説明

食用油ろ過装置におけるフィルター構造

【課題】ろ過装置において、比較的簡単なろ過手段によって、食用油の酸化や劣化を大幅に改善すると共に、種々の不純物を除去し、食用油を繰り返し使用できるようにするフィルター構造を提案する。
【解決手段】内底部に油排出口を有するオイルタンクを備えるろ過装置において、下面に空間部を形成し係着手段を介して上記油排出口に係着するストレーナと、繊維と吸着材を混合して多孔質構造に構成する共に上記ストレーナの上面形状に対応する凹部を下面に有する所定形状の成形体からなり上記ストレーナに嵌着する成型フィルターとにより、食用油ろ過装置におけるフィルター構造を構成する。上記成型フィルターの上面を全面的に覆って袋体に吸着材を詰めてなる平板フィルターをさらに設け、その周縁部上にフィルター押さえを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、食用油の廃油を再生利用するためのろ過装置において使用するフィルター構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、ファミリーレストラン等の外食産業や惣菜店等の厨房において、天ぷらやフライ等を調理するために、業務用フライヤーを使用し、大量の食用油を消費している。この食用油は、繰り返しの使用や時間経過に伴って酸化、劣化をおこしたり、着色したりする他、過酸化物等の不純物を発生し、悪臭を出すなどして食用に適さなくなる。しかし、このような劣化した食用油を数回の調理毎に廃棄するのでは不経済であり、また、環境汚染の原因ともなる。このため、通常は、フライヤーの近傍に食用油のろ過装置を配置し、使用済みの食用油を循環ろ過し、繰り返し利用するという対策が採られている。
【0003】
一般的な食用油のろ過装置では、フライヤーから排出された食用油をオイルタンク内に貯留し、該タンク内には1乃至複数のろ過手段(フィルター等)を設置しておき、ろ過手段によってろ過した食用油はポンプ等によってフライヤーに戻す構成が採用されている。
【0004】
そして、このろ過手段として、例えば、特許文献1の食用油濾過装置では、粉末乃至顆粒状の濾剤を袋詰めにしてなるフィルターをタンクの内底面に配置している。また、特許文献2のフライヤー用循環濾過装置では、金属製漉し網、金属製濾紙抑え、濾紙、金属製メッシュ網、濾布を重ねてなる重合濾過構造体を取り外し可能に設けている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−190906号公報
【特許文献2】特開2004−267432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来のろ過装置において、例えば特許文献1におけるろ過手段は、単一の濾剤を袋詰めしたものであるので、その濾剤の機能によってろ過の効果は限られたものであって、食用油の酸化や種々の不純物を充分に除去できるものではなかった。また、濾剤を密に袋詰めにしているので、食用油が流通しにくく、ろ過に時間を要していた上、濾剤によって処理されずに通過してしまう場合もあった。また、特許文献2におけるろ過手段にあっても、複数のろ過手段を重ねているとはいえ、薄手の濾紙、メッシュ網、濾布でろ過するので、ろ過性能には、なお不十分な点が残されていた。
【0007】
本発明は、従来のこのような問題点を解決するものであって、従来から使用されているろ過装置において、比較的簡単なろ過手段によって、食用油の酸化や劣化を大幅に改善すると共に、種々の不純物を除去し、食用油を繰り返し使用できるようにするフィルター構造を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明は、請求項1に係る発明として、内底部に油排出口を有するオイルタンクを備えるろ過装置において、下面に空間部を形成し係着手段を介して上記油排出口に係着するストレーナと、繊維と吸着材を混合して多孔質構造に構成する共に上記ストレーナの上面形状に対応する凹部を下面に有する所定形状の成形体からなり上記ストレーナに嵌着する成型フィルターとにより、食用油ろ過装置におけるフィルター構造を構成するという手段を採用した。
