説明

食料品の非熱プラズマ処理のためのシステムおよび方法

食料品の衛生化および保存のための方法は以下の工程を含む。食料品を含む容器が提供される。非熱プラズマが容器の内部に導入される。容器が密封される。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
[関連出願の相互参照]
なし。
【0002】
[背景]
米国疾病管理センター(CDC)の試算によると、食品媒介病原体は、米国において、毎年、756万人の疾病、325,000人の入院および5000人の死の原因となっている。さらに、生鮮食品は、E.coli O157 H7の主要な発生源である牛ひき肉、およびサルモネラの主要な発生源としての鶏肉のようになっている。フレッシュカットされた農産物は、生鮮食品産業の最も成長の速い分野の1つである。農産物をフレッシュカットの形態へと加工すると、農産物が本来有している外面のバリアが、皮むき、スライス、芯抜き、トリミングおよびすり潰しによって破壊されるため、細菌による汚染およびその増殖のリスクが増大する。
【0003】
このことは、レディ・トゥ・イート(Ready−to−Eat、RTE)製品にも当てはまり、これらについては、一般に安定化された原材料から開始して、製品の寿命の60%を超える期間が、これらの調製および再包装工程のために失われ得る。例えば、減圧下で包装されたハムの生のブロックは90日の寿命を有するものの、同様の条件で保存されたスライスされたハムは、全ての衛生的条件に従ったとしても、30日を超える期間にほとんど到達しない。したがって、品質の維持および保存寿命のために、食品を加工した後に適用して、食品を包装する直前に微生物を低減または滅菌できる方法に対するニーズが存在する。
【0004】
安全性を提供しながら食品の品質を維持することの重要性は周知であり、食用獣肉、家禽の肉、および乳製品、農産物および飲料の非熱的加工における関心が増大している。非熱に基づく技術の幾つかは、高圧加工(HPP)、電気的パルス電場、放射線、超音波等を用いた処理を含む。
【0005】
近年、非熱プラズマ(「コールドプラズマ」または「非平衡プラズマ」とも称される)が、食品製品の衛生化について検討されている。プラズマは、エネルギーの通過により形成されるイオン化されたガスであり、例えば、高い直流または交流電圧を印加することによって、マイクロ波、放射線、レーザー光といったその他の形態でエネルギーを提供することによって、またはその他の手段によって形成されたイオン化されたガスである。その天然の状態のガスと比較すると、プラズマは、全体として電気的に中性であるものの、自由な状態の荷電粒子である電子およびイオンを含んでいる。イオンの温度は電子の温度とは異なるため、またはそれら化学種の1つの速度分布はマクスウェル−ボルツマン分布に従わないため、非熱プラズマは、一般に、熱力学的平衡の状態にはないプラズマである。熱プラズマでは、媒体の全ての粒子(中性分子、原子およびラジカル、イオンならびに電子)は、ほぼ同一のエネルギー分布を有する(共通の温度を有することを意味する)のに対し、非熱プラズマでは、電子は、重い種よりもはるかに高い平均エネルギーを有する。そのような状況に対する制限は、いわゆるコールドプラズマを使用することであり、このことは、ガス温度(重い種の平均エネルギーを意味する)が周囲に近いことに相当している。しかしながら、非熱的であるが冷たくなく、重い種が電子の温度よりも一桁低い温度を有しているプラズマが存在する可能性もある。一般に、そのようなプラズマは、大気圧に近いガスにおける放電によって維持され、溶接、切断および溶射といった、その他の完成された産業的に応用されているプラズマ技術とは区別すべきである。
【0006】
非熱プラズマでは、上記の手段により、すなわち、外部の励起源により印加された電場による加速により、自由電子が励起される。この加速と並行して、電子は、重粒子とも呼ばれる分子およびイオンと、ランダムで頻発する弾性衝突を行う。したがって、電子は、熱運動と類似しているが、電気的エネルギーの入力により「力が加えられ(forced)」た、はるかに激しい無秩序な運動の形態で、連続的に次第にエネルギーを獲得する。平均電子エネルギーは、数万度のオーダーの温度に相当する。電子の平均エネルギーは重粒子よりはるかに高い。衝突があまり頻繁でない場合、例えば、希薄気体の場合、それらは、重粒子に対してはほんのわずかなエネルギーしか渡さず、周囲に対応した熱運動の動きを維持する。電子が10Kのオーダーの非常に高い「温度」(すなわち平均熱運動撹拌エネルギー(average agitation energy))を得る場合、それらは、重粒子に非弾性衝突をもたらし、これは、(電子準位または振動量子化準位(vibrational quantified level)の観点における)励起、(電子およびイオンの集団を絶えず補充して安定したプラズマを持続する)イオン化、またはより小さな断片、すなわち原子およびラジカルへの解離をもたらす。励起された粒子は、非常に高い「化学エネルギー」を保持しており、材料を加熱する必要なく、材料に対する表面処理をもたらすのに十分に反応的になりえる。
