱器を使用する等、複数の装置を同時に稼働して前処理を行っていた。
【0003】
また、例えばしゃぶしゃぶ料理をする場合、該料理に使用される鍋は銅製であるため高価であり、且つ、比較的小サイズのものが用いられている。このため、多人数の顧客に供する業務用鍋としては極めて不向きである。そこで、顧客の席に食材を運ぶ前に前処理装置を使用して食材に一度火を通すとともに、しゃぶしゃぶのたれ等もウォーマ等の比較的湯温の低い加熱器を使用して一度温めた後、客席に運ぶという方法が採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特許文献なし。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来の食品調理装置では、例えば中華料理を行う場合、野菜等の食材を前もってボイル・湯がく等の前処理をするための加熱器と、ソース等の液状調味料も前もって温めておくための加熱器等、複数の装置を同時に稼働して前処理を行っていたが、作業が煩雑で能率が悪く、また、エネルギーコスト的にも無駄が多いという問題があった。
【0006】
また、例えば前述したように、多人数の顧客に供するしゃぶしゃぶ料理をする場合でも、顧客の席に食材を運ぶ前に加熱器を使用して食材に一度火を通すとともに、ウォーマ等の比較的湯温の低い加熱器を使用してたれ等も温め、その後、客席に運ぶというようなことが行われている。この場合も複数の装置を同時に稼働して前処理を行っているので、作業が煩雑であり、且つ、能率が悪く、また、エネルギーコスト的にも無駄が多いという問題があった。
【0007】
なお、しゃぶしゃぶ料理の場合、しゃぶしゃぶ用のお湯は比較的高温の沸騰水であることが望ましい。しかし、沸騰水にすると小規模鍋では直ぐに湯が蒸発し減少してしまうため、水差しを頻繁に行う必要がある。また、水を鍋に直接差すと湯温が急激に下がり、再び必要温度に上昇させるまでに時間を要し、利用者に不便を来たすことがある。
【0008】
そこで、1つの装置で、食材のボイル・湯がき等の高温加熱処理と液状調味料やたれ等を温めておくウォーマ等の中温加熱処理を同時に行うことができるようにして、作業性の効率化の改善を図り、かつ、エネルギーの無駄を無くして経済性を向上させるために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、食品調理用の水を収容する調理槽と、該調理槽の外部から前記調理槽内の水を加熱する加熱源とを備えた食品調理装置において、前記調理槽は、前記水を収容するための槽を画定している上面が開口された外周ハウジングと、該外周ハウジングの前記槽内を少なくとも第1槽,第2槽,第3槽の3つの槽に仕切る2つの仕切板部とを備えるとともに、前記水が前記第1槽から前記第2槽内を通って前記第3槽内へ順に流下するように構成して成り、さらに前記加熱源を前記外周ハウジングの底部を加熱可能に該底部の下側に配設して成る食品調理装置を提供する。
【0010】
この構成によれば、調理槽内の食品調理用の水(湯)が蒸発等によって減少したとき、例えば水道水等の低温の水を直接調理槽内に差すと、該差し水によって第1槽内における湯の温度は低下する。しかし、該差し水は第1槽から第2槽内へ徐々に流下し、該第2槽内で湯と混合し加温されてウォーマに適した湯温になる。また、第2槽から第3槽内へ徐々に流下し、該第3槽内では高温の湯と混合されてさらに加温し、高温の湯(例えば、沸騰湯)になる。これにより、差し水をしても第2槽及び第3槽における湯温の急激な低下を最小限に留めることができる。そして、第2槽内の湯温は差し水と湯が混合してウォーマ等に適した温度(中温)になるので、該第2槽内では液状調味料やたれ等を温め、高温の湯になる第3槽内では食材のボイル・湯がき等を行うというように、1つの食品調理装置で高温加熱処理(例えばボイル)と中温加熱処理(例えばウォーマ)を同時に行うことが可能になる。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の食品調理装置において、上記第1槽を画定する仕切板部は、中仕切りを設けて、差し水が直接流れ込む第1の部屋と該差し水と上記加熱源により温められた湯を混合させて上記第2槽内に送り出す第2の部屋を有するタンクとして形成されている食品調理装置を提供する。
