説明

飲料製造装置及び飲料製造方法

【課題】不活性ガスにより溶存酸素が置換された飲料を貯留タンク内に導入した際の気泡の発生を抑制することができ、飲料の製造効率を向上させることのできる飲料製造装置及び飲料製造方法を提供する。
【解決手段】飲料製造装置は、飲料に不活性ガスを吹き込むことにより、当該飲料中の溶存ガスを除去するストリッピング部と、不活性ガスが吹き込まれた飲料中から当該不活性ガス及び/又は溶存ガスを含む気泡を少なくとも分離し得るサイクロン式分離装置と、サイクロン式分離装置から排出された飲料を貯留する貯留タンクとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料製造装置及び飲料製造方法に関し、特に飲料を貯留するためのタンク内での気泡の発生を抑制し得る飲料製造装置及び飲料製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、緑茶、ウーロン茶、紅茶等の茶系飲料;コーヒー飲料;野菜飲料;果汁飲料等の清涼飲料、乳飲料、スープ等が市場において販売されている。これらの飲料は、ある程度長期間保存された場合であっても、その風味や呈味を維持することが重要であるが、飲料の製造過程において、当該飲料中に気体、特に酸素が混入すると、飲料中の風味成分や呈味成分等が酸化されてしまい、風味や呈味が損なわれてしまう。
【0003】
特に、上記のような飲料を容器内に充填して長期間保存するためには、通常、飲料を高温(例えば、98〜140℃)下で所定時間(例えば、達温〜40分)滞留させることにより、飲料の殺菌処理が行われた上で容器内に飲料が充填されているが、飲料が高温環境下にさらされると、飲料中の溶存酸素による酸化作用が促進され、飲料の風味や呈味が損なわれてしまう。
【0004】
このような問題を解決するために、従来、飲料中の溶存酸素を可能な限り除去するための様々な方法が提案されており、その一例として、飲料製造装置の配管内において、飲料に窒素等の不活性ガスを吹き込むことにより飲料中の溶存酸素を当該不活性ガスで置き換える方法等が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−78665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の飲料製造装置のように不活性ガスで飲料中の溶存酸素を置換すると、飲料中の溶存酸素量を低減することは可能であるが、不活性ガスや溶存酸素等に起因する多数の気泡が飲料中に発生してしまう。一方で、気泡の発生を抑制するために不活性ガスの吹き込み量を低減すると、飲料中の溶存酸素量の低減効率が低下してしまう。
【0007】
特に、飲料製造装置においては、ポンプにより飲料が配管中を圧送されるが、不活性ガスを飲料中に吹き込んだ後、飲料が貯留タンク内に導入される際に飲料の液圧が低減されることで、貯留タンク内に導入された飲料の液面等に、不活性ガスに起因する多量の気泡が発生してしまうことになる。
【0008】
このように貯留タンク内において飲料の液面等に多量の気泡が発生すると、飲料が貯留タンクから溢れ出たり、貯留タンクに貯留された飲料を後段の工程に配管等を通じて送液するのが困難となったりするため、飲料の製造効率が低下してしまうという問題がある。
【0009】
このような問題に鑑みて、本発明は、不活性ガスにより溶存ガス(溶存酸素等)が置換された飲料を貯留タンク内に導入した際の気泡の発生を抑制することができ、飲料の製造効率を向上させることのできる飲料製造装置及び飲料製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、飲料に不活性ガスを吹き込むことにより、当該飲料中の溶存ガスを除去するストリッピング部と、前記不活性ガスが吹き込まれた飲料中から当該不活性ガス及び/又は溶存ガスを含む気泡を少なくとも分離し得るサイクロン式分離装置と、前記サイクロン式分離装置から排出された飲料を貯留する貯留タンクとを備えることを特徴とする飲料製造装置を提供する(請求項1)。
【0011】
上記発明(請求項1)によれば、ストリッピング部にて不活性ガスが吹き込まれ、飲料中の溶存ガスが当該不活性ガスにより置換された当該飲料をサイクロン式分離装置に導入することで、不活性ガスや溶存ガス等を含む気泡をサイクロン式分離装置において飲料から分離することができるため、サイクロン式分離装置から排出され貯留タンクに供給された飲料の液面等における気泡の発生を抑制することができる。また、上記発明(請求項1)のように、貯留タンクの前段にサイクロン式分離装置が設けられていることで、貯留タンクに導入される飲料の液圧が低減され、貯留タンク内に供給される飲料の勢いが減殺されるため、貯留タンク内に貯留された飲料の液面等における気泡の発生をさらに抑制することができる。したがって、上記発明(請求項1)によれば、飲料の製造効率を向上させることができる。
