説明

飼料米破砕システム

【課題】飼料米を収容袋から取出し破砕装置で破砕する処理を、作業者に不安感を喚起させることなく、簡単に且つ安全に行わせることができる飼料米破砕システムを提供する。
【解決手段】パレット2を介して飼料米の収容袋Fを載置可能な天板25を有する架台3と、パレット2に設けられ、収容袋Fの底面の筒状排出部が挿通可能な貫通部2dと、天板25の下面側に配設されたホッパー4と、ホッパー4の内部に手を挿入させることを可能にする開閉窓36と、ホッパー4の下方に配設され、ホッパー4から送出された飼料米を受止め破砕する破砕装置6と、破砕装置6の下方に形成され、台車7を出し入れ可能に収容する台車収容部8と、を具備する。また、破砕装置6の排出口47から排出された破砕後の飼料米に対して水を噴霧する噴霧装置9をさらに備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飼料米破砕システムに関し、特に、収容袋に収容された飼料米を、収容袋の底面中央に設けられた筒状排出部から取出して破砕する飼料米破砕システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
日本人の主食として利用される米の消費量は減少傾向にあり、価格は下落を続けている。また、今後も人口の減少と一人当たりの消費量の減少は必至であり、稲作農家による稲作の維持は困難な情勢となっている。一方、日本国内で利用される飼料は、配合飼料が主流となっているが、配合飼料の原料であるトウモロコシ等の飼料穀物は国際相場が高騰しているため、畜産農家では飼料にかかる金銭的な負担が大きくなっている。
【0003】
その対策として、稲作の一部を主食用米から飼料米の生産に置き換えることが試みられている。稲作農家にとっては、栽培体系が同じであり設備投資も不要なことから取り組みやすく、また、畜産農家にとっては、従来の配合飼料よりも安価であり、しかも籾の状態で長期の保存も可能になるため、両者にとって好適な施策として注目されている。
【0004】
ところで、飼料米は、籾殻で覆われ、また玄米の表面も硬いため、粒のまま家畜に与えると消化率が悪くなるという問題がある。例えば、乳牛へ玄米を粒のまま与えた場合、破砕処理したものよりも消化率が3割程度落ち、乳量が大幅に低下すると言われている。そこで、飼料会社から運搬された飼料米を比較的容易に破砕できるように、畜産農家向けの破砕装置が提案されている。この破砕装置は、飼料米を投入するための投入口と、投入された飼料米を回転刃等によって破砕する破砕機構と、破砕された飼料米を排出する排出口とを備えて構成されている。
【0005】
一方、飼料を畜産農家等の消費地に運搬する際には、フレコンバッグまたはトランスバッグ(商標)と称される収容袋が用いられる。この収容袋は、例えば特許文献1に示すように、折畳み可能に作製された大型の袋状容器であり、粉粒体を収容する袋本体と、袋本体の上面中央に設けられ粉粒体を注入することが可能な筒状注入部と、袋本体の底面中央に設けられ粉粒体を排出することが可能な筒状排出部と、筒状注入部及び筒状排出部をそれぞれ閉止する閉止紐とを備えている。また、袋本体の外周面には吊ベルトが装着されており、リフト等によって吊上げることが可能になっている。
【0006】
この収容袋を用いて、飼料会社から畜産農家に飼料米を運搬する際、まず、飼料会社では、筒状排出部を閉止紐で閉止した状態で、筒状注入部から飼料米を注入し、袋本体に飼料米を充填させる。その後、筒状注入部を閉止紐で閉止し、吊ベルトを介して収容袋を吊上げトラックに積み込む。一方、畜産農家では、運搬された収容袋を、吊ベルトを介して再び吊上げ、破砕装置の投入口の上方、または別途備えられたサイロの上方に位置させた後、筒状排出部の閉止紐を解いて(ほどいて)筒状排出部を開口する。これにより、破砕装置の投入口に飼料米を供給することが可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、収容袋の筒状排出部は、袋本体の底面中央に設けられているため、筒状排出部の閉止紐を解いたり縛ったりするには、吊上げられた重量物(例えば700Kg)である収容袋の下に潜り込んでの作業となり、これによれば作業者の安全性が損なわれるとともに、作業者の精神的な負担が大きくなっていた。特に、収容袋は吊ベルトを介して吊られた状態で支持されているため、閉止紐を解いたり縛ったりする際、収容袋が揺れ動き、作業者の不安感を助長させていた。
【0008】
