説明

食器洗浄機用液体洗浄剤組成物

【課題】タンパク汚れ等に対して優れた洗浄力を有し、且つ抑泡性にも優れた食器洗浄機用液体洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】一般式(I)で表される特定のPO・EO・PO型ノニオン性界面活性剤(A)0.1重量%以上1重量%未満、ビルダー(B)、及びアルケニルコハク酸金属塩(C)を含有し、(A)と(C)の重量比が(C)/(A)=2/3〜10/1である、食器洗浄機用液体洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食器洗浄機用液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
食器洗浄機は汚れた皿、グラス、料理器具などの食器を洗浄する設備であり、家庭やレストラン、喫茶店などの厨房で使用されている。通常、食器洗浄は洗浄工程―濯ぎ工程の順で行われ、洗浄工程には手洗い用食器洗浄剤と異なる、無泡性或いは低泡性の食器洗浄機用洗浄剤が使用されている。また、レストラン、喫茶店などの厨房で使用されている業務用食器洗浄機には濯ぎ工程でリンス剤が使用されている。
【0003】
これらの食器洗浄機用洗浄剤組成物には、強固な油脂汚れを落とすことを目的として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなどのアルカリ剤が配合されている。水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを5%以上含む食器洗浄機用洗浄剤組成物は、「医薬用外劇物」となり、専門的な知識や取り扱いに注意を要する。また、上記アルカリ剤を含む食器洗浄機用洗浄剤組成物は、ガラス製食器を浸食したり、アルミ製食器を黒変させたりする恐れがある。更に、飛散して皮膚に付着した場合には強い刺激性を与えたり、眼に入った場合には失明したりすることがあるため、作業者は安全のために必ず適切な手袋や保護メガネを着用しなければならない。そこで、上記アルカリ剤の代わりに油汚れに対して高い洗浄性を有する各種界面活性剤を配合した、中性タイプの食器洗浄機用洗浄剤組成物が提案されている。しかし、泡立ちが多く、ポンプを介したノズル噴射式の機械洗浄に適していないものがある。
【0004】
また、強アルカリ剤とされる水酸化アルカリ金属塩の配合割合を減らして環境への負荷を低減でき、洗浄性能、低泡性と、貯蔵安定性、すすぎ後の仕上がり性に優れた液体洗浄剤組成物を提供するために、特許文献1では、アルカリ剤、金属イオン封鎖剤、アルケニルジカルボン酸ジアルカリ金属塩からなる可溶化剤、非イオン界面活性剤を特定条件で用いることを提案している。
【特許文献1】特開2001−316700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、洗浄性能を確保するために一定量の非イオン界面活性剤を配合することを必要としており、食器洗浄機用洗浄剤に要求される低泡性を、洗浄力を維持したまま十分に得ることは困難である。
【0006】
本発明の課題は、タンパク汚れ等に対して優れた洗浄力を有し、且つ抑泡性にも優れた食器洗浄機用液体洗浄剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記一般式(I)で表されるノニオン性界面活性剤(A)〔以下、(A)成分という〕0.1重量%以上1重量%未満、ビルダー(B)〔以下、(B)成分という〕、及びアルケニルコハク酸金属塩(C)〔以下、(C)成分という〕を含有し、(A)と(C)の重量比が(C)/(A)=2/3〜10/1である、食器洗浄機用液体洗浄剤組成物に関する。
HO(CH(CH3)CH2O)a(CH2CH2O)b(CH(CH3)CH2O)cH (I)
〔式中、a、b及びcは平均付加モル数であり、それぞれ独立して、1〜350の数である。〕
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、タンパク汚れ等に対して優れた洗浄力を有し、且つ抑泡性にも優れた食器洗浄機用液体洗浄剤組成物が得られる。本発明の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物では、少量のノニオン性界面活性剤でこのような効果が得られるため、ビルダーを含む系での均一配合の点でも有利であり、その結果、保存安定性も良好となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<(A)成分>
