説明

食料保管庫および食料保管方法

【課題】品質保存性ガスの食料保管庫内への放出量を簡易にコントロールできる食料保管庫および食料保管方法を提供する。
【解決手段】品質保存性ガスを揮散する、天然抽出成分を含有した品質保存剤1を収容した食料保管庫10において、品質保存剤1を、少なくもその本体部21が、品質保存性ガスを透過するガス透過素材で形成された蓋付き容器20内に封じ込めたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、品質保存性ガスを揮散する、天然抽出成分を含有した品質保存剤を収容した食料保管庫および食料保管方法の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、わさびや唐辛子などから抽出される天然抽出成分を含んだ品質保存剤が多く提案され、市販されている。この種の品質保存剤は、含有されている天然抽出成分が揮発して、防虫、防菌、防カビ効果を有したガスが揮散されるため、品質保存剤を食料保管庫内に設置することで、食料保管庫内の食料の品質劣化を遅延させることができる。
【0003】
この種の品質保存剤として、たとえば冷蔵庫、弁当箱用の食品品質劣化防止剤や、エアコン用の防カビ、防菌剤などが製品化されている。これらの製品は、カートリッジとしてそのまま交換できるようにフィルムなどに包まれており、そのカートリッジをさらに本体容器に入れるか、あるいはそのままの状態で対象容器、機器内に設置できるようになっている。
【0004】
ところで、このような利用対象が特定された品質保存剤カートリッジは、他の対象容器、機器に利用しても効果は認められるが、たとえば冷蔵庫用の製品を食料保管庫に利用すると、常温での使用であるため、天然抽出成分ガスが多量に揮散して保管庫内のガス濃度が異常に高濃度となり、薬効期間が早く切れて、製品は長持ちしない。
【0005】
また、食料保管庫にエアコン用のカートリッジを代用する場合、フィルムにより揮散制御がなされているものの、保管庫内の大きな空間では揮散量が増大し、やはり品質保存剤の寿命は短くなる。
【0006】
このような問題を解決するためには、品質保存剤カートリッジを、さらに有孔ケースなどに収納させて二重収納構造にすることで、ガスの揮散を抑制することが想定できる。
【0007】
たとえば特許文献1には、天然抽出物抗菌剤を収納し底面に通気孔を設けた容器を、食品収納容器の蓋に組み込んで、その容器の内底面にポリウレタン系形状記憶樹脂からなるガス透過膜を設置したものが記載されている。つまり、このものは、ガス透過膜を介在させることで、ガス透過量が制限され、ガスの食料収納空間へのガス放出量を抑制できる構造となっている。
【特許文献1】特開平10−57029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記文献のものは、ガス透過膜を、透過性の異なる他のガス透過素材に取り替えることでガス透過量の抑制度合いをコントロールすることはできるが、ガス透過膜を容器の一部分(底面)のみに取り付けた構造であるため、その一部分だけの透過性を可変させても、単位時間当たりのガス透過量を微調整できる程度にすぎない。また、いったん使用を開始してからガス透過膜を取り替えることは構造上、困難であると予想される。
【0009】
さらに、上記文献の発明は、ガス透過膜として使用されるポリウレタン系形状記憶樹脂が感温素材であり、同文献に添付された図4などが教示するように、同文献発明はガスの発散を温度によってコントロールすることをねらった発明であり、使用目的や使用期間に応じてガス発散量をコントロールすることを想定したものではない。
【0010】
本発明は、このような事情を考慮して提案されたもので、その目的は、品質保存性ガスの食料保管庫内への放出量を簡易にコントロールできる食料保管庫および食料保管方法を提供することにある。
【0011】
