説明

飲料用ディスペンサの保密検査方法と保密検査装置

【課題】容易に操作できるうえ簡略な設備で安価に実施でき、しかも飲料用ディスペンサの水漏れ箇所の有無を確実に検知できるようにする。
【解決手段】飲料用ディスペンサ(1)は装置本体(2)の上面にボトル装着部(3)を備え、装置本体(2)内の飲料貯溜部(6)をボトル装着部(3)に連通し、装置本体(2)外面の給水栓と飲料貯溜部(6)とを配管(7)で互いに接続してある。給水栓を閉止して、ボトル装着部(3)の装着開始位置(S)へ密封部材(17)を保密状に装着する。次いで密封部材(17)を装着開始位置(S)よりも下方の測定位置(T)へ、保密状態を維持しながら圧入する。密封部材(17)に貫通形成した空気連通路(18)に圧力計(19)を接続しておき、上記の圧入で上昇した飲料貯溜部(6)内の気圧の経時変化を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は飲料用ディスペンサの保密検査方法とこれに用いる保密検査装置に関し、さらに詳しくは、容易に操作できるうえ簡略な設備で安価に実施でき、しかも飲料用ディスペンサの水漏れ箇所の有無を確実に検知できる、飲料用ディスペンサの保密検査方法と保密検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷水や温水の飲料水を供給する飲料用ディスペンサには、例えば図4に示すように、装置本体(2)の上面にボトル装着部(3)を備え、このボトル装着部(3)に、例えば3ガロンボトルや5ガロンボトルなどの飲料ボトル(4)を、天地を反転し首部が下方となる状態にして装着するものがある(例えば、特許文献1参照)。この装置本体(2)の外面には2個の給水栓(5・5)が設けてあり、この給水栓(5)を操作することで、上記の飲料ボトル(4)から冷水や温水の飲料水が、飲料ボトル(4)との水頭差による水圧を利用して取り出される。
【0003】
即ち上記の飲料用ディスペンサ(1)は、例えば図5に示すように、装置本体(2)内に冷水貯溜部(6a)と温水貯溜部(6b)とを備えた飲料貯溜部(6)が設けてあり、それぞれ上記のボトル装着部(3)に連通してある。そしてこれらの冷水貯溜部(6a)と温水貯溜部(6b)は、それぞれ装置本体(2)内に設けた配管(7)を介して上記の給水栓(5)に接続してある。また下方に配置した温水貯溜部(6b)の下面には排水管(8)が接続してある。
【0004】
上記のボトル装着部(3)には、蓋部材(9)が着脱自在で且つ保密状に装着してある。この蓋部材(9)の上面には、天地を反転させた飲料ボトル(4)の首部(4a)が着脱可能なように、ボトル支持部(10)が凹設してある。このボトル支持部(10)の底部に飲料水供給管(11)が立設してあり、この飲料水供給管(11)は、内側端を上記のボトル装着部(3)内に開口してある。またこの飲料水供給管(11)の外側端は、上記の飲料ボトル(4)の首部(4a)内へ挿入可能に構成してある。
【0005】
なお、上記の蓋部材(9)には通気孔(12)が透設してあり、飲料ボトル(4)内から飲料水(13)が取り出されると、これと入れ替わる空気がこの通気孔(12)から飲料ボトル(4)内へ供給される。また、上記の蓋部材(9)の下面にはフロート(14)が上下揺動可能に支持してあり、ボトル装着部(3)内の飲料水(13)が所定の水位より上昇すると、このフロート(14)により上記の通気孔(12)が封止される。
【0006】
【特許文献1】特開平11−198956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の飲料用ディスペンサ(1)は、ボトル装着部(3)や飲料貯溜部(6)、給水栓(5)、あるいはこれらと配管(7)との接続部などのシール性能が不十分であると、その部位から水漏れを生じて、飲料水が無駄に流出するだけでなく、設置場所の周囲を水浸しにして汚損する虞がある。そこでこの飲料用ディスペンサをメンテナンスした場合などは、保密性を検査して水漏れが生じないことを確認したのち、設置場所へ搬送して設置される。
【0008】