【0007】
特に、コールドプラズマは、微生物を破壊するかまたは少なくとも不可逆的に不活性化し得ることが既知である。
【0008】
他方、調整雰囲気包装(Modified Atmosphere Packaging)(MAP)または制御雰囲気包装(controlled atmosphere packaging)は、新鮮な食品製品またはレディ・トゥ・イート食品製品の保存寿命を延長するために使用される既知の技術である。この技術では、パッケージ内で食品を取り巻いている空気を部分的にまたは完全に除去し、他のガスまたはガス混合物で置換する。MAPの効果は、低いO環境においてしばしば観察される、植物の呼吸の減速に基づく。MAPにおいて一般に使用されるガスは、N、CO、O、希ガス(例えばAr)およびそれらの混合物である。
【0009】
[概要]
以下の工程を含む食料品の衛生化および保存のための方法が開示される。食料品を含む容器が提供される。非熱プラズマが容器の内部に導入される。容器が密封される。
【0010】
本方法は、1以上の以下の側面を含んでよい。
【0011】
−前記容器は、前記非熱プラズマまたは脱励起状態の非熱プラズマを含みながら密封される。
【0012】
−前記方法は、N、CO、O、Ar、Xe、Kr、He、Ne、NO、H、H、CO、NOおよびそれらの混合物から成る群から選択される処理ガスから前記非熱プラズマを生成する工程を更に含む。
【0013】
−前記方法は、全ての前記非熱プラズマまたは全ての前記脱励起状態の非熱プラズマを置き換えることなく、第2ガスを前記容器の前記内部に導入する工程を更に含み、前記容器は、前記第2ガスと非熱プラズマまたは脱励起した非熱プラズマとを含みながら密封される。
【0014】
−前記方法は、N、CO、O、Ar、Xe、Kr、He、Ne、NO、H、H、CO、NOおよびそれらの混合物から成る群から選択される処理ガスから前記非熱プラズマを生成する工程を更に含む。
【0015】
−前記第2ガスは、N、CO、O、Ar、Xe、Kr、He、Ne、NO、H、H、CO、NOおよびそれらの混合物から成る群から選択され、
前記第2ガスは前記非熱プラズマと組成が異なる。
【0016】
−前記方法は、
全ての前記非熱プラズマまたは全ての前記脱励起状態の非熱プラズマを除去する工程、および
前記容器の前記内部に保存寿命延長ガスを導入する工程を更に含み、
前記容器は前記保存寿命延長ガスを含みながら密封される。
【0017】
−前記保存寿命延長ガスは、N、CO、O、Ar、Xe、Kr、He、Ne、NO、Hおよびそれらの混合物から成る群から選択される。
【0018】
−前記非熱プラズマまたは前記脱励起した非熱プラズマは、前記容器内部への減圧の適用により除去される。
【0019】
−前記非熱プラズマまたは前記脱励起した非熱的プラズは、前記保存寿命延長ガスの導入により前記容器内部からパージされる。
【0020】
−前記方法は、前記容器内部への減圧の適用により前記非熱プラズマまたは前記脱励起状態の非熱プラズマを除去する工程を更に含み、前記容器は減圧下で密封される。
【0021】
−前記方法は、水分と前記非熱プラズマとを混合する工程を更に含む。
【0022】
−前記処理ガスは、H、HとHeとの混合物、HとArとの混合物、HとCOとの混合物、HとHとの混合物、Hと空気との混合物およびHとNOとの混合物から成る群から選択される。
【0023】
−非熱プラズマを前記容器の内部に導入する前記工程は、食品包装機の内部で行われる。
【0024】
−前記食品包装機はフローパック型食品包装機である。
【0025】
−前記食品包装機はトレイ型食品包装機である
−前記方法は、
前記食品包装機の外部に位置する非熱プラズマ生成装置により前記非熱プラズマを生成する工程、および
前記非熱プラズマ生成装置から前記容器の内部に前記非熱プラズマを搬送する工程
を更に含む。
【0026】
−前記食品包装機はフローパック型食品包装機であり、
−前記容器は薄いプラスチック製の筒状フィルムであり、
−前記非熱プラズマは、ノズルによって前記筒状フィルムの内部に導入される。
【0027】
−前記食品包装機はトレイ型食品包装機である。
【0028】
−前記食品包装機はトレイ型食品包装機であり、前記非熱プラズマは、前記トレイ型食品包装機の蓋に配置される少なくとも1つの平面状マイクロ波動力アプリケーターを含む非熱プラズマ生成装置により生成される。