また、本発明者の実験によれば、カートリッジ化された品質保存剤を食料保管庫内に設置する場合、品質保存剤の食料保管庫内への設置初期の段階では多量のガスが揮散し、その後、時間の経過にしたがい、ガス揮散による品質保存成分の減少などによって、単位時間当たりのガス揮散量が減少し、安定化することが判明しているが、このように経過時間による効果の差異を調整できる食料保管方法を提供することも本発明の目的に含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の食料保管庫は、品質保存性ガスを揮散する、天然抽出成分を含有した品質保存剤を収容した食料保管庫において、品質保存剤を、少なくもその本体部が、品質保存性ガスを透過するガス透過素材で形成された蓋付き容器内に封じ込めたことを特徴とする。
【0013】
請求項2では、ガス透過素材がガス透過性樹脂である。
【0014】
請求項3では、蓋付き容器は、品質保存剤から食料保管庫内に揮散される品質保存性ガスの単位時間当たりのガス透過量を、使用態様に応じて可変させる構成としている。
【0015】
請求項4に記載の食料保管庫は、蓋付き容器の蓋を取り替えることで、ガス透過量を可変させる構成にしている。
【0016】
請求項5に記載の食料保管庫は、蓋付き容器にガス透過制御板を取り付け、あるいは取り外しすることで、ガス透過量を可変させる構成にしている。
【0017】
請求項6に記載の食料保管庫は、蓋付き容器を取り替えることで、ガス透過量を可変させる構成にしている。
【0018】
請求項7に記載の食料保管方法は、請求項3〜6のいずれかに記載の蓋付き容器を、食料保管庫内に取替え収容させることで、品質保存剤の初期使用時において食料保管庫内に揮散される品質保存性ガスの単位時間当たりのガス透過量を抑制して、食料保管庫内に収容された食品の品質劣化を遅延させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の食料保管庫によれば、天然抽出成分を含有した品質保存剤を、少なくもその本体部が品質保存性ガスを透過するガス透過素材で形成された蓋付き容器内に封じ込めて、二重構造にして保管庫内に収容しているため、揮散性のある品質保存性ガスの透過量を抑制でき、食料保管庫内のガス濃度が異常に高くなることを防止できる。そのため、ガスの揮散制御と品質保存剤の薬効期間の長期化を図りながら、食料保管庫内の害虫忌避、菌、カビの繁殖を防止できる。
【0020】
また、品質保存剤をガス透過素材の容器に収容する構成であるため、ガス放出のためにガス通過口を加工、形成しなくてもよく、製造コストを抑えることができる。
【0021】
請求項2に記載の食料保管庫によれば、ガス透過素材がガス透過性樹脂であり、一定の分子構造を有し、ガスをその素材に吸着させて、分子間よりガスを放出する構造であるため、蓋付き容器のガス透過面積、肉厚、容積などのガス透過量変動要因に応じてガス透過量をコントロールできる。また、ガス透過性樹脂としてポリプロピレンなどの安価な樹脂を使用することで、製造コストのかからない食料保管庫を提供できる。
【0022】
請求項3に記載の食料保管庫によれば、品質保存剤から食料保管庫内に揮散される品質保存性ガスの単位時間当たりのガス透過量を、使用態様に応じて可変させる構造としているため、保管庫の種類、サイズ、収容食料の量、種類など使用目的に合致したガス透過量をあらかじめ設計できる。また、品質保存剤のガス揮散量が経時的に変動しても、ガス透過量変動要因を変動させることで、蓋付き容器からのガス透過量を一定にできる。
【0023】
請求項4に記載の食料保管庫によれば、蓋付き容器の蓋を取り替えることのできる構成であるため、使用態様に応じて、透過性の異なる複数の蓋の中から適度なものを選択して使用すれば、最適のガス透過量にコントロールできる。
【0024】
請求項5に記載の食料保管庫によれば、蓋付き容器へのガス透過制御板の取り付け、取り外しでできる構成としているため、簡易にガス透過量をコントロールでき、品質保存剤のガス揮散量の経時的な変動にも迅速に対応できる。また、蓋付き容器が複数平面を有した箱体である場合には、それらの平面に、複数のガス透過制御板を組み合わせ付加することによって、ガス透過量の微妙な調整もできる。
【0025】
請求項6に記載の食料保管庫によれば、容器自体を取り替えてガス透過量を可変にする構成であるため、食料保管庫内へのガス放出量の調整が、手軽に行える。
【0026】