(A)成分の式(I)において、a、b及びcは、エチレンオキシド(以下、EOと表記する)ないしプロピレンオキシド(以下、POと表記する)の平均付加モル数であり、それぞれ独立して、1〜350の数である。
【0010】
(A)成分は、EOとPOの合計中、EOを10モル%以上含むことが好ましく、これを満たすようにa、b及びcを選定することが好ましい。
【0011】
また、(A)成分の重量平均分子量は、1,000〜15,000が好ましく、より好ましくは1,500〜6,000である。(A)成分は、「プルロニックRPE」の商品名でBASF社から入手可能である。
【0012】
<(B)成分>
(B)成分のビルダーの作用機構としては、金属キレート作用、アルカリ緩衝作用、及び固体粒子分散作用が重要である。
【0013】
無機ビルダーとしては、リン酸塩、炭酸塩、珪酸塩、硫酸塩が挙げられる。具体的には、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、オルソリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、メタ珪酸ナトリウムなどが挙げられる。また、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物も挙げられる。
【0014】
有機ビルダーとしては、(イ)エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,2−ジホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸及びその誘導体、エタンヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸などのホスホン酸の塩、(ロ)2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸、α−メチルホスホノコハク酸などのホスホノカルボン酸の塩、(ハ)アスパラギン酸、グルタミン酸などのアミノ酸の塩、(ニ)、ニトリロ三酢酸塩、エチレンジアミン四酢酸塩などのアミノポリ酢酸塩、(ホ)ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、テトラヒドロフラン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、テトラヒドロフラン−2,2,5,5−テトラカルボン酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、スルホコハク酸、リンゴ酸、グルコン酸などの有機酸の塩、(ヘ)ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸/ポリマレイン酸共重合高分子化合物及びその塩などが挙げられる。
【0015】
<(C)成分>
(C)成分のアルケニルコハク酸金属塩は、炭素数8〜22、更に炭素数10〜16のアルケニル基を有するものが好ましい。また、金属塩は、カリウム塩、ナトリウム塩が挙げられ、組成物中の溶解性、溶液安定性の観点から、カリウム塩が好ましい。また、塩は、モノ塩、ジ塩でもよく、ジ塩が好ましい。(C)成分としては、炭素数12〜14のアルケニル基を有するアルケニルコハク酸ジカリウム塩が好ましい。
【0016】
<食器洗浄機用液体洗浄剤組成物>
本発明の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物において、(A)成分の含有量は、抑泡性の観点から、0.1重量%以上1重量%未満であり、好ましくは0.2〜0.9重量%、より好ましくは0.3〜0.9重量%、更に好ましくは0.5〜0.8重量%である。
【0017】
また、本発明の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物は、(B)成分を、洗浄性及び溶液安定性の観点から、好ましくは1〜80重量%、より好ましくは5〜60重量%、更に好ましくは10〜50重量%、より更に好ましくは10〜40重量%含有する。
【0018】
また、本発明の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物は、(C)成分を、洗浄性及び抑泡性の観点から、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜8重量%、更に好ましくは1〜5重量%、より更に好ましくは1〜3重量%含有する。
【0019】