【0029】
−前記食品包装機はトレイ型食品包装機であり、前記非熱プラズマは、前記容器の内部または前記容器上に配置される少なくとも1つの平面状マイクロ波動力アプリケーターを含む非熱プラズマ生成装置により生成される。
【0030】
−前記非熱プラズマ生成装置は、少なくとも1つの平面状マイクロ波動力アプリケーターを含む。
【0031】
−前記非熱プラズマは、0.1秒から600秒の間、前記食料品と接触した状態で維持される。
【0032】
−前記非熱プラズマは、5から60秒の間、前記食料品と接触した状態で維持される。
【0033】
−前記方法は、前記非熱プラズマを導入する前記工程の前に前記容器の内部へ減圧を適用する工程を更に含む。
【0034】
−前記容器内部への前記非熱プラズマの導入の前、その間またはその後において、殺生剤が前記容器内部に導入される。
【0035】
−前記殺生剤は微粒子の銀である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、本発明に係る方法のフロー図である。
【図2】図2は、付加的で任意の工程を含む本発明に係る方法のフロー図である。
【図3】図3は、トレイ型食品包装装置に対する本発明の適用を示す模式図である。
【図4】図4は、フローパック型食品包装機に対する本発明の適用を示す模式図である。
【図5】図5は、組込型電極または誘電体放電バリアを有する容器に対する本発明の適用を示す模式図である。
【発明の詳細な説明】
【0037】
プラズマ処理とMAPまたは減圧包装との組み合わせは、第1に、大気下または減圧下で貯蔵された場合、食品の品質の向上による相乗効果を提供し、さらに製品の保存寿命を延ばす。
【0038】
図1に最も示されるように、本発明の典型的な方法は以下の工程を含む。第1工程100において、食料品を含む容器が提供される。第2工程200において、非熱プラズマが容器内部に導入される。第3工程300において、容器が密封される。あらゆる種の密封された食料品容器をこの方法の実施に使用してよいものの、典型的に、それは適切なフィルムまたは蓋を使用して密封される。また、フローパック型食品包装機の場合、容器を含む薄いプラスチック製のフィルムの相対する端は、ともにシールされ、中空のチューブが形成される。
【0039】
「容器」という語句は、食品の長期貯蔵が意図された食品容器を意味するように意図され、プラズマ処理チャンバーではない。容器の2つの非限定的な例は、フローパック型食品包装機において典型的に使用される筒状プラスチック製フィルムおよびトレイ型食品包装機において典型的に使用される硬質または半硬質のプラスチックトレイを含む。
【0040】
この方法およびシステムは、任意の食料品を処理するために使用してもよいが、典型的なタイプの食料品は、生鮮食品、肉およびシーフードを含むが、これらに限定されない。
【0041】
非熱プラズマは、処理ガスから生成され、この処理ガスは1以上の種のガスまたはガス混合物であってよい。非限定的な例は、N、CO、O、Ar、Xe、Kr、He、Ne、NO、H、H、CO、NOおよび混合物を含む。特定の実施形態において、H、HとHeとの混合物、HとArとの混合物、HとCOとの混合物、HとHとの混合物、Hと空気との混合物、またはHとNOとの混合物の処理ガスを使用することが好ましくてよい。プラズマの効果を更に適合させるために、水分またはその他の化合物(例えば銀またはその他の殺生剤)といった1以上の添加物を処理ガスに添加することができる。添加物は、固体、液体または気体の形態とすることができる。あるいは、1以上の添加物は、処理ガスからの生成の後に非熱プラズマに添加してよい。この選択肢の1つの例として、非熱プラズマを、食料品表面に1以上の添加物を運ぶために利用してよい。還元性の雰囲気(すなわち負の酸化還元電位を有するもの)は、酸化による食品の分解を防止することができるため、使用してよい。例えば、処理ガスはHを含んでよく、またはHは、非熱プラズマが生成された後にそこに混合してよい。この様式において、原子状水素といったラジカルが生成されると予想され、これは、非常に強い化学的還元活性を有し、実際、商用形態におけるどの還元性化学薬品よりもはるかに高い。さらに、還元性ラジカルは、オキシダントラジカルに匹敵する殺菌効果を有する。
【0042】
図2に最も示されるように、この方法の実施は、付加的で任意の工程を含んでよい。
【0043】
工程100と工程200との間に、容器を減圧する工程150を行ってよい。非熱プラズマの持続を妨げ得る著しい割合の酸化ガスを回避することを目的として、食料品の非熱プラズマへの暴露の前に減圧を適用することは特に有益であってよい。
【0044】