上記の水密性の検査には、飲料貯溜部内に水を収容し、接続部などからの水漏れの有無を確認することが考えられる。しかしこの場合、配管等との接続箇所が多く、確認作業が煩雑である。しかも検査後に水分が残っていると雑菌等を繁殖させる虞があり、また包装材料を汚損する虞もある。このため、特に飲料用ディスペンサにあっては、検査後に内部を充分に乾燥させる必要がある。従って、水を用いた検査は、操作が煩雑であるうえ、乾燥処理コストがかかり安価に実施できない問題があった。
【0009】
一方、上記の保密性を検査するため、水などの液体に代えて窒素ガスなどのガス体を用い、飲料貯溜部内へガス圧を加えてガスの流出を確認する方法が考えられる。
しかしこの場合は、ガスボンベ等の加圧ガス源が必要であるうえ、飲料貯溜部とこのガス源との接続に専用の治具が必要となり安価に実施できない問題がある。また、ガス漏れ箇所の確認には、例えば接続部などに検知液を塗布して気泡の発生を確認するなど、確認操作が極めて煩雑となる問題もある。さらに、上記の飲料用ディスペンサの各部品には、上部に配置される飲料ボトルの水頭差による圧力が加わるが、その飲料ボトルの配置高さは1m程度であり、内部に加わる圧力は10kPa程度に過ぎない。このため、配管の接続部等は、さほど高いシール性能を有しておらず、万一、飲料貯溜部内や配管内などに高圧のガスが流入すると、シール部が破損するなどの悪影響を受ける虞がある。従って、上記のガス源から供給されるガスは低圧に制限する必要があり、圧力の制御が容易でない問題もある。
【0010】
本発明の技術的課題は上記の問題点を解消し、水や加圧用のガス源を用いることなく容易に操作できるうえ簡略な設備で安価に実施でき、しかも飲料用ディスペンサの水漏れ箇所の有無を確実に検知できる、飲料用ディスペンサの保密検査方法とこれに用いる保密検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記の課題を解決するため、例えば本発明の実施の形態を示す図1と図2に基づいて説明すると、次のように構成したものである。
即ち本発明1は飲料用ディスペンサの保密検査方法に関し、装置本体(2)の上面にボトル装着部(3)を備え、この装置本体(2)内に設けた飲料貯溜部(6)を上記のボトル装着部(3)に連通し、この装置本体(2)の外面に設けた給水栓(5)と上記の飲料貯溜部(6)とを装置本体内(2)に設けた配管(7)を介して互いに接続している飲料用ディスペンサ(1)の保密性を検査する保密検査方法であって、上記の給水栓(5)を閉止して、上記のボトル装着部(3)に密封部材(17)を保密状に装着し、上記の飲料貯溜部(6)内の気圧を上昇させたのち、この上昇した飲料貯溜部(6)内の気圧の経時変化を測定することを特徴とする。
【0012】
また本発明2は飲料用ディスペンサの保密検査装置に関し、装置本体(2)の上面にボトル装着部(3)を備え、この装置本体(2)内に設けた飲料貯溜部(6)を上記のボトル装着部(3)に連通し、この装置本体(2)の外面に設けた給水栓(5)と上記の飲料貯溜部(6)とを装置本体内(2)に設けた配管(7)を介して互いに接続している飲料用ディスペンサ(1)の保密検査に用いられる保密検査装置であって、上記のボトル装着部(3)へ保密状に装着される密封部材(17)と、この密封部材(17)を貫通してボトル装着部(3)内に内側端を開口した空気連通路(18)と、この空気連通路(18)の外側端に連結された圧力計(19)とを備え、上記の密封部材(17)を、上記のボトル装着部(3)へ保密状に装着した装着開始位置(S)からこれよりも下方の測定位置(T)へ、保密状態を維持しながら圧入可能に構成したことを特徴とする。
【0013】
上記の飲料用ディスペンサのいずれかの箇所でシール性能が不十分となっており、水漏れを生じる虞がある場合には、そのシール性能の不十分な箇所から空気が流出するので、上記の飲料貯溜部内の気圧が徐々に降下する。このため、この気圧が経時的に急速に降下する場合は、水漏れ箇所が有ると判断される。
【0014】
ここで、上記の飲料貯溜部内の気圧は、上昇幅が小さいと空気の流出が少なく、水漏れ箇所があっても気圧の経時変化が少ないので、水漏れの有無の検知が容易でない。一方、飲料貯溜部内の気圧を過剰に高くすると、ボトル装着部に装着した密封部材が浮き上がり易いうえ、シール部の性能を劣化させる虞があるなど、飲料用ディスペンサに悪影響を及ぼす虞がある。このため、上記の飲料貯溜部内の気圧は、4〜10kPaの範囲で上昇させるのが好ましい。
【0015】