請求項7に記載の食料保管方法によれば、請求項3〜6のいずれかに記載の蓋付き容器を、食料保管庫内に取替え収容させる方法であるため、品質保存剤の初期使用時において食料保管庫内に揮散される品質保存性ガスの単位時間当たりのガス透過量を抑制でき、そのため品質保存剤の寿命が伸びて、食料保管庫内に収容された食品の品質劣化を遅延させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面とともに説明する。
【0028】
図1は、本発明の食料保管庫の一実施形態を示す概略斜視図である。図2は、食料保管庫内に設置される蓋付き容器の開蓋状態を示した斜視図である。
【0029】
同食料保管庫10は、キッチンキャビネット(不図示)などに組み込まれ、前方開口12を有した箱体11と、その前方開口12を開閉自在に塞ぐ両開きの開き扉13とよりなり、内部に食料収納空間14を有している。なお、このような食料保管庫10は、カップボード、パントリーなどにも組み込むことも可能である。
【0030】
食料保管庫10内の食料収納空間14は、じゃがいも、さつまいも、ほうれん草、小松菜などの根菜類や、みかん、りんごなどの果物などの生鮮食料品の保管用空間として形成されている。なお食料収納空間14は、個別収容が可能な網カゴ(不図示)などを積み重ねたり、並べたりして使用することが望ましい。
【0031】
食料収納空間14の奥壁15には、箱形の蓋付き容器20が配設されており、その容器20内には、取替え可能で天然抽出成分を含有した品質保存剤カートリッジ1が収容されている。本例では、蓋付き容器20を食料保管庫10内の奥壁15に固着させているが、固着箇所は限定されず、また、固定せずに載置するだけでもよいし、容器20の外面が保管庫内に接触しないように吊り下げてもよい。
【0032】
この蓋付き容器20は、開口21aを有し、4側壁21bと底部21cとよりなる本体部21と、その本体部21に着脱可能に嵌着される密閉蓋22とよりなる。ここに、密閉蓋22は、簡易な密閉構造でよい。したがって、本発明の目的が達成できれば、本体部21との間に多少の隙間を生じるものであってもよい。本例では密閉蓋22は蓋22の裏側の内周部に突出形成した係合部22aで、本体部21の開口21aに弾性的に係合、嵌着できる簡易な密閉構造になっている。
【0033】
容器20の少なくとも本体部21は、ポリプロピレン、ポリスチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンなどの樹脂で製されている。この樹脂素材は、品質保存剤1から揮散される天然抽出成分を含んだガスを吸着させて、樹脂の分子間を通過させる構造を有している。なお、ガス透過が可能な上記以外のガス透過素材を使用してもよい。
【0034】
また、蓋22の素材は限定されないが、たとえば市販されているタッパーウェア(登録商標)などのように、本体部21と蓋22とが同一素材で製されたものを使用すれば、簡易に構成できる。
【0035】
品質保存剤カートリッジ1は、防虫(忌避、殺虫)および殺菌、抗菌、消臭、防カビ、抗酸化、鮮度保持などの品質保持を目的としたワサビ成分(ワサビオイル、イソチオシアン酸アリル)を含有、固化した固形物(不図示)を有孔フィルムなどに収納させたもので、常温で放置しておくと、固形物からは、ガスが揮散(昇華)し、カートリッジから排出して、防虫および殺菌、抗菌、消臭、防カビ、抗酸化、鮮度保持などの各効果を発揮する。
【0036】
なお、ワサビエキスは固形物に限られず、粉末、顆粒または液状物であってもよい。また、ガス排出口付きのカートリッジフィルムに代えて、有孔ケースや、和紙、不織布、織布などで製された袋体に品質保存剤を収納させてもよい。
【0037】
さらに、品質保存剤1は、ワサビエキスに加えてまたは代えて、その他の天然抽出成分を含んでもよく、たとえば、唐辛子成分(カプサイシン)、ニンニク成分(アリシン)のほか、しょうが、はっか、こしょう、山椒、マスタード、ジンジャー、ヒノキ(ヒノキチオール)、竹、シソ、バジル、ローズマリー、シナモン、バナナ、ハーブ、クローブ、シナモン、カルダモン、ナツメグなどの天然抽出成分を選択的に組み合わせて調合されたものでもよい。このような品質保存剤の固形物からは、少なくとも空気の比重よりも大きいガスが揮散されることが望ましい。
【0038】
また品質保存剤1は、その用途、成分ごとに別体として生成して、それらをカートリッジフィルム内に混合するようにしてもよい。なお、品質保存剤1には防腐剤を添加してもよい。また、粒状、粉状などの固形物の品質保存剤1をそのまま蓋付き容器20に収容させてもよい。
