説明

飼料添加物としての2−メチルチオエチル置換複素環

本発明の目的は、一般式(I)または(II)[式中、XはOまたはNRであり、RはH、場合により分岐したC1−C6アルキル、C3−C6シクロアルキル、アリール(具体的には、フェニル)またはアラルキル(具体的には、ベンジル)であり、R1、R2は、同一であるか異なっており、かつH、場合により分岐したC1−C6アルキル、C3−C6シクロアルキル、アリル、アリール(具体的には、フェニル)またはアラルキル(具体的には、ベンジル)であるか、あるいはR1およびR2は一緒になって、C1−C6アルキルで置換されたC2−C6アルキレン基である]の化合物、家畜の栄養補給のための前記化合物の使用、ならびに前記化合物の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規2−メチルチオエチル置換複素環および前記複素環の誘導体に関し、また、前記複素環の製造、ならびに飼料添加物としての、具体的には、例えばニワトリ、ブタ、反芻動物などの家畜だけでなく魚類および甲殻類(海産食物)の栄養補給のための前記複素環の使用にも関する。
【0002】
メチオニン、リシンまたはトレオニンなどの必須アミノ酸は、飼料添加物として、動物の栄養補給にきわめて重要な成分である。これらの補充は、第一に動物のより迅速な成長を可能にするだけでなく、第二により効率的な飼料の利用も可能にする。これは大きな経済的利点である。飼料添加物の市場は、産業的にも経済的にも大きな重要性を持つ。さらに、この市場は、とりわけ、例えば中国およびインドなどの国においてますます重要性が高まっていることから、強力な成長市場でもある。
【0003】
WO2004/008874には、とりわけ、メチオニン(2−アミノ−4−メチルチオ酪酸)が多くの動物種にとって第一制限アミノ酸であることが開示されている。例えば乳牛の場合、例えば量および品質の面から効率的な牛乳の生産は、メチオニンの十分な摂取に大きく依存している。この場合、能力の高い乳牛のメチオニン要求量は、第一胃で形成される微生物タンパク質によっても、または第一胃で分解されない飼料のタンパク質によってもまかなうことができない(Graulet et al.,J.Animal and Feed Sciences(2004),269)。したがって、牛乳生産の経済的効率および牛乳の品質を向上させるために、飼料にメチオニンを補充するのが有利である。
【0004】
例えば家禽およびブタなどの単胃動物の場合は、D,L−メチオニン、およびD,L−2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸(HMB)という化学名を有するメチオニンヒドロキシ類似体(MHA)が、飼料添加物として従来使用されている。これにより、生物中でL−メチオニンの利用可能量が増えており、ひいては動物にとって成長に利用可能となっている。
【0005】
これとは対照的に、反芻動物では飼料へのメチオニンの補充が効果的ではない。なぜなら、反芻動物の第一胃の中の微生物により大部分が分解されてしまうためである。したがって、この分解のために、補充したメチオニンのごくわずかしか動物の小腸にまで通過せず、ここでメチオニンは一般的には血液に吸収される。
【0006】
WO99/04647には、反芻動物へのMHAの使用について記載されている。前記刊行物では、MHAが第一胃においてごく一部分解されず、そのため小腸で吸収された後に、補充したMHAの少なくとも20〜40%が代謝に取り入れられると主張されている。対照的に、その他数多くの刊行物では、反芻動物におけるMHAの作用様式が異なる形で考察されている。したがって、例えば、WO2000/28835では、MHAを60〜120g/日/匹ときわめて多量に投与しなければ、MHAが第一胃を首尾よく通過し、最終的に小腸に到達して吸収されないことが記載されている。しかし、これはもはや経済的に効率的ではない。
【0007】
D,L−メチオニンまたはラセミ体MHAなどのメチオニン生成物が反芻動物に効率よく利用できるようにするには、第一胃の分解から保護される形態を使用しなければならない。この場合の問題は、メチオニンに可能な限り高い第一胃安定性をもたらしながらも、腸におけるメチオニンの優れた効率的な吸収を確保する、適切なメチオニン生成物を見つけることである。この場合、D,L−メチオニンまたはラセミ体MHAにこれらの特性をもたらす可能性は複数存在する。
【0008】
a) 物理的保護:
適切な保護層を適用するか、またはメチオニンを保護マトリックスに分散させることによって、高い第一胃安定性を達成することができる。その結果、メチオニンは、実質的に喪失することなく第一胃を通過することができる。さらなる過程で、保護層は次いで、例えば第四胃において酸加水分解により開放または除去された後、放出されたメチオニンは、小腸において動物により吸収される。保護層または保護マトリックスは、例えば脂質、無機材料および炭水化物などの複数の物質の組み合わせから構成されてもよい。例えば、以下の生成物形態が市販されている。
【0009】
i) Nisso America社のMet−Plus(商標)は、D,L−メチオニン含有量が65%である脂質保護メチオニンである。保護マトリックスは、例えばラウリン酸などの長鎖脂肪酸のカルシウム塩から構成される。ブチル化ヒドロキシトルエンが防腐剤の役割を果たす。
【0010】
ii) Degussa AG社のMepron(登録商標)M85は、D,L−メチオニン、デンプンおよびステアリン酸からなるコアを有する炭水化物保護メチオニンである。エチルセルロースが保護層として使用される。本生成物のメチオニン含有量は85%である。
【0011】
iii) Adisseo社のSmartamine(商標)Mは、ポリマー保護メチオニンである。ペレットは、ステアリン酸に加えて、少なくとも70%のD,L−メチオニンを含有する。保護層はビニルピリジン−スチレンコポリマーを含有する。
【0012】
物理的保護は、第一胃におけるメチオニンの微生物分解を防止し、その結果、動物におけるメチオニンの供給および利用を増加させることができるが、いくつかの重大な欠点がある。
【0013】