また、上記の飲料貯溜部内の気圧を上昇させる方法としては、例えば空気ポンプを飲料貯溜部に接続してもよく、或いは、他の容器を接続してこの容器内の空気を加圧することなどで、飲料貯溜部内の気圧を高めてもよい。
しかし、上記の密封部材を上記のボトル装着部の装着開始位置へ保密状に装着し、次いでこの密封部材を装着開始位置よりも下方の測定位置へ保密状態を維持しながら圧入することで、上記の飲料貯溜部内の気圧を上昇させる場合には、ボトル装着部を密封する密封部材を用いるだけでよく、他に空気ポンプなどの気圧上昇手段を必要としないので、好ましい。
【0016】
上記の飲料貯溜部内の気圧の変化は、任意の箇所で測定することができるが、例えば上記の密封部材に空気連通路を貫通形成して、この空気連通路の外側端に圧力計を接続し、この空気連通路を介して上記の飲料貯溜部内の気圧の経時変化を測定すると、上記のボトル装着部へ密封部材を装着するだけで、飲料貯溜部内の気圧が上記の圧力計で容易に測定され、好ましい。
【0017】
上記の密封部材はボトル装着部へ保密状に装着されるものであればよく、特定の形状に限定されないが、この密封部材の上面に支持穴を凹設するとともに、この支持穴の底部に管部材を立設し、この支持穴に支持部材を装着して上記の管部材を貫通させ、この管部材内に上記の空気連通路を形成すると、ボトル装着部への密封部材の装着時などに空気連通路が変形することが防止され、この空気連通路を介して飲料貯溜部と圧力計とが確実に接続される。
【0018】
なお、上記の密封部材は、飲料用ディスペンサのボトル装着部へ保密状に装着される蓋部材と同様の形状に形成することができ、従って、この蓋部材を利用して上記の密封部材を形成すると安価に実施できて好ましい。
即ち、上記の飲料用ディスペンサが、ボトル装着部に蓋部材が着脱自在で且つ保密状に装着され、この蓋部材の上面には飲料ボトルが着脱可能なボトル支持部を凹設してあり、このボトル支持部の底部に飲料水供給管が立設してあり、この飲料水供給管は、内側端を上記のボトル装着部内に開口するとともに、外側端を上記の飲料ボトル内へ挿入可能に構成してある場合には、上記の密封部材を上記の蓋部材で構成し、上記の空気連通路の少なくとも一部を上記の飲料水供給管内に形成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は上記のように構成され作用することから、次の効果を奏することができる。
(1)本発明は飲料貯溜部内の気圧を高めた後、その気圧の経時変化を測定するだけでよく、水を用いる必要がないので検査後の乾燥処理を省略して容易に操作でき、安価に実施することができる。また、加圧用のガス源を用いないので安価に実施できるうえ、過剰に高いガス圧を飲料貯溜部内へ導入する虞がなく、導入ガスの圧力を制御する必要もないので容易に操作でき、しかも飲料用ディスペンサに水漏れ箇所が有ると、確実にこれを検知することができる。
【0020】
(2)上記の飲料貯溜部内の気圧を4〜10kPaの範囲で上昇させる場合には、水漏れ箇所の有無を確実に検知できるうえ、密封部材に過剰なガス圧が加わらず、上記のボトル装着部への密封部材の確実な装着が容易であり、しかも飲料用ディスペンサが加圧による悪影響を受ける虞がない。
【0021】
(3)上記の密封部材を上記のボトル装着部の装着開始位置へ保密状に装着し、次いでこの密封部材を装着開始位置よりも下方の測定位置へ保密状態を維持しながら圧入することで、上記の飲料貯溜部内の気圧を上昇させる場合には、飲料貯溜部内の気圧を上昇させる手段を別途用いる必要がないうえ、密封部材を圧入するだけで上記の気圧を上昇できるので、極めて簡単に加圧操作をすることができる。
【0022】
(4)上記の密封部材に空気連通路を貫通形成して、この空気連通路の外側端に圧力計を接続し、この空気連通路を介して上記の飲料貯溜部内の気圧の経時変化を測定する場合には、上記の密封部材をボトル装着部へ装着するだけで飲料貯溜部内を圧力計に連通することができ、飲料貯溜部内の気圧の経時変化を簡単に測定することができる。
【0023】
(5)上記の密封部材の上面に支持穴を凹設するとともに、この支持穴の底部に管部材を立設し、この支持穴に支持部材を装着して上記の管部材を貫通させ、この管部材内に上記の空気連通路を形成した場合には、ボトル装着部への密封部材の装着時などに空気連通路が変形することを防止でき、この空気連通路を介して飲料貯溜部と圧力計とを確実に接続することができる。