また、本発明の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物では、(A)成分と(C)成分の重量比が(C)/(A)=2/3〜10/1であり、好ましくは1/1〜8/1、より好ましくは2/1〜6/1である。本発明では、このような重量比で(A)成分と(C)成分を併用することにより、洗浄力(なかでもタンパク汚れに対する洗浄力)が向上することから、(A)成分の配合量が少量であっても良好な洗浄性が確保できる。その結果、食器洗浄機用液体洗浄剤組成物に要求される抑泡性を実現でき、しかも、(A)成分の配合量が少量でよいことは、ビルダーである(B)成分を含む系の均一化の点でも有利となる。
【0020】
本発明の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物の残部は通常、水である。また、本発明の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物は、原液又は1重量%濃度の水溶液のpHが、25℃で10〜13、更に11〜12であることが好ましい。
【0021】
その他、(C)成分以外のアニオン性界面活性剤、(A)成分以外のノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、酵素、漂白剤、消泡剤、防錆剤、ハイドロトロープ剤、表面改質剤、香料などを含有することができる。
【0022】
上記の成分は、国際公開第99/58633号パンフレットに記載されているものを参照できる。
【0023】
本発明の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物は、使用にあっては水等で適当な濃度に希釈した洗浄液として用いられることが好ましい。
【0024】
本発明の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物を用いた業務用食器洗浄機による洗浄の際には、該組成物は、供給装置によって業務用食器洗浄機内部に一定量任意に移送され、適正な洗浄液の濃度が維持される。食器洗浄機用液体洗浄剤組成物は、業務用食器洗浄機専用のチューブを食器洗浄機用液体洗浄剤組成物が充填されたプラスチック等の容器の中に直接差し込み吸い上げられて、業務用食器洗浄機内部へ供給される。
【0025】
本発明の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物は、洗浄液中の濃度が0.05〜0.5重量%で使用されるが、経済性、洗浄性の観点から、0.05〜0.3重量%が好ましく、さらに0.05〜0.2重量%が好ましい。食器の洗浄時間は、洗浄性の観点から、10秒〜3分が好ましく、さらに好ましくは、20秒〜2分である。洗浄液の洗浄温度は、短時間での洗浄性を高めるためには、非常に重要で40℃以上が好ましく、特に40〜70℃が好ましい。食器は洗浄された後、通常、同じ業務用食器洗浄機にて速やかに60〜90℃の温水で濯ぎが行われる。濯ぎは60〜90℃の温水のみで行うことができる。
【0026】
業務用食器洗浄機では、食器を連続洗浄する場合、洗浄液はポンプで循環させて繰り返し使用し、洗浄している。
【0027】
業務用食器洗浄機により食器を連続洗浄する場合、食器による洗浄液の持ち出しや、洗浄槽への濯ぎ水のキャリーオーバーなどによって、洗浄回数とともに洗浄液の濃度が減少する。適切な洗浄液の濃度を維持するため、自動供給装置によって適正濃度となるように食器洗浄機用液体洗浄剤組成物が供給される。
【0028】
食器洗浄機用液体洗浄剤組成物の自動供給装置としては、特に限定されるものではないが、洗浄液の濃度をセンシングし、シグナルを受信して、チューブポンプを駆動させて、必要量の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物を供給する。
【0029】
この自動供給装置は、1日の洗浄回数が非常に多い業務用には好適に用いられ、洗浄回数毎の手投入に比べ、格段に手間が省けるという利点があり、またそれ以外に、1日中(洗浄中)適正濃度を維持することが容易となる。
【実施例】
【0030】
表1に示した配合組成の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物(何れもpH11.8/25℃)を調製し、以下の方法で洗浄性と抑泡性を評価した。結果を表1に示す。
【0031】
〔洗浄性評価〕
〔1〕洗浄性評価
・モデル汚垢の作製
(変性卵黄汚れ)
新品の直径20cmの磁器製皿の中央部に、卵黄2gを刷毛で直径約10cmの円形に均一塗布し、80℃に設定した電気乾燥機に入れた。30分後、卵黄を塗布した磁器製皿を取り出して、自然冷却したものを変性卵黄汚れ(タンパク汚れ)のモデル汚垢として洗浄性評価に用いた。
(油汚れ)