通常、メチオニンの生成または被覆は、技術的に複雑で複合的な方法であり、そのため費用がかかる。加えて、最終ペレットの表面被覆は、飼料投与時の機械的ストレスおよび摩耗により容易に損傷を受ける可能性があり、保護の低減または完全な喪失を生じる可能性がある。したがって、保護メチオニンペレットをより大きな混合飼料ペレットに加工して、再ペレット化することも不可能であり、というのも、このように加工した結果も同様に保護層が機械的ストレスにより分解されてしまうためである。混合飼料のペレット化は広く普及している飼料加工方法であるため、こうしたやり方ではこのような生成物の使用が大幅に制限されてしまう。
【0014】
b) 化学的保護:
メチオニンの第一胃安定性の増強は、実行できる純粋に物理的な保護方法に加えて、化学構造を修飾すること、例えばカルボン酸基をエステル化することによっても達成することができる。現在、以下の生成物が市販されているか、または文献に記載されている。
【0015】
i) 例えば、D,L−tert−ブチルメチオニンなどのメチオニンエステル:このエステルはすでに試験が行われたが、中程度の第一胃安定性しか示されなかった(Loerch and Oke; "Rumen Protected Amino Acids in Ruminant Nutrition" in "Absorption and Utilization of Amino Acids" Vol.3,1989,187−200,CRC Press Boca Raton,Florida)。対照的に、D,L−tert−ブチルメチオニンについては、WO0028835において、80%の生物価が発表されている。
【0016】
ii) Adisseo社のMetasmart(商標)は、MHAのラセミ体イソプロピルエステル(HMBi)である。この化合物は、American company Novusにより"Sequent"という商標でも市販されている。WO0028835では、反芻動物におけるHMBiの生物価が少なくとも50%であると発表された。この場合は、とりわけ、第一胃壁を介した疎水性HMBiの驚くほど急速な吸収が、決定的な役割を果たす。次いで、エステルは血液中でMHAに加水分解され、酸化とその後のアミノ基転移の後にL−メチオニンに変換される。
【0017】
EP1358805でも、HMBiの同等の生物価が発表されている。これらの試験では、HMBiが多孔質担体に適用されている。さらなる刊行物では、同様に約50%のHMBiが第一胃壁を介して吸収されることを、欧州委員会が報告している(European Commission: Report of the Scientific Committee on Animal Nutrition on the Use of HMBi; 25 April 2003)。Grauletらは、2004年にJournal of Animal and Feed Science(269)において、HMBiのイソプロピル基の親油性により、第一胃壁を介したより良好な分散が可能になることを報告している。
【0018】
HMBiの生成に関しては、2つの異なる方法が発表されている。例えば、一方においてHMBiは、対応するシアノヒドリンから1段階で直接合成することができる(WO00−5987)。この場合、イソプロピルエステルを生じるエステル化は、予めMHAを分離する必要なくin situで行われる。対照的に、もう一つの方法では、イソプロパノールを用いて純粋なMHAをエステル化する(WO01−58864およびWO01−56980)。いずれの場合も、合成には、費用がかかる上に高い危険性も伴う青酸が使用される。
【0019】
また最近では、養殖部門(Food and Agriculture Organization of the United Nation(FAO)Fisheries Department "State of World Aquaculture 2006",2006,Rome.International Food Policy Research Institute(IFPRI)"Fish 2020:Supply and Demand in Changing Markets",2003,Washington,D.C.)でも重要となってきている。食用の海水動物および淡水動物(具体的には、魚類および甲殻類)の養殖でも、メチオニンの供給に特定の生成物形態が必要となっている。
【0020】
水産養殖で商業的に捕獲されている魚類および甲殻類の供給においては、第一に、飼料投与時の生成物が水性環境で十分な安定性が維持されるようにするために、そして第二に、最終的に動物が摂取するメチオニン生成物が動物生命体において最適に利用されるようにするため、それに応じて保護された生成物形態が必要となる。
【0021】
一般的な目的は、新規メチオニン代替物に基づく動物の栄養補給において飼料および飼料添加物を提供することである。
【0022】
先行技術の欠点を背景にした状況下では、とりわけ、化学的に保護されたメチオニン生成物を家畜に提供することが目的であった。具体的には、この生成物は、反芻動物、とりわけ乳牛のための使用において第一胃安定性を持たなければならない。前記生成物はまた、水産養殖の魚類および甲殻類の栄養補給における使用に可能な限り適していなければならない。この方法では、D,L−メチオニンおよびMHAの他にも、可能な限り既知の生成物の欠点を有さないか、わずかな程度しか有さないさらに効率的なメチオニン供給源が動物に利用できなければならない。
【0023】
さらなる目的は、生物価がきわめて高く、取扱性と保存性に優れる上に、従来の混合飼料加工(具体的には、ペレット化)の条件下における安定性にも優れていなければならない飼料および飼料添加物を見つけることであった。このような生成物は、反芻動物の場合、混合飼料の加工/供給が大幅に簡素化され標準化されるという利点を有すると考えられ、それにより牛乳生産の経済的効率だけでなく品質も向上すると考えられる。
【0024】
これらの目的の他、明示的に記載されていないものの、本明細書で考察する状況から容易に導き出すか、結論づけることができるさらなる目的も、本発明の複素環化合物、ならびに式Iおよび式IIの前記化合物の誘導体により、具体的には、好ましくはニワトリ、ブタ、反芻動物、魚類および甲殻類のための飼料としての前記化合物の使用により達成される。
【0025】
したがって、本発明は、一般式(I)または(II)
【化1】