そこで、本発明は、上記の実状に鑑み、飼料米を収容袋から取出し破砕装置で破砕する処理を、作業者に不安感を喚起させることなく、簡単に且つ安全に行わせることができる飼料米破砕システムを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる飼料米破砕システムは、
「袋本体、該袋本体の底面中央に設けられた筒状排出部、及び該筒状排出部を閉止する閉止紐を有する収容袋、に収容された飼料米を、前記収容袋から取出して破砕する飼料米破砕システムであって、
前記収容袋を載置可能な天板を有するとともに、該天板の下方に収容空間が形成された架台と、
前記天板を貫通して形成され前記筒状排出部が挿通可能な開口部と、
該開口部に臨むように前記天板の下面側に配設されたホッパーと、
該ホッパーの周壁の一部を貫通して形成されるとともに、扉体によって開閉可能に設けられ、開放された際、前記ホッパーの内部に手を挿入させることを可能にする開閉窓と、
前記ホッパーの下方に位置する前記架台の前記収容空間に配設され、前記ホッパーから送出された前記飼料米が投入される投入口、該投入口に投入された前記飼料米を破砕する破砕機本体、及び破砕された前記飼料米を排出する排出口、を有する破砕装置と、
該破砕装置の下方に位置する前記架台の前記収容空間に形成され、前記破砕装置の前記排出口から落下する前記飼料米を受止め搬送するための台車を出し入れ可能に収容する台車収容部と
を具備する」
ことを特徴とするものである。
【0010】
ここで、「収容袋」としては、市販されているものを用いることができる。「袋本体」の材質、構造、及び形状は特に限定されるものではなく、例えば、袋本体の底面に、「筒状排出部」を折畳んだ状態で外側から押える排出部押え片をさらに備えるものでもよい。なお、「排出部押え片」を備える場合には、「閉止紐」は、筒状排出部に取付けられた縛り紐と、排出部押え片を閉じ状態に保持する押え紐とから構成することができる。また、「収容袋」は、繰り返し利用可能なものでもよく、一回限りの使用となる使い捨てタイプのものでもよい。
【0011】
また、「架台」における「天板」の高さは特に限定されるものではないが、天板上(または後述するパレット上)に載置された収容袋の底面(詳しくは閉止紐や筒状排出部)に対し、作業者が立った姿勢で手の届く高さ(例えば180cm以下)とすることが好ましい。
【0012】
また、「ホッパー」は漏斗状の形状であればよく、断面形状は円形でも多角形でもよい。また、ホッパーの周壁に形成された「開閉窓」は、作業者の手(望ましくは両手)が挿入可能な大きさであればよく、形状や位置は特に限定されるものではない。また、「扉体」の開閉機構は特に限定されるものではないが、引き戸のように扉体をホッパーの周壁に沿ってスライド可能に支持する構成、または、扉体の上端をヒンジによって軸支し、扉体がホッパーの内側に向かって押圧されることにより開放する構成を例示することができる。
【0013】
また、「破砕機本体」の構成は特に限定されるものではないが、例えばモータ等の駆動源によって回転する回転軸と、回転軸の両端側に取付けられた一対の支持板と、これらの支持板の間に架け渡された複数の支持軸と、それぞれの支持軸に対し軸方向に所定の間隔で取着された複数のフリーハンマーと、を備えて構成することができる。
【0014】
また、「台車」としては、荷台に、車輪及び取っ手を付けた運搬用の手押し車を挙げることができる。なお、この台車は市販のものを利用することが可能である。
【0015】
本発明の飼料米破砕システムによれば、飼料米を収容する収容袋が架台の天板上に直接(または後述するパレットを介して)載置されると、袋本体の底面が支えられ、収容袋は所定の高さに安定した状態で支持される。天板には上下方向に貫通する開口部が形成されており、収容袋の底面中央に設けられた筒状排出部を挿通させることが可能になっている。なお、天板の下面側には開口部に臨むホッパーが設けられているが、ホッパーの周壁には、ホッパーの内部及び外部を連通する開閉窓が形成されており、扉体によって開閉させることが可能となっている。このため、扉体を動かして開閉窓を開放させることにより、ホッパーの内部に手を挿入し、筒状排出部をホッパー内に引張り出したり、筒状排出部を閉止する閉止紐を解いたりすることが可能となる。このように、袋本体の底面中央に設けられた筒状排出部を引張り出したり閉止紐を解いたりする作業を、天板上に載置された収容袋に対して行うことから、作業者の安全性を大幅に高め、安心して作業を行わせることが可能になる。
