説明

飲料

【課題】魚類由来のコラーゲンペプチドに固有の不快臭を抑制した飲料を提供すること。
【解決手段】魚類由来のコラーゲンペプチドと、ポリビニルピロリドンおよび(メタ)アクリル酸エステル−エステル残基に窒素を含有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる群から選ばれる高分子化合物の少なくとも1種とを配合することを特徴とする飲料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保健機能食品、食品、医薬品および医薬部外品の分野に利用しうる魚類由来のコラーゲンペプチドを配合した飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンペプチドは、動物や魚類から抽出されるコラーゲンやゼラチンを加水分解により低分子化したものであり、美容効果や関節強化効果が知られている。これまでにコラーゲンペプチドの前記効果を期待して、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、散剤、飲料などに配合した数多くの製品が上市されている。
【0003】
コラーゲンペプチドの効果を得るためには、コラーゲンペプチドを継続して摂取する必要があるが、そのためには容易に摂取できる飲料の形態が好ましい。
【0004】
しかし、コラーゲンペプチドを含む飲料には、嗅覚で感じる魚臭や獣臭があるという問題があった。
【0005】
従来の製品では、コラーゲンペプチドの魚臭や獣臭を、ピーチ、オレンジ、マスカットなどのフルーツの風味を利用してマスキングを試みていたが、その効果は満足できるものではなかった。
【0006】
また、魚類由来コラーゲンペプチドを配合したゼリー飲料の魚臭を難消化性デキストリンを用いてマスキングすること(特許文献1参照)やコラーゲンペプチドを含有する飲食品の呈味を、スクラロース及びステビア抽出物を配合することにより改善すること(特許文献2参照)が開示されている。
【0007】
しかし、従来のコラーゲンペプチドを含有する飲食品の魚臭や獣臭のマスキングについては十分ではなく、特に商品性の点で改善の余地があるものであった。
【0008】
一方、ペプチド類を含有する飲料の風味改善技術としては、没食子酸誘導体、フラボノイド類等の酸化防止剤を配合することによるペプチド臭の抑制技術(特許文献3参照)等が知られているが、この技術で全てのペプチド類を含有する飲料の風味を改善できるわけではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−180812号公報
【特許文献2】特開2006−204287号公報
【特許文献3】特開2006−67874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明は魚類由来のコラーゲンペプチドを含有する飲料の風味、特に嗅覚で知覚される魚臭を改善し、継続的な摂取を可能とした飲料の提供をその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、魚類由来のコラーゲンペプチドを配合する飲料において、特定の高分子化合物を配合することにより、魚類由来のコラーゲンペプチドの魚臭を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は魚類由来のコラーゲンペプチドと、ポリビニルピロリドンおよび(メタ)アクリル酸エステル−エステル残基に窒素を含有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる群から選ばれる高分子化合物の少なくとも1種とを配合することを特徴とする飲料である。
【0013】
また、本発明はポリビニルピロリドンおよび(メタ)アクリル酸エステル−エステル残基に窒素を含有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる群から選ばれる高分子化合物の少なくとも1種を配合することを特徴とする魚類由来のコラーゲンペプチドを配合した飲料の風味改善剤である。
【0014】
更に、本発明は魚類由来のコラーゲンペプチドを配合した飲料において、ポリビニルピロリドンおよび(メタ)アクリル酸エステル−エステル残基に窒素を含有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる群から選ばれる高分子化合物の少なくとも1種を配合することを特徴とする該飲料の不快臭を低減させる方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、魚類由来のコラーゲンペプチドに起因する魚臭を抑制した風味良好な飲料を得ることができる。
【0016】
従って、本発明の飲料は継続的な摂取が可能となるので、その結果、魚類由来のコラーゲンペプチドの有する保健機能を容易に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の飲料は、魚類由来のコラーゲンペプチドと共に、ポリビニルピロリドンおよび(メタ)アクリル酸エステル−エステル残基に窒素を含有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる群から選ばれる高分子化合物の少なくとも1種を配合するものである。
【0018】
本発明の飲料に配合される魚類由来のコラーゲンペプチドは、例えば、魚類の皮、骨、鱗等から抽出されたコラーゲンを、酵素や酸で加水分解により低分子化して得られる平均分子量が1,000〜10,000程度のペプチドである。本発明においては、魚類由来のコラーゲンペプチドとしていずれの魚類由来、平均分子量のものであっても特に制限無く使用できる。このような魚類由来のコラーゲンペプチドは例えば、マリンマトリックス(商品名:焼津水産化学工業株式会社製)等として市販されているので、これを利用することができる。本発明の飲料における魚類由来のコラーゲンペプチドの含有量は、特に制限されないが、美容効果、関節強化に対する効果の点から、1回あたりの服用量が0.5〜10gになる量が好ましい。なお、本明細書において平均分子量は重量平均分子量のことをいい、例えば、ゲルろ過クロマトグラフィーにより測定することができる。