[式中、XはOまたはNRであり、RはH、場合により分岐したC1−C6アルキル、C3−C6シクロアルキル、アリール(具体的には、フェニル)またはアラルキル(具体的には、ベンジル)であり、R1、R2は、同一であるか異なっており、いずれの場合もH、場合により分岐したC1−C6アルキル、C3−C6シクロアルキル、アリル、アリール(具体的には、フェニル)またはアラルキル(具体的には、ベンジル)であるか、あるいはR1およびR2は、一緒になって、場合によりC1−C6アルキルで置換されたC2−C6アルキレン基である]
の化合物に関する。
【0026】
化合物Iの利点は、例えば、R1、R2がHであるか、またはメチル、エチル、n−プロピルなどの低級アルキル残基である場合に、これらが液体の無色透明な成分であることである。第二に、式Iの成分は、市販される2−ヒドロキシ−4−メチルチオエチル酪酸(MHAモノマー)とは全く対照的に、二量体副産物およびオリゴマー副産物を含まない。これは、MHAモノマーまたはD,L−メチオニン自体よりも生物学的利用能が有意に低い、前記化合物の二量体エステルおよび高級オリゴマーエステル(縮合物)と平衡状態にあるものである。そのため、MHAは、類似の乳酸と同様に、所望のモノマーの方向への平衡状態に影響を及ぼすために、88パーセント濃度の水溶液として市販されている。
【0027】
対照的に、本発明の成分は、水で希釈する必要がなく、そのため純粋な活性化合物が利用可能である。さらに、本発明の成分は、具体的にはR1、R2がH、メチル、エチル、n−プロピルである場合に、容易に蒸留することもできるため、実質的に100%の純度のこれらの新規物質を、技術的に容易に実施できる方法で達成することができ、このことは顕著な加工上の利点であり、したがって経済的な利点でもある。
【0028】
液体化合物IおよびIIは、XがOである場合はいずれも、液体飼料添加物として直接使用することができ、このことは、特定の用途に、具体的には、混合飼料の操作において、超小型構成部品と呼ばれる液体計量系がすでに利用可能な場合に、利点をもたらす。しかし、場合により、これらの成分は、性質が無機であっても有機であってもよくかつ飼料に適していなければならない固体担体に適用することも可能であり、したがって、固体計量系のみが利用可能な場合に、例えばD,L−メチオニンと同様に容易に従来の飼料添加物として取り扱うことができる固体飼料添加物を、簡単な方法で生成することができる。
【0029】
このような無機担体は、シリカ(例えば、Evonik−Degussa社のSipernat)またはケイ酸塩の他、アルミナもしくはゼオライト(例えば、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ナトリウムもしくはケイ酸ナトリムアルミニウム)または金属炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムもしくは炭酸ナトリウム)のそれぞれ別個のものであっても、あるいはこのような担体の2つ以上が混合したものであってもよい。
【0030】
このような有機担体は、例えば、アルギン酸塩、ステアリン酸塩、デンプンおよびガムであってもよい。好ましいものは、アルギン酸カルシウム、アルギン酸ナトリウムもしくはアルギン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウムもしくはステアリン酸ナトリウム、トウモロコシデンプン、またはアラビアゴムのそれぞれ別個のものであるか、あるいはこのような担体の2つ以上が混合したものである。
【0031】
この方法では、100%未満の濃度の本発明の成分を、これが望ましい場合は、標的とする方法で設定することもできる。
【0032】
好ましいものは、式I[式中、XはOである]の化合物であるが、というのも、前記化合物はアセタールとエステルのいずれでもあるためであり、かつこの場合、生物中での加水分解では、モノマーMHAが直接形成され、その後代謝されるためである。この場合、対応するカルボニル化合物R12C=Oは同時に放出される。
【0033】
この場合、好ましいものは、式I[式中、R1およびR2はそれぞれ場合により分岐したC1−C6アルキルである]の化合物である。生理学的な理由から、具体的には、R1=R2=CH3を有する化合物4がこの場合好ましく、というのも、MHAの放出では、生理学的に無害であるアセトンのみが形成されるためである。しかし、混合飼料におけるメチオニンの濃度が典型的には0.1〜0.5質量%等量と少ないために、他のR1、R2基、ならびにMHAを生じる加水分解においてこれに応じて放出されるカルボニル化合物もまた妥当であると認められる。
【0034】
さらに好ましいものは、化合物2(実施例を参照)[式中、R1=R2はHである]および化合物6[式中、R1はHであり、R2はtert−ブチルである]である。化合物I[式中、XはOであり、R1はHであり、R2はフェニルである]もまたこの場合好ましく、というのも、前記化合物の加水分解では、苦扁桃などの植物生成物においても生じるベンズアルデヒドが形成されるためである。2の加水分解では、カルボニル化合物としてホルムアルデヒドが形成され、これはさらに、それ自体が飼料成分として重要であるギ酸塩へと容易に酸化される。
【0035】
同様に、さらに好ましいものは、一般式I[式中、R1およびR2は一緒になって(CH25である]の化合物7であり、というのも、前記化合物の加水分解では、シクロヘキサノンが放出されるためである。
【0036】
また、本発明の状況において好ましい化合物は、式I[式中、XはNHである]の化合物である。前記化合物の加水分解では、対応するカルボニル化合物R12C=Oに加えて、アンモニアが同時に放出される。このアンモニアこそがまさに、生物中で本発明の化合物IIを代謝してアミノ酸メチオニンを生じるために使用されるモル等量のNH3である。
【0037】
この場合、好ましいものは、化合物I[式中、XはNHであり、R1=R2はHである]である。前記化合物の加水分解では、カルボニル化合物としてホルムアルデヒドが形成され、これはさらに、それ自体が飼料成分として重要であるギ酸塩へと容易に酸化される。
【0038】
また、好ましいものは、化合物12[式中、R1はHであり、R2はフェニルである]である。前記化合物の加水分解では、苦扁桃の天然成分であるベンズアルデヒドがカルボニル化合物として形成される。
【0039】
また、好ましいものは、式I[式中、XはNHであり、R1およびR2はそれぞれ場合により分岐したC1−C6アルキルである]の化合物である。
【0040】
この場合、中でもとりわけ好ましいものは、化合物10[式中、R1=R2はCH3である]であり、前記化合物の加水分解では、NH3およびアセトンのみが放出される。
【0041】
しかし、化合物13[式中、R1はCH3であり、R2はC25である]および化合物14[式中、R1およびR2は一緒になって(CH25である]もまた、新規の興味深い飼料成分である。
【0042】
さらには、式II[式中、XはOである]を有する化合物8も発見された。この物質は室温で液体である。加水分解ではモノマーMHAを直接生じ、副産物としてCO2を唯一生じるが、これはいかなる場合にも、生物の自然な代謝で生じるものであるため、全く無害なものである。このことは、動物の栄養補給において顕著な利点である。
【0043】
同様に興味深い対応物は、式II[式中、XはNHである]を有する化合物15であり、これは無色の固体である。同様に加水分解ではMHAモノマー(2−ヒドロキシ−4−メチルチオエチル酪酸)を直接生じ、さらなる副産物としてCO2の他にNH3も生じるが、これも同様に、生物の自然な代謝で生じるもので、ヒドロキシ酸MHAモノマーからアミノ酸を形成するために等量のNH3として準備されるため、なおさらなる利点となり得る。
【0044】
本発明の一般式IおよびIIのすべての成分は、原則として家畜の栄養補給のための使用に適しているが、というのも、化合物の生理的代謝において2−ヒドロキシ−4−メチルチオブチレートとして放出され、最終的な反応でメチオニンを生じるメチオニンヒドロキシ類似体の親物質をすべてが含有するためである。このような化学的に保護されたメチオニン類似体のさらなる利点については、冒頭および本明細書で先に記載している。このような化学的に保護された生成物形態は、第一に、給餌の際だけでなく水性環境においても十分な安定性を有しており、第二に、動物生命体に利用可能である。動物種、ならびに飼料マトリックスおよび飼料の状態に応じて、当業者は、好ましくはいずれかの成分を検討するであろう。
【0045】
このような化合物は、具体的には家禽、ブタ、反芻動物の栄養補給に使用できるだけでなく、魚類または甲殻類の栄養補給にも使用できる。また、一般式IまたはIIの化合物の少なくとも1つを含有する、家畜の栄養補給のための飼料混合物も、本発明の主題であり、さらに、家畜の栄養補給のための飼料混合物の製造におけるこれらの化合物の対応する使用も、本発明の主題である。
【0046】
また、一般式IまたはIIの化合物を製造する対応する方法も、本発明の主題である。
【0047】
このような方法は、一般式III
【化2】