【0009】
また、請求項2に係る発明として、上記請求項1に係る発明において、上記成型フィルターの上面を全面的に覆って袋体に吸着材を詰めてなる平板フィルターをさらに設け、その周縁部上にフィルター押さえを設けるという手段を採用した。
【0010】
また、請求項3に係る発明として、内底部に油排出口を有するオイルタンクを備えるろ過装置において、下面に空間部を形成し係着手段を介して上記油排出口に係着するストレーナと、繊維と吸着材を混合して多孔質構造に構成する共に平板状に成形した成形体からなり上記ストレーナの全面を覆う平板成型フィルターと、該平板成形フィルターの周縁近傍に載置する押さえ環と、該押さえ環を覆って設けるパンチングメタル等からなる押さえ板とにより、食用油ろ過装置におけるフィルター構造を構成するという手段を採用した。
【0011】
これらの発明では、油排出口の周囲に空間部を設けることにより、ポンプで吸引した時に負圧が均等に掛かり、食用油が均等に分散して成形フィルターを通過するようになるものである。また、それぞれに特性をもったフィルターを通過させることで、不純物を除去し、脱色、脱臭の作用を奏するものである。
【0012】
また、請求項4に係る発明として、内底部に油排出口を有するオイルタンクを備えるろ過装置において、上記油排出口を覆って設けるストレーナと、繊維と吸着材を混合して多孔質構造に構成する共に平板状に成形した成形体からなり上記ストレーナの全面を覆う平板成型フィルターと、該平板成形フィルターの上面全体に載置する渦巻状の押さえ環とにより、食用油ろ過装置におけるフィルター構造を構成するという手段を採用した。
【0013】
そして、請求項5に係る発明として、上記渦巻状の押さえ環の跳ね上がりを抑えるために架設する棒杆を備えるという手段を採用した。
【0014】
これらの発明では、食用油の自重によってろ過する場合であっても、確実に平板成形フィルター内を分散して均等に通過させるようにしている。
【0015】
また、請求項6に係る発明として、上記請求項1から請求項3に係る発明において、上記係着手段が、ストレーナの下面に設けるくの字状に折曲した板バネであるという手段を採用した。
【0016】
さらに、請求項7に係る発明として、内底部に油排出口を有するオイルタンクを備えるろ過装置において、下面に空間部を形成し上記油排出口を覆って設けるストレーナと、繊維と吸着材を混合して多孔質構造に構成する共に上記ストレーナの上面形状に対応する凹部を下面に有する所定形状の成形体からなりオイルタンクの内底面に密に嵌合して上記ストレーナに嵌着する成型フィルターと、該成形フィルターの周縁に載置する押さえ環と、袋体に吸着材を詰めてなり、上記成形フィルターと押さえ環を全面的に覆いオイルタンクの内側面に沿って密に嵌合する平板フィルターと、該平板フィルターの上に載置する押さえ網とにより、食用油ろ過装置におけるフィルター構造を構成するという手段を採用した。
【0017】
かかるフィルター構造によって、オイルタンク内に密に敷設された各フィルターを食用油が均等に分散しながら通過し、効率的なろ過作用を奏するものである。
【発明の効果】
【0018】
上記請求項1から請求項3にかかる発明は、油排出口に係着するストレーナで、油排出口の周囲に一定の大きさの空間部を形成するものであるから、ポンプで吸引する場合に、該空間部が負圧となり、成形フィルターに浸透する食用油は均等に分散して該成形フィルターを通過することができるので、成形フィルターの全体を使用して効率よく食用油のろ過を行うことが可能となったものである。
【0019】
そして、フィルターの形状や構成を変えても、そのフィルターの特性を十分に発揮させ、効率よく不純物を除去したり、脱色、脱臭等を行うことができるものである。
【0020】
また、請求項4、5に係る発明は、食用油の自重によってろ過する場合にあっても、渦巻状の押さえ環で平板成形フィルター全体を押さえ、食用油が均等に分散してフィルターを通過するようにして、高いろ過効率を得ることができるものである。
【0021】