【0012】
この構成によれば、第1槽をタンクとして第2槽とは別に設けることができる。また、第1槽の内部が第1の部屋と第2の部屋に仕切られていて、差し水は第1の部屋内に直接注入され、その後、第1の部屋から第2の部屋内へ徐々に流下する。そして、該差し水は該第2の部屋内で湯と混合して加温され、次の第2槽内へ徐々に流れ出る。これにより、差し水をしても第2槽及び第3槽における湯温の急激な低下を最小限に留めることができる。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の食品調理装置において、上記加熱源は上記第3槽に対応して設けられ、かつ、上記調理槽は上記外周ハウジングの底部と上記各槽との間に隙間を設けて前記底部上に配設された沸騰板を備える食品調理装置を提供する。
【0014】
この構成によれば、加熱源はハウジングの底部と沸騰板との間の隙間に流れ込んでいる水を加熱沸騰させ、さらに該沸騰板を介して第1槽,第2槽,第3槽の各槽内における水を間接的に加熱するので、各槽内における湯温を安定して保てる。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の食品調理装置において、上記沸騰板は、上記外周ハウジングの底部と該沸騰板との間で沸騰している水を前記第3槽内へ噴出させる噴流孔を上記第3槽と対応する位置に設けた食品調理装置を提供する。
【0016】
この構成によれば、沸騰板に設けた噴流孔から第3槽内に向けて噴流を発生させることができるので、食材を入れた茹で籠を第3槽内に浸漬すると、該茹で籠内で食材が適当に
攪拌され、該食材に均一に熱を伝えながらボイルまたは湯通しを行うことができる。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項1,2,3または4記載の食品調理装置において、上記外周ハウジングの底面下側に、上記加熱源と熱交換する熱交換部材を設けた食品調理装置を提供する。
【0018】
この構成によれば、交換部材により、調理槽を形成している外周ハウジングの底面と加熱源の相互における熱交換を高めることができる。
【0019】
請求項6記載の発明は、請求項1,2,3,4または5記載の食品調理装置において、上記第3槽内の水を上記第1槽内に戻して上記調理槽内の水を循環させる食品調理装置を提供する。
【0020】
この構成によれば、高温に保たれている第3槽内の水を第1槽内に戻して循環させることにより、調理槽内における全体の水温を高く保持することができる。
【0021】
請求項7記載の発明は、請求項1,2,3,4,5または6記載の食品調理装置を用いた食品調理方法であって、上記第2槽内の湯温を80〜95℃に保持して成るウォーマ槽を形成し、かつ、上記第3槽の湯温をほぼ100℃に保持して成る加熱槽として、それぞれ食材を前処理する食品調理方法を提供する。
【0022】
この方法によれば、液状調味料やたれ等を比較的低い温度の第2槽内に浸漬し、温めてウォーマ処理を行い、ボイル・湯がき等の高温加熱処理を必要とする食材を第3槽内に浸漬し、ボイル・湯がき処理するというように、1つの装置で、ウォーマ等の中温加熱処理とボイル・湯がき等の高温加熱処理を同時に行うことができる。
【0023】
請求項8記載の発明は、請求項6記載の食品調理装置を用いた食品調理方法であって、上記ウォーマ槽と上記加熱槽にそれぞれ取り外し可能な容器を取り付けるとともに、該容器内に食材を入れて前処理する食品調理方法を提供する。
【0024】
この方法によれば、液状調味料やたれ、及び、ボイル・湯がき等をする食材等をそれぞれ個々の容器に入れ、ウォーマ槽及び加熱槽に該容器を浸漬して加熱処理し、処理後、該処理した食材を容器毎取り出して後処理することができる。