【0039】
また、品質保存剤カートリッジ1として、カビが発生しやすいエアコンの内部環境に対応した強力な防カビ、防菌効果を有したエアコン用のカートリッジを使用してもよい。本例では、「松下電器産業株式会社製、エアコン用わさび防カビパック、CZ−SW6」を使用している。
【0040】
このような品質保存剤カートリッジ1は、蓋付き容器20内の一定位置に保持されるように、図2に示すように本体部21の内底面か、あるいは蓋22の裏側などに両面テープなどで固着することが望ましい。
【0041】
このように、品質保存剤1をそのまま食料保管庫10内に設置せず、ガス透過樹脂製の蓋付き容器20に封じ込めて、品質保存剤1より揮散した品質保存性ガスを、蓋付き容器20の樹脂素材の分子間を透過させて外部に放出させる構造としているため、食料収納空間14へのガス放出量を抑えることができる。
【0042】
したがって、本例のように効果の強力なエアコン用の品質保存剤カートリッジ1を、食料保管庫10の品質保持剤として使用しても、樹脂分子間の透過によるガス希薄効果により、単位時間当たりのガス透過量が抑制され、食料保管庫内のガス濃度が異常に高くなることを防止し、そのため品質保存剤1の薬効期間の長期化が図れ、品質保存剤1を長持ちさせることができる。
【0043】
また、ガス透過素材が、一定の分子構造を有し、ガスをその素材に吸着させて、分子間よりガスを透過できるガス透過樹脂で構成されているため、バラツキなくガス透過量を調整できる。さらに、ガス透過性樹脂としてポリプロピレンなどの安価な樹脂を使用することで、製造コストのかからない食料保管庫を提供できる。
【0044】
樹脂容器内部からの単位時間当たりのガス透過放出量は、たとえば蓋付き容器20の、食料収納空間14との接触面積(ガス透過面積)、容積、肉厚などを要因として可変する。したがって、蓋付き容器20の上記ガス透過量変動要因を変化させることで、ガス透過量が、食料保管庫10の種類、サイズ、収容食料の量、種類など使用目的または使用期間に応じた値となるように調整することができる。
【0045】
たとえば、図1、2の例では、蓋付き容器20の底部21cを食料保管庫10内の奥壁15に固着させて底部21cからのガス透過を禁止しているが、同種の容器20を、その側面を保管庫10内の壁面などに固着させるよう設置すれば、食料収納空間14との接触面積が増加するため、単位時間当たりのガス透過量は増加する。つまり、食料収納空間14の容積の異なる食料保管庫10に同種の品質保存剤を設置する場合でも、蓋付き容器20の設置態様を、それらの食料収納空間の容積に応じて相互に異ならせれば、ガス透過量を食料保管庫間でほぼ同一に調整することができる。
【0046】
このように、蓋付き容器20の、ガス透過面積などのガス透過量変動要因を調整することで食料保管庫10内のガス放出量が抑制できるので、食料保管庫10の容積に比してガス揮散量の多い品質保存剤1を使用する場合でも、ガス放出量を、食料保管庫に見合った適切な量とすることができる。
【0047】
また、本例で使用したような市販の品質保存剤1は、商品パッケージを開封し、使用を開始した初期段階では、単位時間当たりのガス揮散量は多く、その後、減少することが知られているが、このように経時的にガス揮散量が変動する品質保存剤1を使用する場合も、時間の経過に応じて、蓋付き容器20のガス透過量変動要因を変化させることで、経時的な変動を抑えて、ガス放出量を一定にすることができる。そのため、設置初期段階での品質保存剤1の無駄使いが防止でき、品質保存剤1が長持ちし、1つのカートリッジでの食料保管庫10内の食料の品質保持期間を伸ばすことができる。
【0048】
なお、本例に示した、比重が空気より大きく天然抽出成分を含んだ品質保存性ガスは、食料保管庫10の食料収納空間14の下方部より上方部へと溜まってゆくことで、空気より比重の小さい、根菜類や果物から発生する成熟ホルモンであるエチレンガスを上方へと押しやられ、その結果、そのようなエチレンガスは、食料保管庫10の開口部12にできた扉13との上方隙間(不図示)などから排出される。
【0049】