さらに、請求項7に係る発明にあっては、オイルタンクの油排出口の周囲に空間部を形成すると共に、内底面に密に成形フィルターと平板フィルターを敷設するようにしたので、自重によってろ過する場合にも、特性の異なる2種のフィルターを食用油が確実に浸透、通過し、効率よくろ過することができるものである。
【0022】
そして、ろ過装置に上記フィルター構造を採用することによって、およそ3リットルから1000リットルまでの、あらゆる油やその排出量に対応できるものである。この場合、3リットルから10リットル程度までは自然沈殿ろ過方式により、それ以上の業務用廃油の場合には、遠心分離で沈殿ろ過方式のものを採用する。
【0023】
また、毎日繰り返しろ過すれば、油は劣化せず、新油のように長持ちするので、非常に経済的である。
【0024】
さらに、廃油(最終的にこしがなくなったもの)をバイオ燃料として再利用が可能である。廃油をろ過することにより、ディーゼル車の燃料など新エネルギーとなり、さらに経済的である。
【0025】
また、ろ過作業は、極めて簡単であり、作業性が高く効率的である。
【0026】
さらに、ろ過後の廃棄フィルターと木材チップを破砕、混合して、高圧プレスすることにより、人工石炭としての新エネルギーとすることもできるなど、種々の優れた効果が期待できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明に係る食用油ろ過装置におけるフィルター構造の幾つかの好ましい実施形態を、添付した図面に従って説明する。
【0028】
(第1実施形態)
図1は、第1の実施形態を示すもので、図1において、(A)は本フィルター構造の中央縦断面図、(B)はその分解図である。
【0029】
図1において、1は、オイルタンクであって、フライヤーの油排出口(図示せず)の下方に臨んで開口し、使用済みの食用油を貯留するものである。2は、オイルタンク1の内底部中央に設けられる油排出口である。この油排出口には適宜なホース(図示せず)を接続し、ポンプ(図示せず)によって、下述するフィルター構造によってろ過精製される食用油を吸引し、フライヤーに戻したり、別途貯留しておくものである。
【0030】
3は、下面に設けた固定用板バネ4を介して上記油排出口2を覆うように取り付けるストレーナである。即ち、例えばくの字状に折曲してなる固定用板バネ4を油排出口2内に挿入、係着させることによって、ストレーナ3を油排出口2に臨んで固定する。このストレーナ3は、多数の孔を有するパンチングメタルまたはメッシュ網等によって下面に開く碗状に成形され、食用油を充分に通過させると共に、上記油排出口2の周囲に所定の大きさの空間部5を形成している。なお、この固定用板バネ4は、図示した形状に限定されるものではなく、係着手段として、上記油排出口2に弾性的に係着して、ストレーナ3が移動しないように、確実に固定できるようなものであればよい。
【0031】
6は、成形フィルターであって、少なくともその下面に上記ストレーナ3の上面形状に対応する碗状に成形された凹部6aを有する所定厚さの成形体からなり、ストレーナ3を覆って嵌着固定されるものである。この成形フィルター6は、例えば適宜な繊維と吸着材を混合して多孔質構造を有する成形体に構成されたもので、不純物を除去すると共に、脱色、脱臭等の各種効果を有するものである。
【0032】
この成形フィルター6について、さらに説明すると、具体的には、例えば特開2005−161295号公報に開示されているような、食用油ろ過用フィルターを採用することができる。このろ過用フィルターは、本願に係る発明者が発明をしたものである。即ち、パルプなどの繊維と活性炭粉末などの吸着材を水中で撹拌混合し、この混合物を成形型内に入れて圧縮成型し、さらに乾燥固化して多孔質構造を有する所定形状の成形体としたものである。そして、この成形フィルター6に使用済みの食用油を通過させると、繊維の多孔質構造によって、食用油は繊維間を良好に通過し、その食用油中に含有された天かすやパン粉などの不純物はパルプのセルロース繊維によって吸着除去されると共に、該繊維に均一に分散付着している活性炭粉末によって、褐色化した食用油を効果的に脱色し、また、臭気物質を効果的に吸着脱臭できるものである。なお、多孔質構造とするために、上記パルプに、さらにレーヨン繊維等を加えて空隙を形成しやすくすることもある。そして、所定形状に成型固化したカートリッジ式の成形体であるので、取り替え交換を極めて簡単に行うことができる。