【0012】
上記発明(請求項1)においては、前記サイクロン式分離装置と前記貯留タンクとを接続し、前記サイクロン式分離装置にて飲料から分離された前記気泡の膜を形成する飲料成分を前記貯留タンク内に導入するための配管をさらに備えるのが好ましい(請求項2)。
【0013】
サイクロン式分離装置にて飲料から気泡が分離されることで、気泡の膜を形成する飲料成分が分離されることになり、当初予定された飲料の風味や呈味が変動してしまうおそれがある。しかしながら、上記発明(請求項2)によれば、サイクロン式分離装置にて飲料から分離された気泡が、サイクロン式分離装置と貯留タンクとを接続する配管内を通ることで自重により破泡し、気泡の膜を形成する飲料成分が貯留タンクに導入されるため、飲料の風味や呈味等を変動させることがない。また、サイクロン式分離装置にて飲料から気泡とともに不活性ガスの一部も分離されてしまうが、当該配管を通じて、気泡に取り込まれていた不活性ガスもまた貯留タンクに導入されるため、貯留タンク内の飲料に酸素が再溶解するのを抑制することができ、これにより、飲料の加熱殺菌や長期間保存等によって飲料中の呈味成分等が酸化するのを抑制することができる。
【0014】
上記発明(請求項1,2)においては、前記貯留タンク内に貯留されている飲料の液面に向かって、不活性ガスが吹き込まれた飲料をシャワー状に吐出する吐出部と、前記サイクロン式分離装置に接続され、不活性ガスが吹き込まれた飲料を前記サイクロン式分離装置に導入するための主配管と、前記主配管から分岐され、不活性ガスが吹き込まれた飲料を前記吐出部に導入するための分岐配管と、飲料流路を前記主配管側と前記分岐配管側とに切り替える切替部とをさらに備えるのが好ましい(請求項3)。
【0015】
サイクロン式分離装置にて飲料から気泡が分離されたとしても、貯留タンク内の飲料の液面等に若干量の気泡が生じることがあるが、上記発明(請求項3)によれば、吐出部から不活性ガスが吹き込まれた飲料が貯留タンク内の飲料の液面に向けてシャワー状に吐出されるため、液面等に生じた若干量の気泡を消滅させることができる。
【0016】
上記発明(請求項1〜3)に係る製造装置において製造し得る飲料としては、コーヒー飲料、茶系飲料、野菜飲料、果汁飲料、清涼飲料、乳飲料又はスープ等を例示することができる(請求項4)。
【0017】
上記発明(請求項4)によれば、各種飲料の製造効率を向上させることができる。特に、コーヒー飲料はその含有成分(例えば、タンパク質等)に起因して気泡が発生しやすいため、また、茶系飲料は一度発生した気泡が消滅し難いため、上記発明(請求項1〜4)に係る飲料製造装置にて製造するのに好適である。
【0018】
また、本発明は、不活性ガスが吹き込まれることで溶存ガスが除去された飲料をサイクロン式分離装置に導入して、当該飲料中から不活性ガス及び/又は溶存ガスを含む気泡を分離し、前記不活性ガス及び/又は溶存ガスを含む気泡が分離された飲料を貯留タンクに供給することを特徴とする飲料製造方法を提供する(請求項5)。
【0019】
上記発明(請求項5)においては、前記サイクロン式分離装置にて分離された前記気泡の膜を形成する飲料成分を、前記貯留タンク内に導入するのが好ましく(請求項6)、上記発明(請求項5,6)においては、さらに、前記貯留タンクに貯留されている飲料の液面に向かって、前記不活性ガスが吹き込まれた飲料をシャワー状に吐出するのが好ましい(請求項7)。
【0020】
上記発明(請求項5〜7)に係る方法により製造し得る飲料としては、コーヒー飲料、茶系飲料、野菜飲料、果汁飲料、清涼飲料、乳飲料又はスープ等を例示することができる(請求項8)。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、不活性ガスにより溶存ガス(溶存酸素等)が置換された飲料を貯留タンク内に導入した際の気泡の発生を抑制することができ、飲料の製造効率を向上させることのできる飲料製造装置及び飲料製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る飲料製造装置のうちの一部の構成を示す概略図である。