また、開口部12の上方の一部分を除いて気密な構造とすれば、空気より重い品質保存性ガスは、外部に漏れずに、食料収納空間14の下部に溜まってゆくため、品質保存効果をさらに持続させることができる。
【0050】
図3〜図5は、ガス透過量変動要因を調節することで単位時間当たりのガス放出量を可変させる三つの代表的な態様を示した図である。
【0051】
図3は、蓋付き容器20の蓋22を取り替えることでガス透過量を可変させる態様を説明する図で、図3(a)〜(c)は、形状を異ならせた蓋を裏側から見た斜視図である。また、図3(b)、(c)は、蓋に高さを設けて、側面からのガス透過も可能とした例である。
【0052】
このような蓋22を使用目的、使用期間に応じて使い分けることで、食料収納空間14(図1参照)との接触面積を調節でき、食料収納空間14へのガス放出量を可変させることができる。
【0053】
たとえば、食料保管庫10への設置初期の、品質保存剤1のガス揮散量の多い段階では、図3(a)に示した表面積の小さい蓋22を使用して単位時間当たりのガス透過量を抑制し、その後、ガス揮散量が減少した段階で、図3(b)、(c)など表面積の大きい蓋22に取り替えることで、食料収納空間へのガス放出量の一定化が図れる。また、蓋22を取り替える構成であるため、本体部21を食料保管庫10内に固着させた状態で使用してもよい。
【0054】
なお、取替え態様としては、図3のように蓋22の表面積サイズを異ならせる方法に限定されず、素材を変えることでガス透過度合いを異ならせる方法が採用できる。また、開口を有した蓋(不図示)などを使用してもよい。
【0055】
図4は、ガス透過制御板25を蓋付き容器20に取り付け、取り外しすることでガス透過量を可変させる方法を説明するための図である。なお本図では、蓋の図示は省略している。
【0056】
この蓋付き容器20は、図示するように、容器20の本体部21の4側壁21bのうちの1面の内方に板挿入部23が形成されており、その挿入部23にガス透過制御板25を差し入れることで、その側壁21bを塞いで容器全体のガス透過を抑制する構造となっている。なお、ガス透過制御板としてガスが透過しない遮蔽板を使用して、その側壁21bからのガス透過を完全に遮断するようにしてもよいし、ガス透過制御板としてガス透過板を使用して、つまりガス透過板の重ね合わせによって、その側壁からのガス透過量を軽減させるようにしてもよい。
【0057】
また図4では、1側壁21bのみにガス透過制御板25を付加する構造を例示しているが、4側壁21b、蓋22、底部21cのいずれにもガス透過制御板25を付加できる構造としてもよい。そのように複数のガス透過制御板25を組み合わせることで、単位時間当たりのガス透過量の微妙な調整も行える。
【0058】
さらに、図例のように側壁21bを塞ぐ構成ではなく、ガス非透過材などよりなる落とし蓋のような内蓋(不図示)からなるガス透過制御板を、ガスが漏れないように品質保存剤1の上から落とし込んで、蓋22からのガス透過を抑制してもよい。また、このようなガス透過制御板は、容器の内蓋として予め複数枚を準備しておき、使用期間、使用目的に応じて、重ね合わせる枚数を変化させる構造であってもよい。
【0059】
さらに、ガス透過制御板25は外面に取り付けるものでもよく、たとえばテープ状の制御板を貼り付けるようにしてもよい。
【0060】
このような構成によって、食料保管庫10(図1参照)への設置初期の、品質保存剤1のガス揮散量の多い段階では、ガス透過制御板25を付加することで単位時間当たりのガス透過量を抑制し、その後、ガス揮散量が減少した段階で、ガス透過制御板25を取り外すことで、食料収納空間14(図1参照)へのガス放出量の一定化が図れる。
【0061】
また本図例では、蓋付き容器20が複数平面を有した箱体であるため、複数のガス透過制御板25の組み合わせ付加によって、ガス透過量の微妙な調整も行える。
【0062】
図5は、蓋付き容器20を取り替えることでガス透過量を可変させる方法を説明するための図である。
【0063】
すなわち、図5に示すように、素材が同一で、サイズ(容積、表面積)の異なる複数の蓋付き容器20を用意し、食料保管庫10(図1参照)への設置初期の段階では、サイズの小さい蓋付き容器20を使用して単位時間当たりのガス透過量を抑制し、その後、ガス揮散量が減少した段階で、品質保存剤を大きいサイズの容器20に入れ替えることで、食料収納空間14(図1参照)へのガス放出量の一定化が図れる。