【0033】
続いて、上記構成からなるフィルター構造の作用について説明すると、使用に際して、オイルタンク1にフライヤーの油排出口から使用済みの食用油を貯留すると共に、該オイルタンク1の下面の油排出口2にホースを接続し、ポンプで吸引する。このとき、食用油は自重によって成形フィルター6に浸透するが、さらに、ストレーナ3の油排出口2の周囲に空間部5が形成されているので、この空間部5の全体にわたって均等に負圧が掛かることになるので、この負圧によっても成形フィルター6に浸透する。このように、オイルタンク内の使用済みの食用油は、成形フィルター6、ストレーナ3の順に、その全面にわたって均等に分散しながら浸透し、不純物や着色、におい等を吸着されながらろ過されることになる。即ち、成形フィルター6の全体を使って、高いろ過効率によってろ過されるのである。そして、ろ過精製された食用油は、ホースを介して、フライヤーに環流され、再利用に供される。このとき、成形フィルター6は、ストレーナ3の上面形状に対応する形状の凹部6aを有し、ストレーナ3全体を覆っているので、使用済みの食用油は、必ず、成形フィルター6を通過してストレーナ3に至る。そのため、使用済み食用油がそのまま排出されることはない。
【0034】
(第2実施形態)
次に、本発明に係るフィルター構造の第2の実施形態を、図2に従って説明する。図2において、(A)はフィルター構造の中央縦断面図、(B)はその分解図である。
【0035】
図2に示す第2実施形態は、上記第1実施形態に、さらに別のフィルターを追加した構成を示したものである。図1と同じ構成部分については、同じ番号を付して説明すると、図2において、1はオイルタンク、2はその内底部中央に設けた油排出口である。また3は下面に設けた固定用板バネ4を介して上記油排出口2を覆うように取り付けるストレーナで、パンチングメタル等によって下面に開く碗状に成形され、上記油排出口2の周囲に所定の大きさの空間部5を形成している。6は、例えば適宜な繊維と吸着材を混合して多孔質構造を有する成形体に構成された成形フィルターであって、少なくともその下面に上記ストレーナ3の上面形状に対応する碗状に成形された凹部6aを有する成形体からなり、ストレーナ3を覆って嵌着固定されるものである。
【0036】
次に、7は、平板フィルターで、袋体に所定の吸着材を詰め込んで薄板状としたものであって、柔軟性を有し、上記成形フィルター6の上面に沿ってこれを全面的に覆うようにして設けるものである。吸着材としては、従来から用いられている、活性白土、ケイ素、シリカゲル、酸化マグネシウムなどの粉末を利用する。これらの吸着材によっても、脱色、脱臭効果を得ることができる。なお、8は、平板フィルター7が不用意に浮き上がったり移動したりしないようにするため、平板フィルター7の周縁部上に設けるリング状のフィルター押さえであり、8aはその上縁部に設ける取手である。このフィルター押さえ8によって、上記成形フィルター6と平板フィルター7は密着して積層され、2種類のフィルターを積層することによって、より大きなろ過効果を得ることができるものである。
【0037】
即ち、上記第1実施形態と同様に油排出口2に接続するポンプ(図示せず)を介して吸引すると、オイルタンク1内の使用済み食用油は、平板フィルター7、成形フィルター6、ストレーナ3の順に、それぞれの全面にわたって均等に分散して浸透し、不純物や着色、におい等を吸着されながらろ過されることになる。平板フィルター7に含まれる活性白土等では、主に脱色作用を行い、成形フィルター6では不純物を吸着し、脱色、脱臭作用を行う。このように特性の異なる2種類のフィルターを積層して使用することにより、ろ過効率を高めることができ、食用油の再利用可能回数を増加させることができる。
【0038】
(第3実施形態)
次に、本発明に係るフィルター構造の第3の実施形態を、図3に従って説明する。図3において、(A)はフィルター構造の中央縦断面図、(B)はその分解図である。
【0039】