【発明の効果】
【0025】
請求項1記載の発明は、第2槽内で液状調味料やたれ等を温め、第3槽内で食材のボイル・湯がき等を行うというように、1つの食品調理装置で高温加熱処理と中温加熱処理を同時に行うことができるので能率的であり、作業性の効率化が図れる。また、無駄のない熱利用が可能でエネルギーコストの改善が期待できる。
【0026】
さらに、食品調理用の水(湯)が蒸発等によって減少し、差し水を行う場合も、第2槽及び第3槽における湯温の急激な低下を最小限に留めることができるので、第2槽及び第3槽における湯温を常に安定的に保つことができる。これにより、例えば中華料理やしゃぶしゃぶ等の料理を少量のみならず比較的大量にも提供することが可能になる。
【0027】
請求項2記載の発明は、第1槽に差し水をしても、第2槽及び第3槽における湯温の急激な低下をさらに最小限に留めることができるので、請求項1記載の発明の効果に加えて、第2槽及び第3槽における湯温をより一層安定して保つことができる。
【0028】
請求項3記載の発明は、外周ハウジングの底部と各槽との間に設けた沸騰板により、各
槽内における湯の温度を安定して保つことができるので、請求項1記載の発明の効果に加えて、さらに安定した調理作業が可能になる効果が期待できる。
【0029】
請求項4記載の発明は、第3槽内に噴流を発生させ、茹で籠に入れた食材を該噴流により適当に攪拌しながらボイルまたは湯通しを行うことができるので、請求項3記載の発明の効果に加えて、ボイルまたは湯通し作業をより効果的に行うことが可能になり、品質が安定する効果が期待できる。
【0030】
請求項5記載の発明は、交換部材により熱効率を向上させることができるので、請求項1,2,3または4記載の発明の効果に加えて、エネルギーの無駄を無くして経済性をより一層高める効果が期待できる。
【0031】
請求項6記載の発明は、調理槽内における全体の水温を高く保持することができるので、請求項1,2,3,4または5記載の発明の効果に加えて、エネルギーの無駄を少なくして経済性をより一層高める効果が期待できる。
【0032】
請求項7記載の発明は、1つの装置でウォーマ等の中温加熱処理とボイル・湯がき等の高温加熱処理を同時に行うことができるので、能率的であり、作業性の効率化が図れる。また、無駄のない熱利用が可能であって、且つ、エネルギーコストの改善も期待できる。
【0033】
請求項8記載の発明は、第2槽、第3槽に浸漬する容器は取り外し可能になっているので、請求項7記載の発明の効果に加えて、調理物の移動や調理後の清掃もスムーズに行えるという効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態として示す食品調理装置の概略平面図。
【図2】図1の矢印A方向より見た概略側面図。
【図3】図1の矢印B方向より見た概略側面図。
【図4】1部を省略した図1のC−C線概略拡大断面図。
【図5】1部を省略した図1のD−D線概略断面図。
【図6】第1槽を画定する仕切板部の概略斜視図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明は、1つの装置で、食材のボイル・湯がき等の高温加熱処理と液状調味料やたれ等を温めておくウォーマ等の中温加熱処理を同時に行うことができるようにして作業性の効率化の改善を図り、かつ、エネルギーの無駄を無くして経済性を向上させるという目的を達成するために、食品調理用の水を収容する調理槽と、該調理槽の外部から前記調理槽内の水を加熱する加熱源とを備えた食品調理装置において、前記調理槽は、前記水を収容するための槽を画定している上面が開口された外周ハウジングと、該外周ハウジングの前記槽内を少なくとも第1槽,第2槽,第3槽の3つの槽に仕切る2つの仕切板部とを備えるとともに、前記水が前記第1槽から前記第2槽内を通って前記第3槽内へ順に流下するように構成して成り、さらに前記加熱源を前記外周ハウジングの底部を加熱可能にして該底部の下側に配設したことにより実現した。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の食品調理装置について、好適な実施例を添付図面を参照しつつ説明する。図1〜図5は本発明の一実施例に係る食品調理装置を示す。同図において、本実施例の食品調理装置1は、装置本体2内に、食品調理用の水を収容するための調理槽3を画定して成る上面が開口された外周ハウジング4と、加熱源としてのガスバーナ5を配置している。