新品の直径20cmのポリプロピレン(PP)製皿の中央部に、市販サラダ油をスダンIV 0.1重量%にて着色したもの5gを直径約10cmの円形に均一塗布、油汚れのモデル汚垢として、洗浄性評価に用いた。
【0032】
・評価方法
業務用食器洗浄機〔三洋電機(株)製 SANYO DR53〕の洗浄槽(38L)に食器洗浄機用液体洗浄剤組成物57gを投入して、50℃の温水で溶解させた。専用ラックにモデル汚垢を塗布した皿4枚(変性卵黄汚れ2枚、油汚れ2枚)をセットして、50℃の洗浄液にて1分間洗浄した後、リンス剤を用いることなく80℃の濯ぎ水にて8秒間濯いだ。専用ラックから磁器製皿(変性卵黄汚れ2枚)を取り出し、エリスロシン色素1重量%水溶液にて着色させて、以下に示した判定基準にて洗浄性を評価した。またPP皿(油汚れ2枚)は、ノルマルヘキサン100gにて完全にすすぎ、ディスポーセルに取り出し、HITACHI製分光光度系(520nm)にて測色を実施。検量線より皿1枚当たりの油の残存量(mg)を算出、以下に示した判定基準にて洗浄性を評価した。
【0033】
*変性卵黄汚れ洗浄性の判定基準
◎;着色痕は全く認められず、完全に汚れが除去
○;僅かな着色痕を認めるが、殆どの汚れが除去
△;明らかに着色痕を認め、半量程度の汚れが残留
×;殆どに着色痕が認められ、多くの汚れが残留
【0034】
*油汚れ洗浄性の判定基準
◎;油の残存量が10mg未満
○;油の残存量が10mg以上〜20mg未満
△;油の残存量が20mg以上〜30mg未満
×;油の残存量が30mg以上
【0035】
〔2〕抑泡性評価
・評価方法
業務用食器洗浄機〔三洋電機(株)製 SANYO DR53〕の洗浄槽(38L)に牛乳40g、菜種油20g、食器洗浄機用液体洗浄剤組成物57gを投入して、50℃の温水で溶解させた。50℃の洗浄液にて1分間洗浄した後、リンス剤を用いることなく80℃の濯ぎ水にて8秒間濯ぎ、直後の洗浄機内の泡の立ち方を、以下に示した判定基準にて抑泡性を評価した。
◎;泡が殆ど観察されない
○;薄い泡があるが直ぐ消える
△;厚みのある泡が立つが洗浄機から溢れることはない。
×;厚みのある泡が立って、洗浄機から溢れる。
【0036】
【表1】

【0037】
表1の結果から、本発明の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物は、洗浄性、抑泡性に優れていることが明らかとなった。
【0038】
また、表中の成分は以下のものである。
・ポリアクリル酸、カリウム塩:オリゴマーM3(花王(株)製)
・アルケニルコハク酸カリウム:ラテムルDSK(花王(株)製)
・ノニオン性界面活性剤A1:PO・EO・POブロックポリマー、Pluronic RPE2520(BASF社製)
・ノニオン性界面活性剤A2:下記一般式(I’)で表されるノニオン性界面活性剤であって、式(I’)中のR1bが炭素数12の直鎖アルキル基、p=3、q=1.5、r=3のノニオン性界面活性剤
1b−O−(EO)p−(PO)q−(EO)r−H (I’)
・ノニオン性界面活性剤A3:下記一般式(I'')で表されるノニオン性界面活性剤であって、式(I'')中のR2bが分岐ラウリル基、s=7、t=8.5のノニオン性界面活性剤(エチレンオキシド平均付加モル数7、プロピレンオキシド平均付加モル数8.5、分岐ラウリル基にポリオキシエチレン鎖が結合したブロック付加物)
2b−O−(EO)s−(PO)t−H (I'')

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるノニオン性界面活性剤(A)0.1重量%以上1重量%未満、ビルダー(B)、及びアルケニルコハク酸金属塩(C)を含有し、(A)と(C)の重量比が(C)/(A)=2/3〜10/1である、食器洗浄機用液体洗浄剤組成物。
HO(CH(CH3)CH2O)a(CH2CH2O)b(CH(CH3)CH2O)cH (I)
〔式中、a、b及びcは平均付加モル数であり、それぞれ独立して、1〜350の数である。〕
【請求項2】
(A)と(C)の重量比が(C)/(A)=2/1〜6/1である、請求項1記載の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
(C)が、アルケニルコハク酸カリウム塩である、請求項1又は2記載の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2010−47731(P2010−47731A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215454(P2008−215454)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】