[式中、X、R1およびR2はそれぞれ上述の意味を有する]
の化合物から進められる。XがOの場合、IIIは2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸(化合物3、MHAモノマー)であり、これは、その塩の1つ、好ましくはカルシウム塩から酸を用いてin situにて生成することもできる(化合物1、実施例1を参照)。XがNHの場合、IIIは2−ヒドロキシ−4−メチルチオブチルアミド(化合物9、MHAアミド)であり、これは既知の加水分解法、例えば、55〜70パーセント濃度の硫酸を使用することによって、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブチロニトリルから得ることができる。
【0048】
したがって、本発明は、式Iの化合物を製造する方法であって、一般式IIIの化合物を、遊離またはアセタール化形態のカルボニル化合物R12C=Oと、適切な場合は溶媒の存在下において反応させることを含む、方法に関する。この場合に適切な溶媒は、例えば、共留剤として同時に作用することができるトルエンまたはクロロホルムの他、テトラヒドロフラン、ジオキサン、塩化メチレンおよびジメチルホルムアミドである。しかし、具体的には、使用したカルボニル化合物がケトン、例えばアセトンまたはメチルエチルケトンである場合には、当該化合物を溶媒として同時に用いるのが特に有利である。過剰なカルボニル化合物は、反応が完了したときに従来の方法により容易に回収することができ、直接再使用できるだけなく、適切な場合はさらに精製した後にも再使用できる。
【0049】
このような方法は、好ましくは酸触媒下で実施される。使用される触媒は、適切なルイス酸またはブレンステッド酸である。
【0050】
好ましい触媒は、ブレンステッド酸としてはHCl、H2SO4、p−トルエンスルホン酸、CF3SO3Hであり、ルイス酸としてはZnCl2、CuSO4、FeCl3、AlCl3、MgCl2およびMgBr2である。触媒は、反応の完了後に従来の方法により容易に回収することができ、直接再使用できるだけなく、適切な場合はさらに精製した後にも再使用できる。
【0051】
カルボニル化合物R12C=Oの代わりに、ジメチルアセタールまたはジエチルアセタールを使用することも可能である。得られるメタノールまたはエタノールは、反応混合物から、好ましくは蒸留によって回収することができる。
【0052】
また、カルボニル化合物R12C=Oを直接使用した場合に、縮合反応時に形成された水を、反応混合物から除去することも有利である。
【0053】
形成された水またはアルコールを反応混合物から除去することによって、所望の縮合物においてより高い変換率とより高い選択性が達成される。さらに、水/アルコールの除去には、例えばトルエンなどの共留剤も使用することができ、水またはアルコールを共沸混合物の形態で蒸留により除去することができる。
【0054】
本発明はまた、式IIの化合物を製造する方法であって、一般式III
【化3】