【図2】同実施形態に係る飲料製造装置における液体サイクロンの構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態に係る飲料製造装置を、図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る飲料製造装置における一部の構成を示す概略図であり、図2は、本実施形態に係る飲料製造装置における液体サイクロンの構成を示す概略断面図である。
【0024】
図1に示すように、本実施形態に係る飲料製造装置1は、調合タンク(図示せず)にて調合された飲料を所定の流速で送液するポンプ2と、調合タンクから送液された飲料中に不活性ガスを吹き込むストリッピング部3と、ストリッピング部3にて不活性ガスが吹き込まれた飲料から不活性ガス及び/又は溶存酸素を含む気泡を少なくとも分離する液体サイクロン4と、液体サイクロン4から排出された飲料を貯留する貯留タンク5と、調合タンクと液体サイクロン4とを接続する第1の配管61と、貯留タンク5から後段の充填工程に飲料を送液する第2の配管62とを備える。
【0025】
ストリッピング部3は、調合タンクと液体サイクロン4とを接続する第1の配管61の途中に取り付けられており、第1の配管61内を通る飲料に不活性ガスとしての窒素ガスを直接吹き込むことができる。
【0026】
液体サイクロン4は、図2に示すように、円筒部411及び円筒部411の下端側開口部に連続し下方に向かって漸次縮径してなる円錐部412を有するサイクロン本体部41と、円筒部411の側壁に設けられ、当該円筒部411の接線方向に飲料を導入し得る飲料導入管42と、サイクロン本体部41と同心の円筒形状を有し、サイクロン本体部41内から当該本体部41の上方へ突出する気泡排出管43と、サイクロン本体部41の下端に開口する飲料排出口44とを備える。
【0027】
液体サイクロン4の飲料排出口44には、液体サイクロン4内で不活性ガス及び/又は溶存酸素を含む気泡が分離された飲料を貯留タンク5に供給する第3の配管63が接続されており、液体サイクロン4の気泡排出管43には、液体サイクロン4内で飲料から分離された気泡の膜を形成する飲料成分、並びに気泡に含まれる不活性ガス及び/又は溶存酸素を貯留タンク5に供給する第4の配管64が接続されている。なお、第4の配管64は、液体サイクロン4で飲料から分離された気泡が、当該第4の配管64を通って貯留タンク5に到達するまでの間に、その自重により破泡し得る長さ及び管径(内径)を有している。
【0028】
第3の配管63は、第3の配管63における排出口が貯留タンク5の内側壁面側を向くように湾曲した形状を有している。これにより、貯留タンク5内に供給される飲料が貯留タンク5の内側壁面に沿って降下するため、貯留タンク5内での飲料の液面等に気泡が発生するのをより抑制することができる。
【0029】
貯留タンク5内には、貯留タンク5中に貯留された飲料の液面に向かって飲料をシャワー状に吐出し得る消泡用シャワー7が設けられており、第1の配管61の途中に設けられた切替バルブ8と、分岐配管65を介して接続されている。
【0030】
本実施形態に係る飲料製造装置1にて製造される飲料としては、特に限定されるものではないが、例えば、コーヒー飲料、緑茶飲料、ウーロン茶飲料、紅茶飲料等の茶系飲料、野菜飲料、果汁飲料、清涼飲料、乳飲料、スープ等が挙げられる。これらのうち、コーヒー飲料は、タンパク質成分等を含有するものもあり、不活性ガス等に起因する気泡が発生しやすいため、本実施形態に係る飲料製造装置1にて製造される飲料として好適である。また、茶系飲料は、不活性ガス等に起因する気泡が一度発生すると、当該気泡が消滅し難いため、本実施形態に係る飲料製造装置1にて製造される飲料として好適である。
【0031】
なお、本実施形態に係る飲料製造装置1において、コーヒー、ミルクティー、乳成分含有清涼飲料、乳飲料等の乳成分を含む飲料を製造する場合には、ストリッピング部3と液体サイクロン4との間に、プレート型加熱装置、チューブラー型加熱装置等の加熱装置を設けるのが好ましい。これらの飲料は、一般に、貯留タンク5の後段において均質化処理に付されるが、当該加熱装置にて飲料を予備加熱することによって、均質化の効果を高めることができる。
【0032】