【0019】
本発明の飲料に配合される高分子化合物のうち、ポリビニルピロリドンとは、N−ビニル−2−ピロリドンの重合体であり、ビニルピロリドンの水溶液に少量のアンモニアを加えて過酸化水素触媒の存在下で重合することにより得られるものである。重合の際には、過酸化水素触媒のほかにも亜硫酸ナトリウム、過酸化物、アゾ触媒等も用いることができる。本発明に用いるポリビニルピロリドンのK値(25℃)は通常15〜100であり、好ましくは30〜100である。ここでいうK値とは固有粘度のことでフィケンチャー(Fikentscher)のK値のことである。このK値は、例えば、文献(第十五改正 日本薬局方解説書 C-4112 廣川書店(2006))に記載の方法で計算することができる。
【0020】
本発明の飲料に配合される高分子化合物のうち、(メタ)アクリル酸エステル−エステル残基に窒素を含有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、(メタ)アクリル酸エステルとエステル残基に窒素を含有する(メタ)アクリル酸エステルの共重合体である。この共重合体を構成する(メタ)アクリル酸エステルのエステル残基としては、例えば、炭素数1〜8のアルキル基が挙げられる。前記炭素数1〜8のアルキル基としては、直鎖または分枝アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基または2−エチルヘキシル基がより好ましく、メチル基、エチル基、ブチル基が特に好ましい。これら(メタ)アクリル酸エステルは共重合体中、1種以上、好ましくは2種を用いることが好ましい。また、この共重合体を構成するエステル残基に窒素を含有する(メタ)アクリル酸エステルのエステル残基としては、例えば、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアミノエチル基またはアルキルアンモニオエチル基が挙げられる。前記炭素数1〜8のアルキル基としては、直鎖または分枝アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基または2−エチルヘキシル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。具体的なエステル残基としては、ジメチルアミノエチル基、ジメチルアンモニオエチル基またはトリメチルアンモニオエチル基が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル−エステル残基に窒素を含有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体の好ましい具体例としては、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸ブチルおよびメタアクリル酸ジメチルアミノエチルの共重合体、アクリル酸エチル、メタアクリル酸メチルおよびメタアクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルの共重合体等が挙げられる。これらはそれぞれオイドラギットE100(商品名:レーム・ファルマ社製)、オイドラギットRS30D(商品名:レーム・ファルマ社製)等として市販されているので、これらを利用しても良い。
【0021】
本発明の飲料に配合する上記した高分子化合物の少なくとも1種の配合量は、魚類由来のコラーゲンペプチドのマスキングができる濃度であれば特に制限はないが、一般的に0.01W/V%以上、好ましくは0.1W/V%以上配合することにより、魚類由来のコラーゲンペプチドを含有する飲料の風味、特に嗅覚で知覚される魚臭を改善することができる。
【0022】
上記した本発明の飲料は、一般的な飲料の製造方法に準じ、各成分を混合することにより製造することができる。本発明の飲料には、茶様飲料、清涼飲料等の通常の飲料の他に、ドリンク剤、シロップ剤、液剤等の飲料と同等に扱われる経口製剤等も含まれる。
【0023】
また、本発明の飲料には上記成分の他に、本発明の効果を損なわない程度に、飲料に適宜配合される任意成分を添加することができる。任意成分としては、水、アルコール、ビタミンおよびその塩類、ミネラル、アミノ酸およびその塩類、ハーブおよびハーブエキス、生薬および生薬抽出物、ローヤルゼリー、カフェイン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、甘味剤、矯味剤、pH調整剤、保存剤、抗酸化剤、着色剤等の飲食品または製剤に一般に使用される物質が挙げられる。
【0024】
上記のようにして製造された本発明の飲料は、瓶(無色または有色ガラス製)、缶(アルミニウム製、スチール製等)、ポリエチレンテレフタレート製ボトル等の容器に封入して流通させることができる。
【実施例】
【0025】
以下に、実施例、比較例および試験例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。
【0026】
実 施 例
飲料の製造(1):
マリンマトリックス(商品名:焼津水産化学工業株式会社製:魚皮由来のコラーゲンペプチド:平均分子量3,000)を1.0%の濃度で添加し、そこに表1に示す添加物を所定濃度で添加し、攪拌した。これらをガラス容器に充填し、キャップを施し、飲料(実施品1〜2)とした。これら飲料を65℃の恒温槽にて1日保管後、専門パネル4名により、下記の評価基準にて不快臭(魚臭)を評価した。結果を表1に示した。
【0027】
<官能評価の基準>
( 内容 ) (評点)
不快臭を非常に感じる :0点
不快臭をかなり感じる :1点
不快臭を感じる :2点
不快臭をやや感じる :3点
不快臭を僅かに感じる :4点
不快臭を感じない :5点
【0028】
【表1】