【0016】
そして、閉止紐が解かれると、筒状排出部が開口し、収容袋に収容された飼料米はホッパー内に排出される。なお、閉止紐を解いた後、扉体を動かして開閉窓を閉鎖することにより、開閉窓から飼料米がこぼれ落ちることを防止できる。
【0017】
また、ホッパーの下方の収容空間には、破砕装置が配設されており、ホッパーの送出口から落下した飼料米は、破砕装置の投入口に投入される。そして、投入された飼料米は破砕機本体によって破砕(粉砕を含む)され、排出口から排出される。つまり、破砕装置に対して連続的に飼料米を供給し、破砕された飼料米を順次排出させることが可能になる。
【0018】
さらに、破砕装置の下方の収容空間には、台車を出し入れ可能な台車収容部が形成されている。このため、台車を台車収容部に収容することにより、排出口から排出された破砕済みの飼料米を、台車の荷台で受止めることが可能となる。したがって、破砕された飼料米を積み替えることなく運搬することが可能になる。
【0019】
ところで、収容袋に収容された飼料米の残量が少なくなると、収容袋の筒状排出部から飼料米を自然に排出させることが困難になる。この場合には、収容袋を少し持ち上げ左右方向に振るようにすれば、残った飼料米を排出させることが可能になるが、これによれば筒状排出部の位置が水平方向にも変位することから、飼料米が飛散する可能性がある。しかし、本発明では、開口部に臨むように漏斗状のホッパーが設けられているため、飼料米が飛散した場合でも、それらの飼料米をホッパーで受止め、破砕装置の投入口に案内することができる。また、ホッパーには所定量の飼料米を貯留させることができるため、破砕装置を運転させることなく、収容袋に残った飼料米を全て排出させることが可能となる。
【0020】
また、本発明の飼料米破砕システムにおいて、
「前記収容袋を載置した状態で、前記天板の上面に載せられるパレットをさらに備え、
該パレットは、前記天板の前記開口部を覆うとともに前記飼料米が通過可能な隙間を有する格子状部と、該格子状部の中央に形成され前記筒状排出部が挿通可能な貫通部と、を備える」
構成とすることができる。
【0021】
ここで、「パレット」とは、運搬用の荷台であり、収容袋を載せたままフォークリフトで運ぶことを可能とするものである。また、「格子状部」は、角材等を組合せ碁盤の目のように形成したものであり、網目状の形状を含むものである。
【0022】
本発明の飼料米破砕システムによれば、収容袋はパレットに載せられたままフォークリフトで運搬され、天板上に載置される。つまり、収容袋を吊り上げることなく、天板の高さまで持ち上げることが可能になる。したがって、例えば牛舎など、設置空間の高さが限られた場所でも、極めて容易に作業を行うことが可能になる。
【0023】
ところで、パレットには、天板上に載せられた際に、天板の開口部に連通する貫通部、すなわち収容袋の筒状排出部を挿通させるための貫通部を形成する必要がある。ところが、貫通部の大きさを、天板の開口部(すなわちホッパーの上面全体に対応する開口部)と同じ大きさにするものでは、貫通部の面積が比較的大きくなり、収容袋の下方のパレットに大きな穴が開いた状態となるため、パレット上に袋本体の底面を安定して支持することが困難となる。つまり、パレット上に載置した収容袋が傾いたり転がったりする虞がある。また、収容袋に残った飼料米の排出作業を行う際、作業者がパレット上にあがることもあり得るが、その際、貫通部の開口面積が大きいものでは、作業者の足がパレットの貫通部及び天板の開口部を通してホッパー内に落ちる可能性がある。一方、貫通部をホッパーの上面の一部のみ(例えば開口部の中心部のみ)に形成し、他の部分を閉鎖するものでは、貫通部が小さくなるため、飛散した飼料米をホッパーで受止めること(すなわち貫通部を通してホッパー内へ落下させること)が困難となる。そして、この場合には、パレット上に飛散した飼料米をほうきで集める等の作業が必要となり、作業者の負担が大きくなってしまう。
【0024】
これに対し、本発明のパレットは、ホッパーの上面開放部(すなわち天板の開口部)を覆う格子状部を備えており、格子状部の中央に貫通部が形成されている。また、格子状部における隙間(網目)は、飼料米(米粒)の通過可能な大きさに形成されている。このため、飛散した飼料米を格子状部の隙間または貫通部を通してホッパー内に落すことが可能になり、収容袋に残った飼料米の排出作業が極めて容易となる。しかも、貫通部の大きさを必要最小限の大きさ(すなわち筒状排出部を挿通させるだけの大きさ)とすることができ、ひいては、収容袋を安定して支持するとともに、作業者の安全性をさらに高めることが可能になる。