工程200の実施の後に、この方法は工程300を実行することができ、この場合、非熱プラズマまたは脱励起状態の非熱プラズマが容器内に密閉される。
【0045】
あるいは、工程200の実施の後、容器内への真空の適用の工程230を工程300に続いて実施してもよい。このことは、非熱プラズマまたは脱励起状態の非熱プラズマの除去および減圧包装された食料品の達成をもたらす。
【0046】
別の選択肢として、工程200の実施の後、容器内部に第2ガスまたは保存寿命延長ガスを導入する工程270を行ってよい。第2ガスの機能は、食料品の保存寿命を促進するガスを生成するために、非熱プラズマを含むガスと組み合わせることである。この場合、処理ガス(非熱プラズマはこの処理ガスから生成される)は、抗菌剤および保存効果の両方を提供するように選択されるが、これは、当然2つの効果の妥協に帰着してもよい。従って、特定の食品の保存寿命の延長に対してより適したガス混合物を形成するために、第2ガスを、容器内の既存のガス雰囲気(非熱プラズマまたは脱励起状態の非熱プラズマ)に添加することができる。上記妥協が十分に考慮されない場合、または十分な保存寿命延長特性がもはや得られない程度に非熱プラズマの一定の成分が食料品または容器と反応する場合、保存寿命延長ガスの機能は、容器の内部からガス状雰囲気をパージすること(非熱プラズマまたは脱励起状態の非熱プラズマ)およびそれをより保存寿命延長特性を有するガスと置換することである。保存寿命延長ガスは、処理ガスと同一または異なるガスでありえる。典型的な保存寿命延長ガスは、N、CO、O、Ar、Xe、Kr、He、Ne、NO、Hおよびそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0047】
また別の選択肢として、工程200の実施の後、容器内部に減圧を適用する工程240を行なってよい。酸化の促進および経年変化といった有害効果をいくつかの食料品が受けるような著しい比率の酸化化合物の除去を目的として、非熱プラズマに対する食料品の暴露の後に工程240を行なうことが特に有益であってよい。方法は、その後、上記の工程270に進むが、この場合、保存寿命延長ガスが使用され、第2ガスは使用されない。この特定の選択肢(工程200、工程240、工程270)は、非熱プラズマまたは脱励起状態の非熱プラズマをパージおよび置換するために、保存寿命ガスを使用する代わりに使用してよい。従って、より少ない保存寿命延長ガスが使用される。
【0048】
非熱プラズマは、様々な方法で容器の内部に導入してよい。一実施形態において、非熱プラズマは、容器から離れて生成してよい。この実施形態において、それは、トレイ型包装機の外部で生成され、導管によってトレイ型包装機の内部および容器内部に運ばれてよい。あるいは、この実施形態において、それは、フローパック機の外部で生成され、ノズルによって筒状プラスチック製フィルムの内部に運ばれてよい。別の実施形態において、非熱プラズマは、容器の内部で生成してよく(インサイチュー生成)または容器の近くで生成してよい。この実施形態は、2つの副実施形態において実現してよい。第1の副実施形態では、非熱プラズマ生成装置がトレイ型包装機に組み込まれ(好ましくは上蓋に組み込まれ)、非熱プラズマは、容器に向かって流れ、容器の内部に流れる。第2の副実施形態において、生成装置の少なくとも一部は、容器自体に組み込まれる。
【0049】
任意の既知の非熱プラズマ生成装置を、実際上、方法およびシステムに利用してよい。それは、好ましくは、当業者に既知の高周波誘導器またはマイクロ波プラズマ励振器の、高周波を含むDCまたはACパワーによりエネルギーを与えられた、2つ以上の電極を含む平面マイクロ波動力適用装置である。好ましくは、非熱プラズマ生成装置は、WO2009047441に開示されたタイプの平面マイクロ波アプリケーターを利用する。この文献の全内容は、本願に援用される。この特定のタイプの生成装置は、生成装置(その少なくとも一部)がトレイ型包装機に組み込まれているか、または容器に組み込まれている実施形態において特に有利である。非熱プラズマ生成装置は容器から離れて位置し、生成はインサイチューで行われない場合、離れて位置することにより、その設計は、容器の構造により課される幾何学的因子によって制限されないため、プラズマ励起装置を設計する際にさらに自由度が高い。典型的な相互電極距離は、1−20cmの範囲、好ましくは1−5または5−20cmの範囲であってよい。当業者は、既知の様式で相互電極距離を変えることにより、またはプラズマ励起装置のその他の設計パラメーターを変えることにより、プロセス最適化を達成してよいことを認識するだろう。
【0050】