また、本実施形態に係る飲料製造装置1においては、飲料を加熱殺菌するための加熱殺菌装置(図示せず)を設けることができる。当該加熱殺菌装置は、少なくともストリッピング部3の後段に設けられていればよく、貯留タンク5の後段であって充填工程の前段に設けられていてもよいし、ストリッピング部3と液体サイクロン4との間に設けられていてもよい。飲料中に溶存酸素が含まれる状態で当該飲料を加熱殺菌すると、溶存酸素による酸化作用が促進され、飲料の風味や呈味が損なわれてしまうおそれがあるが、本実施形態に係る飲料製造装置1のようにストリッピング部3にて窒素ガスを吹き込むことで、飲料中の溶存酸素量を十分に低減することができるため、その後段の加熱殺菌装置にて飲料が加熱殺菌されても、飲料の風味や呈味が損なわれるおそれがない。
【0033】
上述した構成を有する飲料製造装置1において、調合タンクにて調合され、酸素等が溶存する飲料が、ポンプ2により第1の配管61内を所定の流速で圧送される。
【0034】
第1の配管61内を通る飲料がストリッピング部3に差し掛かると、当該ストリッピング部3から飲料中に窒素ガスが吹き込まれる。これにより、飲料中の溶存酸素が、吹き込まれた窒素ガスで置換され、飲料中の溶存酸素量を十分に低下させることができる。
【0035】
ストリッピング部3にて飲料中に吹き込まれる窒素ガスの流量は、飲料中の溶存酸素量を十分に低下させ得る限り特に限定されるものではない。当該窒素ガス流量は、飲料製造装置1における飲料流量や飲料中の溶存酸素量等に応じて適宜設定することができるが、飲料流量と窒素ガス流量との比が3:1〜20:1となるように設定するのが好ましい。
【0036】
ストリッピング部3にて飲料に窒素ガスが吹き込まれた飲料は、第1の配管61を介して液体サイクロン4に導入される。ストリッピング部3にて飲料に窒素ガスが吹き込まれると、窒素ガス及び/又は溶存酸素を含む気泡が飲料中に発生し、この気泡を含む飲料が貯留タンク5に直接供給されると、貯留タンク5内の飲料の液面等において気泡が多量に発生してしまう。そこで、液体サイクロン4に飲料を導入することで、少なくとも飲料から気泡を分離することができ、貯留タンク5に気泡が分離された飲料を供給することができる。なお、液体サイクロン4において、飲料中の窒素ガスの一部や溶存酸素は、気泡に含まれた状態で飲料から分離され得る。
【0037】
飲料が、液体サイクロン4の飲料導入管42から円筒部411の接線方向に導入されると、遠心力に起因する旋回流が生じ、円錐部412の内側面に沿って飲料が旋回しながら降下する。このとき、飲料(液体)と窒素ガス(気体)との比重差及び遠心力により生じるサイクロン効果によって、飲料中の窒素ガス及び/又は溶存酸素を含む気泡は、サイクロン本体部41内を旋回しながら上昇し、気泡排出管43から排出される。このようにして気泡が分離された飲料が、飲料排出口44から第3の配管63を介して貯留タンク5に供給される。
【0038】
第3の配管63を介して貯留タンク5に供給される飲料は、窒素ガス及び気泡をほとんど含まないものであるため、貯留タンク5に供給された飲料の液面等に気泡がほとんど発生することがない。また、液体サイクロン4までは所定の流速で飲料が圧送されているが、液体サイクロン4に導入されることで、貯留タンク5に導入される飲料の流速が低下する。そのため、飲料の勢いが減殺されて貯留タンク5に導入されることになり、貯留タンク5内に貯留されている飲料の液面等において泡立ちが発生し難くなる。このように、本実施形態に係る飲料製造装置1によれば、貯留タンク5内に貯留される飲料の液面等における気泡の発生を効果的に抑制することができる。
【0039】
一方、液体サイクロン4にて飲料中から分離され、気泡排出管43から排出された窒素ガス、溶存酸素及び気泡(気泡を形成する飲料成分)は、第4の配管64を介して、貯留タンク5に導入される。第4の配管64を介して窒素ガス及び気泡(気泡を形成する飲料成分)とともに溶存酸素も貯留タンク5に導入されることで、貯留タンク5に貯留された飲料に再度酸素等が溶解してしまうおそれがあるが、飲料から分離された窒素ガスもまた貯留タンク5に導入されること、貯留タンク5に貯留された飲料中にも窒素ガスが含まれていることから、貯留タンク5に貯留された飲料に酸素等が再溶解してしまうのを抑制することができる。
【0040】
また、窒素ガスとともに気泡排出管43から排出された気泡は、第4の配管64を通る間に、その自重等によりほとんどが消滅(破泡)し、気泡の膜を形成していた飲料成分が、第4の配管64を通じて貯留タンク5に導入される。これにより、貯留タンク5内の飲料の呈味や風味等が、当初予定されていた飲料の呈味や風味等から変動するおそれがない。
【0041】