【0029】
表1から明らかなように、ポリビニルピロリドンまたは(メタ)アクリル酸エステル−エステル残基に窒素を含有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体と、魚皮由来のコラーゲンペプチドとを組み合わせて配合した飲料の不快臭は確かに顕著に軽減されることが官能評価により確認された。
【0030】
比 較 例
飲料の製造(2):
精製水に、マリンマトリックス(商品名:焼津水産化学工業株式会社製:魚皮由来のコラーゲンペプチド:平均分子量3,000)を1.0%の濃度で配合した水溶液に、表2に示した、他の飲料等において風味の改善効果が知られている各種成分を混合溶解し、攪拌した。これらをガラス容器に充填し、キャップを施し、飲料(比較品1〜10)とした。これら飲料を65℃の恒温槽にて1日保管後、専門パネル4名により、実施例と同様の評価基準にて不快臭(魚臭)を評価した。結果を表2に示した。なお、各添加物の配合量は、風味改善効果が得られ、かつ飲料として適している風味となる量である。
【0031】
【表2】

【0032】
表2よりも明らかなように、特定の高分子化合物を配合していないため、魚皮由来のコラーゲンペプチドの不快臭を感じ、風味改善効果は限られたものだった。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明によれば、魚類由来のコラーゲンペプチドを含有する飲料の風味、特に嗅覚で知覚される魚臭を改善することができる。
【0034】
従って、本発明は、魚類由来のコラーゲンペプチドの継続的な摂取を可能とし得る飲料に好適に用いることができる。


以 上

【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚類由来のコラーゲンペプチドと、ポリビニルピロリドンおよび(メタ)アクリル酸エステル−エステル残基に窒素を含有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる群から選ばれる高分子化合物の少なくとも1種とを配合することを特徴とする飲料。
【請求項2】
ポリビニルピロリドンおよび(メタ)アクリル酸エステル−エステル残基に窒素を含有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる群から選ばれる高分子化合物の少なくとも1種を配合することを特徴とする魚類由来のコラーゲンペプチドを配合した飲料の風味改善剤。
【請求項3】
魚類由来のコラーゲンペプチドを配合した飲料において、ポリビニルピロリドンおよび(メタ)アクリル酸エステル−エステル残基に窒素を含有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる群から選ばれる高分子化合物の少なくとも1種を配合することを特徴とする該飲料の不快臭を低減させる方法。

【公開番号】特開2009−225789(P2009−225789A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41592(P2009−41592)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【復代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
【Fターム(参考)】