通常の当業者は、食料品の非熱プラズマ処理は接触時間を変えることにより最適化してよいことを認識する一方、本発明の実施において典型的な接触時間は、0.1秒から600秒であり、好ましくは5から60秒である。同様に、そのような当業者は、非熱プラズマに対する食料品の暴露の際の容器内部の圧力を変えることにより、プロセス最適化を達成してよいことを認識する一方で、典型的な圧力は、1,000パスカルから11,000パスカルの範囲である。
【0051】
当業者はさらに、特定の食品のための処理を最適化するために、以下の変動要因を経験的様式にて変えてよいことを理解する:非熱プラズマ適用の経路(直接、遠隔)、非熱プラズマのパワーまたは密度、処理される食料品表面からの距離、非熱プラズマを生成するために使用される処理ガスの選択、非熱プラズマの圧力、容器に流れるまたは容器を通って流れるプラズマガスの平均速度(すなわちプラズマ活性種の滞在時間)。この後者のパラメーターは、種々のプラズマ種の寿命に恐らく対応すべきであり、それにより、十分な量のそれらは食料品の表面のあらゆる点に到達し、効果的に衛生処理が完了する。そのような寿命は一般に圧力に依存する。
【0052】
過酸化水素のような殺菌する化学薬品(すなわち、プラズマ励起の存在があるか否かに拘わらず殺菌の効果を有する生成物)を含んでいない場合であっても、非熱プラズマに基づいた殺菌は存在する。任意の理論に結び付けられることなく、この種のプラズマによる微生物の不活性化の機構は、以下のように説明することができる:
1)プラズマから放射された紫外線による遺伝物質の分解:プラズマにおいて、原子、分子、イオン、ラジカルは高い固有のエネルギーを保有しており、UV光子の放射によりエネルギーを失う。これらの光子は、スペクトルのランプから放射されたものに類似し、同様の効果を有する。しかしながら、それらは、細菌による遮光および重なりの効果を受けないという長所を有する。実際、中央均一ガス(centre even gas)によりインサイチューで放射されたUVは、全ての方向からの細菌を包んで浸し、微生物の暴露された表面を均一に覆うことができる。
【0053】
2)酸化ラジカルの直接的抗菌作用:後者は、特に原子酸素は、商業上利用可能なあらゆる化学薬品よりもはるかに強いオキシダントである。それらは、微生物を破壊するために使用される酸化化学薬品と比較してむしろ同等の、微生物の不活性化の効果があるだろう。
【0054】
3)化学的/物理的効果による微生物の物質の侵食:酸化ラジカルは、さらに、有機物を化学的にエッチングする特性を有しており、すなわち、それらは(物質からの)炭素および水素とともにCOおよびHOのような揮発性種を形成し、それらは気相に向かい、排除の流れにより除去される。実際、微生物は「スポット上の冷たい燃焼」を行う。物質のこの揮発は、さらに、イオンの衝撃またはUV光子により支援することができる。あまり知られていないものの、還元性ラジカルは、化学的侵食と同一の効果を有しうる(例えば、プラズマにて製造された原子状水素は、金属を酸化することなく、その表面を効果的に脱脂することが可能である)ことに注目される。最後に、侵食は純粋に物理的な起源を有しうる:固体有機物は高エネルギー種に接して分離し蒸発することができる。
【0055】
ガスは周囲の温度で存続するため、プラズマ環境に対する食料品の露出は、いずれの料理の効果なしに、微生物の汚染において顕著な減少を可能にする。新鮮な食品製品に対するコールドプラズマのその他の生理化学的な効果を研究する必要があり、しかし、有用な効果の原因となる根本的な活性種の寿命は非常に短いため、プラズマ処理は殆ど残らず、残ったとしても理論上残渣の程度である。
【0056】
ガスに励起を適用して、ガスをイオン化してプラズマ形成するための様々な装置を使用することができる。その選択は、特に生成物の幾何学、容器および包装システムに依存し、更に負荷される仕事の圧力に依存する。
【0057】
図3に最も示されるように、非熱プラズマはトレイ型包装機と共に生成されてよい。
【0058】
図3において、食料品1は、1つの、あらかじめ形成された硬質または半硬質の、連続的なプラスチック性の下部フィルム3の各々のコンパートメントに入れられる。上部織物4(裏材14およびプラスチック製上部フィルム15を含む)は、ローラー3から各々のコンパートメントの上部に供給される。組み合わせられた織物4および下部フィルム3は、バッチの様式でトレイ型包装機5に供給される。その後、蓋7は組み合わせられた織物4および下部フィルム3の上に配置される。それぞれのコンパートメントはトレイ型包装機5の分離した部分9内に留まる。必要であれば、減圧をトレイ型包装機5の内部に適用し、内部から周囲雰囲気(空気)を除去してよい。非熱プラズマは、非熱プラズマ生成装置(図示されず)にて離れて生成され、導管(図示されず)を介してトレイ型包装機5の内部に運ばれるか、または非熱プラズマはトレイ型包装機5の内部で生成される。その後、非熱プラズマは、組み合わせられた織物4および下部フィルム3の各々のコンパートメントに導入される。予め減圧が適用されない場合、非熱プラズマはコンパートメントからあらゆる周囲雰囲気(空気)を流しだす。