【0025】
また、本発明の飼料米破砕システムにおいて、
「前記台車収容部の上方に位置する前記架台の前記収容空間に配設され、前記破砕装置の前記排出口から落下する前記飼料米に対し霧状の水を噴霧する噴霧装置をさらに備える」
構成とすることもできる。
【0026】
ここで、「噴霧装置」は、例えば、水を貯留するタンクと、霧状の水を吐出させることが可能な複数のノズルと、タンクに貯留された水を圧縮してノズルに圧送するコンプレッサーとを備えて構成することができる。なお、貯留される水の中に、乳酸菌や糖蜜を添加させることも可能である。また、飼料米に噴霧する水の量は特に制限されるものではないが、例えば飼料米の含水率が30%程度となるように噴霧することが好ましい。
【0027】
これによれば、台車収容部の上方に噴霧装置が配設されており、破砕装置の排出口から排出された飼料米(破砕後の飼料米)に対して霧状の水が噴霧される。したがって、飼料米の含水率が高められ、家畜の消化率を一層高くすることができる。また、台車の荷台に達する前の飼料、すなわち落下中の飼料に対して水を噴霧することから、飼料米の表面に満遍なく水を付着させ、含浸させやすくすることが可能になる。
【発明の効果】
【0028】
このように、本発明によれば、筒状排出部を引張り出したり閉止紐を解いたりする作業を、天板上に載置された収容袋に対して行うことから、飼料米を収容袋から取出し破砕装置で破砕する一連の処理を、作業者に不安感を喚起させることなく、簡単に且つ安全に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施形態の飼料米破砕システムの構成を示す斜視図である。
【図2】飼料米破砕システムの構成、及び収容袋の構成を示す側面図である。
【図3】飼料米破砕システムの使用方法を説明するための要部拡大断面図である。
【図4】破砕装置の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態である飼料米破砕システム1について、図1及び図2に基づき説明する。飼料米破砕システム1は、収容袋Fに収容された飼料米K(図3参照)を取り出して破砕するものであり、主に、収容袋Fを載置するとともにフォークリフト(図示しない)によって運搬されるパレット2と、上面にパレット2を載置することが可能な架台3と、架台3の上部に配設されたホッパー4と、ホッパー4の下方に配設された破砕装置6と、破砕装置6の下方に配設され台車7を出し入れ可能に収容する台車収容部8と、台車収容部8の上側に配設された噴霧装置9と、架台3の一端側に立て掛けられた梯子10と、を備えて構成されている。
【0031】
収容袋Fは、図2に示すように、可撓性及び柔軟性を有する合成樹脂製の袋状容器であり、飼料米Kを収容する大型の袋本体11を備えている。袋本体11の上面には、飼料米Kを袋本体11内に注入するための筒状注入部12が上面中央から上方に突設されるとともに、その筒状注入部12を折畳んだ状態で上方から押える注入部押え片13が備えられている。そして、筒状注入部12には注入部縛り紐14が取着されており、注入部縛り紐14を縛ることで筒状注入部12が閉止されるようになっている。また、注入部押え片13には注入部押え紐15が取着されており、注入部押え紐15によって注入部押え片13を閉じ状態に保持することが可能になっている。一方、袋本体11の底面には、袋本体11に収容されている飼料米Kを排出するための筒状排出部17が底面中央から下方に突設されるとともに、その筒状排出部17を折畳んだ状態で下方から押える排出部押え片18が備えられている。そして、筒状排出部17には排出部縛り紐19が取着されており、排出部縛り紐19を縛ることで筒状排出部17が閉止されるようになっている。また、排出部押え片18には排出部押え紐20が取着されており、排出部押え紐20によって排出部押え片18を閉じ状態に保持することが可能になっている。また、袋本体11の外周面には、複数本の吊ベルト22が装着されており、リフト等によって収容袋Fを吊上げることが可能になっている。なお、寸法は特に限定されるものではないが、本例では、袋本体11は、直径が約100cmで高さが約100cm、筒状注入部12及び筒状排出部17は、直径が約30cmで長さが約20cmとなっている。ここで、排出部縛り紐19及び排出部押え紐20が本発明の閉止紐に相当する。