【0024】
(6)上記の密封部材を、飲料用ディスペンサのボトル装着部へ保密状に装着される蓋部材で構成して、この蓋部材の上面に形成されたボトル支持部に立設してある飲料水供給管内に上記の空気連通路の少なくとも一部を形成した場合には、密封部材の形成が容易であり、安価に実施できて好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1と図2は本発明の実施形態を示し、図1は飲料用ディスペンサの装着開始位置に装着した状態の保密検査装置の断面図、図2は飲料用ディスペンサの測定位置に装着した状態の、保密検査装置の断面図である。
【0026】
図1に示すように、この保密検査装置(15)は、前述した図5に示す飲料用ディスペンサ(1)の保密性を検査するために用いられ、周面にシール部材(16)を付設した密封部材(17)と、この密封部材(17)を貫通して下端を開口した空気連通路(18)と、この空気連通路(18)の外側端に連結された圧力計(19)とを備える。なおこの圧力計(19)は、空気連通路(18)を介して飲料用ディスペンサ(1)内の気圧の変化を測定できるものであればよく、例えば汎用の圧力計や差圧計などが用いられ、特定の形状や構造のものに限定されない。
【0027】
上記の密封部材(17)は、上記のシール部材(16)により飲料用ディスペンサ(1)のボトル装着部(3)へ保密状に装着され、図1に示すように、ボトル装着部(3)の上寄り部に形成した装着開始位置(S)から、これよりも下方の図2に示す測定位置(T)へ、保密状態を維持しながら圧入できるように構成してある。
【0028】
上記の密封部材(17)には上面に支持穴(20)が凹設してあり、この支持穴(20)の底部に管部材(21)が立設してある。上記の空気連通路(18)はこの管部材(21)の内部を通過するように形成してある。また上記の支持穴(20)内には、必要に応じてゴム栓状の支持部材(22)が装着してあり、この支持部材(22)に上記の管部材(21)を貫通させてある。なお、この管部材(21)を短く形成して、他物との接触や変形等の虞をなくした場合は、この支持部材(22)を省略してもよい。
【0029】
上記のボトル装着部(3)へ保密状に装着される密封部材(17)は、図5に示す飲料用ディスペンサ(1)の蓋部材(9)と同様の形状を採用することができる。具体的には、この蓋部材(9)で上記の密封部材(17)を構成し、この蓋部材(9)に凹設したボトル支持部(10)で上記の支持穴(20)に構成し、ボトル支持部(10)の底面に立設した飲料水供給管(11)を上記の空気連通路(18)の下側部分に利用してある。但し、上記の蓋部材(9)に形成されている通気孔(12)は密封または省略してある。
【0030】
次に、上記の保密検査装置(15)を用いて飲料用ディスペンサの保密性を検査する方法について説明する。
最初に、飲料貯溜部(6)内の水など飲料用ディスペンサ(1)内の水分を除いた状態で、上記の給水栓(5)を閉じておく。次に、図1に示すように、上記の密封部材(17)を、上記の装着開始位置(S)へ保密状に装着する。このとき、上記の圧力計(19)は大気圧を示している。次いでこの密封部材(17)を、この装着開始位置(S)から図2に示す測定位置(T)へ保密状態を維持しながら圧入する。なおこの測定位置(T)は、図5に示す飲料用ディスペンサ(1)において、蓋部材(9)の適正な装着位置となっており、上記の密封部材(17)はこの測定位置(T)から移動しないように、飲料用ディスペンサ(1)の装置本体(2)に確りと保持される。
上記の圧入操作により、飲料貯溜部(6)内の気圧が、例えば5kPa程度上昇し、上記の圧力計(19)で測定される。この圧力上昇は、ボトル装着部(3)や飲料貯溜部(6)の容量、配管(7)の太さや長さなどによって異なるが、密封部材(17)の圧入寸法などにより、通常は、4〜10kPaの範囲内に設定される。
【0031】
その後、この上昇した飲料貯溜部(6)内の気圧の経時変化が、例えば数分〜十数分に亘って上記の圧力計(19)により測定される。
仮に、飲料用ディスペンサ(1)内に水漏れを生じるようなシール不良箇所があれば、上記の加圧によりその箇所から空気が漏洩する。従って、上記の圧力計(19)で測定されている圧力が、例えば1kPa程度以上、圧力降下率で数十%以上、急速に降下した場合は、飲料用ディスペンサ(1)内のいずれかにシール不良箇所が有り、水漏れを生じると判定されて、部品取り付け箇所等がチェックされる。