【0059】
食料品1を非熱プラズマに所望の期間暴露した後、上部織物4、下部フィルム3および食料品1を3つの方法のうちの1つにて処理してよい。第1に、所望の暴露時間の終了時に、加熱密封装置11によって、上部織物4を下部フィルム3にシールしてよい。この選択肢は、非熱プラズマまたは脱励起状態の非熱プラズマを容器19に閉じ込める。第2に、トレイ型包装機5の内部に減圧を適用し、装置11によって下部フィルム3に対して上部織物4をシールしてよい。これにより減圧密封された容器19が得られる。第3に、トレイ型包装機5の内部へ減圧を適用し、保存寿命延長ガスをその中へ注入し、装置11によって下部フィルム3に上部織物をシールしてよい。処理工程の後に、処理された上部織物4、下部フィルム3および食料品1は、トレイ型包装機5から除去し、裏材14を上部織物4から除去し、ローラー13に集められる。裏材14の除去の後、プラスチック製上部フィルム15はプラスチック製下部フィルムにシールされて残る。その後、上部フィルム15および下部フィルム3を切断ステーション17にて個体容器19で切断される。
【0060】
図4に最も示されるように、非熱プラズマは、フローパック機の状況において容器の内部に導入してよい。予成形トレイ21は、予成形トレイ21に食料品1を供給する食料品フィーダー2に向けてコンベアー23から供給される。コンベアー23および予成形トレイ21に向けてフィルム27がロール25に供給され、それ自体が包まれ、フィルム27の反対側27Aが互いに重ね合わせられ、反対側27Aに沿ってシールされていないとじ目を有した筒状プラスチック製フィルムが形成される。その後、とじ目を加熱密封装置29で密封する。非熱プラズマは離れて生成され、食料品1に隣接する密封された筒状フィルム27の内部に伸びるノズル31に運ばれ(図示せず)、密封された筒状フィルム27の内部の雰囲気を流し出す。その後、フィルム27の上部および下部を、隣接した予成形トレイ21の間において加熱密封装置33で互いに密封し、食料品1を保持する予成形トレイ21を含む密封された容器37内の非熱プラズマをトラップする。その後、切断装置を用いて隣接する密封容器37を別々に切断する。当業者は、これが連続工程であることを認識するだろう。
【0061】
図5に最も示されるように、非熱プラズマ生成装置を、図3のトレイ型食品包装機械5の蓋7に組み込んでよい。生成装置は誘電体放電バリア47を含んでおり、これはバリア47の真下に配置された電極45(これは、トレイ型容器43の内部または外部底面の表面に形成または付着されている)と協調する。電極45(および図示されない別の電極)によるバリア47の活性化により、非熱プラズマは下方に流れ、容器43の内部に流れ込む。あるいは、電極45は、容器43に形成または付着されない。
【0062】
本発明を実施するための好ましい工程および装置が記載されている。本発明の意図および範囲を逸脱することなく、多くの変更および改変を上述の実施形態に対して適用してよいことが、当業者に理解され且つ容易に明らかであるだろう。前述の内容は例示であり、特許請求の範囲に定義された発明の真の範囲から逸脱することなく、統合されたプロセスおよび装置のその他の実施形態を使用してよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食料品を含む容器を提供する工程、
前記容器の内部に対して非熱プラズマを導入する工程、および
前記容器を密封する工程
を含む食料品の衛生化および保存のための方法。
【請求項2】
前記容器は、前記非熱プラズマまたは脱励起状態の非熱プラズマを含みながら密封される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
、CO、O、Ar、Xe、Kr、He、Ne、NO、H、H、CO、NOおよびそれらの混合物から成る群から選択される処理ガスから前記非熱プラズマを生成する工程を更に含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
全ての前記非熱プラズマまたは全ての前記脱励起状態の非熱プラズマを置き換えることなく、第2ガスを前記容器の前記内部に導入する工程を更に含み、前記容器は、前記第2ガスと非熱プラズマまたは脱励起した非熱プラズマとを含みながら密封される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