【0032】
パレット2は、図1に示すように、金属製の角パイプを組合わせて構成されている。詳しくは、パレット2の左右両側に配置され正面側からフォークリフトの腕が挿入される縦部材2aと、一対の縦部材2aの間に横設された複数の横設部材2bと、後述する天板開口部31を覆うように縦桟及び横桟によって格子状に形成された格子状部2cと、格子状部2cの中央に形成された貫通部2dと、を備えて構成されている。ここで、貫通部2dの大きさは、筒状排出部17を開口した状態で挿入可能な大きさであり、具体的には30cm四方である。つまり、貫通部2dを通して筒状排出部17を引張り出し、且つ引張り出したまま筒状排出部17を開口することが可能な大きさである。また、パレット2には、平面視略長方形の位置決め用開口2eが形成されており、後述する天板25に形成された係合突起25aに嵌合わせることが可能になっている。
【0033】
架台3は、上面を形成する天板25と、高さ方向の略中央に配設された仕切板26と、天板25及び仕切板26を支持する四本の支柱27と、隣合う支柱27同士の間に架け渡された複数本の横設材28とを備えて構成されており、天板25及び仕切板26の間に上部収容空間29が形成され、仕切板26の下方に下部収容空間30が形成されている。なお、架台3は鋼材からなり、天板25上に約700Kg以上の収容袋F及びパレット2を載せることが可能である。また、架台3の大きさ及び形状は特に限定されるものではないが、本例では、平面視が150cm四方、高さが170cmの立方体形状に形成されている。ここで、上部収容空間29及び下部収容空間30が本発明の収容空間に相当する。
【0034】
また、図1及び図3に示すように、天板25には、上下方向に貫通する平面視正方形状の天板開口部31が形成されている。この天板開口部31は、ホッパー4の上面開放部34に相当する大きさであり、本例では約90cm四方である。また、天板25の上面には、天板開口部31の周囲を囲むように配置された四本の係合突起25aが上方に突出して形成されている。いずれの係合突起25aも同じ大きさであり、任意の係合突起25aを前述のパレット2の位置決め用開口2eに嵌合させることで、天板25に対してパレット2が位置決めされるように(すなわちパレット2の格子状部2cが天板開口部31に合致するように)構成されている。なお、図3に示すように、対向する係合突起25aの間隔はパレット2の横幅よりも僅かに広くなっており、また、パレット2の位置決め用開口2eが任意の係合突起25aに嵌合わされた際、その係合突起25aに対向する係合突起25aが、パレット2よりも僅か外側に位置するようになっている。このため、パレット2の底面が天板25の上面に面接触するとともに、パレット2は、その周囲に位置する三つの係合突起25aによっても位置決めされるようになっている。なお、天板開口部31は平面視正方形であり、しかも四つの係合突起25aは天板開口部31の中心から等距離に配置されているため、パレット2の位置決め用開口2eをいずれの係合突起25aに嵌合させた場合でも、パレット2の貫通部2dが天板開口部31の中心に配置される。ここで、天板開口部31が本発明の開口部に相当する。
【0035】
図3に示すように、ホッパー4は、略四角錐形状の周壁33からなる漏斗状の部材であり、上端には上面開放部34が形成され、下端には送出口35が形成されている。つまり、収容袋Fの筒状排出部17から排出された飼料米Kを受け中央の送出口35から送出させることが可能になっている。なお、ホッパー4の送出口35は、天板開口部31の中心の下方、すなわちパレット2の貫通部2dの真下に形成されており、貫通部2dに挿入された筒状排出部17の先端がホッパー4の送出口35に臨むようになっている。また、ホッパー4は、筒状排出部17から排出された飼料米Kを所定量貯留することも可能である。なお、本例の送出口35は正方形であり、その開口面積は、筒状排出部17の開口面積よりも僅かに大きくなっている。
【0036】
また、ホッパー4の周壁33の一部(詳しくは四角錐形状を形成する四つの斜面のうちの一面)には、ホッパー4の内外を連通する開閉窓36が形成されており、扉体37によって開閉させることが可能になっている。扉体37は、引き戸のように上端及び下端がスライド支持部材(図示しない)によって摺動可能に支持されており、周壁33に沿って摺動させることにより、開閉窓36を開放させた状態と閉鎖した状態とに切替えることが可能である。開閉窓36は、作業者の手Hをホッパー4内に挿入させ、筒状排出部17を引張り出したり、排出部縛り紐19を解いて筒状排出部17を開口したりすることが可能な大きさ(例えば20cm四方)に形成されている。