これに対し上記の測定圧力が経時的にほとんど変化しない場合や、例えば0.1〜0.2kPa程度、圧力降下率で数%程度以下と、僅かな降下である場合は、この飲料用ディスペンサ(1)には水漏れを生じるようなシール不良箇所がないと判定される。
【0032】
なおこの実施形態では、飲料用ディスペンサ内の水分を除いた状態で検査したので、検査後の乾燥が不要であるうえ、シール不良箇所から水が洩れるよりも速やかに空気が漏出するため、水を用いて検査する場合よりも水漏れ箇所の有無を迅速かつ確実に検出することができる。しかし本発明では飲料貯溜部内の気圧を上昇したのち、その気圧の経時変化を測定できればよく、飲料貯溜部内等に多少の水分が残存していてもよい。
【0033】
次に、上記の保密検査装置を用いて、具体的に飲料用ディスペンサの保密性能を検査した。この検査の対象には、水漏れを生じない飲料用ディスペンサ(検査例1、2)と、水漏れを生じる飲料用ディスペンサ(検査例3、4)とを用い、保密検査装置の圧力計には、U字管に水を入れたマノメータを使用した。
【0034】
上記の保密検査の手順は次の通りである。
最初に、検査例1では飲料用ディスペンサ(1)の飲料貯溜部(6)を空にし、検査例2〜4では飲料用ディスペンサ(1)の飲料貯溜部(6)に水を2L入れた状態で、上記のボトル装着部(3)の装着開始位置(S)へ密封部材(17)を保密状に装着し、次いで、この密封部材(17)を測定位置(T)まで圧入した。なお上記の水は、水漏れ箇所からの漏洩を容易に確認できるように入れたものであり、通常の保密検査には不要である。
次に、上記の圧入で飲料貯溜部(6)内の気圧が上昇して上記のマノメータに生じた水面差を測定し、その後の経時変化を目視により観察した。その測定結果を表1とこれをグラフにした図3に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
上記の測定結果から明らかなように、検査例1や2の水漏れを生じない飲料用ディスペンサの場合においても、経時的な圧力降下を生じたが、その降下した圧力や圧力降下率は僅かであった。これに対し、検査例3や4の水漏れを生じる飲料用ディスペンサにあっては、経時的な圧力降下が明確に生じ、この保密検査装置とこれを用いた保密検査方法により、飲料用ディスペンサの水漏れを確実に確認できることが明らかとなった。
【0037】
上記の実施形態で説明した飲料用ディスペンサ保密検査方法と保密検査装置は、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものであり、飲料用ディスペンサの内部構造や形状、容量、密封部材の形状や構造、空気連通路の形成位置、圧力計の種類、飲料貯溜部内の加圧方法等は、上記の上記の実施形態のものに限定されず、本発明の特許請求の範囲内において種々の変更を加え得るものである。上記のディスペンサに使用される飲料は、特定の種類や温度に限定されないことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の飲料用ディスペンサの保密検査方法と保密検査装置は、容易に操作できるうえ簡略な設備で安価に実施でき、しかも飲料用ディスペンサの水漏れ箇所の有無を確実に検知できるので、メンテナンス時の検査に好適に用いられるほか、製品検査など任意の際にも好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態を示し、飲料用ディスペンサの装着開始位置に装着した状態の、保密検査装置の断面図である。
【図2】本発明の実施形態の、飲料用ディスペンサの測定位置に装着した状態の、保密検査装置の断面図である。
【図3】飲料用ディスペンサの保密性能検査の測定結果を示すグラフである。
【図4】飲料用ディスペンサを示す、正面図である。
【図5】飲料用ディスペンサの概略構造を示す、断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1…飲料用ディスペンサ
2…装置本体
3…ボトル装着部
4…飲料ボトル
5…給水栓
6…飲料貯溜部
7…配管
9…蓋部材
10…ボトル支持部