【0064】
また、蓋付き容器20の肉厚や素材を異ならせることで、単位時間当たりのガス透過量を可変させてもよい。
【0065】
このように容器20そのものを取り替えてガス透過量を可変にする構成であるため、サイズや用途の異なる種々の食料保管庫を備えた、ホテル、レストランなどの調理場での利用に適している。
【0066】
以上に示した構成によれば、いずれも、品質保存剤1から食料保管庫内に揮散される品質保存性ガスの単位時間当たりのガス透過量を、使用態様に応じて可変させる構造としているため、食料保管庫の種類、サイズ、収容食料の量、種類など使用目的に合致したガス透過量をあらかじめ設計できる。
【0067】
また、以上の例によれば種々のガス透過量調整方法が実現できるが、これらの態様を組み合わせることで、単位時間当たりのガス透過量のさらに微妙な調整が行える。たとえば、蓋付き容器20を容積の異なる4つの食料保管庫10に設置する場合、最も容量の大きいものでは吊り下げて設置し、2番目に大きいものでは底面を保管庫内に固着させるように設置し、3番目のものでは、底面を保管庫内に固着させるように設置し、かつガス透過制御板25で1側壁を塞ぐようにし、最も容量の小さいものでは、底面を保管庫内に固着させるように設置し、かつガス透過制御板25で2側壁を塞ぐようにすればよい。
【0068】
図6は、内部に米櫃を有した食料保管庫の斜視図である。
【0069】
この米櫃内蔵型食料保管庫30は、キッチンキャビネットなどに組み込まれるもので、前方開口32を有した箱体31と、その前方開口32を開閉自在に塞ぐ両開きの開き扉33を備えており、その箱体31の内部には収納空間36が形成されている。図例では、食料保管庫30が、収納空間36の上方側に設けた引出し部37と一体に形成されている。なお、このような食料保管庫30は、カップボード、パントリーなどにも組み込むことが可能である。
【0070】
食料保管庫30の収納空間36には、米櫃50が出し入れ自在に配設されており、仕切り壁40を介した米櫃50の側方空間が、食料収納部34として形成されている。また、図示するように、米櫃50と食料収納部34との間で気体が十分に流通できるように、仕切り壁40は低く形成されている。
【0071】
食料収納部34は、じゃがいも、さつまいも、ほうれん草、小松菜などの根菜類や、みかん、りんごなどの果物などの生鮮食料品の保管用空間として形成され、これらの食料品を直接載せ置くための金網棚41が、その下方に空間が形成されるように、仕切り壁40と側壁とに架け渡して設置され、その下方空間には泥受け用のトレイ42が出し入れ自在に設置されている。
【0072】
前方開口32側の端縁のうち、両側端縁と下辺端縁には、両開きの開き扉33を閉じたときにできる隙間を塞ぐための帯状のパッキン材43が取り付けられている。つまり、開き扉33で前方開口36を閉じたときには、前方開口36の両側縁部と下縁部に形成される隙間は、パッキン材43によって塞がれる。なお、開口32の上端部にはパッキン材43を取り付けておらず、開き扉33を閉じた場合でもわずかな隙間が形成される。
【0073】
また両開きの開き扉33は、米櫃50側の左扉体33と食料収納部34側の右扉体33とよりなり、右扉体33の開放端部には帯状のパッキン材43が取り付けられている。このパッキン材43は、帯状板材の表面に柔軟樹脂などよりなるパッキンを固着させてなり、バネ材(不図示)とともに右扉体33の開放端部に枢着、固定され、バネ材で右扉体33の開放端部側に回動する方向に付勢した構造となっている。
【0074】
一方、米櫃50は、箱体に形成され、レール39上をスライド出し入れ可能に、収納空間に収納されており、箱体の天面部には、取っ手52付きの上蓋51を設けた米投入口53が形成され、その米投入口53の下方には米保管空間54が形成され、さらにその下方には米受け部55を備えている。また、米櫃50の前面側には計量可能に米の取り出し操作ができる操作部56と、米保管空間54に保管されている米の量を視認するための窓57とを備えている。なお図6に示した斜視図は、米櫃50を引き出した状態を示している。
【0075】