図3において、1はオイルタンク、2はその内底部中央に設けた油排出口である。これらは、上述した実施形態と同様のものである。9は、下面に設けた固定用板バネ10を介して上記油排出口2を覆うように取り付けるストレーナである。即ち、この固定用板バネ10を油排出口2内に挿入、係着させることによって、ストレーナ9を油排出口2に臨んで固定する。このストレーナ9は、多数の孔を有するパンチングメタルまたはメッシュ網等によって下面に開くなだらかな球面状に成形され、上記油排出口2の周囲に所定の大きさの空間部11を形成している。
【0040】
12は、平板成形フィルターであって、上記ストレーナ9の全面を上から覆って設けるものである。この平板成形フィルター12は、例えば上記第1の実施形態における成形フィルター6の構成と同様の構成であり、適宜な繊維と吸着材を混合して多孔質構造を有する成形体に構成したもので、不純物を除去すると共に、脱色、脱臭等の各種効果を有するものである。但し、第1実施形態のような凹部を形成しないので、より簡単に成型できるものである。
【0041】
13は、金属棒等からなる押さえ環で、上記平板成形フィルター12の周縁近傍に載置して、平板成形フィルター12の浮き上がりや位置ずれを防止するものである。また、14は、パンチングメタルまたはメッシュ網等からなる押さえ板で、上記押さえ環13の上から平板成形フィルター12を覆って設けられ、上記押さえ環13と同様に、平板成形フィルター12の浮き上がりや位置ずれを防止するものである。なお、この押さえ環13と押さえ板14は、互いに接合し、一体としたものであってもよい。
【0042】
上記構成からなる第3の実施形態のフィルター構造は、上述した第1の実施形態とほぼ同様の作用効果を奏するものである。即ち、ポンプで吸引すると、空間部11の全体にわたって均等に負圧が掛かることになり、この負圧によって、オイルタンク1内の使用済みの食用油は、押さえ板14、平板成形フィルター12、ストレーナ9の順に、その全面にわたって均等に分散して浸透し、不純物や着色、におい等を吸着されながらろ過される。なお、押さえ板14も大型の不純物等を除去する働きを有する。
【0043】
(第4実施形態)
次に、本発明に係るフィルター構造の第4の実施形態を、図4に従って説明する。図4において、(A)はフィルター構造の中央縦断面図、(B)はそのうち、押さえ環の平面図である。
【0044】
図4において、1はオイルタンク、2はその内底部中央に設けた油排出口である。これらは、上述した実施形態と同様のものである。15は、上記油排出口2を覆うように取り付けるストレーナで、例えばメッシュ網によって構成されるものである。
【0045】
16は、平板成形フィルターであって、上記ストレーナ15の全面を上から覆い、オイルタンク1の底面全体にわたって設けるものである。この平板成形フィルター16は、例えば上記第1の実施形態における成形フィルター6や第3の実施形態における平板成形フィルター12の構成と同様の構成であり、適宜な繊維と吸着材を混合して多孔質構造を有する成形体に構成したもので、不純物を除去すると共に、脱色、脱臭等の各種効果を有するものである。
【0046】
17は、例えば金属棒等を渦巻状に形成してなる押さえ環で、オイルタンク1の内底部の大きさに見合う径を有し、上記平板成形フィルター16の上面全体に載置して、平板成形フィルター16の浮き上がりや位置ずれを防止するものである。また、18は、上記押さえ環17の跳ね上がりを防止するために、上記押さえ環17を規制するようにオイルタンク1の側壁間に架設する弓状の棒杆である。
【0047】
上記構成からなる第4の実施形態のフィルター構造においては、油排出口2からポンプで吸引するのではなく、食用油の自重によって自由落下でろ過するものである。即ち、使用済みの食用油は自重によって平板成形フィルター16の全面に分散して浸透し、その過程で繊維や吸着材によって不純物がろ過され、脱色、脱臭がなされる。ろ過された食用油は、メッシュ網からなるストレーナ15に至り、ストレーナ15の網目で形成される僅かな空間部分を伝わり、中央の油排出口2から排出される。このとき、ストレーナ15の周縁部の外側部分は、平板成形フィルター16の周縁部が押さえ環17で押圧され、オイルタンク1の底面に密着しているので、食用油は、必ず、平板成形フィルター16を通過してろ過され、不純物を含んだ食用油がそのまま排出されることはない。