【0037】
前記外周ハウジング4の調理槽3は、全体が概略長四角形をした槽を構成して成る。また、調理槽3の内部は、2つの仕切板部6,7で各々縦方向に区切られ、第1槽8、第2槽9、第3槽10の3つの槽が図4に示すように順に左右方向に画定されて配設されている。
【0038】
また、同図4において前記調理槽3の底部、すなわち外周ハウジング4の底部11の内側には、前記各槽8,9,10との間に隙間12を設けて沸騰板13がほぼ全面に亘って配設されている。なお、該隙間12内には、該調理槽3内に収容された水が自由に流入できるようになっている。該隙間12は、上下の高さが略3cm程度であるが、これに限定せられるべきではない。
【0039】
また、沸騰板13には、図4に示すように上下に貫通している複数の噴流孔14,14
…が形成されている。該噴流孔14,14…は、前記隙間12内で沸騰した湯を前記第3槽10内に向けて噴出させる孔である。
【0040】
前記第1槽8を画定している前記仕切板部6は、図6に示すように上面に開口部15を有するタンクとして形成されており、外側面には外周ハウジング4の上面開口部4aの周面上に係止される段差部16を設けている。また、前記仕切板部6の内部には中仕切り17が設けられ、該中仕切り17によって該仕切板部6の内部が第1の部屋18と第2の部屋19の2つの部屋に区切られている。さらに、該第2の部屋19の側面には、前記中仕切り17の上端部17aよりも下側の位置に2つの貫通孔20,20が設けられている。該貫通孔20の径は、略3mm程度であるが、これに限定せられるべきではない。
【0041】
そして、該仕切板部6は、図4に示すように段差部16を外周ハウジング4の上面開口部4aの周面上に係止させて前記調理槽3内に浸漬されると、該調理槽3内の水(湯)が貫通孔20,20を通って第2の部屋19内に流入し、これにより該第2の部屋19内が前記調理槽3内と一体化されて前記第1槽8として画定される。
【0042】
このように構成された仕切板部6には、水道水等の差し水を開口部15から第1の部屋18内に直接行う、あるいは循環を目的として第3槽10内の高温に温められた湯を開口部15から第1の部屋18内に直接行うことができる。また、前記中仕切り17の上端部17aを超える位置まで該水あるいは湯が注入されて溢流すると、該溢流水は第1槽8を画定している第2の部屋19内に流れ込み、該第2の部屋内の湯と混合してさらに第2の部屋19の側面に設けられた前記貫通孔20,20から第2槽9内へ流れ出るように構成されている。
【0043】
また、図4及び図5に示すように前記外周ハウジング4の底部11の外側には、第2槽9と第3槽10に跨った状態にして、熱交換部材21が設けられている。該熱交換部材21は、外周ハウジング4の底部11から下方に向かって突出されている翼状の部材であり、ガスバーナ5からの熱を効率良く受けて外周ハウジング4側に伝達されるように構成されている。したがって、前記ガスバーナ5は、前記熱交換部材21を直接加熱できるように該熱交換部材21の下側に配設されている。
【0044】
次に、このような構成に係る食品調理装置1を用いて、肉、魚、野菜、麺類等の食材の前処理を行う場合の動作について説明する。なお、以下の実施例では、中華料理の前処理を行う場合について説明するが、該食品調理装置1で処理される料理はこの実施例に限られるものではない。
【0045】