の化合物を、カルボン酸誘導体X12C=O[式中、X1およびX2は、同一であるか異なっており、互いが別個に塩素、またはOCCl3、OCH3、OCH2CH3、または窒素を介して結合したイミダゾリルもしくはトリアゾリルであってもよい]と反応させることを含む、方法にも関する。
【0055】
ホスゲン(X1、X2=Cl)が試薬として問題があるため、好ましくは、容易に取扱可能なジホスゲン(X1=Cl、X2=OCCl3)が反応性炭酸等価物として使用される。しかし、カルボン酸ジメチルまたはカルボン酸ジエチル、および例えばカルボニルジイミダゾールなどの記載した窒素含有カルボン酸等価物もきわめて適しており、容易に取扱可能である。
【0056】
このような反応は、酸だけでなく塩基触媒下でも有利に実施することができる。使用できる酸触媒は、上記のブレンステッド酸またはルイス酸である。塩基性触媒として適切な化合物は、具体的には、例えばナトリウムメトキシドまたはナトリウムエトキシドあるいはカルシウムtert−ブチレートなどの、C1−C4アルコールのアルカリ金属アルコキシドである。
【0057】
式I[式中、XはNHである]の化合物を製造するのに適切なさらなる方法の変形例は、式IV
【化4】

の2−ヒドロキシ−4−メチルチオブチロニトリルを、カルボニル化合物R12C=O[式中、R1およびR2は上述の意味を有する]と、酸およびカルボン酸無水物の存在下において反応させることを含む。これは、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブチルアミド(MHAアミド)の前駆体が不要になるという利点を有する。
【0058】
このような方法の変形例において、使用する酸は好ましくは硫酸および/または酢酸であり、カルボン酸無水物は好ましくは無水酢酸である。
【0059】
すべての方法の変形例は、単純な方法で、かつある程度良好からきわめて良好の収率で実施することができるという利点を有する。
【0060】
本明細書で以降に示す実施例は、本発明をより詳細に例示するためのものであり、制限するものではない。
【0061】
実施例1:
2相混合物におけるブレンステッド酸触媒作用による2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸カルシウム塩(1)およびホルマリン溶液からの5−(2−(メチルチオ)エチル)−1,3−ジオキソラン−4−オン(2)の合成:
【化5】

【0062】
10.0g(29.5mmol)の2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸カルシウム塩(1)を、150mLの水および150mLのトルエンを入れた500mLの三口丸底フラスコの中に入れ、3.5g(34.6mmol)の97%濃度硫酸と混合した。50g(0.58mol、19.6当量)の37%濃度ホルマリン溶液を加えた後、混合物を沸騰温度に加熱し、この温度で16時間撹拌した。冷却後、相を分離し、水相を各回50mLのトルエンで2回洗浄した。合わせた有機相を50mLのNaCl溶液で1回洗浄し、MgSO4で乾燥させ、ロータリーエバポレーターで濃縮した。その後、得られた粗生成物を蒸留した(沸点:125℃/1.5mbar)。これにより、7.7g(47.6mmol、収率:81%)の5−(2−(メチルチオ)エチル)−1,3−ジオキソラン−4−オン(2)が無色の液体として生成された。
【0063】

【0064】
実施例2:
ブレンステッド酸触媒作用による2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸(3)およびトリオキサンまたはパラホルムアルデヒドからの5−(2−(メチルチオ)エチル)−1,3−ジオキソラン−4−オン(2)の合成:
【化6】

【0065】
5.0g(33.3mmol)の2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸(3)および5.0g(55.5mmol、1.67当量)の1,3,5−トリオキサン(あるいは5.0gのパラホルムアルデヒド)を、50mLのトルエンを入れた100mLの三口丸底フラスコの中に入れ、スパチュラ先端量のp−トルエンスルホン酸と混合し、加熱沸騰させた。12時間後、溶媒をロータリーエバポレーターで留去し、得られた粗生成物を真空蒸留した。これにより、4.6g(28.5mmol、収率:86%)の5−(2−(メチルチオ)エチル)−1,3−ジオキソラン−4−オン(2)が無色の液体として生成された。NMRデータは、実施例1のものと一致していた。
【0066】
実施例3:
ブレンステッド酸触媒作用による2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸(3)およびアセトンからの2,2−ジメチル−5−(2−(メチルチオ)エチル)−1,3−ジオキソラン−4−オン(4)の合成:
【化7】

【0067】
5.0g(33.3mmol)の2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸(3)を、100mLのアセトンを入れた250mLの三口丸底フラスコの中に入れ、数滴のトリフルオロメタンスルホン酸または硫酸と混合し、室温で16時間撹拌した。その後、反応混合物をロータリーエバポレーターで濃縮し、100mLのジエチルエーテルに抽出し、各回25mLの飽和NaCl溶液で2回抽出した。エーテル相をMgSO4で乾燥させ、ロータリーエバポレーターで濃縮した後、得られた粗生成物をVigreuxカラムにより真空蒸留した(沸点:122℃/1mbar)。これにより、5.2g(27.4mmol、収率:82%)の2,2−ジメチル−5−(2−(メチルチオ)エチル)−1,3−ジオキソラン−4−オン(4)が無色の油状物として生成された。
【0068】

【0069】
実施例4:
ルイス酸触媒作用による2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸(3)およびアセトンからの2,2−ジメチル−5−(2−(メチルチオ)エチル)−1,3−ジオキソラン−4−オン(4)の合成:
【化8】

【0070】
1.0g(6.7mmol)の2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸(3)を、20mLのアセトンを入れた100mLの三口丸底フラスコの中に入れ、1.0当量のルイス酸(893mgのZnCl2、あるいは1.69gのMgBr2・2Et2Oまたは1.38gのBF3・2H2O)と混合し、室温で16時間撹拌した。その後、反応混合物をロータリーエバポレーターで濃縮し、100mLのジエチルエーテルに抽出し、50mLの水で洗浄し、各回25mLの飽和NaCl溶液で2回洗浄した。次にエーテル相をMgSO4で乾燥させ、ロータリーエバポレーターで濃縮した後、得られた粗生成物をクーゲルロール・ボール−チューブ装置で真空蒸留した。これにより、1.1g(5.8mmol、収率:87%)の2,2−ジメチル−5−(2−(メチルチオ)エチル)−1,3−ジオキソラン−4−オン(4)が無色の油状物として生成された。NMRデータは、実施例3のものと一致していた。
【0071】
実施例5:
ケタール交換による2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸(3)およびアセトンからの2,2−ジメチル−5−(2−(メチルチオ)エチル)−1,3−ジオキソラン−4−オン(4)の合成:
【化9】

【0072】
5.0g(33.3mmol)の2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸(3)および5.0g(48.0mmol、1.44当量)の2,2−ジメトキシプロパンを、50mLのテトラヒドロフランを入れた100mLの三口丸底フラスコの中に入れ、加熱沸騰させた。3時間後、溶媒をロータリーエバポレーターで留去した後、得られた粗生成物を真空蒸留した。これにより、5.6g(29.7mmol、収率:89%)の2,2−ジメチル−5−(2−(メチルチオ)エチル)−1,3−ジオキソラン−4−オン(4)が無色の油状物として生成された。NMRデータは、実施例3のものと一致していた。
【0073】
実施例6:
2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸(3)およびエチルメチルケトンからの2−エチル−2−メチル−5−(2−(メチルチオ)エチル)−1,3−ジオキソラン−4−オン(5)の合成:
【化10】