【0037】
破砕装置6は、飼料米Kを細かく破砕するものであり、仕切板26上に載置されている。この破砕装置6は、図4に示すように、ホッパー4の送出口35(図3参照)の下方に配置され、送出口35から送出された飼料米Kが投入される投入口45と、投入された飼料米Kが破砕される破砕室46と、破砕された飼料米Kを排出する排出口47とを有するケーシング48を備えている。また、投入口45及び破砕室46の間のケーシング48内には、送りロール49が配設されており、モータ(図示しない)によって紙面時計方向に回転させることで、投入された飼料米Kが破砕室46に向かって送られるようになっている。
【0038】
破砕室46には、破砕機本体50が配設されている。この破砕機本体50は、モータ(図示しない)によって回転する回転軸54と、回転軸54の両端に取着された円盤状の支持板55と、一対の支持板55の間に架設されるとともに外周に沿って所定の間隔で配置された支持軸56と、それぞれの支持軸56に対し軸方向に所定の間隔で取着された複数のフリーハンマー57と、を備えて構成されている。つまり、モータによって回転軸54を紙面時計方向に回転させることにより、複数のフリーハンマー57を軸回りに回転させ、飼料米Kを破砕する(叩き砕く)ことが可能になっている。
【0039】
また、排出口47及び破砕室46の間のケーシング48内には、複数の透孔を有する網状部材51が配設されており、フリーハンマー57によって破砕された飼料米Kが網状部材51を通して排出されるようになっている。なお、網状部材51は円弧状に形成されており、回転軸54を中心とした円周上に配置されている。また、図2に示すように、排出口47は仕切板26よりも外側に逸脱して配置されており、排出口47から排出される飼料米Kが仕切板26上に落ちないようになっている。
【0040】
一方、図1に示すように、架台3の下部収容空間30には、市販の台車7が出し入れできるように台車収容部8が形成されている。つまり、台車7の出入口となる一対の支柱27間の内寸(間口)は台車7の横幅よりも広く、且つ仕切板26の高さは、台車7の高さ(取っ手65を除く高さ)よりも高くなっている。台車7は、運搬用手押し車であり、排出口47から排出された飼料米Kを受止めるとともに、その飼料米Kを貯留し、家畜の食餌場所へ運搬させることを可能にしている。なお、本例の台車7は、荷台62と、荷台62の外周を囲む箱状の収納箱63と、荷台62の底面に軸支された四つの車輪64と、収納箱63の前側に装着された取っ手65と、を備えている。
【0041】
噴霧装置9は、水(乳酸菌等を含む)を貯留するタンク68と、排出口47から落下する飼料米Kに向って霧状の水を吐出させることが可能な複数のノズル69と、タンク68に貯留された水を圧縮するとともにホース(図示しない)を介してノズル69に圧送するコンプレッサー70と、から構成されている。なお、タンク68及びコンプレッサー70は仕切板26上に配設され、複数のノズル69は仕切板26の下面にブラケット(図示しない)を介して取付けられている。
【0042】
次に、本実施形態の飼料米破砕システム1の使用方法及び作用について説明する。図1に示すように、まず、飼料米Kが収容された収容袋Fをパレット2に載せたまま架台3の天板25上に載置する。なお、収容袋Fは飼料米Kが充填されている状態では重量物となるが、フォークリフトの腕をパレット2の縦部材2aに挿入して持ち上げることにより、比較的容易に天板25上に載置することが可能である。特に、フォークリフトの腕が収容袋Fの下側に位置した状態で上げ下げが行われるため、屋根や天井によって高さが制限された場所においても容易に作業を行うことができる。そして、このように載置すると、袋本体11(図2参照)の底面が支えられ、収容袋Fは所定の高さ(本例では約177cmの高さ)に安定した状態で支持される。
【0043】
その後、ホッパー4の開閉窓36が扉体37によって閉鎖されている場合には、扉体37を摺動させ開閉窓36を開放する。次に、図3に示すように、開閉窓36からホッパー4内に手Hを挿入し、蓋体開口部41に合致している収容袋Fの排出部押え紐20を解くとともに、排出部押え片18を開き、筒状排出部17を、貫通部2dを通してホッパー4内に引張り出す。さらに、筒状排出部17を閉止している排出部縛り紐19をホッパー4内で解き、筒状排出部17を開口する。なお、排出部縛り紐19または排出部押え紐20を解く際には、鉤状の工具を使うことも可能である。排出部縛り紐19を解いた後は、扉体37を動かして開閉窓36を閉鎖する。