上記のように液体サイクロン4を介して貯留タンク5に飲料が導入されたとしても、飲料中に若干の窒素ガス等が存在していることから、貯留タンク5に貯留されている飲料の液面等に若干量の気泡が生じてしまう。この場合には、第1の配管61上の切替バルブ8を操作し、飲料流路を消泡用シャワー7側に切り替える。これにより、分岐配管65を介して消泡用シャワー7から貯留タンク5内の飲料の液面に向けて、飲料がシャワー状に吐出され、貯留タンク5内の飲料の液面に発生した少量の気泡を消滅させることができる。しかも、消泡用シャワー7から貯留タンク5内に吐出される飲料は、ストリッピング部3にて窒素ガスが吹き込まれ、溶存酸素が窒素ガスによって置換されたものであるため、当該飲料をシャワー状に吐出することによって、貯留タンク5内の飲料の溶存酸素量が上昇することはなく、飲料の風味や呈味等を損なうおそれがない。
【0042】
本実施形態に係る飲料製造装置1において、通常運転中は、飲料流路が液体サイクロン4側になるように切替バルブ8の設定をしておけばよく、貯留タンク5内の飲料の液面に所定量の気泡が発生した段階で、切替バルブ8を消泡用シャワー7側に切り替えればよい。本実施形態に係る飲料製造装置1は、貯留タンク5内の飲料の液面等における気泡の発生を抑制可能であることから、従来の飲料製造装置と比べて、切替バルブ8を消泡用シャワー7側に切り替える頻度を低減させることができ、飲料の製造効率をより向上させることができる。
【0043】
貯留タンク5に貯留された飲料は、貯留タンク5から第2の配管62を介して後段の充填工程に送液され、充填工程にて所定の容器(例えば、ペットボトル、缶、ビン、紙パック等)に充填される。これにより、溶存酸素量が十分に低減された容器詰飲料を製造することができる。
【0044】
このようにして製造された容器詰飲料は、溶存酸素量が十分に低減されているため、長期間保存された場合であっても、溶存酸素によって飲料の風味成分や呈味成分等が酸化され難く、飲料の風味や呈味等を維持することができる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態に係る飲料製造装置1によれば、貯留タンク5の前段に液体サイクロン4が設けられていることで、当該液体サイクロン4内で飲料中から不活性ガス(窒素ガス)及び/又は溶存酸素を含む気泡が分離されるため、液体サイクロン4から貯留タンク5に飲料が導入される際に、貯留タンク5内の飲料の液面等における気泡の発生を抑制することができる。
【0046】
また、第1の配管61内を圧送された飲料が、貯留タンク5に直接導入されずに一旦液体サイクロン4に導入されることで、その液圧が低減され、貯留タンク5に導入される飲料の勢いが減殺される。そのため、貯留タンク5内の飲料の液面等における気泡の発生をさらに抑制することができる。
【0047】
したがって、飲料が貯留タンク5から溢れ出たり、貯留タンク5に貯留された飲料を後段の充填工程等に送液するのが困難となったりするのを防止することができ、飲料の製造効率を向上させることができる。
【0048】
また、液体サイクロン4にて飲料から分離された不活性ガス(窒素ガス)が、第4の配管64を介して貯留タンク5に導入されるため、貯留タンク5内で飲料に酸素等が再溶解してしまうのを防止することができる。
【0049】
さらに、本実施形態に係る飲料製造装置1は、飲料から分離された気泡の膜を形成する飲料成分もまた貯留タンク5に導入されるため、貯留タンク5内に貯留される飲料の当初予定されていた風味や呈味を変動させることがないという効果も併せ持つことができる。
【0050】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0051】
例えば、上記実施形態においては、一般に固液分離を目的として用いられる液体サイクロン4が貯留タンク5の前段に設けられているが、飲料から不活性ガス(窒素ガス)及び/又は溶存酸素を含む気泡を少なくとも分離し得る限りこれに限定されるものではなく、例えば、特開2006−218368号公報、特開平11−138053号公報等に記載のサイクロン式気液分離装置等を用いてもよいが、デアレータ等の脱気装置は、飲料の風味や呈味が損なわれてしまうおそれがあるため、好ましくない。
【実施例】
【0052】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例等に何ら限定されるものではない。
【0053】
〔実施例1〕