【0074】
35.0g(205mmol)の88%濃度2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸(3)を、350mLのエチルメチルケトンに加え、環流下で5時間保持した。混合物を冷却した後、溶媒を、得られた水と一緒にロータリーエバポレーターで抽出し、残渣を真空蒸留した(沸点:103℃、0.4mbar)。これにより、26.5g( mmol、収率:56%)の2−エチル−2−メチル−5−(2−(メチルチオ)エチル)−1,3−ジオキソラン−4−オン(5)が無色の液体として生成された。抽出したエチルメチルケトンをMgSO4で乾燥させ、その後、次の反応に再度使用することができた。
【0075】

【0076】
実施例7:
2−tert−ブチル−5−(2−(メチルチオ)エチル)−1,3−ジオキソラン−4−オン(6)の合成
ブレンステッド酸触媒作用下における2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸カルシウム塩(1)およびピバルアルデヒド:
【化11】

【0077】
6.77g(20mmol)の2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸カルシウム塩(1)を、13.8gの濃塩酸と、撹拌下および氷冷下で緩徐に混合し、明澄な溶液が形成された。その後、保護ガス雰囲気下で、15mLのトルエンおよび3.45g(40mmol)の新たに蒸留したピバルアルデヒドを加え、75℃に加熱すると、2相混合物が明澄になった。次に混合物をこの温度で7時間撹拌した。冷却すると、2相が形成された。有機トルエン相を分離し、水相を各回10mLのトルエンで2回洗浄した。合わせた有機層を、各回15mLの水で3回洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過後にロータリーエバポレーターで濃縮した。その後、得られた粗生成物から高真空下で最終溶媒残渣を取り除いた。これにより、2.62g(12.0mmol、収率:30%)の2−tert−ブチル−5−(2−(メチルチオ)エチル)−1,3−ジオキソラン4−オン(6)が、わずかに黄色を帯びた油状物として生成された。
【0078】

【0079】
実施例8:
2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸(3)およびシクロヘキサノンからの3−(2−(メチルチオ)エチル)−1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン−2−オン(7)の合成
【化12】

【0080】
10.0g(66.6mmol)の2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸(3)および13.1g(133.2mmol、2.0当量)のシクロヘキサノンを、100mLのTHFを入れた250mLの三口丸底フラスコの中に入れ、数滴のトリフルオロメタンスルホン酸と混合し、室温で16時間撹拌した。その後、反応混合物をロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた残渣を、10mLのジクロロメタンと90mLのn−ヘキサンの混合物100mLに溶解し、各回50mLの水で2回、50mLの飽和NaCl溶液で1回洗浄した。その後、有機相をMgSO4で乾燥させ、ロータリーエバポレーターで濃縮した。次に、得られた粗生成物を、n−ヘキサン/酢酸エチル混液(15:1)を使用してシリカゲルカラムによるクロマトグラフィーに付した。ロータリーエバポレーターでの濃縮後、最終溶媒残渣を高真空下で除去した。これにより、11.2g(48.6mmol、収率:73%)の3−(2−(メチルチオ)エチル)−1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン−2−オン(7)が無色の液体として生成された。
【0081】

【0082】
実施例9:
2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸(3)およびジホスゲンからの5−(2−(メチルチオ)エチル)−1,3−ジオキソラン−2,4−ジオン(8)の合成
【化13】

【0083】
1.5g(10.0mmol)の2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸(3)を、10mLの無水THFを入れた50mLのシュレンクフラスコの中に入れ、アルゴン雰囲気下で1.5mL(12.0mmol)のジホスゲンを15分間かけて加えた。30mgの活性炭を加えた後、反応混合物を室温で12時間撹拌した。その後、反応溶液をセライト床で濾過し、ロータリーエバポレーターにより室温で濃縮し、高真空下で4時間乾燥させた。これにより、1.1g(9.7mmol、収率:97%)の5−(2−(メチルチオ)エチル)−1,3−ジオキソラン−2,4−ジオン(8)が黄色を帯びた油状物として生成された。
【0084】

【0085】
実施例10:
ブレンステッド酸触媒作用による2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタンアミド(9)およびアセトンからの2,2−ジメチル−5−(2−(メチルチオ)エチル)オキサゾリジン−4−オン(10)の合成:
【化14】

【0086】
14.9g(0.1mol)の2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタンアミド(9)を、150mLのトルエンを入れた、水分離器と還流冷却器を備えた250mLの三口フラスコの中に入れ、11.6gのアセトン(0.2mol)および0.8gのp−トルエンスルホン酸と混合し、撹拌しながら沸騰温度まで緩徐に加熱した。濁った懸濁液は90℃で明澄になった。溶液全体を環流下で14時間沸騰させた。この間に、留去したトルエン相全体を2回排出した後、各回11.6gのアセトンを2回補充した。混合物を冷却した後、濁った反応溶液を濾過し、濾液を100mLの希NaHCO3溶液で1回、各回100mLのH2Oで2回、続いて100mLの飽和塩化ナトリウム溶液で1回洗浄した。その後、トルエン相をNa2SO4で乾燥させた。濾過後、溶媒をロータリーエバポレーターで真空抽出した。これにより、13.2gの橙褐色をした油状物が生成され、これは緩徐に結晶化した。再結晶のため、30mLのn−ヘキサンを加え、混合物を沸騰温度まで短時間加熱した後、室温に冷却し、一晩放置した。翌日、結晶化した固体を濾取し、高真空下で乾燥させた。これにより、11.5g(0.06mol、M=189.28g/mol、収率:60%)の2,2−ジメチル−5−(2−(メチルチオ)エチル)オキサゾリジン−4−オン(8)が、わずかに黄色を帯びた固体として生成された(融点:84℃)。
【0087】

【0088】
実施例11:
ケタール交換による2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタンアミド(9)からの2,2−ジメチル−5−(2−(メチルチオ)エチル)オキサゾリジン−4−オン(10)の合成:
【化15】