【0044】
筒状排出部17が開口すると、収容袋Fに収容された飼料米Kはホッパー4内に排出され、ホッパー4の送出口35から送出される(落下する)。ホッパー4の下方には、破砕装置6が配設されており、ホッパー4の送出口35から落下した飼料米Kは、破砕装置6の投入口45に投入される。そして、投入された飼料米Kは、破砕装置6の送りロール49(図4参照)によって破砕室46に送られ、回転する複数のフリーハンマー57によって叩き砕かれる。破砕された飼料米Kは、網状部材51を通して排出口47に送られ、排出口47から排出される。
【0045】
排出口47から排出された飼料米Kは、破砕装置6の下方に配置された噴霧装置9のノズル69によって霧状の水が噴霧される。そして表面に水滴が付着した飼料米Kは、台車収容部8へと落下する。台車収容部8に台車7が収容されている場合には、落下した飼料米Kは台車7の収納箱63に収容される。なお、このようにして作られた破砕済みの飼料米Kは、直ぐに家畜に与えることも可能であるが、一日ぐらいそのまま放置することにより、飼料米Kの内部まで水を含浸させ、家畜の消化率を一層よくすることが可能になる。
【0046】
ところで、収容袋Fに収容された飼料米Kの残量が少なくなると、その飼料米Kを筒状排出部17から自然に排出させることが困難になる。この場合には、梯子10を使って天板25上(正確にはパレット2上)にあがり、収容袋Fを少し持ち上げ左右方向に振ればよい。この際、筒状排出部17の位置が水平方向にも変位するため、飼料米Kが飛散する可能性があるが、漏斗状のホッパー4が設けられているため、飼料米Kが飛散した場合でも、それらの飼料米Kをホッパー4で受止め、破砕装置6の投入口45に案内することができる。また、ホッパー4には所定量の飼料米Kを貯留させることができるため、破砕装置6の運転を停止させたまま、収容袋Fに残った飼料米Kを全て排出させることが可能である。
【0047】
このように、本例の飼料米破砕システム1によれば、筒状排出部17を引張り出したり排出部縛り紐19を解いたりする作業を、天板25及びパレット2上に載置された収容袋Fに対して行うことから、飼料米Kを収容袋Fから取出し破砕装置6で破砕する一連の処理を、作業者に不安感を喚起させることなく、簡単に且つ安全に行わせることができる。
【0048】
また、本例の飼料米破砕システム1によれば、架台3の下部収容空間30には、台車7を出し入れ可能に収容する台車収容部8が形成されているため、破砕装置6の排出口47から排出された破砕済みの飼料米Kを、台車7の収納箱63で受止めることができ、破砕された飼料米Kを積替えることなく運搬することができる。
【0049】
また、本例の飼料米破砕システム1によれば、ホッパー4の上面開放部34は格子状部2cで覆われ、その中央に貫通部2dが形成されているため、飛散した飼料米Kをホッパー4全体で受止めることができ、収容袋Fに残った飼料米Kの排出作業を極めて容易に行うことができる。しかも、貫通部2dの大きさを必要最小限の大きさとすることができ、ひいては、収容袋Fを安定して支持するとともに、作業者の安全性をさらに高めることができる。
【0050】
さらに、本例の飼料米破砕システム1によれば、架台3の高さが約170cmであるため、比較的背の低い作業者であっても、ホッパー4内に手Hを挿入し、筒状排出部17を引張り出したり排出部縛り紐19を解いたりすることが可能となる。また、収容袋Fの高さが1mぐらいであれば、架台3の上に載せた状態でも、収容袋Fの上面までの高さを3m以下とすることができ、しかもパレット2に載せたままフォークリフトによって上げ下げするため、例えば牛舎内においても飼料米破砕システム1を設置することが可能になる。
【0051】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0052】
すなわち、上記実施形態では、複数のフリーハンマー57によって叩き砕くことにより飼料米Kを破砕する構成の破砕装置6を示したが、回転する刃物によって切断することにより飼料米Kを破砕する構成の破砕装置を備えるようにしてもよい。また、破砕処理の駆動源としてモータを用いるものを示したが、エンジンを用いることも可能である。
【0053】