、CO、O、Ar、Xe、Kr、He、Ne、NO、H、H、CO、NOおよびそれらの混合物から成る群から選択される処理ガスから前記非熱プラズマを生成する工程を更に含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2ガスは、N、CO、O、Ar、Xe、Kr、He、Ne、NO、H、H、CO、NOおよびそれらの混合物から成る群から選択され、
前記第2ガスは前記非熱プラズマと組成が異なる
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
全ての前記非熱プラズマまたは全ての前記脱励起状態の非熱プラズマを除去する工程、および
前記容器の前記内部に保存寿命延長ガスを導入する工程
を更に含み、
前記容器は前記保存寿命延長ガスを含みながら密封される
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記保存寿命延長ガスは、N、CO、O、Ar、Xe、Kr、He、Ne、NO、Hおよびそれらの混合物から成る群から選択される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記非熱プラズマまたは前記脱励起した非熱プラズマは、前記容器内部への減圧の適用により除去される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記非熱プラズマまたは前記脱励起した非熱的プラズは、前記保存寿命延長ガスの導入により前記容器内部からパージされる請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記容器内部への減圧の適用により前記非熱プラズマまたは前記脱励起状態の非熱プラズマを除去する工程を更に含み、前記容器は減圧下で密封される請求項1に記載の方法。
【請求項12】
水分と前記非熱プラズマとを混合する工程を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記処理ガスは、H、HとHeとの混合物、HとArとの混合物、HとCOとの混合物、HとHとの混合物、Hと空気との混合物およびHとNOとの混合物から成る群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項14】
非熱プラズマを前記容器の内部に導入する前記工程は、食品包装機の内部で行われる請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記食品包装機はフローパック型食品包装機である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記食品包装機はトレイ型食品包装機である請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記食品包装機の外部に位置する非熱プラズマ生成装置により前記非熱プラズマを生成する工程、および
前記非熱プラズマ生成装置から前記容器の内部に前記非熱プラズマを搬送する工程
を更に含む請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記食品包装機はフローパック型食品包装機であり、
前記容器は薄いプラスチック製の筒状フィルムであり、
前記非熱プラズマは、ノズルによって前記筒状フィルムの内部に導入される
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記食品包装機はトレイ型食品包装機である請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記非熱プラズマを導入する前記工程の前に前記容器の内部へ減圧を適用する工程を更に含む請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−532610(P2012−532610A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519722(P2012−519722)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/041340
【国際公開番号】WO2011/005940
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(591036572)レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード (438)
【Fターム(参考)】