【0089】
10.0g(67.0mmol)の2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタンアミド(9)を、250mLの三口フラスコ中で70mLの無水テトラヒドロフランに懸濁し、13.96g(134.0mmol、2.0当量)のジメトキシプロパンと混合した。数滴のトリフルオロメタンスルホン酸を加えた後、反応混合物を室温で16時間撹拌した。その後、溶媒をロータリーエバポレーターにより100mbar/30℃で除去した。油状残渣を100mLのジエチルエーテルに溶解し、各回50mLの水で2回洗浄した。エーテル相をMgSO4で乾燥させ、ロータリーエバポレーターで濃縮した。その後、得られた固体を100mLのn−ヘキサンから再結晶させ、濾取し、残った最終溶媒を高真空下で除去した。これにより、11.8g(62mmol、収率:93%)の2,2−ジメチル−5−(2−(メチルチオ)エチル)オキサゾリジン−4−オン(10)が無色の固体として生成された。NMRデータは、実施例10のものと一致していた。
【0090】

【0091】
実施例12:
1−ヒドロキシ−3−(メチルチオ)プロパンカルボニトリル(11)からの2,2−ジメチル−5−(2−(メチルチオ)エチル)オキサゾリジン−4−オン(10)の合成:
【化16】

【0092】
13.1gの96%濃度1−ヒドロキシ−3−(メチルチオ)プロパンカルボニトリル(11)(0.1mol)および7.0gのアセトン(0.12mol)を、100mLの三口フラスコ中で30mLの氷酢酸に10℃で溶解した。次に、5mLの無水酢酸(0.05mol)を緩徐に滴加した。その後、10mLの濃硫酸および10mlの氷酢酸の混合物を0℃で緩徐に加えた。この間、反応溶液全体が0℃よりも温かくならないようにしなければならない。これにより、粘性を持ち、黄色を帯びた、かろうじて撹拌可能な懸濁液が生成された。添加の完了後、混合物を10℃で1時間、続いて室温で15分間撹拌した。反応溶液を氷(約150g)に注いだ後、各回100mLのジエチルエーテルで3回抽出した。エーテル相を飽和炭化水素ナトリウム溶液で1回、続いて飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。Na2SO4を濾取し、エーテルを真空抽出した。これにより、4.5gの橙褐色をした油状物が生成され、これをn−ヘキサンから再結晶させた。濾過を行い、最終溶媒残渣を高真空下で除去した後、2.8g(14.8mmol、M=189.28g/mol、収率:15%)の2,2−ジメチル−5−(2−(メチルチオ)エチル)−4−オキサゾリジノン(10)を、わずかに黄色を帯びた固体として分離した。NMRデータは、実施例10のものと一致していた。
【0093】
実施例13:
ブレンステッド酸触媒作用による2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタンアミド(9)からの5−(2−(メチルチオ)エチル)−2−フェニルオキサゾリジン−4−オン(12)の合成:
【化17】

【0094】
5.0g(33.5mmol)の2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタンアミド(9)を、100mLの三首フラスコ中で35mLの無水テトラヒドロフランに懸濁させ、7.1g(67mmol、2.0当量)の新たに蒸留したベンズアルデヒドと混合した。数滴のトリフルオロメタンスルホン酸を加えた後、反応混合物を室温で16時間撹拌した。明澄な反応溶液をロータリーエバポレーターで濃縮し、得られた残渣を100mLのジエチルエーテル中に抽出した。その後、混合物を各回30mLの水で3回、飽和NaCl溶液で1回洗浄した。エーテル相をMgSO4で乾燥させ、ロータリーエバポレーターで濃縮した。次に、得られた生成物混合物を分別結晶化により分離した。100mLのジクロロメタン/ジエチルエーテル混液(1:1)から、合計2.8gの固体を分離した後、これをジエチルエーテルから再結晶させた。これにより、2.1g(8.8mmol、収率:26%)の5−(2−(メチルチオ)エチル)−2−フェニルオキサゾリジン−4−オン(12)が無色の固体として生成された(融点:130℃)。
【0095】

【0096】
実施例14:
ブレンステッド酸触媒作用による2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタンアミド(9)からの2−エチル−2−メチル−5−(2−(メチルチオ)エチル)オキサゾリジン−4−オン(13)の合成:
【化18】

【0097】
5.0g(33.5mmol)の2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタンアミド(9)を、100mLの三口フラスコ中で35mLの無水テトラヒドロフランに懸濁させ、4.8g(67mmol、2.0当量)のエチルメチルケトンと混合した。数滴のトリフルオロメタンスルホン酸を加えた後、反応混合物を室温で5日間拌した。明澄な反応溶液をロータリーエバポレーターで濃縮し、得られた残渣を100mLのジエチルエーテルに抽出し、各回30mLの水で3回、30mLの飽和NaCl溶液で1回洗浄した。合わせたエーテル相をMgSO4で乾燥させ、ロータリーエバポレーターで濃縮し、残渣をジエチルエーテル/n−ヘキサン混合物から2回再結晶させた。これにより、5.1g(24.9mmol、収率:74%)の2−エチル−2−メチル−5−(2−(メチルチオ)エチル)オキサゾリジン−4−オン(13)が無色の液体として生成された(融点:62℃)。
【0098】

【0099】
実施例15:
ブレンステッド酸触媒作用による2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタンアミド(9)からの2−(2−(メチルチオ)エチル)−1−オキサ−4−アザスピロ[4.5]デカン−3−オン(14)の合成:
【化19】

【0100】
10.0g(67.0mmol)の1−ヒドロキシ−3−(メチルメルカプト)ブタンアミド(9)を、250mLの三口フラスコ中で150mLの無水トルエンに懸濁させ、32.9g(336mmol、5.0当量)のシクロヘキサノンと混合した。数滴のトリフルオロメタンスルホン酸を加えた後、反応混合物を加熱沸騰させ、この温度で1時間撹拌した。その後、反応溶液を冷却し、各回50mLの水で2回抽出した。有機相をMgSO4で乾燥させ、ロータリーエバポレーターにより70mbar/40℃で除去した。得られた固体をn−ヘキサン/EtOAc混液から再結晶させ、濾取し、乾燥させ、最終溶媒残渣を高真空下で除去した。これにより、12.4g(54mmol、収率:80%)の2−(2−(メチルチオ)エチル)−1−オキサ−4−アザスピロ[4.5]デカン−3−オン(14)が無色の固体として生成された(融点:109℃)。
【0101】