また、上記実施形態では、破砕された直後の飼料米Kに対して水を噴霧するものを示したが、台車7によって所定の場所に運搬した後に水を加えるようにしてもよい。ただし、上記実施形態のように台車7の収納箱63に落下する前の飼料米Kに対して水を噴霧するように構成すれば、飼料米Kの表面に満遍なく水を付着させ、容易に含浸させることができる。
【0054】
また、上記実施形態では、収容袋Fをパレット2を介して天板25上に載置するものを示したが、パレット2を用いることなく収容袋Fを天板25上に直接載置するようにしてもよい。なお、この場合には、天板開口部31を網状または格子状の蓋体で覆い、その蓋体の中央に貫通部を形成することが好ましい。
【0055】
さらに、上記実施形態では、図3に示すようにホッパー4の開閉窓36を筒状排出部17の下端(すなわち排出部位)よりも高い位置に形成するものを示したが、筒状排出部17の下端よりも低い位置に形成してもよい。この場合、筒状排出部17から排出された飼料米Kが開閉窓36から溢れ出ないように、ホッパー4の下部に筒状排出部17に連通可能な筒状のガイド部を備えるようにしてもよい。なお、このガイド部の周面下端部分に径方向に貫通する複数の開口を設けることにより、ガイド部の外側に排出されたホッパー4内の飼料米Kを、その開口を通して送出口35に送ることが可能になる。
【符号の説明】
【0056】
1 飼料米破砕システム
2 パレット
2c 格子状部
2d 貫通部
3 架台
4 ホッパー
6 破砕装置
7 台車
8 台車収容部
9 噴霧装置
11 袋本体
17 筒状排出部
19 排出部縛り紐(閉止紐)
20 排出部押え紐(閉止紐)
25 天板
29 上部収容空間(収容空間)
30 下部収容空間(収容空間)
31 天板開口部(開口部)
34 上面開放部
36 開閉窓
45 投入口
47 排出口
50 破砕機本体
F 収容袋
K 飼料米
【先行技術文献】
【特許文献】
【0057】
【特許文献1】特開2008−24347号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋本体、該袋本体の底面中央に設けられた筒状排出部、及び該筒状排出部を閉止する閉止紐を有する収容袋、に収容された飼料米を、前記収容袋から取出して破砕する飼料米破砕システムであって、
前記収容袋を載置可能な天板を有するとともに、該天板の下方に収容空間が形成された架台と、
前記天板を貫通して形成され前記筒状排出部が挿通可能な開口部と、
該開口部に臨むように前記天板の下面側に配設されたホッパーと、
該ホッパーの周壁の一部を貫通して形成されるとともに、扉体によって開閉可能に設けられ、開放された際、前記ホッパーの内部に手を挿入させることが可能になる開閉窓と、
前記ホッパーの下方に位置する前記架台の前記収容空間に配設され、前記ホッパーから送出された前記飼料米が投入される投入口、該投入口に投入された前記飼料米を破砕する破砕機本体、及び破砕された前記飼料米を排出する排出口、を有する破砕装置と、
該破砕装置の下方に位置する前記架台の前記収容空間に形成され、前記破砕装置の前記排出口から落下する前記飼料米を受止め搬送するための台車を出し入れ可能に収容する台車収容部と
を具備することを特徴とする飼料米破砕システム。
【請求項2】
前記収容袋を載置した状態で、前記天板の上面に載せられるパレットをさらに備え、
該パレットは、前記天板の前記開口部を覆うとともに前記飼料米が通過可能な隙間を有する格子状部と、該格子状部の中央に形成され前記筒状排出部が挿通可能な貫通部と、を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の飼料米破砕システム。
【請求項3】
前記台車収容部の上方に位置する前記架台の前記収容空間に配設され、前記破砕装置の前記排出口から落下する前記飼料米に対し霧状の水を噴霧する噴霧装置をさらに備える
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の飼料米破砕システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−187526(P2012−187526A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53765(P2011−53765)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(311003374)
【Fターム(参考)】