まず、調理作業者は、調理槽3内に食品調理用の水を所定の位置まで入れた状態で、ガスバーナ5の点火を行い、熱交換部材21及び外周ハウジング4の外周を加熱する。該外周ハウジング4が加熱されて調理槽3内の水が調理に適する温度(湯)に達したとき、第2槽9の縁部に例えば図4に示すようにホテルパン31,32を左右に2連の状態で止着し、かつ、第3槽10の湯内に茹で籠33を浸漬する。なお、第2槽9及び第3槽10内に各々配設されるホテルパン31,32、茹で籠33等の容器は、これらに限られるものではなく、配列並びに数も自由に変更される。
【0046】
また、調理槽3内に止着された前記ホテルパン31,32及び浸漬された前記茹で籠33は、外周ハウジング4における上面開口部4aの周辺にそれぞれ取り外し可能な状態で止着される。さらに、本実施例では、第2槽9の湯温は83〜93℃(第2槽9の湯温は第1槽8に近いほど低く、第3槽10に近づくほど高くなる)、第3槽10内の湯温は100℃前後で、隙間12内の湯温は100℃以上であって、沸騰板13の噴流孔14,14…からは第3槽10内に向かって噴流が噴出している状態で使用する。
【0047】
そして、本実施例では、第2槽9に浸漬されたホテルパン31,32には調理で使用する調味料や仕上がった料理にかけるソース等が入れられて温められ、第3槽10に浸漬された茹で籠33には野菜や肉等の食材が入れられてボイル・湯がき処理が行われる。
【0048】
また、ホテルパン31は、第2槽9内の第1槽8に近い位置に配置されて低い温度で温められ、又、第3槽10に近い位置に配置されたホテルパン32は高い温度で温められる。よって、温めるソース等はその必要とする温度によって、使用するホテルパン31,32を選択する。一方、第3槽10に浸漬された茹で籠33に入れられた食材は、沸騰板13の噴流孔14,14…からの噴流によって茹で籠33内で適度に攪拌され、均一に熱が伝達されて火通しの効率が高められる。そして、ウォーマ処理を終えたソースや湯がき処理を完了した食材は、調理槽3からホテルパン31,32及び茹で籠33毎取り出し、所定の位置に移動させることができる。
【0049】
一方、調理中、調理槽3内には水道水等の差し水が仕切板部6の開口部15から第1の部屋18内に直接注入され、あるいは第3槽10内の水が第1の部屋18内に戻されて循環される。該差し水あるいは循環水は、第1の部屋18から第1槽8を画定している第2の部屋19内に流れ込み、該第2の部屋19内で湯と混合して加温され、さらに貫通孔20,20から第2槽9内へ流れ出る。これにより、差し水を行っても、第2槽9及び第3槽10における湯温の急激な低下を最小限に留めることができる。また、第3槽10内の湯を第1槽8に循環させた場合では、調理槽3内全体の湯温を高く保持することができ、エネルギーの無駄が少なく、経済性が高まる。
【0050】
したがって、本実施例の食品調理装置1によれば、第2槽9内でホテルパン31,32等の容器を使用して液状調味料やたれ等を温めるウォーマ処理(中温加熱処理)を行い、第3槽10内で茹で籠33等の容器を使用して食材のボイル・湯がき等の高温加熱処理を行うというように、1つの食品調理装置1で高温加熱処理と中温加熱処理を同時に行うことができるので、作業を能率的に行うことができ、作業性の効率化が図れる。また、無駄のない熱利用が可能になるのでエネルギーコストの改善が図れる。
【0051】
さらに、ウォーマ処理を終えたソースや湯がき処理を終えた食材は、調理槽3からホテルパン31,32及び茹で籠33等の容器毎に取り出されるので、さらに作業の効率化が図れる。また、調理後の清掃もスムーズに行える。
【0052】
一方、食品調理用の水(湯)が蒸発等により減少し、差し水を行う場合も、第2槽9及び第3槽10における湯温の急激な低下が防止され、最小限に留めることができる。これに
より、第2槽9及び第3槽10における湯温を常に安定的に保つことができ、品質の向上が図れる。また、例えば中華料理やしゃぶしゃぶ等の料理を少量のみならず比較的大量にも提供することが可能になる。