【0102】
実施例16:
2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタンアミド(9)からの5−(2−(メチルチオ)エチル)オキサゾリジン−2,4−ジオン(15)の合成
【化20】

【0103】
5.0g(33.5mmol)の1−ヒドロキシ−3−(メチルメルカプト)ブタンアミド(9)を、250mLの三口フラスコ中で50mLのメタノールに懸濁させ、10mLの炭酸ジメチルを加えた後、混合物を9.05g(168mmol、5.0当量)のナトリウムメトキシドと混合した。反応混合物を加熱沸騰させ、この温度で24時間環流下で撹拌した。反応溶液を冷却し、100mLの冷水と2回混合し、各回50mLのtert−ブチルメチルエーテルを使用して3回抽出した。合わせた有機相をMgSO4で乾燥させ、ロータリーエバポレーターにより15mbar/40℃で濃縮し、冷蔵庫に一晩保存した。結晶化した固体をn−ヘキサン/EtOAcの混合物から繰り返し再結晶させた。濾過および乾燥後、最終溶媒残渣を真空下で除去した。これにより、2.8g(12.2mmol、収率:36.4%)の5−(2−(メチルチオ)エチル)オキサゾリジン−2,4−ジオン(15)が無色の固体として生成された。
【0104】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式IまたはII:
【化1】

[式中、XはOまたはNRであり、RはH、場合により分岐したC1−C6アルキル、C3−C6シクロアルキル、アリール、特にフェニルまたはアラルキル、特にベンジルであり、R1、R2は、同一であるか異なっており、それぞれ、H、場合により分岐したC1−C6アルキル、C3−C6シクロアルキル、アリル、アリール、特にフェニルまたはアラルキル、特にベンジルであるか、あるいはR1およびR2は一緒になって、場合によりC1−C6アルキルで置換されたC2−C6アルキレン基である]の化合物。
【請求項2】
XがOであることを特徴とする、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項3】
1とR2がHであることを特徴とする、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
1がHであり、R2がtert−ブチルであることを特徴とする、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
1がHであり、R2がフェニルであることを特徴とする、請求項2に記載の化合物。
【請求項6】
1およびR2がそれぞれ場合により分岐したC1−C6アルキルであることを特徴とする、請求項2に記載の化合物。
【請求項7】
1とR2がCH3であることを特徴とする、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
1およびR2が一緒になって(CH25であることを特徴とする、請求項2に記載の化合物。
【請求項9】
XがNHであることを特徴とする、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項10】
1とR2がHであることを特徴とする、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
1がHであり、R2がフェニルであることを特徴とする、請求項9に記載の化合物。
【請求項12】
1およびR2がそれぞれ場合により分岐したC1−C6アルキルであることを特徴とする、請求項9に記載の化合物。
【請求項13】
1とR2がCH3であることを特徴とする、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
1がCH3であり、R2がC25であることを特徴とする、請求項12に記載の化合物。
【請求項15】
1およびR2が一緒になって(CH25であることを特徴とする、請求項2に記載の化合物。
【請求項16】
XがOであることを特徴とする、請求項1に記載の式IIの化合物。
【請求項17】
XがNHであることを特徴とする、請求項1に記載の式IIの化合物。
【請求項18】
家畜の栄養補給のための、請求項1から17までのいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項19】
家禽、ブタ、反芻動物、魚類または甲殻類の栄養補給のための、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
家畜の栄養補給のための飼料混合物であって、請求項1から17までのいずれか1項に記載の少なくとも1つの化合物を含む、飼料混合物。
【請求項21】
家畜の栄養補給のための飼料混合物の製造のための、請求項1から17までのいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項22】
請求項1に記載の式Iの化合物を製造する方法であって、一般式III
【化2】

の化合物を、遊離またはアセタール化形態のカルボニル化合物R12C=O[式中、X、R1およびR2はそれぞれ請求項1に記載の意味を有する]と、場合により溶媒の存在下において反応させることを特徴とする、式Iの化合物を製造する方法。
【請求項23】
ルイス酸またはブレンステッド酸が触媒として使用されることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
HCl、H2SO4、p−トルエンスルホン酸、CF3SO3H、ZnCl2、CuSO4、FeCl3、AlCl3、MgCl2、MgBr2が触媒として使用されることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
化合物R12C=Oのジメチルアセタールまたはジエチルアセタールが使用されることを特徴とする、請求項22から24までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
反応時に形成される水またはアルコールが除去されることを特徴とする、請求項22から25までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
請求項1に記載の式IIの化合物を製造する方法であって、一般式III
【化3】

の化合物を、カルボン酸誘導体X12C=O[式中、X1およびX2は、同一であるか異なっており、互いが別個に塩素、またはOCCl3、OCH3、OCH2CH3、または窒素を介して結合したイミダゾリルもしくはトリアゾリルであってもよい]と反応させることを特徴とする、式IIの化合物を製造する方法。
【請求項28】
1がClであり、X2がOCCl3であることを特徴とする、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
反応が酸または塩基触媒の存在下において実施されることを特徴とする、請求項27または28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
請求項1に記載の式I[式中、XはNHである]の化合物を製造する方法であって、式IV
【化4】

のヒドロキシニトリルを、カルボニル化合物R12C=O[式中、R1およびR2は請求項1に記載の意味を有する]と、酸およびカルボン酸無水物の存在下において反応させることを特徴とする、式I[式中、XはNHである]の化合物を製造する方法。
【請求項31】
前記酸が硫酸および/または酢酸であり、前記カルボン酸無水物が無水酢酸であることを特徴とする、請求項30に記載の方法。

【公表番号】特表2011−509240(P2011−509240A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538543(P2010−538543)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【国際出願番号】PCT/EP2008/066525
【国際公開番号】WO2009/080446
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】