11…飲料水供給管
15…保密検査装置
17…密封部材
18…空気連通路
19…圧力計
20…支持穴
21…管部材
22…支持部材
S…装着開始位置
T…測定位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体(2)の上面にボトル装着部(3)を備え、この装置本体(2)内に設けた飲料貯溜部(6)を上記のボトル装着部(3)に連通し、この装置本体(2)の外面に設けた給水栓(5)と上記の飲料貯溜部(6)とを装置本体内(2)に設けた配管(7)を介して互いに接続している飲料用ディスペンサ(1)の保密性を検査する保密検査方法であって、
上記の給水栓(5)を閉止して、上記のボトル装着部(3)に密封部材(17)を保密状に装着し、
上記の飲料貯溜部(6)内の気圧を上昇させたのち、この上昇した飲料貯溜部(6)内の気圧の経時変化を測定することを特徴とする、飲料用ディスペンサの保密検査方法。
【請求項2】
上記の飲料貯溜部(6)内の気圧を4〜10kPaの範囲で上昇させる、請求項1に記載の飲料用ディスペンサの保密検査方法。
【請求項3】
上記の密封部材(17)を上記のボトル装着部(3)の装着開始位置(S)へ保密状に装着し、次いでこの密封部材(17)を装着開始位置(S)よりも下方の測定位置(T)へ保密状態を維持しながら圧入することで、上記の飲料貯溜部(6)内の気圧を上昇させる、請求項1または請求項2に記載の飲料用ディスペンサの保密検査方法。
【請求項4】
上記の密封部材(17)に空気連通路(18)を貫通形成して、この空気連通路(18)の外側端に圧力計(19)を接続し、この空気連通路(18)を介して上記の飲料貯溜部(6)内の気圧の経時変化を測定する、請求項1から3のいずれか1項に記載の飲料用ディスペンサの保密検査方法。
【請求項5】
装置本体(2)の上面にボトル装着部(3)を備え、この装置本体(2)内に設けた飲料貯溜部(6)を上記のボトル装着部(3)に連通し、この装置本体(2)の外面に設けた給水栓(5)と上記の飲料貯溜部(6)とを装置本体内(2)に設けた配管(7)を介して互いに接続している飲料用ディスペンサ(1)の保密検査に用いられる保密検査装置であって、
上記のボトル装着部(3)へ保密状に装着される密封部材(17)と、この密封部材(17)を貫通してボトル装着部(3)内に内側端を開口した空気連通路(18)と、この空気連通路(18)の外側端に連結された圧力計(19)とを備え、
上記の密封部材(17)を、上記のボトル装着部(3)へ保密状に装着した装着開始位置(S)からこれよりも下方の測定位置(T)へ、保密状態を維持しながら圧入可能に構成したことを特徴とする、飲料用ディスペンサの保密検査装置。
【請求項6】
上記の密封部材(17)の上面に支持穴(20)を凹設するとともに、この支持穴(20)の底部に管部材(21)を立設し、この支持穴(20)に支持部材(22)を装着して上記の管部材(21)を貫通させ、この管部材(21)内に上記の空気連通路(18)を形成した、請求項5に記載の飲料用ディスペンサの保密検査装置。
【請求項7】
上記の飲料用ディスペンサ(1)はボトル装着部(3)に蓋部材(9)が着脱自在で且つ保密状に装着され、この蓋部材(9)の上面には飲料ボトル(4)が着脱可能なボトル支持部(10)を凹設してあり、このボトル支持部(10)の底部に飲料水供給管(11)が立設してあり、この飲料水供給管(11)は、内側端を上記のボトル装着部(3)内に開口するとともに、外側端を上記の飲料ボトル(4)内へ挿入可能に構成してあり、
上記の密封部材(17)を上記の蓋部材(9)で構成し、上記の空気連通路(18)の少なくとも一部を上記の飲料水供給管(11)内に形成した、請求項5または請求項6に記載の飲料用ディスペンサの保密検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−180664(P2008−180664A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−15800(P2007−15800)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(000158312)岩谷産業株式会社 (137)
【出願人】(507028826)富士の湧水株式会社 (5)
【Fターム(参考)】