図1に示す構成の飲料製造装置1においてストリッピング部3と液体サイクロン4との間にプレート型加熱装置を設けた飲料製造装置を用い、コーヒー飲料を製造した。製造条件としては、調合タンクからの飲料流量を120L/minとし、ストリッピング部3における窒素流量を25L/minとした。かかる条件下でコーヒー飲料の製造を開始してから30分後における貯留タンク5内の気泡量を測定した。
【0054】
〔比較例1〕
液体サイクロン4を備えない以外は実施例1と同様の構成を有する飲料製造装置を用い、実施例1と同様の条件でコーヒー飲料を製造した。かかる条件下でコーヒー飲料の製造を開始してから30分後における貯留タンク5内の気泡量を測定した。
【0055】
測定した結果、実施例1の貯留タンク5内の気泡量が400L程度であったのに対し、比較例1の貯留タンク5内の気泡量は1500L以上であり、比較例1の飲料製造装置においては、貯留タンク5から気泡が溢れ出てしまった。このことから、ストリッピング部3と貯留タンク5との間に液体サイクロン4を設けることで、貯留タンク5内に貯留されている飲料の液面等における気泡の発生を効果的に抑制可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0056】
1…飲料製造装置
3…ストリッピング部
4…液体サイクロン(サイクロン式分離装置)
5…貯留タンク
61…第1の配管(主配管)
64…第4の配管
65…分岐配管
7…消泡用シャワー(吐出部)
8…切替バルブ(切替部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料に不活性ガスを吹き込むことにより、当該飲料中の溶存ガスを除去するストリッピング部と、
前記不活性ガスが吹き込まれた飲料中から当該不活性ガス及び/又は溶存ガスを含む気泡を少なくとも分離し得るサイクロン式分離装置と、
前記サイクロン式分離装置から排出された飲料を貯留する貯留タンクと
を備えることを特徴とする飲料製造装置。
【請求項2】
前記サイクロン式分離装置と前記貯留タンクとを接続し、前記サイクロン式分離装置にて飲料から分離された前記気泡の膜を形成する飲料成分を前記貯留タンク内に導入するための配管をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の飲料製造装置。
【請求項3】
前記貯留タンク内に貯留されている飲料の液面に向かって、不活性ガスが吹き込まれた飲料をシャワー状に吐出する吐出部と、
前記サイクロン式分離装置に接続され、不活性ガスが吹き込まれた飲料を前記サイクロン式分離装置に導入するための主配管と、
前記主配管から分岐され、不活性ガスが吹き込まれた飲料を前記吐出部に導入するための分岐配管と、
飲料流路を前記主配管側と前記分岐配管側とに切り替える切替部と
をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の飲料製造装置。
【請求項4】
前記飲料が、コーヒー飲料、茶系飲料、野菜飲料、果汁飲料、清涼飲料、乳飲料又はスープであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の飲料製造装置。
【請求項5】
不活性ガスが吹き込まれることで溶存ガスが除去された飲料をサイクロン式分離装置に導入して、当該飲料中から不活性ガス及び/又は溶存ガスを含む気泡を分離し、
前記不活性ガス及び/又は溶存ガスを含む気泡が分離された飲料を貯留タンクに供給することを特徴とする飲料製造方法。
【請求項6】
前記サイクロン式分離装置にて分離された前記気泡の膜を形成する飲料成分を、前記貯留タンク内に導入することを特徴とする請求項5に記載の飲料製造方法。
【請求項7】
さらに、前記貯留タンクに貯留されている飲料の液面に向かって、前記不活性ガスが吹き込まれた飲料をシャワー状に吐出することを特徴とする請求項5又は6に記載の飲料製造方法。
【請求項8】
前記飲料が、コーヒー飲料、茶系飲料、野菜飲料、果汁飲料、清涼飲料、乳飲料又はスープであることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の飲料製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−252756(P2010−252756A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109498(P2009−109498)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(591014972)株式会社 伊藤園 (213)
【Fターム(参考)】