【0048】
(第5実施形態)
次に、本発明に係るフィルター構造の第5の実施形態を、図5に従って説明する。図5は、家庭等でも使用できる比較的小型のろ過装置を想定したもので、その中央縦断面図である。図において、21は使用済み食用油を貯留するオイルタンク、22は、オイルタンク21の内底部中央に設けられる油排出口である。23は、上記油排出口22を覆うように設けるストレーナで、メッシュ網やパンチングメタルで碗状に形成し、油排出口22の周囲に所定の大きさの空間部24を形成するようにしたものである。
【0049】
25は、成形フィルターであって、少なくともその下面に上記ストレーナ23の上面形状に対応する碗状に成形された凹部25aを有する成形体からなり、ストレーナ23を覆って嵌着固定されるものである。また、その平面形状はオイルタンク21の内底面に密に嵌合する形状を備えている。この成形フィルター25は、上記第1の実施形態と同様に、例えば適宜な繊維と吸着材を混合して多孔質構造を有する成形体に構成されたもので、不純物を除去すると共に、脱色、脱臭等の各種効果を有するものである。26は、金属棒等からなる押さえ環であって、上記成形フィルター25の周縁に載置して、その浮き上がりを防止するものである。
【0050】
27は、平板フィルターであって、袋体に所定の吸着材を詰め込んで薄板状としたものであって、柔軟性を有し、上記成形フィルター25の上面を全面的に覆うようにして設けるものである。この平板フィルター27は、吸着材として、活性白土、ケイ素、シリカゲル、酸化マグネシウムなどの粉末を利用し、主に脱色、脱臭効果を得ることができるものである。また、この平板フィルター27は自由に変形し、オイルタンク21の内側面に沿って密に嵌合するように設けている。28は、上記平板フィルター27の上に載置する押さえ網で、上記平板フィルター27が浮き上がらないようにするためのものである。なお、29はオイルタンク21の開口部に載置する漉し網であって、必要に応じて設けるものである。
【0051】
このろ過装置は、食用油の自重によってろ過するものである。即ち、上部開口から使用済み食用油を投入すると、漉し網29によって大型の不純物は除去される。次いで、押さえ網28によっても大型の不純物が除去される。その後、自重により食用油は平板フィルター27及び成形フィルター25に浸透していき、その通過の過程で、不純物が吸着され、同時に脱色、脱臭等が行われる。このとき、平板フィルター27及び成形フィルター25はオイルタンク21の内側面に密に接触しているので、不純物を含んだ食用油がそのまま排出されることはない。また、ストレーナ23によって空間部24を形成しているので、成形フィルター25の一部に集中することなく全体に均等に分散して油が浸透し、効率よく不純物を除去できる。
【0052】
なお、上述した各実施形態において、オイルタンクや各種フィルターの平面視形状は特に限定するものではない。例えば、前述した特許文献2では、矩形のオイルタンクを備えているが、このような既存のオイルタンクにも本発明に係るフィルター構造は適用できるものである。また、各フィルターはオイルタンクの底部形状に合致させ、密に敷設することが好ましいが、例えば、第1の実施形態において、矩形のオイルタンクの中央に円形のフィルターを係着しても、成型フィルターがオイルタンクの内底面に密着しているので、上述した作用効果を充分に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る食用油ろ過装置におけるフィルター構造の第1の実施形態を示すもので、(A)はフィルター構造の中央縦断面図、(B)はその分解図である。
【図2】本発明に係る食用油ろ過装置におけるフィルター構造の第2の実施形態を示すもので、(A)はフィルター構造の中央縦断面図、(B)はその分解図である。
【図3】本発明に係る食用油ろ過装置におけるフィルター構造の第3の実施形態を示すもので、(A)はフィルター構造の中央縦断面図、(B)はその分解図である。