【0053】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【0054】
例えば、上記実施例の構造では、調理槽3内の一部を仕切って第1槽8を画定している仕切板部6を、第1の部屋18と第2の部屋19を設けたタンクとして成る構造を開示したが、前記仕切板部7と同じように一枚の仕切板とし、該仕切板で調理槽3内を区切って第1槽8を画定する。そして、第1槽8内に差し水を直接注入し、これが第2槽9側に溢流するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は中華料理やしゃぶしゃぶ料理以外の料理を前処理する食品調理装置にも応用できる。
【符号の説明】
【0056】
1 食品調理装置
2 装置本体
3 調理槽
4 外周ハウジング
4a 上面開口部
5 ガスバーナ
6 仕切板部
7 仕切板部
8 第1槽
9 第2槽
10 第3槽
11 底部
12 隙間
13 沸騰板
14 噴流孔
15 開口部
16 段差部
17 中仕切り
17a 上端部
18 第1の部屋
19 第2の部屋
20 貫通孔
21 熱交換部材
31,32 ホテルパン
33 茹で籠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品調理用の水を収容する調理槽と、該調理槽の外部から前記調理槽内の水を加熱する加熱源とを備えた食品調理装置において、
前記調理槽は、前記水を収容するための槽を画定している上面が開口された外周ハウジングと、該外周ハウジングの前記槽内を少なくとも第1槽,第2槽,第3槽の3つの槽に仕切る2つの仕切板部とを備えるとともに、前記水が前記第1槽から前記第2槽内を通って前記第3槽内へ順に流下するように構成して成り、さらに前記加熱源を前記外周ハウジングの底部を加熱可能に該底部の下側に配設して成ることを特徴とする食品調理装置。
【請求項2】
上記第1槽を画定する仕切板部は、中仕切りを設けて、差し水が直接流れ込む第1の部屋と該差し水と上記加熱源により温められた湯を混合させて上記第2槽内へ送り出す第2の部屋を有するタンクとして形成されていることを特徴とする請求項1記載の食品調理装置。
【請求項3】
上記加熱源は上記第3槽に対応して設けられ、かつ、上記調理槽は上記外周ハウジングの底部と上記各槽との間に隙間を設けて前記底部上に配設された沸騰板を備えることを特徴とする請求項1または2記載の食品調理装置。
【請求項4】
上記沸騰板は、上記外周ハウジングの底部と該沸騰板との間で沸騰している水を前記第3槽内へ噴出させる噴流孔を上記第3槽と対応する位置に設けたことを特徴とする請求項3記載の食品調理装置。
【請求項5】
上記外周ハウジングの底面下側に、上記加熱源と熱交換する熱交換部材を設けたことを特徴とする請求項1,2,3または4記載の食品調理装置。
【請求項6】
上記第3槽内の水を上記第1槽内に戻して上記調理槽内の水を循環させることを特徴とする請求項1,2,3,4または5記載の食品調理装置。
【請求項7】
上記第2槽内の湯温が80〜95℃に保持されて成るウォーマ槽を構成し、かつ、上記第3槽の湯温がほぼ100℃に保持されて成る加熱槽を構成し、それぞれ食材を前処理することを特徴とする請求項1,2,3,4,5または6記載の食品調理装置を用いた食品調理方法。
【請求項8】
上記ウォーマ槽と上記加熱槽にそれぞれ取り外し可能な容器を取り付けるとともに、該容器内に食材を入れて前処理することを特徴とする請求項7記載の食品調理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−279503(P2010−279503A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134441(P2009−134441)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(592193535)タニコー株式会社 (46)
【Fターム(参考)】