また、米櫃50の米保管空間54と食料収納部34のそれぞれには、天然抽出成分を含有した品質保存剤カートリッジ1を収容したガス透過素材製の蓋付き容器20、20が設置されている。図例では、蓋付き容器20、20は、米保管空間54の後方壁57の上部側と、食料収納部34の奥壁35とに取り付けられている。
【0076】
このように、品質保存剤1を蓋付き容器20に封じ込め、その容器20を米櫃50内と食料収納部34に設置しているため、米櫃50内および食料収納部34での品質保存性ガスのガス放出量をコントロールしながら、食料保管庫34内の害虫忌避、菌、カビの繁殖を防止できる。
【0077】
なお、米櫃50の上蓋51などに開口を設けて、米保管空間54と食料保管庫34との間で、それぞれの品質保存性ガスを流通させるようにしてもよい。
【0078】
また、一般に食料保管庫内では、根菜類や果物からは成熟ホルモンであるエチレンガスが発生し、このエチレンガスが根菜類や果物自身の軟化、腐敗の進行を早めることが知られているが、図6に示した構造のものでは、食料収納部34内では、下方部がパッキン材43で気密な構造となっているため、容器20から放出されるガスが下方部より上方部へと溜まってゆくことで、空気より比重の小さいエチレンガスは、徐々に上方部へ追いやられ、排気開口窓38や上方隙間などから排出され、水蒸気や臭気も同様に排出される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の食料保管庫の一実施形態を示す概略斜視図である。
【図2】同食料保管庫内に設置される蓋付き容器(開蓋状態)を示した斜視図である。
【図3】(a)〜(c)は、蓋付き容器の蓋を取り替えることでガス透過量を可変させる態様を説明する図である。
【図4】蓋付き容器の本体部にガス透過制御板を収納付加してガス透過量を可変させる態様を説明する図である。
【図5】蓋付き容器を取り替えることでガス透過量を可変させる態様を説明する図である。
【図6】米櫃内蔵型の食料保管庫の斜視図である。
【符号の説明】
【0080】
1 品質保存剤、品質保存剤カートリッジ
10 食料保管庫
20 蓋付き容器
21 本体部
22 蓋
25 ガス透過制御板
30 米櫃内蔵型食料保管庫
34 食料収納空間
50 米櫃
51 上蓋
54 米保管空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
品質保存性ガスを揮散する、天然抽出成分を含有した品質保存剤を収容した食料保管庫において、
上記品質保存剤を、少なくもその本体部が、上記品質保存性ガスを透過するガス透過素材で形成された蓋付き容器内に封じ込めたことを特徴とする食料保管庫。
【請求項2】
請求項1において、
上記ガス透過素材はガス透過性樹脂である食料保管庫。
【請求項3】
請求項1または2において、
上記蓋付き容器は、上記品質保存剤から上記食料保管庫内に揮散される品質保存性ガスの単位時間当たりのガス透過量を、使用態様に応じて可変させる構成にしている食料保管庫。
【請求項4】
請求項3において、
上記蓋付き容器の蓋を取り替えることで、上記ガス透過量を可変させる構成にしている食料保管庫。
【請求項5】
請求項3において、
上記蓋付き容器にガス透過制御板を取り付け、あるいは取り外しすることで、上記ガス透過量を可変させる構成にしている食料保管庫。
【請求項6】
請求項3において、
上記蓋付き容器を取り替えることで、上記ガス透過量を可変させる構成にしている食料保管庫。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれかに記載の蓋付き容器を、食料保管庫内に取替え収容させることで、品質保存剤の初期使用時において上記食料保管庫内に揮散される品質保存性ガスの単位時間当たりのガス透過量を抑制して、食料保管庫内に収容された食品の品質劣化を遅延させることを特徴とする食料保管方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−118819(P2009−118819A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298822(P2007−298822)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】