【図4】本発明に係る食用油ろ過装置におけるフィルター構造の第4の実施形態を示すもので、(A)はフィルター構造の中央縦断面図、(B)はその押さえ環の平面図である。
【図5】本発明に係る食用油ろ過装置におけるフィルター構造の第5の実施形態を示すもので、フィルター構造の中央縦断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 オイルタンク
2 油排出口
3 ストレーナ
4 固定用板バネ
5 空間部
6 成形フィルター
7 平板フィルター
8 フィルター押さえ
9 ストレーナ
10 固定用板バネ
11 空間部
12 平板成形フィルター
13 押さえ環
14 押さえ板
15 ストレーナ
16 平板成形フィルター
17 押さえ環
18 棒杆
21 オイルタンク
22 油排出口
23 ストレーナ
24 空間部
25 成型フィルター
26 押さえ環
27 平板フィルター
28 押さえ網
29 漉し網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内底部に油排出口を有するオイルタンクを備えるろ過装置において、下面に空間部を形成し係着手段を介して上記油排出口に係着するストレーナと、繊維と吸着材を混合して多孔質構造に構成する共に上記ストレーナの上面形状に対応する凹部を下面に有する所定形状の成形体からなり上記ストレーナに嵌着する成型フィルターとで構成することを特徴とする食用油ろ過装置におけるフィルター構造。
【請求項2】
上記成型フィルターの上面を全面的に覆って袋体に吸着材を詰めてなる平板フィルターをさらに設け、その周縁部上にフィルター押さえを設けてなる、請求項1記載の食用油ろ過装置におけるフィルター構造。
【請求項3】
内底部に油排出口を有するオイルタンクを備えるろ過装置において、下面に空間部を形成し係着手段を介して上記油排出口に係着するストレーナと、繊維と吸着材を混合して多孔質構造に構成する共に平板状に成形した成形体からなり上記ストレーナの全面を覆う平板成型フィルターと、該平板成形フィルターの周縁近傍に載置する押さえ環と、該押さえ環を覆って設けるパンチングメタル等からなる押さえ板とで構成することを特徴とする食用油ろ過装置におけるフィルター構造。
【請求項4】
内底部に油排出口を有するオイルタンクを備えるろ過装置において、上記油排出口を覆って設けるストレーナと、繊維と吸着材を混合して多孔質構造に構成する共に平板状に成形した成形体からなり上記ストレーナの全面を覆う平板成型フィルターと、該平板成形フィルターの上面全体に載置する渦巻状の押さえ環とで構成することを特徴とする食用油ろ過装置におけるフィルター構造。
【請求項5】
上記渦巻状の押さえ環の跳ね上がりを抑えるために架設する棒杆を備えた請求項4記載の食用油ろ過装置におけるフィルター構造。
【請求項6】
上記係着手段が、ストレーナの下面に設けるくの字状に折曲した板バネである請求項1から請求項3のいずれか1項記載の食用油ろ過装置におけるフィルター構造。
【請求項7】
内底部に油排出口を有するオイルタンクを備えるろ過装置において、下面に空間部を形成し上記油排出口を覆って設けるストレーナと、繊維と吸着材を混合して多孔質構造に構成する共に上記ストレーナの上面形状に対応する凹部を下面に有する所定形状の成形体からなりオイルタンクの内底面に密に嵌合して上記ストレーナに嵌着する成型フィルターと、該成形フィルターの周縁に載置する押さえ環と、袋体に吸着材を詰めてなり、上記成形フィルターと押さえ環を全面的に覆いオイルタンクの内側面に沿って密に嵌合する平板フィルターと、該平板フィルターの上に載置する押さえ網とで構成することを特徴とする食用油ろ過装置におけるフィルター構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−262063(P2009−262063A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−115453(P2008−115453)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(508128174)
【Fターム(参考)】